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赤澤省吾-01 [F組三国志-01]

「おいおい、岡崎、なんだその切り方は、高校生にもなって包丁一本まともに扱えない様じゃ人も殺せないぜ。」
「ば、馬鹿言うなよ、人殺しになる気なんてないよ、お前は殺人鬼にでもなるつもりか。」
「はは、まあ包丁貸してみな。」

 もちろん、俺も人を殺める気は毛頭ない。
 五月のさわやかな風が調理実習室のカーテンを静かに揺らし、小さい頃から料理に慣れ親しんでいる身としては、つい、さわやかなジョークも口をついて出るというもの。
 サクサクっとキャベツを切ってみせる。

「赤澤、うまいな。」
「ほんと、上手ね。
 私も料理の手伝いしてるけど、そこまでは出来ないわ。」

 岡崎に続いてのほめ言葉は秋山美咲、学年一の美少女で笑顔がまばゆい。
 やば、ちょっとドキドキしてきた。

「ちっちゃい頃からやってるからね。」
「そうなんだ。」
「親の方針でね、料理が出来ればとりあえず喰っていけるのだとか。
 親父の趣味でもあってさ。」
「へ~、なんかうらやましいな。
 うちの父さんなんて包丁すら握ったことの無いような人なのよ。」
「はは。」

 入学して、まだ一か月と少し、秋山さんとはほとんど話せて無くて、短い会話でも嬉しい。
 もっと話していたいが、今は調理実習の時間…。

「あっ、おいおい岡崎、違うよそんなことしたらオムレツにならないだろ。
 ほんとに、お前はどんくさいな。」
「ごめん、不器用でさ…。」
「それ以前の問題だぞ。」
「そっちは私がやるわ、岡崎くんはお皿の用意とかしてくれる?
 麻里子、こっちお願いね。」
「オッケー。」

 自然に指示を出す、秋山さんはそんなリーダータイプ。
 作業もけっこう手早くこなしていて、その姿をずっと見ていたくなる知的美人。
 そんな彼女が作業しながら話し掛けて来て、少し緊張…。

「ねえ、赤澤くん。」
「うん、な、何?」
「岡崎くんって、ちょっといじめられてない?」
「えっ? お、俺はそんなつもりじゃ。」
「分かってるわよ、赤澤くんの場合は、ちょっとからかっているって感じだから、どんくさいと言われても岡崎くん、そんなに嫌そうじゃなかったもの。
 でもね、森くんとかがさ…。」
「う~ん、確かに、森たちはなぁ…。」
「何とかならないかな?」
「さすが委員長だね。」
「委員長だからと言うよりもね…。」
「うん。」
「私もね小学生の頃にちょっとあってさ…。
 でも、中学、特に中三の時のクラスはみんな仲良くて、すっごく楽しかった。
 それが、この高校のこのクラス…、少し微妙だな~って感じてるのよ。」
「なる程、その感じは分かる。」
「何とかならないかな。
 せめて、岡崎くんだけでもいじめられないようにさ。」
「う~ん、あいつ、ほんとにどんくさいからなぁ~、よくここに受かったものだ。」

 緊張感がばれない様に、めんどくさげに返事はしているものの…、なにせ秋山さんからの頼みごとだ。
 入学してから今日まで、彼女に会える事を楽しみに通学している自分にとって…。
 一目ぼれだが、容姿だけの人ではない、これは神が与えたもうたチャンスではないのか。
 オムレツを焼きながらクラスの状況その他を考察してみる。

「いただきま~す。」

 みごとに焼きあがったオムレツに対する賛辞の言葉を一身にあびる頃には、随分考えがまとまっていた。

「ねえ、秋山さん、さっきの話だけどさ。」
「ええ。」
「ちょっと提案があるのだけど、ゆっくり話す時間とれないかな。」
「もち、いいわよ、私、今日の予定は特にないから。」
「じゃあさ、帰りにちょっとおごるよ、バイト代が入ったところなんだ。」
「あ~、アルバイト禁止よ、うち。」
「はは、バイトって言っても、親の手伝いだから問題ないさ。」
「お父さん?」
「うん、大学で教えているのだけど、ちょくちょく手伝っていてね。」
「へ~。」
「手伝う中で色々な知識に触れることが出来て面白いんだ。
 まぁ学校帰りにデナーとはいかないけど、どこか行きたい店とか有る?」
「ほんとに良いの?」
「ああ。」
「じゃあさ…、え~っと赤澤くんって家どこ?」
「千種区。」
「じゃあ地下鉄よね?」
「うん。」
「駅の近くにおしゃれなカフェがあって、そこのパフェがね。」
「了解、了解。」
「でも、何か悪いかな、私からお願いしといて…。」
「ノープロブレム。」

