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夏休み-91 [花鈴-10]

「そうですね、住み慣れた家で一人暮らしの方が気楽だと話す御老人がいらっしゃいました。
 デイサービスに行ったり移動販売で買い物したりと人に会わない訳ではないそうですが、自分のことを自分で出来てる内は今の家で暮らすつもりだとか。
 畑仕事は良い暇つぶしだそうで、収穫に来てくれるのなら野菜を多めに栽培して下さるそうです。」
「へ~、そんな感じなのね、私はずっと家族四人で暮らして来たから全然分からないわ。
 それでも収穫の時に人とコミュニケーションを取れるのは嬉しいのかしら?」
「だと思います。
 少しずつの収穫になりますので効率は悪いかもですが、お年寄りにとっては楽しみが増えるのだと思います。」
「野菜が取れる時期は安否確認がこまめに出来ると言うメリットも有るのですよ。」
「冬場は寂しくなるのでしょうか?」
「一応手作り民芸品を作って貰う計画は有るのだけど、まだ下準備の段階、暇つぶしに作って貰って店で売るの。
 デイサービスセンターで利用者の方が作っているのを見せて貰ったのだけど、お土産品として悪く無いと思ってね。」
「ここの冬場、雪はどうなのです?」
「積もることは有るけど、豪雪地帯って訳では無いから、大人達はうんざりするけど子ども達は喜んで遊んでるわよ。
 ここからならスキー場まで遠く無いことが移住の決めてになった社員もいるのです。」
「スキー場に近過ぎると雪で大変と言うことですか、ある意味程良い田舎なのかもですね。」
「ええ、住みたくなったら早めに言って下さいね、家の手配が有りますから。」
「空き家が有るのですか?」
「有るけど、改修して住める家は残り僅かなの、朽ち掛けた家は取り壊して立て直すしかなくて。
 でも部屋の余ってる大きな家が多いから、そこに同居と言う手も有るのよ、養子になればそのまま家が自分の物になると言うメリットが有る代わりに、様々な面倒事が付いて来るのだけど。
 うちの関係に就職なら社宅を用意出来るわよ。」
「雇って貰えますか?」
「コミュニケーション能力に優れている人は何処でも必要とされています。
 中沢さんと藤田さんは我が社への本採用を目指して自分達の仕事を創造しつつ有りますが、藤井さんなら父の下で働くと言う選択肢も用意出来ると思います。」
「花鈴姫は本社の人事にも関わっておられるので?」
「父からは有能な学生がいたらツバを付けて置く様に言われていまして。」
「自分は姫のお目にかなったのでしょうか?」
「お年寄りのアイドルだと聞いています。
 大学生でも高齢者の方と、相手を喜ばせられる程に上手く会話出来ない人が少なくないのです。」
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夏休み-92 [花鈴-10]

 藤井さんは人当たりの良さが抜群、彼らの企画で子ども達と遊んだ時も一番人気だった。

「藤井さんは教育学部では無いのですよね。」
「ええ、経済学部です。」
「小さい子の相手が教育学部の人達より上手でしたが。」
「人と接する時の基本は年齢に関係なく同じで、相手に興味を持って接しています。
 自分は子どもと接する機会が無かったので新鮮な気持ちで向き合うことが出来ていまして。」
「それは私も含めてですか?」
「勿論と言いますか、能力の高い小学五年生に自分は興味深々だったのです。
 自分だって優秀な子どもでしたから今の大学に合格出来たのですが、レベルが違うと感じています。
 徳沢が僕と化しているのにも納得していますよ。
 ですから今度のキャンプは楽しみでしか有りません。」
「私達五年生の五人との合同英語キャンプね、英語が飛び交うのだけど全員が英語をスムーズに話せる訳ではないから気を付けて下さい。
 Lilyとは英語のみにして欲しいですが、大賢者やひろっちは英語の学習歴が浅いから覚えている単語がまだ少ないので、伝えなくてはならないことは日本語で確実にお願いします。」
「確実にとは?」
「特に大賢者は曖昧さを嫌います。」
「成程、数学の話は日本語で良いのですね?」
「問題無いです、隣で聞いてる数学の苦手な大学生が何を話してるのか分からないレベルで会話して上げれば彼は喜ぶと思います。」
「ひろっちは?」
「彼は普通に優秀な小学生です、それでも中学の学習範囲を理解出来ない訳では無いことを普通に証明しています。
 それなりの私立中学に合格出来る実力は有ると聞きました。
 Lilyは英語で育った普通の子ですが素敵な子、絵梨は攻撃的な所が有るから気を付けて下さい。」
「国語が得意だとは聞きましたが。」
「勝気な性格なので上から目線で来る大学生には論理的に攻めて行くのです。
 地元の大人達には物怖じしない性格が受けて可愛がって貰ってるのですけどね。
 藤井さんは子どもに対して上から目線で話したりしないから大丈夫だとは思いますが。」
「個性的な子達とのキャンプだとは聞いていましたが皆さんと友達になれたら嬉しいです。
 勿論、花鈴姫とも。」
「う~ん…、私と友達になりたいと言ってくれた大学生は藤井さんだけ、そうやって人の心を掴んで行くのですね。」
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夏休み-93 [花鈴-10]

