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巡礼-01 [シトワイヤン-27]

帰国後、予想通り苗川には人の波が押し寄せている。
それに備えて指示を出しておいた通り、姫さまの住まいには部外者が簡単に近づけないよう、村人達が桃源郷だとするエリア全体のセキュリティ強化工事は完了済だ。
その周辺エリアには売店やトイレなどを増やしたが更に仮設トイレを設置。
混乱が起きて無いのは、姫さまの祝福を感じられるエリアが広くなってることの他、電車やバスの状況、渋滞情報などをテレビ局が伝えているのが大きい。
巡礼の規模が大きい為、姫さまは村外へ出かける事はほとんどない。

「和馬さん、飲食店関係の人達は休めているのでしょうか。」

姫さまの家に併設した私達のオフィス。
テレビで苗川市内の様子を見ていた、姫さまから。

「この一か月、人の波が途絶えませんので稼げる時に稼ぐという人が多いでしょうね。
でも、姫さまを感じながらですので疲れ知らずだとか。」
「旅行の計画をそろそろ確定して発表すれば、皆さんの休日スケジュールが決まるのでは有りませんか。」
「そうですね、旅行ルートに関係する自治体との調整は進んでいますので、巡礼の人達の為にも早めに発表します、今後の旅行計画も早めに組みたいですね。」
「月の半分ぐらいを旅行にしましょうか。」
「月の半分働いて半分を休む店が出て来そうですね、それぐらいでよろしければパターン化も可能です。
ただ、希望されていた過疎地への訪問は、多くの人を受け入れる態勢が整わず無理が有りそうです。」
「そっか、トイレだけでも大変そうですものね、残念ですが…、それでも地方を旅すれば、それなりの経済効果は見込めますよね。」
「はい、大都市圏を極力避けるコースにしています、通るにしても短時間で通過するだけ、都市機能を麻痺させかねないことを考慮しました。
経済効果は一時的なものになるでしょうが、その地へのリピーターを増やす努力をする様、訪問予定地の担当者には伝えて有ります。」
「祠を建てて賽銭箱を置くのです?」
「勿論です、現在開発中、最新の祠では、姫さまの舞姿を3Dホログラム映像で再現させます。
よりリアルにする為、協力をお願いしますね。」
「う~ん、DVDみたいな効果があればお賽銭も溜まるのだろうけど、どうかしら。」
「試してみる価値は有ると思いませんか?」
「そうね、私も見てみたいし。」
「パリなど、訪問したところからは記念碑的なものを建てたいという話も幾つか来ていまして、それならば賽銭箱文化を世界に広げようかと。
収益は全て社会福祉事業にということで如何です、ヨーロッパに新しい文化という事で。」
「神社的な存在になるのでしょうか?」
「それを目指して良いと思うのです、神社は多くの人にとって賽銭を入れて神様にお願いするだけの存在、何の束縛もされず、説教をされることもない、でもそれなりに大切にされてるではないですか。
姫さまが、さりげなく八百万の神の一人になったとしても何の問題も起きないと思うのです。」
「う~ん、天照大御神さまに怒られないかしら。」
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巡礼-02 [シトワイヤン-27]

苗川を訪れる人達が姫さまの別荘を目指さないのは、そこまで近づかなくとも祝福を感じられるという事と、かなり広いエリアが立ち入り制限区域になっていて別荘は目にすることすら不可能だからだ。
彼らは苗川へ来て祝福を感じた後、思い思いに自然探索や大改造の進んだ苗川市内を見て回るなどをして楽しんでいる。
苗川自体が聖域となり、始めは多くの来訪者に戸惑いの有った苗川市民だが、直ぐに市民同士で話し合い問題が有れば解決。
皆、舞姫さまのことが大好きで市民意識の高い人が多い。
また、臨時駐車場を分散させ、そこからシャトルバスを運行することで市内の交通量を抑制することに成功したことも有り、市民生活への影響は最小限に。
ローマからの報告を受け、直ぐに動き準備させた本間市長の力を改めて感じさせる。
それでも問題は幾つか出ていて、姫さまの旅行中に改善して行く予定。
その旅行の確認作業を智里と済ませ…。

