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モデル地区-01 [チーム桜-01]

二月の始めか頃から活動を開始、三月の終わり正式にチーム桜のモデル地区となったのは、かつては賑わっていた商店街を含むエリア。
高齢化が進んではいるが地の利があって住宅の更新は進んでいる。
話しは昨年の十二月に遡る。
集会所にて。

「武さん、モデル地区っていきなり言われても良く解らないわ。」
「そうだろうな、でも学生達が動植物園の再生を目指して動いてる事は知ってるだろ。」
「ええ、今時の学生があそこまで真面目だったなんて驚いたわ。」
「彼らは、動植物園だけを活動の場と考えてた訳じゃないんだ。」
「どういうこと?」
「まず、動植物園の再生に財界の協力を得られたのは代表である佐々木の力だ。」
「イケメンよね、彼。」
「その佐々木代表は大きな夢を描いていたんだ、今の世の中を少しでも良くしたいってね。」
「簡単じゃないわよね、学生が思うほど。」
「ああ、それは事実なんだけど安藤隆二という学生がね、佐々木代表の夢みたいな話しを実現したいと動き始めたんだ。」
「若いっていいな。」
「だな、で、隆二はキーワードとして仲間という言葉を俺に投げかけた。」
「仲間か…。」
「新興宗教でなく、政治関係でなく、今の世の中をを良くしたいと願う人達が手を取り合って仲間となって行動できたら、少しばかり楽しい世の中になりませんかって。」
「えっ…。」
「そんなこと考えた事もなかった…。」
「そうか、私達がもっと仲間意識を持って活動すればって事なの、武さん。」
「何人ぐらい?」
「そうね…、この地区なら三十人ぐらいかな。」
「隆二が考えてる仲間作りは別次元なんだ、まだ賛同してくれそうなのは一万人ぐらいに過ぎませんがって真顔で話してたがな。」
「一万人って…、どういう人達なんです?」
「学生組織とその関連企業で佐々木代表の著書を読んだ人の数から、低めに見積もってと話してた。」
「なんか全然分からないんですけど。」
「一度も会った事のない人でも同じ考えに賛同している人なら仲間になれないかなってさ。」
「う~ん微妙だな~。」
「その関連で二月頃から、学生達がここの調査を始める予定なんだけど、手伝って貰えないかな。」
「じゃあ、その学生達も私達の仲間になるって事?」
「うん、やれる範囲で構わないから。」
「若い子達と仲間なら楽しそうじゃない?」
「そうね、でもどんな調査?」
「学区内の問題点、困ってる人の事、些細な事も含めて色々見直して、改善できる事は改善して行く予定なんだ。」
「私は何をすれば良いの?」
「学生達が試験を終えて活動を開始する時、よりスムーズに行く様に下準備をお願いしたい。
詳しいことはもうすぐ内容をまとめたものが届くことになっているから、我々が動き始めるのは年明けになるかな。」
「じゃあ新年会を兼ねて打ち合わせをしましょうか。」
「そうだね、それまでには組織の案を作っておくよ。」
「ねえねえ、佐々木代表とかとも会えるの?」
「たぶんね。」
「じゃあがんばらねば。」
「ははは。」
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モデル地区-02 [チーム桜-01]

一月、集会所。
新年会の始まりまでにはまだ時間が有る。

「暮れに武さんから資料を頂いたけど、学生達隅々まで調べようとしてるのね。」
「見てびっくり、半端な気持ちじゃないってことかな。」
「佐々木代表の本を読んでみたけど、う~ん夢物語かなって思いつつもこの資料を見た後だったからね。」
「とりあえず準備しとく?」
「そうね。」

