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再生-421 [花鈴-43]

 兄が取り組むことになった会社は、これまで株式会社花鈴が再生に取り組んで来た事業所より、随分大きいが、改革のポイントは同じみたい。
 まずは労働環境の改善、トイレの改修は株式会社花鈴でも真っ先に行って来たこと。
 田舎で利益の少ない事業所のトイレは本当に酷かったのだ。
 名古屋で暮らしてた兄が久しぶりに帰って来たので…。

「お兄ちゃん、新しいトイレの反響はどうだった?」
「勿論喜ばれたよ、工場のトイレは酷かったからな。
 倒産かもって噂が流れていたみたいだけど、それを一気に吹き飛ばすことにもなった。
 マジな話、社員との面接ではトイレが綺麗になったから辞めずに続けると話す人が何人かいてね。」
「酷いトイレに倒産の噂では辞めたくもなるわ。
 面接では何か問題点が見つかったりしたの?」
「うん、派遣社員が低く扱われていた。
 日給がパート従業員より良かったから、パート従業員の不満を抑える為だったのかも知れない。」
「給与体制の見直しは進んでいるの?」
「ああ、社長交代記念として少しだが一時金を支給しつつ、労使交渉ってのを進めてる。
 派遣社員の内、希望者は我が社の正社員として雇用する方向だよ。
 基本的に派遣社員は使わないつもりなんだ。」
「同一労働同一賃金でスッキリさせるべきだものね。」
「賃上げするとして、資金は大丈夫なの?」
「一時的に銀行から借り入れることになるかもだけど、失敗した商品のリニューアルに対して前向きな社員が結構いて心強いんだ。
 前社長のネーミングセンスの無さと宣伝費をケチった姿勢に対する批判を口にする人が多くてさ。」
「新しい商品名は?」
「社員達が持っていた案から採用した。
 包装のデザインが確定したので、本格的に売り出して行く計画を練ってるところさ。」
「まずはYouTubeチャンネルで反応をみないとね。」
「通販部門を立ち上げたから、宣伝動画が良ければ直ぐに結果が出ると思うよ。」
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再生-422 [花鈴-43]

 兄が値切らなかったからかYouTubeチャンネルスタッフが本当に頑張ってくれ、兄の会社とその商品を紹介する動画はなかなかの仕上がりに。
 高校一年生が社長に就任したことがマスコミに取り上げられたことも有り、動画再生回数はうなぎのぼりとなった。
 通販では売り出しに一度失敗した商品の価格を高めに設定したにも関わらずバカ売れだそうだ。

「姫さま、社長が交代するだけで会社がこんなに変わるとは思っていませんでした。」
「武田さんのお父さまだって力が無かった訳では無いのですよ、今は副社長としてしっかり動いて下さっていると兄も評価しています。」
「それでも離婚は確定だそうです、子ども達が大学生になっていますので気楽なのかも知れません。」
「人間は複雑で、どこまでが本能なのか分からないと思うのですが、子どもを産み育て終えたのなら夫婦で居続ける必要は無いのかもね。」
「姫さまはそんなことまで考えておられるのですか?」
「社会学的に考えると言うことは、人の心理や本能を知る作業でも有るのです。」
「社会学ですか…。」
「人間社会のありとあらゆる事に目を向けることは、会社を運営して行く上でもプラスになります。
 折角社員が良い商品を開発したのに、それをヒットさせられなかった背景は理解出来ましたか?」
「はい、商品名を変え、きちんと宣伝したから売り上げが劇的に伸びたと聞いています。
 経営者を意識してはいたのですが、自分は色々足りなかったのだと思い知らされました。
 その上で、一社員として父が副社長となった会社に就職しようと、一社員として真面目に働きたいと考えています。」
「昇進して社長の座を目指すとか?」
「そんなことまでは考えていません、自分は高校生のお兄さまの足元にも及ばない存在ですので。」
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再生-423 [花鈴-43]