「和馬さん、ヨーロッパでの経験が活かせているのかスタッフの手際が良くなりましたね。」
「まあ、日本語が通じるし舞姫さまのことはすでに広まっているからな、JRも協力的だそうだよ。」
「でしょうね、通常一時間に一本のローカル線で臨時列車を何本も組むことになり、バスでも儲けてますので。
こちらとしても今回利用する貸し切り列車の具合が良かったら、今後も使って行きたいですね。
車での移動より楽だと思うのです。」
「そうだな、いっそ専用列車でも作らせようか、姫さまにはより快適な環境を整えて行きたい。
使わない期間は観光列車として運用して貰えば良いだろう、スケジュールを早めに確定せざるを得ない状況だから可能じゃないか。」
「専用機の次は専用列車ですか、それで社会経済に貢献出来るのであれば良いのですが、でも個人の専用列車って有りなのですか?」
「何とかなるだろう、まずはJRに問い合わせてみるかな。」
「和馬さんはお気楽なのですね。
私は苗川を訪問してくれた人達に苗川大改造の事が上手く伝わっているのか気になっているのですが。」
「う~ん、そうだな…、人数が人数なだけに比率で考えると大きくはないのかも知れないが、それなりに学んで貰えてるとは思うよ。
今までもテレビで紹介して来たし、舞姫さま効果は大きいからな。
地球市民党への入党者も増えているだろ、入党者には必ず『市民』の意味を考えて貰ってる。
市民政党若葉、地球市民党、と考えて来たことの成果が上がりつつ有るのが、自分達の力によるものでなく、姫さまのお力によると言うのは残念な気もするが、大きなことには大きな力が必要なのだと思う、歴史的な出来事が今、進行中な訳だろ。」
「市民政党若葉を立ち上げた当初から地球市民党のような組織をイメージしていたのですか?」
「そこまではなかったが政治改革をしたいという思いは強かった。
偶然が重なって、政党が立ち上がり、その政党が政権を握って随分良くなってると思う。
新しい政党の弱みとして外交問題が有ったが、市民政党の有り方が海外でも認知され、結果、地球市民党に繋がり拡大しつつある。
でも、これからだよ、舞姫さまの力を借りてでも世界中の人の意識改革をしないと、地球の明日は安心出来る状態ではないだろ。」
「ですよね、問題は価値基準の違う人達がどう手を取り合うのか。
同じ様に万里に向かって祈ってはいても、まだ隣の異教徒と向き合えてないのが現状。
地球市民党の理念が多くの人に受け入れられれば良いのですが。」
「それには姫さまにおすがりするしかないのだよな。
まずは日本の国民に向かって、地球に住む地球市民という発想を広げて行く所から。
まあ、釈迦やキリストの時代と違って情報は伝え易い。
宗教とは一線を画すとは言っても舞姫さま信仰は始まっている。
私達は誤った情報が広がらない様に気を付けつつ、ひたすら姫さまのサポートをして行くだけだ。」
「あっ、万里は和馬さんの話し方が最近堅くなったって不満そうでしたよ。」
「そうだよな、前みたいに自然に話さねばと思うのだが、平伏したい気持ちを抑えるのがやっとなんだ。」
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巡礼-03 [シトワイヤン-27]

旅行のルート、日程は全て事前に公開した。
間違って姫さまのいない苗川に来ないよう、また旅行先の準備のためでもある。
旅行の取り仕切りは地球市民党として進めているのだが…。

