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星屋和彦-05 [F組三国志-03]

「それでさ、和彦に提案というか相談があるのだけど。」
「和彦って呼ばれなれてないからなんか照れくさいです。
 でも…、もっとお師匠さまが門下生にって感じで話して下されば…。」
「う~ん、まあそこらへんは今後使い分けていくよ。
 ねえ和彦は今まで、リーダー論とかって考えたことある?」
「えっ、全然ないです、自分はリーダータイプではないですから。」
「俺はよく考えてるんだ。
 親父は教育の観点からよく話してくれるし、おじさんたちが遊びに来るとそんな話題で盛り上がるからね。」
「さすが…、家庭環境が自分とはずいぶん違います。」
「はは、そんな中でね、一人の叔父さんがいつも話すのは、教育の過程で集団やリーダーのことをきちんと学ぶ場が足りないってことでね。」
「集団やリーダーのことを学ぶ?」
「うん、数学や英語と同じように、きちんと学校で教えるべき、否、考える時間を作るべきなんだって。
 学校では、部活を通してとかクラスの運営を通してとか、せいぜい道徳の時間ぐらいでしか扱っていないけど、人間が社会の中で生きて行く時に、とても大切なことだろ。
 俺たちは社会の中で色々な集団に属しているけど、それぞれの集団との関わり方は様々だよね。
 個々の集団の目的にもよるし。
 でも、そんな中で、それらの集団とどう向き合って行くのか、その集団に於けるリーダーの役割なんてことをメンバー一人一人が考えて、その集団をより良いものにしようとしたら、その集団の目指してる成果に良い影響を与えると思うんだ。」
「はい、何となく…。」
「身近な例を挙げるとさ。
 チーム麻里子という集団を考えた時、チーム麻里子はテスト団体戦での勝利を目標とした。
 リーダーの麻里子はチームのみんなに明確な目標を提示し、檄をとばしたからね。
 それに対して、主に和彦、黒川、舘内さんの三人が動いた。
 この三人は集団の中で、教える立場になるのは自分だと判断し、それを実行した。
 そして岡崎たちは引っ張ってもらってでも高得点を取ることが、この集団の中での自分の役割だと認識してそれを実行。
 トップで引っ張った麻里子、それを支えた三人のサブリーダー、そして自ら頑張ったメンバーたち、この三者がうまくかみ合ったからこそ、チーム麻里子というチームは成果を出せた。
 そう、トップリーダーの麻里子だけの力じゃないってことだよ。」
「確かにそうです、田中や岡崎、平岩にも、なんとかしようって気持ちがあったから…、彼らは頭が悪い訳ではないですし。」
「でも、問題はこれから。
 今の状態を維持出来るのか、さらに上を目指せるのか、それとも後は下降線になるのか。」
「そうですね、高校受験が終わって気の抜けてた人たちが、今回のテスト団体戦で気合を入れ直したってとこです、でもそれを続けていくのは難しいかもしれません。」
「そこで、集団やリーダーということを考えてみて欲しいと思ったんだ。
 もちろん、チーム麻里子のことだけではなくね。」
「はい。」
「リーダー論って言うと、麻里子みたいな立場の人の話しだと思う人が多いけど、それだけじゃない。
 リーダーの補佐をしながらリーダーを育てるという考え方だってあるし、リーダーを生かす部下という考え方だってある。」
「あっ、リーダー論というのは単純にリーダーだけの話ではないのですね。」
「うん、組織論でも有る。
 F組という集団の中で、和彦の位置や役割をどうして行くか、というテーマはどうかな?」
「全く考えたことなかったですが…、お師匠さまの気持ちは分かります…。
 えっと…、考えてみます。」

 お師匠さまは、自分に足りてない部分について考える様にアドバイスして下さったのだと思う。
 F組という集団に対して、お師匠さま達と自分とでは関わり合い方が全く違う。
 それでも、小テストの企画を通して少しだけ…。
 えっと、集団の一員として前向きに動いたと認めて貰えた。
 こんな自分でも仲間だと…。
 自分の役割…。
 中学時代とは違う自分にならないと姉御やお師匠さまをがっかりさせる事になるだろう…。
 変われるのかな…。
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