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大銀河帝国-11 [シトワイヤン-33]

姫さまが臨時政府を立ち上げてから一年。
国の復興が順調に進んでいるのは、大銀河帝国を支える多くの人達の思いによる。
自分達を大きな愛で包み込み癒して下さる舞姫さまの国がみすぼらしいままではならない。
姫さまが、中途半端な支援では生活が向上しないまま不満を募らせ、また内乱状態になりかねないが、逆に多くの投資を集中的に行えば経済効率が高まり効果的だと話された事も有り各国の企業家たちが立ち上がってくれた。
姫さまの中東各国歴訪により中東は安定の方向に向かいつつある。
ならば、今後中東エリアでマーケット規模が拡大して行く事は明白。
そんな状況下、姫さま主導の新国家は大きな可能性を秘めていると判断した彼らは、暫定政府と将来像を見据えながら開発計画を策定し進めている。
海辺では複数の外国資本による海水淡水化事業がスタート、現地の元兵士たちを教育しながら建設工事が進む。
同時に進行している工場の建設は、ヨーロッパからの難民帰還事業とリンク。
難民問題に頭を悩ませて来た各国は難民を減らせると有って協力的。
人を帰すだけの事業とはせず帰還後の生活に配慮し、市民としての教育や職業訓練をしてくれている。
就職を決めて母国へ帰る人達の帰還費用を企業が負担していることも有って積極的だ。
予算は、姫さまの祝福効果で大きく減った犯罪関連から転用。
他国からの難民が、母国では無く姫さまの新しい国で暮らしたいと希望するのも自然なこと。

「姫さま、難民の帰還による人口増加はバランスが取れていますね。」
「ええ、帰還者を受け入れる態勢に各国が配慮して下さっています、お礼の為にヨーロッパ訪問をしたいです。」
「はい、その様に指示を、姫さま専用機の稼働率がこれほど高くなるとは思ってなかったのですが、お体の負担になってはいませんか?」
「長時間のフライトにならないスケジュールを組んで貰っていますし、どの国でも至れり尽くせりの歓迎をして下さいます、大銀河帝国の国民ばかりですからね。」
「世界は大きく変わりました、姫さまの祝福を感じた人達の国とそうでない国という枠組み、姫さまの調停で中東全体が落ち着いて来ましたので、中南米やアフリカからの招待にもそろそろ応えて頂けたらという声が強まっています。」
「そうですね、この国は対立していた民族という意識が薄れて指導者の教育も進みました、もう臨時政府から臨時の文字をとっても問題ないと思います。
中東全体が安定の方向に向かっていますので、私の活動エリアを広げましょう。」
「お願いします、国境や人種を越え、姫さまを慕う人達は地球市民となろうとしています。
地上の全てとは行かなくとも、姫さまを女王と頂く大銀河帝国の下に多くの地球市民が結集すれば、多くの無駄を省き色々な意味でバランスの取れた地球を目指せると思うのです。」
「既存の軍隊を兵器を持たない地球防衛軍に移行させ、大銀河帝国領にと考える小国からの打診も来ていますものね。」
「周辺諸国の情勢が変わり、仮想敵国すら無くなって軍隊は必要ない、経済的な弱さを克服しユートピアにしたいという事でした、多くの人達が国の在り方を考えていますので大銀河帝国はリアルに領地を拡大して行くと思います。
領土問題で揉めている国々も、その落しどころとして、関係する両国と大銀河帝国、三か国による共同統治を模索し始めています。
これから益々大銀河帝国の影響力は大きくなって行くでしょう。」
「当分の間、世界中を飛び回ることになりそうですね。」
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大銀河帝国-12 [シトワイヤン-33]

舞姫さまの祝福を感じた人々は戸惑いもしたが確実に良い方向へ変化しつつある。
個人差は有るものの人としての内面が恰好良くなっているのだが、それと共に大銀河帝国ではユートピア計画が進められている。
清香村から苗川市全域へ広がって行った、桃源郷、ユートピアで暮らしているという思い、それは環境では無く意識の問題で有り、贅沢三昧出来るのがユートピアでは無く、人と人が尊重し合う中で形作られて行くのが理想郷。
市民としての意識改革に取り組むことが、地上をユートピアにする一番の近道なのだと、大銀河帝国や地球市民党、舞姫フレンズをリードする人達は考え、その思いを世界中に広めつつある。
富める者はその財力を人の為に活かす事を考え、貧しき者は助けを得ながら自身の出来る事を考えている。
舞姫さまと共に歩まんとする市民はすでに膨大な人数になった。