「和馬さん、今更なのですが、私は地球市民党の党員なのですか?
登録とかした記憶が有りません。」
「あっ、そうでした、アメリカへ行った時は中学生で、そのまま…、党員になって頂くとして役職はどうします?」
「それって勝手に決めては駄目でしょう。」
「とりあえず候補とか、なあ、愛華はどう思う?」
「そうね、無難なとこだと顧問かしら名誉顧問でも良いけど。
舞姫さまだけで通用するところに、地球市民党名誉顧問と肩書を付けることで、地球市民党のアピールになるのよね。」
「なるべく重みの有るのが良い、地球市民党特別名誉顧問とか。」
「ならばスーパースペシャル特別名誉顧問。」
「愛華さん真面目にお願いします。」
「万里は皆のアイドルなのだから、もう少し可愛いのが良いですね。」
「可愛い肩書なんて思い浮かばないな、姫さまは如何です?」
「そうですね、やはり名誉顧問ぐらいが無難なのでしょうか。」
「では本部に連絡しておきます。」
「それで顧問の仕事は何ですか?」
「今まで通りで、お願いします。
女神さまでは肩書にならないので、顧問とするだけです。
巷では、女神さまの他、天使とか妖精とか、その上に『愛の』とか『慈愛の』とかを付けたりしてる様ですが、しっくり来ないですね。
舞姫さまという唯一無二の存在、今までお話の世界にすら存在しなった特別な方だと思っています。」
「そうよね、既知の概念に当て嵌める必要はないわ。
取り敢えず旅行は今まで通りで良いでしょう。」
「今回は電車中心の旅になるのですよね。」
「車での移動だと、沿道の人に気を使ってスピード出せないでしょ、誰も怒ったりしないけど他の車の人に迷惑を掛けてしまうのよ。
電車だと素通りになるけど、万里のパワーなら沿線の方にも伝わると思うわ。
今回列車を使ってみて問題が無かったら、次回以降も飛行機と上手く組み合わせて行ければと考えているの。」
「姫さま、旅行が多くなりますが大丈夫ですか?」
「変化が有って楽しいです、何処へ行ってもネットが使えますし、お姉ちゃんが一緒なら安心です。」

この一言に、智里は誇らしげな笑みを隠そうとしなかった。
姫さまが安心して旅を楽しんで下さるので有れば、我々としては嬉しい限りだ。
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巡礼-04 [シトワイヤン-27]

特別な企画を組まなくとも、姫さまはそこにいて下さるだけで多くの人を幸せな気持ちに、ということで、二週間程の旅行中、舞を舞って頂くのは一度だけ、後は姫さまと相談して決めた名所旧跡を周る予定。
報道関係が舞姫さまの旅路を紹介すれば、現地の宣伝になり観光客が増えるという目論見から決めた。
そして旅行中には最新の祠、祠と呼ぶには規模が大きいのだが、それを紹介させて貰う。
観光スポットが少なめで寂れかけた三つの観光地に、二か所はまだ工事中だが一か所はすでに完成して公開を始めている。
建物は和をイメージした木造、と言っても神社仏閣とは全く違う様式となっている。
御神体や仏像ではなく、3Dのホログラム映像で舞姫さまの舞を見られるのが特徴。
勿論賽銭箱を設置して有るが、最新式で現金以外に各種カードにも対応。
入れた金額が例え一円で有っても感謝のメッセージと金額の書かれた紙が出て来るが、千円以上の場合は紙が厚くなり舞姫さまの舞姿がプリントされたカードになる。
一応賽銭箱だがカード販売機の意味合いを持たせたのはファンサービスで有り、より多くの賽銭を集めることに繋げる為だ。
この賽銭収入から、施設の初期費用、人件費を含めた維持管理費、税金などを引いたものは、地球市民党と現地の自治体に寄付されるのだが、そういった配分の目安が裏に印字されるシステム。
ネット上では、賽銭の総額などの詳しいデータを日々自動更新し閲覧出来る様にしてある。
それらは一般の賽銭箱との違いを色々な意味で強調する為。
賽銭は寄付金な訳で、その使途が明確であるに越したことは無い。
お賽銭千円以上で出て来る、舞姫さまの舞姿が印刷してあるカードは百種類がランダムに。
ほぼ間違いなく全種類コンプリートを目指す輩がいるであろうから、タイミングを見計らって写真を追加して行くが、今の所レアなものは用意せず、どれも同じ枚数を準備している。

