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近衛予備隊-331 [高校生バトル-76]

「詩織、勝手に詩織を利用して布教活動をしていた宗教団体は解散させました。
 寄付金は全額とは行きませんでしたが寄付した人に返金しまして。」
「宗教弾圧だとか反発されなかったの?」
「金儲けに成功した海外の新興宗教を真似ただけのもので、そこまでの根性は無かったみたいです。
 今後は国による審査を通った団体だけが寄付金集めを出来る形にします。
 登録されて無い団体や個人は、例えそれが慈善事業で有ったとしても審査を通らずに寄付を募ったら処罰の対象になります。
 怪しげな宗教団体や慈善団体はこの国で成り立たなくしたいと考えまして。」
「そうよね、慈善活動を装って活動している団体でも、善意を頼りに集めたお金のほとんどが団体職員の給料に充てられ、ひどい所だと名前だけの理事が高額な給料を受け取ってるのだとか…。
 お金に余裕の有る人が学校などに寄付をするのであれば国として管理し、寄付者に対しては税金の軽減などの見返りを考えても良いわね。」
「ええ、国による寄付行為の管理は検討したいです。
 自分達が私財を学校など国の為に使っていると知った人から、自分もと言う問い合わせが来ていまして、今までは個別に対応していたのです。」
「ただずっとこの国で細々と宗教活動をして来た人達は、現金取引が無くなり信者のポケットから小銭が無くなったことで収入が減っているのでしょ。」
「今こそ彼らの存在意義が問われているのかも知れません。
 信者との関係が強固な団体は問題なく運営出来ていると聞いています。」
「それは信仰心によるものなのかしら?」
「それは…、信仰心が本当に有るのなら、もっと真面目に生活しても良さそうなものです。
 信仰心と葬儀や墓の管理とは別問題なのかも知れません、死者に対する想いは信仰と別問題かも。」
「そうね…、死者を弔って貰う存在としての宗教団体、元々多くの宗教は人の死に対する感情と密接に関わって来た。
 私は唯物論者だから、人の死をネタに稼いでる宗教団体にはあまり興味がないのだけど、人としての生き方を説いている部分は参考にして来たのよ。」
「唯物論者だから、自身の宗教団体を立ち上げないのですか?」
「そもそも宗教団体を立ち上げる意味はないと思っていたのだけど、死後の世界はと問われた時に、誰にも検証出来ないからと言って嘘をでっち上げる気はなれないの、死んだら脳の機能が停止して記憶は一切なくなり無に帰す、火葬後の骨にシンボル的な価値を見出すことは否定しないけど、ただの骨に執着してる人にはついて行けないのよ。
 そんな私が神だと言われてもね。」
「しかし、普通の人間に対して鳥たちはあのような行動はとりません。」
「たまたま鳥に好かれただけで、それが人間の役に立ってる訳でも無いでしょ。」
「いえいえ、詩織が鳥と戯れる映像は多くの人の心を癒しています。
 人々は宗教団体に寄付するのと同じ気持ちで映像作品を買い求めているのではないかと。」
「そんなに売れてるの?」
「詩織はお小遣いの確認を怠っていませんか?」
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近衛予備隊-332 [高校生バトル-76]

 詩織さまが庭で小鳥と戯れている光景は離れた所からカメラで撮影。
 小鳥と詩織さまだけの綺麗な庭はまさに別世界。
 編集されたDVDは飛ぶように売れ会社を潤している。