 問題がある訳ない。
 こんなにあっさりデートの約束が出来るとは思ってもいなかった。
 とは言え妹以外の女の子と二人でなんて初めて。
 仲良くなれたらという気持ちと緊張感の入り混じった状態で、午後の授業を軽く流しながら、もう一度作戦を検討してみる。
 まぁ、授業の内容なんざ教師の口から聞く必要もないから、ノープロブレム。
 いかん、舞い上がって恥ずかしいとこ見せたら残念な男だと思われてしまう。
 落ち着け、省吾!
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赤澤省吾-02 [F組三国志-01]

 キンコンカンコ~ン♪  キンコンカンコ~ン♪

 うー、だめだ、とてもじゃないが緊張が限界を越してしまいそう。
 片思いの女の子と二人でカフェなんて初めてのこと。
 嬉しさの反面、失敗に対する恐れが高まる、嫌われたくないし勿論好感を持たれたい。
 こんな時は…。
 そうだ、親父が言ってた、こんな時は逃げ道を作っておくのも一つの手なんだ。
 そして、正直にあれ。
 余計な見栄を張るな。
 うん、うん、実行するしかあるまい…。

 教室を出てから特に会話するでもなく少し距離を置いた状態で歩いていた。
 でも目的地は同じで…。
 ちらっ、と彼女に目をやると心ろなしか頬が赤らんでいるような…。
 いつ見ても最高に可愛い。
 落ち着け~、省吾~。

 校門を出てからさりげなく距離を近づけていく。
 まぁ、帰り道が同じ方向の同級生が並んで歩いたところでどうってことないじゃないか。
 どうってこと…。
 どうってことない筈だが心臓の奴は勝手に暴走しまくっている。
 口がうまく動くか自信はなかったが…。

「あ、あのさ。」
「うん。」
「お、俺さ。」
「うん。」
「女の子とね。」
「うん。」
「二人でってさ。」
「うん。」
「全然経験なくってさ。」
「うん。」
「ちょ、ちょっと…、じゃ、じゃなくてかなり、き、緊張してて…、ご、ごめん。」
「うん…、う、ううん。
 私も約束した後、男の子と初めてのデートじゃん、って思ったらドキドキして来て、午後の授業、全然頭に入ってなかったの…。」
「えっ?」
「えっ? って?」
「秋山さんみたいな人が?」
「えっ? 私みたいな人?」
「うん。」
「私のこと、どんな風に…?」
「す、すごくしっかりしてて、俺なんかの前で緊張するなんて…。」
「ベ~、そんなんじゃありませんよ~、も、もう。」
「うん。」
「か、勝手に誤解しないで…。」
「うん。」
「赤澤くんの方こそ…、おごってくれると言うから、こういうことに慣れてる人かと思ったわ。」
「そ、そうか。」
「じゃあ、似た者同士ってことなのね。」
「はは。」

 似た者同士と言われましてもね…、俺は大好きなのですよ、あなたのことが!
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赤澤省吾-03 [F組三国志-01]

 秋山さんは教室での真面目そうな雰囲気とは違い、可愛いらしく自分はどんな性格だとか話してくれる。
 好きな人の知らなかった一面を、その本人から最高の笑顔と共に教えて貰うという最高の幸福に浸りながら、こんな時間をこれからも持ちたいと思う。
 それには彼女に好感を持たれなくてはならないし、彼女の為に出来るだけの事をしなくてはならない。
 まずは…。