「和馬、最新の祠が稼働を始めたのでしょ、調子はどう?」
「現地で、姫さまの旅と合わせて大きく報道して貰ったことも有って盛況だよ、賽銭箱を多めに用意して正解だったと担当から報告があった。
待ちの行列が出来てるが、舞姫さまグッズの売り子達が待ち時間を楽しんで貰える工夫をして、和やかな雰囲気だそうだ。」
「地元への経済効果は?」
「しばらくの間は大きいだろう、苗川まで簡単に来れない人達がDVDとは違うホログラム映像を有難がっている。
苗川に来たところで姫さまの姿を見られる訳ではないのだから価値は有るだろう。
今度の姫さま訪問後は、客足を見ながら、同じ十分の演目を繰り返しているところに、新作を加えて行くし、運営会社は観光スポットとして続くように企画を練っているよ。」
「それで、名称は祠のままなの?」
「舞姫さまの社という通称が何となく定着しそうだな、一応正式名称は作ってみたがしっくり来なかったみたいだね。」
「後二つ建設中なのでしょ、もっと増やして行くつもり?」
「ああ、苗川にも有って良いし、最低でも各県に一つ、う~ん姫さまには四十七都道府県全部へ足を踏み入れて頂きたいところだな。」
「そうね、全国民が一度は舞姫さまの祝福を受けさせて貰うのが理想なのよね。」
「なあ、調査スタッフによれば、姫さまの祝福を感じられる範囲が少しずつ広がっているらしいのだが、愛華はどう思う?」
「広くなるのは嬉しい事だけど、姫さまには今のままでいて欲しいわね。
確実に成長されている、でも人並みの恋は難しそうだし…。
全く未知の存在なのだから、静かにサポートさせて頂くしかないのだけど。」
「人間の我儘を言うなら、地球を愛で包み込んで欲しいのだがな。」
「そこまでは…、でもそうなったら、人類は類として大きく進化出来るのかしら。」
「う~ん、私利私欲の塊次第じゃないのか。」
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巡礼-05 [シトワイヤン-27]

旅行当日、最近は舞姫さまが清香村内の制限エリアである舞姫集落から外に出る事が無くなっていたことも有り、車で走る駅までの道のりには多くの人が見送りに集まった。
皆が胸の前で手を組んでいるのは、苗川市民の中から、舞姫さまに向かって手を合わせるというのは違う気がするという話が出て、相談した結果。
思い思いに祈りのポーズをしていたヨーロッパより統一感が有る。
駅前は事前に抽選で整理券を手に入れた人だけの限定。
一般の人が歩く舞姫さまを見られる機会はほとんど無くなっているので希望者が殺到したという。
最前列で人の整理に当たっているのは、自分でお金を払い研修を受け制服を買ったボランティアのガードスタッフ。
金銭面を自己負担としても希望者が多くて、抽選に当たった人の中から面接して決定したという狭き門。
それをくぐり抜けた人達は誇らしげにその任に当たっている。
舞姫さまのガード、たとえ短時間で有ってもそれは名誉有る事だと考えられているようだ。
見送られて特別列車に乗り込む。
単線のローカル線なので一本の通過を待って発車。
臨時列車は昨日で一旦終了し余裕は有るそうだ。
車窓から眺めていると、テレビの生放送で苗川の様子を見たのだろうか、列車に向かって手を組んでいる人達が。
後で聞いた話では列車の接近に伴って姫さまの祝福を感じ、せめて列車に向かってお礼を、という人が多かったそうだ。
スケジュールは公開してあるのでおおよその通過時間は予測できる。

「お姉ちゃん、列車の旅も良いものね。」
「気に入った?」
「うん、適当に動けるのが良いと思う、ほら、さっきまで和馬さんと三人で話してた、愛華さんと清香さん、今はそれぞれのスタッフと話してるでしょ。
自動車や飛行機だと自由度が低くて出来ないよね。」
「そこが一番のメリットかもね、駅はすれ違い以外ほとんど通過で車に比べたらかなり早いし。
あっ、そろそろかな、車内での取材だけど、これも電車だから出来ることね。」

