So-net無料ブログ作成
前の10件 | -

梶田梨乃-05 [F組三国志-04]

「父さんここよ。」
「へ~、落ちついた、感じのいいお宅だな。」
「車は駐車場へどうぞって。」
「ああ。」

「あっ、省吾さんと秋山さんだ。」
「梶田さん、おはよう。」
「おはようございます、こっちが父です。」
「おはようございます、今回は自分たちの取り組みに興味を持って頂いて有難うございます。」
「いや、こちらこそ、娘がお世話になってるみたいで。」
「さ、中へどうぞ。」
「なるほどな…。」
「えっ、どうかされましたか?」
「いや、娘から聞いてはいたが、普通の高校一年生とはずいぶん違うなって、赤澤省吾くんだったね。」
「はい、でも普通の高校生ですよ、自分は。」
「はは、私も人を雇う立場の人間、色々な若者と接してきたからね、大学生でも、ちょっと礼儀作法から勉強し直してこいってのもいたから…。
 さすがに娘が惚れるだけのことはある。」
「ちょっと、お父さん!」
「あっ、失礼失礼っていうか、すかさず腕を組みにいくんだね、秋山さんは。
 こりゃ、確かに梨乃が付け入る隙はなさそうだ。」
「も~、父さんったら~。」
「はは、梨乃さんは素敵な女の子ですから、ちゃんとした彼氏を見つけてきますよ。」
「それはそれで、父親としてはだな…。」
「もう、大切な話しをしに来てるんだからね、父さん!」
「すまんすまん、そうだった。」
「まあ、とりあえずはお茶でも如何です、両親も紹介させて下さい。」
「うん、ありがとう。」

 父さんたら…、省吾さんのこと気に入ったみたい、でもね~。
 あっ、矢野さんと高山さん…、省吾さんのご両親か…。
 父さん、型通りの挨拶してるな~。

「娘から話しを聞いたのですが、今一つ、そうですね、組織的なこととか、よく分からないのです。」
「それは、自分から、お話しさせて下さい、自分は矢野正也、今回の取り組みのサブリーダー的立場にあります。
 まだ、動き始めたばかりなのですが、我々のチーム赤澤には大学や学部を越えての参加が見込まれています。
 現時点ではまだ私的な取り組みで、公的なバックアップはありませんが、すでに教育系では十二名が動き始めています。
 経営学部経済学部からも九名が、その他の学部にも状況によって参加したいという学生が複数います。
 自分たちの目的は色々有りますが、大きな柱としては教育の研究ということが有ります。
 今回は卒論などに向けて共同調査の一環として、梨乃さん達のクラスから聞き取り調査などをさせて頂いております。
 ただ、それは我々の一つの展開でしかありません。
 自分たち、大学生が力を合わせて何かを…、いえ、力を合わせてみることこそが我々の目的と言えます。
 今日我々をとりまく社会環境は複雑になってしまって、また就職等を考えると前途多難、そういった問題を違った角度から見直していく、そうですね学部とかを越えてですね…。」

