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挑戦-01 [シトワイヤン-07]

殺人事件に対する自分のコメントには多くの批判を頂いた。
実際の事件に対してまともに向き合っていなかったのだから当然だろう。
まあ、想定内の事だったので気にはしていないが、翌日の番組…。

「和馬、昨日の殺人事件からのコメントには様々な意見を頂いたわね。」
「はい、嬉しいです。」
「批判的なのも少なくなかったみたいよ。」
「無視されるより良いです。」
「昨日話してた、分析チームはどう?」
「多くの意見を頂いた事でやる気になっています。
 梅子姉さん、昨日の話しに少し付け加えさせて頂いても宜しいですか?」
「そうね、昨日見て無かった人もいるでしょうから。」
「では…、色々な犯罪が有り犯人が存在する訳ですが、そうですね、何時、殺人事件を起こす様な人物になったのか、という視点は如何です?」
「ふふ、いきなり殺人を犯す様な人になったとは考えにくいわね、そこに至る過程か…。」
「単純では有りませんが、子どもの頃からキレ易かった人が、幸せな社会集団の一員と成れなかったとか、反社会的組織にしか居場所がなかったという例が考えられます。」
「類は友を呼ぶということね。」
「ここには、貧困問題や学校の問題、男女間のトラブル、職場の問題などが絡んで来きます、いじめの問題、進学時の挫折、就職したらブラック企業だったとか、まずは犯罪者を生み出した環境やその過程をイメージして欲しいのです。」
「う~ん、色々有り過ぎて困るけど、和馬の言いたいことは分かるわ。」
「はい、数多くの問題が存在すると思うのですが、その一つ一つを正していかないと、社会は良くなって行かないのではないでしょうか。」
「そうよね、問題は山積みです、と話しているだけでは何も変わらない…、でも私達に出来る事は有るの?」
「小さい事から一つ一つ見直し、法改正が必要だと感じたら法案をまとめ与党に訴えます、一般市民の意識改革をすべきだと考えたら、皆さんと議論を深めたいです。
今は、競争社会が行き過ぎた状態に有り、勝ち組負け組、貧富の差となっていますが、拝金主義者の方には少し人に優しくなって頂いて、低所得労働者の賃金が上がれば、内需の拡大に繋がります。」
「それも意識改革なのね。」
「はい、拝金主義者の意識改革はとても難しいと思いますが。」
「それでも和馬は取り組んで行くのでしょ。」
「ええ、自分が、というより市民政党若葉が打ち出した方向性です。」
「番組をご覧の方に理解して頂けるかどうか分かりませんが、私が番組に招いた和馬というのはこんな男なんです。
それで、番組としては、今後、あちこちの番組で報道されてる事件事故に関しては簡単にお知らせするだけにし、和馬と共に社会問題を分析するだけでなく、実際に良い方向へ向かわせる事が出来るのかどうかを検証して行きたいと考えています。
勿論、一つのコーナーですので、他のコーナーはそのまま、実験的な取り組みになりますが宜しくお願いします。」

これは本当に実験的な取り組みとなると思う、なにせ社会には問題が山積みなのだから。
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挑戦-02 [シトワイヤン-07]

