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梶田梨乃-01 [F組三国志-04]

「梶田さん、おはよう。」
「おはようございます、秋山さん。
 今日は、ご迷惑をおかけします。」
「はは、ご迷惑だなんて気にしないで、勉強会を生かしてくれたら嬉しいわ。
 さ、省吾んちまで案内するね。」

 色々迷ったけど勉強会に来てしまった。
 テストに向けてみんな頑張ってる。
 私もそれなりにはやってるけど。
 やっぱ、みんなほどには頑張れてない気がする。
 大学へは行けそうにないから…。
 父さんの会社は…。
 それでも、私には学費のことは心配しないでって、父さんも母さんも言ってくれる。
 そうは言われても弟たちがいるし…。
 あっ、ここなんだ、省吾さんの家。

「さあ、どうぞ。」
「はい、おじゃまします。
「そこのスリッパ使ってね。」
「ふふ、秋山さんの家みたい。」
「へへ、さあ、こっちよ。」
「あっ、梶田さんおはよう。」
「おはようございます。」

 省吾さんだ、あらっ?
 隣の人は誰かしら、クラスのみんなは?

「矢野さん、梶田さんだよ。」
「おはようございます、矢野です。」
「は、はい、おはようございます。
 えっと、クラスのみんなは?」
「近くの生涯学習センターよ。
 梶田さん、大学生の調査って話しをしたでしょ。」
「はい。」
「梶田さんには、先にそっち、矢野さんたちへの協力をお願いしたくてね。」
「あっ、はい。」
「あっ、そんなに硬くならないで、僕らの調査は高校生の意識調査って感じで、普段の学習とかに関して思ってることとかを簡単に聞かせて貰えたらって程度だから。」
「はい。」
「で、省吾と美咲さんに聞かれたくなかったら席をはずして貰うことになってるけど、どう?」
「えっと、出来れば一緒にいて貰いたいです。」
「了解、でも二人は横で他ごとしてるからね。」
「はい。」
「まずはちょっとした確認から…。」

 大学生の調査か…、ちょっと緊張する。

「…、ということは…、自分では、学習に対して真剣には取り組めてない、と思っているのだね。」
「はい、クラスのみんな、すごく頑張っていて、私なんか…。」
「真剣に取り組めてない…、えっと、何か理由とか有りますか?」
「それは…。」

 それは、ここで話すようなことじゃない…、矢野さんの調査とは関係ないだろうし…。
 私の問題は、どうにもならないことだから…。
 ここまでは、何となく聞かれるままに答えたけど…。

「梶田さん、話しにくいことだったら私たち席をはずそうか?」
「矢野さんは、こう見えても結構頼れる人だからね。」
「おい、省吾、こう見えてもはないだろ。」
「…、でも学習に直接関係することでもなくて…。」
「はは、学習に関係ないことを、むしろ教えて欲しいかな。」
「えっと…。」

 今まで人には話してこなかった。
 でも…。

「父の会社が…、あの…、思わしくなくて…。」
「あっ、そうだったの…。」
「だから、進学は無理かなって…。」
「う~ん…、そうなのか…。
 そうすると…、とりあえず今の話しはここまで、後でもう一度、他の仲間を交えて話しをしたいけどいいかな?」
「は、はい。」

 何か急に終わった。
 でも、意味深…。
 続きがあるのかな…。

「梶田さん、美咲とやってて、俺は矢野さん達と話しがあるから。
 美咲、頼むな。」
「うん。」

 省吾さん達は出て行ってしまった。
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梶田梨乃-02 [F組三国志-04]

「梶田さん、今日の学習予定は?」
「まずは英語のつもりで…。」
「私も英語、梶田さん、英語はどう?」
「そうね、テキストからの問題ならなんとか、でも、先生オリジナルの文章からって出題もあるみたいだから…。」
「実力問題が出るのよね~。」
「先輩たちは、毎回そこで苦労してるみたいって、栗原さんが言ってました。」
「一夜漬けじゃどうにもならないってことね。
 ね、椅子と座布団、どっちがいい?」
「えっと、座布団の方が落ち着くかしら。」
「じゃあ、隣の部屋へ行きましょう。」
「ふふ、ほんとにご自身のお宅みたい。」
「はは、まあ、省吾のお父さまお母さまの、お許しは得てありますからね。」
「ほんとに結婚するのですか?」
「えっ、あ、そうね、出来れば…。」
「へ~、真剣なんだ。」
「うん、さ、英語やりましょ。」

