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ぷろろーぐ-1 [権じいの村-1]

初秋の、とある山村。
杉の大木が村を眺めていた。

この村もずいぶん寂れてしまったものじゃ。
元々大きな村じゃなかったがの。
それでも昔は祭りがあったり、まぁ若者たちが時に羽目を外すなんてこともあったが、それなりに活気があった。
それが今じゃ年寄りばかり、朽ちかけた家もあちこちにあって…。
おや見慣れぬ若者たちが来たな。

「立派な杉ね、慶次。」
「うん…、昔は村のシンボルだったのかな。」
「今でもシンボルなんじゃない、もっとも村の方がぼろぼろみたいだけど。」
「だな。」
「ここにするの?」
「悪くないな、この大杉は俺たちを見守ってくれる、そんな気がしてる、真帆はどう思う?」
「そうね、慶次が話していた寂れた村そのものだけど、ここに大きな杉の木があるということは大きな意味があると思うわ、色々な意味でね。」
「はは、寄らば大樹の陰ってことだな。」

おや、この二人…、わしに寄っかかりよって…。
そう言えば、こうしてわしに甘える若者…、ずいぶん久しぶりじゃな。





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ぷろろーぐ-2 [権じいの村-1]

今年の秋もなんかゆっくりじゃな。
静かで平和じゃが…。
おや、あの若者はしばらく前に2人で来よった奴じゃな。
今日は5人連れか。

「うわ~慶次さん、近くで見ると一段と迫力がありますね、この大杉。
で、どんな感じにするんです?」
「うん、真一、まずはこの大杉の周りをきれいにしようか。」
「じゃあ落ち葉とかは全部どけますか?」
「そうだな…。」
「ちょっと待って、それはこの杉にとって、ここに落ち葉があった方が良いのかどうか調べてからにしない。
私たちの都合に合わせて、きれいにさせていただくつもりだけど、そのことがこの杉の負担になったら嫌だわ。」
「そうか、確かに真帆の言う通りだ。
久美ちゃん、メモ頼む。」
「はい。」
「杉の大木を守って行くことについての知識、樹木医もしくは大木に詳しい人も探した方がいいのかな。」
「はい、とにかくこの大杉を大切にしていこう、ということなのですね。」
「うん。」
「慶次さん、でも、どうして僕らの一番初めの作業がこの杉なんです?」
「はは、何もない村、と、大杉が見守ってくれている村、真一はどっちに親しみを覚える。」
「そりゃ…。」
「俺の構想の中では、別に大杉でなくても良かったんだけどね、なぁ真帆。」
「ええ、幾つかの村を回った中で、他にも素敵な木や人目を引く岩、滝にも出会ったわ。
そんな中で、私たちの挑戦を暖かく見守ってくれそうだったのが、この杉だったってことかな。」

おいおい、わしはそんなこと知らんぞ。
ふっ、まぁ悪い奴らではなさそうじゃから、ちょっと見ててやるか。





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ぷろろーぐ-3 [権じいの村-1]

ふむ、まずはわしの周りをすっきりさせたのか。
確かに人間にとってはこの方が居心地良かろうな。

「そろそろお昼ね。」
「ああ、みんな食事にしようか。」
「おなかぺこぺこ。」
「はは、育ち盛りだからな、めぐは。」
「あら、もうしっかり育ってますわよ、慶次・お・に・い・さ・ま~。」
「こら、恵!。」
「ふふ、真帆姉、慶次さんを盗ったりしないわよ。」
「恵、悪ふざけ禁止!」
「みなさんランチの用意できましたよ。」
「おっ、おいしそ~、う~ん、久美ちゃん特製弁当が食べれるなんて生きてて良かった~。」
「もう、真一くんたら大袈裟なんだから。」
「いやいや大袈裟じゃないな、おいしいぞ、久美ちゃん。」
「あっ、慶次ったらもう食べてる、私たちも…。」
「いっただっきま~す。」

「ねえ真帆姉、この大杉って私達にとって大切な存在なんでしょ。」
「ええ、もちろんよ。」
「だったらさ、大杉なんて呼び方フレンドリーじゃない気がするんだけど。」
「う~ん、確かにそうね。」
「お杉ちゃんってどう?」
「あのね~、めぐ、そんな呼び方したら、この大杉さんが気を悪くして私達を、え~っと呪ったりしそうな気がするんだけど。」
「へへ、杉ちゃんは、細かいこと気にしてないわよ、たぶん。」

