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再生-425 [花鈴-43]

 武田さんのフォローを進めたのは今までの流れが有ったから。
 元々過疎地の再生が私達のテーマだったのだが、移住者を受け入れる過程で母子家庭の援助などが視野に入る様になり生活困窮者の再生を意識。
 悩める大学生の再生はその延長線上のことで、倒産し掛けていた会社の再生も兄が出来ると判断。
 兄は新規事業を起こすことを考えているが、再生事業によって経験を積みたいと積極的に動いてくれたのだ。

「お兄ちゃん、倒産し掛けた会社が直ぐに売り上げを伸ばし始めたのは新社長の力量かしら?」
「一度は失敗した商品のリニューアルに成功出来たのは、社員や自分に協力してくれた人達のお陰で、自分は少し動いただけだよ。」
「でも、その少しが無かったら倒産してたのよね?」
「だな、低迷している企業でも、条件が揃えば一工夫で再生出来ると分かった。
 余力が出来たら株式会社花鈴の様に低迷している事業所の買収を考えて行きたいかな。
 株式会社花鈴は概ね好調なのだろ。」
「まあね、社会福祉関係の事業は赤字にならなければ成功なのだけど、店の収益は右肩上がり、リピーターが結構増えて安定して来ているの。
 このエリア全体を農業公園として意識して貰える様に色々な作戦を実行に移し始めている所だけど。」
「過疎地の再生は進みそうなのか?」
「既に進んでいると思うけど、イチゴ狩りとかの新バージョンとして、トマトなどの野菜を自分で収穫する施設を計画中、大ヒットは狙えなくても、普段食べてる野菜が畑で育ってる姿を子ども達に見せようとアピールしたらどうかとね。
 キャンプの食材を自分達で収穫しようと言うのが売りで、肉屋さんも併設出来ればと考えてるのよ。
 それだけだと一年を通して作業とはならないのだけど、社員には農閑期、手作りお土産を作って貰うとか、労働力を最大限に活かせる形を検討してるの。」
「季節変動を意識して非正規雇用の派遣社員を使う会社が有るが、俺達は安定雇用を大前提にしたいからな。」
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再生-424 [花鈴-43]

「大学生にもなると親の離婚でも軽く受け流すことが出来るのですか?」
「子どもの頃は家族旅行に行くことも有りましたが、最近は家族揃って食事することすらなくなり、家族それぞれが自由に生きていると言いますか…、母にとっても父の浮気は離婚の口実として調度良かったのかも知れません。」
「そうですか…、お母さまも幼子を抱えての離婚ではないから気楽なのですね。」
「みたいです、ただ、お金のことで揉めそうなので、自分は早く就職して自立したいと考えています。
 取り敢えず家を出たくて合宿所暮らしを希望した訳で。」
「大学の単位は?」
「卒業に必要なのは卒論が残ってるぐらいで大学には殆ど行く必要がないです。」
「バイトはしていないのですか?」
「その必要が有りませんでしたので、まだ経験していません。」
「それなら、株式会社花鈴で働いてみますか?
 大学卒業までで構いませんから、仕事を経験して置くことは就職後の役に立つと思います。」
「そうですね、合宿所で卒論をまとめながら、ここで働かさせて頂けたら有難いです。
 バイトをして来なかったことで世間知らずになってた自覚が有りまして。」
「三月までだとしても正規雇用で社員教育も受けて貰います。
 兄が社長となった会社に就職するのなら、基本的な考え方は我が社と同じですので、学生の内に先行して社員教育を受けられるぐらいに考え、真面目に働いて下されば自立への道を早められるでしょう。」
「有難う御座います、姫さまと出会うまでの自分はひどいものだったと自覚してまして、これからは真面目に取り組みたいのです。
 社員教育に関する資料が有れば予習しておきたいのですが如何でしょうか?」
「では社員サイトへのアクセス権を取得して頂ける様に…、まずは社長との面接をお願いします。」
「分かりました。」
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再生-423 [花鈴-43]