「あ、あのさ、いじめのことだけど…。」
「うん。」
「今なら…、そうだな、ゲーム感覚で手を打てるというか、手を打ってみたら面白いと思ってね。」
「ゲーム感覚?」
「ああ、簡単に言えばクラスを三つに分けるところから始めてさ。」
「私としては一つにまとめたいのだけど…。」
「いずれはそうするが、統一までの過程という感じで。」
「どういうこと?」
「現時点でクラス運営を放置したら、いじめる側の人が増えると思うんだ。
 全員が楽しい中学生生活を送って来た訳でもなさそうで、いじめられてる子を下手にかばったら自分もいじめの標的になりかねないと考えている。
 みんなの行動とかを思い出して分析してみた結論だけど、どう?」
「そうね、いじめられない様、いじめる側になろうとしているとかも…。」
「それが固定化する前、つまり今、いじめない人達のグループを形成しておこうというのが三つのグループに分ける理由。
 まぁ、三つでなくても良いのだけどね。」
「どんな風に分けるの?」
「まず俺たちのグループ、秋山さん、君がリーダー、奥田さんや谷口さんたち、君と仲の良い人プラス…、岡崎とかも入れてやるかな。
 次は河西哲平をリーダーとするグループ。
 彼は男子の中でも人望が厚いし、彼を見つめる女の子たちの眼差しには妬けるものがある。」
「そうよね、でも私のタイプではないわ。」
「はは、いじめをしないグループが二つあれば良い。
 哲平は話せば分かる奴だと思うから、最初は俺らと哲平の三人だけがこの企みを分かっていれば良いと思う。」
「だったら三人で一つのグループを作っても良いのでは…。」
「選択肢があった方が面白いでしょ。
 俺は絶対秋山派だけどリーダーには哲平を推す奴もいるだろう、クラスを運営して行く上で二つの派閥が競いあったり協力しあったりしたら、面白いと思うんだ。」
「う~ん、そっか…、でも、その秋山派って表現はちょっとな…、赤澤くんがリーダーやってくれたら良いのに。」
「はは、俺には秋山さんのような魅力がないからね。
 まあ、リーダー論というのは小学生時代からの研究テーマでさ。
 自分も地元少年団のリーダーをやっていたのだけど、中二の頃はリーダーをサポートしながら集団を見る様にしていてね、秋山さんを色々な形で支える立場になりたいかな。」
「心強いわ。」
「まあ、研究と言っても大した事ではないのだけどね。」
「ふ~ん、あっ、河西くんのグループにも私たちのグループにも属さない人たちは?」
「派閥がはっきりしてきたらどちらかに所属しようする人も増えるだろうし、森や井原がグループを形成したら、それはそれで面白いかな、彼らも根っからの悪人という訳でもないだろう、グループは固定ではなく状況に応じて変化させて行けば良い、ただ…。」
「ただ?」
「例えば、山影静。」
「あっ、無口よね。」
「そして存在感が希薄だろ。」
「うん、どのグループにも属さないかもね、彼女が何を望んでいるのかも分からないわ。
 今の所、いじめの対象になってる訳ではなさそうだけど。
 でもクラスの一員として溶け込んで欲しいな…。
 あっ、そこの店よ。」
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赤澤省吾-04 [F組三国志-01]

「へ~、お洒落なカフェだね。」

 カフェなんてめったに入らない俺にとっては、ちょいとプレッシャーを与えてくれる大人な雰囲気の店ではあった。
 でも、ここまでで緊張がほぐれ、無難にというか楽しく会話して来たのだから何とかなるだろう、秋山さんはとても話し易い人だ。

「あっ。」
「何?」
「Bud Powell のCleopatra's Dream。」
「え?」
「ほらこの曲。」
「このピアノ?」
「うん、うちの親父、JAZZが好きでさ。」
「へ~。」
「だから小さい頃から自分も耳にしていてね。」
「そっか、私んちは母さんがクラシック好きで、だから、私もショパンとかシューマンの曲が好きになったの。」
「そうなんだ、俺もシューマンのクライスレリアーナとか好きだよ。」
「うんうん、何か嬉しいな、自分の周りの友達ってみんなJポップとかばっかでさ。」

 しばしの音楽談義。
 きっかけをくれたBud Powellに、そして親父の趣味の広さに感謝だ。
 彼女が口にする演奏家のCDが家にあったりする。
 もちろんクラスのことを話し合ったりしたから、ずいぶん長くカフェにいた。

「あっ、時間良かった?」
「そうね、家には連絡入れておいたから大丈夫だけど、そろそろ…。」
「出よっか。」
「うん。」

 地下鉄の駅まではすぐ。
 そして…。

「どこで降りるの?」
「覚王山よ、赤澤くんは?」
「覚王山。」
「えっ?」

 神様、有難うございます。
 今日一日でずいぶん心の距離が近づけたと思っていたら、家も近かったなんて。
 それにしても隣の中学出身だったとは…。
 朝、自分が使う出入口とは真反対の出入り口を使い、自分は地下鉄の先頭車両、降りたら早足で学校へ、彼女は最後尾に乗り、降りたらのんびりと学校へということだったらしい。
 つまり、同じ列車に乗っていても顔を合わせることが全くなかったということだ。
 ここは思い切って…。

「ねえ、明日待ち伏せしても良いかな?」
「待ち伏せ?」

 しまった、待ち伏せと言うワードはミスチョイスだったか…。

「待ち伏せじゃなくて待ち合わせでしょ、もちOKよ。」

 やった~!
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秋山美咲-01 [F組三国志-01]