「和馬さん、万里も大銀河帝国も何の強制もしないのに…、いえ強制しないから順調に拡大して来たのでしょうか?」
「ああ、そう思うね、姫さまを始め大銀河帝国に関わっている者達は、思想的なことを人に押し付けない姿勢を守っている。
宗教だって、信仰の自由を大前提にして来た。
もっとも、神の如き姫さまの存在を前に、適当なことを言って金儲けして来た宗教家は職を失いつつ有るようだがな。
中南米やアフリカでも同様に広がって行くだろう。」
「でも、あまりに環境の悪い所へは万里を行かせたくないです。」
「まずは、キャッシーが建造を進めさせていた最新型の飛行船で空からの視察になるのだから大丈夫じゃないかな。
気象状況を見ながらの運行になるが、空から祝福を与えて頂くことが中心になる。
招待してくれた国としても、地球上に一人しかいない神の如き存在を丁重に扱ってくれるだろう。
映像では、美しき姫さまの姿を沢山見て来ただろうし、巡礼者として祝福を感じた人も少なからずいる筈だ。」
「和馬さんは、このまま地球が一つになって行くと思いますか?」
「勿論さ、私達には姫さまがいるからね。
姫さま抜きでは絶対に不可能だったことを、大銀河帝国は幾つも成功させてきた。
これから先、更にユートピア計画は進んで行くだろう。」
「ただ、人口の増加はどうでしょう、中東の住環境は改善されていますが、平和になって地球のキャパシティを越えてしまわないでしょうか。」
「姫さまの祝福を感じた人でも、そこからの行動にはバリエーションが有るだろ。
特に犯罪者の中には、フロンティアスピリッツに目覚める人が多いと聞いている。
砂漠化を食い止めようという動きも。
もし、このまま人口が増え続けるのであれば、人類は宇宙を目指すのではないかな。
海水温が上昇し地球の環境だってこのままとは行かないだろ。
姫さまが大銀河帝国というという国名を推されたのは、将来を見据えての事だと思うんだ。」
「人間の可能性を…、以前の世界では考えられなかった人類を宇宙に進出させるということですか…。」
「何百年後になるか分からないが、宇宙に広がる文字通りの大銀河帝国、その一歩を踏み出す時が来たのではないかな。」
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大銀河帝国-13 [シトワイヤン-33]

キャッシーが用意した最新式の大型飛行船はファルコン号と名付けられ、気象条件さえ良ければ長時間飛行を続けられる。
補給用小型飛行船を簡単にドッキングさせられるので地上に降りる必要は少ない。
その小型飛行船は、すでに中南米で七機が遊覧飛行や宣伝飛行を行っていて、ファルコン号のサポートにも当たる。
姫さまの中南米歴訪に向け、飛行船の地上基地を各地に建設したのは、この小型飛行船の運用とファルコン号の姉妹機を観光目的で就航させる為でもある。
豪華客船による海の旅と飛行船を利用する空の旅を組み合わせることを可能にする為、地上基地は港の近くにも建設された。
ファルコン号の雄姿を見れば誰もが飛行船の旅をしてみたくなるだろう。
このファルコン号には隼の為の部屋が有り、姫さまに贈られた隼がこの機体のシンボルともなっている。

