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Lento 4,初秋 ブログトップ

桜庭康平-1 [Lento 4,初秋]

『中村和音第二回定期演奏会 with柳原真子』 の様子は、演奏会の翌週予定通り夕方のテレビ番組で紹介された。
放映時間は当初の予定より少し長くなった。
演奏風景を見た局のスタッフたちが、大きく心を動かされたからだ。
そして視聴者からの反響の多さは、テレビ局として名古屋発の若手芸術家を後押していこうと決定させるには充分すぎるものだった。
まずは桜庭康平がLentoサイドと調整し今後の具体的な番組作成計画を作っていくことになった。

桜庭にとってはラッキーなことだ。
ボランティアで和音たちのプロジェクトに参加するつもりでいたのが、普通に仕事として活動できる。

殊更暑かった夏がようやく終わりを告げ始めたある日、桜庭はLentoの応接間にいた。
Lentoの緑川、初音、祥子が同席。
桜庭は局側の簡単な流れの予定を説明してるところだ。
「今の所、二つの形を考えています、毎週夕方の番組に出演しての演奏、と、ミニコンサートの形で番組を作成しての放送です、スポンサーの方は心当たりとか当たってみようかと思っています。」
「番組の方は桜庭さんにお願いするとして。」
緑川が話し始める。
「スポンサーの方は現時点で5つの企業から、CM出演のオファーが来ているのですが。」
「えっ? どこなんです?」
緑川は有名企業の名を上げていく、会社名に表情を変える桜庭。
「し、失礼しました、そこまで話が進んでいたとは…、でも、どうアピールしたのですか?」
「犯人はそこの祥子ちゃんです。」
「す、すいません私がやりました、って私は犯罪者なのですか?」
笑いながら話す祥子。
「前もって話を聞いて、了承したことだから、私も緑川さんも共犯者の様なものね。」
と初音、緑川がさらに続ける。
「主犯の祥子は、作成中のDVD、と言ってもDVDそのものは完成していて、後は曲の説明とか写真とかの作業をしていた頃なんですが、Lentoのお客様から20人選んで、今度発売させていただくDVDです、とか手書きの手紙を添えて、脅迫状を送ったんです。」
「脅迫状の内容はですね…。」
緑川のジョークに乗る祥子。
「今回のテレビ出演のことなど、軽くお伝えさせていただいたのですよ、スポンサーになって下さいとは一言も書いてませんが、まあ、仲良しのお客様の中から厳選した20人ですから…、20人中5人のお客様がDVD、テレビ出演から、ピンと来てすぐ動いた、ということでしょうね、今は5社ですが、この情報が流れたらすぐに、少なくとも後3社、絶対来ますよ、負けず嫌いのお客様関係がまだなんです。」
「う~ん、祥子さんの手のひらの上で弄ばれてる大企業のお偉いさんがいる訳ですか…。」
多少Lentoのことも聞いていた桜庭だったが、驚きは隠しきれなかった。

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桜庭康平-2 [Lento 4,初秋]

午前中の話し合いが終わりホールへ案内される桜庭。
プロによる演奏時間が終わり、今はランチタイム前、先崎が演奏していた。
先崎のバイオリンに合わせ踊る様にランチ前の準備をしているホールの女の子たち。
客たちは談笑しながらLentoの雰囲気を楽しんでいるようだ。

桜庭たち4人が席へ着くか着かないかのタイミングでテーブルへ来たのは西園寺優子だ。
「桜庭さんこんにちは、ゆっくりしていって下さいね。」
和音の演奏会で桜庭とは顔見知りになっていた。

