SSブログ

星屋和彦-06 [F組三国志-03]

 お師匠さまに言われてから沢山考えた。
 完全に答えが出た訳では無いけど、席が変わるのを機に新たな気持ちで色々なことに取り組みたいと思う。
 席替え。
 昨日のうちに並べ替えられた机の配置は、鶴翼の陣と呼ぶことに。
 机の配置を大きく変えるというF組からの要望があっさり認められ、生徒の自主性を重んじるという校風を改めて実感出来た。
 かなり攻撃的な布陣だが、授業は先生との戦いとなるのだろうか。
 チーム麻里子は第一回テスト団体戦の勝者ということで中央に陣取る。
 黒板に向かって左はチーム哲平、右はチーム正信。
 どちらも通常の席より前に出て、教卓を囲む形。
 自分はチーム最前列の右端に陣取るから右にはチーム正信の誰かが座ることになる…。

「あ~、隣は星屋くんなんだ~、よろしくね。」
「う、うん、こちらこそよろしく、清水さん。」
「なんか席の配置が変わって、ドキドキじゃない?」
「そ、そうだね。」

 少しじゃない、かなりドキドキだ。
 清水さんとは遠足の時にも話した。
 かなり普通に。
 今も普通に話しかけてくれる。
 中学の頃、自分に話しかけてくれる女の子はいなかった…。

「ふふ、私は省吾さん達の娘になったからね。」
「えっ?」
「お師匠さまの娘だから、星屋くんは、ちさとお嬢さまって呼んでね。」
「ど、どういうこと?」
「あら、まだお父さまから、お話し聞いていらっしゃらなかったのね。
 お母さまのことを美咲さまと呼ぶ、門下生の和彦さん。
 私は十三歳のおてんば娘って役どころ、和彦さんにもご迷惑をおかけするってとこかしら。」
「そうなんだ、面白くなるのかな…。」
「面白くするの、多少の演技指導は演劇部期待のホープ、ちさとお嬢さまがしてあげますからね。」
「そうか、演劇部だったのか。」
「うちのお父さまって、面白いこと考えるのよ。
 普段、気が向いたら、みんなで役になっておしゃべりして、形が出来そうだったら、脚本作って文化祭のネタにしても良いかなって。」
「あっ、そう言えば、一昨日お話した時、その路線でやってみよう、なんておっしゃってた。」
「脚本家の候補は外山留美、彼女も演劇部なの、で、お父さまの古くからのお友達の娘さん、十七歳ぐらいって設定よ。」
「お師匠さま、いつの間に…。
 あっ、お嬢さま、自分は何歳ですか?」
「ふふ、和彦さんは自分の歳を人に訊くのね。
 そうね、十六~十九ぐらいの間で自分で決めて良いわよ。
 性格は、内気なんだけど、もっと積極的になろうって悪戦苦闘してるって感じ、時に空回りしながらもね。
 そんな和彦さんを私のお父さまとお母さまが暖かく見守っているの。」
「そ、そうか…。
 ちさとお嬢さま、自分は嬉しいです、お師匠さまの心遣いが身に沁みています。
 これから、よろしくお願いします。」
「ふふ、しっかりしてね、私の兄貴的存在なんだから、がんばんないと、おてんば娘に引っ張りまわされるわよ。」
「はい、お嬢さま。」
「じゃあ、ここでスイッチ切って。」
「え?」
「私もずっとお嬢さまをやってる訳じゃないの、演技としての、ちさとお嬢さまと、星屋くんのクラスメート、普段の私、清水ちさととは別なのよ。」
「そっか、了解…、えっと、ちさとさん…。」
「ふふ、普段の星屋くんはどんな人なの?」
「えっと…、内気だけど、もっと積極的になろうって、時には空回りしてしまうかも知れないけど…。」
「それを省吾さんと美咲さんが暖かく見守っているって、ははは。」
「ほんとに空回りしちゃうかもだけど、今は頑張ろうって思ってるんだ。」
「おっけいおっけい、清水ちさとは星屋くんの味方だからね。」
「ありがとう。」

 自信はない、ないけど…、演じるか…。
 お師匠さまは、姉御の子分を演じてた自分のことを考えてくれたのだろう。
 ほんとにがんばってみよう。
 仲間も…、味方もいるんだ。
nice!(8)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

星屋和彦-05 [F組三国志-03]