「お姉ちゃん、飛行船はヘリと違って静かなのが良いね。」
「気に入った?」
「うん、低速航行時は室外デッキで遊べるでしょ、隼が部屋にいる時は地元の鳥が来てくれて、昨日は珍しい鳥に出会えたとカメラマンが喜んでたのよ。」
「のんびり空の旅というのは飛行機では味わえない感覚よね。
キャッシーが造らせたから、客室は豪華ホテル並み、オフィスとしての機能も充実していて、ずっと暮らすのも有りかしら。
今回の旅で問題が無ければ、アフリカにも飛行船の地上基地を展開して行く計画だけど、アフリカで野生動物を保護してる団体からは舞姫さまに早く来て欲しいとね、前向きに考えるとは伝えて貰ったけど、どう?」
「アフリカは問題が多くて…、そうね、人間の前に野生動物の保護を優先させたいかも。
人間に対して支援を行うと、人口が増え過ぎてしまいそうでしょ」。
「そうよね…、和馬さんは人口問題の先に、人類が宇宙へ移住して行く可能性を話してたけど、万里はどう思う?」
「地球の環境がこの先どうなるかは分からないよね。
住環境の悪いエリアではドームで覆われた都市を真剣に考え始めている、ならばその都市を、もっと過酷な宇宙空間や月や火星に造っても良いとは思うかな。
当然莫大な費用が掛かるけど、軍事費を減らして経済活動を活発にして行けば出来なくはないし、新たな雇用の場を生み出すことにも繋がるのよね。」
「万里は宇宙で暮らしてみたいと思う?」
「宇宙と言っても、まだ可能なのは地球の表面みたいな所でしょ、う~ん、短期の滞在なら楽しめるのかしら、でも長期間は飽きると思わない?」
「そうね、今の国際宇宙ステーションの規模では窮屈だろうし。」
「それでも、月の地下に月の資源を利用した宇宙船を建造出来るような工場を作れたらとは思うの。
平和な暮らしに満足出来ない人達のフロンティアスピリットを満足させる為にもね。」
「どんな資源が有るのかにもよるのでしょうけど、このまま地球が平和になって行けば、それぐらいの余裕は出来そうね。
まずは各国の月基地計画がどう進んで行くのかだけど。」
「大銀河帝国としては地球の環境改善に予算を回したい、でも、どちらも大規模な事業、それで世界の雇用状況が改善されて行くのなら積極的に進めて行きたいかな。」
「そうね、大銀河帝国中央研究所の状況を確認して、各国政府の方針も聞いてみるわ、大銀河帝国の方針を固めて行くべきでしょ。」
「うん、今までは中東関連に目を向けて貰って来たけど、次のステップだけでなく、その先も見据えて行かないとね。」
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大銀河帝国-14 [シトワイヤン-33]

大銀河帝国は人類全体の課題に取り組んでいる。
大銀河帝国の建国以来、様々な分野で、一つの地球、その地球市民という考え方が広まりつつ有り、世界統一通貨を、国家間に於ける貧富の差を越えて成立させることが出来ないかという研究が始まっても、それを誰も笑わないぐらいに、私達の地球は変わろうとしている。
行き過ぎた競争社会を生み出してしまった自由主義経済、計画通りに行かなかった計画経済の長所を生かそうという人が増えつつ有り、彼らは経済的なバランスを取りながら社会を発展させて行く道筋を模索中。
実験的な取り組みも行われている。
富裕層が、貧困層を養いつつ働かせ教育を施すと言った形は、身分の違いを印象付けるものだが、自力で貧困状態から抜け出せない人にとっては守られる安心感が有り決して悪いことではない。
舞姫さまの祝福を感じ癒された人達が、その価値観を大きく変えた結果、ホームレスが極端に減少した都市も少なくない。
掃除の仕事で雇われた元ホームレスは町を綺麗にしている。
その作業を進めた公務員達は、元から貧困層を養って行けるだけの経済力が有った事に気付かされたという。
様々な改革が進んではいるが、思いっ切り過渡期だということは誰しもが理解していること。
大銀河帝国から発信される社会改革の現状は、その課題と共に多くの人が共有認識。
そんな世界の状況を、舞姫さまは空中宮殿とも呼ばれ始めたファルコン号上で確認している。

「自分の利益、家族の利益、自分の属する集団の利益、そして自国の利益を考えるのは人間として当たり前のことでしたが、変わりつつ有りますね。」
「全て姫さまの力による所だと思います、人が利己的なのは人の本能に由来すると考えていましたが、その変化は、まさしく人類が進化しようとしている証ではないのでしょうか。
進化しなければ、有り得なかった様々な改革が進行中。
皮肉なもので独裁者と言われていた人が姫さまの信奉者となった国では改革の速度が速く、改めて指導者の資質を考えさせられています。」
「独裁者では有りませんが王子さまの王国も活気づいていますね、民主的な選挙で選ばれた指導者の力量が必ずしも高い訳ではないという事が証明されてしまいましたね。」
「はい、選挙に勝てる力と、政治家としての判断力や指導力といった資質とは別物です。
日本でも、無能な大臣を量産した政権が有りました。
政権を維持する為にやむを得なかったとは言え、人間的にもまともな大臣に失礼なレベルで、まあ、市民政党若葉が政権を取る後押しになってくれた訳ですが。
今は、姫さまと共に歩める国、もしくは軍備を無くし大銀河帝国領となる道を求める人が増えているとの報告が上がって来ていますので、まだまだ国際情勢は変化して行きそうです。」
「そうですか、そんな地球市民の皆さんには、このファルコン号から見える夕日を、映像では充分伝わらないとは思いますがお見せしたいですね。」
「はい、ファルコン号からの映像を楽しみにしている人は多いのですよ、映像スタッフは美しき地球をテーマの一つにし、姫さまの映像だけでなく空から見た熱帯雨林の様子も届けています。
並行して森林火災の現場がどうなったのかを、地球温暖化の視点から紹介する作品を制作しています。」
「熱帯雨林を燃やして作った畑は充分な収益を上げているのでしょうか?」
「中東の畑よりコストパフォーマンスは良さそうですが、大きな利益には至ってないでしょう、我々としては熱帯雨林を大切にして欲しいです。
この国でも改革が進んで行くと思うのですが、姫さまの影響を受けにくい麻薬使用者が少なからずいますので時間が掛かるかも知れません。」
「改革の進んでいる地域では薬物の使用量が大きく減っているそうです、この辺りの人達の収入にも影響を与えてるのでは有りませんか。」
「ええ、麻薬による自分達の収入を大きく減らす切っ掛けを作った姫さまの乗るファルコン号を、姫さまに癒されながら見上げ、複雑な思いをしている人が大勢いるでしょう。
彼等には別の仕事を見つけて上げる必要が有ります。」
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大銀河帝国-15 [シトワイヤン-33]

