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新学期-411 [花鈴-42]

「そもそも派遣社員レベルの臨時採用的公務員の存在がおかしいのです。
 人の採用に関して、きちんと予算を組むべき所を、税金だからと躊躇する首長に問題が有ると思いませんか?」
「御免なさい、政治のことには疎くて…。」
「政治に疎い大学生を生み出してることも問題です。
 自分の国、その将来をまともに考えられない人が政治家となって多くの国民に失望を与え、政治に対して諦める人ばかりになってるのが、今の日本だと聞いたことが有ります。」
「…。」
「真面目に働いてる公務員でも、その給料が税金で賄われてるからと言って気軽に攻撃対象とされてる人がいることは御存じですか?」
「いえ…。」
「モンスターペアレンツにとって公立学校の教師はおもちゃに過ぎないのですよ。」
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新学期-412 [花鈴-42]

「はい、少子化で若者が少なくなった上に教育現場の労働環境の悪さが知られる様になり教員を目指す人が減って来ているのですが、モンスターペアレンツの存在も関係していると思います。
 姫さまの小学校にもいるのですか?」
「田舎暮らしを選択人達だからか、そんな人はいませんし、いたら村八分になるかも。」
「都会とは人間関係が違いますものね。」
「結局いじめなのですよ、気の弱い子をいじめるのと同じ感覚で立場上強く出られない人達を攻撃対象にして楽しんでる様な。
 他者より優位に立っていると思いたいと言う本能がそうさせるのでしょうが。」
「本能ですか…。」
「社会集団の中ではその本能をコントロールする必要が有るのですが、出来ない人もいるのです。」
「いますね、普段は大人しい人がお酒を飲むとコントロールが効かなくなることも多々有ります。」
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新学期-413 [花鈴-42]

「合宿所に来ている大学生でもですか?」
「ええ、真面目に生き過ぎて来た反動なのかと思える人も、まあ、愚痴を言い過ぎるぐらいで実害は無いのですが、ストレスを抱えてる人がいます。」
「そのストレスをお酒の力で?」
「根本的な解決が難しくてのストレスみたいで…。」
「ストレス社会と言う言葉に触れた時に調べてみたことは有るのですが、私の周りにそんな人が居なくて良く分からなかったのです。
 そんな人とも話してみたいですね。」
「姫さまを尊敬してると話してましたから喜ぶと思います。
 お酒を飲んでない時は普通に優秀な学生ですから、是非会ってあげて下さい。」
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新学期-414 [花鈴-42]

 そんな流れから会う事になったのは、武田健司さん。

「自分に興味を持って下さったのは、やはり社会学的視点からですか?」
「ええ、私が今まで接して来た学生とは違う体験をされてると聞きましたので。」
「そんなに特別な体験をした訳では無いのですが…。」
「色々重なったのですよね?」
「冷静に考えれば悪循環が有ったと思っています。
 家庭の問題に気持ちが持って行かれてたことで、新たな問題の切っ掛けを作ってしまっていたとか。
 彼女にフラれたのは、そんな感じなのですよ。」
「彼女さんに理解を求め協力して貰うことは出来なかったのですか?」
「彼女は面倒事が嫌だったのだと思います。
 それ以前に別れるタイミングを計っていたのかも知れません。」
「男女の事は良く分かっていませんが、武田さん的には、それで納得?」
「結婚することも考えていたのですよ、ですが結果的に…。」
「武田さんのトラブルに対して手助けでは無く、逃げることを選択したと考えて良いのですか?」
「それだけなのかは分かりませんが、別れ話は簡単なことでした。」
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新学期-415 [花鈴-42]