うわっはっは。
わしのことを杉ちゃんと。
はは、愉快な嬢ちゃんだ。
わしが呪う? とんでもないことじゃな。





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ぷろろーぐ-4 [権じいの村-1]

「杉ちゃんってのはどうかと思うけど、呼び名はあった方が良いな。
村の人たちも大杉って呼んでて特別な名前は…、権現村の大杉ってくらいみたいなんだ。」
「う~ん、じゃ権じいちゃんでどう?」
「ご本人様にお聞きしたら、恵?」
「うん、おっきなおっきな杉の木さん、権じいちゃんって呼んでもいいかしら?」

何じゃと…、そんなこと聞かれても…。

「どうやら不満はなさそうね。」
「って、返事できないし。」
「ははは。」

「じゃあ久美ちゃんメモ頼む。」
「はい。」
「日付は今日で、大杉は町から来たおばかな少女によって権じい…、そうだ、権じいにしておこう、権じいちゃんと呼んでも、権じっさまと呼んでもいいけどね。」
「慶次さん、そのおばかってのも残すつもり?」
「あら、めぐちゃん、もう書いてしまったわ。」
「あ~ん、久美さんまで!」
「ふふ、後で編集しておくわよ。」
「恵、それまでは、おばかなこと出来ないわね。」
「ひどいわ、花も恥らう17の乙女をよってたかっていぢめるのね。」
「ははは。」

何とも楽しげな連中じゃな。
こちらまで楽しい気分にさせてくれるわい。
それにしてもいったい何を始めるつもりなんじゃろうな、こ奴らは。




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ぷろろーぐ-5 [権じいの村-1]

「午後からはどうするんです、慶次さん。」
「うん、俺は村の人と会う約束があるから、そうだな、ここの掃除とかはこの次にして、真一はみんなと村を散策して…、絵でも描いててくれないかな。」
「えっ? 絵を描く用意なんてしてませんよ。」
「まぁ実際の絵じゃなくて、ここはこんな風だったらもっと良いのに、といった夢みたいなことを頭に描いて欲しいんだ。
それを出し合って、久美ちゃんにまとめてもらうってとこかな。」
「なるほど、でも、めぐちゃん辺りからとんでもない案が出たりして…。」
「それも大切なことだから、ちゃんと記録しておいてね、久美ちゃん。」
「はい、おばかな意見も大切にしますわ、ふふ。」
「う~ん、なんかばかにされているような。」
「違うよめぐちゃん、色々な視点での色々な考えが大切なんだ。
実現不可能な案でもどんどん出してみて。
それが思いがけない何かにつながっていくかもしれないからね。」
「うん、じゃあとりあえずカフェへ行って食後のティーでもどうかしら。」
「え~、ここから一番近いカフェらしきお店まで…、車で一時間ぐらいですか、慶次さん。」
「はは、真一の言う通りだけど歩いて10分ぐらいのところでティーはできるぞ。」
ふふ、あそこね、慶次。」
「ああ、じゃあ行こうか。」

ふむ後片付けも手際がいいのう。
で、どこへ行くんじゃろう。
南への道を降りてったからもうすぐ見える筈じゃな。
おっ、おったおった、そうかあそこに車を置いてたんじゃな。
荷物を置いて歩き始めよった。
家へ入っていく、あの家はたしか婆さんが独りで暮らしていたと思うが。




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ぷろろーぐ-6 [権じいの村-1]

「こんにちわ~、小春ばあちゃん遊びに来たよ~。」
「はいはい、おやおや、よ~来てくださった。
え~っと慶次さんじゃったな。」
「はは、名前まで覚えていて下さったなんて嬉しいです。」
「今日はお友達もご一緒かい、にぎやかでいいねえ~。」
「はい、彼が真一、こっちが久美で二人は大学生です。
で、この子は真帆の妹、高校生の恵で…。」
「おばあちゃんよろしくね~。
この前はうちの姉たちがご迷惑をおかけしたそうで、ごめんなさい。」
「なんのなんの、迷惑だなんてとんでもない、年寄りの相手をしてもらって、こちらがご迷惑をおかけしてしまったようなもんじゃ。」
「おばあちゃん、今日はお暇?」
「まあ、暇と言えば暇じゃな。」
「じゃあ私たちご迷惑をおかけしても、いいかな~!」
「いいとも~、ははは。」
「ふふ。」
「こら、恵ったら。」
「いいんじゃ、いいんじゃ、それよりおあんがなさい、ゆっくりしてってな。」
「は~い。」
「まずは、お茶としようかね。」
「おばあちゃん、私、手伝うわ。」
「おお、そうかいそうかい、ありがとうな。」