すぐに別の女の子が来て初音に。
「あちらのお客さまが、お話ししたいことがあると言っておられますが、いかがいたしましょう?」
「すぐ行きます、桜庭さん、何かあったら優子にお申し付け下さいね。」
同様に祥子、緑川も客に呼ばれて席を離れ、残された桜庭は優子に話しかける。
「何か訊きたいことが沢山あるんだけど。」
「はいどうぞ、そのために私がここにいるんですよ。」
「え~っと、携帯の番号とスリーサイズ、それから、どこに住んでるの?」
「ふふ、それは秘密です。」
「それにしても…、ここは…、どこなの?」
「Lentoですよ。」
「う~ん、女の子たちも綺麗な子が多いし、何から訊けばいいのかな?」
「ふふ、綺麗な子が多いのは、ホール係り採用の基準の一つに、このLentoの雰囲気に合っているかどうかということが有るからなんですよ。」
「しかし普通にバイト募集して簡単に集まるものなの?」
「Lentoで一般募集したのは最初だけなんだそうです。」
「たしかプロジェクトの関係もあって人を増やしているって聞いたけど…。」
「今は、スタッフの紹介だけでずいぶん増えてます、Lentoのイメージに合っていて一緒に働きたいと思う人を、スタッフが誘って来るんです、もちろん紹介料も貰えますから。
給料が良いし、お金もらって名演奏が聴けたりするから…、バイトする必要の全くないお嬢様も少なからず働いているんですよ。」
「客の人数に対して働いてる子が多い気もするんだけど。」
「お客様方が納得できるサービスを提供できる人数以上であることが基準なんですよ。
この時間帯はランチタイムをはさみますので一番人数が多いのです、3時間だけ働いているスタッフも多いんです、演奏中は必要ないですからね。」
「そりゃそうだ、給料はそんなに良いの?」
「と、思います、ランク制になっているんですが、最初は時給千円から、ランクが上がるごとに百円ずつ上がっていきます。」
「昼間のホールでそれだけ貰えるとやりがいもある訳だ。」
「君は今いくら貰ってるの?」
「時給1,600円です。」
「えっ? 今何年生。」
「2年生です、Lentoへは大学に慣れた頃の7月に紹介していただいたので、1年と2ヶ月ぐらいでしょうか?」
「ランクアップは簡単なの?」
「普通の人なら、初めは毎月上がって1,300円って感じみたいですが、働き初めてから5ヶ月で1,500円という人も少なくないです。」
「ずいぶん気前がいいんだな。」
「でもここからが勝負なんです。」
「勝負?」
「最高ランクで2,000円なんですけど今まで5人しかいないそうなんですよ。」
「へ~。」
「私も、もちろん目指しているんですけど1,500円から1,600円になるまでに5ヶ月もかかってしまったんです。」
「い、いや普通はそんなもんなんだよ。」
「でも、真子さんは半年で2,000円だったんですよ。」
「そうか、彼女はホール係りとして働いていたんだったね。」
「彼女の踊るように働く姿がお客様に大好評となったんだそうです。」
「う~ん。」
「その後は時給プラスボーナスとなって、今はLento専属のプロ舞踏家という感じで違った契約を結んだそうです。」
「なるほど…。」
「ちなみに和音さんのマネージャーになる前の祥子さんも時給2,000円だったんですよ。」
「それだけの仕事をしてたってことかな?」
「そうなんです、私も祥子さんを目標にしているのですが、まだまだ力が足りません。」
「シフト制の職場は調整が難しいって聞くけど…。」

その時、優子は何かに気づいた、という感じで桜庭の話しに応えることなく。
「すいません、すぐ戻りますので…。」
と言い残すと、そのまま、踊るようにホールの人となった。
優子は桜庭と話しながら、ずっとホール内の様子を見ていた。
お客さんとの対応に、ちょっととまどっている新人に気づいたのだ。

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桜庭康平-3 [Lento 4,初秋]