予想はしていたが、自分が使った拝金主義という言葉と親父が社長だという事を結びつけ、揶揄する反応がそれなりに有ったみたいだ。
翌日の放送。

「和馬は注目されているのね。」
「お蔭さまで、嬉しい限りです。」
「お父さまのことは良いの?」
「ろくに調べもしないで会社のイメージダウンを計る人達に対して、法的に対処すべきかどうか検討しているそうです。」
「ここで、はっきり説明したら?」
「そのまま会社の宣伝になってしまいますが良いのですか? 」
「犯罪者が育つ過程より、和馬の背景に対して興味の有る方の方が多いと思うわよ。」
「そうですね、社長イコール拝金主義だと短絡的に考える方には理解出来ないかも知れませんが、父の会社は所謂優良企業、大企業では実現しにくい高レベルな職場環境を実現してると若い社員の方が誇らしげに話してくれます。
と自分が話しても信じて頂けないでしょうから…、そうだな、清香、VTRにまとめてくれるか?」
「はい。
梅子姉さん、和馬のお父さまは素敵な方なのですよ。」
「そうみたいね、息子を見れば分かるわ、どう、知る人ぞ知る柚木社長のことも紹介したら?」
「ふふ、うちの父の方がより拝金主義者に近いと思われていそうですものね。
私達の紹介は先週で終わりと考えていましたが、康太や愛華の注目度も上がっています。
VTRは長くするより、本数を増やした方が宜しいですか?」
「ええ、清香さん達が頑張ってくれると番組スタッフの気が緩みそうだけど、でも安心してね問題外のスタッフには永遠の夏休みを差し上げますから。」
「ここの仕事に向いてない方々ですね、でも、どうしてこの仕事を選んだのか、どうしてまともに働けないのか教えて頂きたいと思います。
夏休みになったら、ひきこもるのか、犯罪に走るのかも含めてですが。」
「清香さんの周りにはいないタイプなのね、私達で研究してみる?」
「あっ、私は大丈夫です。」
「近づきたくないのね、お~い、責任者、最近怪しげなスタッフ増えてない? 大丈夫?
清香さん、番組内容だけに大ナタ振るうと思ってる輩もいるけど、スタッフにも喝を入れていくからね。」
「はい、実験的、挑戦的な企画の足を引っ張る存在は必要ないと思います。」
「と、まあ内部事情も紹介させて貰ったのですが、CM前に和馬から一言どうぞ。」
「何も知らないのに調べもせずに、SNSで誹謗中傷した皆さん、恥ずかしくなると思いますので、この番組を見るのは、やめた方が良いかも知れませんよ。」
「和馬、視聴率下がったらどうするの?」
「はは、御免なさい。」
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挑戦-03 [シトワイヤン-07]

生意気な大学生という自分の立ち位置に対して視聴者の賛否は分かれているが、勿論それは当初より狙っていたこと、当たり障りのない発言ばかりでは面白い番組にはならない。
自分の場合、所謂芸能事務所に相当するのは株式会社和馬、自分が余程叩かれても然程問題にならないと考えている。
番組の大幅なリニューアルは今の所成功、視聴率を上げているのは愛華たちが注目を集めている事にもよる。

「うちのママは改めて和馬の才能に驚いているわ。」
「えっ?」
「時事問題ではいきなりアンチを作る様な発言をしながら、梅子姉さんとはボケたり突っ込んだり、私達が絡むと、ほんわかムードになる、変化が有って楽しいんだって、やはり計算してるの?」
「計算と言えば計算なのかな、梅子姉さんとのトークはアドリブ合戦で楽しいし、愛華たちの顔を見てると自然と和むからな。
ねえ、現場スタッフは椅子ネタを続けそうだけど、そっちはどう?」
「あれは微妙よね、私の椅子を和馬の椅子とくっ付けて仲良しアピールかと思いきや、次のコーナーでは和馬から離されてイケメン俳優の隣とか、私を軽い女に見せたいのかしら。」
「はは、コーナーごとにメインで映る人は変わる、愛華を一秒でも長く画面に入れておきたいと考えてのことだろう、間近で見た俳優はどうだった?」
「どこにでもいる普通の人、紹介の時、和馬がドラマに興味が無くて知らないと答えたのには、流石に引いてたわね。」
「嘘がばれると面倒だからな。
嘘つくくらいなら黙っていようと思ってたのだけど梅子姉さんが面白がって…、そんなに有名な人だったのか?」
「ええ、翌日、私が大学で囲まれ、会った感想とか聞かれまくるぐらいにね。」
「君を取り囲んだ人達は、党のグッズを買ってくれそうか?」
「たぶんね、普通なら市民政党若葉かWAKABAとロゴを入れる所に、Citoyenとお洒落なロゴを使用、シャツ、トレーナー、ジャケットのサンプルを、学生やスポンサー企業の皆さんに見て頂いたら、すぐに注文が入り始めて製造計画を前倒しが決定したそうよ。
ネット販売が中心になるけど、Citoyenブランド専門店をオープンさせる計画も出て来てるわ。
一人で着ているだけでは市民政党の宣伝にならないのが欠点だけど、上質の素材を使いお洒落に着こなせる様デザインに気を配っているのが特徴で、学生スタッフの評判も上々なの、市民政党のグッズとして購入を考える人とCitoyenブランドの服として見てくれる人、両方に興味を持って頂ける、販売数が伸びない場合の展開も考えて有るから安心してね。」
「その時は俺も番組で宣伝させて貰うが、まあ、バックに愛華ママと柚木社長がいるから心配してないよ。」
「そうね、取り敢えず各種タオルセットは、党員が気軽に購入出来る物から贈答用まで販売体制が整ったそうで、来週から正式販売になるわ。」
「党の先々を考えた時、大きな資金源になりそうかな?」
「ふふ、なりそうとかではなく、大人達は資金源にすると言い切ってるわよ。」