「なんか思いっきり、めぐちゃんのペースですね。」
「姉として恥ずかしいわ、連れてくるんじゃなかったのかな~。」
「いや、彼女を連れて来たのは正解だったと思うな。
俺らが3回目ということもあったかもしれないけど、小春ばあちゃん、とても嬉しそう、孫でも見るような目でめぐちゃんを見ていらしたよ。」
「普段独り暮らしだから、余計嬉しいんでしょうね。
真帆さんが恥ずかしがる必要ありませんよ。」
「久美ちゃん、あの子がお年寄りとすぐ仲良くなるということは聞いてたんだけどね…、あんな調子とはちょっとねぇ~。」
「あれでいいんだよ、すばらしい特技だな。
この村のお年寄りたち、みんなと仲良くなってくれたら、これからの作業がずいぶん楽になるだろうな。」

「は~い、皆さんお待たせ~。
でもさ、慶次さん、カフェでティーが、どうして民家で緑茶になるのかな~。」
「民家と言っても立派だし、ティーには違いないから、まぁ似たようなもんだろ。」
「絶対違う!」




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ぷろろーぐ-7 [権じいの村-1]

「さて、そろそろ時間だな.
小春ばあちゃん、私はちょっと源太郎さんのとこに行ってきます。
みんなは…。」
「慶次さん、私たちはおばあちゃんにこの村を案内してもらうの。
ね~、ば~ちゃん。」
「はは、さっきお茶の用意をしてる時に、めぐちゃんと約束してな。
何でも、わしの絵も大切なんだそうじゃ。」
「それはいい、小春ばあちゃん、よろしくお願いします。」
「なあ、どうじゃ、今日はゆっくりしてけるんじゃろ。」
「はい?」
「大したごちそうもできないけど夕飯、食べていかんかね。
なんなら泊まっていってくれてもうれしいのじゃが。」
「うわっ、いいんですか、ラッキ~。
車は置いていきますから、足りないものがあったら真一が買出しに行ってくれます。
頼むな真一。」
「はい。」
「う~ん、泊めていただくかどうかは…、真帆と相談して…。」
「お泊りね、ホテルよりう~んと楽しそう、おばあちゃん、ちゃんとお手伝いするからね。」
「はいはい。」
「はぁ~、大丈夫かしら…、ねえ、慶次、着替えてから行くんでしょ、車まで一緒に行くわ。」
「ああ、じゃあ、いってきます。」
「いってらっしゃ~い。」

おや、下の家から2人だけ出てきた。
何の話しをしてるんじゃろうな。

「ねえ慶次、小春ばあちゃんに甘えていいのかな。」
「うん、甘えてみたいな。
ただし小春ばあちゃんの負担が少なくて、逆に喜んでいただけるということが前提だけど。」
「真一くんも久美ちゃんもいい子だから問題ないと思うけど恵が…。」
「大丈夫だよ、めぐちゃんは優しい子だから。
泊めていただくことになったら、予約しておいたホテルには連絡入れておいて、料金は帰りに払いに寄りますからと伝えておいてな。」
「普通にキャンセルしないの?」
「先々のことを考えると、ここからずいぶん離れたホテルでも大切にしなくちゃいけないんだ。
いざ、という時に協力をお願いすることになるかもしれないからね。」
「そっか、了解、でもなんか計画が早まったって感じね。」
「ああ、めぐちゃんのおかげだな、源太郎さんとの交渉にもプラスになると思うよ。」




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ぷろろーぐ-8 [権じいの村-1]

「ただいま~。」
「あら、慶次早かったのね、源太郎さんどうだった?」
「うん、どうも話がかみ合わなくてね、お年寄りとの話は難しいよ。」
「じっくりやるしかないのね。」
「ああ。
みんなは?」
「真一くんは買出し、久美ちゃんと恵は小春ばあちゃんと一緒に村の散策を兼ねて、畑での食材確保ってとこかな。
さっきまでは掃除とお布団とかの用意をしてたんだけどね。」
「いきなり泊めていただくことになって…、どうだった?」
「それがね、部屋も多いし、お布団もちゃんとしてて何の問題もなさそう。
しかもね、なかなか出番のなかったお客様用のお布団が役に立つことになったって、喜んでみえたわ、小春ばあちゃん。」
「とりあえず、こっちは問題なしってことか。」