定刻、会が始まる。
挨拶の後。

「武さんどうぞ。」
「はい、モデル地区の件は学区内各種団体に協力を要請中だけど、大丈夫そうだ。
資料の内容は、どう手伝って行くか相談しなくちゃいけないけど、まずは目を通しての感想とか有れば。」
「この地区を少しでも良くしたいという事なんですよね。
本当なら私達が手伝うというより、私達が手伝って貰うということじゃないかしら。」
「そうよね、昔の村落共同体なら自分たちで解決してた様な事も盛り込まれているわ。」
「でも今の社会環境だと色々難しいのよね。」
「そうなんだ、学生達は弱くなった人の繋がりをいきなり強いものには出来ないと考えている。
でも、少しずつでも良いから人の結びつきを強めていけたら、もう少し住み易い社会にならないか、と考えて仲間作りを模索してるのさ。」
「武さん、それって本当に学生の考えなんですか?」
「ああ、安藤隆二って男のな。」
「その人がここの学生リーダーなんですか?」
「いや、ここは別の学生が担当リーダーとなる、その下に数人のリーダーが配置されると思うよ。
安藤隆二は、担当リーダーの上の立場になるだろうな。」
「へ~。」
「で、一応頭に入れておいて欲しいことがあってね。」
「はい。」
「一つは旧商店街活用プロジェクトが始まるという事。
これは空き店舗を改装して学生の実習に利用する事を模索してる。
近い内に空き店舗のオーナーと交渉を始めるそうだ。
これに関連して四月の終わり頃、お祭りを開きたいそうだ。」
「色々考えているのですね。」
「お祭りと言っても人が集まりますか?」
「たぶん仲間が集まるだろうと話してた、ほとんど学生主体で運営の予定だけど、皆さんのお力もお借り出来たらという事だからよろしくな。」
「そう言えば昔はお祭りやってましたよね。」
「いつの間にかなくなっていた…。」
「太鼓とかどうなったんだろう?」
「一度調べてみる?」
「そうねうちの父なら何か知ってるかもしれない。」
「二月になったら、モデル地区プロジェクトの統括リーダーが来ることになってるから、その学生に教えて上げてな。」
「はい。」
「それともう一つあってね。」
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モデル地区-03 [チーム桜-01]

武が話しを続ける。

「これは別の学生からなんだけど、お掃除合コンプロジェクトをこの地区で開きたいとのことだ。」
「なんですか? そのお掃除合コンって…。」
「学生達の活動を支援している企業の独身社員を対象にして真面目な合コンをするんだけど、まずは皆でここの掃除とか草むしりとかしてもらうんだ。
その後、まだ交渉してないけど生涯学習センターでシャワーを浴びて貰ってから、ここの集会所か生涯学習センターで食事、材料は学生達が用意するけど作るのは参加者にやってもらう。
食事の後はまあ、自己紹介とかになる。」
「なるほど、実際に一緒に作業をすれば、人物が分り易いかもね。」
「とりあえず、お祭りまで継続的に開いて行きたいとの事だ。」
「学生達の活動の情報はすでに広がってるから、参加希望も有るでしょうね。」
「で、これは次の展開へ向けてのテストでも有るんだ。」
「次の展開ですか?」
「ああ、現時点で有力なのが竹林の再生。」
「ずいぶん話しが飛びますね。」
「まずはここから日帰り圏内で、手入れされてない竹林を選定、そこで竹林再生合コンを開くのさ。」
「なるほどね、合コンすればするほど竹林が綺麗になって行くという事ね。」
「合コンにこだわる必要はないけどね。
男性が竹林の手入れをしてる間に女性達が近所の農家と触れ合ったり、畑仕事手伝ったり、野菜を直接購入したりしても良い、山村の生活を少し体験、そして…。」
「そして?」
「筍の季節を楽しみ、都会と山村の人達が仲間となるのさ。」
「夫婦で参加してみたいかも。」
「安全上の問題とかも有るけど色々クリア出来たら可能じゃないかなって。」
「それなら竹林にこだわる必要もないわね。」
「ああ、色々な形で交流して過疎の問題とか山村が抱えている問題を皆で考えるきっかけにしたいんだ。」
「その第一段階がお掃除合コンということか…。」
「この町の事だけを考えてる訳じゃないのね。」
「勿論さ、ここで良い結果が出せたら、他へも広げて行くことを目論んでいるのさ。」
「そんな話しを聞かされると気合が入るなぁ~。」
「そうよね…、武さん、仲間を増やして行く活動はどんな流れになるのですか。」
「まだ詳しくは話せないけど、三月始め頃には新会社が立ち上がる、ほら学生が社長になってテレビ番組の制作をする会社なんて話しは聞いた事あるだろ。
そして、三月の終わり頃に大きな発表が有って四月の終わり頃に、ここでお祭りということだ。
今話せるのはこれくらいだよ。」
「もしかして、お祭りって…、気合を入れなきゃってレベル?」
「そうなって欲しいと思ってるよ。」
「暇そうな連中巻き込むかな。」
「年齢制限なしですか?」
「まあな。」
「う~ん、なんかワクワクしてきたけど、お腹もすいてきた。」
「はは、じゃ食事にしようか。」
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モデル地区-04 [チーム桜-01]