中南米の旅には時間を掛けている。
姫さまには空から全土に祝福をもたらして頂きたいと、祝福を感じられるエリアの範囲を確認しながら航路を設定したが、気象状況による修正をしながらの旅。
今回は聖地が空を飛んでいる様なもので有り、巡礼者とならなくても待っていれば良い。
これは巡礼者に対応するこちらの手間を省くという利点がある。
勿論ビジネスチャンスでは有るので、舞姫さまグッズの販売部隊はファルコン号が通り過ぎたエリアを幾つにも分かれて行商の旅を展開中。
彼らはグッズの販売だけでなく情報収集を行い、MAIHIME TOWNの情報センターに送っている。
情報センターで整理された情報は、スタッフの判断で一般向けとスタッフ対象、幹部のみの三段階に分けて公開。
ファルコン号はハリケーンを避け地上基地に降りる事は有ったが、それ以外は点検作業ですら空中で行い、最新型飛行船の性能を実証している。
各国の要人は小型飛行船を利用して乗船し姫さまと謁見。
その度に、空中宮殿ファルコン号として世界中から注目を集めている。
その空中宮殿では…。

「明日の来客に関するデータはこれぐらいです、実務者協議で問題は無く、今までの国と同様、大銀河帝国との国交は結ばれるでしょう。
行商部隊の売り上げは予定以上ですので、舞姫さまの社、大使館、姫さまグッズの製造販売拠点などの建設は、この地でもすぐに取り掛かれます。」
「姫さま、昨日、補給船で届いた新作衣装に問題は有りませんでした、カメラマンからは朝日か夕日を絡めて撮影したいとのことですが、よろしいでしょうか?」
「天気は良さそうです、明日の朝、お客様方の到着前に済ませましょう。
同時に舞の撮影も、今回、隼には大人しくして貰って、この地の野鳥を紹介する形にします。」
「分かりました、その撮影分を含めて新作DVD完成でよろしいですね?」
「ええ、今までの撮影分もそれぞれの繋がりを計算した上で、編集担当と打ち合わせして来ましたので。
その新作の利益は、森林火災対策に回して下さい。」
「そうですね、地球防衛軍の規模を拡大しないと追いつきそうに有りません。
消化活動と並行して火事を起こさせない取り組みにも予算を配分したいです。」
「火災が安定雇用の場を作り出すと言うのは微妙な話しですが、しっかり取り組んで行かないと、大きな焚火をしながら地球温暖化対策と言っても説得力は無いです。
鎮火後の緑地再生を計画的に進める事業も視野に入れて進めて行きたいですね。
安く買えるのなら、土地を購入して行くのも有りでしょうか。
焼けた土地を購入して緑地再生をメインに開発、乱暴な焼き畑農業から脱却して貰いたいです。」
「その辺りの事を含めて、必要ならチームの再編を考える様、指示を出しておきます。
実際に燃えてる光景、燃えた後の光景を見せられては動かざるを得ないでしょう。」
「ですね、その映像は大銀河帝国の国民で共有出来ていますか?」
「はい、姫さまが解説をして下さいましたので、遠くの火災でも他人事だと考えてはならないと、日本でも樹齢何百年という木々が火災で焼失する事の無き様、私達の森を守ろうという動きが広がっています、気候の変動により、そのリスクが高まっていると理解されていまして。」
「自然環境は人が力を加えて行かないと維持出来ない状況になっています、砂漠化を食い止め、森林を守って行く事業予算が足りないのなら、大銀河帝国として新たな事業展開を考えなくてはいけませんね。」
「国際的信用度の高い大銀河帝国です、そろそろ独自の通貨を考えても良いかも知れません。」
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大銀河帝国-16 [シトワイヤン-33]