「それでも、せめて取締役を目指すぐらいの気概は持って欲しいです。
 でなければ、会社として副社長の息子を雇うリスクに見合わないと思いますよ。」
「う~ん、まだ自分は甘く考えてると言うことでしょうか?」
「副社長の息子として特別視されるとかは意識していないのですか?」
「父に対する評価は低そうですよね…。」
「かも知れませんが、今は副社長として頑張っておられると聞いています。」
「離婚関連で頑張らざるを得ないのかも知れません。
 浮気相手との再婚を視野に入れてるとの噂も耳にしました。」
「お父さまからではなく?」
「自分が姫さまを通して会社再建の切っ掛けを作ったので、自分に対して離婚や再婚の話はしづらいのでしょう、離婚して直ぐ再婚と言うのは…。」
「再婚して子を授かりたいとか?」
「浮気相手の女性がどう考えてるのかは全く分かりません…。」
「生き物が子孫を残そうとするのは自然だと思うのですが、人間は社会構造が複雑になり微妙ですものね。
 それでも、弟か妹が新たに出来たら楽しく無いです?」
「全く実感が湧きませんよ…、歳が離れ過ぎて一緒に遊べるとは思えません。
 再婚に関しては両親が好き勝手にやってくれて良いと思ってはいるのですが…。」
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再生-424 [花鈴-43]

「大学生にもなると親の離婚でも軽く受け流すことが出来るのですか?」
「子どもの頃は家族旅行に行くことも有りましたが、最近は家族揃って食事することすらなくなり、家族それぞれが自由に生きていると言いますか…、母にとっても父の浮気は離婚の口実として調度良かったのかも知れません。」
「そうですか…、お母さまも幼子を抱えての離婚ではないから気楽なのですね。」
「みたいです、ただ、お金のことで揉めそうなので、自分は早く就職して自立したいと考えています。
 取り敢えず家を出たくて合宿所暮らしを希望した訳で。」
「大学の単位は?」
「卒業に必要なのは卒論が残ってるぐらいで大学には殆ど行く必要がないです。」
「バイトはしていないのですか?」
「その必要が有りませんでしたので、まだ経験していません。」
「それなら、株式会社花鈴で働いてみますか?
 大学卒業までで構いませんから、仕事を経験して置くことは就職後の役に立つと思います。」
「そうですね、合宿所で卒論をまとめながら、ここで働かさせて頂けたら有難いです。
 バイトをして来なかったことで世間知らずになってた自覚が有りまして。」
「三月までだとしても正規雇用で社員教育も受けて貰います。
 兄が社長となった会社に就職するのなら、基本的な考え方は我が社と同じですので、学生の内に先行して社員教育を受けられるぐらいに考え、真面目に働いて下されば自立への道を早められるでしょう。」
「有難う御座います、姫さまと出会うまでの自分はひどいものだったと自覚してまして、これからは真面目に取り組みたいのです。
 社員教育に関する資料が有れば予習しておきたいのですが如何でしょうか?」
「では社員サイトへのアクセス権を取得して頂ける様に…、まずは社長との面接をお願いします。」
「分かりました。」
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再生-425 [花鈴-43]

 武田さんのフォローを進めたのは今までの流れが有ったから。
 元々過疎地の再生が私達のテーマだったのだが、移住者を受け入れる過程で母子家庭の援助などが視野に入る様になり生活困窮者の再生を意識。
 悩める大学生の再生はその延長線上のことで、倒産し掛けていた会社の再生も兄が出来ると判断。
 兄は新規事業を起こすことを考えているが、再生事業によって経験を積みたいと積極的に動いてくれたのだ。

「お兄ちゃん、倒産し掛けた会社が直ぐに売り上げを伸ばし始めたのは新社長の力量かしら?」
「一度は失敗した商品のリニューアルに成功出来たのは、社員や自分に協力してくれた人達のお陰で、自分は少し動いただけだよ。」
「でも、その少しが無かったら倒産してたのよね?」
「だな、低迷している企業でも、条件が揃えば一工夫で再生出来ると分かった。
 余力が出来たら株式会社花鈴の様に低迷している事業所の買収を考えて行きたいかな。
 株式会社花鈴は概ね好調なのだろ。」
「まあね、社会福祉関係の事業は赤字にならなければ成功なのだけど、店の収益は右肩上がり、リピーターが結構増えて安定して来ているの。
 このエリア全体を農業公園として意識して貰える様に色々な作戦を実行に移し始めている所だけど。」
「過疎地の再生は進みそうなのか?」
「既に進んでいると思うけど、イチゴ狩りとかの新バージョンとして、トマトなどの野菜を自分で収穫する施設を計画中、大ヒットは狙えなくても、普段食べてる野菜が畑で育ってる姿を子ども達に見せようとアピールしたらどうかとね。
 キャンプの食材を自分達で収穫しようと言うのが売りで、肉屋さんも併設出来ればと考えてるのよ。
 それだけだと一年を通して作業とはならないのだけど、社員には農閑期、手作りお土産を作って貰うとか、労働力を最大限に活かせる形を検討してるの。」
「季節変動を意識して非正規雇用の派遣社員を使う会社が有るが、俺達は安定雇用を大前提にしたいからな。」
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再生-426 [花鈴-43]