優子はすぐ戻ってきた。
「すいません、新人の子が、今後の和音の演奏会のことなどをいきなり聞かれて困っていたんです。」
「すぐに済んだね。」
「はい、お客様に、新人をいじめちゃだめですよ、と言ってきただけですから。」
「えっ?」
「常連さんの軽い、いたずらなんです。」
「今は客の為じゃなく、新人の子の為に行って来た訳なんだね。」
「はい、大切な後輩ですから。」
「成る程、で、シフトの調整のことなんだけどさ。」
「そうですね…、調整の話の前に、シフトの説明をさせて下さい。」
「うん。」
「ホール係りは4通りになってます。
まずは『午前』オープン前の準備からランチタイム過ぎまで、このシフトは午前の演奏を聴くことができるんです。
次に『午後』ランチタイム前から夕方まで、午後の演奏を聴けます。
それから『ランチタイム』ランチタイムを挟んで3時間のシフトです。
そして、夕方から終わりまでの『夜』、これが基本シフトになってます。」
「夜もやってるんだ?」
「夜は昼間とは雰囲気が全く違います、JAZZの日も多いですし、スタッフが色々企画して、普通の演奏だけではないプログラムもあります。」
「う~ん、一度聴きに来たいなぁ…、でも高いんだろ?」
「はい、その前に予約で一杯です、けど桜庭さんが和音さんたちのためにしっかり働いて下さったら、私が招待しますよ。」
「えっ? 満席なんじゃあ?」
「椅子を増やすだけのことなんです。」
「あっ、確かにこれだけゆったりしてたら席を増やすのは簡単だ。」
「私のランク以上は緑川さんか初音さんの了解を貰えれば何とかなるんです。」
「なるほど、今の私も予約なしでここに座ってるからな。」
「私も和音さん、真子さんの大ファンなんです、よろしくお願いしますね。」
「もちろんさ、君のランク以上って…、呼び方はランクABCとかなの?」
「いえ、その…、私は二段なんです。」
「はは、君は有段者なんだ。」
「はい…、Lentoに採用されると、まずは5級、時給1,000円です、初段になって時給が1,500円って感じなんです、うちのオーナーは、こういう茶目っ気というか、何か違うわよ! って突っ込み入れたくなることするんですけどね、結果分かりやすくなってるんですよ。」
「どういう風に?」
「初段になるまでは『ランチタイム』しか入れないんです。」
「成る程有段者を目指せということなんだね。」
「はい。」

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桜庭康平-4 [Lento 4,初秋]

「有段者になると色々メリットはあるの?」
「はい、初段からはプロの演奏時間帯も働くことになりますから、その演奏を聴けるようになります。
二段からは新人の面倒をみたりとか、接客だけではない違った内容の仕事もやらさせてもらえます、お花係りというのもあります、先回の和音さんたちの演奏会で、部署ごとのリーダーをしていたのは、皆二段以上なんです。」
「成る程、責任ある仕事を任せてもらえる様になるんだね。」
「はい、その仕事を評価してもらえれば昇段にもつながる訳なんです。」
「なんとなく、ここの仕組みが分ってきたよ。」
「あと三段以上だと、ほぼ自分の思い通りにシフトに入れます、もちろん他のスタッフより早くシフト表へ予定を入れる必要はありますが、後での変更も可能なんです。」
「ふむ、それって特権ってこと?」
「思いっきり特権です、和音さんの演奏の日に確実にシフトに入れるから…、仕事中にお金貰って聴けるんですよ。」
「あ、そうか。」
「和音さんだけでなく一流の演奏家がLentoには来ますし、真子さんの踊りだって見れるんです。
それが、二段では人数の関係で確実ではないんです。」
「その辺りはどうやって調整してるの?」
「大抵は相談して決めています。」
「でも、皆で相談というと…、朝から夜までやってる店だと、皆が一緒になることは少ないだろうし。」
「それが、そうでもないんです、毎週日曜日の夜はスタッフパーティーがありますから。」
「スタッフパーティー?」
「はい、初めはスタッフミーティングという感じだったらしいんですが、いつしかパーティーになってしまったそうで、仕事の打ち合わせや新人のトレーニングもするんですけど、他に色々あって楽しいんです、自由参加なのですが出席率高いんですよ。」
「う~ん、Lentoって奥が深そうだな…。」

そこへ初音が戻って来た。
「桜庭さん、和音たちのスポンサー候補のお客様がお話をしたいと言っておられますがよろしいでしょうか?」
「ようやく俺の出番か、もちろんOKですよ。」

桜庭は初音に連れられて席を離れた。



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細沢すみれと柳原真子-1 [Lento 4,初秋]