番組出演は俺達にとって大きな挑戦、だが、市民政党若葉の党員たちも大きな挑戦を考えている。
それには、資金が必要なのだ。
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挑戦-04 [シトワイヤン-07]

自分達が番組レギュラーになるタイミングで、市民政党若葉のサイトには番組関係のコーナーを作って貰った。
ここでは、番組で自分たちが取り上げた話題をさらに掘り下げたり、アンケートを実施したりする他、清香や愛華の写真付きリポートも掲載して行く。
社会問題を分析し改善策を検討して行くチームの研究結果も、ここで発表して行く予定、表向きは番組二週目に発表させて貰ったが準備は進めていたのだ。

「党発起人会として番組関係のコーナーを持たせて貰うことに反発はなかったみたいね。」
「党の皆さんが作り上げた方針に沿って活動すると分かって頂けてるのだろう。
サイトの設立、運営は発起人会がして来たことでも有るからな。」
「でも、そろそろ被選挙権の有る党代表を決定して頂きたいです。
始めは理想を考えるバーチャル政党でしたが、今は現実も見据えリアルにも影響を与える存在に向かっています。」
「そうよね…、バーチャルからリアルへ、空想から現実へというのを党代表選挙のキャッチとして提案しようかな。
でも、党の代表選挙までには時間が掛かりそう、名前だけの(仮)代表から、党の意思決定権を持つ暫定代表に交代することで、どんな問題が発生するのか見極めるのが一つの目的なんだから、もう少し簡単でも良さそうなのにね。」
「折角、気持ち良く形成された党が…、悪意はなくても変な形になってしまっては面白くないと、皆さん考えておられるのでしょう、愛華、焦る必要は有りません。」
「ただ、党が和馬中心のものではないと世の中の人に知って欲しくは有るよな、一気に注目を集めている今、もう少し党の幹部を目立たせる術を、別で考えるべきかも。」
「そうね、市民政党若葉をしっかり取材して番組にしたいという依頼が来てるけど、敢えて和馬や私達の出番を少な目にとお願いしましょうか。」
「はは、愛華や清香目当てで見る人を裏切るのか?」
「全く出ない訳じゃないから大丈夫、メインは私達が会ったこともない、党を形作って下さった方々にすべきでしょ。」
「その中には党の代表候補も含まれるのかな?」
「根回しは進めて貰っているけど…、康太、給料の話はどう?」
「明日、現時点で党執行部に出せる給与総額を発表する、そこからどうするかは…、代表がいないと決めづらいかもしれないが、逆に皆さんの考えを掘り起こせるだろう。
どうしても決まらないのなら(仮)代表が決めてしまって良いんじゃないか。」
「そうよね、所詮暫定代表の給料な訳だし、その資金は発起人会が頑張って集めたもの、誰も文句は言えないわ。」
「問題は、リアル政党の党首と違い議員報酬がないことです、今後も収入源が問題になりそうです。」
「だよな、愛華、本はどうなってる?」
「一冊目は、市民政党誕生の話を簡単にまとめて出版社の編集と調整中、番組が注目を集めているから写真を多目にして早目に出したいみたい。」
「タイミングは重要だろうね。」
「ええ、一冊目を簡単にする代わりに、二冊目に取り掛かる話も来てるわ、時間を取られたくないから一冊目以上にライターの比重を増やしての作業をと考えてるのだけど。」
「じゃあ、俺達はインタビューに応える程度で良いのか?」
「多分大丈夫、和馬が番組で話した内容も含めて整理して貰うことになると思う、康太も原稿にはじっくり目を通してね。」
「ああ、言ってもいないことを書かれては問題になるからな、あっ、ライターの比重が増えるとこちらの取り分が減るのか?」
「今は、そんな細かいことを気にする時では無いと思う、兎に角目立って行けば、株式会社和馬の収益は自然と増えるわよ。」
「それは分かるが、どんぶり勘定では駄目だろ。
和馬が考えてる方向に進んだら、サイト関連で社員を増員する必要が出て来る、党の明日を考えたら資金は幾ら有っても足りないが、まずは必要額を見極め、確保して行きたいからね。」

