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事業展開-01 [安藤優-09]

早春、優は南アルプスの見える地に来ていた。
ここに研究施設を作る予定だ。
優はこの地を管理する会社の社長、横山と話していた。

「横山さん、ずいぶん建物が増えましたね。」
「だろ~、こんなくそ不便など田舎でも住んでみたいって連中、ちゃんと環境を整えればいるんだよ。」
「単なる物理的な環境でなく精神的な環境なんですよね。」
「もちろんさ、日常生活の不便なんて慣れてしまえば何てことないんだ。」
「ここに研究施設を置く事に対して反発は有りませんか?」
「反発どころか大歓迎だね、農業主体といってもここで働いている人達は皆さん移住してきた方ばかりだからね、仲間が増えた方が暮らしの幅が広がるよ、しかも優が絡んでるとあっては誰も反対出来ないさ。」
「体験的住居と永住タイプとの調整も大丈夫ですか?」
「はは、ただ同然で手に入れたこの土地をここまでにして来たうちの連中に任せておけば心配いらないね。
優が提案してくれた、外観を行ってみたい村にするって企画も盛り上がっていてね、今有る住宅も外観を変えて現実離れした異空間を作るって皆はりきってるよ。
その中の一つを利用して、静かな村で過ごす一週間、みたいな滞在型観光の企画も出て検討中さ。」
「静かな村という事は人数限定ですね?」
「割高になるが、最高級のおもてなしを受けつつ人の少ない環境に身を置きたい、とかバックアップの整った状態で自炊して山の暮らしを体験とか、需要は有りそうな気がしている、景色も良いだろ。」
「う~ん、もう少し踏み込んで考えてみたいな…、それにしても綺麗な山だよね、僕もこっちに住もうかな。」
「はは、会社は大丈夫なのか?」
「もちろんですよ、会社が大きくなってきたから、副社長の権限を大きくして…、もう部門ごとに分社化しても良い状態ですからね、研究施設は自分の夢だったから、作ったのに自分が関われないなんて面白くないでしょ。」
「ならば、もっと自分の都合の良い所に建てても…。」
「自然環境の良さを求める研究者も少なからず居るんです、もちろん桜根の基本理念の一つ地方再生も頭に有りますし、横山さんとこに貢献したいですから。」
「優、有難うな、優は色々騒がれて育ったから心配してたけど、ほんとに真っ直ぐ育ってくれた、ここも優の会社が絡めばさらに良くなると、うちの連中も喜んでいるんだ。」
「まあYou&優が予想以上にうまく行ってますからね、自前の研究所はもう少し先と考えてたのが早まりました。」
「ここの人達もYou&優の製品を喜んで着ているよ、高校生がおばあちゃんと一緒に考えたって作業着がここのユニフォームみたいなレベルになってるぐらいさ。」
「嬉しいです、始めは中高生向けを想定していたのが、幅広い年代向けの商品が次々に出て来て売り上げをぐんと押し上げてくれました。」
「優の人気のなせる業だな、研究所もきっと大きな成果を上げてくれるよ。」
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事業展開-02 [安藤優-09]