Lentoの休憩室、仕事を終えた細沢すみれが真子と話している。
細沢すみれは真子の友人、Lentoへは真子が紹介した。

「私もようやく、初段になれたわ。」
「と、いうことは毎月昇給してきたのね。」
「真面目にやってたら簡単にランクアップって感じ、でもここからが勝負みたいね。」
「まぁ、初段で満足するもよし上を目指すもよし、ってことね。」
「でも、真子は別格だったんでしょ?」
「ふふ、Lentoが私に合い過ぎてたのね。」
「それにしてもプロになるなんてすごいわ。」
「まぁ和音がいたからなんだけどね、それよりフォークダンスの方どう?」
「女の子は何とかなりそうなんだけど、やっぱり男の子を集めるのは難しいわね。」
「すみれの方もか、私の方も…、じゃあいっそ男装で行く?」
「あ〜、成る程、その手があったか…。」
「う~ん、かえって受けるかも、すみれは背が高いから、男装しても似合うわよ。」
「そ、そうかな? でも、厨房の高橋くんは入ってもらっても良いよね。」
「もちろんよ、でも彼の実力はどう?」
「次回のスタッフパーティーを楽しみにしてて、ストリートダンサーがフォークダンスになじめるかどうか面白いかも、友達も一人連れてくるそうよ。」

今までLentoで踊りといえば、真子のソロだけだった、スタッフがフォークダンスを客の前で演ずるという案は今まで何度も出たのだが、客に見せるレベルで出来るかどうかで実現できずにいたのだ。
今回は真子がすみれに話を持ち掛けLentoスタッフ外でもいいから、という感じで人を集めていたのだ。

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細沢すみれと柳原真子-2 [Lento 4,初秋]

Lentoのスタッフパーティー、真子と、細沢すみれの登場に歓声が上がる。
歓声の大きさは、二人が男装で登場したからだ。

Lento女性スタッフの衣装は、オーストリアのディアンドルと呼ばれる民族衣装などを元にデザインされているものなど色々ある。
それに合わせる形の男性の衣装も色々用意されていて、バイオリニスト先崎浩士は好んで着ている。
それを今日は真子たちが着て出てきたのだ。
まぁ美人というのは何を着ても似合うもので…。

「皆さんこんばんは、今夜はフォークダンスを踊ろうという企画です。」
真子が話し始める。
「フォークダンスと言っても色々ありますが、今回はミュージカル映画サウンド・オブ・ミュージックの中で演じられたものです。
DVDで予習をお願いした皆さんよろしくお願いしますね。」
厨房の高橋直人たちはサウンド・オブ・ミュージックのDVDを借りていた。
「初めは私たち4人でどんな感じかお見せします。」
二人の傍らにはLento女性衣装を身にまとったスタッフが一人ずつ付いた。
「その後、感じが掴めた人からどんどんパートナーを見つけて入って来て下さい。
ちょっと男性が少ないので、女の子でも男性役をお願いしますね。」

音楽が始まる。


 サウンド・オブ・ミュージック

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細沢すみれと柳原真子-3 [Lento 4,初秋]

4人は2組に分かれて踊りはじめた。

ミュージカル映画、サウンド・オブ・ミュージック版レントラー。
真子がこの曲を選んだのには理由がある。
演奏会のアンコールで、サウンド・オブ・ミュージックの中の「My Favorite Things」を演奏したことから、マリアとトラップ大佐がレントラーを踊るシーンを見たいという声が幾つか寄せられていたのだ。
相手役のこともあり、そのままは無理だから少しアレンジして5,6組で踊ることを考えている。
これは大ホールでの演奏会も意識してのことだ。
衣装は民族衣装を模した物にするつもりだ。

2回目からはDVDで雰囲気を掴んで来たスタッフも踊り始めた。
しばらくして真子とすみれは踊りをやめ皆の踊りを見ていた。

「すみれ、高橋くんいいんじゃない。」
「やっぱり、見せる踊りということを分かっているわね、でも彼の友達の川野さんも良いわよね、彼なら真子の相手役も出来そうじゃない?」
「確かにそうね、年齢的にもルックス的にも踊りも…。
後は舞台で踊れそうな人をチェックしておいてね。」
「おっけい。」