「この所、新規事業の立ち上げや組織の改編に気を取られていて自分の収入は気にしてなかったわ。
 ちょっと確認してみるね。」
 詩織さまは手元の端末で確認。
「うっ、私のグッズやDVDだけでこの金額なの…。
 私の所でこれだけの資金を止めていては犯罪行為に近いわね、ジョン、学校の設備にある程度使うとして、新たな投資先はどう?」
「詩織の情報に飢えてる人達がいますので、本やDVDで詩織の軌跡を振り返りつつ、詩織の考えを伝えて行く企画は如何です?」
「そうね…。」
「ついでに宗教団体を立ち上げるとかはどうでしょう。
 既存の冠婚葬祭には関与せず、市民教育を目的とし寄付金を納める必要は無く、教団のグッズ購入も強制しない、何なら詩織が教祖もしくは神として自身が唯物論者だと発表しても良いと思います。」
「神が唯物論者なんて矛盾の塊だわ。」
「ではそこは秘密のままで。
 ただ、詩織に対して特別な感情を抱いている人の数を考えたら、すでにキリスト教が興った頃の信者数を遥かに上回っているかも知れません。
 この勢いのまま世界平和を旗印に掲げ、影響力を高めて頂ければ、ここは聖地となり我が国の観光業は安泰になるのですが。」
「私にどれだけの影響力が有るのかは分からないけど…、私達の展開は元々世界平和が目的でそれなりに達成出来てると思っていたの。
 でも、宗教団体でなくても遠江王家から始まる『教え』をアピールして行くのは有りかもね。」
「近衛予備隊のメンバーはその教えを受け止めて成長し、今はそれを広めようとしています。
 王国騎士団が指導する国立学校では『教え』に沿った教育を実践していますので弱い者いじめが随分減ったそうです。
 遠江王家に端を発する『教え』は宗教的要素を帯びて広まっているのですから…。
 詩織の力で戒律で縛る宗教から人々を開放することは出来ないでしょうか。」
「そんな問題も有ったわね、それに向き合って行けるだけの体力はジョンの部下達に有るの?」
「我らが女王陛下から一声有れば、王国騎士団、大統領親衛隊は直ぐに動きます、勿論近衛予備隊を肩書にしている連中も。」
「近衛隊は人種も宗教も様々だから…。」
「そんな違いを乗り越えて来たのが『教え』ではないのですか?」
「そうね、近衛隊の考えを聴き、遠江の王さまとも相談し、直ぐに方向性を示せる様に動くわ。」
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近衛予備隊-333 [高校生バトル-76]

「遠江王家の『教え』は市民教育を目指していて元々宗教性はないのだけど、宗教の教えと近いものが有ることは否めないのよね。」
「宗教は様々ですが、それぞれ真面目に生きる指針を示している所が多いと感じていますし、信仰によって心の平安を保たれている人はいると思うのです。
 ただ、現代社会では無意味な教義、それを掲げ続けている宗教団体はどうかと思います、特に女性が不利益を被っているのは何とかしてあげたいです。」
「その辺りの宗教組織が反政府組織でも有るのでしょ。」
「ええ、でも先日一斉逮捕をし壊滅させた組織を除いては、これと言った違法行為をしている訳でも無く介入する口実が無いのです。
 人権に関する法律を制定した所で、新たな軋轢を生むだけかと。」
「それで私に何を期待してるの?」
「王国で国教を立ち上げ『教え』にそった市民教育を進めると言うのはどうでしょう。
 共和国では軋轢を生むでしょうが、王国に対して反政府組織は何も言えません。
 王国独自の宗教ですが王国の民にも押し付けることなく、その教義を詩織が小鳥達と戯れる映像と共に説明したら、公共マナーの向上に繋がると思うのです。」
「宗教団体との軋轢を生み出すことにはならないの?」
「『教え』を元にした国教と、冠婚葬祭を司る宗教団体とで役割分担と言いますか、日本で神道と仏教が共存している様な形に出来ればと思います。」
「そうね、私達は歴史的なしがらみの無い、現代的価値基準に基づいて『教え』をまとめ広めて来たのだけど、更に私達と同じ考えを持つ市民を増やして行くことが出来ればこの王国はもっと良くなるわね。」
「詩織の信者と言える人達でも『教え』の意味が理解出来て無くて、公共マナーを守れない人がいるので、王国の国教として『教え』に基づく大人への教育活動をしてみたいと思うのです。」
「それで、ジョンが教祖に?」
「う~ん、平和な独裁国家を目指している大統領では有りますが、兼任と言うのはどうでしょう?」
「共和国も名称は兎も角、実質的には大統領を国王とする王国を目指して来た、過激な反政府組織を壊滅させたから、残りの反政府組織は良く分からない宗教団体だけでしょ。
 論理的に話しても通用しない連中は無視して改革を押し進めれば良いのよ。
 まずは王国の王子として他宗教との共存を望む形で新たな宗教の立ち上げを宣言し『教え』を伝えて行けば良いと思うわ。」
「詩織にはシンボルとしてグッズ販売に協力して頂くと言うことで構いませんか?」
「ええ、グッズの収益はどうするの?」
「利益はハンディを持ってる人の為に使いたいです。
 グッズ関係の作業に当たって貰おうとも考えていまして。
 布教活動は特別に指示しなくても、王国騎士団中心に今までやって来たことの延長になります。
「私達はウエブサイトを立ち上げ動画で『教え』に関する話をして行けば良わね。」
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近衛予備隊-334 [高校生バトル-76]

