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大銀河帝国-21 [シトワイヤン-34]

中南米の旅を終えMAIHIME TOWNへ、ファルコン号はここでメンテナンスに入る。
ヘリウムガスの圧力や温度を調整し浮力調整したり、プロペラを回して高度や移動速度の調整を行っているファルコン号は、燃料電池を使用しているのでとても静か。
ちなみに、昔の飛行船は空中に静止する事が出来なかったが、船外の各種センサーと姿勢制御系が連動しているので、風が強くなければ静止状態も可能。
複数のプロペラが衛星からの位置情報に基づき細かく動いて位置を自動調整、無風に近く温度変化が少なければ燃料の消費は僅かで済み、騒音を撒き散らすヘリコプターとの差は大きい。
移動時でも飛行機と比べ消費する燃料は少なく、排出するのは主に水で地球に優しい飛行船、燃料の水素を得る段階に問題が残ってはいるが化石燃料を燃やして飛ぶ機体よりは随分ましだ。
かつて飛行船の大事故が有ったが、この機体はヘリウムの代わりに水素を利用しても問題がないだけの安全性が確保されている。
あらゆる事故を想定し、多くの安全装置が施されていて、今回のメンテナンスではそれらが問題なく作動するかのテストも行われる。
旅行中様々なデータを取って来たが、部品の消耗具合なども調べ、アフリカ旅行に備える。
ただ、間もなく姉妹機、ファルコンⅡ世号が完成するので状況によっては、そちらを使うかも知れない。
ファルコン号と基本仕様を同じくする小型飛行船は、すでに数十機が製造され運行中、ファルコン号タイプと簡単にドッキング出来る形状に統一されている。
今は主に観光と宣伝に使われているが、地球防衛軍では山火事発生時の出動も検討している。
飛行船で水のタンクを運ぶのではなく、水のホースをホールドして噴射することを目指していて、複数の機体を並べ水のホースを支える事が出来れば、連続放水が出来、効率を上げられると。
ただ、ホースのみとは言え水を流すとそれなりの重量となり課題は多い。
それでも熱心に取り組んでいるのは、MAIHIME TOWNの属する州でも大規模な森林火災が起きているからだ。
予防的に乾燥が進んだら大規模に水を撒くという案が浮上するぐらい深刻な状況。
少々乱暴だが、真水の確保が難しければ延焼を食い止める為、海水を防火帯に流す案も出ている。
塩分が、その後の環境に与える影響は大きいだろうが背に腹は代えられないとのことだ。

飛行船は強風に弱いと言う弱点は有るものの、地上基地の整備を進め、海の豪華客船に対し空の豪華飛行船という位置づけを目指している。
今回のファルコン号による中南米の飛行は、そのデモンストレーションとしての役目を充分に果たし、飛行船は隼と共に大銀河帝国の象徴となった。

「姫さま、ファルコン号での旅は如何でしたか?」
「出発前に、飛行船の歴史を調べたりもしたのですが、最新技術のおかげで思ってた以上に快適でした。
速度も充分だと思います、もっと速度が出る機種も有るそうですが、観光向けの客船ですので。
同乗していた技術者の方とは飛行船の技術面について話し合え楽しかったです。
大銀河帝国が国や企業の壁を越えて集めた技術者集団の力量も教えて頂きまして、帝国の存在が科学技術の発展に貢献出来ている、それをファルコン号で実感出来たのは素直に嬉しいですね。」
「今後は各自治領にも地上基地を建設し、小型飛行船を就航させて行き、観光やファルコン号への補給に使える様に、環境に優しい空の交通手段として発展させて行きたいです。」
「そうそう、プロペラのない飛行船タイプのドローン、屋外では使いにくいかも知れませんが使ってみたいですね。」
「あっ、そんなのも有りました、早速、手配します。」
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大銀河帝国-22 [シトワイヤン-34]