「う~ん、何やら難しい取り組みなんだね。」
「はは、そうでもないのですよ。」
「うん、省吾くん。」
「大学には色々な学部があって様々な研究をしているではないですか。」
「ああ、確かにそうだね。」
「専門性が有りますから個別の研究ということが一般的です、でも、そこから既存の枠組みを越えて協力し合い、次へのステップにして行こうという取り組みなのです。」
「ふむ。」
「具体的にお話しさせて頂きます。
 そうですね、梨乃さんが何らかの問題を抱えているのではないかと、美咲が気付きました。
 そこで矢野さん達に面接をして頂いたのですが、その結果から、まず梨乃さんの心の不安を和らげてくれるであろうということで須田さんに協力をお願いしました。
 須田さんは法学部なのですけど、えっと、昨日までの梨乃さんには一番的確なアドバイスをして下さると思ったのです。
 奨学金のこととか特待生のこととか、須田さんは身を持って経験してますので。」
「そうか…、梨乃にとって最悪の場合を考えてくれたのだね…。」
「ですが、根本的な解決が出来れば、それに越したことは有りません。
 と、いうことで、経営学部の高山さんに声を掛けさせて頂きました。
 経営学の視点から梨乃さんの抱えている問題を見て貰うという面もありましたが、高山さん自身の研究にもプラスになる可能性を考えてのことです。
 つまり、経営学を学んでいる立場から、経営者の娘である梨乃さんへのアドバイス、さらに…、とても差し出がましいことですが、梶田さんの会社を第三者の視点で見たら違った可能性が見えて来ないか、ということです。
 高山さん自身は、会社経営の建て直しということに強い関心を持っています。」
「うん…。」
「現時点ではここまでなのですが、梶田さんさえよろしければ、工学部の人にも声をかけて何かしらの協力を、まあギブアンドテイクが原則ですが、そんなことも有りで。
 例えば、就職とは関係なく実際の工場、現場を体験しつつ、改善出来ることの発見とかです。
 梶田さんの会社は、特殊な技術をお持ちという事ですから、その面から興味を持つ人が出て来るかもしれません。
 もし今後、法的な問題が出てきたら法学部の協力も得られます。
 何にしても、みんなまだ学生で、自分の専攻している分野でも素人同然なのですが、素人なりに実際の現場に貢献出来る場があれば、大学の研究室でも学べないものが得られるのではないかと思っているのです。」
「なるほど…、そういうことですか…、赤澤先生、うちの会社は今、微妙な状態で…、でも省吾くんから話しを伺って…、ギブアンドテイクででも、先生のお力にすがりたいと思うのですが如何でしょうか。」
「いや、私は矢野くんたちにアドバイスする程度でしか関わってないからね。」
「えっ、矢野くんはチーム赤澤と、ならばリーダーは?」
「あっ、僕らのリーダーは省吾なんです。」
「えっ、でも…。」
「省吾をリーダーにして一つの組織を作ろうって自分たちで言い始めたことなのですけどね、それに乗ってくれた、もしくは乗りたがってる連中がうちの大学には結構いまして。
 赤澤先生の許可もちゃんと得てありますし、美咲ちゃんの許可も得てのことです。」
「ひょっとして、私の目の前にいる少年は、ただものじゃないってことかな?」
「も~、矢野さんが大げさに言うから、自分は普通の高校生ですって。」
「はは、誰もそうは思っていないよな。」
「高山さんまで…。」

 うわっ、省吾さんって…、ホントに大学生を動かすような人だったんだ。
nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

梶田梨乃-04 [F組三国志-04]

 えっと、奨学金に特待生か、私が本当に大学を目指すのなら色々道はあるってことなのね。
 それにしても…、矢野さんたちの調査、他の人たちは簡単なアンケートだったみたいなのに、私は個人面接で…、調査というよりもカウンセリング…。
 省吾さんや秋山さん、私のことを気にしてくれてたんだ。
 ふふ、省吾さんは、さりげに大学生の人達に指示してなかったかな。
 ほんとに、不思議な人だなあ。
 でも、今日行って良かった、心が晴れた。
 そうだ、チーム正信に入れて貰おうかな。
 正信くんも林くんも誘ってくれてるし。
 省吾さんも秋山さんも喜んでくれそうだ。
 私もF組のほんとの仲間に…、うん、すごくなりたい。
 でも、高山さんの話しはどうしよう…。
 父さんに話してみようかな。
 高山さんはだめで元々、取り敢えずお父さんに頼んでくれないかって。
 そう言えば、他にも考えてることがあると、帰り際に省吾さんが話してた。
 あ~、テスト勉強もしなくっちゃだし…、う~ん、こうなったら全部すっきりしてから思いっきりやろうか。
 うん、父さんに話してみよう…。