初秋、研究所は山の自然と溶け合うデザインで完成、お披露目には多くの人が訪れた。
優は副社長の中田と。

「優、お客さんの応対で疲れたろう、少し休みな。」
「うん、資金を出してくれてる会社関係の人達とは一通り挨拶を終わらせて、後は任せてきたよ。」
「ずいぶん遠くから来て下さった方もみえたな、この後場所を移して、会社同士の話し合いが夜まで続くけど、優は適当に高校生達と遊んでれば良いからな。」
「う~ん、どうかな…、高校生達も、ここの研究内容や、色々な会社に興味が有るみたいだからね。」
「そうか、単なる手伝いという気分では無い訳か、頼もしいな。」
「はは、おじちゃんが何時も言ってる、明日の桜根を支えてくれる人達だからね。」
「なるほど、私が思ってた世代の次の世代という事なんだな、で、ここの研究者達の移住は順調に進んでいるのか?」
「早い人は引っ越しを終えて、来週から研究を開始する事になってる、他は順次という感じだね。」
「田舎暮らしは初めてって人もいるそうだが大丈夫か?」
「冬を越してみないと何とも言えないかも、これでも店が増えて前よりは住み易くなったそうだけどね、まあ、横山さんは移住のノウハウを色々お持ちだろうから、なんとかして下さるとは思ってる、でもね逆に夏場は人が多く集まりそうなんだ、避暑を兼ねて打ち合わせとか意見交換とか、用がなくても来たいって人もいるぐらいだからね、それに合わせてホテル建設を進めているけど。」
「それはそれで、この地が潤って良い事だな。」
「おじちゃんは住宅見た?」
「ああ、面白いな、そのまま観光資源にするつもりなんだろ、どうだ、研究所二期目の工事は予定を早めたいと思うが。」
「そうだね、関連各社の業績が当初予測よりかなり良い感じだし、You&優の新商品がまたヒットしそうだから、予算の問題はかるくクリア出来そうだよね、宇野さんにゴーサインを出しても問題ないかな。」
「あいつはもう三期目まで考え始めているよ、土地に余裕が有るというのは強みだな、三期工事が完成したら総合研究所と名乗って恥ずかしくない規模になると言ってたよ。」
「研究開発はうちのメインだから、早く総合研究所を名乗りたいけど、予算の問題も有るからね、関係企業に無理なお願いもできないでしょ。」
「まあ、焦らずに、でも三期目の工事着工までに時間はかからないと思うぞ、You&優以外の部門もきっちり実績を上げてるだろ。」
「うん、でも足場固めをしっかりやっときたいからね、とりあえずは研究所の二期工事を宇野さんに頑張って貰うかな。」
「はは、彼は勝手に頑張ってるよ、総合研究所に向けてね。」
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事業展開-03 [安藤優-09]

新しい研究施設は、桜根グループ内の各研究機関から選ばれ集められた研究者によって構成される。
もちろん田舎暮らしを受け入れた者達だ。

「初めまして、冨吉と申します、岡山から来ました。」
「入野です、茨城出身です、よろしくお願いします。」
「入野さんの御専門は?」
「情報システムです、各地の研究者を結んでいる今のシステムをより進化させたいと考えています、冨吉さんは?」
「専門は機械工学ですが、今回は他の研究者を支援をしながらの研修です、安藤社長が話しておられた、全く違う分野に目を向ける事で掴めるものが有る、を試してみたくなりまして、こんな山奥の環境へのあこがれもありました。」
「では機会が有りましたら、システムの概要を説明させて頂きますね。」
「お願いします。」
「住まいはどうされました?」
「外観は昔の農家を選びました、外から見ると電線もなくて、運よく送電線も見えませんからほんとに不思議な感じですよ、江戸時代ってこんな感じだったのかなって。
前の畑も現代的な物は使ってないですし、舗装も一見未舗装かと思う様な色になってます。
車庫も外見は牛小屋みたいでして。」
「へ~、今度行ってみます、まだ引っ越しが済んだばかりで落ち着いていなくて、散策出来てないのです。」
「入野さんのお宅はどんな感じですか?」
「うちは子どもが小さい事も有りますので、外観は絵本に出てくるような可愛らしい感じの集落を選びました、子ども専用の小さな出入り口が道路側に有りますから、大人は住んでないのかと錯覚しますよ。
近所に似た様な年齢の子達が住んでいますから安心感も有ります。」
「外観と違って、建物の中は現代的で暮らし易い作りですよね、You&優ブランドで売り出す予定も有るとか、さすが安藤社長ですよね、ブランドの価値がどんどん上がってませんか、お父様の安藤CEOとはまた違った次元の方ですよね。」
「ええ、まだ学年的には中三とか、末恐ろしいという言葉が有りますが、すでに恐ろしいですよね、先ほど聞いたところでは、そのまま一戸建て住宅のサンプルともなる、ホテル建設を指示されておられるそうです。
ホテルで有りながら上級の部屋は廊下で繋がった一戸建てで、窓を開けると山が一望出来て、建物も車も人も目に入らないロケーションだとか、桜根グループのホテル関係で培って来たノウハウをそのままに最高級ホテルのサービスも提供しつつ、新たなYou&優ブランドとしての展開を確立して行こうと模索中とのことですが。」
「スピード感が違いますよね、安藤優社長は。
桜根本社の一部署から会社を立ち上げたかと思ったら、短期間で桜根グループに莫大な利益をもたらし、さらに発展させようと研究施設の拡充、そして新規事業も展開中ですから。」
「桜根は安泰という事ですね。」
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事業展開-04 [安藤優-09]