内戦状態から大銀河帝国の自治領になった中東の国は、ゆっくりとだが着実に復興している。
その復興事業の特徴は実験的な施設が多いと言う事。
規模の大きなものも有り、その中の一つに海水を流す水路が有る。
満潮時には海水で満たされるが、干潮時は干上がり水質を悪化させない設計。
この水路には、かまぼこ型の覆いが掛けられて…、巨大な農業用のビニールハウスが水路を覆っている状態と言えば分かり易いだろうか。
太陽によって暖められた海水から蒸発した水分は透明な覆い部分で結露し集められ蒸留水として利用されている。
覆い部分に海水を上から撒く構造、その気化熱で冷やしているので大量の真水とまでは行かないが効率は悪くない。
覆い部分を冷やした海水は集められ、塩田へ流している。
メイン水路の両脇では、マングローブを形成する植物を中心に様々な植物が植えられ緑化実験。
環境に合わずすぐ枯れてしまった種は少なくないが、じわじわと繁殖している種も有り、研究者達は、その種を中心とした緑地帯の形成を目論んでいる。
水路の奥には塩水池を複数作り、死海の様な観光スポットに出来ないかとの実験も。
海水の流し込み方で塩分濃度に差をつけつつ、温泉さながらに付加価値としての効能を加えられないかと研究が進む。
一帯を海水の淡水化事業と塩の織り成すテーマパークとして拡充して行く計画が着実に進んでいて、観光客向けの施設も増えつつある。
水路からの高温高湿の空気を取り込むサウナ、深層水をくみ上げての屋内海水プール、海水風呂、海水淡水化装置によって作り出した淡水を農業に使う前に溜めた屋内プールなど、それぞれに特徴が有り人気。
地元の人はサウナに入る人の気が知れないと話すそうだが、サウナとプールを組み合わせて楽しむ観光客は多い。
舞姫さまの社が併設されていることも有り、施設の拡充と共に観光客が右肩上がりで増えている。
投資額は少なくないが、経済の活性化が進み内需拡大にも繋がっている。

「和馬さん、死海の様な塩分濃度の高い池って、映像で見ると小さいですよね。
もう少し広い方が楽しめそうだと思うのですが。」
「確かに今はまだ小さいが塩湖を目指して大きいのも造ってるよ。」
「あまり情報が入って来ていませんが。」
「まだ、プロジェクトが始まったばかりだからね。」
「大きなプロジェクトなるのですか?」
「ああ、二つのプロジェクトを並行して進めて行くんだ。
一つは、掘りに掘って大きな窪地を造り、完成したら海水を流し込んで周辺の環境にどんな影響を与えるのか研究して行くプロジェクト、熱しにくく冷めにくい水が砂漠の寒暖差を緩和するにはどの程度の規模が必要なのか、それとも全く効果がないのか、小さな池だけでは充分なデータが取れないだろ。
ある程度の規模になれば暑い時の地上よりは確実に低く安定した水温を保てる、半分を水中に沈めた倉庫と上に断熱目的で土を被せた倉庫を比較したりとかも考えているんだ。
そう、もう一つのプロジェクトは地上に建設した様々な施設を土で埋めて丘にする、その為の土は塩湖を作る為に発生した土砂を使うという訳さ。
丘の中腹には半分埋まった家の一部が見えていたりしてね。
気候の良い時は屋外の空気をしっかり味わい、酷暑の時は窓辺の部屋を断熱目的で閉鎖したりとか色々試して行くんだ。」
「地下を掘り進むより経済的なのですか?」
「勿論さ、更に今後の気候変動が微妙で、砂漠地帯でも大雨に見舞われる可能性が否定出来なくなっているそうだ、そういった事にも対処して行ける様に海水を流し込まない、ただの大きな窪地を造る話も出て来ている、海水を使った実験を進めている地域とは大きく離れた所で、浸透した地下水に塩分が混じらないことを意識してね。
まあ、利用価値の無かった土地だから、様々な可能性を探りながらいじくり回せるんだ。」
「和馬さんはやけに詳しいですね。」
「はは、砂漠を人の住める環境に出来ない様では、月の開発など宇宙への進出は無理だろ、大銀河帝国としては、まず地球の環境と向き合っていかないとね。」
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大銀河帝国-23 [シトワイヤン-34]