「姫さま、寛がれているところ申し訳ありません。
これからの旅について少しお話をお聞かせ願えたら思うのですが、今回の旅行ルートは姫さまの意向も加味されていると聞きました。
ポイントはどの様なところでしょう?」
「そうですね、私の舞は神楽から発展させたものです。
今は原型をほとんど留めておりませんし、地球市民党の関係も有りまして、特定の宗教とは距離を置く形を取らせて頂いています。
それでも、日本古来の神楽というものを、もっと学ばせて頂けたらと考えており、神社関係の方ともお時間を取らせて頂くことになっています。
ヨーロッパではキリスト教やイスラム教の話を聞かせて頂き、市民生活と宗教が密接に関わっていると感じました。
日本でも信仰の厚い方が見えますが、総体的に見ると緩やかなのが日本の特徴だと感じています。
地球市民党の一員として世界平和を考えた時、この緩さこそが日本の良さなのではないか、つまり凝り固まってないからこそ他の宗教にも寛容でいられる。
神様と仏様が共存して来た日本ならではのことだと思うのです。
今回の旅では神社仏閣や古い教会にもお邪魔させて頂き、宗教についてもう一度見直す機会にしたいと考えております。」
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巡礼-06 [シトワイヤン-27]

舞姫さまからの、宗教について見直すというメッセージは、宗教が舞姫さまという存在とどう向き合って行くのか、という議論が出始めていることに対してのものでもある。
また、市民政党若葉や地球市民党は、より良い社会の形成を目指して目標を掲げているのだが、それは良き市民有って初めて成り立つこと。
その為には、長年に渡り宗教中心に行われて来た徳育的なことを、社会学に基づき科学的に行う必要が有ると考えている。
特に多種多様な宗旨宗派の党員を抱えている地球市民党にとっては、宗教を尊重しつつも、党員として共通する価値観を党員たちが持つことが必要だ。
今は、こういった市民教育をまず日本でと考えているのだが、宗教的に緩い日本で良い方向性を見い出せなかったら、世界規模では到底叶わないと思う。
姫さまに神社仏閣を巡って頂くのはそんな想いも有ってのことだ。

「姫さま、今回のルートは神社仏閣が多いですが、本当は遊園地とかに行きたいのでは有りませんか?」
「それは…。」
「愛華さん、万里は遊園地、苦手なんです。
万里が小学生の頃、親に連れられて行った事が有るのですが、下の妹が平気な乗り物でも嫌がって。
ねえ、どうしてだったの?」
「なんか落ち着かなかったかな、苗川の森に帰りたいってずっと思ってた。
売店のアイスも苗川駅前の昇竜軒に比べたら全然だったし。」
「まあ、お蔭で私はほぼ二個を食べることになったのだけどね。
神社でよく遊んでいたから、神社仏閣巡りには抵抗が無いよね。」
「木が多いでしょ、ヨーロッパでは木の多い所へあまり行けなくて、私という一匹は木に囲まれて小鳥やリスと遊んだりするのが好きな生き物みたいなの。」
「今回はそういう時間を取って有るから安心してね。」
「ええ、人間を被写体にするカメラマンだけでなく、野鳥などを専門とする方にも同行して頂く時間が有り、お話を聞かせて頂けるそうで楽しみです。」
「色々な撮影が続くと思うけど大丈夫?」
「はい、平気ですよ、カメラを意識しない癖がついて来たというか、まあ、皆さん距離を取って下さいますので。」

実際、姫さまはリラックスされているようで、二日目に訪問したお寺では終始笑顔で受け答え。
緊張し困ったのは僧侶達の方で、祝福を感じてどうして良いのか分からず、結局胸の前で手を組んでいた。
手を合わせる対象ではないが尊い存在、自分達の宗派とは無縁の存在に優しいオーラで包み込まれて大いに戸惑ったのだと思う。
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巡礼-07 [シトワイヤン-27]