「ねえ、万里、独自の通貨を流通させるって、今一つイメージが湧かないのだけど、好きなだけ通貨を発行出来て森林火災対策に予算を回せるってこと?」
「発行し過ぎると価値が下がるからバランスを考える必要が有るの。
今回立ち上げた作業チームとの話し合いでは、今ある三つの大銀河帝国領の国と、これから帝国領に入る国、それぞれの通貨はそのままにして、帝国が保有する外貨の額を基準に発行するのだけど、当面動くのはネットワーク上の数字だけで、紙幣は発行しないし、硬貨は記念硬貨だけにするのよ。」
「キャッシュレスってことなのね、記念硬貨は?」
「勿論、外貨獲得が目的だけど、国内では、そのまま流通しても良いのよ。
始めは主に領国内と領国間の決済に使うのだけど、これを機に、主食や生活必需品の価格を安定させる為、帝国政府が物価統制をして行く方向で話が進んでいてね、贅沢品は自由競争のままにして、当面は経済を安定した成長状態に誘導して行く実験みたいなことになるのだけど。
真面目に働いた領国民が年に一度ぐらいは海外旅行を出来る水準を目標に置いてみようという方向なの。
海外の大企業が破綻した場合の影響を最低限に留めるシステムを考えながら、私達が作り出した復興景気を持続させ、国民全員が中流意識を持てる社会を目指してね。
安定した国の安定した通貨となれば、子ども銀行券レベルから世界的に通用する通貨になって行く、それからが問題かな、気候変動で農作物の価格が大きく変動した時とか、一国の経済破綻とかに大銀河帝国がどう対応して行くか、すでに世界中の国で帝国の国民が経済活動をしている訳でしょ。」
「大銀河帝国の誕生により、経済学はその根底から見直す必要に迫られているのよね。
多くの人が地球市民として意識を変えて…、万里の一言で世界が大きく変わりそうだわ。」
「そうなのよ、気軽におしゃべり出来なくなってしまったな。」
「ふふ、万里の一言で普通のクッキーがバカ売れした事が有ったわね。
それで、新通貨はどんな名称になるの?」
「色々な案が出ているのだけど、今の所はコンが有力かな。」
「コン?」
「漢字では根っこの根、ファルコンのコンでも有るのだけど、ユーロみたいに分かり易くないのよね。
一コン、一ドルでスタート、コンドルに掛けてるとか冗談みたいでしょ。」
「はは、冗談なのね、でも、万里が宣言したら世界中の人が受け入れて…、世界経済に影響はないの?」
「すぐには大した影響力を持つ通貨にならない、でもいずれは、と言う事でスタッフ達は様々なシミュレーションを展開してるのよ。」
「めんどくさいから、世界統一通貨とかに出来ない?」
「キャッシュレス化が進めば可能性は有るのかな、でも、停電時のお買い物とか問題は幾つか残ってるでしょ。」
「そっか、人類は電気に依存し過ぎているということかしら。」
「そうよ、もしもの時は自転車型人力発電装置、お姉ちゃん頑張ってね。」
「う~ん、あれを飛行船に取り付けさせた人の感性にはついて行けないけど、万里の為なら頑張るわ。」
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大銀河帝国-17 [シトワイヤン-33]

空中宮殿での生活はのんびりしたものとなっている。
中東を中心に各国を飛び回っていた頃とは打って代わり、姫さまに会いたい人が小型飛行船でやって来るが、そこに色々制約が有るので来客は多くない。
それでも、多くの情報が入って来ていて、最終判断を姫さまに委ねる案件もそれなりに。
姫さまは悩まず決断を下し、指示を出した後、上手く行かなかったら修正して行きましょうと話される。
その後修正が必要となる事はなく、大銀河帝国は刻刻とその体制を強固なものにしつつある。
経済的に苦しくなった小国から、大銀河帝国領として再生して行きたいという依頼が増え、それに応える為、スタッフの人数は増え続けてるが、それと共に国籍を大銀河帝国にしたいという声が高まりつつ有る。