姫さまとの中南米の旅を終えてから大銀河帝国の自治領となった国々は、それぞれに問題を抱えていたが、小国ばかりだった事も有り、大銀河帝国の国力で解決の方向に。
各自治領では、新たに誕生させた国営企業と帝国の認証を受けた国内外の民間企業が相談し計画的に経済活動を進めている。
簡単に言えば公的事業では談合、その他でも日本では独占禁止法に引っかかる事を普通に行うことで、全体の効率が良くなっている。
因みに認証を受けなくても商売は可能だが、姫さまの加護の下大銀河帝国の認証を受けているかどうかは大きな事で、現地の法人は挙って認証許可申請をし、そのほとんどが認められた。
自治領では、入札を一切行わず話し合いで決定、安ければ良いでは無く適切な価格を官民一体となって検討している。
結果として儲け過ぎたと感じたら、その分は社会に還元が原則。
大銀河帝国に関連して来た企業は、すでにそれが当たり前の事で、バランスの取れた社会を目指す、企業人の価値観は大きく変わったのだ。
また、人件費を削って事業経費を抑える事は、労働者の購買力を落とし内需を弱らせる事に繋がると、地元民間企業の経営者は指導を受け素直に従っている。
企業に対して指導を行っているのは経営のプロを中心としたチーム、現地で細々と経営して来た会社に対し経営コンサルタント業務を行う。
弱小企業は似た様な企業と経営の統合を進め効率化し利益率を上げた。
社長から部長に格下げとなっても収入が増え、資金繰りに頭を悩ませる事もなくなったのだから、社長をしていた少しばかりのプライドが傷ついても気にならない様だ。
これは、コンサルタントチームの力が大きい。
それまでとは視野や人脈が桁違いなバックアップのおかげで、売れる所へ高値での輸出が可能となり一気に業績を伸ばす企業も。
だが、それは姫さまのお蔭だと私利私欲に走らない人ばかりなのが、姫さまを女王様と崇める人達の自治領だ。
帝国関連企業も様々な形で投資し住民の生活を豊かにしている。
暑い国では日本で人気の氷菓が現地生産され、メガヒット商品になっているが、その利益はそのままそのエリアに投資される。
雇用状況を見ながら、あえて手間の掛かる伝統工芸を現代風にアレンジし輸出している企業もある。
この伝統工芸品は、姫さまの領地で生産されている新たな姫さま関連グッズとして注目を集めているが、手作りなので量産出来ない事も有り高値での販売が可能に。
雇用の場が確保されただけでなく、職人の収入は大幅に増えた。
舞姫さまに守られ、大銀河帝国を支えて来た経営のプロの手に掛かれば、小国を豊かな状態に改革して行く事は造作のないことだ。
数十万人規模のエリアに集中投資、市民教育、職業訓練、それらを計画的に進めているのだから。
自由経済と計画経済の良いとこ取りを目指し、無理な計画は立てず、国営企業で有っても能力や実績によって収入に差が出るシステム。
姫さまの祝福により心穏やかになっている所へ、衣食住が充実したのだから住民たちは大満足。
この状態が続けば、ユートピア計画成功となりそうだ。
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大銀河帝国-24 [シトワイヤン-34]

大銀河帝国領になった地域には大学のない所も有り教育水準は低いが、それ故思い切った実験的教育が出来る。
日本の様に大学入試を目指す知力に偏った教育を行う必要は無い。
学校改革の一つとして、母国語を英語としてきたエリアは勿論、アラビア語を使っている地域でも英語学習など語学に力を入れたのは観光業を意識しての事だが強制はしない、英語を話せなくても出来る仕事は色々有るからだ。
ただ、姫さまが制作に関わった語学教材は、姫さまの歌が有り、トイプードル愚連隊を始め色々な動物が出て来て楽しく、子ども達が授業後にも見たがる程の人気。
旅行中に撮影されたものでは飛行船の仕組みを説明するものや、飛行船からの景色を紹介しながら、緑の大切さを説明するものも。
多少難しい話でも、姫さまの映像を見ているだけで楽しく、子ども達の好奇心を掻き立てる。
ホテルの利用方法やマナー、ホテルで働く人達がどんな仕事をしているのかといった内容も有る。
毎日見ている内に語彙が増えて行き、知識が身に就く。
誰しもが姫さまの話されている内容をきちんと把握したいと思い学習が進む。
そんなDVDは舞のDVDとは違い、姫さまが気軽に制作させているので、タイトル数は多くなり世界中で売れている。
一本当たりの売り上げは舞のDVDに遠く及ばなくとも、その総数はかなりの売り上げとなり、自治領の学校にプレゼントするぐらいは全く負担にならない。

新しくなった学校のカリキュラムは読み書きや計算の基礎に始まり、安全に日常生活を送る為の知識、自然科学、社会科学から最低限必要だと思われる内容が必須。
後は、個人の力量を見ながらとなる。
姫さまは学習を嫌いにならない工夫を提案され、ゲーム形式やクイズ形式を取り入れているが、十歳ぐらいからは、それぞれの学習が何を目的としているのかの説明を重視する事で学習意識を高めている。
教育は高校入試や大学入試の為のものではない、人としての成長し、それを仕事に活かし、また生活を豊かにする為のものだ。
基本的な計算すら覚束ない子に因数分解を教えようとする事には全く意味が無い。
一応十五歳ぐらいまでを義務教育と位置付けたが、職業教育を受けている子も多い。
漁師になると考えている子は、その為の知識を学び、実際に漁を体験する事も。
調理実習では、上級生が指導を受けながら給食を作る事も有るが、学校によってはそれが日常的になり、包丁さばきの上手な子が仕切る事も有る。
料理人を目指し始めた子に、三平方の定理を理解させる必要は無いが、盛り付けのセンスを磨くことがプラスになると考える大人が指導にあたる。
医師を目指す子の学習内容は濃く、年齢に関係なく大学入試を目指した取り組みを。
そんな子が高い能力を証明すれば海外留学の機会を与えられ、そのまま留学先の医大へ進学という道も有る。
親の経済状態によっては、費用全額を帝国が負担するが進路の変更は自由。