「それでさ、和彦に提案というか相談があるのだけど。」
「和彦って呼ばれなれてないからなんか照れくさいです。
 でも…、もっとお師匠さまが門下生にって感じで話して下されば…。」
「う~ん、まあそこらへんは今後使い分けていくよ。
 ねえ和彦は今まで、リーダー論とかって考えたことある?」
「えっ、全然ないです、自分はリーダータイプではないですから。」
「俺はよく考えてるんだ。
 親父は教育の観点からよく話してくれるし、おじさんたちが遊びに来るとそんな話題で盛り上がるからね。」
「さすが…、家庭環境が自分とはずいぶん違います。」
「はは、そんな中でね、一人の叔父さんがいつも話すのは、教育の過程で集団やリーダーのことをきちんと学ぶ場が足りないってことでね。」
「集団やリーダーのことを学ぶ?」
「うん、数学や英語と同じように、きちんと学校で教えるべき、否、考える時間を作るべきなんだって。
 学校では、部活を通してとかクラスの運営を通してとか、せいぜい道徳の時間ぐらいでしか扱っていないけど、人間が社会の中で生きて行く時に、とても大切なことだろ。
 俺たちは社会の中で色々な集団に属しているけど、それぞれの集団との関わり方は様々だよね。
 個々の集団の目的にもよるし。
 でも、そんな中で、それらの集団とどう向き合って行くのか、その集団に於けるリーダーの役割なんてことをメンバー一人一人が考えて、その集団をより良いものにしようとしたら、その集団の目指してる成果に良い影響を与えると思うんだ。」
「はい、何となく…。」
「身近な例を挙げるとさ。
 チーム麻里子という集団を考えた時、チーム麻里子はテスト団体戦での勝利を目標とした。
 リーダーの麻里子はチームのみんなに明確な目標を提示し、檄をとばしたからね。
 それに対して、主に和彦、黒川、舘内さんの三人が動いた。
 この三人は集団の中で、教える立場になるのは自分だと判断し、それを実行した。
 そして岡崎たちは引っ張ってもらってでも高得点を取ることが、この集団の中での自分の役割だと認識してそれを実行。
 トップで引っ張った麻里子、それを支えた三人のサブリーダー、そして自ら頑張ったメンバーたち、この三者がうまくかみ合ったからこそ、チーム麻里子というチームは成果を出せた。
 そう、トップリーダーの麻里子だけの力じゃないってことだよ。」
「確かにそうです、田中や岡崎、平岩にも、なんとかしようって気持ちがあったから…、彼らは頭が悪い訳ではないですし。」
「でも、問題はこれから。
 今の状態を維持出来るのか、さらに上を目指せるのか、それとも後は下降線になるのか。」
「そうですね、高校受験が終わって気の抜けてた人たちが、今回のテスト団体戦で気合を入れ直したってとこです、でもそれを続けていくのは難しいかもしれません。」
「そこで、集団やリーダーということを考えてみて欲しいと思ったんだ。
 もちろん、チーム麻里子のことだけではなくね。」
「はい。」
「リーダー論って言うと、麻里子みたいな立場の人の話しだと思う人が多いけど、それだけじゃない。
 リーダーの補佐をしながらリーダーを育てるという考え方だってあるし、リーダーを生かす部下という考え方だってある。」
「あっ、リーダー論というのは単純にリーダーだけの話ではないのですね。」
「うん、組織論でも有る。
 F組という集団の中で、和彦の位置や役割をどうして行くか、というテーマはどうかな?」
「全く考えたことなかったですが…、お師匠さまの気持ちは分かります…。
 えっと…、考えてみます。」

 お師匠さまは、自分に足りてない部分について考える様にアドバイスして下さったのだと思う。
 F組という集団に対して、お師匠さま達と自分とでは関わり合い方が全く違う。
 それでも、小テストの企画を通して少しだけ…。
 えっと、集団の一員として前向きに動いたと認めて貰えた。
 こんな自分でも仲間だと…。
 自分の役割…。
 中学時代とは違う自分にならないと姉御やお師匠さまをがっかりさせる事になるだろう…。
 変われるのかな…。
nice!(8)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

星屋和彦-04 [F組三国志-03]

「星屋。」
「あっ、はい、お師匠さま、何でしょう?」
「今日授業後予定ある?」
「えっと…。」

 予定…、あると言えばある。
 本屋へ行って、今日発売の雑誌を買って、それから今度発売されるゲームソフトの予約、レンタルショップでDVDを借りて…。
 でも、今日じゃなくても良いことばかりだ。

「特には無いですが。」
「じゃあ、スガキヤでラーメンでも食ってかない、おごるからさ。」
「えっ、そ、そんな…、悪いです。」
「なんだ、星屋は俺たちの仲間になりたくないの?」
「ま、まさか…、なりたいです…。」
「だったら、遠慮しないでおごられちゃえよ。
 仲間になる、お近づきの印ってとこだからさ。」
「はあ…。」
「変に遠慮してたら仲間にはなれないからね。」
「は、はい。」
「昨日話せなかったことが有るんだ。」
「はい。」
「ただ、時間は美咲の都合になっちゃうけど良い?」
「も、もちろんです。」
「委員長さまは結構お忙しいみたいでね、じゃ、授業後な。」
「はい。」

 仲間か…、昨日お師匠さまから言われるまで、あまり考えたことなかった。
 元気良く外で遊ぶ子ではなかったから、友達と呼べる子も少なかったし…。
 中学のクラスメートには多少いじめられもしてたから、自分の世界に独りでいる方が気楽。
 仲間か…、姉御とも仲間になれるのかな…。
 姉御は少し気が強そうだけど可愛い。
 ちょっとどきどきしながら姉御って呼んで話しかけたら、ちゃんと応えてくれた。
 仲間か…。
 お師匠さまとも…。