しばらくして音楽が終わる。
長めに曲が続いていたこともあって踊っていた人たちは飲み物へ手が伸びる。

真子が川野に声をかける。
「今日はお忙しいところお越し下さいまして有難うございました。」
「いえいえ、こちらこそ、こんな沢山の美女を生で見たのは初めてですよ。」
「普段はどんな踊りをしてみえるのですか?」
「高橋くんたちとストリートダンスをすることも有るのですが、一応職業はバックダンサーです。」
「成る程、納得しました、見せる踊りをしっかりしてみえましたから。」
「有難うございます、子どもの頃はバレーもやってたんですよ。」
「あ、あの一つお願いが有るんですけど…。」
「なんでしょうか?」
「ちょっと着替えて私と今のレントラーを少し踊っていただけないでしょうか?」
「えっ、ええ、もちろん! 喜んで!」

着替えに行く二人。
途中、衣装担当のスタッフに声をかける真子。
スタッフの女の子は、すぐとびきりの笑顔になって小走りに衣装の用意に行った。

すみれは高橋に声をかける。
「どうだった? 普段踊ってるのとは全然違ったのかな。」
「はい、すみれさん、でも最初思ってたより、うんと面白かったです。」
「踊りってね、自分が踊っていて楽しいというのと、見ている人も楽しいのと二つに分かれる気がするの、君のはちゃんと見ている人を意識した、舞台でも通用する踊りになってたわよ。」
「有難うございます、え~と、川野さんは…。」
「あらっ、真子が拉致したようね。」
「川野さんはプロなんですけど、時々ぼくらのダンスを見て指導して下さっているんです。」


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細沢すみれと柳原真子-4 [Lento 4,初秋]

しばらくして、ホールには楽器を手にした人の姿が目立ち始めた。
学生プレイヤーだけでなく、プロの姿も。
遠山建夫が仕切り始める、プロのコンサートマスターだけあって手馴れたものだ。
20人程の楽団が、どうやら即席で作られたらしい。

そしてサウンド・オブ・ミュージック版レントラーの曲が始まる。
即席だけに少しぎこちなく始まったが、それぞれ、それなりの力を持った音楽家だけあってすぐに呼吸を合わせていく。
そこへ真子と川野が登場し踊り始める。
真子は女性の衣装に着替え、川野も民族衣装に着替えている。
先ほど皆で踊った時と同じ踊りなのだが、大きさが全く違う。
見ている者たちはプロのレベルに圧倒される。
真子は途中から川野の力を確かめるかのごとくに踊りを変え始めた。
それを自然に支える川野。
最後は元の踊りとは全く違ったものになっていたが、終わった後の拍手はその完成度の高さを物語っていた。

すみれが駆け寄る。
「良かったわよ真子…、川野さん、真子をよろしくね。」
「えっ、は、はい、よろしくお願いします。」
「お仕事はお忙しいんですか?」
真子が遠慮がちに尋ねる。
「まぁ仕事に波がありますから、暇でバイトしてる時も多いですよ。」
「じゃあ、あ、初音さん。」
真子たちのところへ初音が歩み寄る。
「川野さんでしたね。」
「はい。」
「Lentoマネージャー佐山初音と申します。」
「あ、今日は有難うございました。」
「こちらこそ、素敵なダンスを有難うございました、実は真子の相手となる男性ダンサーを探していたところなんです、良かったらスケジュールを合わせてLentoや、演奏会で真子と踊っていただけないでしょうか?」
「えっ?」
「ギャラについてはここでは何ですから、あちらで相談させていただきたいのですが。」
「は、はい。」
川野を連れていく初音。

「初音さん、惚れたかな?」
と、すみれ。
「えっ? えっ?」
真子が戸惑った様に返事をする。
「真子も惚れたのかい?」
「わ、私は別に…。」
「頬が赤いわよ。」
「踊った後だから…。」

しばらくして、マリアとトラップ大佐がレントラーを踊るシーンがLentoで演じられたことは言うまでもない。


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