「今日はどうだったの、梨乃?」
「母さん、行って良かったわ、英語とかはかどったし、大学生の人からもアドバイスを貰えた。」
「大学生も来てたのか?」
「うん、お父さん、それでね…。
 私、経営学を学んでみてはどうかって勧められてね。」
「そうか、経営学か。」
「実は、うちのクラスに赤澤省吾、秋山美咲ってカップルがいて、二人でF組を引っ張ってくれてるの。
 その二人が、私がちょっと悩んでいることに気付いて、大学生の人に話しを持ち掛けてくれたみたいでね。」
「すまんな、進学のこととか、会社の調子が良ければ、お前が悩むことじゃなかったのに…。」
「ふふ、でも大学へは奨学金制度が有るし、がんばって特待生という選択肢も有るって教えて頂いたのよ、省吾さんが私のために特待生の大学生を呼んでくれて。」
「えっ、わざわざか?」
「そうみたい、色々教えて貰って、がんばる気になったわ。」
「良い男なのか?」
「はは、そうね、とっても、ただ残念ながら秋山美咲さんとアツアツだから…。
 でね経営学部の人からの提案っていうか、お父さんへのお願いが有ってね。」
「ああ。」
「お父さんの会社の経営状況とかを研究対象にしたいって、もちろん手伝えるところは手伝うからと。」
「えっ、どこの学生?」
「そう言えば矢野さんたち、大学の名前は言わなかった…、でも、え~と、省吾さんのお父さんの大学なのだから…、国立の筈。」
「そうか…、今、手詰まりな感じがしてるから…、梨乃、返事は何時までに?」
「何時でも良いって言ってみえたけど。」
「そうか。」
「父さん、乗り気?」
「まあ、藁にもすがりたい状況…、でも、まだ余力はある、ぎりぎりになってからでは遅いんだ…。
 きちんとした大学との繋がりはプラスになるからな。」
「明日も勉強会に行くけど。」
「そうか、よし明日は父さんが送って行って、学生さん達と話しをしてみようかな。」
「うん、じゃあ、私、連絡入れておく、みなさん喜ぶと思うわ。
 私も頑張るからね。」
「ふふ、梨乃のそんな笑顔、久しぶり、母さん嬉しいわ。」

 へへ、そうかも、そうだ、省吾さんも紹介しなくちゃ、自分の彼氏って紹介出来ないのが残念だけど…。
nice!(10)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

梶田梨乃-03 [F組三国志-04]

「では改めてお願いします。」
「はい、矢野さん。」
「で、こちらが、須田沙里名さんと高山剛、俺たちの仲間ってとこだな。
 少し紹介しておくと、須田さんはうちの大学じゃないのだけど、大学の特待生なんだ。
 で、高山はうちの経営学部。」
「えっと、こちらが梶田梨乃さんだよ。」

 えっ、大学の特待生と経営学部生?
 どういうことかしら?

「梶田さん、僕らは梶田さんちの事情を詳しく知ってる訳じゃない。
 だけど、君の役に立てないかと思ってね。」
「は、はい、有難うございます。」
「須田さんの家は経済的にずいぶん厳しい状態なんだ、今もね。
 でも、彼女は自分の力で大学に通ってる。
 大学の特待生になるためにがんばったし、アルバイトもしてる。
 あっ、特待生って知ってた?」
「はい、何となくは…、でも自分とは無関係かと思ってました。」
「君が本当に大学に進学したいと考えてるのに、お父さんの会社がどうにもならなくなったとしたら、考えに入れるべきことだと思うよ。」
「それで…、あっ、須田さん、ごめんなさいお忙しいのに。」
「ふふ、梶田さんがあやまる必要はないのよ。」
「でも…。」
「須田さんは昼食だけでなく夕食もここで済ませていくしね。」
「はは、それじゃ、私、食い気ばっかみたいじゃん。」
「まあ、須田さんから色々話しを聞けば、学習にもっと前向きになれるかもしれないよ。」
「はい。」
「高山は、とりあえず呼んでおいた。」
「えっ、とりあえず、ですか?」
「君はお父さんの会社の事情、どれくらい分かってる?」
「えっと、特殊な技術を持ってる工場なので、それほど大きくなくても今までは結構安定していたみたいです。
 でも、ここのところ資金繰りが悪化したとかで、詳しくは分かりませんが。」
「君がお父さんの跡を継ぐということは?」
「特にそういう話しは出てません、弟が二人いますので…。
「でも、会社のことは直接君の人生に関わって来ることなのでしょ?」
「はい。」
「大学へ進学するとしたら、何を専攻したいと思ってる?」
「まだ…、高校でそれを見つけられたらと思っていました。」
「例えば、君自身がお父さんの経営する会社のことを考えるということはどう?」
「えっ、そんなこと、考えたこともなかったです。」
「そりゃ、高校一年生だもんな。
 でもさ、高校生だって、経営のこととかを学んだりしても良いんじゃない?」
「そっ、それは…。」
「これは俺たちからの提案、まだ君の家の事情もよく知らないから、少々無責任な提案かもしれないけどね。
 大学で経営学とか学んでいても、実際の経営に関われる機会なんて決して多くない。
 でも、君のように経営者の娘なら、本人に意欲が有り、親の理解が得られれば、本当に生きた経験が出来ると思うんだ。
 本での知識と実際の現場の経験とは全く違うからね。」
「はい、あ、そうですよね…。
 父は…、学校で成績優秀な子を雇っても、現場の経験はないから研修が大変だと言ってました。」
「もし、君が経営学とか学びたくなったら、高山は喜んで力を貸すし、えっと、ちょっと厚かましいお願いなんだけど…、なあ高山。」
「うん、教えることで、自分の理解も深まるから力を貸すよ。
 で、これは君のお父さんとの交渉になるのだけど、実際の経営状況とか研究対象として、お父さんの会社を見させて貰えないだろうかと思ってね。」
「えっ。」
「矢野から君の話しを聞いてね、君の手助けだけでなく、一つの会社の建て直しなんてことに関われたら自分にとって、すごくプラスになると思ったんだ、無理は言えないけどね。」
「みなさん…、私のこと…、私のため…。」
「はは、一度に色々話しちゃうから、梶田さんが戸惑っているじゃないか。」
「省吾さん…。」
「梶田さんは、まず須田さんから特待生のこととか聞いてみたらどうかな。
 高山さんの話しは明日でも、テスト終了後でも良いからね。」
「は、はい、省吾さん、有難うございます。」
「じゃあ須田さん、お願い。」
「はい、省吾さん。
 さ、梶田さん行きましょ、美咲ちゃん部屋は?」
「こっちよ。」