 キンコンカンコ~ン♪  キンコンカンコ~ン♪

 授業が終わって、近くのショッピングモールへ向かう。

「お師匠さま、秋山さんのことですが。」
「なに?」
「美咲さまとお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「美咲さまか…、ああ、悪くないかな、でも麻里子みたいには応えられないかも。」
「それでもいいんです。」
「イメージとしてはどんな感じで?」
「お師匠さまの奥方さまで、自分はお師匠さまの門下生。」
「なるほどな…、ふふ、そうだ、その路線でやってみよう、美咲にも話しておくよ。」
「はい。」

 スガキヤについた。
 安くてうまい…。

「星屋は何にする?」
「ラーメンで。」
「じゃあ特製ラーメンでいい?」
「えっ、普通のラーメンで…。」
「遠慮するなよ。」
「では…。」

「ねえ、俺の門下生と、姉御の子分とは同じ人物なの?」
「同じでは無理がありそうです。」
「じゃあ、麻里子は星屋って呼んでるから、俺たちは和彦って呼べば良いかな?」
「は、はい…。」
「じゃあ和彦、まずは報告だ。」
「はい、お師匠さま。」
「この前のテスト団体戦、合計点を見ると僅差だったよな。」
「一点差でしたからね。」
「でね、二回目以降は採点方法を複雑にしようと思って、ちょっと違う計算をしてみたんだ。
 前回の得点と比較する形でね。
 そしたらチーム麻里子はダントツの一位になったんだよ。」
「どういうことです?」
「単純に、一回前のテスト結果をチームに当てはめて計算してみたら、チーム麻里子は他の二チームと比べてめちゃ点の低い最下位だったのさ。」
「ということは?」
「得点アップ率を考えたら、チーム麻里子はすごくがんばったと言えるだろうな。
 まだ案の段階なんだけど、二回目以降の小テスト団体戦は単純にテストの平均点で競うだけでなく、
満点だった人には二ポイント、第一回より点数を一点上げた人は一ポイント、二点上げた人には二ポイント、三点上げた人は三ポイント、だから第一回より三点上げて満点だったら五ポイント獲得。
 変わらなかった人はゼロポイント、点数を一点下げた人はマイナス一ポイント、点数を二点下げた人はマイナス二ポイントとし、チームごとの平均を出して、その結果でも競ったらと思ってね。
 平均点では二位でもポイントでは一位ということも有るだろう。
 そうすると、同じ得点でも、第一回より点を上げた人はチームに貢献したことになるし、点を下げた人はチームの足を引っ張ったということになって参加者の緊張感が増すと思うんだ。」
「なるほど、九点十点が取れない人でもチームに貢献出来るということですね。」
「うん、こんな話しをみんなとしていた時に、チーム麻里子の得点アップはどうして? ってことになってさ。
 そしたら、麻里子がね、岡崎、平岩、田中といったやっかいそうな連中を星屋が面倒みてくれたことが大きかったって。」
「えっ、姉御が…。」
「ああ、人は見かけによらないとも言ってたけどね。」

 はっきり言って人から認めてもらえることなんて…。
 自分のことを認めてくれてたんだ、姉御が。
 姉御…、一生ついていきます…。
nice!(10)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

星屋和彦-03 [F組三国志-03]

「省吾、机の配置も変えるってことか?」

 放課後、席替えが自分の思いつきとは違った次元で進行してる。
 お師匠さまと哲平さんに呼ばれて話を聞いているが、やっぱ、お師匠さまはすごい。
 チームごとの席、って自分ではすごく斬新なことと思って提案したのに、お師匠さまのお考えはそんなレベルではない。

「うん、哲平、星屋からの提案を俺なりに検討してみたんだ。」
「ああ。」
「四角い教室に四十人の生徒を効率良くと考えたら、確かに今までの、小学生の頃から変わらない机の配置が良いのかもしれないけど、今のF組だったら机の配置を変えることによって違った効果が期待できると思うんだ。」
「違った効果?」
「そうだな、先生に対して左右が前に出て、席の間の通路もなくす、教室の前の方の密度を高める訳だ。」
「そうすると?」
「前提は、前の方に座るみんなが授業に真面目に取り組む気持ちを持っていることだけどね。
 授業中、自分の視野に入る人たちが真剣に授業を受けていたら、自分もって気にならないかな?
 逆に言えば、寝てる奴とかの姿が目に入ったら、心理的にマイナスになると思うんだ。」
「う~ん、確かにそうかも。」
「で、美咲が言ってたみたいに、授業によって席を移動しても良いと思う。
 それぞれ、集中したい科目とかあるだろうし、時には教室の後ろの方で、のんびりしたいだろうからね。」
「そうだな…、ねえ、星屋はどう思う?」
「えっ、えっと…。」