 赤澤くんと明日の朝は待ち合わせ。
 楽しくて何も考えずに約束してしまったけど、男の子と待ち合わせなんて初めてのこと。
 今になって、またドキドキして来た。
 でも、もっと話していたかったなぁ~。

「美咲、ぼんやりしてるとキャベツの代わりに手を切るわよ。
 慣れて来た頃が一番怪我し易いのだから気を付けなさい。」
「うん、大丈夫よ、でも…、もう少し軽やかに切れる様になりたい、高校に入学してから毎日夕食準備を手伝ってるのにまだまだ…。」
「調理実習上手く行かなかったの?」
「そうでもないけど、包丁の扱いが凄く上手な男子がいてね、カッコ良かった。」
「もしかして、その人と?」
「えっ?」
「今日のデート。
 男の子とカフェなんて初めてじゃなかったかしら?」
「まあ、初めてかも。」
「ふふ、ご感想は?」
「ドキドキだった…、でも彼もドキドキだったみたい。」
「うぶなんだ。」
「そうなのかな…。」
「どんな人?」
「前からね、頭の良さそうな人だなって思っていたの。
 だってさ、休み時間に読んでいる本が、集団と心理、とかなのよ。」
「チェックしてたのね。」
「何となく…、数学が得意みたいで。」
「そっか、美咲にはないものを持ってるんだ。」
「ど~せ、数学ダメダメですよ~。
 でね、お堅いだけの人かなっ、とも思っていたのだけど、クラスのことを相談したら色々考えてくれてね。」
「うんうん。」
「その話しが、大人だ~って感じなの。
 ご本人が言うには、お父さんの影響が大きいのだって。」
「へ~。」
「お父さんは大学の先生。」
「なるほど。」
「でねでね、料理はお父さま直伝だとかで…。」

 話しは尽きない。
 秋山美咲、蟹座生まれの十五歳。
 今まで何度か告られたことはあるけど、いつも何か違うと思ってた。
 私を好きになってくれるのは嬉しいけど、この人と一緒にいたいと思うことはなくて…。
 赤澤くんのことは気になっていた。
 授業中でも、時々妙に大人びた発言をするし、そして、それが理にかなっている。
 同じ学年とは思えない時もあった。
 今日色々話をして…。
 美咲、マジで惚れたか? 
 あ~、またドキドキしてきた。
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秋山美咲-02 [F組三国志-01]

「美咲、おはよ。」
「おはよう。」
「ふふ。」
「なによ、あやか?」
「み・た・わ・よ。」
「何を?」
「赤澤くんとお二人で登校して来たじゃない。」
「あやか、ほんとなの、私は昨日二人で帰るとこ、目撃したのよ。」
「まじ?」
「美咲~、何時からなの? 告られたの? 白状なさい。」
「い、何時からって昨日おごって貰って…。」
「うんうん。」
「で…。」
「告ったの? 告られたの?」
「そ、そんなんじゃ…。」
「その割には真っ赤だぞ。」
「付き合うの?」
「ま、まだ…。」
「美咲はどう思ってるのよ?」
「ふふ、パフェおいしかった。」
「おいおい。」
「赤澤くんけっこう人気あるし、昨日のオムレツでまたポイント上げたのよ。」
「そうなんだ。」
「そうなんだって、美咲、またまた男に興味なさそうなふりしてさ。」
「そんなこと…。」
「おっ、噂の主、発見。」
「あれっ? こっちに来るみたい、おじゃまかしらね~。」
「でも由香、岡崎も一緒みたいよ。」

 赤澤くん、さっそく岡崎くんに声を掛けてくれたんだ。
 このシチュエーションで…、うわっ、またドキドキしてきた。

「おはよう、盛り上がってるね。」
「ふふ、赤澤くん、盛り上がってるわよ、誰かさんたちのことで。」
「えっ?」
「美咲とどうなのよ?」
「はは、ばれてたか。」
「ばればれ。」
「俺は美咲のことが大好きだよ。」
「うわ~、大胆発言。」
「しかも昨日は秋山さんだったのに、いったい何時から?」
「今朝、地下鉄のホームで告って…、その返事はまだ貰ってないけど、美咲って呼んで良いって。」
「へ~、赤澤くんって、けっこうやり手なんだ。」
「いや~、もうドキドキしっぱなしだよ、昨夜は全然眠れなかった。
 でも、本心を伝えたらすっきりしたってとこかな。」
「そっか、今回の美咲は何時もと違うのね。」
「由香、何時もとってどういうこと?」
「ふふ、この美咲お嬢様、今まで何回告られたのでしょう、はい、分かる人?」
「まあ、美咲なら一桁ということは有り得ないわね。」
「そ~なのです、中学生時代、私が知ってるだけで十六人。」
「で?」
「その十六人全員、その場で、ごめんなさい。」
「と、いうことは…。」
「と、いうことは?」
「赤澤くんが十七人目と言うことか?」
「岡崎、馬鹿か!」
「馬鹿ってなんだよ、藤本さん。」
「赤澤くんがまだふられていないことと、美咲の顔の赤さ、そこから導き出される結論はひと~つ!
 美咲、おめでとう。
 赤澤くん、美咲のことよろしくね。
 以上友人代表でした。」
「ははは。」
「ちょっとあなたたちね~。」
「あっ、先生来た。」
「続きは次の放課ね。」