十二月のある日、優の家には両親の友人達が集まっていた。
両親の友人の一人、遠藤は桜根設立当初から活躍して来た人物、肩書は桜根副社長だが、芸能部門中心に総合プロデュースをしている、You&優スタート時も大いに動いた。

「遠藤さんのおかげでYou&優もあっと言う間に売り上げが伸びました、有難う御座います。」
「いやいや、それは優の力だからな、俺は大した事してないよ、それよりもYou&優のおかげで桜根のイメージがさらに良くなってると思う、優、どうだ何時でもアイドルデビューOKなんだが。」
「アイドルは何か疲れそうだからね、今まで通りたまにテレビ出演という程度で行きたいかな。」
「優ならビッグスターになれるが、まあビッグな社長では有るから、それで充分か。」
「社長としてもまだまだだよ。」
「いや、優は成長期の終わりに入るかと思ってた桜根グループへ風を吹き込んだからな。
研究開発部門も気合いを入れ直してると聞いたぞ、どうなんだ?」
「桜根研究所設立をきっかけに、研究施設の統廃合の話が盛り上がってる、桜根研究所は山奥で不便なんだけど土地は有るから、当初の予定より多くの部門を移転という話にもなって来たよ、今調整を始めて貰ってる。」
「研究開発は重要だからな、どうだこれからの桜根グループは。」
「そうだね、かなりの不況になっても桜根グループは安泰だとは思う、グループ内取引で資金が生かされているし、輸出の依存度が低いからね。
ただ、父さんと話しているのは、まだそんな時に社会経済の下支えが出来るレベルまでには届いてないという事なんだ。」
「うん、輸出関連企業が大きなダメージを食らった時に、うちが支えになるレベルだったら、佐々木総理も安心だろうな、だが簡単な事ではないぞ。」
「だよね、でも一つの目標として考えて行きたいとは思ってる、You&優でかなりの消費者を取り込むことに成功したから、別の購買層も色々な形で桜根グループのファンになって貰って、さらに労働力としても係わって貰える様にね。」
「なるほど、You&優だけで満足してない事はよく分かった、次の事業展開が確定したら、すぐに教えてくれな、宣伝は任せろよ。」
「有難う、頼むね。」
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事業展開-05 [安藤優-09]

杉浦は桜根の拡大に多大な功績を遺した人物、今は一線を退いているが、優の家に人が集まる時にはしばしば訪れる。

「優は絶好調みたいだな。」
「はは、杉浦さん、何ですか、いきなりですね。」
「孫が優の大ファンでな、今日は優にも会うと言ってやったら、めちゃくちゃ羨ましがられてな、孫へのとどめに、儂とのツーショット写真なんぞ頼めんか?」
「そ、それってお孫さんに対する嫌がらせですか?」
「はは、証拠を見せつけてやろうかとな。」
「良いですけど…、じゃあお孫さんにも何かお土産を…、川北さん何か有りませんか?」
「社長のお写真と色紙ならすぐ用意出来ますが。」
「ではお願いします。」