「和馬さん、日本では認められていませんが、二重国籍というのは一般的なのですね。」
「ああ、大銀河帝国の国籍条項も二重国籍を前提に検討して貰ってるよ。
まず、大銀河帝国や関連企業のスタッフの内、勤続期間が一年以上の人が希望すれば国籍を得られる様にして行く、帝国のパスポートを持てば友好国への出入りが楽になる様、交渉して行きたいね。
二重国籍を持てない日本人向けには特別な制度を検討中、国籍は持てないが同等の扱いをして貰えるようにね。
税金の金額は個人の自由だが、金額によって医療費の個人負担比率、将来受け取れる年金額が変わるシステムになりそうだよ。」
「税という名の社会保険なのですね。」
「大銀河帝国自体が商売をしているようなものだろ、軍を持たず自治領以外に国土を持たないから普通の国より支出が少ない、地球防衛軍は大きな支出となっているが帝国だけが費用負担している訳ではないからね。
自治領でも国営企業中心に計画的な生産販売や貿易で利益を得ている、その利益を税金の代わりにして行けば、充分国を動かして行けそうなんだ、今は社会保障のシステム、医療や年金の為の税金という意味を理解して貰ってる段階、税金を払わなくても構わないが、病気の時や年老いてからの事を考えなさいとね。」
「強制しない代わりにある意味厳しいのですね。」
まあ、病気になっても最低限の治療は受けられる様に指導をして貰っている。
まだ贅沢品は国営商店でしか手に入らないから、物を買えば国が儲かるシステムでもある。
今後はそこに自由競争の原理を導入してどうなって行くかだね。
国営企業で有っても、結果を出せば昇進や昇給が有るが、国民は姫さまの信者、かつての社会主義国の様にごまかそうとする人はいないみたいだよ。」
「法律も簡単ですよね、人として正しい事をし、正しくない行いは恥ずべき事だと思え。
細かい定めが何も無いのに問題が起きてないと聞きました。」
「姫さまと共に歩みたければ、姫さまを悲しませる事は出来ないと、完全な宗教による支配と言えなくもないが、ややこしい戒律は一つもないからな。」
「こうなってくると万里の国籍問題を考えないと行けませんね、日本国籍のままで良いのか。」
「ああ、国家を超越した存在、そろそろ日本で払ってる税金を減らして良いかもな。」
「企業の本社を自治領へ移して行きますか?」
「帝国領に入りたいという小国の立て直しや帝国直属の地球防衛軍をさらに拡充して行くには予算に余裕が必要、宇宙開発費も増額したいし。」
「国民に高額な納税を強いてる訳では無いので反対されにくいのですね。」
「宇宙開発だって多くの雇用を生み出す、収益に繋がりにくくても無駄な支出ではないからな。」
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大銀河帝国-18 [シトワイヤン-33]