「それでも、せめて取締役を目指すぐらいの気概は持って欲しいです。
 でなければ、会社として副社長の息子を雇うリスクに見合わないと思いますよ。」
「う~ん、まだ自分は甘く考えてると言うことでしょうか?」
「副社長の息子として特別視されるとかは意識していないのですか?」
「父に対する評価は低そうですよね…。」
「かも知れませんが、今は副社長として頑張っておられると聞いています。」
「離婚関連で頑張らざるを得ないのかも知れません。
 浮気相手との再婚を視野に入れてるとの噂も耳にしました。」
「お父さまからではなく?」
「自分が姫さまを通して会社再建の切っ掛けを作ったので、自分に対して離婚や再婚の話はしづらいのでしょう、離婚して直ぐ再婚と言うのは…。」
「再婚して子を授かりたいとか?」
「浮気相手の女性がどう考えてるのかは全く分かりません…。」
「生き物が子孫を残そうとするのは自然だと思うのですが、人間は社会構造が複雑になり微妙ですものね。
 それでも、弟か妹が新たに出来たら楽しく無いです?」
「全く実感が湧きませんよ…、歳が離れ過ぎて一緒に遊べるとは思えません。
 再婚に関しては両親が好き勝手にやってくれて良いと思ってはいるのですが…。」
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再生-422 [花鈴-43]

 兄が値切らなかったからかYouTubeチャンネルスタッフが本当に頑張ってくれ、兄の会社とその商品を紹介する動画はなかなかの仕上がりに。
 高校一年生が社長に就任したことがマスコミに取り上げられたことも有り、動画再生回数はうなぎのぼりとなった。
 通販では売り出しに一度失敗した商品の価格を高めに設定したにも関わらずバカ売れだそうだ。

「姫さま、社長が交代するだけで会社がこんなに変わるとは思っていませんでした。」
「武田さんのお父さまだって力が無かった訳では無いのですよ、今は副社長としてしっかり動いて下さっていると兄も評価しています。」
「それでも離婚は確定だそうです、子ども達が大学生になっていますので気楽なのかも知れません。」
「人間は複雑で、どこまでが本能なのか分からないと思うのですが、子どもを産み育て終えたのなら夫婦で居続ける必要は無いのかもね。」
「姫さまはそんなことまで考えておられるのですか?」
「社会学的に考えると言うことは、人の心理や本能を知る作業でも有るのです。」
「社会学ですか…。」
「人間社会のありとあらゆる事に目を向けることは、会社を運営して行く上でもプラスになります。
 折角社員が良い商品を開発したのに、それをヒットさせられなかった背景は理解出来ましたか?」
「はい、商品名を変え、きちんと宣伝したから売り上げが劇的に伸びたと聞いています。
 経営者を意識してはいたのですが、自分は色々足りなかったのだと思い知らされました。
 その上で、一社員として父が副社長となった会社に就職しようと、一社員として真面目に働きたいと考えています。」
「昇進して社長の座を目指すとか?」
「そんなことまでは考えていません、自分は高校生のお兄さまの足元にも及ばない存在ですので。」
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再生-421 [花鈴-43]

 兄が取り組むことになった会社は、これまで株式会社花鈴が再生に取り組んで来た事業所より、随分大きいが、改革のポイントは同じみたい。
 まずは労働環境の改善、トイレの改修は株式会社花鈴でも真っ先に行って来たこと。
 田舎で利益の少ない事業所のトイレは本当に酷かったのだ。
 名古屋で暮らしてた兄が久しぶりに帰って来たので…。

「お兄ちゃん、新しいトイレの反響はどうだった?」
「勿論喜ばれたよ、工場のトイレは酷かったからな。
 倒産かもって噂が流れていたみたいだけど、それを一気に吹き飛ばすことにもなった。
 マジな話、社員との面接ではトイレが綺麗になったから辞めずに続けると話す人が何人かいてね。」
「酷いトイレに倒産の噂では辞めたくもなるわ。
 面接では何か問題点が見つかったりしたの?」
「うん、派遣社員が低く扱われていた。
 日給がパート従業員より良かったから、パート従業員の不満を抑える為だったのかも知れない。」
「給与体制の見直しは進んでいるの?」
「ああ、社長交代記念として少しだが一時金を支給しつつ、労使交渉ってのを進めてる。
 派遣社員の内、希望者は我が社の正社員として雇用する方向だよ。
 基本的に派遣社員は使わないつもりなんだ。」
「同一労働同一賃金でスッキリさせるべきだものね。」
「賃上げするとして、資金は大丈夫なの?」
「一時的に銀行から借り入れることになるかもだけど、失敗した商品のリニューアルに対して前向きな社員が結構いて心強いんだ。
 前社長のネーミングセンスの無さと宣伝費をケチった姿勢に対する批判を口にする人が多くてさ。」
「新しい商品名は?」
「社員達が持っていた案から採用した。
 包装のデザインが確定したので、本格的に売り出して行く計画を練ってるところさ。」
「まずはYouTubeチャンネルで反応をみないとね。」
「通販部門を立ち上げたから、宣伝動画が良ければ直ぐに結果が出ると思うよ。」
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新学期-420 [花鈴-42]