旅行中、所謂巡礼の人達のことはホテルのテレビで確認している。
状況的に直接触れ合う機会を作る事が難しいからだ。
姫さまだけでなく、我々もテレビ主演を通してそこそこ有名人の部類に入る。
舞姫さまを見ようと思っても、身長の関係で智里と愛華の方が映像でも目に入り易いという事情が有り、また、その美貌とスタイルの良さで智里のファンも増えている。
テレビから得られる情報によると人々の反応はヨーロッパの時とあまり変わらない。
祝福を感じ一様に幸福感に満たされるのを、脳内物質がどうこうと説明を試みた学者もいるが、そのメカニズムは推理すら不可能だ。
一人の人間を中心に広く影響を及ぼす力は現代の科学では解明できまい。

「和馬、こうして映像を見ていると、我先に前へではなく、ハンディの有る人を優先的に前列へといった心配りが自然に出来てますね。」
「そうだな、元々優しい人達なのかも知れないが姫さまの影響は有ると思う。
個人差は有るものの、感じた祝福が今も心の中で持続しているとパリからの報告にもあったな。
このまま、より民度の高い人種へと…、清香、祝福を感じ姫さまに感謝している人を、えーっと、ベジタリアンみたいな世界共通の言葉で言い表せないだろうか。」
「そうですね、上手い造語が出来、世界に広まれば、人種の壁を越えて一つになって行けます、皆で考えましょう。
インタビューでも、私は舞姫さまに守られているけど、姫さまの子どもというのではなく、と表現に苦慮している人がいましたので。」

夕食後。

「姫さまは、姫さまを慕う多くの人達のことをどう思ってるの?」
「う~ん、お友達みたいなものかしら。」
「お友達か、み~んな舞姫さまのお友達…。」
「友達の友達は友達となれるのだろうか。」
「定着するかどうか分かりませんが、姫さまの祝福を感じ感謝している人のことを舞姫さまのお友達と呼んでみますか?」
「それなら舞姫フレンズの方が簡単で良くないかしら?」
「あっ、そうですね簡単な方が定着し易いと思います。
姫さまは如何です?」
「軽い感じで良いと思います、信者という表現も出始めていますが、アイドルのファンクラブっぽくて、そちらの方が断然良いです。」
「そのまま世界共通に出来るかしら?」
「そうだな、イスラム圏だけ違う表現になってしまったら趣旨に反する、世界に向けて説明が必要だ。」
「これは、愛華からの発表が良さそうです。」
「そうね、タイミングとか考えてみるわ。
ここのメンバーは一人を除いて舞姫さまのお友達ということで良いわね。」
「まあ、本人は違うわな。」
「いえいえ、舞姫さまのお姉さまが、お一人いらっしゃるじゃないですか。」
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巡礼-08 [シトワイヤン-27]

