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卒業旅行-01 [チーム桜-05]

桜根設立から一年、チーム桜の幹部達も大学卒業の時期を迎えている。

「私は吉田くんの補佐って聞いたけど。」
「うん、山根さんよろしくね、これスケジュール。」
「ありがとう…。
何これ、卒業旅行なのにおまけと仕事がついてるなんて、こんなのよく佐々木代表達OKしたわね。」
「山根さん仕方ないんだよ、こうでもしないと二週間の旅行なんて組めないからさ。」
「二週間といっても旅行気分を味わえるのは合計四日ぐらい? ってスケジュールじゃん。」
「だから、せめて俺たちが快適な旅のフォローをしたいと思っているんだよ。」
「そうか、私なんてまだ大した貢献出来てないからな、四月からは頑張るつもりだけど。」
「だね、桜根本社研修からスタートして、俺は東濃支社を希望してるけど君は?」
「私は新設の九州支社希望、実家からは通えないけど、県単位の支社が出来たらいずれはね。」
「そうか、お互い頑張ろうな。」
「ええ、ところで私は旅行中何をすれば良いの?」
「俺たち卒業生チームはまあ雑用係だな、指示が有ったり、必要性を感じた時に動く。」
「そんな感じで良いの? アルバイト料も頂けるんでしょ。」
「俺は、じっくり色々見て考えさせて貰おうと考えているよ、研修の内だと思っているからね。」
「そっか、チーム桜のメインスタッフなんてテレビでしか見た事なかったから…、吉田くんは?」
「自分は動植物園ボランティアの始めから参加してる、佐々木には色々教えて貰ったよ。」
「へ~、そうなんだ、安藤社長とは?」
「彼はすごく変わったよ良い意味でね、ただの大学生が大社長になる過程を少しだけ見させて貰った事は、一生の自慢かもしれない。」
「は~、初期の事に全然関われなかったのは残念だったな、同期なのに…。」
「まあこれからじゃないか。」
「そうね、でもさ今回はかなりの人数で動くんだよね、費用とか大丈夫かな、私なんかが下っ端スタッフに加わっても。」
「まあテレビ局の取材も何本か入っているしね、もちろん遠藤社長の所で番組作るし。
おまけ組の演奏会収入、講演会収入、グッズ販売、宣伝効果とか考えたら充分回収出来ると思うよ、この企画のスタッフ達はこの卒業旅行で稼いで、全国展開の資金的余力に出来ないかって考えてるそうだから。」
「そっか~、確かにそれぐらいの気持ちがないと桜根を伸ばしていけないわよね。」
「でも、安藤社長達の負担を軽くする為に、自分達が同行させて頂くという事は忘れないでね。」
「うん、それは大丈夫よ、このスケジュール見たら、頑張らざるを得ないでしょ。」
「僕らは前半の九州、北陸担当だからね、どこでどんなフォローをすべきかシミュレーション出来るかな。」
「空港まではバスなのね、荷物の積み下ろし、飲み物の準備かな。」
「そうそう、安藤社長に渡す分は全部、早瀬広報担当常務に渡してね。」
「あっ、ラブラブか…。」
「今でこそ副社長が機能し始めて少し余裕が出来たけど、それまで安藤社長はとにかく休みなく働いて来られたそうなんだ、卒論を書いたりもしながらね。」
「そうか気を付けるわ、ほんとは社長とお近づきになりたかったけど。」
「場合によっては早瀬常務のガードを頼む、男子禁制の場所とかではさ。」
「必要よねガードは…、写真はNGなの?」
「場合によるかな、基本的にはOKにしてるそうだけど。」
「モデルとかでも成功しそうだもんな。」
「ご本人は外見でなく中身で勝負したいそうだけど。」
「うわ~、私も言ってみたいな、そんな事…、でも外見も中身も…。」
「はは、山根さんにだって良いとこ沢山有るんじゃないの?」
「う~ん、そうだと良いな、桜根で見つけれるかな。」
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卒業旅行-02 [チーム桜-05]

「ねえ隆二、卒業旅行みたいなのの準備は出来た?」
「まあな、姉さんが手伝ってくれたよ。」
「そっか、結婚を控えてちょっとしんみりした話もしたの?」
「ああ、俺が社長になってから色々気を使ってくれてたし。」
「ふふ、お姉さまの結婚式の事は考えてるのかな?」
「もちろんさ、相手が桜根の社員だし…、でも微妙だよな、自分よりずいぶん年上の部下が姉と結婚ってさ、俺も応援しての結果とは言え、花婿の上司として挨拶するのか、花嫁の弟として挨拶するのかさ。」
「隆二でも気にするんだ。」
「当たり前だろ、だいたい社員のほとんどが自分より年上って、こんな社長少ないと思うぞ。」
「それを立派にこなしてる姿が素敵なんだけどな~。」
「はは、ちゃんとフォローしてくれよな、結婚式当日も。」
「大丈夫よ色々調べてるし、中身の薄い会話は私の方で引き受けるから、そういうの苦手でしょ。」
「まあな…、そんな薄い会話の中に面白い発見がないかと思う事も有るけど、結局得られるものがないと感じて終わってしまう、まあ自分が未熟なんだろうけど。」
「そんな事ないわよ、あ、お父様はどう? この間は少し酔ってみえたから。」
「もう舞い上がってしまって、ごめんな、姉の結婚が近づいてきて、ちょっとナーバスになってた所で紹介したからか、桜根の規模が親父の会社を超える勢いになって来てるって話したからか、まあ佐紀となら何時でも結婚OKと話してくれたよ。」
「うふっ、じゃあ、後はタイミングだけなのかな。」
「うん、ちょっとばかり有名人になってしまったから、今回の旅行中に皆とも相談したいと思うけどどう?」
「そうね、私のテーマでも有る、結婚、出産、子育て支援の取り組みにプラスになる形でね…。」
「なあ婚約発表は広報担当常務がするんだよな。」
「大丈夫よ、隆二は私の隣でにこにこしてれば良いの。」
「その、にこにこが苦手なんだけど…。」
「じゃあじゃがいもでも置いとくかな。」
「そのじゃがいもに申し訳ない気がする。」
「うふ、早く発表したいな~。」
「はは、それより卒業旅行の最初は九州だけど大川部長のバックアップは出来そうかな?」
「もちろんよ、その為の企画でも有るからね、今回の旅行は。
現地でのイベント中に桜根九州支社設立の正式発表とか、全国発信への流れについての報告は問題はなさそう、イレギュラー対応も含めて全社でバックアップしていこうって山上さんも頑張って下さっているし。」
「大川部長も山上部長も前の会社で実績が有って、転職する理由なんてなかったのにな。」
「安藤社長に夢を感じたって、山上さん仰ってたわよ。」
「あっ、山上部長、佐紀にはそんな話もするんだな。」
「ふふ、大川部長とも色々話してますよ~。」
「その割に俺には…、その部長達との話が伝わって来ない気がするけど。」
「ほんとに重要な事以外は隆二に伝えるなって言われてるのよ、仕事を増やす事になるからって。」
「はは、確かに色々聞いてしまうと色々考えてしまうからな、俺は。」
「でも、人に恵まれたわね、桜根は。」
「だな、人は石垣人は城だからね。」
「社長に魅力がなかったらそうは行かないわよ、あ、そうそう隆二のお父さまが会社の社長だったなんて知らなかったな~。」
「まあ、話す必要ないと思ってたし、親父からは社長になるに当たって色々アドバイスは貰ったけど、桜根が安定するまではあえて、表立った協力はして貰わない様に話していたんだ。」
「でもサポート企業でもおかしくない企業でしょ。」
「親の力を借りて成功させても後々続かないだろ、でも桜根の経営には親父やお爺さまの考えが生きているんだ、社長が見栄を張るなとかね。」
「そうか優良企業の社長の教えって事ね、実際やばかった会社の何割かは社長にも問題が有ったもんね。」
「まあ、親父の会社も今後は桜根傘下入りを検討するらしい。」
「えっ、サポートとか協力企業ではなくて?」
「俺に押し付けて、趣味に生きる事を検討中だそうだ。」
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卒業旅行-03 [チーム桜-05]