高校に相当する学校は一年から五年程度の在学期間を、それぞれの希望に応じた単位制で学習する。
就職の為に高卒資格を得ることを目的とした学校では無い。
それぞれの興味関心や、将来を見据えて教科を選択出来る。
途中から専門分野に踏み込んでの研究活動も想定されていて、簡単に言えば入試を経験することなく日本の大学レベルの学習が可能。
そして、大学を目指す者は研究論文に取り組む予定。
それは、大銀河帝国大学が研究機関としてスタートしているが、論文を提出し入学後の研究テーマを明確に示す事で入学が許可されるからだ。
大学入学後、そのまま研究者の道を進むにはその研究実績が必要となるが、高校相当の学校への入学後から大学の期間を含め、何時就職しても構わない。
また、就職後も籍を残し研究を続ける為の情報網に参加出来るシステムをイメージしている。
大学は研究機関なのだ。
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大銀河帝国-25 [シトワイヤン-34]

大銀河帝国大学は世界中で展開することを想定している。
関連企業の研究室が学生たちの研究の場となったり、ネット回線を利用しての意見交換や情報提供を行う。
ベースは、市民政党若葉のスタッフが日本で構築して来たもの、すでに海外の研究所、研究者も参加していて、その規模を更に拡大し帝国大学の学生を受け入れて行く。
その過程で姫さまから提案されたのは、共同研究を充実させることで研究効率を高められないかという事。

「姫さま、姫さまの指示で進めて来ました、研究室の交流は幾つか形になって来ました。
主に日米欧の研究室ですが、同じ内容の研究で競い合っていた所が、共同研究や互いの成果を検証し合う方向で進み始め、今までなら自分達の実績として発表したかったであろうことも、帝国の一員として舞姫さまの下に力を合わせて行くと、研究成果は姫さまに捧げる形になりそうです。」
「良い事ですが、仲良しになると競い合う気持ちが薄れたりしないでしょうか?」
「そこは、姫さまに褒めて頂きたい一心の様です。
皆さん、ノーベル賞より姫さまからの勲章の方が価値が高いと思っているそうで、一番の名誉だとか。
今まで賞を贈った研究は誰もが納得する成果を上げたものですので。
実際、交流を進める事によって自身の研究課程がすでに相手チームで解決済だったとか、ヒントを貰った事で一気に研究が進んだり、分担して取り組むことで研究の効率が上がっているとか。
姫さまの祝福を受けた人達は、利己的な感情が弱まっていますが、大銀河帝国の為、姫さまの為に成果を上げたいという気持ちは強くなっているのです。」
「帝国大学の学生受け入れも順調ですか?」
「はい、まだ人数は少ないですがこちらで研究費の負担もしていますので受け入れ先にも喜んで貰えています。
既存の大学とは違ったプロセスを経て帝国大学の学生になった人は、一般の学生と視点が異なり、新たな発見に繋がっていると評価されています。
企業の研究室からは、そのまま社員になって欲しいという話も来ていますが、今の帝国大学生は、研究職に憧れ、力は有っても、それが諸事情で叶わなかった人が中心ですので不思議では有りません。
今後、枠を広げて行っても質が落ちない様に気を付けたいです。」
「帝国大学に不合格になった人はどういう人達です?」
「主に大銀河帝国大学の趣旨を充分理解しないで入学希望をして来た人達で、卒業したら就職に有利だと思いまして、と平気で話す様な受験生は一時面接で不合格です。
逆に趣旨を理解している人達は論文もしっかりしていまして、目的意識が高くその差は歴然だったそうです。」
「そうでしたか、私は今、研究という行為について考察を深めてみようと思っているのです。」
「研究についての研究ですか?」
「はい、色々なアプローチが出来ると考えていまして、研究のプロセスを整理出来れば、効率が上がる様な気がしていまして、まずは大きな成果を上げられた研究者の方々のお話をもっと聞いてみたいです。」
「勲章を贈られた方々との懇親会が切っ掛けなのですね。
今後も勲章授与を予定していますが、姫さまの判断で選んで下さって構わないと思います。
候補者たちとの会を設ける様に指示してよろしいでしょうか?」
「はい、旅行中でも先方の都合に合わせて…、出来れば理工系の研究施設も極秘でない所で構いませんの見て行きたいです。」
「分かりました、警備上問題のない範囲で、最先端技術を研究している施設と交渉し旅行スケジュールに組み込む方向で調整させます。」
「決まったら早めに教えて下さいね、その分野の学習に取り組みますので。」
「では、資料も揃えて貰っておきます。
旅の道中を更に充実させるおつもりなのですね。」
「一つぐらいは社会の役に立てる研究をしたいのです。」