二月始めモデル地区内の商店街を訪れたのは佐々木、遠藤、広田幸三の他、商店街活用プロジェクトスタッフや撮影スタッフ、そして橋本裕子だ。

「幸三達で店舗の候補上げておいて貰ったけど感触はどうだった?」
「まずまずですよ、ただ隆二に筋は通しておきたいって言われて。」
「俺が来た事を気にしてるなら、その必要はないぞ、今は俺が適任だと思ってるからな。
隆二も来たがってたけど、あいつは半端なく忙しいし、名前と顔はまだあまり知られてないから。」
「一件目はここです、ここはオリジナルグッズのショップ候補です。
声を掛けてきますから少し待ってて下さい。」

幸三は横の路地を通り抜け、奥の家へ入って行った。
しばらくして老夫婦と共に戻って来る。
佐々木が中心となり、紹介や挨拶が済んだところで。

「ほんとに、こんなとこ使ってくれるのかい。」
「ええ、作りもしっかりしてますし、改装工事をやりたがってる学生の手に掛かれば築何年かなんて分からなくなりますよ。」
「そうかい、そりゃあ楽しみじゃな。」
「ちょっと派手になってしまうかも知れませんが。」
「若い子等の良い様にやったらええわい、新聞屋の武も褒めておった、若い学生達が真面目にやってるってな。」
「有難う御座います。」
「家賃はどうでしょう?」
「うん、あれからこれとも相談してな、固定資産税と孫のおやつ代ぐらいで…。」
金額を書いた紙を見せられる佐々木。
「ええ、これだけの広さなら妥当な…、あれっ? 佐藤さん月額ですよね、年って書いて有りますけど。」
「一年でこれだけあったら充分、年金頂いてるし生活に困っとらんからな。」
「どうしよう?」
「佐々木さん、武さんと相談してしてみます、少々お待ちを。」
電話をかける幸三。
話しが終わると。
「佐々木さん、大丈夫だそうです、武さんの方で息子さんの了解も得てるとの事です。」
「では御好意をずうずうしく受けさせて頂きます、よろしくお願いします。
近い内に担当者が契約書を持って幸三と一緒に伺いますのでよろしくお願いします。」
「そんなに堅苦しくなくてもええぞ。」
「いえ、契約書の作成も学生の実習の一つですから。」
「ほ~、そうか…。」

二件目も三件目も同様に済んだ。

「家賃が当初予測の十分の一ぐらいか…、裕子ちゃんがテレビ取材と一緒に現れたら交渉有利かもって思ってたけど、なんか恥ずかしいな。」
「でも、皆さん佐々木さんと裕子さんに会えて喜んでらしたから。」
「後は、ご近所の挨拶回りかな。」
「今商店街活用プロジェクトのスタッフが回ってます、佐々木さんや裕子さんと会いたいという人がいれば、ここから商店街西口まで歩く間に出て来て下さいますよ。」
「武さんの新聞屋さんは近いの?」
「西口の近くです。」
「お礼をしにいかなきゃな。」

西口まではずいぶん時間が掛かった、握手を求められたり、写真撮影、また質問に答えたりと。
武は西口にいた。

「佐々木代表お疲れ様です、新聞屋です。」
「武さん有難う御座いました、家賃の事は思ってもいなかった事で、一瞬思考が止まりました。」
「はは、三件ともうちとの付き合いは長いからね。
幸三君も試験が終わってすぐに訪ねてきてくれたからね、皆結果は大丈夫だったのかな?」
「と、信じてます…。」
「今日は裕子さんか、君の周りは美人ばかりなんだね、早瀬さんにも驚いたけど。」
「彼女は、安藤がタイプみたいですけど。」
「はは、ところで予定通りに進んでるの?」
「はい、ただ学生の試験が終わったばかりなので、これからが勝負です。
ここはどうですか?」
「モデル地区にしてもらって盛り上がり始めてるよ、お互いがんばろうな。」
「はい、今後ともよろしくお願いします。」
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モデル地区-05 [チーム桜-01]

モデル地区では学生達が動き出した。
分野ごとに分かれ地元有志のバックアップを受けながらだ。
春休み中に有る程度の成果を出そうとしてるグループも有れば、じっくり取り組んでいこうとしているグループも有る。

お祭り実行委員会も動き始めた。

「祭り会場は商店街が中心になるけど、当日の来場者数が多かった場合に備えて公園や小学校の使用許可を得て有る、警察にも協力要請して貰ってる。
当日は市の職員も来て下さる事になったよ。」
「委員長、規模は大きくするのか?」
「色々希望が多いからな、でも来場者が少なかった時には商店街だけで収まるぐらいにしときたいと思ってる、閑散としてたら盛り上がらないだろうし、一回目で皆不慣れだから。」
「希望の調整は進んでいるの?」
「ああ、後で見せるよ、それより今日は地元の人との合同企画を考えたいんだ。」
「太鼓とか古いのが出て来たんだよな。」
「うん、使うのに微妙なのも有るけど。」
「婦人会の方々からは何か提案あったの?」
「サークル活動で踊りとか、お祭り向けだと楽器の演奏も、但し平均年齢は高いそうだ。」
「学生とコラボできないかしら。」
「一度活動を見せて頂いてから、遠藤社長と相談じゃない?」
「その線でいってみるか、太鼓はどうする?」
「とりあえず置いといてみたらどうかな、来場者の中で叩ける人に叩いて頂いて良いんじゃない。
学生が今から練習しても良いけど…。」
「その暇が有ったら運営の協力をして欲しかったりだよな。」
「当日だけの運営スタッフも多めの方が良いと思うよ。」
「じゃあ、とりあえずはサークル活動の見学だね。」
「これが一覧なんだけど。」

「大正琴、フラダンス、日舞…。」
「微妙だな。」
「まあ参加して頂く事に意義が有るという事で良いんじゃないか?」
「そうね。」
「じゃあ活動日に合わせて行ってみましょうか?」
「ああ、連絡入れるよ。」

実行委員長は連絡を始めた。
そこへ幸三が入って来る。

「おっ、お疲れ。」
「おお、どうお祭りの方は。」
「来場者数が分からないって結構ネックだよな。」
「確かにな、まあどんな人数にでも対応できる体制を作るつもりで実行委員長と相談してるよ。」

「そう言えばさ、幸三、三月になったら新会社設立だろ、俺達は特に気にしなくて良いのか?」
「いや、これから色々発表が有る度に俺たちの組織は複雑になって行くと考えて欲しいんだ。
つまり住民の方々には分かりにくくなって行く。
だから、ここにいる皆が活動中に住民の方から質問を受けた時、適格に説明してくれると次が楽になると思っているんだ。
後で、ちょっとした勉強会を開きたいけど良いかな。」
「確かに簡単には説明できそうにないな。」
「すべてを伝える必要はないかな、相手の立場に立ってどこまで話すか考えて欲しい。」
「そうか、経済の話しまでは理解しずらい人もいるだろうからな。」
「まずは、我々の目標は仲間作りです、から始めて…。」
「ああ、そんな感じだね。」

実行委員長が連絡を終えて。
「OKが出たよ。」
「何の?」
「ああ、幸三、地元サークルの方の活動を見させて貰うことにしたんだ、お祭りに向けてね。」
「そうか、じゃあ時間が有ったらで構わないけど、新会社設立の話しもしといてくれると助かるんだけど。」
「そうだな了解したよ。」
「じゃあ、まずこの後の動きと分担を決めて、今日の作業に入ろうか。」
「おう。」
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モデル地区-06 [チーム桜-01]

三月始め、二つの会社が正式に立ち上がった。
その報道を広田幸三はモデル地区内の集会所で、地元婦人会のメンバーと見ていた
中田理子も来ている。

「幸三くん、桜根ってどんな会社になるの?」
「実は自分達にもどうなって行くのか予測がつかないのです。
一つの目標は中小企業に対する支援ですが。
今は、株式会社桜総合学園制作部と中田工業だけが傘下となっていますけど、すぐに増えます。
まもなく今ある学生組織の形を少し変えて桜根社内に事務局を移動します。」
「社長の安藤隆二さんって、武さんから名前を聞いたことあるけどどんな人?」
「佐々木代表と同じくらい頭のいい人です。
社長になることが決まってからどんどん貫禄が増してるって感じですね。」
「見かけは普通の大学生よね。」
「年上の社員にも遠慮なく指示を出してますよ、別に威張ってる訳じゃないのですが。」
「そうなんだ若くて力の有る人ががんばってると応援したくなるわね。」
「あっ、よっちゃん惚れたの?」
「そんなんじゃないわよ。」
「ははは、でも中小企業の安定化、一つ一つは小さくても集まればって、なんかすごい事をさらっと言ってる気がするけど。」
「こういった中小企業関係の方々も私達の仲間になるってこと?」
「はい、ここと違って営利目的ですけどね。」
「う~ん、ちょっと微妙だけど、中小企業も大変らしいからね、そう言えば理子さんのとこよね、桜根傘下の中田工業って。」
「はい、父が安藤隆二さんに惚れこんで一大決心をしました。」
「どう、大変そう?」
「どうなんでしょう、でも社員の皆さん喜んでいて、社内の活気は前以上です。
旗艦会社ということで、業績の振るわない会社と交流して結果を出したいって、色々討論してます。
まずは三社ぐらいとの交流から始めるそうです。」
「中田さんのとこの次期社長はどうなってるの?」
「まだ未定です、父は私達姉妹に変な負担を掛けたくないって言ってくれて、桜根関連から社長になってくれる人が出てこればって話しています。
それにはまず、小企業でも安定していて賃金もそれなりに出せる、結婚も子育ても不安なく出来る会社を増やして行きたいと。」
「中田社長…、そこまで考えてみえたのね。」
「それなら、営利企業でも応援するしかないわね。」
「お願いします、桜根には優秀な人が集まっていますからきっと結果を出して下さると思っています。」
「桜根の株主って、地元の有力企業ばかりなのね…、その中に中田工業ってすごくない?」
「うちの株式はすべて桜根の株式と交換して頂きました、また父のポケットマネーでも桜根の株を買いましたから。」
「上場してないから私達は株主になれないのね。」
「いえ、その話しも番組中に有ると聞いていますから…。」

「あっ、増資の話しが始まったわね。」

『すでに一般の方々からも株主になって応援したいという声が出ています。
また、準備期間中の動きから、当初予定の資本金六千万では余裕がないと判断しました。
株主の方々からは何時でも増資を引き受けるという暖かい言葉を頂いておりますが、仲間を増やして行くという私どもの目標も考慮した上で、一般の方々にお願いさせて頂くこととしました。
但し、上場企業では有りませんから売りにくいという事情、また早く配当を出させて頂ける様努力して行きますが、桜根の特殊性を考慮してから判断して頂けたらと考えております。』

「そりゃ、始めから配当なんて期待しないわよね。」
「お金はあの世まで持ってく訳じゃないし、ねえ幸三くん、桜根を応援するとあなた達にも良い事有るの?」
「もちろんです、自分も卒業後は桜根関連に就職するかもしれませんし、このモデル地区の活動にも関係してきますからね。」
「それなら爺さんと相談してみようかな…、うちの爺さん寄付は嫌いなの、何に使われるか分からんとこに金をやりたくないってね。
でも、桜根にならあっさり金を出すかも、桜子ちゃんのファンだからね。」
「はは、今日も最後は桜子の演奏で締めくくると思いますよ。」
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モデル地区-07 [チーム桜-01]

桜の蕾が大きく膨らむ頃。
地元テレビ局の一つが特番を組んだ。
広田幸三はお祭り実行委員達とその始まりを待っていた。

「ついに発表だな。」
「ああ、ネットの方はどうだ?」
「学生だろうな、ワクワクドキドキ待機中ってさ。」
「私もドキドキだな~。」
「内容は何となく分かっていてもな。」
「ああ、始まるか。」
「今日の進行はあまり見ない子だな。」
「でも落ち着いてる、悪くないな。」
「佐々木代表も安藤社長も堂々としてる。」
「えっ、あの美人誰?」
「桜根の重役候補?」
「あっ、裕子さんも桜子ちゃんも並んでる…、後で演奏してくれるのかな。」
「佐々木代表が話し始めるぞ。」

『今日は皆さんにお知らせが有ります。
今まで、私どもの学生サークルを応援して下さって感謝しています。
さて、今月の始めに株式会社桜根、株式会社桜総合学園制作部と発足させて頂きました。
まだ活動は目立っていませんが、桜根の安藤、桜総合学園制作部の遠藤共に多くの方々の支援を受けまして概ね順調に動き始めています。
お知らせというのは私達の組織改編についてです。
これは私の夢物語を現実にしようと言って動いてくれた、安藤から発表して貰います。
株式会社桜根社長、安藤隆二です。』

『チーム桜という名称で大きな社会実験を始めます。
ここまで学生主体で動いてきた私達の活動から学生の枠を外し、私達の方向性に賛同して頂ける方々と
広く繋がる事が目的の一つです。
人と人との結びつきが弱くなってしまった昨今です、このままではいけないと思わせる事が色々起きています。
個を尊重することは大切な事ですが、他人の事を考えない人も増えているのではないでしょうか。
私達は、地縁、血縁、宗教、政治的信条などに関係なく、仲間という形での繋がりを考えています。
全く知らなかった人とでも仲間となれば若干の親しみが湧くのではないでしょうか。
その若干の親しみが様々な形での協力関係に繋がればと思っています。
チーム桜への参加は色々な形を想定しています。
個人での参加ということならば、会の趣旨に賛同頂いた上で、簡単な登録からお願いします。
仲間になるという事は心の問題ですので、まずはチーム桜の一員になって下さる方を募集します。
詳しくは後程説明させて頂きます。

さて、中小企業を巻き込んでの営利活動、非営利団体に対する援助など様々な展開を模索していますから、誤解を生み易い側面が有る事も承知しています。
色々な考え方が有る事も承知しています。
仲間同志でも意見が食い違う事も有るでしょう。
でも、目標が平和で安心して暮らせる社会、あなただけでなく社会的弱者も含めて幸せに暮らせる世の中の構築であれば、きっと多くの方々に賛同頂けると思っています。
夢物語だと一笑に付する前に考えてみて下さい。
地下鉄で偶然隣に座った人が仲間だったら素敵じゃないですか。
仲間は過疎地に住む方、自然災害の被災地に住む方にもなって頂きたいと思っています。
遠くに住む全く会った事のない人を仲間だと感じる社会に出来ないでしょうか。
そして…。』

安藤の話しの後、色々な説明が続いた。

「あっ。」
「どうした? 幸三。」
「モデル地区の方々からメールが半端なく届いてる。」
「どんなメールなんだ?」
「チーム桜に登録したいって。」
「おい、ネットの方はどうだ?」
「はは、あの美女誰? に混じってチーム桜に参加したいって声が多数、多少嫌なのも混じってるけどこれくらいなら普通だな。」
「と、いう事はお祭りの参加者、多くなりそうって事か?」
「単純には判断できないけどな。」
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モデル地区-08 [チーム桜-01]

リーダー会議。
幸三が話し始める。

「お祭りが近付いているけど、来場者の方から、モデル地区に関する質問が有った時にある程度答えられる様にしときたいと思うんだ。
それで一度、皆で状況確認したいけど良いかな。」
「そうですね、じゃあ自分から順番に発表していきますか。」
「ああ、簡単で良いから席順で頼む。」
「町美化チームは基本調査を終えた後、お掃除合コンプロジェクトの協力も得て有る程度の結果が出ています。
お祭りを見据えて、地元の方々と共に、花も植えさせて頂きました。
お祭り終了後は実際に住んでおられる方々のお話しを伺いつつ色々検討してい行く予定です。
空地、空き家の問題も考えています。」

「交通安全チームは古くなって見にくくなっていた標識の交換を警察の方と連絡を取って進めています。
通学路で子どもが自動車の運転者から見にくい所、自転車が歩行者とぶつかり易そうな所など改善を検討中です。
実際に起きた事故の情報も警察の方から頂いています。
有る程度まとまった段階で役所とも相談して行きます。」
「防犯チームも警察からの情報を元に調査を進めています。
昼間人通りが少ない地区の空き巣がメインです、繁華街が有る訳でもないので犯罪の発生件数は多くないみたいですが、お年寄りも多いので詐欺とかが心配です。」

「老人福祉チームは幼児保育チームと合同で、交流事業の企画を始めています。
老人介護チームとは連絡を取りながら役割を分担しています。」
「老人介護チームは地元の方々と共同で動いています。
色々な問題が浮き彫りになってきていますので、抜本的対策を目指して問題点の整理を進めています。」
「幼児保育チームは子育て世代支援を広く求めることが出来ないかの検討もしています。
老人福祉チームとの連携はお年寄りに限られてしまいますが、幅広い年齢層が関わってくれたらと考えています。」

「障害者支援チームは、それぞれの障害ごとに色々異なっていますので、問題点の整理を進めています。
ただ、昨日メンバーから出てきた案ですが、我々のオリジナルグッズとかの製作を、お年寄りの生きがいだったり、障害のある方のささやかな収入源に出来ないかということが有ります。
リハビリだったり実習の中で商品を作って売ることは彼等の励みにならないでしょうか。」

「貧困問題チームはその難しさに直面しています。
この地区は家賃が高目ですから、貧困率は低めの様です。
それでも生活保護家庭の子どもの進学に色々な壁が有ったり、逆に生活保護の必要性が不透明な事例も聞いています。
時間が掛かりますが問題提起をして行きますのでよろしくお願いします。」

「うん、概ね祭り向けの資料通りってことなんだね、オリジナルグッズの話しはすぐ安藤社長に連絡するよ。」
「お祭りの準備の方も順調に進んでます、ただ当日何が起こるか分からなくて…。」
「そうだよね、皆、協力頼むね。」
「はい、私は仲良くなったお婆ちゃんと見て回りながら、問題が有った時は報告を入れます。」
「俺は、たぶん公園への誘導を手伝うと思う、現状で来場者が少ないなんて有り得ないと思うぞ。」
「だな…、実行委員会発足時とは状況が全く違って来てる。
ネットを見てると商店街だけでは収まらないと思うな。」
「後は天候か…、でも成功させたいね。」
「うん、チーム桜としての始めてのお祭りなんだし。」
「祭りも含めてのモデル地区だよな。」
「俺は弟も連れてく、なんか有ったら手伝わせる。」
「えっ、強引なのは、ちょっと…。」
「大丈夫だよ、弟はチーム桜に入ると思うんだ。」
「そうか、私も妹に声を掛けてみようかな。」
「良いけど、無理の無いようにね、強引な勧誘はマイナスになるから。」
「大丈夫ですよチーム桜に興味がない訳では有りませんから。」
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モデル地区-09 [チーム桜-01]

多くの来場者が有り、お祭りは成功したと言える、反省すべき点は有ったが、ネット上でも色々な意味で良い祭りだったという評価が大勢を占めた。
その勢いを借りて、六月の終わり商店街の一角に新たな施設が誕生した。

「学生さん達綺麗にして下さったわね、地元工務店の協力も有って…、あのひげ親父がチーム桜に参加するとは思ってなかったわ。」
「チーム桜の桜工房…、看板もおしゃれよ。」
「家賃は太っ腹オーナーが安くしてくれたし、改装費はお祭りの収益から出てるし。」
「準備はどう?」
「大丈夫よ、材料も色々揃えたし…。」

「おはよ。」
「あっ、おはようございます。」
「なかなかおしゃれだね。」
「伊藤さんは歩いて来られたのですか?」
「ああ、歩ける内は歩かんとな。」
「針仕事とかは得意なんですか?」
「まあ、昔はようやっとった、今は必要なくなってしまったがの、ボケん様にやってみようかと思ってな。」
「ちょっと見本をお見せしますね。」
「なかなか上手に、こさえてるな。」
「これと同じじゃなくても良いんです、まあこんなのだったら売れるかなって事で。」
「材料を選んで始めて下さっても構わないんですが。」
「うん、この生地が良い…。
…、う~ん針に糸が…。」
「それはお手伝いしますよ。」

「中村さん、おはようございます。」

数人のお年寄りとそれをサポートする地元婦人会のメンバー。
雑談をしながら、人形や小物を作って行く。
話しに夢中で作業が止まる人もいれば、もくもくと作業を続ける人も。

「こんなんできたけど売れるかえ?」
「これなら、売れますよ。」
「少しはこずかい貰えるんかい。」
「ほんとに少しですけどね、一個売る為には色々な人の協力が必要ですから。」
「わしゃ、こずかいなんぞいらん、自分が作った物を使ってくれたら有りがたい事じゃからな。
それより生地の種類を増やして欲しいかな。」
「どんな生地が…、中村さん、予算の範囲内ですけど一緒に買いに行きますか?」
「ええのか、そりゃ楽しそうじゃな。」
「それでは、日を決めて行きましよう。」
「うちの子が小さかった頃、喜んで持ち歩いてたのを作ってみようと思ってな。
今時の子じゃ喜ばんかもしれんが。」
「意外と人気が出るかもしませんよ。」

お年寄りも、婦人会のメンバーも入れ替わりながら、作業終了予定の三時頃まで作業は続いた。
幾つかの作品が出来上がり、最後のお年寄りが帰る頃、学校帰りの学生が入って来る。

「こんにちは。」
「いらっしゃい。」
「どうですか、感触は。」
「これが作品よ。」
「わ~、良いですね昭和の匂いがしそうで、これ欲しいな。」
「まあ初回だから何とも言えないけど、皆さん楽しそうでしたよ。
自宅へ持ち帰って完成させるって方もみえて。」
「良い暇つぶしが出来たって、嬉しそうに話してる方もいれば、皆でお話しするだけでも楽しかったって方も。」
「人それぞれだけど、沢山作って沢山売って寄付したいって方もおみえでね。」
「方向性は間違ってないって感じなんですね。」
「そうね、これから問題が出て来るかもしれないけど。」
「販売価格は幾らぐらいが適当なんでしょう。」
「これ、幾らなら買う?」
「う~ん迷うな…、五百円くらい? こっちのは多少手直しが必要ですよね。」
「五百円なら妥当じゃないかしら、縫製もきちんとしてるし、デザインも、中村さん良いセンスしてるわ。
ん、どうしたの?」
「はい五百円、安田さんの気が変わらない内に。」
「まだ販売システムまで考えてないのに。」
「ここは、ボランテアが運営する訳ですし、今は様子見の段階ですから、収支の記録さえきちんと付けて有れば、ボランティアの方のお茶やお茶菓子に使って頂いても問題ないって聞いてます。」
「それがね、もうお菓子とか頂いてるのよ、はい、おすそ分け。」
「有難うございます。」
「私が小さかった頃は、普通に隣近所の方とお付き合いが有って、沢山頂いたからどうぞって、お隣から頂いたイチゴ、おいしかったなぁ~。
今日は、お礼にって感じだったけど、面白い展開になるかもよ、隆二さん達が思い描いてる様な。」
「えっ、何かドキドキします。」
「じゃあ、まずは今日の売り上げ五百円を記帳して置きましょうか。」
「はい、でも安田さん、しばらくは全部私達学生が買ってしまうかもです、これ人気出そうな気がするんです。」
「それなら中村さんも喜んで下さるわね、ここの家賃ぐらい稼げたりしてね。」
「でも、ご無理なさらぬ様にお願いしますね。」
「はい、気を付けますよ。」
「作業をする事によって、老化の速度を遅く出来ないかという事ですけど如何でした?」
「私も専門家じゃないからはっきりは断言出来ないけど、一定の効果は有りそうな気がしてるわ。」
「元気なお年寄りプロジェクト、行けそうなんですね。」
「ええ、がんばりましょ。」
「はい。」
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モデル地区-10 [チーム桜-01]

八月の始め。
広田幸三と中田理子は商店街にオープンしたばかりの居酒屋に来ていた。

「おっ広田統括リーダー今日はデートですか?」
「伊藤さん、まあそんなとこですが統括リーダーは勘弁して下さいよ。
そろそろ地元の方と交代して頂きたいところなのですけど。」
「いや、地元でない人の視点は大切だって、武先輩も話してたからな。
えっと、迷惑だろうけど、ちょっとじゃまして良いかな。
「大丈夫ですよ。」
「じゃあしばらく席を変わるよ。」
伊藤は自分の席へジョッキを取りに行く。

「商店街再生プロジェクトの方向性が固まって来たから報告しておこうと思ってね。」
「どうです、順調ですか?」
「武先輩が見ててくれるからね。
メンバーは全員チーム桜の一員な訳だし。」
「この居酒屋、オープンまで早かったですよね。」
「どうせなら、酒でも飲みながらということでね。
定年退職前後の世代が中心になって金を出し合った結果さ。
ここで飲めば家まで歩いて帰れるから気楽だし。
株主なら文句も言い易いって事で、店長も大変だろうけどな。
でね、何店舗か地域密着型の店を始めようってことになったよ、どんな店にするかは検討中だけど、店員にきちんとした給料が払える状態を前提に。」
「そこが一番のネックですね。」
「だけどはずせないだろ。」
「はい。」
「それと並行して桜工房みたいな福祉系の施設やお店を増やして行きたいと考えてる。
ただの商店街じゃ、大手資本には太刀打ち出来ないからね、一つの特徴として前面に押し出して行こうとなった。」
「社会的弱者の方にも住み易い町作りが一つの柱になるということですね。」
「ああ、そこにチーム桜のオリジナルグッズショップ、学生の実習店舗と並んでいる訳だから、チーム桜、モデル地区としての恰好がつくだろ。
維持していく事も、参加者が多いから難しくない気もしている。
もう少し形が出来たら、一つの会社にまとめ上げて、桜根の傘下に入れて頂くことも目指しているよ。
生活に余力の有り過ぎる連中が資金面を支えると言ってくれてるからね。
一度、桜根の方と話したいけどどうだろう。」
「そうですね、すぐメールを入れます。」
幸三はメールを打ち始める。

「理子ちゃんは卒業後とか考えてるの?」
「はい、桜根関連で幾つか候補が有りまして。」
「俺等のが桜根傘下に入ったら、その候補に加えてくれな。」
「はい、もちろんです。」
「幸三をうちらの社長にってどうかな?」
「そんなこと出来ますか?」
「定年退職組以外は会社務めしてるからね、若者が社長の方が面白そうだし。」
「父は中田工業の社長にって狙ってますが…。」
「はは、いずれにせよ理子ちゃんは社長夫人候補って事か。」
「そんな…。」

メール送信を終えた幸三。

「あれっ理子顔が赤いけど、そんなに飲んだっけ?」
「はは、おじゃましました。」
「伊藤さん返事が来たら知らせますからね。」
「おう。」

「幸三くん、モデル地区も思わぬ成果が出て来たね。」
「ああ、スタート時には考えもしてなかった展開になってきたよな。」
「幸三くんも社長になるの?」
「俺は、そんな器じゃないさ、佐々木代表や隆二を見てるからね。」
「でも、小規模で、隆二さんの下とかだったら。」
「まだまだ勉強中だよ、いずれそう成れる様にがんばるかな。」
「期待してます。」
「えっ?」
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