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F組三国志 11 黒川淳一 ブログトップ

F組三国志 11-1 [F組三国志 11 黒川淳一]

あっ、時間だ。
えっと、名前を確認して…、黒川淳一、おっけいだ。
名前書き忘れたらやっぱ零点だよな…。

は~、やっとテストが終わった。
自分なりにがんばったけど、結果はどうなんだろう?
中学の頃なら確実に上位って手ごたえなんだけど、甘くはないだろうな。
ま、やるだけやったからよしとしておこう。

「淳一、どうだった?」
「おう、まあまあだな、一応、名前までの最終確認もできたし、徹は?」
「百点狙いだったけど、ちょっとね。」
「さすがに甘くはないわな、俺だって簡単に満点とは思えないよ。」
「でも、まあ、学年順位はそれなりになりそうだ、他のクラスの連中はF組ほどやってないみたいだからさ。」
「ああ、結果発表は楽しみでもあるな…、他のクラスか…、それにしてもF組って。」
「何?」
「F組って一気に変わったと思わないか?」
「そうだよな…、哲平から話しを持ちかけられたのは遠足の前だったか。」
「あの頃は森たちが岡崎とかいじめていたし、今から思うとクラスがばらばらだった。」
「きっかけは遠足か?」
「う~ん、省吾が秋山さんとつき合い始めたってことかもな。」
「確かにそうだ、委員長は四月からがんばってくれてた気がするけど、みんな協力的ではなかった、まあ俺たちも含めてってことだけど。」
「それが、遠足の前に省吾が哲平に声をかけて、俺たちも動いたけど、クラスの雰囲気が急に良くなった。」
「うん、省吾の提案にみんなが乗って…、でも省吾の企みはいつも委員長から発表されてきたよな。」
「それには理由があるんだ、秋山さんが話す時に、省吾は自分の考えが秋山さんにきちんと伝わっているかチェックしているんだって、その前に哲平や俺たちにも話しは通してくれていたけどな。」
「へ~。」
「それだけじゃなくてな、反発を和らげる効果もあるんだってさ。」
「えっ? どういうこと?」
「省吾が直接クラスのみんなに話すと、それは省吾の考えとみんなが受け止める、それが秋山さんの口から発表されると秋山さんも賛成した考えだから、となって重みが増すというということなんだってさ。」
「人の心理ってことか…、そこまで考えてるなんてやっぱ違うな、省吾は。
「なあ、梶田さんのこと、知ってたか?」
「梶田さん、テスト前にお前らのチームに入ったって?」
「うん、で、ちょっと聞いたんだけど、彼女のお父さんの会社の建て直しとかに、省吾が関わるらしい。」
「えっ、梶田さんは社長令嬢ってことか。」
「いや、驚くのはそっちじゃなくて。」
「お父さんの会社の建て直しに関わる? 高校生がか?」
「実際に動くのは大学生らしいけどな。」
「まじで?」
「ああ。」

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F組三国志 11-2 [F組三国志 11 黒川淳一]

今日は後、ホームルームで終わりなんだけど…。
あっ、秋山委員長のお出ましだ。

「皆さん、テストお疲れ様でした。
今日のホームルームはF組通信でもお知らせした通り、今までのF組の総括と、今後の活動について、それとテストの打ち上げ、となります。
ホームルームの時間内は全員参加となりますが、その後は自由参加です。
席の配置もチーム関係なく、今日は机なしの円形で二重か三重にしたいのですが、早く帰りたいという人は極力外側になっていただけると助かります。」
「おう、じゃあ、机動かそうぜ。」