 哲平さんにいきなり話を振られてしまった。
 が…、正直言って、彼と、彼らと話すのは苦手だ。
 人気者の哲平さんや、お師匠さまたちと親しくなれたら良いとは思うのだけど、そう思うと、どうしても緊張してしまう。
 自分なんかと話しても彼らは楽しくないだろうし…。

「星屋は前か後ろ、どちらが良い?」
「えっと、お師匠さま、前が良いです。」
「はは、師匠と呼んでるのは俺だけじゃないんだ、それにしても、お師匠さまとはね。」
「そ、尊敬していますので、て、哲平さんもですけど…。」
「はは、有難うな、でも、同い年なんだからもっと気楽にしなよ。」
「はい…。」
「なあ、姉御とは、どうなんだ?」
「はい、少しずつ雑用で使って頂けるようになりました。」
「お前は、麻里子のパシリで良いのか?」
「いえ、パシリという感じではなくチームの用とか…。」
「それにしても子分ってことだろ。」
「それでも嬉しいので…、自分、中学の頃は…、みんなから無視されるか、オタクってバカにされるか…。」
「そっか…、でも麻里子と親分子分じゃ、師匠と美咲のようにはなれないぞ。」
「そんな大それたことは考えていません、普通に話せませんし…。」
「まあ、星屋が良いっていうのなら構わないが…、そうだ、省吾はお師匠さまとして、他の連中の呼び方は?」
「まだ、考え中で…、秋山さんは奥方さまかなって程度です。」
「なあ省吾、みんなにニックネームってどうだ?」
「うん、面白いかも。」
「俺は麻里子のこと、姉御なんて呼べないけどな。」
「はは、麻里子的には、編集長とか呼ばれた方が嬉しいのじゃないか。」
「そっか、色んな呼び方があって良いわけだ。」
「哲平は親分、親方、大将、ボス…、ってとこか?」
「ひねりがないな…、星屋、どう?」
「哲平さんは入学した頃から、哲平って呼んでくれよ、って…、えっと、優しい感じなら哲平兄さん…。」
「う~ん、女子からそう呼ばれたら、少し嬉しいかも…、なあ星屋、俺のことは、哲平さんじゃなくて、哲平って呼んでくれないか?」
「でも…。」
「そうだな、星屋が哲平の前で緊張してしまうのは分かる気がする。
 俺だって美咲の前ではかなり緊張したからな。」
「それがあっという間にね…、ホントに緊張したのか?」
「初めてのデートの時なんて心臓が爆発寸前だった。
 あんな知的な美人と、何話したら良いか分からなかったけど、とにかく仲良くなりたかったからね。
 嫌われたり、自分のことダメな奴って思われたらどうしようって思ってた。」
「省吾って意外と普通だよな。」
「意外じゃないよ、俺は普通さ、哲平みたく女の子にもてるわけでもないしさ。
 星屋も、哲平とどう接したら良いか分からないから、哲平さんって呼んでるのだろ。
 でも、麻里子がね、星屋はクラスのことを考えてくれる仲間だって言ってたよ。
 つまり、星屋も俺たちの仲間ってことさ。」
「えっ…。」
「仲間なのだから気軽に話してくれよな。」
「は、はい…。」
「おっ、省吾の奥方さまは用が済んだみたいだぞ。」
「御免、星屋、この後美咲と約束が有ってね、また話そうな。」
「はい…。」

 えっ、仲間? 
 お師匠さまや哲平さんと?
 姉御が自分を認めてくれた?
 なんか、ドキドキする…。
nice!(9)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

星屋和彦-02 [F組三国志-03]

「奥方さま。」
「はっ、はい?」
「私くしめは麻里子さま配下の星屋でございます。」
「は、はい。」
「この度、一つの提案がございまして。」
「はあ、真面目な提案なら歓迎よ。」
「ありがたき幸せです。」
「どんな提案なの?」
「クラスの席のことでござります。」
「はい。」
「現在はチームのメンバーがばらばらに座っておりますが、この戦乱の世、いささか不自然ではないかと。」
「う~んと…、席替えってことね。」
「左様でござりまする。」
「席替えか…。」
「如何でござりましょう?」
「考えてみる価値はありそうね、省吾たちと相談してみるわ。」
「かたじけのう存じます。」
「ふふ、星屋くんも色々考えてくれてるんだ、有難うね。」
「えっ、そのようなお言葉、もったいのうございます。」
「あっ、省吾たち集まってだべってる。
 えっと、まだ時間は有るわね。
 星屋くん、一緒に行きましょ。」
「は、はい。」