康太は社長になってから視野が広がったと感じる。
役職が人を育てるということだろうか、そういう自分も番組のメインコメンテーターとして修業中なのだが。
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挑戦-05 [シトワイヤン-07]

番組コメンテーターとして試行錯誤を繰り替えした結果、四月の終わり頃には自分のスタイルが固まり始めた。
例えば…。

「そうすると和馬は基本的に政府の案を支持するのね?」
「はい、多くの国民が利益を受けると思います。」
「では野党が反対している意味は?」
「年収に大きな差の有る人を同じに扱えない内容で、制度上の線引きが必要になります、野党はその辺りの線引きに甘さが有ると指摘しています。」
「和馬は、それを気にしないというスタンスなの?」
「いえ、市民政党若葉では修正案を提示させて頂いています、政府関係者が見て下さるかどうか分かりませんが。
ただ、野党の方が訴えているほど、悪い法案だとは考えていません、それは…。」

番組で取り上げられるネタは市民政党で検討済みの事が多く、一通りの解説は出来る。
その過程で、あくまでも市民政党党員対象の偏ったアンケート結果だと強調しながら、そのアンケート結果を紹介させて貰うことも。

「そっか、市民政党の党員に限れば、この法案は通して良いと考えてる人が多いのね。」
「はい、ですが修正案を取り入れて貰えれば、その割合は更に増えるでしょう。」
「基本的に和馬は党が出した結論に賛成なの?」
「はい、党の方向性に納得していますが、それを自分なりに考えた上で自分の意見として話させて頂いてるつもりです。」
「アンケートに応えて下さった方も…、ねえ、和馬、先回アンケート結果を教えてくれた時の回答者数は三千人ぐらいじゃなかったかしら?」
「はい、今回は一万人を超えましたね、党員はうんと増えているのですが、アンケートに対する回答を強要していませんので、この人数です。」
「へえ~。」
「番組で行ってるアンケートは如何です?」
「そうね、うんと小規模だけど、和馬が色々な視点で話す事には好感が持たれているみたいよ、自分の考えをはっきり話しているしね。
今はフェイクニュースも普通に流れていそうじゃない、和馬を見習って、そういうのに流されない様にしたいと書いて下る方もいらしたわよ。」
「有難う御座います、でも梅子姉さん駄目ですよ、アンチさんの意見を優先的に出して下さらないと。」
「そうね、ただ、和馬のアンチはもう番組を見て下さらなくなってしまったのか減ってしまってね、面白いのが有れば紹介するのだけど。
番組宛てのメールでも良く分からないのしか届かないのよ、和馬、そろそろアンチを増やす暴言でもぶちかまさない?」
「えっ、良いんですか、暴言では有りませんが、梅子姉さんのあんな事やこんな事…。」
「うっ、ちょっと待って、どうしてそうなるの?」
「私の情報網を甘く見ていましたね、先週の土曜日、若い男と共に過ごしたというネタは上がっているのですよ。」
「うん、甥っ子の誕生日でね、可愛い盛りの五歳なんだけど、何よ、誕生パーティーに呼んであげなかった事を僻んでるの?」
「いえいえ、自分は清香と愛華と三人で遊びに行ってましたから。」
「青春してるのね、週刊誌に写真を撮られたりしてない?」
「自分達はアイドルでは有りませんからね、勿論週刊誌が出鱈目な記事を書いたら訴えますが。
梅子姉さん、勝手に撮られた写真が雑誌に掲載される時って、それなりの使用料が支払われるのですか?」
「多分ね、私は事務所任せだから分からないけど。」
「う~ん、こちらから料金設定をしておこうかな。」