杉浦と写真撮影の後色紙にサインをして。

「有難うな、うちの孫も結構可愛いんだぞ、中二でな、はは、社長とお付き合い出来るレベルではないがな…、優は今度中学卒業か?」
「ええ、全然実感が涌きませんが、一応義務教育というのを終えます。」
「ほとんど大学に行ってるそうだが、来年度からも変わらずか?」
「一応高校に籍を置きます。」
「アメリカからは飛び級で有名所にって話が来てるんだろ。」
「はい、そこで自分を試したい気もしますが、仕事もしっかりやりたいですから難しいでしょうね。
海外へ行く回数は増やしたいと思っています、国内の桜根グループはずいぶん伸びていますが、海外はまだまだです、その国で得た利益はその国で再投資という形にしている割に伸びが弱いので、各地の支社を回ってみたいと思っています。」
「それは良いが治安の悪い所も有るからくれぐれも気を付けてな。」
「はい、まずは比較的治安の良い所からと考えています、でも桜根グループの力で貧困層を減らし犯罪件数も減らせないかとも考えています、ただ、宗教対立は何ともなりませんから、場所は慎重に選んでいます。」
「そこまで考えてるのなら儂も応援するしかないな。」
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事業展開-06 [安藤優-09]

一月の始め、優が社長を務める株式会社つぼみのオフィスでは優の父、株式会社桜根CEO安藤隆二から桜根グループ全社員に向けて発せられた言葉が話題になっていた。

「グループ全従業員数が七十万人を越したとはね、その全員に向かって職場環境などに問題が有ったら遠慮せずに直接桜根本社窓口へ連絡して下さいって、他の企業なら考えられない事だぞ。」
「そうよね、桜根グループが社員を大切にする姿勢を示し続けてきて、会社が大きくなった今でも変わってない、トップの姿勢がブレてないという事に安心し、また頑張ろうって気になるわよね。」
「安藤CEOの話は分かり易いんだよな、よその社長の話を聞いた事が有るけどやたら英語みたいなのを使ってさ、聞いてる側に色々な人がいる事なんて意識してなかった、うちのCEOはきちんと七十万人と向き合ってくれてると感じないか。」
「そうよね、問題がなければさらに従業員を増やして行きたいとの話も、社会の安定に繋げたいとの思いからなのよね、海外展開も単なる桜根の利益だけでなく現地の方の事を考えてみえる訳だから、優くんの次なる展開に向けて私達も頑張らなきゃ、ですよね。」
「具体的なうちの増員計画はどうなってるの?」
「ああ、大卒高卒の新人と中途採用、合計で二十名ぐらいを予定している、研修の結果を見ながら部署が決まって行くと思うけど、問題はうちの大将のスピードだな、新規事業を突然提案されても対応したいし、海外事業をこなすにはそれなりの能力も必要だろ、一応桜根本社とも連絡を取り合って大将の足を引っ張る事の無いように考えているが、場合によっては皆の協力が必要になるかもしれない、その時は頼むな。」
「問題は海外展開をどこから始めるかね、英語圏からなら比較的楽だと思うけど。」
「スタート時は一つでも、徐々に増やして複数同時進行になるだろうな、俺としては大将の力を最大限に生かして頂ける様に形を作って行くつもりだけど、大将の能力は計り知れないからなぁ~。」
「だよな、あの頭にどれだけの情報が詰まってるんだろうって思うよ。」
「ねえ、飛び級で留学って話、どうなったのかな?」
「留学してるより、桜根の海外展開支援をしたいとの事、その代わり高校三年間は論文を書いてそれが認めて貰えるかどうかで、ご自身を試されるそうよ。」
「なるほど、それなら興味を持たれた分野を、お好きな時に取り組めるという事だな。」
「そして我が社も安泰だね。」
「でもうちの大将から何が飛び出すか分からないぞ。」
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事業展開-07 [安藤優-09]

優はグループ他社に対して指示を出す事はなく提案の形で案件を持ちかける、それに対して各企業は最大限応えようとしていた、優の提案で業績が上がったり、工場のシステム効率が良くなるといったこれまでの実績による所だ。
だが二月に出された提案は少し勝手が違う。
ある会社では。