「ね~、席替えしない?」
「美咲、いきなりだね。」
「なんかあったの?」
「星屋くんからの提案でね、テスト団体戦のチームが固まって座るようにしたらってことなのだけど、省吾、どうかな?」
「う~ん、考えてなかったな…、うん、面白いかも、チームの団結とか強まりそうだ。
 問題は企画に参加してない人たちかな。」
「参加してないのは、後三人だったよな、何とかなるというか俺から話しても良いよ。」
「哲平も乗ってくれるのね。」
「ああ、でも、どんな感じで席替えするんだ、くじじゃないのだろ?」
「なあ、みんな、席替えイコールくじってどう思う?」
「席替えのドキドキ感は楽しかったなぁ~。」
「うん麻里子の気持ちは分かる、でもさ、俺らのレベルだったら、数学苦手で英語が得意な子と英語苦手で数学が得意な子が隣り合わせとかさ。」
「あっ、そうか、逆に趣味が同じで仲が良すぎる子は、離れた方が良かったりするのかも。」
「人それぞれだから簡単にはいかないかも知れないけど…、待って、クラスの席ってさ、固定じゃなくても良いんじゃない?
 グループ内で相談してみんながより集中出来るように調整したりとかさ。」
「寝てたい奴はみんなのじゃまになんない様にとかかな。」
「はは、今のF組でなら実験的に色々試せる気がするね。」
「やってみるか?」
「賛成~。」
「じゃあ、私は授業後にでも、先生と相談してみる。」
「チームリーダーの俺はメンバーに提案ってことかな、美咲さん。」
「ええ、お願いね、正信くん。」
「えっと、今、どのチームにも入ってないのは…、森の他は誰?」
「梶田梨乃さんと、三浦武敏くんよ、哲平さん。」
「了解、静さん。」
「ははみんなやる気満々ってとこね、じゃあうちらも相談するか、星屋。」
「へい、姉御、がってんでい。」

 やっぱり、F組のリーダーたちはすごい。
 秋山さんの一言でみんなが意見を出し合って、すぐ方向性を…、F組でなら実験的に色々試せるなんて、さすがお師匠さまだ。
 自分は…。
nice!(10)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

星屋和彦-01 [F組三国志-03]

 奥田さんと話す切っ掛けにもなり、小テスト団体戦は楽しかった。
 奥田さんは男子に負けてないけど可愛いという、漫画やアニメの世界にしかいないと思っていたキャラ。
 男前だけど可愛い女の子、彼女の様なリアル女子は中学にいなかった。
 岡崎をいじったりする感じが、アニメの一場面をリアルで見てる様な雰囲気で目が離せない。
 企画がなければ話し掛ける事すら出来なかった存在だが、自分の描いた設定にも戸惑いながら乗ってくれ、その辺りの微妙な感じがまた可愛くて理想の姉御だ。
 ネットでやるゲームも面白いが、リアルにカッコ良い姉御のチームで、弱そうな岡崎たちのレベルを上げてゲームに勝利というのは新鮮だった。
 まあ、あいつらは予想通り、サボってただけで力が無い訳では無かったし、奥田さんが気合を入れてくれたのがカッコ良くて。
 秋山さんの話だと、これからも続きそうだから、もっと楽しくして行きたいものだ。

 となると、姉御だけでなく…。
 まずは赤澤くんだな、姉御は彼のことを尊敬しているみたい、まあ、同学年とは思えないレベルだから。
 姉御という存在に対して赤澤くんは…、親分では、ちょっと、いや全く違う、う~ん、秋山さんの立場も考えないと…。
 秋山さんは、学年でも一二を争う美少女で、お姫さまってイメージだけど、赤澤くんとのからみだと、奥方さまか。
 う~ん、F組三国志だとしたら赤澤くんは皇帝か?
 でもそれだと自分のような下々の者は近寄れなくなるし、そもそも国に所属していないのだから根本的に違う。
 三国志で行くなら、彼はアイデアマンだから諸葛 亮 孔明しかない。
 なら、先生とか、お師匠さま、うん、こっちの方がしっくりくる。
 秋山さんは、やっぱ奥方さまかな…。
 待てよ、チームを国と考えると…。

「ねえ…、星屋くん、何ぶつぶつ言ってんの?」
「あっ、岡崎か、ちょっと考え事。
 そうそう、お前さ、奥田さんのことボスって呼んでるけど、やっぱ奥田さんは姉御の方がしっくりこないか。」
「そうかな?」
「それから、赤澤さんはお師匠さま、秋山さんは奥方さまでさ。」
「はは、何考えてんの?」
「自分なりに、もっとテスト団体戦を盛り上げたくなってね。
 ほら、奥田さんとか、麻里子さんとか呼んでるより、姉御って呼んだ方が、あっしは、姉御に一生ついていきやんす、って感じになるじゃないか。」
「それってちょっと違うっていうか、何か変じゃない?」
「でも、奥田さんはこの前、乗ってくれたぞ。」
「仕方なく、だったりして。」
「いや、俺の姉御はそんなお人じゃねえ。」
「おいおい。」
「でさ、クラスの席とかも、チームが集まるようにしたら面白いと思うんだ。」
「席替えか?」
「ああ。」
「う~ん、そっちは秋山さんに提案したら通るかもね、ほら、あそこにいるよ。」
「そ、そうか、よ~し奥方さまに提案してみるぞ。」