「和馬さん、某国からの、万里を名誉プリンセスにという話は進んでいるのですか?」
「進んでるどころか、共和国を中心に広がりつつあるよ。
大銀河帝国との結び付きを強めたいと考えてる国が多くてね。
噂を聞きつけた幾つかの王国は、王族同士結びつきを深めて行きたいと言って来てる。
智里の商売も更に繁盛するだろうな。」
「万里を中心とした、今までとは違う国家の枠組みが出来て行くのでしょうか?」
「民主主義と言っても、選挙によって選ばれた元首が国民をがっかりさせた事例は少なくなかっただろ。
姫さまを元首に出来なくても、国家の象徴になって貰えればと多くの人達が考えているのさ、何と言っても平和の象徴、帝国に国民登録した人達は、姫さまを少しでも身近な存在にしたい、その結果がグッズの売り上げにしっかり現れていると思うね。」
「もう面倒な事はやめて、地球の女王とした方が早くないですか?」
「そこまでになるのにしても、色々なステップが必要だな、アフリカ大陸の制覇は時間が掛かりそうだし。」
「ですね、ファルコン号でアフリカを旅しながら、途中で専用機に乗り換えて世界旅行を並行して行く、ファルコン号の地上基地建設の関係も有るけど、世界中の人達が舞姫さまに来て欲しいと望んでいるものね、でも万里は一人なのよ。」
「無理のないゆったりとしたスケジュールを組みながらにして行こう、ファルコン号での旅は時差を気にしなくて良いだろ。
姫さま専用機のフライト時間も一回が長くならないようにしてね。
キャッシーはファルコン号の姉妹機を増やし観光船として就航させつつ、姫さまの空中宮殿としても使って行くつもりだ、姫さま専用機で移動して別の飛行船に乗り換える、苗川でも地上基地を建設中だから、日本国内も近い内に空中宮殿で回れそうで、高級別荘の利用者達も楽しみにしているそうだよ。
気象状況による予定変更を苦としない、金も時間も有る客が対象で、小型飛行船と組み合わせた旅のプランを色々組めるとお勧めして行くそうでね。」
「あの人達が客となるのなら、直ぐに黒字かな。
豪華客船の旅は、船の娯楽施設が充実しているから楽しめるのであって、毎日海ばかり見てたら飽きちゃいそう、でもファルコン号からの景色は日々変わり、万里が呼び寄せる鳥にも変化が有って楽しいですからね。」
「ああ、本当に色々な鳥がいることを教えて頂いてるよ。
智里は、明日ハンググライダーで鳥になって地上降りるのだったね。」
「飛び立ってからそのままファルコン号に戻るのは難しいのですよ。
今回は地上に降りてスタッフと合流、買い物してから、次のお客様をエスコート、天気は良さそうなので夕方には小型飛行船で戻って来ます。」
「ハンググライダーって怖くないの?」
「気持ち良いですよ、万里みたいにのんびり浮かんでる事は難しいですが、万里は速く移動出来ません、私の性格にハンググライダーは合っているのですよ。」
「なるほどね、そういえば姫さまのドローンは最近見てないね。」
「隼を腕に掴ませ、宙に浮くのは万里の力、横への移動を隼の羽ばたき、万里的にはドローンを使うより楽しいそうで、隼に楽しいという感情が有るのかは分かりませんが、彼も嫌ではないみたいです。」
「ああ、映像で見させて貰ったよ、姫さまの体重…、はは、姫さまの体重は測定不能だそうだね。」
「万里の気分で五キログラムだったり、三十キロだったり、身長はごまかせませんが。」
「まだ成長期なのかな?」
「私にはまだ追い付きませんが、普通の人より体の成長が遅いのかも知れません。
その分長生きして欲しいです。」
「そうだよな、神の如き存在が永遠に人類を見守っていて下さったらと思うよ。」
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大銀河帝国-19 [シトワイヤン-33]

智里のエスコートでファルコン号に上がって来たのは小さな島国の元首、彼の国は人口二十万人ほどで軍隊を持たない、友好条約に基づき、有事の際は近くの国に支援して貰う。
姫さまが立ち寄ってから、大銀河帝国として経済支援をして来た事も有り、帝国の自治領として保護下に入る話が進んだ。
今回は、空中宮殿ファルコン号でその調印式。
実務者による協議が進んでいるので儀式的なことのみ、その映像を世界に配信する。
彼が小型飛行船に乗り込む所から帝国の撮影スタッフがカメラを回していて、智里はそこに彩りを添える為、地上に降りた。
調印式を前に。

「姫さまは、にっこり笑ってサインして頂ければ良いのです。」
「はい、式に問題は有りませんが、国連との関係は決着がついたのですか?」
「しばらく現状維持の状態です、自治領となって国連から脱退か、大銀河帝国を国連に加入させるとかの話は進展していません。
国連が結果を出せなかった、中東の様々な問題を姫さまが奔走し解決の方向に向かわせたのですが、我々が国連に加盟したら確実に多額の分担金を要求して来るでしょう。
しかし、国連に分担金を払うより、地球防衛軍にその費用を回した方が有効だと考えています。
国連で漠然と使われるより、確実な効果を上げられますので。」
「では、自治領となって国連脱退の方向という認識のまま、お話させて頂いて問題ないのですね。」
「はい、他の自治領も賛成しています。
姫さまのお力で、国の再生が進んでいるとの認識が広がっていますので。」
「台湾の様な国が政治的な理由で国連に加入していないのは問題ですし、その辺りの事情が今後の大きな課題だと思っています。
台湾との国交はどうなっていますか?」
「中国の指導者は、自分達の思惑が帝国によって妨害されていると考えています。
台湾との関係性によっては対立を強める可能性が有り、今は色々分析をしながら、今後の展開を検討している所です。」
「中国へ遊びに行くのはどうです?」
「下手に動くと、中国国内で舞姫フレンズとなっている人達が迫害を受けるのではないかと心配していまして。
周辺諸国を中国との国境を意識しながら飛行船で回って頂くという案が出ていますが、まだ安全が確保出来ないと、もう少し時間を掛けて行く必要が有ると思います。
指導者は姫さまの影響を恐れていますので、真面目な話、隣国で有っても近づいたらミサイルが飛んで来る可能性は否定出来ません。
人が姫さまの影響下に入ると軍事的に役立たずになる事は広く知られていますので。
帝国領になりたがってる国には、中国から多額の借金を巧妙に背負わされた国も有りまして、難しい問題が色々有ります。
今の所、一番効果的な手段としましては、国家指導者の外国訪問時、姫さまに三十キロぐらいまで近くに行って頂くぐらいしか思い浮かばないのですが、それすら警戒されてる節が有りまして。」
「国から出ないのですか?」
「はい、今は南米旅行が制限されていまして、姫さまがファルコン号での旅を終え、専用機での移動になった時、彼らがどう動くのか注目して行く必要が有ります。」
「こっそり、違う飛行機で移動して見ますか?」
「姫さまはこっそり出来ません、直ぐに祝福を感じたとの情報が飛び交いますので、姫さまが今どこにいるのかなんて世界中の人が知っているのですよ。」
「う~ん、SNSの普及も良し悪しですね。」
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大銀河帝国-20 [シトワイヤン-33]