 秋山さん、本気だ。
 そりゃあ、省吾さんだからな。
 大人で、頼れる人、他の男子たちとは随分違う…。
 あっ、英語やんなきゃ…。

 …、ふう、予想問題の再確認は出来た。
 でも、実力問題がな~、去年の問題も時間があれば、決して難しすぎるって感じじゃないけど。
 量があって大変そう…。

「美咲ちゃん、そろそろお昼だけどどう?」
「あっ、早川さん、そうね、梶田さんは、ごはん早めがいい? 遅めがいい?」
「私はどちらでもいいです。」
「じゃあ、ゆっくり目にしようか。」
「はい。」
「早川さん、私たちは後でいいです。」
「了解、勉強の方は、はかどってる?」
「私はまあまあかな、梶田さんは?」
「一通りは出来たけど、後は実力問題に向けてってとこです。」
「英語か、あらっ、美咲ちゃんは英語の本を読んでたの?」
「ええ、省吾が選んでくれたの、小学生の頃に読んでた本なんだって。
 ふふ、省吾の六年生頃の字で単語の意味とかのメモ付き、なぜか高校一年生の私に調度いいみたいなのです。」
「へ~、省吾くん、英語も…、英才教育ってことか。」
「本人は門前の小僧って言ってたけど。」
「何、それ?」
「門前の小僧習わぬ経を読む、家庭環境のおかげだそうで。
 赤澤のお父さまは、このご自宅に大学関係の人をよくお招きになるそうなの。
 その中には海外からの留学生もいらしてね。
 だから本当にちっちゃい頃から英語にも接していて、はは、英語ほどかったるい授業はなかったのだとか。」
「そっか、環境ね、後で省吾くんにも直接聞いてみようかな?
 あっ、そうそう、梶田さんだったわよね。」
「は、はい。」
「食後にもう一度面接をお願いしても良いかしら?」
「はい。」
「じゃあ、二人は十二時半過ぎからゆっくり昼食にしてね。
 まずは飢えた男の子たちのおなかを満たしてくるわ。」
「はは、よろしくお願いします、早川さん。」

 省吾さんは英語も出来るんだ。
 う~ん、家庭環境か…。
 うちだって…、父さんは、大きくないけど会社の経営者だし。
 前は恵まれてると感じてた…。

「梶田さんも、本を読んでみる?」
「あっ、省吾さんの英語の本ですか?
 そうですね、見せて貰えますか。」
「こっちは、もう読んだからどうぞ。」
「ありがとう。」

 へ~、そんなに難しくないけど、うん、高一に調度いいレベルかも。
 これが省吾さんの小学六年生の頃の字か、ふふ、字だけなら普通の小六かな。
 でも、ちゃんと分かりやすくしてある。
 さすがだなぁ~。
 私んちにも、お母さんが買ってくれた教材が色々あるけど…。
 最近、チーム正信の人たちと学習してると、すぐにポイントはどこだって話しが出てくる。
 大切なところ、重要なところ…。
 英語学習のポイントって考えもあるのね。
 実力つけるなら、色々な文に接するってことだろうな。
 直接テストの点に結びつかなくても。
 あっ、ということは秋山さんも、一通りの学習は済んでるってことか…。

 …、この本、結構面白い。
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梶田梨乃-03 [F組三国志-04]

「では改めてお願いします。」
「はい、矢野さん。」
「で、こちらが、須田沙里名さんと高山剛、俺たちの仲間ってとこだな。
 少し紹介しておくと、須田さんはうちの大学じゃないのだけど、大学の特待生なんだ。
 で、高山はうちの経営学部。」
「えっと、こちらが梶田梨乃さんだよ。」

 えっ、大学の特待生と経営学部生?
 どういうことかしら?

「梶田さん、僕らは梶田さんちの事情を詳しく知ってる訳じゃない。
 だけど、君の役に立てないかと思ってね。」
「は、はい、有難うございます。」
「須田さんの家は経済的にずいぶん厳しい状態なんだ、今もね。
 でも、彼女は自分の力で大学に通ってる。
 大学の特待生になるためにがんばったし、アルバイトもしてる。
 あっ、特待生って知ってた?」
「はい、何となくは…、でも自分とは無関係かと思ってました。」
「君が本当に大学に進学したいと考えてるのに、お父さんの会社がどうにもならなくなったとしたら、考えに入れるべきことだと思うよ。」
「それで…、あっ、須田さん、ごめんなさいお忙しいのに。」
「ふふ、梶田さんがあやまる必要はないのよ。」
「でも…。」
「須田さんは昼食だけでなく夕食もここで済ませていくしね。」
「はは、それじゃ、私、食い気ばっかみたいじゃん。」
「まあ、須田さんから色々話しを聞けば、学習にもっと前向きになれるかもしれないよ。」
「はい。」
「高山は、とりあえず呼んでおいた。」
「えっ、とりあえず、ですか?」
「君はお父さんの会社の事情、どれくらい分かってる?」
「えっと、特殊な技術を持ってる工場なので、それほど大きくなくても今までは結構安定していたみたいです。
 でも、ここのところ資金繰りが悪化したとかで、詳しくは分かりませんが。」
「君がお父さんの跡を継ぐということは?」
「特にそういう話しは出てません、弟が二人いますので…。
「でも、会社のことは直接君の人生に関わって来ることなのでしょ?」
「はい。」
「大学へ進学するとしたら、何を専攻したいと思ってる?」
「まだ…、高校でそれを見つけられたらと思っていました。」
「例えば、君自身がお父さんの経営する会社のことを考えるということはどう?」
「えっ、そんなこと、考えたこともなかったです。」
「そりゃ、高校一年生だもんな。
 でもさ、高校生だって、経営のこととかを学んだりしても良いんじゃない?」
「そっ、それは…。」
「これは俺たちからの提案、まだ君の家の事情もよく知らないから、少々無責任な提案かもしれないけどね。
 大学で経営学とか学んでいても、実際の経営に関われる機会なんて決して多くない。
 でも、君のように経営者の娘なら、本人に意欲が有り、親の理解が得られれば、本当に生きた経験が出来ると思うんだ。
 本での知識と実際の現場の経験とは全く違うからね。」
「はい、あ、そうですよね…。
 父は…、学校で成績優秀な子を雇っても、現場の経験はないから研修が大変だと言ってました。」
「もし、君が経営学とか学びたくなったら、高山は喜んで力を貸すし、えっと、ちょっと厚かましいお願いなんだけど…、なあ高山。」
「うん、教えることで、自分の理解も深まるから力を貸すよ。
 で、これは君のお父さんとの交渉になるのだけど、実際の経営状況とか研究対象として、お父さんの会社を見させて貰えないだろうかと思ってね。」
「えっ。」
「矢野から君の話しを聞いてね、君の手助けだけでなく、一つの会社の建て直しなんてことに関われたら自分にとって、すごくプラスになると思ったんだ、無理は言えないけどね。」
「みなさん…、私のこと…、私のため…。」
「はは、一度に色々話しちゃうから、梶田さんが戸惑っているじゃないか。」
「省吾さん…。」
「梶田さんは、まず須田さんから特待生のこととか聞いてみたらどうかな。
 高山さんの話しは明日でも、テスト終了後でも良いからね。」
「は、はい、省吾さん、有難うございます。」
「じゃあ須田さん、お願い。」
「はい、省吾さん。
 さ、梶田さん行きましょ、美咲ちゃん部屋は?」
「こっちよ。」