姫さまの知的好奇心は衰えることを知らない。
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大銀河帝国-26 [シトワイヤン-34]

舞姫さまや大銀河帝国の存在は、帝国に関わる国々に大きな影響を与え、国家間の貿易でも自国の利益のみを基準にした交渉から脱却し、多国間での計画的な生産と取引、輸出入のバランスを目指し始めている。
国家レベルで共に経済成長出来る社会を意識しての事だ。
株式市場、為替市場では今まで当たり前に考えられていた理屈が変わりつつ有り、市場の動向を不安視する声も聞かれるが、世界経済を悪化させる事無く、より安定させる方策を模索中というのが現状。
今の所は大銀河帝国関連企業が積極的に投資を行っていることがプラス要因となっていて悪くは無いのだが、そんな中で…。

「和馬さん、帝国の記念硬貨が、舞姫さまグッズかの如く売れてますが、通貨として微妙になって来ましたね。」
「だな、記念切手同様、外貨を稼ぐ手段と考えていたが、一ドル一根を守りつつ中にチップを埋めて偽造をしにくくしたからか、記念硬貨対応の自販機とか出始め、普通に日本でも使える通貨になりつつ有る。
自販機を製造した企業は軽い気持ちだったそうだが、日本政府が勢いで法改正してくれたからな。
記念硬貨に限らず、決済通貨としての根を持っていれば、世界中どこでも使える体制、国が破綻しその国の通貨が紙屑同然になっても、普段から根を利用していれば安心というシステムを想定してのことだが、今後どうなって行くのか全く分からない。」
「キャッシュレス決済の進んでいない国では、記念硬貨をそのまま流通させる話も出ていますね、硬貨ばかりでは重いでしょうが。」
「なあ、帝国自治領内では、食品や生活必需品を中心に価格を企業と相談しながら政府が定めているだろ。
智里はその価格が他国でもそのまま維持される様になったらどうなると思う?」
「自由競争の原理が大きく変わりますね、同じ価格なら質で勝負でしょうか。
企業が自由に定められる価格を、敢えて帝国に合わせると…、それでも国家間の経済格差は無くならないでしょうが、最低賃金を、根で同一にして行くのはどうです?」
「そこに至る過程が難しそうだが、姫さまを名誉プリンセスにしている国では可能性が無いとは言えないか…。
だが、アフリカの貧しい国をそこまでにするのは至難の業だろうな。」
「今は教育制度に差が有り、人の能力そのものにも差が有りますからね。
その差を無視しての平等は有り得ません。
能力のある人が正当に評価される社会でないと、かつて崩壊した社会主義国と同じ道をたどると思います。
和馬さん、それより今は実質一ドル一根の固定相場な訳ですが、他の通貨に対しても、百円一根、一ユーロ一根と言うのは如何です?
為替差益で儲けてる人には迷惑な話でしょうが、我々の経済グループを一つの存在と考えたら、四つの通貨が事実上統合されて、通貨的にはユーロ圏が拡大した形になります。
過渡期は思いっ切り揉めるでしょうが。」
「国境の無い社会を目指している人達には有りな話だろうね。
だが今なら記念硬貨を一根百円、一根一ユーロにすると宣言するだけで、その方向に持って行けそうな気がしないか? 損得勘定でドル、円、ユーロが売り買いされるだろうが…。
記念硬貨の価格設定という話に過ぎないと軽く始めてみたいね。」
「帝国は記念硬貨でぼろ儲け、通貨を発行し過ぎるとその価値が下がる筈が、記念硬貨を売るという形なので実質固定相場、それに決済通貨としての機能が連動して安定、思いっ切りインチキをしている気分です。」
「まあ、それによって経済的に弱い国々を援助出来てるのだから悪くないだろ。
増えてる通貨が大銀河帝国によって貧しい国に投資されている、インフレが起きつつ有るが、物価を帝国自治領と同じレベルまで上げて行く事を目指して、人々の生活が困らない様、状況を見ながら計画的に進めているからな。」
「そこに根を共通通貨として導入して行けば…、しばらくは混乱しても、近い将来経済の安定度が高まるのでしょうか?」
「やってみないと分からないが、各種記念硬貨、一根を百円、一ユーロで売る事は検討して貰おうか。」
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大銀河帝国-27 [シトワイヤン-34]