旅行初日、福岡空港。

「佐々木、飛行機に乗ってしまえば早いもんだな。」
「そうだな、乗るまでに時間が掛かったけど。」
「昼飯はどこで?」
「はい遠藤社長、福岡市内のお店が予約して有ります。」
「このメンバーが揃ってメシなんて久しぶりだよな。」
「そうよね、確かに卒業旅行っぽいわ。」
「すいません、おまけがついて来ちゃいまして。」
「いや~、裕子ちゃん達がいてくれた方が場が華やいで良いよ。」
「でも食後は別れて挨拶回りなんだろ。」
「遠藤あきらめろ、今回のイベントのバックアップをして下さる放送局なんだから、遠藤の所の作品もずいぶん使って頂いて、結構な収入になったろ。」
「ああ、でも佐々木と裕子ちゃんで充分だと思うぞ、向こうにとっては、芸能部の社長も同席するし、あ~、現場仕事がしたい~。」
「ならば次期社長を育てないとな。」
「なあ安藤、誰かいないかな、うちの連中現場が好きな奴ばかりで、現場以外の連中は社長の器では有りませんだって。」
「そうだな、本気ならすぐ動くけど大丈夫か?」
「正直、俺は安藤と違って社長に向いてないと思うんだ。」
「分かった、とりあえず副社長に…、良いのか、表向き格下げになるが。」
「ああ、頼む。」
「じゃあ連絡するよ。」

福岡市内の料亭。

「遠藤、社長候補が三人いるが会ってみるか、金沢で合流も可能なんだが。」
「その早さが安藤の力なんだよな、良いかもしれない金沢でも色々撮影するから、現場も見て頂けると話がし易いんじゃないかな、なんなら三人とも、そのまま社長と幹部になって頂いても…、経営レベルをもっと上げたいと思っているんだ。」
「分かった。」
随行スタッフの吉田に合図を送る安藤。

「安藤、ほんとに遠藤を社長から降ろすのか?」
「佐々木、前から少しきつそうだとは聞いていたんだ。
遠藤がこれまで頑張って来てくれたから、今のチーム桜が有ると思うし、遠藤が社長の職から離れたら、また違った動きを見せてくれると思う。」
「やっぱ、安藤は大社長だな。」
「でも遠藤、次期社長が決定するまでは、頼むな。」
「もちろんだ、なあ、ここにも芸能部を置けないか? ここでも番組制作していきたいし。」
「う~ん、その方向で行こうか、ならば放送局への挨拶はより重要だな。
俺も何とか時間を作って…、山根さん、スケジュール担当に調整をお願いしてくれるかな、佐々木達と一緒には行けないんだ、先方の都合も有るからすぐにお願い。」
「はい、社長承知しました。」
「遠藤が推し進めて来た、芸能部のトーク能力アップトレーニングの成果が放送局でずいぶん認められてラジオ番組も持たせて貰ったんだろ、ここでもいけるんじゃないか?」
「佐々木、そう簡単じゃないんだぞ、トーク力は頭の回転の早さが必要だからな。
まあ、早くなくても上手くごまかす能力というのも有るけど。」
「そうか…、あっ、この後って安藤達はどこへ?」
「九州支社設立に向けて、色々挨拶回り、サポート企業の福岡支社とかね、夜は桜根傘下入り希望の会社幹部との懇談だな。」
「大変そうだな。」
「いや、大した事ないよ、問題の有る案件はないと大川副社長から聞いているからね。
時間の掛りそうな案件はちょっと先送りさせて頂くそうだ。」
「安藤、九州支社設立での勝算は有るのか?」
「なかったら進めてないよ、九州支社といってもまずは福岡、今までと条件は違うとは言え小さな町ではないからね。
この一年で蓄積したノウハウも有るから、変なのにひっかからなければ大丈夫だと思う。」
「変なのか…、そこが問題だよな、拡大していく時にマイナスになる連中とは関わり合いたくないよな。」
「そんな情報も地元の方ときちんと接して居れば教えて頂けると思っているよ。」
「お~、佐紀、こんな何でも無難にこなしちゃう、面白みのない奴のどこが良いんだ?」
「ふふ、それはね、ひ・み・つ。」
「まあ安藤には聞くまでもないだろうけど。」
「はは、ちゃんと秘密にしてくれる処かな、でさ俺たちの婚約発表のタイミングだけど、どうかな?」
「えっ、もうそこまで? ご両家のなんたらかんたらは済んでるのか?」
「まあ、誰も反対してないし、この旅行の後に家族同士で会う話もあるよ。」
「変に先送りするより、早めの方が良いと思う、お~、イベントだ~、燃えてくるな。」
「遠藤、もしかして他人の結婚式で番組作る気か?」
「当たり前だろ、佐紀の色々な思いへの応援にもなる訳だし。」
「う~ん、すごい演出になるのか?」
「逆だな、こういうのはシンプルなのが良いんだよ、ただ、どの要素をクローズアップするか、桜根の今後の展開をどう見せるかで変わっては来る。
将来的に出産育児をしながら、佐紀がどう働いて行くかが問題だろ。」
「さすが遠藤社長ね、著名人がほとんど出ない番組を作ってもそれなりの視聴率を取れてるし、そのままチーム桜の宣伝にもなってる、やはり遠藤社長の功績は大きいわ、副社長降格と共に昇給ね。」
「まあ今までが安過ぎたからな、安藤もだろ? 社員から大幅アップの要求が出ていたよな。」
「さすがに断りづらくなって来てるから、その分で横山社長のとこに貢献するかな…。」
「佐々木はどうなんだ?」
「俺は本とか講演会とかで色々収入が有るからね、芸能部で管理して貰ってるけど、微妙なのは佐紀か?」
「ちゃんと頂いてますよ、まあ桜根の常務ってのは、部長連中がお遊び感覚で付けた肩書だから、隆二に合わせてもらってたけど、私も芸能部で管理して頂いてる収入も有るからね。」
「でも、これからは俺たちから学生という肩書がなくなる、今までの様に助けて貰う訳には行かなくなるから気を引き締めてくれな。」
「ああ社長の仕事から解放して貰う分、より良い作品を作って行くつもりだ、チーム桜や桜根にとってプラスになるのをな。
実際社長を経験させて貰った事は自分にとってプラスになった、物事を見る視点が変わったからね、これから社長になって下さる方からも色々学ばせて貰えると思っているよ。」
「遠藤さんは、社長交代関連でも番組を作るのですか?」
「当たり前だろ、株式会社桜総合学園制作部、初代社長渾身の作を作らせて貰うよ、きちんと世間に理解して頂けなかったら、次期社長も俺も仕事がしづらくなるじゃないか。」
「遠藤の言う通りだ、一つ一つの事をきちんと情報公開していかないと誤解も生まれ易くなるからね。」
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卒業旅行-04 [チーム桜-05]