「それで納得されたのです?」
「納得した訳でも無いのですが、面倒事が続いていましたから、どうでも良いと。」
「もっと素敵な彼女と出会えるチャンスが出来たと、考えることは?」
「言われてみれば…、これからはそう考える様にします。」
「それでトラブルの整理は出来てるのですか?」
「両親の離婚はほぼ確定、その原因となった父の会社の倒産、そのどちらも自分にはどうしようもない事です。
 元カノは自分が社長の息子だと言うことに価値を感じていたのかも知れません…。」
「あらっ、倒産してしまったの?
 倒産寸前とは聞いていたのだけど。」
「親父は諦めてないみたいですが、母は時間の問題だと。
 原因は色々有るそうで、その中に父の浮気も有るのだとか…。」
「息子として会社の為に頑張ってみるとかは?」
「三回生になったばかりの自分には何も出来ないですよ。」
「成程、彼女にフラれる訳だ。」
「えっ?」
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新学期-416 [花鈴-42]

「起業を考える大学生もいるのに、将来跡を継ぐ可能性の有った会社を始めから諦めている人に魅力を感じません。」
「うっ…。」
「私の兄なら喜んで再建を考えたでしょう、高校生の内に起業したいと考えてる人ですから。」
「そう言われましても…。」
「私も倒産して行く会社に興味が有ります。
 宜しければ倒産寸前の状況を調べさせて貰う訳には行きませんか?
 そこで存続させるだけの価値を見いだせたら力を貸せるかも知れません。
 社員の為に事業継承とか、様々な形が考えられます。
 勿論、武田さんは先々社長候補には成れませんが。」
「で、ですよね…。
 姫さまが本気なら直ぐにでも父を紹介させて下さい。」
「そうね、来て頂く余裕は無いでしょうから、テレビ電話ででも。」
「今からでもよろしいですか?」
「大丈夫ですよ、始めからそのつもりでしたので。
 倒産寸前の会社なんてなかなか出会えるものでは有りませんから。」

 これは本心。
 武田さんは合宿所の利用者だから、力に成れたらとも思ったが、企業の会長として倒産して行く会社の実情を知りたかったのだ。
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新学期-417 [花鈴-42]

 武田さんのお父さんによると、会社はオリジナル商品を扱っていて売り上げは悪くないのだが、事業拡大に失敗して運転資金が不足、ただ、今を乗り切れれば何とかなるのと考えているそうだ。
 浮気に関しては反省していて、お爺さまが立ち上げた会社を存続させられるのなら、自分は社長に固執しないとも。
 まさに藁をも掴む思いが伝わって来たが、融資して倒産では話にならない。
 ひとまず財務状況を精査し、そこに偽りが無く立て直せそうなら融資を考えても良いと伝えた。

「花鈴、話をして直ぐにデータを送って来たのだな。
 自分も会社経営の先生と相談してみるが、駄目だと判断する覚悟は出来てるのか?」
「勿論よ、貴重な資金を融資したのに倒産なんて嫌だもの、他の人がOKしても、お兄ちゃんがダメだと思ったら融資は見送るわ。」
「分かった、自分の人脈も利用してしっかり調べるが、上場企業じゃないからな。
 一度会社や工場を見に行き向こうの社長達とも話して来る。
 花鈴が思った通り倒産寸前の会社ってなかなか出会えないから良い学習材料になると思うんだ。
 まあ、お断りするにしても、情報を開示してくれたお礼ぐらいはして来るよ。」
「通信制だから学校を休むとか考えなくて良いのよね…。」
「花鈴は本当に必要なら学校を休んででも行くのだろ?」
「うん、ただ昨年度まで絵梨とやって来た教える作業を実習の大学生に引き継いでる最中で…。
 でも、自分の経験値を上げると考えたら、お兄ちゃんと一緒に行きたいわ。」
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新学期-418 [花鈴-42]

 正直言って良く分かっていなかったのだが、倒産寸前の企業は支払い期限までに支払うべきお金を払えるかどうかが最重要課題だそうで、武田さんの会社はぎりぎり頑張って二週間だとか。
 その間にこちらとして融資するかどうかの判断を下す必要が有るのだが、いずれにせよ早いに越したことは無い。
 会社はパート社員を含め百人規模、家族会議の結果、融資するので有れば兄を代表取締役とし、現社長は副社長に降格と言う方向性、会社は兄が社長としての経験を積む場所になる。
 