 省吾さんが…。
 なんか自分ではついていけない話しが…、でも自分のことなんだ、自分の為のことなんだ。
 みなさん、私のために色々考えて下さっている。
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梶田梨乃-04 [F組三国志-04]

 えっと、奨学金に特待生か、私が本当に大学を目指すのなら色々道はあるってことなのね。
 それにしても…、矢野さんたちの調査、他の人たちは簡単なアンケートだったみたいなのに、私は個人面接で…、調査というよりもカウンセリング…。
 省吾さんや秋山さん、私のことを気にしてくれてたんだ。
 ふふ、省吾さんは、さりげに大学生の人達に指示してなかったかな。
 ほんとに、不思議な人だなあ。
 でも、今日行って良かった、心が晴れた。
 そうだ、チーム正信に入れて貰おうかな。
 正信くんも林くんも誘ってくれてるし。
 省吾さんも秋山さんも喜んでくれそうだ。
 私もF組のほんとの仲間に…、うん、すごくなりたい。
 でも、高山さんの話しはどうしよう…。
 父さんに話してみようかな。
 高山さんはだめで元々、取り敢えずお父さんに頼んでくれないかって。
 そう言えば、他にも考えてることがあると、帰り際に省吾さんが話してた。
 あ~、テスト勉強もしなくっちゃだし…、う~ん、こうなったら全部すっきりしてから思いっきりやろうか。
 うん、父さんに話してみよう…。

「今日はどうだったの、梨乃?」
「母さん、行って良かったわ、英語とかはかどったし、大学生の人からもアドバイスを貰えた。」
「大学生も来てたのか?」
「うん、お父さん、それでね…。
 私、経営学を学んでみてはどうかって勧められてね。」
「そうか、経営学か。」
「実は、うちのクラスに赤澤省吾、秋山美咲ってカップルがいて、二人でF組を引っ張ってくれてるの。
 その二人が、私がちょっと悩んでいることに気付いて、大学生の人に話しを持ち掛けてくれたみたいでね。」
「すまんな、進学のこととか、会社の調子が良ければ、お前が悩むことじゃなかったのに…。」
「ふふ、でも大学へは奨学金制度が有るし、がんばって特待生という選択肢も有るって教えて頂いたのよ、省吾さんが私のために特待生の大学生を呼んでくれて。」
「えっ、わざわざか?」
「そうみたい、色々教えて貰って、がんばる気になったわ。」
「良い男なのか?」
「はは、そうね、とっても、ただ残念ながら秋山美咲さんとアツアツだから…。
 でね経営学部の人からの提案っていうか、お父さんへのお願いが有ってね。」
「ああ。」
「お父さんの会社の経営状況とかを研究対象にしたいって、もちろん手伝えるところは手伝うからと。」
「えっ、どこの学生?」
「そう言えば矢野さんたち、大学の名前は言わなかった…、でも、え~と、省吾さんのお父さんの大学なのだから…、国立の筈。」
「そうか…、今、手詰まりな感じがしてるから…、梨乃、返事は何時までに?」
「何時でも良いって言ってみえたけど。」
「そうか。」
「父さん、乗り気?」
「まあ、藁にもすがりたい状況…、でも、まだ余力はある、ぎりぎりになってからでは遅いんだ…。
 きちんとした大学との繋がりはプラスになるからな。」
「明日も勉強会に行くけど。」
「そうか、よし明日は父さんが送って行って、学生さん達と話しをしてみようかな。」
「うん、じゃあ、私、連絡入れておく、みなさん喜ぶと思うわ。
 私も頑張るからね。」
「ふふ、梨乃のそんな笑顔、久しぶり、母さん嬉しいわ。」

 へへ、そうかも、そうだ、省吾さんも紹介しなくちゃ、自分の彼氏って紹介出来ないのが残念だけど…。
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梶田梨乃-05 [F組三国志-04]