記念硬貨の価格設定変更には、反対意見も出されたが、根を円とユーロでも固定にする事で、ドル換算する必要が無くなり販売が楽になると、最期は姫さまが決定を下されスタート。
ドルを売って円を買い、その円で根を買うという動きが活発に、これだけで大金を手にした人がいる訳だが、すぐに相場は一ドル百円、一ユーロの辺りで落ち着いた。
大銀河帝国が変動相場制をほぼ固定相場に変えてしまったと言える。
それだけの力、安心感が大銀河帝国に有る訳だ。
他の通貨とは今まで通りでも、四つの通貨がほぼ固定化されてしまった事で、為替市場は冷え込み一部から不満の声が聞かれたが、為替の変動を気にする必要無く取引が出来、メリットを感じている企業も多い。
為替差益の旨味は無くなったが為替差損のリスクが無くなり、これを切っ掛けに根を含めた四つの通貨は固定相場制への移行が検討され始めている。
また、為替市場から株式市場へ資金が流れ、株価は上昇、世界的な好況感が広がっている。
根の発行額は増え続け、それで得られた外貨が各国で雇用対策に投資されている事も有り、帝国によって形成された経済圏では失業率が軒並み下がっている。
当初は、何もない所から魔法の如く生み出された通貨に反発する声も有ったが、帝国国民がそれを見事に活かしたことで、どれほどの人が救われたことか。
根は決済通貨として流通量を増やしつつ、記念硬貨は出来上がるとすぐに売れ、常に購入希望者が待っている状態。
帝国の保有する外貨は膨大な額になりつつある。

「今度の記念硬貨は何を記念するものなのです?」
「姫さま、今回は自治領が一つ増える記念です。
自治領内でもキャッシュレス決済が進んでいないエリアがまだまだ多い状態ですが、元の通貨から根への移行が進み始めていまして、利便性を考慮し新たな金種も発行します。」
「もう発行枚数は記念硬貨と呼べるレベルを遥かに超えていますが、あくまでも記念硬貨なのですか?」
「はい、片面は全て姫さまの肖像で統一されていますが、片面は何でも有り、敢えてデザインの種類を増やす事で、使用時に真贋の確認したくなる状況を作り出しています。」
「まさか、偽造されているのではないですよね?」
「大丈夫です、記念硬貨の広まりと共に、内臓チップの読み取り装置や、装置付きのレジも普及していますので。
紙幣より偽造コストが掛かりますし、内臓のチップは取り出そうとするだけでデータが消える構造、偽造するだけの技術が有ったら他の仕事をした方が儲かるでしょう。
流通している硬貨は、レジでの読み取り時にチェックされていますが今の所偽造コインの情報は入って来ていません。
お釣りは電子マネーとしてカードや携帯端末に返すのが原則になっていますので、キャッシュレス化も進み始めています。」
「最後にお店でお買い物をしてから随分になる…、レジの進化は話に聞いてるけど…、お姉ちゃんとの買い物だと自分でお金を出す事は無かったし。」
「今、姫さまが買いものに訪れたら、店員は困ってしまうでしょうね、思わずお代は要りませんとか。
もっとも、その前に、集まって来る人を整理するのが大変だと思います。」
「変装しなくては駄目ですか?」
「変装しても無駄ですよ、姫さまのオーラは隠せませんから。」
「う~ん、ちっちゃい頃、かくれんぼをしていても、すぐに見つけられてたのは偶然じゃなかったのかしら。」
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大銀河帝国-28 [シトワイヤン-34]

大銀河帝国を中心とした新しい経済圏の拡大をおもしろく思っていない国も有る。
自国の影響力拡大を目論んでいた大国は特にだ。
その影響下において来た国が少しずつ離れて行くだけでなく、国内でも姫さまのDVDが通販の人気商品になり、国民は美しき姫さまに憧れを抱いている。
この国が輸出を計画的に減らされているのは、国の要人が姫さまを侮辱する発言をした事が切っ掛け。
姫さまの祝福を感じた事が無いとは言え、あまりに軽率だった。
それが無ければ、対立を望まない帝国関係の人達はその国の安定も計画の内に入れ、経済的バランスが崩れる方向には進まなかっただろう。
謝罪し修正する機会は有ったのだが、そもそもそんな気持ちが指導者達に無かった様で…。
結果、帝国主導の投資拡大で好景気の経済圏と、輸出が振るわなくなった大国という構図が出来上がった。