これだけの話で俺達の三角関係を羨みやっかむ声や、俺を拝金主義者だという人が出て来る。
そして翌日は政党資金を稼いでる話をさせて貰う訳だ。
株式会社和馬の会計は公開されていて、自分達の給料も明示してある。
週五で働く拝金主義者の給料が二十万なのを追及出来る人は僅かしかいないだろう。
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挑戦-06 [シトワイヤン-07]

市民政党若葉では、幾つかの社会問題に対する分析と提案がまとまり始めている。
まだ、大きく公開して行くレベルではないが、いずれ、そこから法改正や意識改革をアピールし、それを党活動の柱として行くのが党の方向性だ。
形が出来始めたら番組でも紹介させて頂く。
四月にリニューアルした、その番組は五月中旬になってもそれなりの視聴率を維持、結果としてか他番組からのお誘いがあった。

「ひな壇の人数は多いが、MCの多田さんはプロだ、和馬たちなら埋もれる事はないだろう。」
「他人事みたいに…、康太は出ないつもりなの?」
「絶対三人の方がバランスが良いよ、俺は雑誌系の取材依頼に応えて行く、和馬、そろそろ炎上しそうなネタをぶち込めな、大人しい話題ばかりでは注目度が上がらないぞ。」
「そうだな、レギュラー番組では出しにくいネタを披露してみるかな、しかし、話が有って録画を見たが、出演しているのは一癖二癖有りそうな人ばかりだった、敢えて爽やかさを強調してみるのはどうだ、清香?」
「番組サイドが何を求めて来るかによりますが、和馬には爽やかさの中にもインパクトを残して欲しいです。」
「そうだな、まずは雰囲気を変え…、清香と愛華をアピールしつつ…、視聴者層が違うと思わないか。」
「私達の事を全く知らないという方も多いでしょう、私は構いませんが、多田さんは毒舌キャラです、受け応えに窮したら守って下さいね。」
「ああ、相手の出方次第だけど…、もう少し録画を見て研究しておくよ。」

三人で出演した日曜日の番組、俺達は番組開始後大人しくしていたが…。

「君達が立ち上げた政治団体では、代表選挙を行うそうだね、瀬田くんは代表の座を降りるの?」
清香が応える。
「元々、瀬田和馬は仮の代表なのです、スタート時点で代表が必要でしたので瀬田を仮の代表としました。
ですが本来、代表は党員の選挙によって選ばれるべき、更に国政選挙などの被選挙権をお持ちの方にお願いすべきだと考えておりました。」
「瀬田くんとしては団体の発展に貢献するが、党はあくまでも党員のものだと言うことなんだね。」
敢えて愛華が応える。
「勿論です、市民政党若葉の主張は、まだ小さな声に過ぎませんが、いずれ市民の声として大きな力を持って欲しいと考えています。
選挙の時には、魅力ある政党、魅力ある候補者を選びづらく、仕方なく妥協して投票をしているという声を聞いています。
私達は、その妥協の必要を無くして行きたいです、道のりは遠いですが。」
「だろうね、君達の前に立ちはだかる障害は?」
「費用の問題が大きいですが、それをクリア出来ても、国民の皆さんが納得する候補を立てられるかどうか分かりません。」
「うん、人格者を見つけるのは難しそうだね。」
そこへ、ひな壇席からの突っ込み。
「多田さん、今日はやけに優しくないですか?」
「はは、真面目な子を相手にしてると、素の自分に戻ってしまってね。」
「何、格好付けてんです、先週来た子のことは罵倒してましたよね。」
「良いんだよ、奴はおバカを売り物にしてるのだから
おっさんの方こそ、真面目な私達の話について行けてるのか?」
「馬鹿にしくさるな、バーチャルで始まった市民政党がリアルの国会議員候補を擁立出来るかどうかだろ、いっそ多田さんが立候補したら?」
「はは、そんな余裕有りませんよ、合田さんと違って。
まあ、こういう仕事をしてるから政治に関心が無い訳じゃない、でも国会議員って実際何をしてるんだろう、ねえ、瀬田くん?」
「国会の場では、居眠りをしたり、寝ない様に野次を飛ばす。
採決の時は党の方針通りに一票を投じる、それぐらいしか思い浮かびません、それ以外は謎です。」
「だよね、合田のおっさん、分かる?」
「あのな、ボケにくくて難しいネタを俺に振るんじゃないよ!」
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挑戦-07 [シトワイヤン-07]