 そんな藤井さん達との合同英語キャンプは英語のみにしても良かったのだが、それでは難しい話がしにくくなるとからと難しい話をする時だけは日本語OKとした。
 英語が得意で無い人は難しい話をしようとするのだが、何を話せば良いのか分からなくて結局無口に。
 だが、藤井さんは私達に興味深々だと話してた通り積極的に話し掛けてくれる。

「姫さまは会社の経理にも目を通しているのですか?」
「ええ、決算報告とか見方を教えて貰い学びながらです、言われてみれば決算報告とか英語では全く分かりません。」
「専門的な用語になりますからね、でも専門用語は覚えてしまえば意外と簡単なものなのですよ、良く出て来る単語は限られますので。」
「成程、今は必要性が全く無いからパスして置くけど、藤井さんは我が社の経理状況に興味が有るのですか?」
「有ります、それなりの投資をすると聞いていますので、田中社長が今後の収益をどう見ていらっしゃるのか、簡単に利益を伸ばせる環境では無いと思うのですよ。
 野菜をタダで貰って売るにしても、収穫や輸送に人件費などが掛かる訳で。」
「ですね『物事にはついでと言うことが有る』と効率化を図って行きますが、国道を通る人達がどれだけ店に立ち寄って下さるかに掛かっています。
 仮設店舗の売り上げはそれなりに良いので、飲食店を成功させることが出来たら何とかなると考え、作戦を練ってるところなのです。」
「道の駅とは少し距離が有りますから、質が良くてPRに成功すれば集客出来そうな気がします。
 美味しいとの評判を広げられるかどうかですね。」
「はい、ただ、食材は地元の物を中心に使うつもりなのですが、メニューに海の魚が無いと寂しいと思いますか?」
「何処へ行ってもお寿司が食べられますものね。
 でも、地元の食材に拘るのは有りだと思いますよ。
 やはり猪や鹿の肉を提供するのですか?」
「ええ、増え過ぎていますから沢山捕まえて沢山売りたいですので、より美味しく食べられる料理も研究して貰っています。」
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夏休み-94 [花鈴-10]

「難しいのですか?」
「そうでも無いです、ジビエ料理研究会の人達がジビエ料理コンテストで入賞した料理のレシピを参考にさせて貰いながら色々調理して楽しんでいます。
 店で出せるレベルにはなっているのですが、気軽に食べて頂けるかどうかは微妙ですね。
 食べ慣れて無い人が多いので、特別な料理だと思われてしまうと集客力に問題が有ります。
 猪肉のハンバーガーを食べてみようと思って下さる方ばかりではないみたいで。
 美味しいと認知されれば安定した売り上げが期待出来るとは思っているのですが、調理の仕方によっては豚肉に及ばず、そんな料理を食べた経験が有ると食べたくはならないかもです。」
「確かにイメージの問題は難しいですね。
 肉は安定して手に入るものなのですか?」
「冷凍したものは問題有りませんが、冷凍すると味が落ちると言う人もいます。
 どう調理するのかにもよると聞いているのですが。」
「スーパーで肉を買うことも有るのですが猪や鹿の肉を見たことが有りません、珍しさから食べてみようと思う人が居るかも知れませんよ。
 店として成り立たせるにはリピーターを増やして行く必要が有りますが、まずは一度食べて頂かないと話が始まりませんよね。
 ところで、ヨーロッパに謝肉祭と言う行事が有ることはご存じですか?」
「サンサーンスの動物の謝肉祭ならば聴いたことが有りますが。」


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夏休み-95 [花鈴-10]