「はぁ~、ただいま~。」
「あっ、真一くんね。」

「お帰り真一くん。」
「は、はい、しかし、まぁ改めてここの不便さを思い知らされましたよ。」
「はは、遠かったろ。」
「はい、野菜は畑からってことで、肉と酒ぐらいをちょちょいと買ってくるつもりだったんですけどね。」
「片道の距離と所要時間は後で久美ちゃんに報告しといてな。」
「はい、ついでに自分のワンルームからコンビニまで歩いて5分ということも伝えておきますよ。」
「はは。」
「じゃあ私はお肉の下ごしらえでもしておこうかな。
慶次は?」
「うん、真一と代替案を模索してみるよ。」
「えっ? 慶次さん、だめだったんですか?」
「思ったより時間がかかるかもしれないんだ。」
「最初の調査は早目に実施するべきなんですよね。」
「ああ、俺たちがこの村に大きくかかわる前にやっておきたいし、その結果で後の方針が左右されるからな。」
「最悪はホテルですか?」
「まぁ女の子たちは元からそのつもりだったけど、本部は必要だろ、ここに。」
「はい、どこかにテントでも張ります?」
「真一くん、テントは反対よ、私たちの本気さが伝わらない気がするわ。」
「うん、場所の問題もあるからな。」
「そうですか…、慶次さん、僕、ここの地理とかまだよく分かってないから、ちょっと回って来ていいですか?」
「そうだな、案内しようか。」
「いえ、独りで大丈夫です。」
「夕飯までには帰ってくるのよ。」
「はは、僕、子どもじゃないですよ、真帆さん。」
「ふふ、あんまし遅くなると、お肉なくなっちゃうわよ、食べ盛りがいますからね。」
「えっ? そういう問題なんですか…。」
「門限は5時だな。」
「慶次さんまで…。」



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ぷろろーぐ-9 [権じいの村-1]

今日は下の家、ずいぶん賑やかじゃな。
あの嬢ちゃんの声がここまで聞こえてくるぞい。

「あ~ん真一さんたら、ずる~い、そのお肉は私が丁寧に焼いてためぐみスペシャルだったのに。」
「うん、おいしい、おいしい、お肉ならまだまだあるから心配いらないよ。」
「そうじゃなくて~、また一から焼き直さなくちゃいけないじゃない。
微妙な焼き加減ってのがあるのよ。」
「はは。」
「笑ってごまかすな~。」

「こんばんわ~。」
「あらっ、小春ばあちゃんお客さんみたいですよ。」
「おやおや、こんな時間に誰じゃろうな。
よっこらせっと。」

「まぁ、香織ちゃん、久しぶりじゃねえ。」
「こんばんわ、小春ばあちゃん。」
「こんな時間にどうしたのじゃ?」
「それがね、おじいちゃんがね、ここに、なにやら怪しげな男が来てるからちょっと見てこいって。」
「怪しげ? そう言えば慶次さん、昼間に源太郎のとこに行ってたようじゃな。」
「ねえ、やばそうな人?」
「はは、まさか、まあ上がんなさいな。」
「大丈夫です?」
「自分の目で見りゃわかる。」
「はい、じゃぁおじゃまします。」

「慶次さん、お客が一人増えたけどええじゃろか。」
「もちろんです、あっ、ここで初めて出会った若者…。」
「ふふ、ここって爺さん婆さんばっかでしょ。」
「ですね、私は白川慶次、小栗さんは?」
「はい、香織です。」
「あれ? 慶次さん、初対面なんでしょ?」
「ああ。」
「どうして、苗字を知ってたのですか?」
「はは、真一、この辺りは小栗さんしかいないんだ。」
「そうなんですか、香織さん。」
「ええ、今、ここに残っているのは、土地や家をもってる昔からの人ばかりで…。」
「だから、よそ者の俺たちを快く受け入れて下さる、小春ばあちゃんみたいな人ばかりじゃないってことだな。」
「もしかして、うちのじいちゃん、何か失礼なこと…。」
「あっ、源太郎さんのお孫さんでしたか。」
「はい。」
「失礼とかじゃなくて、話がなんかかみあわなくてね。」
「あっ、じいちゃんたら、また補聴器使わずに適当な話しをしてたのね。」
「えっ?」
「そんなにぼけてる訳じゃないのですけど、耳が遠くなって…、家族だけだと補聴器なしでもそんなに困らないのですが。」
「ふ~、そうだったのか…、疲れがどっと出たよ。」
「はは、慶次がんばったんだ。」
「この次は拡声器を持って交渉に行こうかな。」
「ははは。」
「あっ、それよりみんなも紹介しなきゃ、香織さん飲み物は? おなかはすいてない? ゆっくりしていけるんでしょ?」
「慶次ったら一度に聞いたら、香織さんも困るでしょ。」
「それと、慶次さんったら自分の家みたいな話し方じゃん。」
「ふふ、自分の家と思ってくつろいでってな。」
「ほら、小春ばあちゃんのお許しも出たから、さあ、飲も飲も。」