愛華中心に舞姫フレンズをどういう形で広めて行くかが旅行中のテーマに加わった。

「舞姫フレンズを姫さまファンの総称として、ファンクラブも作る?」
「作っても良いが、会員数が億単位になるかも知れないぞ。
DVDが売れてるのも、巡礼で近くまで来る程ではないにしろ、祝福を感じているからだろ。
今のグッズ販売体制を強化するだけにしておいた方が良くないか?」
「メッセージを送るのでしたら、ファンクラブでなくとも…、ただ言語面の拡充が必要でしょうか?」
「そうだな、メッセージとしては舞姫フレンズ心得みたいなのを告知して行くことにするか…、姫さま、如何です?」
「舞姫フレンズの心得的なものは簡単に『弱者に愛の手を』ぐらいにしておいて、後は地球市民党の紹介をして行く形はどうでしょう?」
「欲張らずSimple is best という事ですね。
舞姫フレンズはシンプルに、そこから地球市民党へどう繋げて行くかは今後の課題になりますが、難しい話がなければ、自分は舞姫フレンズだと名乗り易くなると思います。」
「愛華は、舞姫フレンズ、どのタイミングでの発表を考えてる?」
「姫さまに舞を舞って頂いた後はマスコミが一段と盛り上がると思うの、その辺りでどうかしら。
シンプルに行くので有れば準備も簡単に済ませられると思うわ。」
「確かにパリでも舞の反響は大きかったからな。
今回は海外へも映像が配信される、そう考えると、舞姫フレンズは祝福を感じ感謝している人の総称で、姫さまからは、弱者に愛の手を差し伸べて下さる方とだけで済ませるのがベストだな。」
「でも、和馬さん、それだと、自身のことを弱者だと捉えている人が残念な気持ちになりませんか?」
「あっ、弱者側の視点か、彼等こそ舞姫フレンズの一員になって欲しいのだから…、隣人を愛せよ、とかにした方が良いのかな。」
「智里と姫さまの原点に立ち返って『内面の恰好良い人を目指そう』というのは如何でしょう、人間的な格好良さの基準は国によって異なるでしょうが、苗川大改造に関する書物は、姫さまの生い立ちを辿る上で欠かせないとパリでも大人気だそうです。
女性を軽んじて来た国の方々に対して、差別する人は恰好良くないと伝えて行く努力が前提ですが、自己の成長を望む、という意味で、市民教育の原点となるかも知れません。」
「確かに清香の言う通りだ、苗川で成功したのは難しい言葉ではなく『内面の恰好良い人を目指そう』といった、多少曖昧では有るけれど分かり易い言葉で、智里は意識してた?」
「勿論ですよ、小学校の低学年に説教しても始まりません。
掃除を積極的にしている子に対して、恰好良いね、と褒める事が私達の小学校で始めたことです。
そうですね、世界中の政治家に対しても、バランスの取れた政策を進めている人には…、私から格好良いねと言って差し上げたいものです。」
「うん、それは良いかも。
今後、姫さまの発言は重く受け止められ不用心な事は話しづらくなると思うんだ。
智里や愛華が地球市民党のスポークスマンとして、政治家達を時に褒め、時に苦言を呈する。
バックに姫さまの存在という形は悪くないと思うな。」
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巡礼-09 [シトワイヤン-27]

姫さまとの旅行中、特筆すべき出来事としては、まず『舞姫さまの社』の事が上げられる。
姫さまは自身のホログラム映像を不思議そうにご覧になられていたのだが、それを見ていた人達がホログラム映像の舞姫さまと実物の舞姫さまが僅かな時間入れ替わったと話す。
姫さまは目の錯覚ですと取り合わなかったのだが、翌日、それまではただの3D映像でしかなかったホログラム映像に姫さまの力が宿りました、と管理スタッフたちが興奮気味に報告して来た。
その時はまだ社自体が姫さまの影響下にあるタイミングのことだったので話半分に聞いていた。
だが、姫さまがその地を離れた後も姫さまの祝福を感じられるだけでなく、ホログラム映像が本来映し出される筈の舞とは異なる動きをしているそうだ。
そのことを姫さまに尋ねても、いたずらっぽく笑うだけで何も教えてくれない。

もう一つは鳥達との戯れ。
姫さまは旅行中、何処へ行っても歓迎されたが、それは人間からだけではない。
姫さまが空を見上げると鳥が舞い降りて来ることは何度も有った。
テレビ局のカメラマンはそんな光景を逃さない。
降りて来た鳥の種類などを番組で紹介しているのだが、旅の中盤には二十種類を超えていた。
姫さまによると、隠れて出て来ないが、鳥だけでなく多くの生き物が歓迎してくれてるそうで、舞姫フレンズは人間だけではないのだとか。

そして旅のメインイベントである姫さまの舞。
今回は屋外ステージでの披露。
市民政党若葉主催、数万人規模のビッグイベント、そのトリを飾る。
企画の段階で一番心配されたのは雨だが、智里から「万里は運動会とか大きな行事で雨に降られことがなのですよ、ほらヨーロッパ旅行中、雨が降っても夜だけとかじゃなかったですか。」と言われた。
思い起こしてみても姫さまが雨の中に立つシーンを見た記憶がなかったのでゴーサインを。
より多くの人に見て貰いたいということで広い公園の芝生広場に大型モニター付きの仮設ステージを組んだ。
小雨ぐらいなら姫さまさえ濡れなければ良いと考えていたが、程よい晴れ。
数組の歌手が愛と平和を歌い、最後のプログラムとして舞姫さまの登場。
まずは歌を披露。
途中から一羽の小鳥が舞い降りて来てさえずり始めるが、そのさえずりは伴奏というか良い効果をもたらし歌を引き立てる。
舞が始まると今度はタカが舞台上を何度も横切る。
姫さまが合わせているのかタカが合わせているのか分からないが、手にした鈴に合わせて飛んでいる様に見える。
そして…、十分程舞ったところで、姫さまが宙に浮き始めた。
勿論種も仕掛けも用意されていない、両足はその重要な役目を中断し舞の一部としてのみ機能している。
優美。
パリでの舞とは比べ物にならないぐらい感動的な舞を体験させて貰えたことに感謝しかない。
我らが舞姫さまは観客を魅了しつくした後、静かに着地して舞を終える。