「父さんここよ。」
「へ~、落ちついた、感じのいいお宅だな。」
「車は駐車場へどうぞって。」
「ああ。」

「あっ、省吾さんと秋山さんだ。」
「梶田さん、おはよう。」
「おはようございます、こっちが父です。」
「おはようございます、今回は自分たちの取り組みに興味を持って頂いて有難うございます。」
「いや、こちらこそ、娘がお世話になってるみたいで。」
「さ、中へどうぞ。」
「なるほどな…。」
「えっ、どうかされましたか?」
「いや、娘から聞いてはいたが、普通の高校一年生とはずいぶん違うなって、赤澤省吾くんだったね。」
「はい、でも普通の高校生ですよ、自分は。」
「はは、私も人を雇う立場の人間、色々な若者と接してきたからね、大学生でも、ちょっと礼儀作法から勉強し直してこいってのもいたから…。
 さすがに娘が惚れるだけのことはある。」
「ちょっと、お父さん!」
「あっ、失礼失礼っていうか、すかさず腕を組みにいくんだね、秋山さんは。
 こりゃ、確かに梨乃が付け入る隙はなさそうだ。」
「も~、父さんったら~。」
「はは、梨乃さんは素敵な女の子ですから、ちゃんとした彼氏を見つけてきますよ。」
「それはそれで、父親としてはだな…。」
「もう、大切な話しをしに来てるんだからね、父さん!」
「すまんすまん、そうだった。」
「まあ、とりあえずはお茶でも如何です、両親も紹介させて下さい。」
「うん、ありがとう。」

 父さんたら…、省吾さんのこと気に入ったみたい、でもね~。
 あっ、矢野さんと高山さん…、省吾さんのご両親か…。
 父さん、型通りの挨拶してるな~。

「娘から話しを聞いたのですが、今一つ、そうですね、組織的なこととか、よく分からないのです。」
「それは、自分から、お話しさせて下さい、自分は矢野正也、今回の取り組みのサブリーダー的立場にあります。
 まだ、動き始めたばかりなのですが、我々のチーム赤澤には大学や学部を越えての参加が見込まれています。
 現時点ではまだ私的な取り組みで、公的なバックアップはありませんが、すでに教育系では十二名が動き始めています。
 経営学部経済学部からも九名が、その他の学部にも状況によって参加したいという学生が複数います。
 自分たちの目的は色々有りますが、大きな柱としては教育の研究ということが有ります。
 今回は卒論などに向けて共同調査の一環として、梨乃さん達のクラスから聞き取り調査などをさせて頂いております。
 ただ、それは我々の一つの展開でしかありません。
 自分たち、大学生が力を合わせて何かを…、いえ、力を合わせてみることこそが我々の目的と言えます。
 今日我々をとりまく社会環境は複雑になってしまって、また就職等を考えると前途多難、そういった問題を違った角度から見直していく、そうですね学部とかを越えてですね…。」

「う~ん、何やら難しい取り組みなんだね。」
「はは、そうでもないのですよ。」
「うん、省吾くん。」
「大学には色々な学部があって様々な研究をしているではないですか。」
「ああ、確かにそうだね。」
「専門性が有りますから個別の研究ということが一般的です、でも、そこから既存の枠組みを越えて協力し合い、次へのステップにして行こうという取り組みなのです。」
「ふむ。」
「具体的にお話しさせて頂きます。
 そうですね、梨乃さんが何らかの問題を抱えているのではないかと、美咲が気付きました。
 そこで矢野さん達に面接をして頂いたのですが、その結果から、まず梨乃さんの心の不安を和らげてくれるであろうということで須田さんに協力をお願いしました。
 須田さんは法学部なのですけど、えっと、昨日までの梨乃さんには一番的確なアドバイスをして下さると思ったのです。
 奨学金のこととか特待生のこととか、須田さんは身を持って経験してますので。」
「そうか…、梨乃にとって最悪の場合を考えてくれたのだね…。」
「ですが、根本的な解決が出来れば、それに越したことは有りません。
 と、いうことで、経営学部の高山さんに声を掛けさせて頂きました。
 経営学の視点から梨乃さんの抱えている問題を見て貰うという面もありましたが、高山さん自身の研究にもプラスになる可能性を考えてのことです。
 つまり、経営学を学んでいる立場から、経営者の娘である梨乃さんへのアドバイス、さらに…、とても差し出がましいことですが、梶田さんの会社を第三者の視点で見たら違った可能性が見えて来ないか、ということです。
 高山さん自身は、会社経営の建て直しということに強い関心を持っています。」
「うん…。」
「現時点ではここまでなのですが、梶田さんさえよろしければ、工学部の人にも声をかけて何かしらの協力を、まあギブアンドテイクが原則ですが、そんなことも有りで。
 例えば、就職とは関係なく実際の工場、現場を体験しつつ、改善出来ることの発見とかです。
 梶田さんの会社は、特殊な技術をお持ちという事ですから、その面から興味を持つ人が出て来るかもしれません。
 もし今後、法的な問題が出てきたら法学部の協力も得られます。
 何にしても、みんなまだ学生で、自分の専攻している分野でも素人同然なのですが、素人なりに実際の現場に貢献出来る場があれば、大学の研究室でも学べないものが得られるのではないかと思っているのです。」
「なるほど…、そういうことですか…、赤澤先生、うちの会社は今、微妙な状態で…、でも省吾くんから話しを伺って…、ギブアンドテイクででも、先生のお力にすがりたいと思うのですが如何でしょうか。」
「いや、私は矢野くんたちにアドバイスする程度でしか関わってないからね。」
「えっ、矢野くんはチーム赤澤と、ならばリーダーは?」
「あっ、僕らのリーダーは省吾なんです。」
「えっ、でも…。」
「省吾をリーダーにして一つの組織を作ろうって自分たちで言い始めたことなのですけどね、それに乗ってくれた、もしくは乗りたがってる連中がうちの大学には結構いまして。
 赤澤先生の許可もちゃんと得てありますし、美咲ちゃんの許可も得てのことです。」
「ひょっとして、私の目の前にいる少年は、ただものじゃないってことかな?」
「も~、矢野さんが大げさに言うから、自分は普通の高校生ですって。」
「はは、誰もそうは思っていないよな。」
「高山さんまで…。」