「YouTubeチャンネルでも取り上げないとね。」
「ああ、改革の進捗を紹介して欲しい、ネタとしても悪く無いだろ?」
「うん、商品の紹介もしなきゃでしょ?」
「倒産し掛けた会社の再生に興味を持ってくれる人は少なく無いと思うからな、色々な形で注目を集めることに成功出来たら業績は持ち直せる。
 株式会社花鈴に対して正式な依頼を出すが正規の料金で構わないからな。」
「多少安くは出来るのだけど、良いの?」
「取引先との関係は良好なものにしておきたい。
 妹が会長を務めてる会社に対して値切ったなんてイメージを持たれてはマイナスに成り兼ねないだろ。
 資金面での問題が無いことも内外にアピールしたいんだ。」
「高校一年生が、お小遣いを株で運用した資金で会社の筆頭株主になり代表取締役就任。
 高校生の今なら話題に出来るのね。
 嫉まれて何かしらの妨害は入るのだろうけど、それも宣伝材料として利用して行けば良いのでしょ?」
「根拠の無いデマを流す人を法的に抑え込む事まで視野に入れてるよ。
 知名度が上がると面倒事が増えると考えて間違いない。
 花鈴に対する面倒事は田中社長がしっかり対応してるそうだから参考にさせて貰うつもりなんだ。」
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新学期-419 [花鈴-42]

 倒産の危機に直面している会社の実情を教えて貰うのは面白かったが、株式会社花鈴がそんな状況になってはならないと身の引き締まる思いも。
 ただ、母曰く、兄の判断は間違ってないそうで。
 つまりは、兄が社長となって再建に取り組むこととなった。
 通信制高校の一年生が社長を務めることも、商品への注目度を高めることになるのだ。
 兄が社長になれば彼の師や仲間が後押ししてくれることにもなり、現社長には無かった人脈が広がって行くだろう。

「お兄ちゃんは会社をどう改革して行くの?」
「まずは給与体制の見直しからだ。
 そこをきちんとしておかないと転職し易い優秀な人達が離れて行ってしまうだろ。
 メインの商品が売れてるのに事業拡大の失敗で、賃上げが物価高に追いついていないからな。」
「融資額が膨らむと思うのだけど回収出来るの?」
「ああ、暫く名古屋のお爺ちゃん家から通って色々改善して行くつもりなんだ。
 俺が社長になるのなら応援すると言ってくれる人が結構いてね。
 その人達と相談しながら、色々試してみたいかな。」
「試す?」
「パートさんを含め全従業員と面談してからになるけど、働き易い職場にしたい。」
「そうね、工場の環境は改善すべきだと強く感じたわ、まずはトイレよね。」
「ああ、既にトイレの全面改修は発注済だよ。
 新社長からの贈り物としてね。」
「トイレを綺麗にしてくれた新社長として受け入れて貰う、そんなとこ?」
「まあな。」
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新学期-418 [花鈴-42]

 正直言って良く分かっていなかったのだが、倒産寸前の企業は支払い期限までに支払うべきお金を払えるかどうかが最重要課題だそうで、武田さんの会社はぎりぎり頑張って二週間だとか。
 その間にこちらとして融資するかどうかの判断を下す必要が有るのだが、いずれにせよ早いに越したことは無い。
 会社はパート社員を含め百人規模、家族会議の結果、融資するので有れば兄を代表取締役とし、現社長は副社長に降格と言う方向性、会社は兄が社長としての経験を積む場所になる。
 