 共和国の大統領が教祖になって王国の国教を開く。
 新たな宗教の始まりに詩織さまが絡んでなかったら変な感じになっただろう。
 だが冠婚葬祭を取り行わず、王国として人を育てる方針の確認でも有ると話したからか、予想以上に反発はなかった。
 人々は詩織さまを崇めたいと願っていたのかも知れない。
 信者になって寄付する必要は無く、詩織さまからの教えを学んで欲しいと宣言。

「子ども達は学校で学んでるし、社員には社員教育の一環として伝えて来たことだけど、改めて王家の教えとしたからか、若干公共マナーが改善されたみたいね。」
「若干なのか、シャルロット、身に付いた行動パターンは簡単には変えられないのかな。」
「それでも、続けて行けば少しずつでも良くなって行くでしょう、ただ、内容がまともだから新興宗教の様なインパクトが無いのも事実なのよね。
 『教え』は強制するものでは無いのが良い所なのだけど、一般的な宗教では良い行いをすれば天国へ、悪いことをすれば地獄へとか有るでしょ。
 そう言った話が無いと本当の意味では浸透し切らない気がするの。」
「う~ん…、詩織さまに対して慕う気持ちのある人でも、『教え』を学び自身の行動を見直すまでには至らないみたいだものな。」
「学んだ先に何が有るのかも見えないでしょ。
 私達は社会改革を考えてるけど、一般の国民は取り敢えず自分の生活が良ければ社会全体のことまで考えているとは思えない。
 詩織さまから強制されたら動くかもしれないけど、そんなことはなさらないでしょう。」
「国民の意識改革を進めるのは難しいな。」
「私達は国民の民度を上げたいと考えているのだけど、国民はその必要性を感じて無いのよね。」
「必要性か、確かに無いのかもな…。
 彼らが必要性を感じられないのなら名誉を与えると言うのはどうだろう。
 人の人格を計ることは難しいが、詩織さまの考えをどの程度理解し実践しているかで階級を判断、年齢に関係なく昇級するシステム。
「階級社会は危うさがあると思うのだけど。」
「階級が上がることで社会的地位の向上に繋がる可能性は有ってもそれ以上のことはなく、与えられるのは名誉だけにしておけばどうだ。」
「昇級の審査が難しそうだけど。」
「試しに始めて様子を見ると言うのはどうかな?」
「そうね、教祖で有る大統領の一言でどうにでもなるレベルのことだから…、ちょっとどうなるのか見てみたい気もするわ。」
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近衛予備隊-335 [高校生バトル-76]