 省吾さんが…。
 なんか自分ではついていけない話しが…、でも自分のことなんだ、自分の為のことなんだ。
 みなさん、私のために色々考えて下さっている。
nice!(9)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

梶田梨乃-02 [F組三国志-04]

「梶田さん、今日の学習予定は?」
「まずは英語のつもりで…。」
「私も英語、梶田さん、英語はどう?」
「そうね、テキストからの問題ならなんとか、でも、先生オリジナルの文章からって出題もあるみたいだから…。」
「実力問題が出るのよね~。」
「先輩たちは、毎回そこで苦労してるみたいって、栗原さんが言ってました。」
「一夜漬けじゃどうにもならないってことね。
 ね、椅子と座布団、どっちがいい?」
「えっと、座布団の方が落ち着くかしら。」
「じゃあ、隣の部屋へ行きましょう。」
「ふふ、ほんとにご自身のお宅みたい。」
「はは、まあ、省吾のお父さまお母さまの、お許しは得てありますからね。」
「ほんとに結婚するのですか?」
「えっ、あ、そうね、出来れば…。」
「へ~、真剣なんだ。」
「うん、さ、英語やりましょ。」

 秋山さん、本気だ。
 そりゃあ、省吾さんだからな。
 大人で、頼れる人、他の男子たちとは随分違う…。
 あっ、英語やんなきゃ…。

 …、ふう、予想問題の再確認は出来た。
 でも、実力問題がな~、去年の問題も時間があれば、決して難しすぎるって感じじゃないけど。
 量があって大変そう…。

「美咲ちゃん、そろそろお昼だけどどう?」
「あっ、早川さん、そうね、梶田さんは、ごはん早めがいい? 遅めがいい?」
「私はどちらでもいいです。」
「じゃあ、ゆっくり目にしようか。」
「はい。」
「早川さん、私たちは後でいいです。」
「了解、勉強の方は、はかどってる?」
「私はまあまあかな、梶田さんは?」
「一通りは出来たけど、後は実力問題に向けてってとこです。」
「英語か、あらっ、美咲ちゃんは英語の本を読んでたの?」
「ええ、省吾が選んでくれたの、小学生の頃に読んでた本なんだって。
 ふふ、省吾の六年生頃の字で単語の意味とかのメモ付き、なぜか高校一年生の私に調度いいみたいなのです。」
「へ~、省吾くん、英語も…、英才教育ってことか。」
「本人は門前の小僧って言ってたけど。」
「何、それ?」
「門前の小僧習わぬ経を読む、家庭環境のおかげだそうで。
 赤澤のお父さまは、このご自宅に大学関係の人をよくお招きになるそうなの。
 その中には海外からの留学生もいらしてね。
 だから本当にちっちゃい頃から英語にも接していて、はは、英語ほどかったるい授業はなかったのだとか。」
「そっか、環境ね、後で省吾くんにも直接聞いてみようかな?
 あっ、そうそう、梶田さんだったわよね。」
「は、はい。」
「食後にもう一度面接をお願いしても良いかしら?」
「はい。」
「じゃあ、二人は十二時半過ぎからゆっくり昼食にしてね。
 まずは飢えた男の子たちのおなかを満たしてくるわ。」
「はは、よろしくお願いします、早川さん。」