 うわっ、省吾さんって…、ホントに大学生を動かすような人だったんだ。
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梶田梨乃-06 [F組三国志-04]

 父さんと高山さんは経済の専門用語なのか難しい言葉を交えた話しをしている。
 私には良く分からないことばかり。
 でも、父さんは、何か嬉しそう。

「ということは、チーム赤澤のみなさんは色々な形で、私の会社に協力して下さるという事なのですね、省吾…、うっ、省吾くんなんて気安く呼べないな、えっと省吾さん…。」
「いえ、気軽に省吾、とか呼んで下さい、組織のトップが普通の高校生にへりくだっていてはマイナスになります。」
「自分もそう思います、まあ、矢野は省吾さまと呼ぶべきだと思いますけどね。」
「高山~!」
「チーム赤澤が梶田さんの会社と連携出来て成功したら大きいです。
 厳しい就職状況を抱えている大学生と、不況にあえぐ企業が力を合わせて困難を乗り越えることが出来たら、学生にとって良い経験となるばかりでなく、就職先が増えることになるでしょう、梶田さんの会社にとっても、単に会社の危機を乗り切るという事だけでなく、優秀な学生を社員に迎え入れるきっかけとなるかも知れません。」
「う~ん、私もチーム赤澤の一員になりたくなって来たのだが、どうだろう。」
「あっ、それは良いかも、な、省吾。」
「そうですね…、それで高山さんが動き易くなるのなら有りです。」

 ええっ、ってことは父さんが省吾さんがリーダーを務めるグループの一員になるってこと?
 それじゃあ、私は…。
 う~ん…。

「私も、チーム赤澤の一員にして貰えませんか。」
「梨乃。」
「父さん、私も勉強するから。」
「うん…、省吾くん、どうかな。」
「そうですね、梨乃さんにはまずF組のチーム正信に入って欲しいですけど…、チーム赤澤、プロジェクト梶田の一員として動いて頂きましょうか、ね、高山チーフ。」
「了解、リーダー、梨乃さんとはテスト明けくらいから梶田さんの会社を一緒に見させて頂き状況を把握して貰うということで、梶田さん如何です?」
「お願いするよ、娘は会社のことは何も知らないからね。」
「省吾、結果は定期的に報告するからな。」
「おっけ~。
 で、梶田さん、自分も一度は工場見学をしたいのですが。」
「勿論、大歓迎だよ。」
「えっと、美咲とかも一緒で構いませんか?」
「当たり前だ。」
「それで…、高山さんが調べて色々難しそうだった場合の、奥の手も考えているのですが。」
「えっ、どんな?」
「マスコミの利用です。
 難しそうでなくても、梶田さんの判断で実行に移して良いことなのですが。
 厳しい就職状況を抱えている大学生と、不況にあえぐ企業の連携という話題をうまく提供出来れば、テレビ局か新聞社が扱ってくれるかも知れません。
 そこでの扱いが良ければ、取引先などとの交渉にプラスになると思うのです。
 大学生だけでインパクトが弱ければ、そこに高校生も協力しているというのも有りです。
 クラスの仲間には画家もいます、もちろん素人ですが、会社のイメージアップにつながる何かが出来ると思うのです。」
「マスコミか…、失敗したらかっこ悪いなんて考えている時ではないな。
 うん、奥の手としてでなくても、実行可能なことが有るのなら、この際何でもやってみたいよ。
 はは、リーダーが高校一年生というだけでも充分インパクトがあると思うけどな。」
「でも…、自分がリーダーという形はあまり取りたくないし、外には出したくないのです。
 普通の高校生がリーダーでは、皆さんが低く見られかねません。」
「知識は高校生離れ、色々なアイデアを持っていて…、どこが普通の高校生なのだか。」
「いえ、自分は…。」
「省吾の頭の中は美咲ちゃんのことでいっぱいなんだよな。」
「はい。」
「はは、そうか、じゃあ今は普通の高校生と言う事にしておいてあげるよ。」
「お願いします。
 あっ、矢野さん、F組も関係して行くと思いますので、プロジェクトFにも影響が出ます、協力お願いしますね。」
「ああ、了解、プロジェクトFも思わぬ展開になりそうだな。」
「省吾、チーフが矢野で大丈夫か?」
「高山、俺はな…。」
「大丈夫ですよ、サブに早川さんとか就いてくれてますから。」
「矢野、省吾から、しっかり勉強させて貰えよ。」
「あ、ああ。」

 省吾さん、大学生にも教えてるってこと?
 す、すごい、普通の高校生な訳がないわ。
 そう言えば須田さん、飛び級制が日本で充実していたら、省吾さんはとっくに大学生だったかも、なんて話してたわね。
 足元にも及ばないけど、私も頑張らなくっちゃ。
 まずはテストで結果を出すぞ。
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黒川淳一-01 [F組三国志-04]