 あ~、なんか、あっという間に…。
 みんな勝手に盛り上がってくれて…。
 でも赤澤くん、ふふ、省吾とだからいっか。

「秋山さん、秋山美咲さん。」
「はっ、はい。」
「顔が赤いけど熱でもあるんじゃない?
 大丈夫?」
「えっと…。」
「先生、近づき過ぎると火傷しますよ~。」
「赤澤くんも暑そうだな~。」
「あらあら、そういう事なの、あなた達。」
「えっ、秋山と赤澤?」
「何時から?」
「真由美、知ってた?」
「私も初耳。」
「そういうことなら保健室へは行かなくても良いわね。」
「先生、二人で保健室へ行かせたら危険で~す。」
「はいはい、では…。」

 か~、はずかし~。
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秋山美咲-03 [F組三国志-01]

 はぁ~、やっとお昼休みだ。
 今日は放課の度にみんなから冷やかされて…。
 ふふ、なんか変な感じ。
 でも、これからが大切な本番かな。
 赤澤くん…、ふふ、省吾はどうかしら。

「さ~、岡崎もこっち来いよ。」
「えっ、ぼくは…。」
「遠慮するなよ。
 秋山さ、じゃなくて美咲、岡崎も連れてきたよ。」
「ええ、じゃあ麻里子たちも机移動してさ。」
「了解~、はは、男子も混じるとなんか新鮮ね。」
「でも、彼女持ちと岡崎じゃあな~。」
「ぼく、やっぱり…。」
「まぁ、今日は一緒に食おうや。」