 省吾さんは英語も出来るんだ。
 う~ん、家庭環境か…。
 うちだって…、父さんは、大きくないけど会社の経営者だし。
 前は恵まれてると感じてた…。

「梶田さんも、本を読んでみる?」
「あっ、省吾さんの英語の本ですか?
 そうですね、見せて貰えますか。」
「こっちは、もう読んだからどうぞ。」
「ありがとう。」

 へ~、そんなに難しくないけど、うん、高一に調度いいレベルかも。
 これが省吾さんの小学六年生の頃の字か、ふふ、字だけなら普通の小六かな。
 でも、ちゃんと分かりやすくしてある。
 さすがだなぁ~。
 私んちにも、お母さんが買ってくれた教材が色々あるけど…。
 最近、チーム正信の人たちと学習してると、すぐにポイントはどこだって話しが出てくる。
 大切なところ、重要なところ…。
 英語学習のポイントって考えもあるのね。
 実力つけるなら、色々な文に接するってことだろうな。
 直接テストの点に結びつかなくても。
 あっ、ということは秋山さんも、一通りの学習は済んでるってことか…。

 …、この本、結構面白い。
nice!(8)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

梶田梨乃-01 [F組三国志-04]

「梶田さん、おはよう。」
「おはようございます、秋山さん。
 今日は、ご迷惑をおかけします。」
「はは、ご迷惑だなんて気にしないで、勉強会を生かしてくれたら嬉しいわ。
 さ、省吾んちまで案内するね。」

 色々迷ったけど勉強会に来てしまった。
 テストに向けてみんな頑張ってる。
 私もそれなりにはやってるけど。
 やっぱ、みんなほどには頑張れてない気がする。
 大学へは行けそうにないから…。
 父さんの会社は…。
 それでも、私には学費のことは心配しないでって、父さんも母さんも言ってくれる。
 そうは言われても弟たちがいるし…。
 あっ、ここなんだ、省吾さんの家。

「さあ、どうぞ。」
「はい、おじゃまします。
「そこのスリッパ使ってね。」
「ふふ、秋山さんの家みたい。」
「へへ、さあ、こっちよ。」
「あっ、梶田さんおはよう。」
「おはようございます。」

 省吾さんだ、あらっ?
 隣の人は誰かしら、クラスのみんなは?

「矢野さん、梶田さんだよ。」
「おはようございます、矢野です。」
「は、はい、おはようございます。
 えっと、クラスのみんなは?」
「近くの生涯学習センターよ。
 梶田さん、大学生の調査って話しをしたでしょ。」
「はい。」
「梶田さんには、先にそっち、矢野さんたちへの協力をお願いしたくてね。」
「あっ、はい。」
「あっ、そんなに硬くならないで、僕らの調査は高校生の意識調査って感じで、普段の学習とかに関して思ってることとかを簡単に聞かせて貰えたらって程度だから。」
「はい。」
「で、省吾と美咲さんに聞かれたくなかったら席をはずして貰うことになってるけど、どう?」
「えっと、出来れば一緒にいて貰いたいです。」
「了解、でも二人は横で他ごとしてるからね。」
「はい。」
「まずはちょっとした確認から…。」

 大学生の調査か…、ちょっと緊張する。

「…、ということは…、自分では、学習に対して真剣には取り組めてない、と思っているのだね。」
「はい、クラスのみんな、すごく頑張っていて、私なんか…。」
「真剣に取り組めてない…、えっと、何か理由とか有りますか?」
「それは…。」

 それは、ここで話すようなことじゃない…、矢野さんの調査とは関係ないだろうし…。
 私の問題は、どうにもならないことだから…。
 ここまでは、何となく聞かれるままに答えたけど…。