 あっ、時間か。
 えっと、名前を確認して…、黒川淳一、おっけいだ。
 名前を書き忘れたらやっぱ零点だよな…。

 は~、やっとテストが終わった。
 自分なりにがんばったけど、結果はどうなんだろう?
 中学の頃なら確実に上位って手ごたえなんだけど、この高校では甘くないだろうな。
 ま、やるだけやったからよしとしておこうか。

「淳一、どうだった?」
「おう、まあまあだな、一応、名前までの最終確認も出来たよ、徹は?」
「百点狙いだったけど、ちょっとな。」
「さすがに甘くはないわな、俺だって簡単に満点とは思えない。」
「でも、学年順位はそれなりになりそうだろ、他のクラスの連中はF組ほどやっていないみたいでさ。」
「ああ、テスト対策のレベルが違うと思うから結果発表は楽しみでもある…、他のクラスか…、それにしてもF組って。」
「何?」
「F組って一気に変わったと思わないか?」
「だよな、哲平から話しを持ちかけられたのは遠足の前だったか。」
「あの頃は森たちが岡崎とかいじめていたし、今から思うとクラスがばらばらだった。」
「きっかけは遠足か?」
「う~ん、省吾が秋山さんとつき合い始めたってことかもな。」
「確かにそうだ、委員長は四月からがんばってくれてた気がするけど、みんな協力的ではなかった、まあ俺たちも含めてだけど。」
「それが、遠足の前に省吾が哲平に声をかけて…、俺たちも動いたけど、クラスの雰囲気が急に良くなった。」
「うん、省吾の提案に皆が乗ったからな。
 学習をイベントとして楽しむ。
 まあ、ここに受かった連中だから出来た事だとは思うが。」
「だろうね、理解力や暗記力が無かったら勝負にならない、省吾ならイベントとして色々考えそうだけど。
 そう言えばさ、テスト直前になって梶田さん、お前らのチームに入ったろ。」
「ああ、どうして気が変わったのかは聞いてないけどね。」 
「それと関係しているのかどうか分からないが、彼女のお父さんの会社の建て直しに、省吾が関わるという噂を耳にしたぞ。」
「えっ、梶田さんは社長令嬢ってことか。」
「いや、徹、驚くのはそっちじゃなくてだな。」
「はは、冗談だよ、俺も聞いたよ、実際に動くのは大学生だとか。
 この後のホームルームで発表とかされるのかな。」
「どうだろう。」
「発表が無かったら、こちらから聞いてみようか?」
「それは梶田さんが気にするかも知れないから慎重にしろよ。」
「あっ、そうだな、また女子に怒られてしまう…。」
「それより、秋山委員長の事だけどさ。」
「ああ。」
「今まで、随分な仕事を任せて来たと思わないか?」
「それは否定出来ないな…。」
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黒川淳一-02 [F組三国志-04]

 今日は、このホームルームで終わり…。
 あっ、秋山委員長のお出ましだ。

「皆さん、テストお疲れ様でした。
 今日のホームルームはF組通信でもお知らせした通り、これまでのF組を総括し今後の活動について、それとテストの打ち上げとなります。
 ホームルームの時間内は全員参加となりますが、その後は自由参加です。
 席の配置はチーム関係なく、今日は机なしの円形で二重か三重にしたいのですが、早く帰りたいという人は極力外側に座って頂けると助かります。」
「おう、じゃあ、机動かそうぜ。」

「はは、みんなの顔が見えるのって、なんか新鮮だね。」
「でもさ、何となくチームが集まっていないか?」
「テストを共に戦ってきた仲間だからな。」

「では、ホームルームを始めます。
 まずは、F組のみなさんの協力に感謝です。
 他のクラスとは違った取り組み、企画に対して、反対する人もなく、皆さん協力的で助かりました。
 特に省吾の実験的企画や調査への協力は、みなさんに余計なお時間を取らせてしまうことも有りましたので、本当に有難うございました。」
「うん、みんな有難うね。」
「省吾や美咲にお礼言われるようなことじゃない、逆に俺は二人に感謝してるぞ。」
「俺も!」
「私も!」
「美咲さま! 有難う。」
「お師匠さまに感謝!」
「四月の頃なんて、こんな楽しいクラスになるなんて思いもしなかった。」
「遠足楽しかった。」
「はは、テスト勉強、楽しかった。」
「みんな…、ありがとう…。」
「美咲さま、涙目だ…。」
「ねえ、省吾さまに質問して良いかな。」
「なに?」
「大学生の人達とお師匠さまの関係ってどういうことなの?」
「うん、今日、みんなに話そうと思っていたのだけどね…。
 え~っと、自分ではちょっと話しにくいことなんだけど…、メインは俺の親父の教え子でね…。」
「省吾、俺が説明しようか?」
「哲平、助かる、頼むよ。」
「大学生の人たちは、チーム赤澤という、省吾をリーダーとして学生達が勝手に結成したグループのメンバーなんだ。」
「え~、お師匠さまって、そういうレベルのお人なの?」
「ああ、チーム赤澤の人達によれば、皆さん省吾から色々教えて頂いているそうだ。」
「え~、省吾さんは大学生のお師匠さまでもあるのね。」
「すっご~い!」
「やっぱただ者じゃないぜ!」
「俺たちの調査をしたのは教育学部関係の人たち。
 プロジェクトFという、省吾の実験的取り組みを検証して卒論とかに生かしていく企画を立ち上げたってとこ。
 遠足の企画に興味を持った人が、数学小テスト団体戦の結果、つまりF組が学年ぶっちぎりトップという結果に驚いて結成を呼びかけたんだ。」
「そりゃ驚くよな、その結果を出したのが教師の力量じゃない訳だから。」
「ああ、で、二つ目のプロジェクトが立ち上がるのだけど…、梶田さん発表しても良いかな?」
「勿論です、でも、私から話させて貰えませんか?」
「おっけい。」
「私の父は会社を経営しています。」
「おお、梶田さん、社長令嬢だったんだ。」
「でも、会社は資金繰りが苦しくなっていまして、私は進学を諦めかけていました。
 そんなことで落ち込んでる私に、美咲さまや省吾さまが気付いて下さって、チーム赤澤の学生さん達に声を掛けて下さったのです。
 その結果、チーム赤澤で父の会社再生を目指すプロジェクト梶田が立ち上がることとなり、父と共に私もチーム赤澤のメンバーに加えて頂くこととなりました。」
「あ~、なんかうらやましい。」
「自分もチーム赤澤のメンバーになりたいです。」
「はは、星屋はお師匠さまの一番弟子は自分だって言ってたもんな、なあ省吾、チーム赤澤のメンバーになるのは難しいのか?」
「いや、学問に真面目に取り組む気持ちがあってチームの趣旨に賛同してくれれば、後はアンケートに答えて貰うだけで良い。」
「チームの趣旨?」
「えっと、今まで大人たちが作ってきた枠組みに囚われない心で、明日の日本を考えて行こうって感じかな。
 まあ、そんな話しをしてたら、かなり優秀な人たちも面白がってチームを作ろうってことになったんだ。
 チーム赤澤って名称には抵抗があるのだけどね、個人的に。」
「ロックだ! 私もチームに入りたい!」