旅行二日目はイベント。
午前中は桜根とチーム桜の説明会から始まる。

「皆さんお待たせしました、本日進行を務めさせて頂きます橋本裕子です。
今日の第一部は企業の方向けの少し硬めの内容ですが、若い方のご来場も多くて嬉しいです。」
「チーム桜応援してるよ~!」
「裕子さ~ん!」
「来てくれてありがと~!」
客席から声援が飛ぶ。
「有難うございます、ではチーム桜メインスタッフの入場です。
まずは、株式会社桜総合学園制作部、遠藤社長。
続きまして、チーム桜の、佐々木代表。
桜根の重鎮、大川副社長。
桜根広報担当、早瀬常務。
最後は、じゃがいも社長です。」
大きな拍手と笑い声に迎えられ五人が舞台上に並ぶ。
「あのさ、どうして自分だけじゃがいも社長なの?」
会場から歓声が上がる。
「待ってました!」
「じゃがいも社長、素敵よ~。」
「あらっ、私の隆二に色目を使っちゃだめよ。」
佐紀が声を上げる。
これは、ここ最近の場を盛り上げるネタの一つ。
和やかな雰囲気で始まるが。

「ここからは事前に皆さまから頂いた質問に答えながらとさせて頂きます、まずは早瀬常務お願いします。」
「はい、私からは桜根組織の事について話させて頂きます。
若干分かりにくいという声も有りました、サポート企業と協力企業という名称をサポート企業に統一させて頂く事になりました、二者は設立当初立ち位置が大きく異なりましたが、桜根周辺の協力関係が大きく進展しましたので分ける必要がなくなって来ました。
持ち株会社桜根の傘下企業集団桜根グループと、桜根と色々協力し合うサポート企業集団という形になります。
サポート企業同士も良好な協力関係を築きつつ有り、時には桜根がその調整をさせて頂く事も有ります。
桜根発足から一年、賛同して下さる方のおかげで桜根傘下の企業も拡大しております。
弱小の中小企業の集まりが、サポート企業の援助の元大きくなりました。
おかげで僅かながらも株主配当を出させて頂く事も可能になりました。
ただ、先日株主様にアンケートをお願いした結果、配当に充てる資金が有るのならそれを桜根グループ拡大の資金にという声が多数有りまして。
この続きは素敵なおじさま、大川副社長お願いします。」
「はは、美人常務の後にこんな親父で申し訳ないですが、うちの安藤社長は桜根のさらなる拡大を決意して下さいました。
ちょっと誤解が有る様ですので話させて頂きますが、安藤社長は決して飾り物の社長では有りません、この一年、年上の社員の上に立って桜根を見事に導いて下さいました。
私自身安藤社長の元で働けた事は喜びであり誇りです、今まで何人もの社長を見てきましたが、彼ほどの能力を持った人物は少ないと思っています。
私は、この度その社長から桜根九州支社の支社長に任命して頂きました。
この地のテレビ局が協力して下さったおかげで、桜根が何を目指しているのかご存知の方も多いと思います。
この地でも中小企業再生、経営安定化を目指して活動して行きますので、よろしく御協力の程お願いします。」
沸き起こる拍手が期待の大きさを表している。
「では次に安藤社長、お願いします。」
「はい、先にお断りしておきますが、大川支社長は話を盛る癖が有りますので、私の事を過大評価されない様にお願いします。
名古屋で動き始めて、愛知県内、隣の岐阜三重で拡大しつつ有る桜根ですがこの九州の地からも、繋がりたい、仲間としてもっと協力して行きたいという声を沢山頂きました。
その熱意にお応えすべく、先ほど大川が申しました通り、株式会社桜根九州支社の設立を決意させて頂きました。
皆さまご協力のほどよろしくお願いします。」
再度の歓声の後。
「さて、私どもの目標は幾つか有りますが、今日は内需拡大について少しばかり話させて頂きたいと思います。
企業が人件費を必死で削ろうとしていた事は、皆さんご存じというより、この会場にお越しの方の中にも、人件費の削減は大きなテーマだと考えておられる方もおみえでしょう。
工場を人件費の安い海外へ、正規雇用から非正規へ。
そうして競争力を維持せざるを得なかった訳ですが、その結果はどうでしょう。
所得格差が語られていますが、購買力の低下により安ければ良いという感じのデフレ的購買行動を推し進めて来ました。
安ければ良い、ならば薄利多売、その為には人件費を抑える、購買力が落ちる、こんな循環では内需の安定、拡大あり得ません。
この構造を根本から変えたいと考えているのが、うちの通販事業です。
良いものを、それなりの価格で販売する事によって関係企業にきちんとお金が流れる。
二極化が進んでいる日本です、良いものにはそれなりの対価を支払える人だって少なく有りません。
関係企業で働く人達の収入が安定すれば、彼らは次の多少高くても良質なものに手を出せる購買層になる。
簡単な事では有りませんが、こんな形で内需の安定に繋げたいと考えています。
まずは安心した子育てが出来て、きちんと良いものを購入出来る人を増やす事、これが広がれば安定した内需拡大にも繋がっていくと考えています。
薄利多売は大企業にお願いして、我々は良質な物を社員にきちんとした額の給料を払える価格で販売させて頂く事を考えています。