 このクラスは中学までのクラスとは全然違い楽しいクラスになりそう。
 お師匠さまや奥方さまが色々考えて動いてくれ、姉御も自分の世界観を受け入れてくれた。
 このままF組三国志を、もっと盛り上げたいと思う。
nice!(11)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

ゆうちょ銀行 [ネット社会の]

「亜紀、典型的なフィッシングメールが迷惑メールフォルダに入ってたよ。」
「どんな感じなの?」
「結構、本物っぽくて、見た瞬間に迷惑メールと分かる日本語が怪しいのではなくてね…。」

-----------------------------

最近、ゆうちょ銀行はお客様の口座資金のセキュリティを高めるために、全面的にシステム
のバージョンアップを行いました。すぐに口座の更新をお願いします。

こちらのURLをクリックしてください
https://www.jp-bank.japanpost.jp/etuzuki/ouzok

■ゆうちょダイレクトのセキュリティに関するお願い
ゆうちょダイレクトをより安全にご利用いただくため、
以下のセキュリティ対策の実施をお願いいたします。
●トークン(ワンタイムパスワード生成機)のご利用(無料)
●OSやインストールしているソフト等は常に最新の状態で使用
●メーカーのサポート期限が経過したOSやソフト等は使用しない
●ウイルス対策ソフトの導入および最新の状態への更新
●不正送金対策ソフト「PhishWallプレミアム」のご利用(無料)
●送金などの操作を行う端末と別の端末で受信するメールアドレスを登録
申し訳ございませんが、このメールへの返信はお受けしておりません。
※この度のお取り扱いに関し、ご不明な点がございましたら、次の連絡先まで
ご連絡をお願いいたします。

※このメールにお心当たりのない方は、至急ご連絡をお願いいたします。
ゆうちょダイレクトサポートデスク
電話:0120-992504(通話料無料)
お取扱時間:平日 8時30分21時
土日休日 9時17時
(12月31日1月3日は、9時17時)
ゆうちょ銀行

-----------------------------

「気を付けて欲しいのは画面上の『https://www.jp-bank.japanpost.jp』は、ゆうちょ銀行のURLだけど、実際のリンク先を確認すると『www.miuteu.com』になってるということなんだ。
このブログ上ではhttpsから始まるURLを表示させると、そのまま自動的にリンクされるから、ゆうちょ銀行に飛ぶのだけど、フィッシングメールの場合はそうではない。」
「どういうこと?」
「リンクを表示する部分は『ここから』とか『ダイレクトサポートデスク』とか自由に出来て、その正確なリンク先を表示する必要はないんだ、こんな風にね…。
https://www.jp-bank.japanpost.jp
クリックしてごらん。」
「あっ、怪しげなサイト…、なの?」
「サンプルだから大丈夫、でも、表示しているURLは『ゆうちょ銀行』そのままだから、人を騙そうと思ったら簡単だろ。」
「これだと本物かどうか分からないわね。」
「だろ、詐欺を目論んでるサイトは、ゆうちょ銀行そっくりのサイトに導いて情報を入力させるということなんだ。
こんなのに引っ掛かる人が少なからずいるみたいで、ゆうちょ銀行から警告のメールを送ってくるのだけど、それすら疑って掛からないとって気分だよ。」
「詐欺を目論んでるメールって取り締まれないの?」
「知恵比べなのか、諦めているのか、なくならないね。
私のメールアドレスは売買されているし。」
「売買?」
「ああ、海外からの迷惑メールが大量に送られたことが有る、送信元も騙されてアドレスを買わされた可能性が有るのだけどね。」
nice!(13)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

奥田麻里子-05 [F組三国志-02]

「ボス、おはようございます。」
「岡崎、ボスはやめて!」
「姉御、今日もお元気そうで何よりでやんす。」
「星屋もね…。」

 はぁ~、岡崎は…、トレードに出せるなら出したいわね。
 星屋は…、星屋は少し変わっている、おたく系で疲れることもある、でも、今回は頑張ってくれた気がする…。
 岡崎、平岩、田中と面倒みてくれ、単にお遊び気分だけで企画に乗ってくれてた訳ではないと思う、私の指示ですぐ動いてくれてたし…。
 頭は悪くないのだろうな…、でも、よく分かんない奴なのよね。
 今度、省吾さんたちに話してみようかな。