「梶田さん、話しにくいことだったら私たち席をはずそうか?」
「矢野さんは、こう見えても結構頼れる人だからね。」
「おい、省吾、こう見えてもはないだろ。」
「…、でも学習に直接関係することでもなくて…。」
「はは、学習に関係ないことを、むしろ教えて欲しいかな。」
「えっと…。」

 今まで人には話してこなかった。
 でも…。

「父の会社が…、あの…、思わしくなくて…。」
「あっ、そうだったの…。」
「だから、進学は無理かなって…。」
「う~ん…、そうなのか…。
 そうすると…、とりあえず今の話しはここまで、後でもう一度、他の仲間を交えて話しをしたいけどいいかな?」
「は、はい。」

 何か急に終わった。
 でも、意味深…。
 続きがあるのかな…。

「梶田さん、美咲とやってて、俺は矢野さん達と話しがあるから。
 美咲、頼むな。」
「うん。」

 省吾さん達は出て行ってしまった。
nice!(8)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

A Night in Tunisia [近畿大学附属高等学校吹奏楽部]



「今回はA Night in Tunisia、邦題はチュニジアの夜。」
「ふふ、昨日YouTubeで探して聴いた中に有ったわ。
それを、たまたま聴いてた父はプロの楽団だと思ったそうよ、高校生レベルじゃないって。」
「はは、普通そう思うよ。
 私は、A Night in Tunisiaを聴きながら他校の吹奏楽部とどこが違うのだろうと素人なりに考えてみた。」
「結論は出たの?」
「演奏の上手な高校は幾つか有るが、JAZZテイストの曲をノリ良く演奏し切れる部は少ないし、ソロがね、ただ上手いだけでなく、曲に馴染んでいてまとまっていると思うんだ。
 部のサイトに『小谷康夫先生の指揮のもと、近高soundに磨きをかけております!』と有るが、その近高soundは確立されたものになっている。
 小谷康夫先生始め指導されている方々の力なのだろうな。」
「そっか、中学や高校の部活は指導者の力量がはっきり表れるものね。」
「ああ、良い指導者がいて実績が出て来ると力の有る生徒が入学して来て、レベルを維持出来るという側面も有るのだろう。
指導者が変わると、演奏がガラッと変わってしまうという話を聞いた事も有る。
大した指導力が無いのに精神論ばかりの指導者がブラック部活を生み出していそうだ。」
「小谷先生は演奏中にソリストのマイクを気にされる姿が印象的だし、楽しい演奏を考えておられるのが分かるわ。
指導の中でも重視されておられるのではないかしら。」
「うん、楽しい演奏、演奏者も聴き手も楽しめる演奏って簡単ではないと思う。
演奏者の独りよがりな演奏だと、聴き手が楽しめなかったりするからな。」

「あっ。」
「どうかしたの?」
「こんな記事を見つけたよ。」
進路のミカタより
【第8回Symphonic Jazz & Pops Contest 総合グランプリ】近畿大学附属高等学校
https://mikata.shingaku.mynavi.jp/article/55586/
「ふふ、いい加減に話してた事はあながち間違ってなかったみたいね。」
「ああ、少しほっとした、海外遠征の計画も有るみたいだが、この情勢だと残念ながら難しいのかもな…。」
「第8回の演奏は聴けないのかしら?」
「先回の演奏は四月に公開されてるからもう直ぐかも。」

近畿大学附属高等学校吹奏楽部【公式】
https://twitter.com/kindai_hs_wind
https://www.instagram.com/kindai_hs_wind/
nice!(9)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

黒いオルフェ [近畿大学附属高等学校吹奏楽部]