これからは、姫さまが普通の女の子だと話しても誰も同意しないだろう。
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巡礼-10 [シトワイヤン-27]

舞姫さまが宙に舞うというか宙で舞う一分だけの映像をテレビ局に流した。
全編はDVDにして発売予定で、その予告となる。
その映像が何度も放送されたことも有り愛華の記者会見には何時も以上に多くの記者が詰めかけた。

舞姫さまファンの人には、舞姫フレンズを名乗り、外見に拘らず内面が綺麗で恰好良い人を目指して貰う。
愛華が記者たちに向けて発表したのはこれだけのことなのだが、海外を意識し説明を加えた。
全ての言語においてMaihime friendsと発音される言葉のみが正式なもので、勝手な名称で集団を作っても認めない。
それは姫さまが国境を越えて人々が仲良く交流することを望んでいるからだ、ということを特に強調。
質疑応答では…。

「信者という呼び方は好ましく無いのでしょうか?」
「私達は宗教団体では有りません、舞姫さまを信じ慕って下さることは嬉しいのですが、姫さま自身、舞姫さまの信者という表現がお好きではないのです。
姫さまのファン、もしくは舞姫フレンズと表現して頂きたいです。」

「舞姫フレンズとして自己の研鑽ということですが、約束事は今後増えますか?」
「自己研鑽の過程に於いて地球市民党の理念などを参考にして頂けたらと思います。
この一言に多くの意味合いが含まれていますので、舞姫フレンズとして細かいルールは必要ないと考えています。
因みに女性差別人種差別などをするのはとても格好の悪い事です。」

「人の行動を全て恰好良いかどうかで判断する訳ですが、価値観は多様ですよね?」
「おっしゃる通りです、そこを地球規模で、特に争いの原因になっていることに対して価値観自体から見直せないかと地球市民党で研究しています。
自分と意見の異なる人に対して、排除することしか考えられない人は恰好悪いとか。
こういった価値観を今後、舞姫フレンズの人達と考えて行きたいです。」

「舞姫さまのお力を考えるとフレンズという表現には違和感を覚える人も少なからずいると思うのですが。」
「姫さま自身が慕って下さる方々とは友人で有りたいと考えておられます。
宗教について考えた上で、宗教とは一線を画して行くのが私達の出した結論、ですから信者ではなくフレンズなのです。」

「舞姫フレンズというのはスタッフ全員が同意してということでしょうか?」
「いえ、舞姫騎士団の面々は方向性を理解しつつも、自分達はあくまでも家来であってフレンズとは名乗れないと話す人が多いです、問題はないと思いますが。」

「地球市民党としては舞姫フレンズを世界中に広げたいと考えているのでしょうが、勝算は如何です?」
「そうですね、最大の問題はイスラム圏に舞姫フレンズを如何にして浸透させるかだと思っています。
イスラム圏の方々が姫さまを認めて下されば、地球市民という我々の理念が世界中に広がって行くことになると考えていまして。
そして、私には、私達の姫さまを受け入れられない人の存在がイメージ出来ないのです。」

記者会見を受けて、すぐに舞姫フレンズというワードがネット上で飛び交い始めた。
そして舞姫さまの祝福の経験者達中心に『外見に拘らず内面が綺麗で恰好良い人』について意見が交わされる。
地球市民としてどうあるべきか、多くの人達が考え始めてくれたみたいだ。
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