さて我が国は輸出関連企業の力が大きいですが、世界経済には常に不安材料が潜んでいます。
我々は、不況になった時に真っ先に苦しめられてきた中小企業を、桜根傘下に置いたりサポート企業となって頂いて協力し合う事によって、少しでも強くすることを目指しています。
チーム桜は色々な思いのが込められて立ち上げられた仲間組織、その経済活動の中心が桜根となっております。
若輩者であります私が社長を務めさせて頂いております、しかし多くの優秀な社員によって支えられています。
皆さんが色々な形で、チーム桜、桜根と繋がって下さったら幸いです、よろしくお願いします。」

拍手が巻き起こる。
青年社長の堂々とした話ぶりに感銘を受けた者も多かった様だ、中には飾り物の社長だと思って来場した人もいたのだから。
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卒業旅行-05 [チーム桜-05]

しばらく桜根関連の話が続いた後。

「では、お時間の関係も有りますので、次はチーム桜、佐々木代表、お願いします。」
「はい私はチーム桜の中でも学生ボランティアや社会福祉団体関係を中心に動かせて頂いております。
今回桜根九州支社新設とともに、チーム桜としましても福岡本部設立に向けて準備を始めてさせて頂いております。

さて今日はチーム桜の活動からご質問の多かったモデル地区について少し紹介させて頂きます。
チーム桜設立当初よりモデル地区として集中的に学生の調査研究実習の場となった名古屋市内のエリアでは短期間で住民の方の意識が変わってきました。
元々は、今時の住宅地で住人どうしの繋がりがかなり希薄だったのです、高齢化が進む中、交通の便の良さも有りまして移り住んでこられた方も少なく有りません。
土地も安く有りませんが、元は一軒だった空き家の敷地に三軒、四軒の一戸建てが出来たり、マンションが建ったり、昔からの住民同士は多少の繋がりは有っても、新たに越して来られた方々は地域の活動に興味の無い方が少なく有りませんでした。
お子さんがいらっしゃれば、地元の幼稚園、保育園、小学校を通して、地縁的繋がりも出来ますが、そうでないと、近所付き合いは広がりません。

そんな地域で地元婦人会等各種団体の方々と学生達が住み易い町作りを目指して活動を始めました。
この時申し合わせたのは、参加を強制しない事です。
チーム桜の趣旨に賛同した人だけでやって行こうという事です。
自分の住んでいる所の事だから多少強要して掃除に参加して貰っても良いのでは、という声も有りましたが、強要しては活動が長続きしないということです。
もっとも色々な形で地域外からのボランテア参加も有りましたから、いたって綺麗だった町がさらに綺麗になって行くのに大した時間は掛かりませんでした。

一つの起爆剤としてモデル地区で実行させて頂いたお祭りには多くの方が参加して下さり、その後一気に地域活動が活発になりました。
町という集合体の見直しは、大きな天災にみまわれた時、まず助け合うのは隣近所の人ではないかという声に押されて、少しずつですが近所付き合いの無かった方々にも伝わって来ています。
消滅しかかっていた商店街は福祉関連や地元の方の為の商店も増え、学生達の実習ショップと共に少しずつ賑わいを取り戻しつつ有ります。

また地元の方々が出資して設立した桜根傘下の会社の力も大きいです。
飲食店を含め様々な展開を、数少ない正社員を多くのボランティアが支えるという、特殊な会社になっています。
この会社のベースは弱者でも暮らし易い環境作り、その為に色々な提案がなされ、試行錯誤の結果色々な成果が実りつつ有ります。
詳しくはウエブサイトをご覧になって下さい。

この成功の裏には組織の強さが有ります。
元々すごく活発とまではいかなかったものの、地域婦人会などの組織が有った事、それらの組織を束ねていたリーダーが尊敬される存在だった事、そこに学生のリーダーが学生組織をきちんとまとめて乗っかる事に成功した事、有能なリーダーがいて組織がまとまったからこそモデル地区は予想を超えての成果を上げることが出来たと考えています。
そこを踏まえて、この福岡、九州でも良い形の組織を構築出来たらと考えています。
よろしくお願いします。」

「こちらこそよろしく~!」
「がんばります~!」
「佐々木さん素敵!」

拍手と声援の盛り上がりの後。

「では、続きまして株式会社桜総合学園制作部、遠藤社長お願いします。」
「はい、しかし自分はこういう席は苦手でして、本来裏方なんです、え~っと今日は報告だけさせて下さい。
桜根九州支社設立に合わせ、桜総合学園制作部の福岡支社及び桜総合学園芸能部の福岡支社を立ち上げさせて頂く方向で話を進めています。
この地での番組制作は今回大きく協力して下さった局の方々とも力を合わせ、将来的には…、低予算から始めますが、映画制作も視野に入れています。
芸能部はこの地で活躍されてる方々の後押しの意味合いが有ります、インディーズでCDやDVDを出す手伝いなど…、出来ますが、最後は実力の世界です。
桜根通販を通して赤字にならない程度に売れそうなら積極的に行きたいと考えています。
ただ、ほんとうに力が有ると認めさせて頂いた方は、この地での番組制作にも参加して頂いたりとか考えています。
名古屋発の連中を心暖かく受け入れて下さった福岡の…、今度は福岡発のアーティストを全国へ発信して行きたいと思っています、よろしくお願いします。」

緊張しまくりの遠藤の話しを理解するのに少し遅れたのか、拍手はワンテンポ遅れて始まった。
しかし、地元発のアーティストを応援する気持ちは皆に有る。
盛大な拍手が送られた。
橋本裕子が締めに入る。

「私どもの活動は色々な形でお伝えさせて頂いておりますが、これからは福岡発でという情報も増えて行くと思っています。
私は佐々木代表や遠藤社長との思いがけない出会いから、色々な体験をさせて頂きました。
ここに、こうして立っているのも不思議な感じです。
チーム桜という素敵な仲間の集まりに参加させて頂いて、ほんとに感謝しています。
バイオリンの調べが流れて来ましたね。
演奏はもちろん滝沢桜子です。
本日第一部のエンディングとなります、今日はご来場下さいまして本当に有難うございました。」
深々と頭を下げ、佐々木達と共に舞台上から降りる。
入れ替わりに演奏を続けながら、桜子入場。
しばしの演奏の後、第一部終了となる。
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卒業旅行-06 [チーム桜-05]