「武田、株式会社つぼみ社長安藤優名義で、桜根グループ全社に対しての提案は初めてだよな。」
「しかも安藤CEO承諾と有る、親子で本気だという事か…。」
「提案だから判断は各社に委ねられているとはいえ無視は出来ない、とは言え新規事業に人を出して欲しいという事は、会社にとって利益になることでもない、むしろマイナスだろう、幹部はどう考えるかな、桜根グループ全体で考えても金銭的なメリットというより社会的貢献の面が強いと思うが、しかも今までの様な国内向けでなく海外だからな。」
「でもさ、上杉、海外勤務希望者の穴埋めにより、桜根グループで働きたい人を受け入れる機会を作る、と有るから、僅かながらも桜根拡大の意味合いが有る…、いや、待てよ、海外事業が発展したら、桜根の規模は桁違いに大きくなって行くんじゃないか、成功すれば利益もな。」
「それが狙いの一つか…、国家も超えて企業による幸せな労働環境作りを実現させようと…、あの親子にとっては今の海外展開は全く満足いくもので無いという事なんだろうな、国内の従業員数が増え続けている今、さらなる攻めの体制を天才少年社長が中心になってやるとなったら…。
別で募集しても良い所をあえて、グループ内の各社に要請という事は、桜根グループの理念をもう一度見直せという事じゃないのか?」
「う~ん、軽く流せる事ではないな、欲しい人材として桜根の理念を分かってる人と有るから、社内でも優秀な人材、新人は対象外になるな、だが先々の海外勤務希望も考慮しながらの研修になって行くのかな。」
「ただ、本人の希望を優先する訳だから赴任先によっては人が集まらない可能性もあるんじゃないか、事業展開の候補地は都市部を避けているだろ。」
「必ずしも現地に常駐という訳でもないとも有るな、今現地で活動している企業の応援の形だからかな。」
「う~ん…。」
「上杉、どうした?」
「自分を試してみたくは有るな。」
「そうきたか、お前なら体力も有るし英語も達者だし、でも我が社にとっても重要な人材だと俺は思ってるがな。」
「な~に俺の代わりなんてどうにでもなるさ、でも荒野を目指すだけの根性の有る奴ざらにはいないと思ってな。」
「さすが、冒険部出身という事か…。」
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事業展開-08 [安藤優-09]

三月のある日、優は会議の場にいた。
会議に参加しているのは優の提案に応じた企業からのグループ内転職者達、桜根グループ海外展開のスピードアップを目指す為に、株式会社つぼみ内に新設された部署のメンバーが中心だ。