「近畿大学付属高等学校吹奏楽部シリーズ四回目は黒いオルフェ、カーニバルの朝。」
「ここまで、初めて聴く曲ばかりなのだけど。」
「だろうな、初回のSeptemberはEarth, Wind & Fireというグループが1978年に発表した曲だからね。
二回目は吹奏楽の曲で世間的にはマイナー。
三回目の宝島はT-SQUAREが改名する前に出した曲で、吹奏楽に編曲されたのは1987年頃みたい。
黒いオルフェはもっと古くて1959年なのだが、高校生がこういった曲に取り組んでくれるのは嬉しいよ。」
「過去の名曲?」
「ああ、それに新たな息吹を吹き込んでくれて全然古くないだろ。
シューマンとかだとクラシックの名曲として触れる機会が有るが、この微妙に古い時代の名曲を若い世代にも知って欲しいと思うんだ。」
「そうね、この演奏はフルートのソロが印象的、クラリネットも素敵だけど。」
「だよな、近畿大学付属高等学校吹奏楽部はソリストのレベルが高すぎ、それで少しソリスト問題を考えてみたくなってね。」
「何か問題でも?」
「今の学校教育だと、皆仲良く、でソロを避ける傾向にある様な気がしてさ。」
「う~ん、微妙ね、そこまででは無いと思うけど、小学校の先生だと一人が長くソロを受け持つなら、何人かで分担とか考えるかも。」
「高校の吹奏楽部でも個人のソロとせず、パートソロの形にする部が有ってね、下手では無くても…、ハイレベルな個人のソロとは全く違う。
近畿大学付属高等学校吹奏楽部のソリストと同等の技量を持つ人がいたとしても、それを発揮出来ないどころか、チャンスが無いのだから、よりレベルの高い演奏に挑戦する事すらしないかも、と思うんだ。
だが、このバンドではソリストになれるチャンスが有る。
先輩の演奏が素敵だから、自分も、となり、その想いが技術を向上させる。」
「そっか、横並びを尊重していては高みを目指せないのかな…。」
「まあ、価値観の相違が存在する訳で一概にどうこう言えないのだが。
 近畿大学付属高等学校吹奏楽部がパートソロを採用する時は、たまたま個人ソロに相応しい人が居なかった時の様な気がしている。
しかし、これだけの吹奏楽部だとソロを決めるのは大変だと思わないか。」
「う~ん、そこにドラマが有りそう。
大舞台で演奏する機会は多くないでしょうし、部としては最高の演奏にしたいから、シビアな人選になるでしょうね。
 誰もが抜群に上手いと認め、憧れる存在がいれば簡単に決まるかもだけど、上手な人が何人もいそうで…。」
「音だけ聴いてたら高校生とは思えないハイレベルなソリスト、卒業で入れ替わってもやっぱり上手い人がいる事が信じられないね。」
nice!(11)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

宝島 [近畿大学附属高等学校吹奏楽部]

「亜紀、文科系の部活の中でも、吹奏楽や合唱で結果を出してる部はハードだろ、ブラック部活なんて言葉もある。」
「みたいね、上を目指すとシビアにならざるを得ないだろうし。」



「でもさ、こんな演奏をしている人達は部活が大好きで楽しんでいると思わないか。」
「そうね、ただそんなに単純ではないでしょ、挫折する人だっていそうだし。」
「かもな、高校吹奏楽部の宿命で、一年毎にメンバーが入れ替わって行く、その環境下でハイレベルな演奏を維持して行くのは簡単な事ではないだろう。
音楽の場合は努力だけでは補えない感性的な要素も有るからな。
ただ、この吹奏楽部はブラックではないと思う。」
「根拠は?」
「このバンドがマーチングに取り組んでいるのかどうか知らないが、少なくともYouTubeで検索しても、そう言ったものは出て来なかった、マーチングバンドは大変だよ。」
「楽器演奏だけではないのよね、演奏を合わせるだけでも大変なのに更にでしょ。
吹奏楽コンクールとマーチンコンテストの両方にまともに取り組もうと思ったらブラック部活にならざるを得ないのかもね。」
「近畿大学付属高等学校吹奏楽部の場合、ジャズ系のコンテストと吹奏楽コンクールを目指しているが、それぐらいで調度良いと思う。」
「それでも目標を高く置くとどうしてもハードにならざるを得ないでしょ、でも、それをハードだと思わない人達が結果を出すのかしら。」
「だね、天才的な才能を持っていなかったら努力しかない。
運動部ならトレーニング方法を改善して短時間で効率良く成果を出してる部活も有るが…。」
「時間の使い方?
吹奏楽部とかだとどうなのかしら?」
「この吹奏楽部の練習状況は分からないが、個人練習、パート練習、全体練習のバランスが取れていそうな気がする。
長時間だらだらとやっても集中力が続かないから、一日の練習時間がめちゃ長いという事はなさそうな…。
まあ、憶測に過ぎない、夜遅くまで頑張ってたら御免なさい。」
「夜遅くまで頑張っていたら、それは…。」
「結局個人次第なのかな。
運動部だって、その競技が好きでたまらなかったら、少しぐらいハードでも苦にならないだろう。
逆に、やめたいのにやめられない人にとっては、そんなにハードでなくても苦行になってしまう。」
「やめれば良いのに。」
「そうは行かない事情を持ってる人もいるだろ、自分の能力に限界を感じても…。」
「う~ん、ブラックと言われる部活ってどうなのかしら?」
「ブラック部活でも、その活動によって何が得られ何を失うのか、価値観は人それぞれだから答えは無いのかも知れない。
ただ大切なのは、取り組んでいる競技にしろ音楽にしろ、それを嫌いにならない環境だと思う。」
「嫌いになったら本末転倒ってことよね。」
「ただ困った事に、幼い頃嫌々やってたピアノのお稽古が大きくなって役に立つ事が有ったりしそうじゃないか?」
「う~ん、有りそう、音楽に対する想いは年齢によって変わるものね。」
「何事でも、理想は本人が望んで取り組む事なのだけど…。」
「結局、人それぞれと言う事でしょ、何が正解かではなく、自身の経験を正解に出来るかどうか。」
「だな、高校の部活と一口に言っても様々…、一概にどうこう言える事ではないし、その結論を出す必要はないかも。」
nice!(8)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