 我々が市民の意識改革を目指して立ち上げた『平和な市民教団』に階級制度を設けることとし『市民』から『愛と正義の市民』に至るまで十段階の階級を用意してみたのだが…。

「ジョン、試験と面接によって昇級するとして、昇級に全く興味の無い人もいるだろうし、元々シンボルが弱い気もするのよ。」
「シンボルですか?」
「日本には神道と仏教が共存して来た歴史が有るの、知ってるでしょ。
 多くの神社を持つ神道だけど、そこが管理するお墓はとても少なくて葬儀は仏教まかせ。
 家を建てる時は地鎮祭と言って工事が無事に終わる様その土地を守る氏神様にお願いする儀式を行ったりするのが神道。
 釈迦の教えに端を発する仏教には、それを伝えると言う役目が有るのだけど、神道では神さまにお願いするだけの一面が有ってね。」
「お願いするだけなのですか?」
「私も詳しくないのだけど、多分神に対して誓うという側面も有ると思うの。
 誓うのなら他の宗教と共存し易いと思わない?」
「誓うと言う行為を行っている宗教団体が有るのか分かりませんが、前向きな誓いであれば市民の意識を高める意味合いはありますね。」
「でね、宗教の多くは偶像を用意し偶像崇拝の形をとっているでしょ、その偶像に対する信者の想いは様々だろうけど、偶像が有ることに意味が有ると思うの。
 唯物論者の私が論理的に信仰を考えてみた結果だけどね。」
「詩織の写真やグッズがその役割を果たすと考えていましたが…。」
「偶像に対する向き合い方を説明して行く必要が有るのよ。
 神社で願い事をするにしても、そこに神にまつわる何かが無いと気持ちが込めにくいと思う。
 『平和な市民教団』の信者には、自分の目標や想いを確認する場が有って良いと思うし、その目標に到達する方法を考える、その手助けをすることもの教団の役割に加えて良いと思わない?」
「それは悪く無いですね。」
「そんな活動を通して『愛と正義の市民』を目指して貰うのなら、もう少し盛り上がると思うのよ。」
「グッズは売れてますが教団の趣旨とはあまり関係無い様です。
 小さな目標を偶像に対して日々誓う、そんな宗教ならもう少し身近に感じて貰えるのかも知れません。」
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近衛予備隊-336 [高校生バトル-76]

「問題はどんな偶像にするかなのだけど。」
「詩織の写真でも良さそうですが、特別な意味を持たせるとなると少しひねりが欲しいです。」
「そうね、日本の神社には学問の神とか安産の神とかあるから、それを真似しようか?」
「例えば?」
「う~ん…、フクロウを学問の象徴として、学問に関する思いや誓いはフクロウの像に向けてして貰うのはどう?」
「そうですね、この国にフクロウは生息していませんが、お話とかで知っている人は多いと思います。
 フクロウ単体より詩織さまの腕に止まるフクロウなどの方が良いでしょうか?」
「そうね、他の象徴も鳥で揃えてデザインを考えて貰いましょう、特別な施設を建てる前に各地のマーケットを活用、小さくて良いから祠を設置して、そこでの作法をでっち上げて誓いの場にするとか。」
「それだと日々の誓いには不便では有りませんか?」
「そこはオリジナルアイテムを制作して販売、普段はそのアイテムに向かって自分の想いを確認するみたいな。」
「結局お金儲けに繋がってしまうのですね。」
「ハンディキャップを持つ人への支援は充分ではないのでしょ?」
「はい、まだ社会的弱者を社会が守ると言うことに対して充分な理解が得られていません、共和国として行えないのなら王国や教団によって進めるしかないと思っています。」
「ホントはそう言ったお金も含め、共和国が正しくコントロール出来る体制が理想なのよね。」
「予算配分は難しいです、税収は増えていますが全ての国家事業、そのバランスを考えると。
 国民の支持のお蔭で独裁的手法で物事を進められるのですが、それはバランスを大きく崩さない政策有ってのことだと思っています。」
「そうね、もっと独裁的で良いのだけど。
 自由経済には無理が有るのよ、日本では政府が景気を上げようと策を練っても、お金が企業で止まってしまう、政府の経済政策によって大企業が利益を上げても、それを下請けや非正規労働者に還元しないから消費が伸びずバランスが悪くなったままなの。」
「その点、我が国は物価の管理が我々の手中に有るのが大きいですね。
 納入業者には品質と納入価格で一応競争はして貰ってるけど、販売価格はこちらの意のまま。
 緩やかな値上げは経済成長に不可欠ですが、それを無理なく行えてると思います。」
「先進国との格差は縮まりつつあるものね。」
「はい、観光業界では先進国との給与格差が無くなりつつ有り、それが消費を押し上げ娯楽産業を潤す、その恩恵にあずかっているのは我々の会社が中心ですが、そこから波及効果が広がっています。」
「ここが村だった頃に描いてた形になりつつ有るのね。」
「アビュニス王国も企業と政府が一つになり、経済的な問題が急速に改善されたと聞いています。
 社会主義的なのですが、今までの社会主義国が強引にことを進め、人々の印象を悪くしたのとは違いますし、小国ですので進行が早いです。」
「自由主義国でもコントロールは試みられて来たのだけど、日本は社会主義的と言われる程の規制を緩和し始めてから一気にダメになった気がするの。」
「政治家に先を見通す力が無かったのでしょうか、その失敗を参考に我々はバランスの取れた社会を目指しているのですが。」
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近衛予備隊-337 [高校生バトル-76]