「いっただきま~す。」
「美咲、赤澤くんとのきっかけについて話してくれるのよね。」
「赤澤くんのオムレツがとても美味しくて惚れてしまったのでしょ。」
「確かに美味しかったな、でもね、このクラスでのいじめについて相談に乗って貰ったの。」
「えっ?」
「ぼくは、いじめられている奴なら一人知ってるけど。」
「誰?」
「ぼく。」
「確かに、岡崎ってそうゆうキャラよね。」
「あやかったら普通に呼び捨てだし。」
「私も小学生の頃にいじめられた事があってね。」
「美咲が?」
「うん、私、普通に真面目な子だったから、いじめられている子をかばったりしているうちにさ。」
「そっか。」
「このクラスも、いじめが広がりそうな雰囲気がないとは言えないでしょ。
 この前、先生と話してたら不登校になった先輩がいて、いじめが原因かもって。」
「あ~、私も先輩から聞いた。」
「私は自分のクラスがそんな風になったら嫌だなと思って。」
「そっか、岡崎って、いじめたら楽しそうだと思ったのだけどな。」
「おいおい。」
「奥田さんって怖いんだ、かわいいのに。」
「岡崎、おだてても何もあげないわよ。」
「ははは。」
「それで、赤澤くんに相談したの。」
「ちっ、ちっ、ちっ、そこは省吾にって言わなきゃ。」
「えっ、ま、まだ慣れてなくて…。」
「それと、いちいち真っ赤になるな。」
「う、うん。」
「で、相談された俺は、色々考えた訳だ。」
「どうやったら美咲と親しくなれるかでしょ?」
「もちろん、でも、ついでにいじめのことも考えたのさ。」
「ついでかよ。」
「で、結論は?」
「いじめが広がる前に、いじめないグループを作ろうってこと。
 いじめは、人間の本能に由来する部分があるから簡単にはなくせないと思うんだ。」
「本能?」
「ああ、人が他人より優位に立とうとするのは、生存競争の中で自然なことだと思わないか?
「確かに麻里子は自然だよなぁ~。」
「何よ、あやかだって!」
「奥田さんは、岡崎が言う通りかわいいよ。」
「えっ、そ、そうかな。」
「麻里子は単純だから。」
「ど~せ、あたしゃ…。」
「色んな人がいて、それが集団を形作ってさ、他人の集まりが何時も仲良くなんて有り得ないだろ。
 そんな集団の中でも、学校のクラスなんて閉鎖的な環境だから、クラスの中に逃げ場がないとつらいと思うんだ。」
「逃げ場か…。」
「どうしたの岡崎くん。」
「秋山さん、ぼく時々逃げ出したくなる。」
「はは、なあ岡崎、何時もなら森たちのおもちゃになってる時間じゃないのか?」
「えっ。」
「あの子たちのいじめは見ていて気分が悪くなるのよね。」
「でも、俺も含めて誰も止めようとはして来なかった。」
「だって、岡崎のために自分までやばくなるようなリスク、冒せないもの。」
「だよね~。」
「みんなひど~い。」
「でも、今日はここにいてどうだ?」
「美女に囲まれて楽しい想いをしつつ、ふふ、岡崎くんったら幸せ者じゃない。」
「あっ、だから赤澤くんはぼくを…。」
「と、いうことだ。
 後は岡崎次第だけどな。」
「ぼく次第?」
「ああ、美咲の友達グループと仲良くやっていけるのかどうか。」
「ぼく、話すのあんまり得意じゃないし…。」
「えっ、お前ここで話すつもりでいたの?」
「違うの?」
「話しても良いけど、人の話しを聞くことが大切なのさ。」
「話しを聞く?」
「人間なんて誰しも自分の話しを聞いて貰いたいもの。
 でも自分の話しを聞いてくれる人なんて限られているからね。
 奥田さんだって岡崎にきついこと言ってるけど、根は優しい人だから岡崎がきちんと接したらきっと仲良くなれると思うよ。」
「うん。」
「ねえ、赤澤くん。」
「何?」
「私のこと奥田か麻里子って呼び捨てにしてくんないかな~。
 彼女の友達ってことでさ。」
「わかった、俺のことも省吾とかで良いよ。」
「じゃあぼくも麻里子って。」
「岡崎は絶対だめ!」
「ふふ女王様とお呼びって感じね。」
「はは。」
「ということは、私たちがいじめないグループってこと?」
「うん、谷口さん、そういうつもりだけどどうかな。」
「私は賛成、どうせなら楽しい高校生生活送りたいし、私のこともあやかでお願い。」
「了解。」
「私も由香って呼んで、藤本でも良いけど…。
 とりあえずは、省吾さんと美咲、麻里子、あやかと私、おまけで岡崎ってことね。」
「ぼくはおまけかい。」
「ははは、まあ細かいことは気にするなって。」
「でも私達だけでは…。」
「ふふ、そこはまだ企みがあってね。」
「そっか~、お二人はこんな企みごとを相談しているうちに仲良くなったんだ。」

 まず、私達のグループは何とかなりそう。
 でも、麻里子たち…、由香なんて省吾さんって呼んでる…。
 省吾は私の…。
 う~ん、二人っきりになりたい。
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秋山美咲-04 [F組三国志-01]

 キンコンカンコ~ン♪  キンコンカンコ~ン♪

 ふ~、やっと授業が終わった。
 でも、今日は授業に集中出来なかったな…。
 省吾のことばかり考えてしまって…。

「美咲。
 美咲!」
「えっ、な、なに? 麻里子。」
「大丈夫?」
「な、何が?」
「その動揺ぶりからすると、赤澤くんのこと考えてたでしょ。」
「えっ、その…。」
「なんだ、図星か。」
「えっと、なんか、その、自分でもよく分からなくて。」
「男嫌いかと思ってたら、いきなり恋する乙女に変身、そりゃあ、分からんだろうなぁ~。」
「ど、どうしよう?」
「どうしようって、どうしたいの?」
「え~とぉ…。」

 あっ、赤澤くんがこっちへ来る。
 ド・キ・ド・キ・

「美咲、今日も一緒に帰らない?」
「う、うん。」
「あらま、省吾さんってそういう積極キャラだったの。」
「はは、ドキドキしながらだったけど思い切って告ったら…、そうだな開き直ったら、自分に正直になれたってとこかな。
 まだ、断られた訳じゃないし。」
「ふふ、私はじゃましないわよ。」
「麻里子…。」
「遠くから生暖かく見守っていてあげるわ。」
「由香ったら…。」

 断る…、そんなこと…。
 朝は、なんだか恥ずかして直ぐに返事出来なかったけど…。
 今日も一緒に帰れるんだ。
 嬉しいけど、恥ずかしいような。
 でもでも…、うわ~、私どうしちゃったのだろう。
 省吾に告白されて、凄く嬉しかったのだから…、うん、しっかりしなきゃ。
 もう堂々と一緒に帰ろう…。