午後は観客を入れ替え、同じ会場でクラシック系の演奏を中心に様々なパフォーマンスが繰り広げられる予定。
ただし今回の演奏は株式会社桜総合学園芸能部所属のメンバーだけではない。

「佐紀、今回は芸能部所属だけじゃないんだよな。」
「ええ、事前の録音によるオーデションで残った人達が一週間前に集まって練習して来たそうだけど…、遠藤くんはドキュメンタリー番組に仕上げる様に指示を出しておいたとか…、隆二、始まるわよ。」

弦楽四重奏に始まり、ピアノ三重奏など様々な形式での演奏が続く、進行の橋本裕子の簡単な解説をはさみながら、曲は親しみ易いものばかりだ。
室内楽の後、オーケストラ演奏、合唱、その合同演奏と進んだ。
終了後。

「佐紀、なかなかのレベルの人達が集まってくれたね、良い演奏会だったな。」
「ええ、これはチーム桜の財産が増えたって事ね。」
「でも出身はバラバラなんだろ。」
「一番遠い人は北海道から来て下さったそうよ。」
「う~ん、チーム桜スペシャルオーケストラか、うまく生かして行きたいけど難しいのかな。」
「人数が多いとギャラも膨らむのよね。」
「他の活動をしながら、ここぞという時に集まって頂いたりとか、遠藤は何か考えてるのかな。」
「そうね、何人かは芸能部に入って下さるのかも。」
「そういう流れなのかな…。」
「それより、夜は大物アーティスト登場だからね。」
「まさかだよな、でもギャラは大丈夫なのか?」
「チーム桜に賛同して下さってギャラは格安、まあDVDが売れれば良いって、条件としては私達と食事を共にしたいとの事、明日の夕食を共にという事になってるそうよ。」
「それは、こっちが緊張するよな、大会社の社長以上に、社長相手なら話題の心配はないが。」
「スタッフ連中も舞い上がっていて、食事会に関する私への報告もさっきの休憩時間だったの、ずいぶん前から準備してた筈なのにね。」
「はは許してやれよ、超一流だからね彼女は。」
「でも食事会ではどんな会話を想定しておけば良いのかしら?」
「普段の事なんて俺達全然分からないし、親よりも年上の方だから…、こっちが合わせるしかないだろうな、曲は何曲か知ってるから、多少の質問は考えておくよ、何にしてもお礼は言わなくちゃいけないし。」
「ごめんね、充分な下準備が出来なくて。」
「たぶん大丈夫さ、変な小細工抜きの方が、きっと好感を持って頂けるよ。」
「だと良いけど。」

第三部オープニングは第二部出演者から選抜されたクラシック奏者達の演奏。
続いて滝沢桜子バイオリンソロ、その途中から歌声が加わる。
実力派シンガーソングライターの登場だ。

一曲目終了。
「すごい、バイオリンと歌声だけで、いやだからこそか…。」
「このイメージが有っての…。」

大歓声が収まりかけた所で。
「バイオリンは皆さんご存じの滝沢桜子ちゃんです。」
大御所に紹介され、桜子はにこにこしている。
「では次も桜子ちゃんとです。」

デュエットの後も、第二部出演者の演奏をバックに大盛り上がりの舞台となった。

「桜子ちゃんも、ずいぶん度胸がついてきたよな。」
「でも、なんか守って上げたくなる雰囲気が有るのよね、あの子は。」
「その辺りが人気の秘密なのかな。」
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卒業旅行-07 [チーム桜-05]

三日目、佐々木や遠藤達は観光の予定だが。

「安藤は放送局の社長と懇談か?」
「ああ日曜日なのに会って下さる事になった。」
「芸能部は演奏会だから、少し寂しいよな。」
「なら、見に行くか遠藤、今日はポップス系が中心だろ。」
「行くと仕事になってしまうから、今日ぐらいはのんびりしようぜ、うん? 他は吉田だけ?」
「いえ、こちらの古賀さんが案内して下さいます。」
「よろしくお願いします。」
「なら安心だな。」
「安藤社長達は観光の時間減ってしまいましたね。」
「山根さん、気にしなくて良いよ、それより向こうの社長に申し訳ないよな。」
「大丈夫です、先方も会いたがってたそうです、じゃがいも社長に、佐々木代表達は時間の関係で社長とはお会い出来なかったそうですから。」
「あれっ? こっちは同行者多くない?」
「あっ、大丈夫です先方も了承して下さってますから。」
「そういう意味じゃなくてさ。」
「自分は観光より仕事に興味が有るんです、桜根社員達が大社長と語る安藤社長が、局の社長とどんなお話をされるのか楽しみです。」
「早瀬常務のガードも必要ですし。」
「テレビ局の中も興味が有るじゃないですか。」
「隆二、気にしなくて良いのよ、佐々木くん達は少人数で動きたいだろうし、でも佐々木くんも遠藤くんも夕食への遅刻は厳禁よ。」
「は~い、さあ古賀さん、まずはどこから?」
「遠藤社長はどんな所に興味がお有りで…。」

一行は二組に別れる。
移動中、安藤達の車中。

「佐紀、昨日のグッズの売り上げはどうだった?」
「二日間では絶対売り切れない量を確保したつもりが、今日は売り切れ続出かもって報告が入ったわ、新作を色々用意したのが良かったのかな。
売り切れたら御免なさいと告知した効果で、買い急いだ方が多かったのかもしれないけど。」
「グッズが売れると安心だな、チーム桜ブランドの商品も買って頂けそうだ、ここでも予定通りにTeam SAKURA直販店をオープンしても問題ないな。」
「そうね。」
「早瀬常務、グッズが売れてるのは聞いてましたけど他も売れてるのですか?」
「ええ、山根さん、名古屋の店も通販も大盛況よ、Team SAKURAは良質な物にしか付けられない、もし不具合が有った場合は徹底的に調査するといった姿勢が受け入れられて来てるし、さらなる改良案やこんな製品が欲しいといった要望にも応えてるの、Team SAKURA直販店も様子を見ながら店舗を増やして行く方向よ。」
「全部桜根傘下やサポート企業の製品なんですね。」
「ええ、サポート企業の製品の場合でも安物は扱わず、販売元Team SAKURAとして他の製品と差別化を図って頂いてるわ。」
「私まだ行って無かったんです、この旅行から帰ったら行ってみます、じゃがいも社長グッズも有りますか?」
「もちろんよ、じゃがいも社長グッズの人気は根強いから、まあ種類も多いから全部売り切れという事はないと思うわよ、ね~、隆二。」
「そ、そうか…、そうそう昨日の九州支社設立の発表を受けて、各地で支社設立を望む声が高まっているそうだ。」
「すぐに支社は無理でも準備室や出張所ぐらいは立ち上げていくべきかもね。」
「そうだな、準備室兼グッズ販売店でも良いし、検討して貰う様にメールを入れとくよ。」