「…、説明させて頂いた通りこのプロジェクトは簡単では有りません、最初に着手する案件は治安の良さと、すでにこの国の都市部で展開してるうちの企業活動によって我々が全く無名でない事を評価しましたが、国の経済状態が良いという訳では有りません。
まずは、遠く離れて調べていても実情は分かりませんので、二週間ほど現地に入って状況を肌で感じて来ます、その結果を踏まえて今後の展開を考えて行きます、皆さんからは何か有りますか?」
「社長、現地での宿泊ですが、私が調べた所では、あまり環境が整ってないかと、自分は構いませんが女性や社長は大丈夫ですか?」
「あら、上杉さん、私は気にしてませんよ、なんならテント生活でも構わないわ、それぐらいの覚悟がなかったらこのプロジェクトに参加しようなんて思いません、社長に悪い虫が付かない様に私がお守りしますからね。」
「えっ、角川さん、社長の独り占めはずるいですよ、私は学生時代向こうで三か月ほど生活して来ました、それも有って今回のチームに加えて頂きましたので、すでに向こうの知り合いに連絡済で、日程が決まり次第色々整う手筈にしてあります、すごく立派とは行かないかもしれませんが、社長が不自由されない様にさせて頂きます。」
「下田さん、有難う御座います、ほんとに助かります、うちの秘書達では対応し切れませんからね、やはり現地の方にお願いするのが一番です。
上杉さん、角川さん下田さんが、お綺麗だからといって軟弱だとは思わないでくださいね、ちなみに角川さんは空手三段ですから、お気を付け下さい。」
「は、はい…。」
「それから自分の事は社長ではなく、チーフと呼んで下さい、このチームは暫定的にチームAと呼ばさせて頂きます、正式名称は皆さんで考えて下さい。
チーム内の役割は五人で調整をお願いします、状況によっては現地工場、現地法人本社、つぼみ本社と別れて活動する事になるかもしれませんが、現地工場を中心とした地域の活性化を目標に、一つのモデルケースとして結果を出せればと考えていますのでよろしくお願いします。」
「追加予算はどの程度の規模をお考えですか?」
「具体的な金額は提示しにくいです、短期間で全額回収出来ると自分が判断出来る額までは無制限です、中長期の展開もまずは予算の限度を考えずに案を出して下さい、始めから限界を決めてしまっては思い切った事が出来ませんからね、最終決定はこちらで予測計算して判断させて頂きます。
後、下田さんの企画が当たれば…、余裕が出来るのですが…。」
「えっ、下田さんは、もう企画案を?」
「桜根の歴史、特に設立当初の事はもう伝説になっていますが、中でも遠藤副社長の活躍は大きかったと思うのです、会社設立の前からマスコミを有効活用して、それまでの常識を覆す桜根の有り方を世にアピールされました。
それを、我々も見習うべきだと思うのです、社長…、安藤チーフはあまり乗り気ではないのですが、チーフ主演の映画を公開したらきっとヒットして宣伝効果も大きいと思います。」
「その根拠は?」
「現地法人がすでにチーフの写真を販売促進に使っているそうです、私の知り合いも少年社長に会える日を心待ちにしてますよ。」
「すでに安藤チーフのファンがいるという事か…。」
遠藤副社長に進言させて頂いた所、大きな宣伝効果が有って当たり前だとのお言葉を頂きました。
この国だけでなく他の国での展開にもプラスになると思いませんか、映画スターもこなす少年社長なんて話題になって当然でしょう。」
「はは、遠藤さんからも覚悟を決めろと言われましたよ…、映画とアジア向けテレビ番組…、売れなくても責任は持てないと伝えて有りますけどね…。」
「内容にもよるけど日本でもヒットするんじゃないかな、その売り上げを現地の活動に充てれば余裕が出来ますね。」
「少年社長も良いけどアイドル社長という売りも有りですね。」
「う~ん、普通の社長でいたいのだけど…。」
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事業展開-09 [安藤優-09]

四月、優はアジアの某国、その片田舎に滞在していた。
夕食を現地の人と共にするので会議は夕食前に行っている。

「角川さん、ここの伝統的な衣装を何点か仕入れて下さい、それをYou&優のデザイナーチームに見せて日本向けにアレンジできないか打診をお願いします、次回のデザイン募集にも入れて貰いましょう。
そうだな…、ここの女の子が着ている写真と日本の女の子が着てる写真もサンプルとしてアップして、それぞれに似合いそうなアレンジ作品募集の形にしても良いかな。
サンプルとしてアップする衣装に関しては、こちらの知的所有権の確認をお願いします。
大田さんは、そのサポートをしながら、この国での衣類についての販路を確認して下さい。
伝統的な衣装を日本の高校生がアレンジしたものが、ここで受け入れられるかどうかはまだ分かりませんがとりあえずお願いします。
上杉さんと神田さんは引き続き、工場設備の更新へ向けての確認と工場増築に向けての下調べを、水害を意識して、ここは結構水害に見舞われて来たみたいですから慎重にお願いしますね。
下田さんは教育関係のシステムや法制度の確認をお願いします、出来れば給料を受け取りながら職業訓練を受けられる学校を新設したいと思っています、合わせて全体の教育水準を上げて行きたいですから小中学校の事とかも余裕が有ったら調べて下さい。
自分から以上ですが、皆さんから何か有りますか?」
「You&優に関しては片山理沙統括リーダーに直接問い合わせてもよろしいのですか?」
「もちろんです、彼女の指示を受けて下さい。」
「彼女はすごく大きな部署のトップだと思うのですが…。」
「角川さんがご心配なら、連絡を入れておきますよ。」
「あっ、失礼しました、彼女も安藤チーフの部下でしたね、あ~、何か混乱…、え~っと…、ここの伝統的な衣装の可能性を探る訳ですね、高校生デザイナーのアイデアで日本人に受け入れやすく出来るか、ここでも今までとは違った商品として売り出せるか、ここの工場で生産することで、この地の貢献しつつ人材育成教育へも繋げて行こうと…。」
「まあ、そんなところです、ヒット商品とまで行かなかったとしても、それなりに売れる様に手を回しますから、とりあえず進めて下さい。」
「分かりました。」
「そろそろ食事の時間ですね。」
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事業展開-10 [安藤優-09]