「美咲、とりあえず秋山派はオッケイってことだね。」
「うん、でもみんな…、はぁ~、なんか今日は疲れたな~。」
「はは、ごめんよ。」
「し、省吾があやまることじゃないわ。」
「隠しておけなくてさ。」
「そうよね…、隠れてこそこそ付き合うより、ずっと良いかも、省吾、好きだよ。」
「えっ、あ、有難う。」
「ふふ。」
「ははは。」
「私たちのグループの次は河西哲平くんね。」
「ああ、そっちは俺に任せな。
 すごく親しいという訳でもないけど、ちょくちょく話しはしてるから。」
「うん。」
「そうだ、今日もカフェに寄ってく?」
「良いの?」
「もちろん。」
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河西哲平-01 [F組三国志-01]

「お~い、哲平、ボールとってくれよ。」
「おう、いくぞ。」

 バスケも久しぶりにやると面白い、まあ体育レベルの球技なら、何をやっても楽しいけどね。
 部活のラグビーは好きだけど厳しくもあるからな…。
 あっ、省吾。

「さすが哲平だな、バスケもうまいじゃん。」
「まあな、そういう省吾もなかなかじゃないか。
 さっきは絶対抜けるって思ったのにさ。」
「はは、たまたまだよ。」
「たまたまね、お前はただのガリ勉かと思っていた。」
「よせやい。」
「手は早いしな。」
「え?」
「秋山のことだよ。」
「ああ、あれは完全に偶然、自分でもびっくりしてる。」
「秋山って知的美人だよな。」
「なんだ、お前も狙ってたのか?」
「当たり前だろ、美人なだけでなく性格も良さそうで。」
「哲平なら女子には不自由しないのだろ。」
「はは、まあ、選ばなければな。」
「このモテモテ野郎が。」
「でも誰でも良いという訳ではない。」
「確かに。」
「どういうきっかけを作ったんだ?」
「きっかけか…、きっかけは向こうからやって来た。」
「ふ~ん。」
「でさ、哲平に頼みが有るのだけど。」
「何だよ。」
「彼女とのきっかけはクラスのことでさ。」
「あっ、学級委員長だったな、彼女。」
「ああ、クラス内のいじめ問題を持ちかけられてね。」
「いじめ?」
「そうか、そういえば哲平って休み時間、あまり教室にいないよな。」
「ああ、中学から仲の良い奴が隣のクラスでさ。」
「まあ、ちょちょいとやってる奴がいるわけよ、F組には。」
「そうか、それは良い気しないな。」
「うん、で、何とかならないかって相談されてね。」
「なるほど、何とかしないと男がすたるってことか?」
「まあ、そんなとこだ、それで頼みがあるのだけど。」
「ああ。」
「グループを作って欲しいんだ。」
「グループ?」
「うん、まだ、F組はバラバラの状態だと思う。
 今は仲良しグループ的なのがあっても小さいが、このままいじめっ子たちがグループを形成し始めると大きくなってしまう可能性が有る。
 でも、今の内にいじめないグループを作っておけば、それを防げる可能性が高まるだけでなく、F組が楽しいクラスになると思ってね。」
「そうか…、そんなこと考えてなかった。」
「哲平なら男女問わず人気が有るだろ。」
「はは、照れるなあ~、でもお前らで、そのグループ作れば済むことじゃないのか?」
「それじゃあ限界が有るし、色々な選択肢があった方が面白い。
 美咲たちのグループと哲平中心のグループとが、競いあったり協力しあったら、クラスが盛り上がると思ってね。」
「う~ん、そうか…、俺の中三の時のクラスは結構まとまっていて楽しかった。
 ここに入学して、少し違和感を感じているが…。」
「何も堅苦しいグループを作る必要はない、俺も協力するから考えてみてくれないか。」
「ああ…、協力…、そうだ、省吾って数学得意だよな。」
「まあ苦手ではない。」
「俺、だめなんだよ、教えてくんない?」
「はは、交換条件ってことか、それぐらいならお安い御用だよ。」
「部活やってるとどうしても時間が足りなくなりそうでさ。」
「そうらしいな。」
「部活の先輩たちは、一浪して上を狙うか、それなりに妥協するかの二者択一だって言ってる。
 でも、妥協するにしてもそれなりのところへ入りたいじゃないか。」
「うん、今回の企みは、その辺も考えているから考えがまとまったら話すよ。」
「分かった。」
「とりあえずは、仲良しグループ作りを考えてみてくれるか?」
「ああ。」
「それでさ、ゲーム感覚で…。」

 へ~、省吾って、もっと付き合いづらい奴かと思ってたけど、面白いことを考えるのだな。
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河西哲平-02 [F組三国志-01]