「謝肉祭には肉が関わっている訳で無く、肉に感謝することも無いカーニバルなのですが、猪肉の話をしていてふと思ったのは、ここには牛や豚を飼ってる人もいますので色々な肉を扱う肉屋さんと言うのも有りではないかと。
 謝肉祭とは違い、肉に感謝するお祭りを年中行い集客に結び付けるのです。
 例えば期間限定もつ鍋祭りとか。」
「もつ鍋と言う言葉は目にしたことが有るのですが…。」
「もつは動物の内臓で、好きな人は好きなのです。
 猪や鹿のもつも扱うことが出来れば個性的な店に出来ると思います。」
「差別化を計れるのね、ジビエ料理は外せないから良いかも、肉を売る肉屋と肉料理を提供する店が並んでたら効率が良さそうだわ。」
「鍋をするなら野菜も必要ですからね、取り敢えず海の魚を提供する必要は無いでしょう。」
「そうね、肉だけで種類を多くするのなら魚は扱うにしても淡水魚だけにして地元の川で捕れたものが良いわ。」
「店はどんな感じの建物になるのです?」
「ケーキ屋さんのデザインに合わせて一軒建ててからは増築を繰り返して広げて行くの。
 大きなのを建てるより効率が悪いけど、少しずつ大きなって行くと発展をイメージして貰えるし、一軒目のスタートを早められる、施設を考えたら肉屋を優先することになるから八百屋は当分仮設店舗のままになりそうだわ。」
「飲食店もですか?」
「衛生面に問題が有っては行けないから色々検討中なのだけど、本社を訪れるお客さんを持て成す店も必要なの。
 父は社長に会いたければ、ここまで来て貰うことを考えていましてね。」
「その経済効果を考えておられるのでしょう。」
「建前はね、本音は出張したくないのだとか、言い訳としては立派なものでしょ。」
「はは、本社移転発表時の理念から一貫してますよ。」
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夏休み-96 [花鈴-10]

「藤井さんは前から父の事業に注目していたのですか?」
「ええ、こんな田舎への本社移転ですが、少なくとも地元自治体の税収が増える訳で、田舎を少しは元気に出来るのだろうかと。
 株式会社花鈴の立ち上げで、その本気度が伝わって来ました。」
「実際に来てみて如何です?」
「過疎化と言う言葉は知っていても、その実態に触れる機会は今まで有りませんでしたが、思ってたより皆さん元気なのだと感じています。
「ですよね、野菜を寄付して頂く話をした時も、お役に立てるのなら今までより多めに栽培すると話して下さる方が何人もいらして。」
「山村で生きる逞しさが有ります。
 でも朽ちかけた空き家は残念です、残された柱から立派だったで有ろうと思わせてくれる家は特に。
 林業を生業とされてた方々は自分の家を建てる時に、こだわりが有ったのだろうと。」
「昔の林業はとても大変だったそうですが、それだけ収入も多かったみたいです。
 家にお金を掛けたのでしょうね。」
「本社移転の為に本社家屋だけでなく多くの家を建てられているそうですが、かなりの費用が掛かっているのでは無いですか?」
「都会に有った古い社宅を中心に整理し売却したのですよ。
 使われなくなって放置されてた物件でもそれなりの価格で売れたそうです。
 そのお金で建てているのですが、兎に角ここは土地が安いです。
 このキャンプ場用地は管理出来なくなった人から貰って欲しいと言われ、ただ同然で手に入れたもの、整備し維持して行くのには、それなりのお金が掛かりるのですが。」
「放置された山は水害の原因を生み出し兼ねそうですね。
 倒木が沢を堰き止め池に、その堰が大雨で壊れると一気に水が流れるのだとか。」
「そうならない様、まずはこのキャンプ場周辺の整備を始めているのですよ。
 それをどれだけ広げて行けるかが父の挑戦でも有るのです。」
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夏休み-97 [花鈴-10]