「佐紀、広報担当として何か現時点での考えは有る?」
「そうね、遠藤くんとも相談して、桜根拡大は大きく宣伝していくけど…、もちろんお金は掛けないわよ…、でさ、遠藤くん絶対色々考えてると思うの。」
「だな今までフォローが足りなかったと思っているよ、ずいぶん社員を増やして売り上げも上がって来てるから、彼が十二分に動ける体制を作って行くつもりだ、新社長達とね。」
「ねえ、桜根本社の副社長兼総合プロデューサーという立場になって貰って、主に桜総合学園を見て貰うってどうかな?」
「あっ、そうだな、それなら親会社の役員に昇進するという事になって降格人事とならずに済む、対外的イメージを落とす事なく行けるな、後で遠藤と相談するよ。」

「しばらくは拡大路線だけど、どこかでペースが落ちるでしょ、その見極めって難しくない。」
「ああ、その問題は幹部達と共有してるよ、今は桜根傘下がチーム桜メンバーの目に届く範囲だけど、この先何時かは弱くなりかねない、気を付けていないと一旦持ち直した会社がまた業績低下となったり、手を広げ過ぎて実績を上げられなくなってもいけない、バランスを取って進めて行かないとね。」
「バランス感覚って事ね、でも会社が大きくなると大変ね。」
「組織に問題が発生した所から崩れるという認識を持つ様にお願いはしてるが…、今の勢いを考えると気が緩みかねない、幹部だけでなく全社員にお願いするべきかもな。」
「そうね、桜根傘下の社員達は分かって下さると思う、全社レベルでバランス感覚を持てたら、かなり余裕が出来ると思うわ。」
「先回の全社員向けアピールは大川さんが動いて下さって、良い反響が有ったけど。」
「今回は私が動こうか、隆二の負担は最低限にするから。」
「助かるけど、無理はするなよ。」
「ええ大丈夫、ふふ、私が疲れた顔してたら隆二の負担になるって言われてるの、私の心配じゃなく隆二の心配ってとこがなんか悔しいんですけど。」
「はは、確かに佐紀には何時も余裕を持って働いていて欲しいと思うよ、佐紀じゃなくても自分の回りに余裕のない社員はいて欲しくないからね。」
「うん、余裕のない社員が増えたら伸びない会社になるのよね。」
「どう考えてもそうだろ。」

「社長着きました。」
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卒業旅行-08 [チーム桜-05]

テレビ局内応接室。
局の社長との挨拶を終えてから。

「安藤社長、桜総合学園の作品は質が良いね。」
「有難うございます、質の良さは名古屋地元局の方々が色々指導して下さったおかげです。」
「それだけなのかな?」
「いえ、うちのバックにはチーム桜の母体となった学生集団が有ります、様々なジャンルの人で構成されていて、そこから色々な企画が寄せられたりしています、また工学部系の学生に対して会社側からこんな仕掛けは作れないかと相談したり、逆にこんな装置を作ったから試して欲しいとか依頼が来たりもしています。
美術系の学生達も実習の形で手伝ってくれてます、映像作品を持ち込む学生もいます。
出演者の衣装を作りたいという学生も多いです、一人一人の技量はプロには及ばなくても、色々な方面から助言を頂いて、それなりのレベルに仕上がってるという事です。」
「そうか学生の力が良い方向に働いてるんだね。」
「はい、おかげで制作コストが抑えられ、社員にきちんとした給料を安心して払わさせて頂いています。」
「そうだったね、桜根の給与に関する方針は間違ってないと思うよ。
アーティストやタレント達も無名の割にしっかりしてるね。」
「ええ、素人は要らないと宣言してオーデションをしてきました、芸能部のメンバーには実力を伴なわないとなれません、担当者によると最近はど素人の子どもの下手さを、成長の過程を見せると称してアイドル活動させている所も有るそうですが、桜根自体が質にこだわった経営をしていますので、成長の過程を見せる演出にしても、それなりの力量からさらに、という形のみにしています。」
「それは分かる、満足に歌も歌えないアイドルがプロモーションとかで来ても歌を聴きたくないし、トークも下手過ぎて、いくら人気が有ると言われてもね、逆に知名度が低くても力の有る子なら応援したくなるよ、我が社にはそんな連中が多くいるから、君の所とは積極的に関わって行きたいと話す社員も少なくないよ、やはりオーデションは厳しいんだね。」
「そうですね、シビアな面も有りますが、真面目な応募者に対してはフォローもしています、チーム桜のメンバーも手伝って下さっていまして、一回落ちた人達には何が足りなかったのかを説明した上で、考える時間と次のチャンスの用意をしています、その現場では合格者とどこが違うのか、売れてる芸人と売れてない芸人の違いを考えてみようとか話しているそうで、こういった事をきちんと受け止めて再挑戦してオーデションに通る人もいます、もちろん再挑戦して落ちる人もいますが、前向きに挑戦して来る人に対しては、継続的なアドバイスをボランテアスタッフの方々がして下さっています、考えの甘さが変わらない人はさすがに他をお勧めしているそうですが。」