「なあ省吾、今日の数学、よく分からなかったのだけどさ。」
「そうだな、中学生の頃とは色々違う、でもポイントを押さえて行けば決して難しくはないんだ。」
「この辺りだけど…。」
「うん、ああ、これはね…。」

 えっ、そんな簡単なこと?
 数学の先生より省吾の説明の方が分かり易いじゃんか。

「サンキュー、なんか先生の話を聞いて難しく考え過ぎていたよ。」
「はは、あの先生は簡単な事を難しそうに話す傾向が有るからな。
 まあ俺は先生の話を聞く前に理解してるから、あんな分かりにくい説明は必要ないけどね。」
「師匠と呼ばせて下さい。」
「ははは。」

「あらっ、昼休みに二人でお勉強?」
「美咲。」
「おっと、おじゃまかな?」
「よせよ、それより、哲平、この前のこと考えてくれた?」
「ああ、だから気軽に数学の質問をさせて貰ったのさ。」
「へ~、どういうことなの?」
「哲平中心のグループ。」
「交換条件に俺は省吾から数学を教えて貰う話しをしてね。」
「あっ、私も教えて欲しい、今日の数学よく分からなかったの。」
「ははは、先生より省吾の方が分かり易いぞ。」
「ほんと?」
「さてね、まぁ近い内に勉強会でも開くかな?」
「やろ、高一から進学塾なんて行く気なかったけど、今日の授業聞いてたら不安になって。」
「そうか、あのせんせ、進学塾から金貰ってるのかも、なあ省吾。」
「はは、有り得ない話しじゃない所が怖い、その内進学塾の案内なんか配り始めたりしてさ。」
「まさか、そこまではしないでしょう。」
「ははは。」
「そうそう、グループの話しは省吾から聞いて考えているけど、遠足はどうなってる?」
「遠足と言っても、まぁクラスの親睦を深めるって程度の簡単なもの、でもそこが重要なのよね。」
「そのグループ分けって明後日?」
「うん。」
「幾つのグループに?」
「そうね、一グループ五人、八つでどうかしら?」
「うん賛成、省吾は?」
「問題ない、高校生にもなって大勢でぞろぞろ歩くことに抵抗感を覚える奴もいるだろう。」
「だよな、それでさ、林徹と黒川淳一とは話が合って良く話すのだけど、この二人、微妙に対抗意識があってさ。」
「ああ、分かる気がする。」
「俺含めて三人がリーダーになりメンバー集めをしたら面白くなるかも。」
「もしかしてゲーム感覚ってこと?」
「うん、秋山さん、省吾から提案があったからね。」
「どんなゲームに?」
「まずは人数集め、自分以外に四人集められなかったら負けだ。
 次は女子の人数、野郎三人で競うのだから当然でしょ。
 ただ、これだけじゃゲームとしての面白みに欠けるかな。」
「徹だと、かわいい子はポイントが高いとか言い出しそうだね。」
「うん、それだと省吾たちの思いとずれてしまう。」
「メンバーたちが遠足を楽しめたかどうか、遠足の後でアンケートをとって、それでポイントをつけたらどうかしら?」
「それなら、秋山派でも、女子の人数では競えないけど…、麻里子さんならリーダーやってくれそうだろ、後は美咲と俺とでこっちも三つのグループを作るか?」
「おいおい彼女と別で良いのか?」
「はは、まあ行く先は同じにするよ。」
「と、いうことは六グループが同じとこで集合ということも有るのね?」
「うん、残りの二グループにも声を掛けておけば、問題ないだろ。」
「グループ分けうまく行くかしら?」
「そうだな、まずは自由に集まり、五人揃ったところから固まって座って貰えば良いだろう。
 俺は残りそうな人を中心にゆっくり集めていくよ。」
「省吾、ぴったりにならなかったら?」
「四人でも六人でも良いと思う。」
「そうね、五人でなきゃいけない理由はないわ、後は森くんたちがどう動くかかしら。」
「ああ、パシリとかで狙われそうな連中は早めに俺たちのグループに引き入れないとな。」
「私も気をつけるから、河西くんもお願いね。」
「まぁ任せときなって、根回しして置けば話が早くなると思うよ。」

 はは、省吾じゃないけど、秋山さんからお願いされたら断れないわな。
 でも、高校ってこんなことを真面目に考える奴なんていないと思っていたけど、なかなかどうして、また中三の時みたいに出来るかもしれない。
 まずは徹と淳一に話して、後は…。
 ふっ、たかが遠足が楽しくなって来たぞ。
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