「おはよ、奥田さん、なにぼ~っとしてるの?」
「あっ、鈴木くん、おはよ…、ちょっと考え事しててね。」
「はは、その上履き、誰のかな~。」
「あ~、いっけな~い、え~っと私のは…。」
「チームメンバーからは姉御とも呼ばれるお方がね~。」
「あ、あれは、星屋…、星屋くんが勝手に呼んでるだけで、私は、そんな…。」
「奥田さんが頼れるリーダーだってことなのだろうな。」
「そんなことは…。」
「そんなリーダーに、ちょっとお見せしたいものがあってね。」
「何?」
「えっとね、あっ、哲平だ、お~い、哲平。
 哲平にも見て貰いたくてさ。」
「おはよう、なんだい?」
「こんなの作ってみたのだけど、どうかな?」
「どれどれ…、あっ、F組の勢力図?」
「第一回数学小テスト団体戦の結果を簡単なイメージ図にしてみたんだ。」
「チーム麻里子が目立ってるのね、あら、メンバー全員の名前を入れて…、あらら、チーム哲平とチーム正信、小さ過ぎない、メンバーの名前、文字が小さくて…。」
「団体戦の結果をデフォルメしてみたってとこ、ちょっと面白くないかな、これを見て俺たちは、打倒『チーム麻里子』で団結するって感じでさ。」
「良いね…、はは、真ん中のハートは、笑えるな。」
「よね~、まあ確かに美咲と省吾さんの名前がここになかったら嫌だけど。」
「でしょ、後、これにタイトルを付けたいと思うのだけど、第一回数学小テスト団体戦ではちょっと味気ない気がしてさ。」
「そうだな…、F組三国志ってどうだい?」
「三国志か…。」
「で…、このマップは、え~と第二シーズンってことかな?」
「えっ? 第一回じゃないの?」
「ああ、うん、二人にも知っておいて欲しいことなんだけどね。」
「うん。」
「ことの発端は、美咲が省吾にF組のいじめについて相談したことに始る、でね…。」

 そうだった、美咲が省吾さんと付き合い始めた頃に聞いたな。
 いじめないグループ作りだったっけ。

「で、遠足の企画でさ…。」

「そうか、班がすぐに決まったのは、哲平のグループと秋山さんのグループが裏で動いていたからだったのか。」
「鈴木には黙っててごめんな。」
「いや、気にしないでくれ。」
「有難う、で、結果としてだな。」
「うん、それは俺にもわかるよ、最近は森も大人しくなったと言うか、大人しくならざるを得なくなったと言うか…。
 富岡は俺のグループに入りたいって言ってきてるし、平岩はすでに麻里子さんのところだから、あいつの仲間って誰が残ってる? 
 今、下手に目立ったら、いじめられるのは自分の方だって分かってるのじゃないか。」
「だよな、何にしても、遠足以降、団結力が高まったF組という訳だけど、始めに省吾から話しを持ちかけられた時、あいつは三国志みたいになんて言ってたんだ。」
「そういえば省吾、今回の小テスト団体戦でも三つのグループにこだわってたわね。」
「なんでもバランスが取り易いそうだ。」
「そうか、じゃあ、F組の勢力図も、そこから作ってみるかな?」
「まぁ、そっちは微妙な部分もあるから、このF組勢力図のタイトルをF組三国志にして完成させてくれないか。」
「そうだな、遠足前後の事は、F組三国志の序章と考えておくよ。」
「序章か、序章が一番面白かったという事にならない様に頑張らないとな。」
「ああ、第二回小テスト団体戦で、勢力状況がどう変わるのか、その後の定期テストでと皆が思い、励みになる様にして行きたいね。」
「ふふ、チーム麻里子しか見えなくなるんじゃない? 他のチームは虫眼鏡を使って探して下さいってことになってね。」
「はは、俺を甘くみるな、顕微鏡サイズまで縮小されて泣くなよ麻里子。」
「ははは、そうなったら、俺がなぐさめてあげるかな。」
「おいおい、鈴木はそっちに付くのか、打倒チーム麻里子で団結しないとやばいかもしんないのに。」
「あいにく俺はフェミニストでね。」
「そ、そうか、ならばまとめて倒してやる。」
「ふふ、競ったり協力したり…、そうだ鈴木くん、これは完成するまで、省吾と美咲には内緒ね。」
「うん、了解、真ん中のハートをもう少し印象的にしたいしね。」
「あいつら開き直り過ぎだよな、からかう気もおきなくなってきた。」
「そんな二人にした張本人は、哲平じゃないの?」
「いや、麻里子でしょ。」
「ははは。」

 F組三国志か…、私たちの青春の一ページがそこに刻まれて行くってことなのかな。
nice!(8)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

奥田麻里子-04 [F組三国志-02]

「第一回数学小テスト団体戦の結果を発表します。」

「おっ、結果発表か。」
「俺、がんばったんだけどな。」
「ちょっと、ワクワクよね。」

 短期間だったけど、小テストに向けてやれることはやった。
 省吾さんの真似をして教え、メンバーの理解度を上げられたと感じている。
 黒川くんたちも積極的に教えてくれてた。
 ただ、それは他のグループも同様の筈。
 今は結果を受け止めるしかない。

「個人の結果は何時ものように張り出しますが、今回は先生にお願いして、私と省吾だけ先に見させて頂き、グループごとに集計しました。
 各チーム十一人となりましたので、合計点百十点での勝負です。
 一人十点満点、合計百十点中、チーム正信…。」
「うわっ、どきどき。」
「九十点、平均八点一八。」
「えっ、いつもの平均って三点とか、四点じゃなかったか?」
「続いて、チーム哲平…。」
「おお、神様~。」
「はは、哲平ったら。」
「九十二点、平均八点三六。」
「おお~。」
「そして、チーム麻里子…。」