「清香さんは、この、おっさんのこと知ってた?」
「いえ、何をされてる方ですか?」
「ちょいちょい、それはないでしょ、これでも芸人の端くれですよ。」
「売れないね。」
「うっさいわ、どうせ多田先生の足元にも及びません~。」
「合田さんはどんな芸をなさるのです、先日、愛華たちと水族館で見たアシカの芸は楽しかったのですよ。」
「えっ。」
「そこで直ぐに返せないレベルなんだよな、アシカの芸にも及ばないね~。」
「ちょいちょいちょいちょい待って下さい多田先生、御嬢さん宜しいですか『おとこ合田、芸歴それなりブレイクなしの一発なし、それでも生きて行けるんや~!』って聞いた事有るでしょ?」
「和馬、こういうのをギャグというのでしょうか?」
「たぶんな、売れない芸人でも生活には困らないということなんだろう。」
「おいおい…。」
「では、そんな、おとこ合田に関して番組からのお知らせです。」
「な、何も聞いてない…。」
「合田のおっさんには、それなりの芸歴を活かし国会議員選挙に立候補して頂く事になりました。
その過程を番組で追いながら国会議員を考える企画です。」
「立候補なんて無茶でしょ、今時こんなドッキリ駄目ですよ。」
「でも、仕事欲しいでしょ。」
「そりゃあそうだけど…。」

「番組企画『おとこ合田、目指せ国会議員!』、さあ合田さん、国会議員当選に向けての意気込みをどうぞ。」
「はい、頑張って国会議員になり故郷に錦を飾ります、皆さん応援よろしくお願いします。」
「はい、良く出来ました、瀬田くん、これで良いのかな?」
「大丈夫だと思います。」
「何が大丈夫?」
「これから合田さんが国会議員を目指して頑張る姿の下には『公職選挙法に抵触しますので、合田さんが実際に立候補することは有りません』とテロップが流れます、合田さんは実質的に衆参両院議員の被選挙が無くなるのです。
一人だけ、先走って国会議員になりますとテレビで言いまくるのは反則なんです。」
「では、国会議員を目指す企画だけど、立候補はしないという事か。」
「ええ、それでも合田さんが立候補するのなら視聴者の方が一票入れたくなるぐらいには頑張って下さい、梅子姉さんも期待していますので。」
「仕事が増えても、家庭は大切にな。」
「はあ、よう分からんけど頑張ります。」
「『おとこ合田、目指せ国会議員!』は、合田のおっさんが国会議員を目指す姿を通して議員という存在を見直してみようという企画です。
公職選挙法を確認しながらになりますが、与野党議員の方にも協力して頂けたらと考えています。」

この企画の原型は、株式会社和馬から局への持ち込んだもの。
国会議員が普段何をしているのか、それを一人の議員に密着取材して番組にしたら、選挙の公平さを欠く事となる。
そこで、バーチャル議員候補を誕生させた訳だ。
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挑戦-08 [シトワイヤン-07]

『目指せ国会議員!』関係の話を終えて自分の役目は終り。
後は、愛華や清香に話を向けて貰う事になっている。
最近の流行り物を紹介するVTRが流され、トークが進み…。