吹奏楽 [近畿大学附属高等学校吹奏楽部]



おっ、部員が入場して来た…。
席の配置はYouTubeで見た、シンフォニックジャズ&ポップスコンテスト全国大会の時とは随分違うな。

あれっ、吹奏楽の演奏前って、こんな感じなのか?
まだ舞台上には全然揃ってないが。

しかし、なかなかの人数だよな。
これだけの人数での演奏って練習が大変だと思う。
まあ、レベルが違うから、このバンドに憧れて入部する人が少なくないのだろう。

全員が舞台に揃ったのかな?
う~ん、始まる前のこの雰囲気は期待感を盛り上げてくれる。

はは、何か不思議な感じ、すでに盛り上がりつつ有る様な…。

あっ…。





nice!(9)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

September [近畿大学附属高等学校吹奏楽部]

「なあ亜紀、近畿大学って知ってる?」
「そりゃあ知ってるわよ、志願者数日本一の大学だもの。」
「やはり近大マグロの功績なのかな?」
「どうかしら、でも、イメージは悪くないし受験し易い環境を他大学より早く考えてたみたいよ。
で、近大がどうかしたの?」
「YouTubeでたまたま近畿大学付属高等学校吹奏楽部の演奏を見つけてさ。」
「えっ、大学の話ではないの?」
「ああ。」



「うわ~、うちのブラバンとは雲泥の差だわ。」
「はは、同じ楽器でも演奏する人によって大きく違うだろ。」
「そうね。」
「この、近畿大学付属高等学校吹奏楽部は、シンフォニックジャズ&ポップスコンテスト全国大会で、2016年大会から三年連続で総合グランプリを受賞、2019年の大会は特別招待演奏として参加、2020年大会でも総合グランプリ受賞という成績を残していてね。
ちなみに、紹介させて貰った演奏は、2019年の特別招待演奏からSeptember。
参考までに、学校のサイトは…
https://www.jsh.kindai.ac.jp/hs/school-life/club/brassband/
吹奏楽のコンクールやコンテストは色々有るが、ジャズのビッグバンドとしては間違いなく高校日本一だと思うのだよ。」
「なるほど、カッコいい演奏だものね。」
「亜紀、この手のバンドは人数が多ければ多いほど大変だと思わないか?」
「そうね、ここまで合わせるのは簡単では無いでしょう。」
「更にソリストが上手くて、音だけ聴いてると高校生の演奏だという事を忘れてしまう。
この人数でこれだけの演奏を聴かせてくれる日本一の高校生バンドに祝福あれだな。」
「プロにも負けてないってこと?」
「そんな比較は無意味さ、良いと感じた演奏はプロアマ関係なく良いのだよ。
ソリストの演奏を聴いていて、初めてSonny Rollinsを聴いた頃を思い出して久しぶりに聴いてみたが自分的にはどちらも好きなんだ。」
nice!(11)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー
前の10件 | -