「お母さんは来なくても良かったのに。」
「ゴーサインが出ても私の判断で止めるのが条件、私が状況を掴めていなかったら駄目でしょ。」
「花鈴、仕方ないよ、色々助言を貰ったけど経験の無い俺では見落としが出かねないからな。」
「お兄ちゃんが納得してるのなら良いけど。」
「実はな、上手くやれば安い買い物になるかも知れないんだ。
 新商品投入による業績拡大に失敗したのだけど、その新商品は売れそうでね。」
「売れなかったから倒産の危機なのよ。」
「悪くない商品なのだけどネーミングセンスの無さと宣伝予算をケチったことが敗因だと思ってる。
 そこを改善出来れば短期間で立て直せると、自分だけでなく相談を持ち掛けた人達も判断していてね。
 それだけに見落としと言う落とし穴が怖いんだ。」
「良い商品ならうちのYouTubeチャンネルで宣伝するのも有ね。」
「だろ、だから商品を見極め商品名を変えることが、今日の目的の一つ。
 その辺りと会社の雰囲気を確認し、お母さんが納得してくれたら俺のお小遣いでなんとかね。」
「行けそうなら私も出すわよ。」
「いや株高で売り時のが有るんだ、花鈴の資金は株式会社花鈴の拡大に使った方が良いからな。」
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新学期-417 [花鈴-42]

 武田さんのお父さんによると、会社はオリジナル商品を扱っていて売り上げは悪くないのだが、事業拡大に失敗して運転資金が不足、ただ、今を乗り切れれば何とかなるのと考えているそうだ。
 浮気に関しては反省していて、お爺さまが立ち上げた会社を存続させられるのなら、自分は社長に固執しないとも。
 まさに藁をも掴む思いが伝わって来たが、融資して倒産では話にならない。
 ひとまず財務状況を精査し、そこに偽りが無く立て直せそうなら融資を考えても良いと伝えた。

「花鈴、話をして直ぐにデータを送って来たのだな。
 自分も会社経営の先生と相談してみるが、駄目だと判断する覚悟は出来てるのか?」
「勿論よ、貴重な資金を融資したのに倒産なんて嫌だもの、他の人がOKしても、お兄ちゃんがダメだと思ったら融資は見送るわ。」
「分かった、自分の人脈も利用してしっかり調べるが、上場企業じゃないからな。
 一度会社や工場を見に行き向こうの社長達とも話して来る。
 花鈴が思った通り倒産寸前の会社ってなかなか出会えないから良い学習材料になると思うんだ。
 まあ、お断りするにしても、情報を開示してくれたお礼ぐらいはして来るよ。」
「通信制だから学校を休むとか考えなくて良いのよね…。」
「花鈴は本当に必要なら学校を休んででも行くのだろ?」
「うん、ただ昨年度まで絵梨とやって来た教える作業を実習の大学生に引き継いでる最中で…。
 でも、自分の経験値を上げると考えたら、お兄ちゃんと一緒に行きたいわ。」
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新学期-416 [花鈴-42]

「起業を考える大学生もいるのに、将来跡を継ぐ可能性の有った会社を始めから諦めている人に魅力を感じません。」
「うっ…。」
「私の兄なら喜んで再建を考えたでしょう、高校生の内に起業したいと考えてる人ですから。」
「そう言われましても…。」
「私も倒産して行く会社に興味が有ります。
 宜しければ倒産寸前の状況を調べさせて貰う訳には行きませんか?
 そこで存続させるだけの価値を見いだせたら力を貸せるかも知れません。
 社員の為に事業継承とか、様々な形が考えられます。
 勿論、武田さんは先々社長候補には成れませんが。」
「で、ですよね…。
 姫さまが本気なら直ぐにでも父を紹介させて下さい。」
「そうね、来て頂く余裕は無いでしょうから、テレビ電話ででも。」
「今からでもよろしいですか?」
「大丈夫ですよ、始めからそのつもりでしたので。
 倒産寸前の会社なんてなかなか出会えるものでは有りませんから。」

 これは本心。
 武田さんは合宿所の利用者だから、力に成れたらとも思ったが、企業の会長として倒産して行く会社の実情を知りたかったのだ。
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