「挑戦なのですか…。」
「私財も有る程度つぎ込みますからね。」
「花鈴姫が相続する額が減るとか?」
「父はお金では無く教育の形で私達に残したいと話しています。
 兄も私も自力で生きて行くことを考えていますので、親の財産を気にする必要は無いのです。
 ただ、今の資産は簡単には手放せない株が多いので相続となったらそれなりに大変だとは言われています。」
「纐纈社長は小学生の姫にそんな話までされているのですか?」
「父は会社の話を私達兄妹にしてくれますが、それは学校での学習以上に大切なことだからです。
 私が将来、会社と関わらない仕事に就く可能性は低いと父も私も考えていますので。」
「言われてみれば確かにそうです、会社が何をする所か良く分からないまま就職し、直ぐにやめてしまう人がいると聞いています。
 小学生で会社の会長と言うのは将来を考えてのことだったのですね。」
「今は経営者を目指している訳ではないのですが、会社経営についても学んでいます。
 この際です、経済を学んでいる藤井さんから、私に対するアドバイスは有りますか?」
「そうですね、もう気付かれているかも知れませんが、社会は人の心理によって左右されます。
 店が繁盛するかどうかには様々な要素が絡みますが、その店に立ち寄ろうと思わせることに尽きると言えなくもないのです。」
「心理学とかも学んだ方が良いのでしょうか?」
「心理学でも様々な種類が有ります、店の運営には消費者心理学を学ぶことで得られるものが有るかも知れません。
 実際の成功例を消費者心理の観点から分析しておくと役に立つかもです。
 お父上はその辺りに長けておられるので会社を大きく出来たのではないかと思います。
 その能力をこの地で、今までとは違ったスタンスで挑戦されているのでしょう。」
「藤井さんは消費者心理を学んでいるのですか?」
「はい、如何にして財布の紐を緩めさせるか考えるのは結構面白いですよ。」
「では、ここにいる間、私の家庭教師になるって、どうかしら?」
「家庭教師と言うことはご自宅にお邪魔させて頂けるのでしょうか?」
「勿論です、スケジュールの調整は徳沢さんにお願いしますから。」
「自分で良ければ是非。
 しかしご両親と相談しなくて良いのですか?」
「これくらいの判断を自分で出来なくて会社の会長なんて出来ませんよ。」
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夏休み-98 [花鈴-10]

 藤井さんに家庭教師のお願いをしたのは消費者心理学に興味を持ったからだが、それだけでは無く、優秀な大学生を見つけお父さんに紹介することを意識していた。
 大学生との合同キャンプを通して藤井さんはリーダーで有る徳沢さんを立てつつ、キャンプがスムーズに行く様、気を遣ってくれていると感じる。

「中沢さん、こうして共に作業していると大学生でも様々なのが分かりますね。」
「姫は何か気付かれました?」
「あの人は周りが見えて無くて自分が何をすべきなのか分かって無いでしょ。」
「ですね、学力が無ければ合格出来ない大学なのですが、学力を身に付ける為に大切なことを置き去りにして来たと感じさせてくれます。
 まあ、藤井と仲良く成りたくて参加してるレベルですから許してやって下さい。」
「藤井さんは狙われてるんだ。」
「ただ彼女にとって残念なことに藤井は他の子と急接近中なのです。」
「あらまあ。」
「姫は気付いてますよね?」
「ふふ、純粋に田舎暮らしを体験したいと来て下さった方だけど、ここを気に入って下さったかしら。」
「ここは所謂よそ者が多いから安心して住めるかもと話してましたよ。
 田舎への移住を考えても、地域の人間関係が都会と違い濃厚ですから、よそ者扱いされると住みにくいでしょ。
 ここには既によそ者が移住して来ていますし、自分達の活動に対して地元の方々が好意的です。
 藤田さんが卒業後ここで就職するつもりだと話した時は興味が有るみたいでした。」
「移住はハードルが高いと思ってたのだけど。」
「やはり本社が移転して来たことで、他の過疎地とは全く違う環境になっています。
 姫は藤井の本社勤務を考えているのですよね?」
「ええ、まずは私の家庭教師をお願いしましたので、父との時間も作れそうです。
 中沢さんは本社勤務を考えてないの?」
「株式会社花鈴の方が絶対面白そうですし、事務所は親会社の本社内、本社勤務と同じ様なものです。
 過疎地の環境改善なんて多くの自治体が取り組んでいても成功例は僅か。
 でもここでなら、お父上に見守られながらでは有りますが、姫と共に成功させたいと思っています。」
「そうね、中沢さんと藤田さんの居場所は出来つつあるわ、大学卒業まではリモートで仕事して貰うことになるかもだけど。」
「自分達は卒業に必要な単位を順調に取っていますので、四年生になったらここに住んでたまに大学、みたいな生活を考えています。
 夏休みが終わったら、一旦大学の学習に集中しますが、自分達のことを忘れないで下さいね。」
「三年生の残りを頑張ると四年生になった時に余裕が出来ると言うことかしら?」
「ええ、卒論はここで書けば良いのですから。」
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夏休み-99 [花鈴-10]