 他が良過ぎたわね…。

「九十三点、平均八点四五。」
「うわ~、やった~!」
「姉御やったでござるよ。」
「一点差か~。」
「ちなみに学年の平均点が四点台ということを考えると、我がF組はダントツということになります。」
「お~、やったぜ。」
「すでに職員室でも話題になっているそうですが、先生からは不正の形跡なし、との言葉も頂いております。」
「当たり前だよな、スポーツマンシップにのっとりだったからね奥田キャプテン。」
「え、ええ…。」

「では、勝利チームリーダー、奥田麻里子さんから一言。」
「え~、っと、これだけの接戦だと、運良く勝てたという気もしますが、まずはチームのみんな有難う。
 今回は省吾さんの企画に乗ったって感じなのだけど…、数学小テストに苦しんでいたり、投げ出したりしてた、そんな私たちを、ここまで引っ張ってきてくれた省吾さんに、我らが省吾さんに感謝です。
 省吾さん、有難う。」
「でも、省吾は私のものですからね。」
「ははは。」
「それから、今回の団結をこれだけで終わらせず、これからもみんなでF組を盛り上げて行けたらと思います。」

 正直、勝てるとは思っていなかった。
 みんながんばってくれた。
 でもこれから…。
nice!(9)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

奥田麻里子-03 [F組三国志-02]

「麻里子のチームも十一人になったのね。」
「うん、黒川くんたちが声を掛けて調整してくれたお陰かな、昨日発表してもう締め切りだから少し心配してたけど、まだ遠足からの盛り上がりが残っているみたい。」
「十一人で揃ったから分かり易いわね、でも、メンバーのレベルはどうなの?」
「問題はそこなのよ、メンバーの実力が未知数でしょ、惨敗だったら嫌だわ。」
「麻里子の所には岡崎もいるしね。」
「どうしてここに合格したのか不思議でしょ、他には入学してからサボってた人がいてさ。」
「ふふ、私達のチーム哲平には勝てそうにないわね。」
「う~ん、負けたくないのだけど…。」

「ボス。」
「姉御。」
「な、なに?」
「ぼくたちのリーダーなんだからさ。」
「はあ?」
「やっぱり、奥田さんって呼んでもつまんないし。」
「岡崎はともかく星屋くんは…。
 そんなことより数学の方は大丈夫なの?」
「あっしはそれなりでやんすが、岡崎はたぶんだめでげす。」
「はいはい、じゃあ、星屋くんは岡崎の指導、お願いね。」
「姉御~、ちょっとそれじゃあ…、あっしの立場ってものが…。
 その~、もう少し手下にって感じで話して下さると…。」
「ふ~、じゃあ…、星屋~、岡崎のこと、ちいとしごいちゃってくれんかのぉ~。」
「へい、姉御、任せておくんなせえ。」
「そうそう、ここに省吾さまから頂いた参考資料がある、大切に使えよ。」
「へい、かたじけのうごぜえやす。」

 はぁ~、疲れる…、私ったら何やってんだろ…。
 星屋はゲームの意味勘違いしてそうだし。

「ねえ、奥田さん?」
「田中くん、何か?」
「テスト団体戦で、勝ったら俺とデートしてくんない?」
「それで、田中くんは、勝利に貢献出来そうなの?」
「俺はだめだけど、黒川とかいるからさ。」
「あのね~!
 もう~、田中、岡崎とか使って良いから、グループの子集めて!」
「うん。」
「はい、今すぐ動いて!」

 まったくも~。

「姉御、揃いやした。」
「うむ、ご苦労、じゃなかった…。
 みんなに話しておきたいことがあるの、テスト団体戦のことを勘違いしてる人もいるからよく聞いて。
 テスト団体戦を、いい加減なお遊びと考えている人もいるみたいだけど、私は勝ちにいきたいと思ってるし、それこそが団体戦の目的なの。
 私は哲平のような魅力はないわ、運動だって勝てっこない、でもねこのチームが団結したら、哲平にだって勝てると思ってる。
 まぁ、テスト団体戦というスポーツと考えて欲しいのよ。
 特に数学だめな人、手を挙げて…。
 五人か…、省吾さんからの参考資料は人数分コピーしておいたから、自分が何とかなりそうな人は資料を活用して苦手な人たちの面倒もみてあげて。
 学習する時は、まず、その内容のポイントをつかむ。
 そのポイントは教える時のポイントでもある。
 そして、教えることは自分が学習したことの再確認。
 これが省吾さんの教えなの。
 私に聞きにきてくれても良いわよ、省吾さんのおかげでそれなりに理解出来たから。
 で、いい加減な気持ちの人は、即、チームから出てって欲しい。
 最初は哲平たちのグループに人数でも負けたくないって思ったけど、もうそんなことどうでも良いから、勝ちに行く気のある人だけ残ってね。
 はい、解散!」

 ぱちぱちぱち…。

 えっ、拍手?

「かっこいい~。」
「俺はついていくぜ!」
「私も。」
nice!(8)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー