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近衛予備隊-121 [高校生バトル-55]

 村の子どもに対する教育は、転入により増え続けている子どもへの対応に苦慮しながらも何とか形になって来ていて、少なくとも自分が十歳の頃より随分良い環境になったと思う。
 それでも長い目で見た時、例えば国の中枢で働ける人材を育てられるか、高度な研究に打ち込める研究者を育てられるかと言うと全く分からない。
 俺達は特殊な環境で育てて貰った訳で、同じことを大勢の子ども達に経験させることは難しい。
 また、高校大学と言った自分達が経験していない教育課程を思い描くのは更に困難。
 結局、学校教育に関して、俺達は英語教育の手助けをするに留め、後は専門家にお任せとなった。
 但し、近衛予備隊のメンバーに対しては先輩として、また指揮官として助言をすることも。
 予備隊はいずれ高校か職業訓練校になるかも知れないが、今は村でも向学心の強い子ども達の受け皿として、仕事に直結する知識を中心に体験しながら学んで貰っている。
 特に英語とパソコン関連は大人よりも頼れる子が育っていて、自分が村長になった頃とは比べものにならないぐらい発展した村にとって欠かせない存在となりつつある。
 その村は…。

「ジョン、村の運営はどう?」
「至って順調で、詩織の助言通り、村の運営は各部署のリーダーに任せ、村役場の業務は近衛隊の手を離れつつ有ります。
 当初、その必要性を村民に理解して貰うのにさえ苦労した村議会も、各集団の代表と言う立場では有りながらも村全体を考えた発言が増えています。
 こちらも近衛隊メンバーのアシストは減って来ています。」
「特に報告が無かったから、元受刑者の議員を含めて順調だとは思っていたのだけど、村長が暫く村を離れても大丈夫なぐらいに落ち着いたのかしら?」
「はい、長が不在でも問題なく回る組織を目指して来ましたので。」
「何処へ行っても連絡は取れるものね、それなら今度私が遠江王国へ行く時、シャルロット、ルーシーと三人で一緒に行ってみる?」
「行きたいですが、何か目的が有るのですか?」
「ネットを通しての情報は持っていても実際に見てみると違うものなの、予備隊の幹部達も近衛隊メンバーに昇格して良い頃合いだから順次交代で研修旅行に行って貰おうと思ってね。
 その先陣を三人で、それとあなた達はYouTubeチャンネルを通して日本で有名になって来てるから、テレビ局からのお誘いが有って、一稼ぎ出来るのよ。」
「稼げるのであれば是非お願いします。」
「ジョン役の吹き替え声優が大きな役を貰い注目されてて、今がチャンスなの。
 仕事と観光と研修のバランスが悪くならない様にスケジュールを組んで貰うから…、仕事と言っても質問されたらそれに応えるぐらいの感覚で構わないから。」
「そこにテレビカメラが有るのですね。」
「そう言うこと。」
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近衛予備隊-122 [高校生バトル-55]

 村長になってから首都へ旅行に行ったことは有るが、海外旅行は始めてだ。

「ジョン、長期間村を空けても村長としての仕事は大丈夫なの?」
「村として大きな行事は無いから各部署のリーダーに任せておけば問題ないし、特別なことが起きても電話かメールで済ませられると思う、ルーシーの担当業務はどう?」
「ジョンが旅行を経験して何か新しいことを始めても問題無い様に、村長に関係すること以外は後輩に引き継いでおこうと思ってる、組織としてはその方がベターでしょ。」
「そうだな、良い機会だから旅行までにその辺りの業務に改善の余地は無いのか一通り見直しておこうか、より安心して旅行を楽しめる様に。」
「了解、引継ぎが済んだら、そのまま見直し作業に入って貰うわね。
 ねえ、ジョン、旅行の準備ってホントにプリンセスの話してた通りで良いのかな?」
「パスポートとか必要最低限の物だけを持って行き、向こうに着いたらまずはスーツケースを買うのだろ。
 物を買うことで遠江王国や日本の店を知ることが出来るそうだから良いと思うよ。
 着替えの類は会社が用意してくれるのを着ないとモデルとしてのギャラが減るから、首都へ旅した時より荷物はうんと少なくて済みそうだな、持ち物で何か問題が起きたら付き添ってくれる担当マネージャーを頼れば良いだろう。」
「旅って何を着て行くとかも含めて楽しむものだと思っていたのだけどね。」
「その分、向こうでの買い物を楽しめば良いじゃないか、帰りの荷物は船便で送れば良いからコンテナ一個分ぐらい買っても大丈夫だぞ。」
「流石にそんなには買えないわよ。」
「そうかな、個人輸入の仕入れと考えたらどうだ?」
「しっかり買う気なのね。」
「ギャラ次第だな、それとこっちで売れそうな物が安く手に入るかどうか。」
「基本、かなり割高だと聞いてるわよ。」
「それでも一ドルショップみたいなのが有るそうだから、一応行きたい店としてリクエストしておいたよ、高級店から格安店まで案内して貰えることになってるけど。」
「食事やホテルも色々な価格帯を体験させて貰えるのよね。
 格安店は良いとして、高級店での支払いは大丈夫かしら。」
「お金の心配は要らないとプリンセスに言われたから…、ただ…。」
「ただ?」
「何処へ行くにもテレビ局のカメラがついて来るそうだ。」
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近衛予備隊-123 [高校生バトル-55]

 旅行までの日々は忙しく過ごした。
 出発までに改めて村の状況を確認しておきたかったので各部署のリーダーと会って話をしてみたら、村役場職員のミスに幾つか気付くこととなり、そのフォローに時間を取られたからだ。

「ジョン、どんなミスだったの?」
「現場から人手が欲しいので調整して欲しいとの要望が有ったのを忘れていたとか、そんなレベルの話が幾つか有って対応したけど、近衛隊からの引き継ぎが終わって気が緩んでいるのかも知れない。」
「今後も同じ様なミスが起きそうだとしたら、問題ね。」
「ああ、優秀な人ばかりを集めた訳ではないからな。
 取り敢えず、予備隊から役場業務の現場実習希望者を募り、ミスの多そうな職員に付けることにしておいたよ。」
「今後、近衛隊が行ってる業務を引き継いで行くことを考えたら、予備隊からの人員補充を早めに決めるべきかもね。」
「だな、だけど、刑務所からの出所者に有能な人が結構居るそうで、担当者は単純作業では無く能力に合わせた職務に就かせてあげたいと話していてさ。
 役場のリーダー達に面接して貰い、予備隊と出所者からバランス良く補充出来たらと思ってる。」
「出所者に村で働いて貰う話が出始めた頃は、何かと心配する声が聞かれたけど、実際に働いて貰ったら、心配していた人より余程まともで仕事熱心な人が多かったものね。」
「ここの刑務所は、環境が良かったら刑務所に入ることの無かった人ばかりが集められているからな。
 実際、代表として村議会議員に選ばれた人はリーダーとして随分尊敬されているだろ。」
「ええ、彼らの能力を活かせる環境作りを考えないとね。」
「適材適所、各部署のリーダーに今一度の見直しをお願いするつもりだ。
 仕事の多くは会社関係なのだから、今の部署だけに拘らず各自の希望を聞きながら村全体の人員配置を考えて貰うことで、より仕事に生き甲斐を感じられる人を増やして行きたいからな。」
「その作業が旅行と重なっても大丈夫なの?」
「社員一人一人の事情までは俺に分からないから現場で検討して貰うしかないよ、メールでの報告は実習の一部として予備隊からの実習生に任せてみようと思ってるけど。」
「それは良いかも、ねえ、出所者の人は英語とかどうなのかしら?」
「どうなんだろう、一度彼らのスキルを調査して、その情報をリーダークラスの人達で共有すべきかもな。」
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近衛予備隊-124 [高校生バトル-55]

 スキル及び特技に関する調査は、村役場内に予備隊からの実習生を含めたチームを作り俺達の旅行中に開始して貰い、その結果を有効活用する道筋までつけられた。
 また、新たに役場で業務実習を始めた予備隊の子達はすぐに報告を始めてくれている。

「ジョン、実習生の報告を見てると彼らの熱意が伝わってくるわね。」
「だな、これまで色々なことを学んで来たと分かる報告で少々気負い過ぎてはいるが、これからバランス感覚を身に着けて行けば問題ないだろう。」
「彼らなりの視点は面白いと思わない?」
「ああ、自分が店での実習を始めた頃が懐かしい、俺達も初心に帰って見直す時期かもな。」
「ジョンが大人より信頼出来ると言われてた意味が今更ながら分かるものね、彼らに活躍して貰って、少し気の緩み掛けてる村役場の職員達に気合を入れて欲しいわ。
 村長直々のお願いなら彼らも喜んで動いてくれるのではないかしら。」
「そうだな、旅行中はメールを利用して彼らに課題を出してみようか。」
「ジョンがフロアマネージャーに鍛えられた様に彼らを鍛えるの?」
「成長して欲しいし、それも俺達の役目だろ。」
「私もジョンが村長になったばかりの頃は余裕が無かったけど、あれから色々経験してそれなりに成長したのかな。」
「今度の旅行だって、決まってから日本について調べただけでも多くを学べてるのだから…、予備隊の子にも俺達の旅行を通して学べる様に、少し工夫したいね。」
「今回の旅行はYouTubeチャンネルで日本向けをアップして行くけど英語版も制作して貰う?」
「うん、視聴回数は伸びなくても、英語で遠江王国や日本国を紹介するものは作っておきたいね、随分お世話になっているのだから村人達に紹介するだけでも良いだろ。
 YouTube用に沢山撮影するそうだから、映像はそこから選べば何とかなるさ。」
「一応相談しておくわね、同行してくれる映像スタッフの人達は遠江王国訪問をかなり楽しみにしてるから、喜んで制作してくれると思うわ。」
「日本向けYouTubeで稼げてるから予算に余裕が有る、旅行告知の動画に対する反響が大きかったから、彼らも強気だろう。」
「でも、日本のテレビに出演とか、どんな感じになるのか不安だわ。」
「フロアマネージャーの助言を守れば大丈夫さ。」
「う~ん、都合が悪くなったら日本語が全く分からない振りをすれば良いと言われてもね…。」
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近衛予備隊-125 [高校生バトル-55]

 遠江王国へ旅立つ日、見送りが盛大になったのは移住して来た人の中にお祭り好きな人が居たからに他ならない。
 彼は常にイベントのネタを探しているのか、ちょっとしたことでも人が集まる企画にして村を盛り上げて来てくれた。
 今日も俺達が村を離れた後には旅の無事を祈って大騒ぎする計画が立てられていて…、旅の無事と大騒ぎの関係を説明出来る人は居ないと思うのだが、そんなことを誰も気にすることなく飲んで騒いで店の売り上げに貢献してくれることだろう。
 必要なのは宴会の口実なのだ。
 それでも、移住して来た人が多く、大統領親衛隊や刑務所からの出所者もいる村が、何とか一つになれているのは彼の功績が大きいと思う。

「ジョン、随分大勢の人が集まったわね。」
「ええ、旅立ちがイベントになってしまいましたので。」
「カメラはどこの?」
「例によって、自分達の日本向けYouTubeチャンネルです。
 今回の旅行中、毎日更新で荒稼ぎすると映像スタッフが張り切っていますが、詩織には迷惑が掛からない様に注意すると話していましたので、気になることが有りましたら直ぐに教えて下さい。」
「大丈夫でしょう、どう、YouTubeチャンネルでは沢山稼げた?」
「はい、日本向けと言うのが正解だった様で、うちの部落は見違えるほど綺麗なりました。
 今後は、村に大きく貢献した人の家を建てる費用に充てていきますが、その第一号は、このイベントだけでなく村を盛り上げる様々なイベントを企画演出してくれている彼の家になります。」
「店の販売員からイベント部門のリーダーに昇格した人ね。」
「はい、彼には開発中の高級住宅街に住んで貰います。
 彼は住環境が良く成るのなら昇給は必要ないと話してくれ、詩織が話してくれた、足るを知る人なのですが、もし欲しい物が出来たらイベントで稼いで買うのだとか。」
「それが普通に出来てしまうだけの力が有るのね。」
「はい、イベントを通して雇用の拡大にも貢献してくれています。」
「それだけでなく、戒厳令以降は店の売り上げが下がると覚悟していたのだけど、度々行われるイベントが支えてくれ、売れ筋商品に変化が有ったものの全体の売り上げはそんなに変わることなく推移しているでしょ、彼にはボーナスを出さないとね。」
「彼からは日本のイベントを参考にしたいと言われましたので、同行するスタッフにお願いして有ります。」
「それなら私も彼の参考になりそうなのがないか考えてみるわ。」
「お願いします。」
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近衛予備隊-126 [高校生バトル-55]

 日本の空港ではプリンセス雅のスタッフが出迎えてくれ、そこからは遠江王国へ向かうプリンセス詩織と別行動、俺達は東京にしばらく滞在しテレビ出演をこなしながら町の見学、特に店を中心に見て回る予定で、まずはその間、活動の拠点となるホテルへ向かう。

「やはり映像で見るのとは大違いね、我が国の首都より随分綺麗で整然としてるのだけど、何か圧迫感を感じるわ。」
「建物が高いからか、車が多いからか…。」
「それにしても予定通りとは言え、空港では早速カメラが回ってたわね、良く分からないまま適当に感想を話してみたけど。」
「適当さがルーシーらしかったわ、でもジョンの日本語がYouTubeチャンネルで吹き替えを担当してくれた武史と、声は違うけど似てると盛り上がってたわね。」
「今まで彼の日本語をお手本に練習して来たのだから当然だろ、今日から本物の俺が話す日本語解禁で少し緊張したが、シャルロットは緊張を感じさせなかったな。」
「日頃日本人スタッフ相手に話しているのと同じようにと心掛けていたけど、あれで良かったのかしら?」
「今まで日本語が全く分からないかの如く番組を進めて来たのだから、多少の間違いは許してくれるさ、スタッフは通訳の必要が無くなって編集が楽になると喜んでいたよ。」
「それでも、テレビ番組には武史が同席してYouTubeチャンネルでの、ジョンの姿に武史の声、を再現するのでしょ。」
「チャンネルスタート時から好評だったもの。
 武史がアニメ映画の主役に抜擢されたおかげで私達のチャンネル登録者数が増えたのだから、会ったらお礼を言わなくてはね。」
「彼からのメールには、俺の吹き替えが好評だったから主役への抜擢が決まったと有ったよ、始めた頃はなかなか自然な感じに出来なくて苦労したけど、そこで妥協しなかったことがYouTubeチャンネルの成功に繋がり、武史が映画制作の人に認められることになったのだと思う。」
「そうよね、YouTubeで簡単に稼げると考えてる人がいるけど、お金も手間も掛けた結果、勿論私達は多くの人に手助けして貰っての成功なのだけど。」
「その辺りのことはテレビ番組でも強調して行きたいものだな、感謝の気持ちを伝える意味でも。」
「村に居るスタッフには届かないでしょ?」
「ルーシー、日本で放映されるものは全て録画して村で見られる様にするのよ、日本語ばかりで内容まで分かる人は僅かでしょうけど。」
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近衛予備隊-127 [高校生バトル-55]

 東京二日目の午前中、滞在をサポートしてくれるプリンセス雅のスタッフとホテルのラウンジでしばらく話をした。

「涼子、東京は本当に自動車が多いですね。」
「多過ぎますよ、地球温暖化の原因って実感させられませんか?」
「地球温暖化は今までニュース番組を通して見聞きすることは有っても、自分には関係ない話だと感じていましたが、環境を守る様々な規制が有るとは言え、この瞬間にも膨大なエネルギーが消費されているのですね。」
「ええ、特に都市部では気温が高くなるぐらいに色々な形で消費されているのです。
 温室効果ガスの影響だと思われる災害が多発し始めて、ようやく対策を真面目に考え始めた所で遅過ぎると感じています。」
「我々の国では産業が貧弱ですので、そう言った問題にはあまり目が向けられていません。」
「でしょうね、原因を作った国々には環境より金儲けを優先させる、貧富の差が広がっても気にも留めない人ばかりなのです、利己的で…。」
「我々も生活水準を上げる為に、温室効果ガスの発生量を増やさざるを得ないかも知れませんが…。」
「それでも日本に比べたら微々たるものです。
 日本は将来を不安にさせるほど化石燃料を使っても、豊かな国と言うより貧富の差が広がる、心貧しい国なのです。」
「とても豊かな国だと思っていますが。」
「どうでしょう、様々な社会問題を抱え、既に衰退し始めてると言う見方も出来るのです。」
「社会問題ですか…、我が国では大統領による荒療治によってようやく犯罪の発生件数が減った所です、それでも日本に比べたら殺人や傷害事件の発生件数はかなり多いのです。」
「そうでしたね、戒厳令と言うのは厳しいものだったのですか?」
「戒厳令中は自分達の村に大統領が滞在し、取り締まりの中心となった大統領親衛隊の本部が有りますので、村は警備の兵こそ多かったですが特別なことは無かったです、田舎ですから。」
「やはり都会とは違うのですか?」
「はい、日本もそうだと聞いています。」
「いずこも同じか…。」

 日本はとても豊かな国だと思っていたので彼女の話は意外だった。
 富める国は富める国なりの問題を抱えていると言うことだろうか。
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近衛予備隊-128 [高校生バトル-55]

 昼食をホテル内の店で済ませテレビ局へ移動。
 武史が先に来ていて出迎えてくれた。
 テレビ電話で話したことは有ったが実際に会うのは初めてで少し変な感じだ。
 彼に案内され控室へ。
 用意されていた服に着替え軽くメイクをして貰う。
 今日の進行は事前に知らされていて、今回は武史とのパフォーマンスが中心になる。
 番組では俺の口パクに武史がその場でセリフを合わせた映像をYouTubeチャンネルと同じ様に編集して貰い解説付きで紹介する。
 この作業、始めた頃は繰り返し録画を交換し合い練習を重ねて自然な感じを演出するのに苦労したが、最近では俺が日本語に慣れたことも有り時間が掛からなくなった。

 番組の収録は問題なく済み…。

「実際の動画メイキング風景を見せて貰い、改めて凄い才能だと思いましたよ。」
「涼子、武史の特技なのです、日本人スタッフが真似しても全然上手く出来ませんでした。」
「いや、ジョンの努力にも頭が下がるよ、日本語の上達が早くて合わせるのが直ぐに楽になったからな、ホントは随分前から吹き替えする必要は無くなっていてね。」
「二人のジョンに二つの声が話題になってやめられなくなったのです。
 私達にとってはジョンと武史のやりとりが日本語の練習に役立っています。」
「皆さん日本語の学習を始めてから二年と少しだと聞きましたがとてもお上手で、日本語を使う機会がないと上達しないですよね。」
「日本人スタッフと仲良しですし、プリンセス詩織も教えて下さいますので。」
「ルーシーは詩織さまと、よく話されるのですか?」
「ええ、宮殿に出入りする人は私達以外全員プリンセスより年上だからか、妹の様に良くして貰っています。」
「詩織さまはすっかりあなた方の村が気に入ってしまわれて、弱肉強食の日本が嫌になられたのだとか噂されているのですが…。」
「弱者の為に如何にして稼ぐかを考えてる人ですので…、日本は弱肉強食なのですか?」
「日本だけでは無いかもだけど…、詩織さまだけでなく遠江王家の皆さんは社会的弱者の為に何が出来るかを考えておられるのですが、根本的な解決までは難しく、嘆いておられるのではないかと。」
「プリンセス詩織が嘆いている所を見掛けたことは有りませんが、私達の村は少し山よりに有ることで暑過ぎず寒過ぎないところが良いと話されていましたよ。」
「それと来客の少なさ、日本から軽い気持ちで会いに来られないところが良いそうです。」
「村は平和なのですか?」
「村長がジョンですから。」
「シャルロット、戒厳令が出されたりしてた国の話しだけど、それってどんな意味で?」
「ジョンは武史と同様、人気者なのですよ。」
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近衛予備隊-129 [高校生バトル-55]

「人気者か、YouTubeチャンネルで伝えてるのは本当のことなのね。
 女性に人気なのは間違いないと思うのだけど、男性からも?」
「勿論です、村の改革はジョンが会社の幹部と村人の間に入って調整したからスムーズに進んで来たのだと皆が理解していますので。
 ジョンは当初から村人達に対して論理的に説明して来ましたが、それは間違っていませんでしたし英語の話せない村人にとって頼るしかない存在だったのです。
 会社側が用意した、どこの誰だか分からない通訳を信用する人はいませんでしたので。」
「今でも若いのに、それは二年以上前、村長になる前からのことでしょ。」
「ですが近衛予備隊での学習で理解し、近衛隊メンバーに助けられていましたから、決して自分だけの力では有りません。
 自分達の村はプリンセス詩織のお蔭で、世界的に見ても最も貧しい村の一つから抜け出せたのです。」
「君たちを見てるととてもそんな村だったとは思えないのだけどな。」
「武史、私達はジョンに引っ張られて変わったのです、ジョンはプリンセス達がいらっしゃる前から子ども達のリーダーだったのですよ。」
「そっか、今後はその辺りのこともYouTubeチャンネルで紹介して行って良いかもな。」
「詩織さまが絶対的な信頼を寄せる若きエリート、その人がどう育って来たのかに興味を持つ人は多いでしょうね、私もだけど。」
「どうでしょう、自分には分かりませんが、それより気になっているのは涼子が日本の社会を弱肉強食だと話したことです、武史、そんな感じなのですか?」
「う~ん、弱肉強食か…、競争社会で有ることは間違いないけどね、自分達の声優業界は憧れる人が多い割に、仕事として安定した生活を送れる人は少なくてね。
 声優に限らず良い収入を得ようと思ったら競争を勝ち抜かなくてはならないのさ。」
「ジョンの所ではどうなの?」
「そうですね…、町ではそうなのかも知れませんが…、村から町へ出稼ぎに行っても教育水準の差が有り始めから競争に負けているのかも知れません。
 自分は町へ行っても算数と英語が出来ればマシな生活が送れるとの助言を信じて、近衛予備隊に入隊する前から学習に取り組んでいたのですが。」
「様々な人が社会集団を形作っているのだから単純な話ではないのでしょうが、競争社会が行き過ぎて息苦しかったり、ごく一部の超富裕層の資産が世界全体の個人資産の多くを占めていると言う、今の人間社会には問題が有ると思うのよ。
 力の有るお金持ちの食い物にされてる人は少なからずいてね。
 そんな人達の生活を良くしようとしてるのが、詩織さまや遠江王家の人達なのだけど。」
「そうなんだ、自分はそう言う視点で見て無かったので良く分かってなかったな。」
「武史さん、年に十億円稼ぐ人がその内の二割を社会的弱者救済に充てたとして、その生活が大きく変わると思いますか?」
「う~ん、そんなには変わらないのかな。」
「普通のお金持ちは、弱者救済では無く人件費を削ってでも更に多く稼ごうとするのですが、遠江王家は、初めから弱者を救済する為には資金が必要だからと経済活動に取り組み、その株式資産を増やして来られたのです。
 もし、弱者救済を考えておられなかったら、その資産がどれぐらいまで増えていたかは想像出来ないレベルなのです。」
「そうでしたか、自分は不勉強でした。」
「武史、それでも自分達のYouTubeチャンネルを手伝って下さったことで、貧しかった村人の生活水準を上げる手助けをしたのですから、胸を張って下さい。」
「あ、有難う…。」
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近衛予備隊-130 [高校生バトル-55]

「ジョン、武史さんは大きな役を貰って人気急上昇中なの、一気にお金持ちの仲間入りをするのよ。」
「人気が出てることは知っていましたが収入も一気に上がるのですか?」
「まだこれからの話だよ。」
「でも、すでに仕事が増えて忙しくなっているのでしょ?」
「まあね。」
「お金をどう使うか考えてるのかしら?」
「いやいや、みんなに食事を奢るぐらいのことは出来るが、事務所からお金の使い過ぎに気を付ける様に言われてね。
 所得が増えると所得税率が上がるだけでなく、健康保険などの支払いも増える、油断して使い過ぎると税金を納める為に借金することになると脅されたよ。」
「税金か…。」
「ジョン達も結構稼いでいるのだろ、税金はどう?」
「今まで会社任せにしてましたので…、ただ大統領が税制改革を考えていまして、プリンセス詩織や近衛隊だけでなく遠江大学にも協力を求めているのだとか。」
「大統領って独裁的な感じだけど、大丈夫なの?」
「今は国民の為になる改革を推し進めていますので、問題ないどころか面倒な手続きで時間が掛からない分、改革が早いと言うのがプリンセス始め近衛隊メンバーの評価です。
 民主主義の原則に縛られていないので暴走したら問題ですが、その時は大統領親衛隊にクーデターを起こして貰うとか冗談っぽく話しています。」
「独裁と言っても大統領次第なのね…。」
「遠江大学って随分特殊な大学なのだろ。」
「ええ、研究に特化した大学と言えば良いのかしら、遠江大学に協力要請と言うことは本気で税制改革を考えているのね。」
「はい、シンガポールやドバイは税率の安い国ですが、それによって外国の企業を呼び寄せ経済的な発展を遂げました。
 でも我が国がそれを真似た所で上手く行くとは思えません。
 豊富な資源でも有ればまた違った改革が考えられるのでしょうが、これと言った資源は見つかってなく、大統領による荒療治で幾分改善されたとは言え、経済的にも様々な問題を抱えていますので大胆な社会改革が必要ではないかと。
 今は税制改革と合わせ国営農場、国営企業の可能性を探っている段階です。」
「国営は国営で問題が起きたりするのよね。」
「はい、ですが社会主義国や共産主義国で起きた、その辺りの問題を克服出来れば…、プリンセス詩織は会社が運営している農場や工場を、そのモデルケースに出来ないかと考えておられるのです。
 マーケットチェーンの拡充とそれを支える農場や工場を一体にして、大規模な会社組織から国営組織への移行も視野に多くの研究者が既存のシステムに囚われることなく検討していると聞いています。」
「えっ、何か…、ついてけないレベルの話なのだけど…。」
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