 我が共和国は詩織さまの実験的取り組みもあり、随分個性的な国に成った。
 共和国内王国は色々な意味で拡大、独裁政治と言いながらも平和を前面に出し国内改革は着実に進んでいる。
 大統領が教祖となって設立された教団は、まだ盛り上がりに欠けているものの海外からも注目され取材を受けることも。
 学校制度はより良いシステムを目指し日々検討中で大学設立準備も進行中だ。
 各国のマスコミが取り上げたくなるネタを日々提供していることが、そのまま宣伝となり海外からの観光客は増え続けている。

「詩織、我らが『平和な市民教団』は海外から入信したいと言う声が増えていまして対応を検討してるのですがどう思います?」
「勝手にすれば良いのよ、日本の神社は誰でも受け入れているの、神社を守る氏子の存在は有るけど、基本的に信者と言う発想は感じられないのよ。」
「自分が知ってる宗教団体の中では異質だと思いますが、我々の教団もそれに倣っての活動です。
 人を信者として束縛しないのが良い所だと思っていたのですが、詩織さまとの繋がりを持ちたい人は少なからずいるようで。」
「その気持ちを大切にしたいのね?」
「どうせなら我々の活動に貢献して貰いたいと言う下心が有ります。」
「そうね、それは良い発想だわ、教団のグッズを通販で販売するだけでなく、教団としてボランティアを募集ってどう?」
「そうですね、実習に慣れた教育実習生はボランティアの様な存在になっています、音楽大学関連の特別研修生達もです。
 我が国で足りてない人材を補強出来ると良いのですが。」
「教育実習生達は国立学校に貢献してくれてるの?」
「ええ、短期であまり成長出来ないまま帰国する人もいますが、多くの人は子ども達とがっつり触れ合って何が必要かを考えてくれるそうで。
 既に二十名程、教育実習生から国立学校の職員として正式採用しました。
 数学や理科の授業を中心に活動して貰っています。」
「英語で数学や理科を教える壁を乗り越えられた人達なのね。
 こちらの狙い通りではあるけど、彼らに給料面での不満は無いのかしら?」
「ええ、日本で就職したらもっと高給かと思ったのですが、住居などの生活費を考えたらそこまでの差は無いそうで、日本での支出に於ける住居費の割合には驚かされました。」
「都市部への人口集中の結果なのよね。
 ここの住環境は彼らにとってどうなのかしら、王宮ほどの設備は整っていないのでしょ。」
「彼らが長期滞在を決意したのは住民と良好な関係を築けたからです。
 住民たちが職員寮の設備を良くしているのは、先々地元の人と結婚させたいとか、我々の改革によって生活に余裕が出来、知識を持つ人を敬う気持ちが芽生えているのかも知れません。
 日本から来た彼らが更なる改革の原動力になってくれると考え、住環境を整えているのですよ。」
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近衛予備隊-338 [高校生バトル-76]