視察からの帰国後、優は一人のグループ内転職者と話していた。

「安藤社長、つぼみ海外展開に参加させて頂きます、島津健太郎と申します、よろしくお願いします。」
「こちらこそお願いします、アジアを旅された経験が豊富だと伺っています、うちが展開を予定している国でも生活経験がお有りとか。」
「はい大学、大学院の研究であちこち回りました、四か国中二か国は五か月以上の滞在経験が有ります、後の二か国も一二週間程度滞在して、現地の方々の生活ぶりとか見て来ました、拠点となる地域をピンポイントで経験している訳では有りませんので、そこに精通しているとは言えませんが、各国に知り合いがいますので何らかのお役に立てると思っています。」
「島津さんの経歴などは見せて頂きました、その上でお願いが有るのですが。」
「はい、私に出来る事で有れば。」
「先日までの視察で、ようやく形が決まって来た段階ですのが、島津さんに、つぼみ海外展開、初期四拠点の統括リーダーをお願いしたいのですが如何でしょうか?」
「えっ、統括リーダーと言われましても…。」
「資料は見て頂いていると思いますが、その資料の段階では一拠点に目途が立った時点で次の拠点と考えていました、それを一気に前倒しして四つ目まで多少の時間差は出ますが、同時進行で進める事にしました。」
「それは大丈夫でしょうか、急いては…、それぞれが共倒れになったりとか…。」
「まあ、理由が有りまして、一本の映画と複数のテレビ番組を利用してYou&優をその四か国でも展開して行こうと考えているのです、名称は変更するかもしれませんが。」
「あっ、映画によってマーケットを開拓するという事ですか。」
「ええ、映画のストーリーそのものはシンプルに…、日本人の主人公が犯罪組織に追われる事になってその四か国を逃げて回る、各地で現地の素敵な女性に助けられて無事に犯罪組織を倒すみたいな…、ちょっと恥ずかしくなる様なお話ですが、登場する人達の衣装はうちのデザイナーや現地関連企業のデザイナーが、主に民族衣装を元にアレンジしてのものになります。
並行して、You&優では四か国の民族衣装を元に、日本人受けしそうなデザインにアレンジしたものを販売に向けて制作、実際の製造は四か国の工場でという事を目標にしています。
これらの工場では現地向けの商品も作って貰うつもりです、どれぐらい売れるかは分かりませんが、映画とタイアップする形で色々展開して行けば少しは売れるだろう、少しでも売れれば現地での職業訓練に力を入れる事も出来るのではないかと考えています。
この過程で日本も含めた五か国の関係者が競い合ってくれれば、相乗効果も期待できると考えています。
細かい部分は各地の担当チームに任せ、島津さんには一段上から見守って頂けたらと思っているのです。」
「そこまで…、一回の視察で進んでしまうのですね…。」
「実際にリーダーとして動き始めるまでは、社長補佐として、つぼみ内で今後関係して行くスタッフとの調整作業から始めて頂ければと思います。」
「分かりました、私は各地で貧困にあえぐ人達を見て来ました、就職先として桜根を選んだのは間違ってなかったと思います、精一杯頑張りますのでよろしくお願いします。」
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