 何か凄いことを、さらりと言ってないか、省吾…。
 俺も参加したい。
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黒川淳一-03 [F組三国志-04]

「俺も参加したいけど、どんなことをしたら良いのか分からないな。」
「淳一、それを考えることも、チームの目的の一つなんだ。」
「えっ?」
「何かしらの研究テーマを見つけ、そのテーマを掘り下げる、と言うことを、チームのメンバーで協力し合ってやって行けたらと思っている。
 他の人の研究テーマに協力しながら、自分のテーマを探しても良いと思うんだ。
 梶田さんは、お父さんの会社を見つめることを始める。
 それは、梶田さんの視点、もし淳一が協力してくれるとしたら、それに淳一の視点が加わる。
 それを梶田さんにとってマイナスにすることなく、プラスにすることがチームの一つの目標。
 みんなで考えて、良い方向へ持っていく。
 そして、そのことが淳一にとって良い経験となることも大切だけどね。」
「俺で良ければ協力したいけど。」
「うん、ありがとう。」

「お父さま、ちさとはチーム赤澤のメンバーになれるのでしょうか?」
「もちろんさ、演劇を通して演ずるというテーマを持ってるからね。
 知ってる人も多いと思うけど、ちさとは俺の娘って役どころを演じてる時がある。
 文化祭を意識してのことだけど…。
 ただ…、その内、極悪非道の大悪魔なんてのを演じ始めるかもしれないから、みんな気をつけてね。」
「はは。」
「あら、お父さま、私はせいぜい小悪魔ですわ。」
「ははは。」

「チーム赤澤って、何人ぐらいいるのですか?」
「う~ん、とりあえず四十人は越したらしいけど、今増えたし…。」
「入会金とか会費とかは?」
「えっ、そんなこと考えてなかった。
 別に金儲けが目当てじゃないから、今の所は必要ないってとこかな、将来的には分からないけど。」
「チームに登録する方法はどうなの?」
「今のメインスタッフが面接して、問題なければアンケート用紙に記入して貰うって感じ、個人データはパソコンデータベースで管理している。
 竹田さんって人が、絶対に人数増えるから、初めからきちんと管理出来る体制を整えるべきだって。
 今、参加を表明してくれた人には後でアンケート用紙を配るからね。」
「チーム赤澤に参加するってことは、大学生達とも交流出来るということですか?」
「勿論と言うか、目的の一つだよ。
 俺たちをとりまく教育システムは、同学年との付き合いに限定される傾向が強すぎるって…、俺の叔父がよく言ってることだけどね。
 学校では一日の大半を同じ学年の人と暮らしている。
 けど社会に出たら、うんと年上の人から年下の人までのつきあいになる。
 その環境の変化についていけない人が少なからずいるみたい。
 まあ、視野が狭くなっていると、叔父は言ってた。」
「あっ、省吾さんは大学生達との交流も有るから広い視野を持っているってことなんだ。」
「はは、親父達はそんなことを目論んでいたみたいだね。」
「へ~、どんな感じで?」
「留学生をうちに呼んだりして…。
 小さい頃、留学生の研究材料にされたことがあった。
 カナダからの留学生だったのだけど、英語しか話さないんだ。
 でも、よく遊んでくれて、帰国してからも手紙とかメールでやりとりしてるけど、この前久しぶりに日本に来てね。
 そしたら日本語ペラペラでさ。
 何でも俺は、幼児期における語学習得能力の研究材料だったらしくて、俺とはあえて英語のみにしていたそうなんだ。
 まあ、おかげで英語は得意教科になったけどね。」

 なんかうらやましいような…。
 でも俺と省吾だったら、全然違う結果になったのだろうな。
 えっ、得意教科、省吾に不得意な科目ってあるのか?
 得意でなくても俺達に教えるレベルってことか…。
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黒川淳一-04 [F組三国志-04]