「愛華さん、おじさんとしては、最近の女子大生が何に興味を持ってるのか知りたいのだけど。」
「私には分かりません、多田さん、全国に女子大生が何人いるかご存知ですか?」
「まあ、沢山いるだろう。」
「私は、自分以外の学生が何に興味を持ってるかなんて、清香のことぐらいしか分かりません。
ですから、女子大生の代表が如く話すなんて恥知らずなことは…、でも普通の女の子が何に興味を持ってるかなんて、多田さんなら私に聞くまでもないのでは有りませんか?」
「はは、確かに聞き方を間違えたね、愛華さんは瀬田くんのこと以外で、今は何に興味が有るのかな?」
「そうですね、Citoyenというブランドを立ち上げて間が有りませんので、どうしてもそれに関係することになります。」
「えっ、君が立ち上げたの?」
「いいえ、仲間と共同で立ち上げたブランドです。」
「新規ブランドか、経営的にはどう?」
「すでに初期投資の回収は見えています。」
「何となくだけど、市民政党って営利とは結びつかないでしょ、党員の皆さんは君がそういう活動をする事に反発を覚えないのだろうか?」
「システムを維持して行くのにだってお金が掛かっています、政治とお金の問題は有りますが、どの政党も組織を維持する為の資金は必要です。
運営会社の社員が、安心して結婚し子どもを育てられる状況に出来なければ、市民政党若葉は続きません。」
「選挙だと、ボランティアというイメージが有るのだけど。」
「はい、私達も多くの方に助けて頂いてますし、そうでなければ市民政党の拡大は有り得ません。」
「でも、実際の選挙に候補者を擁立することは当分無いのでしょ?」
「そうですね、議論はされていますが、直ぐには、でも資金面の準備を進めて行きたいと考えているのです。」
「今はスポンサーに支えられているのかな。」
「はい、その他に広告収入、私達の番組出演料、そして、党のグッズとして販売しているCitoyenブランド商品の売り上げとなります。」
「そうか、市民政党の事を始めて耳にした時は大学生のお遊びかと思ったけど、先の事も考え真面目に取り組んでいるんだね、Citoyenブランドの宣伝はしなくて良いの?」
「私達の服がそうです、ちなみに清香と私の着ている服は色違いですが、服の形は同じなのですよ。」
「あっ、着こなしで雰囲気が変わるのか、まあ、美人は何を着ても似あいそうで得だよね、ねえ…。」
「こっち見るな! ここでアップにすな! 女の武器はルックスだけじゃないの!」
「はい、自称美人コメンテーターの公開処刑が済んだところで…。」
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挑戦-09 [シトワイヤン-07]

「多田さん、儂ら暇なんだけど。」
「今は愛華ちゃんと話してる、番組進行の邪魔をするつもりなのか?」

多田さんは何時もなら、番組中、ひな壇ゲスト達をバランス良く回して行くらしい。
そこを今回は、清香と愛華を中心に多くの時間を裂き、他のゲストから突っ込ませることで盛り上げた。
番組終了後、多田さんと食事を共にさせて頂く。