「それなら、大学に対する理解はどうなのかしら?」
「理解以前に他国に有って我が国に無かったことを知り始めた段階です。
 まだ王立高等学校がどんな教育をしてるのか、国民に伝わり始めたばかりですので。」
「国立学校の教育に対しては違うのでしょ?」
「ええ、スタート時から力を入れて来た観光業に就職した子達が引っ張ってくれています。
 英語を頑張った子が観光関係の職に就き、親より高給だという話が広まり始めていますので。」
「実際に親より高給なの?」
「ええ、基本的な接客を学んだ後、接客実習を経て実習先への就職が決まることが多いそうです。
 実習期間中も働きに応じて給料が支払われていますので、ほとんどの子は真面目に働き仕事に慣れてからの本採用、十八歳前後の素直で真面目な子達はホテルにとっても大切な戦力ですから、そんな子達を他のホテルに引き抜かれてはなるまいと、うちのホテルと同じ水準にしているのですよ。
 ホテルは儲かっていますので問題の有る所は少なく、待遇の良さが知れ渡ってから英語学習と接客に関する学習に熱心に取り組む子が一気に増えたとか。」
「好循環になっているのね。」
「はい、接客の現場で働いてる子達は給料が良いことも有りモチベーションが高く、それが客に好評、リピーターが増えホテルを潤すことに繋がっています。
 どのホテルも上客に来て貰いたいですから従業員の質は重要な要素なのです。」
「良い人材が良い結果を生み出す、その考えが他業種にも広がればね。」
「ええ、労働の質によって対価が変わることは理解されていますので、質の高い労働者を生み出す教育に国民の目を向かせたいです。
 王立大学は遠江大学の協力の下準備が着々と進んでいますが、鳥類の研究に特化した学部はどうです?」
「直接人の生活に関係しない学部だから、スタートは王国で鳥類研究を続けている学者三名に籍を置いて貰う形になりそう。
 でもそんな学部だからこそ、人々に大学を知って貰う切っ掛けに出来ないかと考えているの。
 人の生活から離れた研究、そんな研究を大学で行っていることの意味を考えて欲しくてね。」
「王立でなく国立だったら予算が付けられません。」
「でも、研究は直接生活に関わらない分野でも、調べて知ると言う要素から人間社会に厚みを持たせて来たでしょ。
 この国は雇用の場を増やして来たけど、更に増やすと言う意味も有るのよ。」
「それを支えて行くのは大変そうですが。」
「増税なしでも税収は増えてる、まずは教育関連の予算を増やすところから始めないとね。」
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近衛予備隊-339 [高校生バトル-76]

 王立大学のスタートの対して海外からの取材が有ったのは、その独自性に有るそうだが、自分達はそもそも大学を知らないし、近衛予備隊が他国の学校とは違う教育を行っていたことも、それを教えられてから知ったこと。
 独自性と言われても、海外の教育制度を調べて何となく分かった程度なのだ。
 王立大学設立の各種調整担当は元日本からの留学生。

「香奈、スケジュールに変更はないのだね?」
「はい、小さく始めますので、大統領閣下の開学宣言だけで大学が始まります。」
「いや、王立大学だからそこは王子だよ。」
「う~ん、王子の肩書と大統領の肩書とではどちらが上とか有るのですか?」
「そこは微妙だが、王国主催行事での肩書は大統領ではなく王子が自然だろ。」
「分かりました、開学の式典ではジョン王子とさせて頂きます。」
「ここまで特に問題は無いのかな?」
「そうですね、小さく始めるので問題が出て来るとしたら開学後だと思います。
 組織と名称が変更されるだけで活動を継続する学部が殆どですから心配はしていませんが。」
「組織的には教育学部が大変なのかな?」
「そうですね、王国騎士団で教育に携わっておられる方々は、仕事の合間を縫ってとなりますので、ネットシステムの改良を試みて貰っています。
 音楽関係は音楽学部と教育学部音楽教育学科になります、それでも人数が多い訳では有りませんし、音大からの特別研修生は状況を理解した上で取り組んでくれています。」
「彼らは王立大学の一員となってメリットは有るのかな?」
「彼ら次第でしょう、王立大学音楽学部の名を高めることに成功すれば、それはメリットになるでしょう、出来なければ…、しかし世界的に名の知れた存在になるまでには、上手く行ったとしても何年も掛かることです。」
「学校の伝統と言うことかな、君も知っての通り我が国は伝統とは無縁でね、その辺りはどうなんだろう?」
「新設校には新設校の良さが有ります、何と言ってもしがらみが有りませんから。」
「その良さを活かして行けると思う?」
「この国は壮大な教育実験を進め成功していると感じています。
 日本で長期間、型に嵌った教育が行われて来た弊害が大きくなっていることを、この国での教育実習を通して、強く感じました。
 何の為の教育なのか、その根本を忘れている教師が少なからずいるのですよ。」
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近衛予備隊-340 [高校生バトル-76]