「今までは学生のみ、でもこれからは色々な人を受け入れるそうだけど大丈夫なのかな?」
「うちは力の有る人の応援を主眼を置いています、実力は有るけど何かが足りない、その部分を応援して行きたいと考えています。
芸能部が取って来た仕事のギャラだけで生活出来そうにない人の相談にも乗って行きます。
芸能の仕事一本で頑張るという人には、実力、実績を上げて下さいと言う事しか出来ませんが、早く安心安定を得たいという方には、芸能部正社員の仕事を検討して頂いたり、桜根関連でアルバイトを紹介したりといった事を考えています。」
「そこまで考えてるという事は、これからも芸能部入りのオーデションは厳しいという事かな?」
「そうですね、ずば抜けた才能をお持ちなら問題なく契約をお願いしたいですが、微妙な方との契約は現場サイドにとって悩み所になりますから。」
「しかし、桜根の社長は傘下の一企業の内情までずいぶん詳しく把握なさっているのですね。」
「いえ、今日社長が会って下さるという事で、ちょっと現状報告に目を通して来ました、基本的には各社の社長に任せています。」
「なるほどね…、各社の社長って皆安藤社長より年長者だと思うけど、大変じゃなかったのかな?」
「プレッシャーは大きかったですが覚悟の上の事ですし、優秀な社員に恵まれましたから。」
「その歳でその言葉が出るのか…、チーム桜の学生幹部も優秀だと聞いたけど。」
「はい、チーム桜の学生達は基本学業優先ですから、幹部だけでなく優秀なメンバーが集まっています、全員成績優秀とまでは行きませんが。」
「優秀な子ばかりだと、逆に視野が狭くなる可能性も有るからね。」
「はい、その辺りのバランス感覚をメンバーがどれくらい持てるかが一つの課題になっています。」
「うん、じゃあ桜根もチーム桜も拡大路線だけど、人的には大丈夫なのかな? 人材の確保って難しいでしょ。」
「はい、今の所は人事部ががんばってくれてまして、桜根グループへの入社希望、グループ内転職希望など総合的に判断して拡大の為の要員を確保してくれてます。
別の動きとしましては…、例えば桜総合学園制作部の場合、今春の新入社員はほとんどが今まで実習として制作に関わってきた学生メンバーなんです。
彼らは学生の間アルバイト待遇でしたから、制作費を抑える事に貢献してくれました。
そして今もアルバイト登録している学生は大勢います。
それぞれの適正や希望、日程の都合に応じて社員の指導の元、制作部を支えてくれています。
それは芸能部のマネージャー等も同様です。」
「そうか、実習で力を付けてからの就職なら文字通り即戦力だね、桜総合学園の秘密が分かったような気がするな。」
「そんな舞台裏も、きちんとした番組にさせて頂く予定です。」
「う~ん今回はチーム桜の事を紹介する形で放送させて貰ったけど、今後も…、しかしスポンサー陣が強いね。」
「はい助かっています、今回の企画に関しても桜根サポート企業に助けられています。」
「始めて君達の事を知った時は、学生のお遊びかと思ったけど、今回改めて調べさせて貰ってびっくりしたよ、この前お宅の大川副社長とも話をさせて頂いたが、君の功績を色々楽しそうに話していかれたからね。」
「困った事に、彼は話を盛る癖が有るんです。」
「はは、そうなんですか、早瀬常務?」
「大川副社長は、話を盛るような方では有りません、むしろ控えめな方です。」
「佐紀…。」
「はは、人の評価は分かれるものですね、ところで安藤社長はここでの展開に勝算はおありで?」
「実際動いてみないと分からない部分も有ります、名古屋と福岡では色々条件も違いますし、実の所この一年で大きくなりましたが、実際はその前に一年間の実質的な準備期間が存在しています。
こちらに支社、支店、工場等をお持ちのサポート企業が支援を申し出て下さっていますが、未知数の部分も少なく有りません。
ただ、今までの試行錯誤によって得られた経験が有りますし、大川は設立当初より部下の信頼の厚い人物です、私自身も色々教えて頂きました。
悪意有る方によって足元をすくわれる様な事さえなければ、必ず結果を残してくれると思っています。
多少時間が掛かったりトラブルが有っても、九州支社を絶対成功させようという声が、チーム桜のあちこちから届いています。」
「なるほど勝算有りと。」
「はい。」
「では、他の方の話も聞かせて貰おうかな。」

しばらくの懇談の後、テレビ局を後にする。

「食事と美術館どちらを先にします?」
「この辺りを少し歩いてから食事でどうかしら、美術館はゆっくり見たいし、隆二はどう?」
「それで良いよ。」
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卒業旅行-09 [チーム桜-05]

その日の夕食会は誰もが知っているシンガーソングライターとそのマネージャーも同席。
安藤が話し始める。

「昨日は有難う御座いました、おかげさまで大盛況となりましたし、すばらしい演奏に感動しました。」
「そんなに硬くならずに気楽に行きましょ、私だってチーム桜の仲間なんだから、ねっ、佐々木くん。」
「はい、助かっています、ラジオでもチーム桜の話題を取り上げて下さって。」
「ふふ、何か嬉しいのよ、こんなに若い方々が日本の将来をしっかり見据えてがんばってくれてるなんてね。」
「有難う御座います。」
「まあ、真面目な話は先に済ませておきたいから話しちゃうけどさ、私的にはもっと協力したいのよ、どうかな?」
「もちろん協力して頂けたら嬉しいです、でもどんな形でですか?」
「あなた方から提案があれば検討するからね、でとりあえず、チーム桜レーベルからアルバムを一枚出すってどうかしら?」
「でもそれって所属レーベルとの契約的にどうなんですか、かなり問題が有りそうな気がするのですが。」
「安藤くん、その辺りは何とかするし、というか話題性が有って面白くないかしら、違う芸名を使うとかも有りね、ただ、そこから出た利益の内、私の取り分は、桜根東北支社の設立に使って欲しいと思っているけどどうかしら?」
「それなら利益全部東北支社に当てます、ざっと計算してみましたがアルバム一枚分の利益が有れば、かなり余裕を持ってスタート出来ます、その額を寄付するより大きな経済効果を生み出す様がんばります。」
「えっ、ざっと計算って、安藤くん今計算したの?」
「ええ、概算ですが、発売は何時頃になりますか?」
「東北をテーマに何曲か書き溜めて有るからスケジュールが合えば何時でも。」
「遠藤、最優先で頼むな。」
「もちろんだ! バックミュージッシャンとかはどうします?」
「シンプルな感じで行きたいから…、昨日みたいな桜子ちゃんとのデュエットはお願い、他も君達の所の子で良いわよ、一度オーデションをしてね。」
「編成はどうしますか?」
「オーデションを通った、つまり私が一緒にやりたいと思った子に合わせて編曲でどうかしら?」
「うおっ、皆にチャンスが有るって事か、喜びそうな奴、結構いますよ、落ちたら落ちたで足りなかった所を今後の課題として提示してあげれば次の成長に繋がるし。」
「そうか、遠藤くんのそんな姿勢が芸能部の原動力だったのね、ならば桜子ちゃん以外全員落としても問題ないわね。」
「はい、レベルの低い演奏を録音しても意味ないですから、チャンスを生かせなかった彼らに問題が有ります、オーデションの課題曲とか用意しますか?」
「具体的な事はメールでやりとりしようか、遠藤くん後でメアド交換ね。」
「お~、何か夢みたいな話しです。」
「でも遠藤くん、社長やってて時間的に大丈夫なの?」
「はい、今度制作部社長から、親会社である桜根の桜総合学園担当常務兼副社長になる予定が有りますので、この安藤って男信頼出来る奴ですからね、おっと、まだ秘密ですが。」
「ふふ、秘密の話を私にしちゃって良いの、安藤社長?」
「大丈夫です、早く確定して現場に伝えるべき事ですし。
後、うちから一人、付け人かマネージャー見習いを送り込ませて頂く事は可能でしょうか、遠藤との連絡もはかどると思うのです、マネージャー如何ですか?」
「そうね、マネージャー見習いの子を送り込んでくれたら、こちらで色々教える事が出来るわよ、一人じゃなくても大丈夫かな、私もチーム桜の一員と考えて下さいね。」
「助かります、ビッグスターのマネージャーを経験させて頂ければきっとプラスになると思います、遠藤、新入社員の研修の一環としてお願いしてみないか?」
「ああ、お願いします。」
「真面目な話はこれくらいでいいかしら。」
「はい。」
「じゃあ、佐紀さんは安藤くんのどこに惚れたの?」
「え~、いきなりですか。」
「だって気になるじゃん、あなたみたいな美人が、じゃがいも社長に惚れて告白したんでしょ。」
「はは佐紀、観念しろ。」
「佐々木くんまで面白がらないでよ。」
「婚約発表は何時なんだ?」
「も~、全部大好きだからで~す!」
「この開き直りでライバルを蹴散らしたんだよな。」
「待て、俺はそんなにもてないから。」
「こいつ自覚が無いんですよ。」
「そ~よね~、すでに社長の風格も備わっているし、ね佐紀さんは何て告白したの。」
「そ、それは…。」
「私の作詞の参考にさせて欲しいんだけどな。」
「そ、そんなに参考になる話じゃないですよ。」
「あ、ごめんなさい、ワインで良かったかしら、話は後でね。」
「はは、飲む前から真っ赤だな、まずは乾杯しますか。」
「では佐々木代表から一言。」
「えっ、自分ですか…。」
「安藤社長はずいぶん動揺されてるみたいですからね。」
「は、はい、それでは…。」