「お母さんは来なくても良かったのに。」
「ゴーサインが出ても私の判断で止めるのが条件、私が状況を掴めていなかったら駄目でしょ。」
「花鈴、仕方ないよ、色々助言を貰ったけど経験の無い俺では見落としが出かねないからな。」
「お兄ちゃんが納得してるのなら良いけど。」
「実はな、上手くやれば安い買い物になるかも知れないんだ。
 新商品投入による業績拡大に失敗したのだけど、その新商品は売れそうでね。」
「売れなかったから倒産の危機なのよ。」
「悪くない商品なのだけどネーミングセンスの無さと宣伝予算をケチったことが敗因だと思ってる。
 そこを改善出来れば短期間で立て直せると、自分だけでなく相談を持ち掛けた人達も判断していてね。
 それだけに見落としと言う落とし穴が怖いんだ。」
「良い商品ならうちのYouTubeチャンネルで宣伝するのも有ね。」
「だろ、だから商品を見極め商品名を変えることが、今日の目的の一つ。
 その辺りと会社の雰囲気を確認し、お母さんが納得してくれたら俺のお小遣いでなんとかね。」
「行けそうなら私も出すわよ。」
「いや株高で売り時のが有るんだ、花鈴の資金は株式会社花鈴の拡大に使った方が良いからな。」
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新学期-419 [花鈴-42]

 倒産の危機に直面している会社の実情を教えて貰うのは面白かったが、株式会社花鈴がそんな状況になってはならないと身の引き締まる思いも。
 ただ、母曰く、兄の判断は間違ってないそうで。
 つまりは、兄が社長となって再建に取り組むこととなった。
 通信制高校の一年生が社長を務めることも、商品への注目度を高めることになるのだ。
 兄が社長になれば彼の師や仲間が後押ししてくれることにもなり、現社長には無かった人脈が広がって行くだろう。

「お兄ちゃんは会社をどう改革して行くの?」
「まずは給与体制の見直しからだ。
 そこをきちんとしておかないと転職し易い優秀な人達が離れて行ってしまうだろ。
 メインの商品が売れてるのに事業拡大の失敗で、賃上げが物価高に追いついていないからな。」
「融資額が膨らむと思うのだけど回収出来るの?」
「ああ、暫く名古屋のお爺ちゃん家から通って色々改善して行くつもりなんだ。
 俺が社長になるのなら応援すると言ってくれる人が結構いてね。
 その人達と相談しながら、色々試してみたいかな。」
「試す?」
「パートさんを含め全従業員と面談してからになるけど、働き易い職場にしたい。」
「そうね、工場の環境は改善すべきだと強く感じたわ、まずはトイレよね。」
「ああ、既にトイレの全面改修は発注済だよ。
 新社長からの贈り物としてね。」
「トイレを綺麗にしてくれた新社長として受け入れて貰う、そんなとこ?」
「まあな。」
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新学期-420 [花鈴-42]

「YouTubeチャンネルでも取り上げないとね。」
「ああ、改革の進捗を紹介して欲しい、ネタとしても悪く無いだろ?」
「うん、商品の紹介もしなきゃでしょ?」
「倒産し掛けた会社の再生に興味を持ってくれる人は少なく無いと思うからな、色々な形で注目を集めることに成功出来たら業績は持ち直せる。
 株式会社花鈴に対して正式な依頼を出すが正規の料金で構わないからな。」
「多少安くは出来るのだけど、良いの?」
「取引先との関係は良好なものにしておきたい。
 妹が会長を務めてる会社に対して値切ったなんてイメージを持たれてはマイナスに成り兼ねないだろ。
 資金面での問題が無いことも内外にアピールしたいんだ。」
「高校一年生が、お小遣いを株で運用した資金で会社の筆頭株主になり代表取締役就任。
 高校生の今なら話題に出来るのね。
 嫉まれて何かしらの妨害は入るのだろうけど、それも宣伝材料として利用して行けば良いのでしょ?」
「根拠の無いデマを流す人を法的に抑え込む事まで視野に入れてるよ。
 知名度が上がると面倒事が増えると考えて間違いない。
 花鈴に対する面倒事は田中社長がしっかり対応してるそうだから参考にさせて貰うつもりなんだ。」
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