 私達の合同キャンプはキャンプ場の完成に向け、実際にキャンプをしてみることで安全面に問題はないかなどのチェックをする意味も有った。
 だからキャンプ場での遊びは一通りやってみることに。

「藤田さん、キャンプは如何でした?」
「単に遊ぶだけではなく、キャンプ場をより良い場とする為の検討が入っていましたので充実感が有り、スケジュール通りに遊ぶのが良かったです、子どもの頃に行ったキャンプを思い出しまして。」
「どんなキャンプだったのです?」
「プログラムは決められた時間通りに進められ、ダラダラ遊ぶのでは無くメリハリが有り充実感を味わえました。
 プログラムには真面目なものも有りましたがリーダーによって子どもが楽しめる様に工夫がなされ、遊びの中で学べ良い想い出になっています。
 今回は自分達で色々工夫して遊ぶことを楽しめました、ただ遊んでるだけでは飽きますからね。」
「ですよね、大賢者を飽きさせずに遊ばせることに成功したので企画は成功です。」
「大賢者に合わせて?」
「いえ、私達のグループはダラダラ遊ぶことが元々好きでは無いのです。
 つまらない遊びをしてるぐらいなら、知らないことを学んでた方が楽しいですから。」
「川遊びでは小枝や葉っぱを船に見立てて、誰のが一番早くゴールするかの勝負で盛り上がりましたが、それぞれが自分の船を選んだ根拠を話してたのが印象的でした。
 花鈴姫の船は偶然川の流れに乗れて勝利したと思ったのですが、川の流れを観察した上だったそうで驚きましたよ。」
「ふふ、偶然ですが勝ちましたので何を言っても許されるのです。」
「う~ん、姫の言葉には何時も不思議と納得させられます…。」
「藤田さんは私に詐欺師の素養が有ると思いますか?」
「あっ、有るかも、騙されない様に気を付けねばなりませんね。」
「株式会社花鈴が失敗したら、私は多くの人達を騙していたことになるのです。
 失敗したら利益は出ませんから詐欺師としても失格なのでしょうが。」
「いえ、何としても成功させ、そうですね…、ついでに詐欺師としての力も磨いて下さい。」
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夏休み-100 [花鈴-10]

「野菜も竹も元はタダだから、労働がそのまま利益に繋がって行くとは言え大儲けは難しそうなのよね。
 竹林の作業は進んでいますか?」
 ええ、一日一時間でも皆で作業してますから予定通りに。
 作業に慣れて来ましたので阿吽の呼吸と言いますか、誰かが指示することなく進んでいます。
 ただ、足元の安全確保を優先し、手間の掛かる作業をしていますので、知らない人が見ていたら遅々として進んでないと思うかも知れません。」
「竹を切る時には少し掘ってから、切った残りで躓かない無いようにするって大変そう、でもそうしておけば快適な竹林になることは間違いないのよね。」
「ええ、かなり間引きましたので明るくなり気持ち良いです。
 竹藪が竹林になりつつ有りますので作業する喜びを感じます。
 川崎さんは教えて貰った竹細工に嵌りまして、手間は掛かっても自然の素材は良いとか。」
「竹細工と竹細工挑戦キットの販売を考えているのだけど、嵌る人が居るのなら少しは売れるかもね、でも作業者の給料とバランスが取れるかどうかが問題でしょ。」
「ですね、多く売れれば効率が良くなり利益が出るとは思うのですが、通販も含めて展開してみてから判断ですか…。」
「竹細工作品を紹介する動画や竹細工を作ってみようと言った動画で勝負ね、川崎さんには是非手伝って欲しいのだけど。」
「多分大丈夫です、彼女は花鈴姫のファンですから。」
「ふむ。」
「あっ、今、安くこき使えそうだと思いませんでしたか?」
「それに気付くとはお主も成長したの~、まあ、言わぬが花と言う言葉も有るぞよ。」
「ふふ、姫、ここに来てるメンバーは皆、株式会社花鈴が何をしようとしてるのか理解してます。
 ここへの移住を考えていない人でも、ここを第二の故郷にすると話していまして、就職してからも遊びと作業に来たいと。」
「作業にも?」
「程良く体を使う作業は楽しいものです、作業を一時間程度とした姫の判断は間違って無かったのです。」
「ただ働きさせられてると不満を感じてる人はいないの?」
「竹林の整備は労働と言うより遊びに近いもの、同世代の仲間と長期間の合宿生活は学生時代でしか経験出来ません、私達はそれを楽しんでいるのですよ。」
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