食事会は色々な意味で盛り上がった。
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卒業旅行-10 [チーム桜-05]

四日目は移動日、小松空港への便を待つ空港ロビーで。

「なあ安藤、東北支社は盛岡と仙台どちらにするんだ。」
「両方にしようと思う、名称は盛岡支社と仙台支社でどうかな。」
「予算とか大丈夫なのか?」
「支援の話を頂いたからな、それと復興予算の事が有る。」
「国の復興予算は、何かと不透明過ぎるよな。」
「その辺りを突いてみようかと思うんだが、佐々木はどう思う?」
「う~ん、結果はともあれやってみる価値は有るかな、チーム桜もメンバーが増えたから…、それはこっちで動くよ、相談に乗ってくれそうな人がいるんだ、内容的に桜根として動くよりチーム桜の方が良いと思う、安藤に何か腹案は有るのか?」
「まだ、しっかり出来てないが、旅行中に作戦を固めようかと思ってるんだ。」
「なら、すぐ連絡取るよ、仙台は金沢の後だから、行くまでに多少の情報が集まるかもしれない、すぐメールを入れるよ。」
「ああ、頼む、俺も山上部長と相談するよ。」
「山上部長はこのまま名古屋へ帰るんだよな。」
「はは、人事面は今大変だからね、山上部長ががんばってくれてるから何とかなってるけど。」
「研修期間も有るから、確かに大変だろうな。」
「まあ、幸いな事に応募して下さる方のレベルが高くて助かってる、研修中から実績を上げてる方も少なくないんだ、チーム桜の方向性に賛同して下った方々だから真面目な人ばかりさ。」
「それで、強気の拡大路線ということか。」
「チーム桜メンバーの応援と期待も大きいからな。」

金沢到着後、安藤達は一休みして夕食、そして講演会となる。
金沢初日の仕事を済ませホテルでくつろぐ一行。

「隆二、大丈夫? 疲れてない?」
「はは、佐紀の方こそ体調は良いのか?」
「大丈夫よ、隆二ほど働いてないから。」
「でも、ずっと一緒に行動してるだろ。」
「だから大丈夫なのかも、隆二と一緒の時間が長くて嬉しいわ。」

「安藤社長、今日も予想以上にオリジナルグッズが売れたそうです、明日のイベントに向けて、トラック一台分の出来立てグッズを送って貰う手筈を整えたそうです。」
「そうか有りがたいな、ここなら夕方までに充分間に合うだろう、しばらくはグッズ関連だけでも桜根を拡大していける勢いだな。
あっ、吉田はさ、こんな時ぐらいは卒業生仲間として気軽に話してくれよ。」
「それは無理ですよ、四月からは社長と平社員ですから、他の方の目も有りますし。」
「佐紀、社長って結構孤独なんだな。」
「ふふ、あきらめてね私だけの隆二で良いのよ。」
「佐紀ちゃんのろけ過ぎ。」
「あれっ吉田くん、私だって形の上では常務なんですからね。」
「はは、目が笑ってるし、披露宴は盛大にやるの?」
「どうなるのかな、ほんとはこじんまりとやりたいんだけど、サポート企業の方々が許してくれそうになくて、まだ婚約発表すらしてないのに。」
「大勢に祝福して貰いなよ。」
「なあ吉田、祝辞の数を考えたら、気が遠くならないか?」
「はは、確かにそうですね。」

「なあ安藤、俺の今日の話分かりにくかったかな。」
「まあ若干な、でも真意は伝わったと思うよ、佐々木は何時も落ち着いて話しているし。」
「ねえ、一度中学生高校生対象に話してみない?」
「えっ、どうして?」
「遠藤、その年代に理解して貰える話をするのはかなり難しいと思う、逆に俺達の力が試されるんじゃないか?」
「ふ~ん、そうだな、それで何本か番組を作ってみるか。」
「いかんぞ安藤、お前が甘やかすから…、遠藤が暴走するぞ。」
「いや良いんじゃないか、まあ中学生はともかく、高校生達には色々伝えなきゃだめだろ、俺たち。
実際にそれぐらいの年代層を対象にした良い番組が出来上がったら、大人の方が喜んで見て下さるかもしれない、佐々木、俺達の主張って結構難しい部分も有ると思うんだ。」
「それは否定出来ないな。」
「はは、佐々木参ったか、俺の社長は偉大なんだぞ。」
「おい、遠藤は飲み過ぎじゃないのか。」
「たいしてろんでないさ~。」
「遠藤大丈夫か?」
「吉田、遠藤ならもう直ぐ自動停止するから大丈夫だよ、後は頼めるか?」
「もちろんです、山根さん、もう少ししたら遠藤を連れて行くんで、後お願いね。」
「はい。」
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