「香奈が学んで来た学校とここの国立学校では大きく違うのかな?」
「はい、ここでは義務教育内容でも、その教科を学習する意味を知る所から入っていますが、日本ではそんなことはほとんど無く、中学生になったのだからと定められたカリキュラムに沿って授業が始まり進められます。
 教師によっては説明をしているのでしょうが、私は各教科それぞれの単元を学ぶ意味を教育実習生として来たこの国で始めてまともに考えた気がします、十三歳の子と共にでしたが。」
「それは、詩織さまの指示で近衛予備隊が発足した当時からのことなのだよ。
 当時は自分もその説明を十分理解出来て無かったかも知れないが、少なくとも自分にとってプラスになる学習なのだと教官は感じさせてくれた。
 そして興味を持てるように指導して貰えたから今の自分が有る。」
「ジョン王子の様に元から資質の高い人だけでなく…、この国にも学習の苦手な子はいるのですが、それを否定することなく手間が掛かっても説明する教師の姿勢には考えさせられました。
 テストの得点はゲーム感覚の勝敗以外に重視されていませんし。」
「義務教育内容は国民全員に理解して欲しいことだからと、教員達も頑張っているのだよ。
 彼らは子ども達の理解度を確認するテストで、自分達の教える能力を確認しているのだとも話してた、能力は簡単に数値化出来るものでは無いから一つの指針としてね。」
「正直自分と同年代の女性が校長だったり、何をどう教えることが子どもの為になるのかを考えている人達、その指導の下、ここで教育実習を経験させて頂いたことは自分にとって大きな成長に繋がったと思っています。
 私は安易な気持ちで教育実習プログラムに参加しましたので、随分自己嫌悪に陥ったのですが良い経験をさせて頂けたと感じています。」
「王立大学設立に関わろうと思ったのは?」
「留学当初は、ここで多少の経験を積み日本で教育関係の仕事にと考えていたのですが、日本とは全く違う教育制度に触れ、その延長で大学が設立されると知りまして。
 閉塞感を感じさせられる日本で働くより、充実した日々を送れるのではないかと。」
「今は充実してるのかな?」
「ええ、こうして世界で一番若く素敵な大統領とお話しさせて頂いてますし、大学の学部一つ一つが興味深く、それぞれの学部が何を目指し何をして行こうとしてるのかを学ぶだけでも楽しいです。
 今はバラバラな組織ですが、それぞれが王立大学として一つに成って行く、その過程に立ち会うのもも他では経験出来ないことですから。
 私の活動は開学式典の準備が主になっていますが、学部間の交流や施設の共同使用などを提案しつつ、遠江大学と連携して誕生する大学を国の内外に伝える作業を手伝っています。」
「そうか、一度それぞれの学部メンバーとの食事会や、全学部の代表を集めた交流会を開きたいものだな。」
「是非お願いします、しかしスケジュール的にどうなのです?」
「食事は毎日とってるから、昼食会や夕食会の余裕は有る、詩織さまと良く食事をするのだが、一緒でも構わないだろ。」
「勿論です!」
「別に香奈が参加する必要はないのだから、そんな嬉しそうにしなくても…。」
「え~、意地悪言わないで下さい、メイドでも何でもしますから。」
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