「エリア内の調査結果では、真面目に人手が欲しいと考えてるのはうちぐらいなのよ。
 安い給料で社員をこき使ってる会社が幾つか有ると分かったけど、そこに将来性は感じられなくて。」
「そんな会社でも働いてる人がいるのだよな…。」
「人それぞれ、様々な事情が有るのよ。」
「う~ん…、そんな人達の生活改善も考えて行かないと…。」
「そんな会社の買収は、収益性を考えたら効率悪いわよ、お兄ちゃんは効率重視でしょ?」
「まあな、でも事業展開に成功した自分を思い描いた時に、お小遣いが月に十億と考えてみたのだけど、そんな額は贅沢を余程頑張っても使い切れないだろうと思ったんだ。」
「必死になって無駄遣いしないと無理で疲れるかもね。」
「今の自分は生活費を考えなくて良いから気楽に生きてるけど、そうではない人の存在を知った。
 別に人助けとか高尚な考えでは無く、ゲーム感覚で人の為にお金を使い、その過程で利益を得て行くスタイルを目標にするのも有かとね。」
「人助けをしながら利益を得て行くことが目標?」
「悪くない考え方だと思わないか?
 労働者の環境改善を考えられられない経営者から、労働者を開放する勇者とか。」
「悪くは無いけど、通学から解放されてゲームをやり過ぎてた人の発想かも。」
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再生-427 [花鈴-43]

「俺達は恵まれた環境に有るから、多少のハンディが必要だと思ったのだけどな。
 花鈴達も弱者に目を向けた事業展開をしてるだろ。」
「小規模なのとYouTubeチャンネルからの収入が有るから出来ることだと理解してるわ。
 会社の基本方針がこの地の再生だから協力者も多いし。
 お兄ちゃんは会社を再生した後の展開をどう考えてるの?」
「うちの会社を社員にとって働き易い状態に出来たら、それを取引先企業にも広げられたらと思ってる。
 各取引先の様々な状況を詳しく調査した上でね。」
「取引先と言っても大小様々でしょ?」
「うん、うちが倒産していたら連鎖倒産してたで有ろう会社があるし、殆ど影響を受けなかったと思える会社もね。
 調査結果次第で買収を考える所が出て来る可能性を考え始めているんだ。」
「効率重視?」
「それがメインだが、労働環境の改善を進めないといずれ人手不足に陥りそうな会社も有ってさ。
 その前に企業買収出来るだけの余力が必要だけどな。」
「リニューアル商品が価格を上げたのにバカ売れしてるみたいだから見通しは立っているのでしょ?」
「まあな、花鈴が宣伝してくれただけで売り上げが一気に伸びた。
 ただ、利益は、まず設備投資に充てる必要が有るんだ。
 老朽化した機械では効率が悪いだろ。
 中小企業は人材募集に苦労してる、今より社員が減っても工場を回せる様にした上で、もし人材を集められたら更なる発展を考えられるんだ。」
「そっか、うちはここへの移住を考える人が増えてるから、それに乗っかってるけど、普通の過疎地ではね…。」
「過疎地には大規模農場の可能性が有りそうなのだけど、北海道ぐらいでないと難しいみたいだな。」
「そもそも山奥の過疎地にまとまった平地は少ないし、土地の所有者がね…。
 土地の区画整理を進めたくても、先祖からの土地だから手放せないとか、所有者が分からなかったり。
 私達が動き始めなかったら誰も欲しがらなかった土地なのに、もっと高く売れる様になるまで待つと言う人もいるのよ。」
「使われて無い土地の個人所有にはもっと制限が有っても良いのかもな。」
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再生-428 [花鈴-43]