「和馬さん、某国との落し所は無いのですか?」
「こちら側の人達は大人だが、姫さまに関してだけは譲れないだろ、宗教対立に近い感覚になっているとも思える、我らが象徴である姫さまを侮辱されてはね。」
「万里は気にしてないと話していましたが。」
「それでもな、まあ、国民に罪は無いが、一つの地球を目指すには…。」
「多少のリスクを負う必要が有るのですね。」
「姫さまとも話していたのだが、相手は大きな国だろ、一部の人が姫さまの祝福を感じ変わろうとした時、そうでない人達と大きな対立になる可能性は否定出来ない。
これまで帝国を拡大する過程でも少し有った事だが、規模が違うと思うんだ。」
「そうですね、今までは万里の力が知られていない状況からでしたので、一気に広める事が出来ましたが…、魔女に因る洗脳を恐れさせるだけの宣伝を進め、万里目掛けてミサイルを発射する口実とされでもしたら、でも、戦争だけは絶対避けなければなりません。
折角、人々がユートピアへの道を歩もうとしているのですから。」
「輸出が振るわなくなり民主化運動がまた盛んになりつつあるとの情報が入って来ているが…。
? 愛華どうした?」
「和馬、かの国で軍事クーデターが起きてるとの一報が入ったわ。」

その後、次々と情報が入って来る。

「民衆がクーデターを支持しているみたいだな。」
「舞姿をDVDで見た人や、旅行中に姫さまの祝福を感じた人が少なからずいたり、世界から自国が取り残されると、大銀河帝国の情報はそれなりに入っていたのね。」
「あっ、軍部が姫さまに忠誠を誓うと…、思い切った声明を出したな。」
「へ~、色々調査して来た結果なのね、万里、どうする?」
「このまま一気に動いて無血クーデターが成功するのなら、こちらも積極的に動かざるを得ません。
スケジュールを変更して、国交樹立を目指しましょう。
私の訪問を前提に、軍事政権と連絡を取って下さい。」
「姫さまが訪問して大丈夫でしょうか。」
「この国を大銀河帝国と良好な状態に出来れば、世界を一つにして行く障害は残り少ないと、時間は掛かっても何とかなると思います。
今は忠誠を誓うとの言葉を信じ、こちからもメッセージを発信しましょう。」

我々は動いた。
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大銀河帝国-29 [シトワイヤン-34]

人口の多い大国の割に、クーデターによる混乱が小さかったのは、姫さまのDVDがうんと多くの人に見られていたからだと分析されている。
姫さまを侮辱する発言に怒りを覚えた人は勿論の事、民主化運動の活動家達も軍部の動きに賛同した。
クーデターの中心人物達は、密かに巡礼者となり姫さまの祝福を経験、大銀河帝国についてしっかり調査し準備を進めて来たという。
クーデター後、姫さまのポスターが国中に張られる事も想定していたそうだ。
本人自ら仮の代表者だと名乗る指導者と姫さまはテレビ電話で会談し、訪問を決定。
それから様々な事が決定し進められて行く。
帝国関連国が姫さま専用機の護衛任務に当たる事が許可され、多国籍の護衛部隊が編成される。
予行演習として、自国と大銀河帝国の識別標章を付けた二十数か国からなる戦闘機編隊が越境し空軍基地へ。
さながら航空ショウとなったが、領空へ入る時には歓迎するとのメッセージが入り、この国の戦闘機も編隊に加わった。
その模様は世界各国へ配信され、人々に新しい時代の幕開けを感じさせる。
飛行船の地上基地、舞姫さまの社の建設が始まる頃、姫さまは専用機で護衛の戦闘機編隊に守られ訪問。
姫さまの祝福を感じられるエリアへは多くの人々が押し寄せたが、その多さの為か範囲は今まででもっとも広くなり、舞を舞われた時は更に広がった。
姫さまがその力の根源を集まった人達から得てるのは間違いない。
一千万人ぐらいが祝福を感じられたと伝えられたが、それでも人口の百分の一にも満たない、飛行船での旅はアナウンスされているので、多くの国民はその時を待つ事に。