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ぷろろーぐ-10 [権じいの村-1]

「そうか、香織さんはここの小学校の卒業生だったんだ。」
「はい、でも私たちが卒業して、しばらくしたら廃校になってしまって…。」
「校舎だけは源太郎さん中心に守られてきたんだね。」
「はい、何かあったら小学校に避難とか…、でも、また子どもたちがここで学んでくれたら、というのがじいちゃんたちの本心です。」
「うん。」
「それはそうと白川さんはおじいちゃんに何を?」
「はは、慶次って呼んで下さい。
う~ん、俺たちがしようとしてることを話し始めるとメチャクチャ長くなるから…、まぁ簡単に言うと、一つは過疎の村の再生です。」
「えっ?」
「簡単にできるとは思ってないけどね。」
「誰も住みたがらないような村ですよ、ここは。」
「でも、君は今、ここに居る。
君にとって都会暮らしはどうなのかな。」
「は、はい…、便利だし刺激も多いですが…、疲れることも…。」
「都会の生活に疲れているのは君だけじゃないし…、源太郎さんは君が帰ってくると喜ばないかい?」
「それはもちろんです、ちっちゃい頃からかわいがってもらってましたから。」
「俺たちは知り合って間もないのに、小春ばあちゃんから良くしていただいてるよ。」
「そうなんですか。」

「過疎地の再生、それは簡単なことじゃないけど、裏技を思いついてね。」
「はぁ、裏技ですか?」
「うん、第一段階は、大学を巻き込んでの活性化ってとこだな。」
「大学生がこんなとこに来るのですか?」
「真一も久美ちゃんも大学生だよ。」
「はい。」
「社会学という分野があってね、おそろしく幅広いけど…、例えば50年前の村落共同体と現在との比較なんてことを研究してる教授もいる訳さ。
そんな先生に過疎地の村がそのまま限界集落となって消滅していってしまうのか、再生できるのかってテーマを振ってみるわけ。
それに対して前向きに、過去、現在、未来と続いて一つの研究が完成すると考えて下さる先生もみえてね。」
「でも、それだけじゃ…。」
「一つの研究というのには十分な調査が必要なでね。
住民の意識調査とか、その後の変化も追跡して初めて研究として成り立つ、もっともここは学生が大きくかかわるというかなり特殊な実験の場になる予定だけどね。
すでに色々な大学の色々な学部、そこの色々な研究室に声をかけ始めていてね。
県や市といった自治体とも連携できそうだから…、大学関係者、自治体関係者がこの村に来ることになる予定さ。」
「はぁ、なんかすごい話しなのですね。」
「まずは基礎調査のために色々な学生や研究室のメンバーををここに呼ぶつもりなんだけど、その活動拠点として小学校の校舎をお借りしたかったんだ。
小学校が大学になるってとこかな。」
「はぁ。」
「小学校なら野郎どもの宿泊施設としても使えそうだし…。
ねえ、香織さんからも源太郎さんを説得してくれないかな…。
俺たち色々アイディアがあって…。」

「慶次、一度にお話しても…、香織さんがお困りになるわよ。」
「私はもっともっとお聞きしたいです、真帆さん。」
「でしょ、でしょ、でも、ふ~、ちょっと酔ったかな、誰か代わって…。」

「あ~、お姉ちゃん、お酒のビンからっぽよ。」
「まぁ~、慶次ったら困ったものね。
ごめんなさい香織さん、質問があったら私がお聞きするわ。」
「真帆さん、ほんとにこんな村が再生できるのですか…。」
「そうね、絶対大丈夫だなんて言えないけど…。」

「なあ、慶次さんが言ってたことは、この村に若い子達が大勢やって来るってことかい?」
「はい、おばあちゃん、色々問題も起こしてしまうかもしれませんけど…。」
「な~に、問題を起したらいい、活気があって、色々あった方がボケずに済むということじゃからな、はは。」

「そうれす、小春ばっちゃんさいこ~!」




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