「そこまで考えると法的…、政治的な要素が…。」
「国家には国民の権利を守る義務が有るが、長期間に渡って放置されたままの土地は都市部にも有るそうでね、限られた土地が有効利用されてないことに納得の行かない人は少なく無いのではないかな?」
「都市部では固定資産税がそれなりの額になるのに?」
「空き家対策特別措置法によって特定空き家に指定されたら固定資産税は六倍になる。
 ただ、周辺環境に対して問題の有る物件が対象。
 空き家でも周りに迷惑を掛ける様な状態になって無ければ、使われない土地家屋が残り続けるのさ。
 固定資産税なんて安いものだと考えてるのか土地価格が上昇してから売ると考えてるのか分からないが、地主はお金に余裕が有るのだろうな。」
「そのお陰で残念な土地が…、お兄ちゃんは法律を厳しくして空き家を減らしたいと?」
「単純な話ではないのだけど、そうすべきだろ。
 少なくとも都市部の空き家は無駄でしかないと思わないか?」
「そうよね、ここでも無駄に放置されてる耕作放棄地が景観を損ねてるし。」
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再生-429 [花鈴-43]

「それでも区画整理の話は進んでいるのだろ?」
「ええ、役所が絡むから時間が掛かりそうだけど、まずはまとめて手に入れた土地ではね。
 取り敢えず私道として整備してから市と相談して市道にするか、始めから市道として整備するかで市長とも相談中。
 市としても再開発は嬉しいことでしょ、うち関連で税収が増えてるのだから道路ぐらいは作って欲しいわ。」
「市から何か要求はあるのか?」
「市として農業公園に関わりたいそうだけど、具体的な話はまだ何もなくてね。
 ごちゃごちゃ言われる前に再開発計画を完成させ、工事を始めたいのよ。」
「土地を手放さない人がネックになりそうだよな。」
「うん、一応調査して全く協力してくれ無さそうな人の土地を避ける形での区画整理と道路整備を考えているのだけど、市が絡むと微妙なの、市長としては、より立派な公園にしたいみたいで。」
「と言う事は道路以外でもお金も出すつもりなのか?」
「そこなのよ、自分とこの予算はあまり使わず、公園整備には関わってるとアピールしたいみたいなの。」
「こちら側としてはどうするんだ?」
「お父さんは、市と良好な関係が作れるなら、市の予算は道路建設の他は少しにして、それでも市長が活躍したみたいな感じにしようって。
 次の選挙で彼が落選しても影響は少ないからと。」
「確かに一月の発言は撤回したとは言えイメージを悪くしたからな。
 うちの事業を後押しするとアピールするのも選挙対策だろう。」
「でも、お父さんは前から対立候補の準備をしていたそうでね。
 その人が当選したとしても直接的な金銭的利益を発生させてはならないのだけど、再開発などで動き易くなることは間違いないのだとか。」
「不正はダメだけど、まともに手続きしても市長の気分で遅くなることが有ったって話してたものな。
 本社移転は市にとってメリットしかないのに、市長個人には何の見返りもない事が不満だったみたいだったとか…。」
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再生-430 [花鈴-43]

「政治家の問題行動が、よくニュースになるよね。」
「それだけ責任ある立場だからな。
 立法府である国会の議員が違法行為を行っていたのでは話にならないだろ。」
「あの市長、金銭がらみの不祥事を起こしていなければ良いのだけど。
 政治に関わる人達ってどうしてあんなに違法行為に走ってしまうのかしら?」
「自分は特別だとでも思っているのかもな。
 ただ殆どの議員は真面目で、ニュースになるのは極一部、大きく取り上げられるから目に着くけど。」
「そうよね、過疎地によっては議員の成り手がいなくて困ってるという話も聞くし。
 ここは面積の広い市の一部だから、その心配はないみたいだけど。」
「それでも本気で再生を考えるのなら、議員選びは慎重にならないとな。
 俺達に選挙権は無いけど…、票を集められる能力が有っても市の為に働けない人ではダメだろ。」
「本当の意味で優秀な人は政治家の道を選択しない気がするわ。
 選挙で当選しなくてはならないし、一度当選したからと言って、次に当選出来る保障は無いでしょ。」
「だな、その辺りに問題が有るのかも、金銭がらみの不祥事を起こす輩は、選挙に勝つことばかり考えていそうだよ。
 うちの経理部長は政治家に失望し過ぎて諦めたと話してたぐらいだからな。」
「人々を失望させてる政治の現場は再生出来ないのかしら?」
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