「姫さまに対する非礼を随分詫びられたが、実際に姫さまを恐れて無礼な発言をしていた人達はどうしてるのだろうね。」
「万里の祝福を感じさせ、洗脳しているそうですよ。
結果、失礼な発言をした自分達にも等しく祝福を下さったと涙していたとか。」
「はは、洗脳は成功したのか。」
「私は洗脳だなんて…。」
「姫さま、洗脳で良いでは有りませんが、姫さまによって脳が洗われ綺麗になるのですから。
そして地球市民として物の見方、考え方が変わって行く。
ここが話に聞いていた程、大気汚染を感じられないと思っていたら、臨時政府の指示下、姫さまの訪問に合わせ対策を進めて来たそうです、一部の工場は操業停止中ですが、その間に大気汚染対策の工事をしているとか。
環境に対する意識が変わりつつ有るそうで、砂漠化を食い止める事業を進める為、軍備を縮小し地球防衛軍に移行という話も出ていました。
他国の顰蹙を買っていた基地拡張は見直され、軍事力によってパワーバランスを維持して来た時代を終わらせたいとも。」
「軍縮会議は国連で出来そうですね、帝国自体は軍事力を保持していませんのでお任せしましょうか。
ただ、国際的に上手く行っていない国が、これからどう動くのか注視して行く必要は有ります。」
「そうですね、姫さまに仲介をお願いしたいという声も聞かれますが、残っている国は孤立を深めていますので、愚行に出るか白旗を上げるかの二択になっています。
経済制裁を受けている国では、姫さまのDVDを見られる様な状況では無さそうですので、姫さまは動くべきではないでしょう。
早く周辺諸国が安心出来る状態にしたくは有りますが。」
「どうしたいのか良く分からない国は対応が難しいですね。」
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大銀河帝国-30 [シトワイヤン-34]

全てが順調とは行かないが、地球上の多くの国が大銀河帝国と友好的な関係となった。
各国の失業率が大きく下がったのは、直接利益に結びつきにくい活動をしている地球防衛軍に対して、政府や企業が多額の資金を出し支えている事が大きい。
環境問題と雇用問題の二つが緩和されるのなら費用負担は重くない。
失業者が減れば、経済活動が活性化、企業の業績が向上し税収も増える。
格差が顕著だった頃の低所得者層が安定した職に就いたということの経済効果はとても大きい。
大銀河帝国は行き過ぎた競争社会を否定し、例えば価格カルテルを推奨しているが、そこには消費者が納得できる適正価格を目指すと言う目的が。
従業員に対し適正な給料が支払われ、大きな利益を得た場合は地球防衛軍に援助という流れが出来つつ有るが、そこに強制はなく、経済に対して価値観の変わった人達が自然な形で取り組んだ結果。
姫さまの祝福を感じ、地球市民としての有るべき姿を人々はまだ模索している段階だが、様々な問題に取り組む視点は確実に高くなり、視野が広がっている。
貿易は品目によって自由貿易から計画貿易へ移行、需給のバランスを取りつつ災害時には食料の備蓄分を国同士が融通し合う。
それに合わせて生産量が調整されている。

「和馬さん、世界的計画経済の中でアフリカの貧困国はどう位置付けているのです?」
「そこなんだよな、智里も現状は見て来ただろ。
支援によって生活が安定したら一気に人口が増えそう、そうなったら自然環境が破壊されて…。」
「将来を見越して植林した木が切られて薪になったと聞いたことが有ります。
薪にせざるを得ない状況だったのでしょうが。
総合的に支援をして、産児制限まで考えて行かないと…、でも万里の祝福を感じた人でも、地球市民党の理念を理解して貰うまでに時間が…、教育には時間が掛かりそうです。」
「我々と同じ様な生活を考えていないとしてもな、都市部の住人に問題はないのだが。
姫さまは時間を掛けて取り組んで行きましょうと話されていたが、地球市民の中には一刻も早くと考えてる人もいる。」
「難しいですね、単純に支援すれば良いという話では無く、自立して安定した社会を築いて貰わないと行けないですし。」
「ファルコン号で上空を通ったエリアでも、姫さまの事が充分認識されてなくて、昔ながらの宗教に組み込まれたという報告が有るぐらいだ、まあ、幸せに暮らしていてくれれば、我々が介入する必要は無いのだが。」
「伝染病とか、彼らの手に余る問題が有るのですよね。
大銀河帝国が大きくなり、国家間の争いは大きく減りましたが、環境問題と言い、まだまだ課題は残されていますね。」
「ただ、その課題を解決して行く事で世界の結束が強まっているとも考えている。
もし、課題が無くなったらどうなるのかな?」
「課題が無くなる程甘くは有りませんよ、地震台風竜巻に火山、山火事、災害は起こり続けます。
気候変動によって、この先どうなって行くのか解りません、もう遅いという人がいるぐらいで、地球防衛軍が頑張っても追いつかないかも知れません。
それでも、地球市民はこの地球の環境を守る為に力を合わせて立ち向かってくれると思います。
万里の願い、それを地球市民全員で共有しているのですから。」
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