調印式の後は、全世界に向けて配信する解説番組の収録を続けた。
今後大銀河帝国の自治領となってどうなって行くのか、新しい自治領の話題だけでなく、大銀河帝国の国籍に関する新しいルールや税制に関して、姫さまの側近で有る私達が話した。
大銀河帝国の国籍を有するのは、自治領の領民、それと条件をクリアし国籍取得を希望した帝国スタッフや関連企業の関係者。
帝国に登録しただけの国民は、まだ国籍を得る事は出来ないが、条件をクリアすれば国籍を得られる様にして行き、その条件は国家としてのシステムが整うにつれて緩和して行くとアナウンスした。
独特な税制システムは、国籍を有する者達が真面目に働くことを前提に制定することもだ。
独自の決済通貨、根(コン)をスタートさせる日程も合わせて発表、記念硬貨は一ドル一根で売り出され、ドル以外の通貨ではドルとのレートにより価格が変動する。
根は世界経済の動向を見据えながら、為替市場への参入を意識している。
記念硬貨は自治領で普通に使えるが紙幣の発行は考えていない。
キャッシュレス決済の体制を整えて行くが、停電時などは身分証の提示で商品を購入出来るシステムを考えている。
また、すでに自治領として再建を進めているエリアへは、大銀河帝国に国民登録していれば、簡単に入国できるが、長期滞在や就労に関しては制限が有ることも。
帝国に関して、国民登録した人達に知って置いて貰いたいことを一通り説明した。
番組としては、その後、各自治領の観光を宣伝するがそれは別で収録済みだ。

「お疲れ様でした、番組を見て貰えれば、今後自治領に加わる国の人達も安心出来そうですね。」
「はい、姫さまの美しさを堪能出来たでしょう。
調印式では舞うが如く歩かれていましたので、映像を通しても祝福を感じられると思います。」
「はい、舞を舞う時と同じ気持ちで臨みました、簡単な儀式では有っても地球上に平和と幸の有らんことを思いながらです。」
「有難う御座います、下に見えてる都市は治安が悪いそうです。
ゆっくり飛行していることも有りますので、良い影響をもたらしていると確信しています。」
「これから自治領になって行く国の治安はどうでしょうか?」
「元々治安がひどく悪かった訳では有りませんが、姫さまの訪問以来、どこも犯罪件数が減っています。
意識改革を進めていますので、帝国が思い描くユートピア像に近づくことの出来そうな国ばかり、今日の調印式を映像で見たら、自分達の国も早く、と思うでしょう。」
「日程調整は進んでいますか?」
「正式な日程はこれから調整になりますが、南米からMAIHIME TOWNへ移動して二か国、ハワイへ飛んで一か国、苗川で二か国と調印の予定です。
しばらく苗川で過ごして頂いた後、苗川からアフリカへ向かう途中、各自治領を訪問、また姫さまを名誉プリンセスにという国や王室との交流も進めて行きたいです。
ゆったりとしたスケジュールを考えていますので、アフリカを周り終えるのは随分先になりそうです。」
「そうですね、アフリカは民族の数や言語の多さから大都市以外は問題が多そうです、焦らずじっくりが良いでしょう、たまに苗川に戻る地球を何周もする様なスケジュールで、世界中の国々を周りたいです。」
「地球上、多くのエリアに帝国の国民がいますので、ある意味、陸地の三分の一ぐらいは帝国領みたいなものです。
中南米から国民登録する人も増えていますからね。」
「交流の無い大国には少しずつ接近して行きましょう、地球市民が統治する一つの地球を目指して。」
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