「君達は若いのに場馴れしてるね。」
「梅子姉さんに鍛えられていますので。」
「いや、それにしてもだよ、芸歴それなりの合田さんには色々見習って貰わないとな。」
「新企画を合田さんで進めると決めたのには特別な理由が有るのですか?」
「今回は真面目さ、お酒は飲まないし、奥さんと仲が良くて多分浮気はしていないだろう。
あまり面白くない奴なんだが、滑舌は良くてリーポーターとかやらせると分かり易いんだ。
この機会にキャラを変えさせるのも有りだな。
それと…、まあテレビ制作現場の嫌な話だが、彼の幼い娘は事故で大きなハンディを抱えてね。
勿論彼は、それをメシの種にする気は無いのだが、上の連中は番組制作上プラスになると考えたのだろう。
本人には家族を出さずに番組を成立させることや、もし娘を番組に出すことになっても、変なお涙頂戴ものにしない様に言い聞かせるつもりだけどな。」
「そのことは梅子姉さんもご存じなのですか?」
「ああ、俺達は所属事務所が同じなんだ、大人の事情も色々有ってね。
政治に対する国民の不満を明らかに出来れば、局に対する視聴者の評価が上がるだろうとか、まあ、瀬田和馬の人気に便乗しようという魂胆だよ。」
「はは、自分はそんなに人気有りませんよ、アンチが多いですし。」
「いやいや、視聴率に現れているよ、番組リニューアルの物珍しさで上がった視聴率が、落ちる事無く続いている、それにあやかった今日の放送も、SNSで盛り上がったみたいだ。
まあ、いつもとは若干流れを変えた成果でも有るがね。
良かったら月イチで構わないから、今後も出てくれないかな。」
「う~ん、清香はどう?」
「月イチなら、毎回Citoyenの新作を発表出来ます、多田さん、今回は私達で遊ばれましたが、次からは違いますよね?」
「今回は思いっ切り特別扱いしたからな、でも君達なら需要が有る、お嬢様ネタ、三角関係ネタだけでなく、受験の話や梅子姉さんとのエピソードとかね、視聴者は美人から話を聞きたいのだよ、ラジオではなくテレビなのだからね。」
「毎回三人で宜しいのですか?」
「君達次第では有るが、私は三人一組での活動を大切にして欲しいと思う、今まで無かった形のユニットだからな。」
「ふふ、番組に呼ばれてお話しさせて頂くだけのユニットなのですね。」
「話題は豊富に有るのだろ?」
「はい、和馬のお父さまに教えて頂いたエピソードだけでも当分は大丈夫です。
私達は適度に話を盛る、という研究をしていまして、度が過ぎると嘘になってしまう絶妙なラインは多田さんのトークを参考にさせて頂いてます。」
「その研究成果が今日のトークにも活かされていたのかな?」
「まだ未熟ですが、今日は多田さんに引っ張って頂いて色々学ばせて頂きました、今後ともご指導の程宜しくお願い致します。」
「はは、大したことはしてないよ。」
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挑戦-10 [シトワイヤン-07]

俺達のテレビ出演はそれなりに成功していると思う、党員は順調に増え、党のグッズでもあるCitoyenブランドは、順調にその売り上げを伸ばしている。
議員のいない市民政党の代表選挙といった話題が、ささやかながらもニュースにして貰えたが、その延長で…。

「和馬、市民政党が市議会選とかを視野に入れてると出てしまったが、流石に全面否定は出来ないだろ、新代表はどう対処するのかな?」
「正直にお話しさせて頂く方向で調整してるみたいだよ、党員なら知ってることだし、総務省に確認を取り公職選挙法を確認しつつ間違いの無い様に進め、まずは事前運動に当てはまる行為に関しての注意事項をサイトに上げるそうだ。」
「事前運動か…。」
「俺たちは、地方選挙の話題には触れない方向で行こう、今後、出馬が決まったとしても無視だな。」
「分かった、気を付けるよ。」
「市民政党若葉所属を名乗りたい人の、所謂身体検査が進んでいると聞いたわ。
選挙に関係なく党所属議員が誕生しそうなのでしょ、そっちでも気を付けなきゃいけない事が有りそうよね。」
「彼等からは市議会や町議会の現状報告をして貰っているからな、問題のない人なら応援したい、でも、地方議会の議員ってあまり力は無さそうだろ、やはり市民政党若葉推薦の市長を誕生させたいね、推薦なら、こちらの懐も痛まないし。」
「宣伝効果を考えたら市民政党若葉の公認候補でしょ。」
「愛華、市長や知事は無所属で広く票を集めたいと考えるみたいだぞ。」
「そっか、でも党員数だけ見たら与党とはすでに互角でしょ、推せる人が見つかったら何とかならないかしら?」
「知名度や人柄的に問題のない人が簡単に見つかるとは思えません、今は市民政党若葉と協力関係にありたい、所属になりたいと思う市長を増やすことを優先で如何でしょうか。
選挙には触れず、地方行政を学ばせて頂くという形で、私達が市長や県知事と対談させて頂くのであれば、番組サイドも喜んで頂けると思うのです。」
「そうだな、俺達の夏休み中に実現出来ないか検討して貰おう、その前に何処へ行くかが問題だね。」
「和馬は海と山、どちらへ行きたいですか?」
「そうだなって、清香は遊び半分なのか?」
「良く働き良く遊べですよ、私達を歓迎してくれそうな市民政党寄りの知事や市長は調べて有ります、観光地を紹介して差し上げれば喜んで頂けます。」
「はは、清香に任せるよ。」
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