「では、ここで省吾への質問やチーム赤澤のことは打ち切り、今後のF組について。
 球技大会のことは正規のホームルーム時間内に済ませたいので、協力お願いします。」

 球技大会のことも委員長か…。

「ねえ、委員長、みんなに話したいことが有るのだけど。」
「黒川くん、何?」
「なあ、みんな、四月にさ、訳の分からないまま係りとか決めたけど、今まで秋山さんばかりに頼り過ぎて来たと思わないか?」
「そうよね、美咲さまは委員長の仕事だけでなく企画関係、学習関係でも動いてくれたから。」
「でしょ、だから、係りの見直しをしてはどうかと思うんだ。
 球技大会も…、そうだな球技大会の委員なんてのを決めたらどうだろう?
 今まで委員長がやってくれてた仕事もみんなで分担してさ。」
「おう、淳一に賛成、俺もF組のために働きたい。」
「私も。」
「ねえ、秋山さん、球技大会で決めなきゃいけないことは、種目毎のチーム分けぐらいでしょ?」
「ええ、だいたいはみんなの希望に沿って割り振りが出来てるけど、バスケ希望者が多くて、ドッジボール希望者が足りてないの。」
「それぐらいの調整なら俺たちでも、な、徹。」
「おう。」
「そうだ、この後の打ち上げに参加しない人って誰?」
「そうか、抜ける人の希望を聞いておけばゆっくり相談出来るな。」
「えっと、まずは球技大会、俺たちで仕切っても良いか?」
「おお、黒川に任せる。」
「意義な~し。」
「黒川くんと林くんだけでは…、女子は?」
「私、やっても良いわ。」
「舘内さん、ありがとう。」
「私もやりたい。」
「うん、加藤さん、ありがとう、え~っと他に希望がなかったら、この四人で球技大会仕切って良いかな?
 え~っと、一応賛成の人は挙手をお願い。」

 みんな手を挙げてくれた。
 じゃあ…。

「決定だね、球技大会のことは委員長から俺たちが引き継ぐ、で、この後の打ち上げに参加しない人の希望とか先に聞いておきたいのだけど。」
「じゃあさ、打ち上げに参加しない人はこっちに来てくれない、淳一は係りの見直しについて、残る人たちと相談してくれよ。」
「おっけい。」

 あれ? 
 みんな動かないな。

「打ち上げには全員参加ってこと?」
「はは、林の出番はなかったな。」
「じゃあ、係りについて、委員長、俺が進めても良いの?」
「ふふ、黒川くん、どうぞお願いします、ね、省吾。」
「実は、F組内の役割分担ということも今日みんなに相談したかったことなんだ。
 淳一や徹が積極的に動いてくれると助かる。」
「ならば、まずは今までの仕事の見直しだね…、委員長の大変そうな仕事としては…。」
「F組通信じゃない?」
「確かにそうだ、秋山さん、ずいぶん発行回数が多いと思ったのだけど、どう?」
「そうね、今の所は、私や省吾が書いた原稿を、麻里子が整理してくれて、それを静ちゃんが仕上げ。
 後の印刷とかは、星屋くんとちさとが手伝ってくれてるけど。」
「そうか…、でも印刷とかだったら秋山さんがいなくても済ませられないかな。」
「星屋、どう?」
「は、はい、じ、自分も、て、て、手順は…。」
「星屋! しっかりせんか!」
「は、はい、姉御、すいやせん。」
「ははは。」
「ふふ、私も慣れたからそんなに大変じゃないけど、そうだな、みんなもF組のための仕事に参加したら、もっとF組が好きになるかもね。」
「し、清水さんの言う通りです。」
「あら、だめよ、和彦さんはちゃんと、ちさとお嬢さまって呼んでくれなきゃ。」
「ははは。」
「省吾さまからの参考資料の印刷とかも大変でしょ?」
「そうね、そっちも手伝って貰ってたけど。」
「なあ、みんな、秋山さんじゃなくても出来ることは、極力みんなで協力し合ってやっていかないか?」
「賛成、俺も手伝うよ。」
「私も。」
「じゃあ、その取りまとめを誰かに頼めないかな、俺がやっても良いけど。」
「え、えっと。」
「おっ、星屋が手を挙げた。」
「そうだ、星屋、それでこそあたしの一の子分だ。」
「はは。」
「和彦さん、ちさともお手伝いしますからね。」
「えっと、印刷機の使い方とかは大丈夫だから…。」
「ほんと、星屋くんは先生方より手馴れたって感じだから、お願いね。」
「は、はい。」
「奥田さんや山影さんはどう? 大変じゃない?」
「全然、原稿がきちんとしてるから、私は大したことしてないの、静さんは?」
「私も大丈夫です、フォーマットが出来上がっていますし、麻里子さんからのデータもきちんとしていますので大した手間は掛かりません。」
「そうすると、後の仕事は…、秋山さん、どう?」
「後は、委員長としての会議とかだから大丈夫よ。」
「省吾さまの秘書的なことは?」
「そ、それは私がするから。」
「はは、絶対譲る気はないって感じだね。」
「ははは。」
「じゃあ、とにかくみんなで協力して、もっとF組を盛り上げようってことで良いのかな?」
「ええ、みんなよろしくね。」

 ちょっと気になってたことが解決した。
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