「はは、みんなの顔が見えるのって、なんか新鮮だね。」
「でもさ、何となくチームが集まっていないか?」
「テストを共に戦ってきた仲間だからな。」

「では、ホームルームを始めます。
まずは、F組のみなさんの協力に感謝です。
他のクラスとは違った取り組み、企画に対して、反対する人もなく、みな協力的で助かりました。
特に省吾の実験的企画や大学生の調査への協力は、みなさんに余計なお時間を取らせてしまうこともありましたから。
本当に有難うございました。」
「うん、みんな有難うね。」
「省吾や美咲にお礼言われるようなことじゃない、逆に俺は二人に感謝してるぞ。」
「俺も!」
「私も!」
「美咲さま! 有難う。」
「お師匠さまに感謝!」
「四月の頃なんて、こんな楽しいクラスになるなんて思いもしなかった。」
「遠足楽しかった。」
「はは、テスト勉強、楽しかった。」
「みんな…、ありがとう…。」
「美咲さま、涙目だ…。」
「ねえ、省吾さまに質問していいかな。」
「なに?」
「大学生の人たちとお師匠さまの関係ってどういうことなの?」
「うん、今日、みんなに話そうと思ってたんだけどね…。
え~っと、自分ではちょっと話しにくいことなんだけど…、メインは俺の親父の教え子でね…。」
「省吾、俺が説明しようか?」
「哲平、助かる、頼むよ。」
「大学生の人たちは、チーム赤澤っていう、省吾をリーダーとして、はは、学生たちが勝手に結成したグループのメンバーなんだ。」
「え~、お師匠さまって、そういうレベルのお人なの?」
「ああ、チーム赤澤の人たちによれば、みなさん、省吾から色々教えていただいているそうだ。」
「え~、省吾さんは大学生のお師匠さまでもあるのね。」
「すっご~い!」
「やっぱただものじゃないぜ!」
「俺たちの調査をしたのは教育学部関係の人たち。
プロジェクトFという、省吾の実験的取り組みを検証して卒論とかに生かしていく企画を立ち上げたってとこ。
遠足の企画に興味を持った人が、数学小テスト団体戦の結果、つまりF組が学年ぶっちぎりトップという結果に驚いて結成を呼びかけたんだ。」
「そりゃ驚くよな、その結果を出したのが教師の力量じゃない訳だから。」
「ああ、で、二つ目のプロジェクトが立ち上がるんだけど…、梶田さん発表してもいいかな?」
「もちろん、でも、私から話させてもらえませんか?」
「おっけい。」
「私の父は会社を経営しています。」
「おお、梶田さん、社長令嬢だったんだ。」
「でも、会社は資金繰りが苦しくなっていまして、私は進学をあきらめていました。
そんなことで落ち込んでる私に、美咲さまや省吾さまが気付いて下さって、チーム赤澤の学生さんたちに声をかけて下さったのです。
その結果、チーム赤澤で、父の会社再生を目指す、プロジェクト梶田が立ち上がることとなって、父と共に私もチーム赤澤のメンバーに加えていただくこととなりました。」
「あ~、なんかうらやましい。」
「自分もチーム赤澤のメンバーになりたいです。」
「はは、星屋はお師匠さまの一番弟子は自分だって言ってたもんな、なあ省吾、チーム赤澤のメンバーになるのは難しいのか?」
「いや、学問に真面目に取り組む気持ちがあってチームの趣旨に賛同してくれれば、アンケートに答えてもらうだけで良い。」
「チームの趣旨?」
「えっと、今まで大人たちが作ってきた枠組みに囚われない心で、明日の日本を考えていこうって感じかな。
まあ、そんな話しをしてたら、かなり優秀な人たちも面白がってチームを作ろうってことになったんだ。
チーム赤澤って名称には抵抗があるんだけどさ、個人的に。」
「ロックだ! 私もチームに入りたい!」

何かすごいことを、さらって言ってないか、省吾…。
俺も参加したい。
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F組三国志 11-3 [F組三国志 11 黒川淳一]

「俺も参加したいけど、どんなことをしたらいいのか分からないな。」
「淳一、それを考えることも、チームの目的の一つなんだ。」
「えっ?」
「何かしらの研究テーマを見つけ、そのテーマを掘り下げる、ってことを、チームのメンバーで協力しあってやっていけたらと思っている。
それを、他の人の研究テーマに協力しながら、自分のテーマを探してもいいとも思うんだ。
梶田さんは、お父さんの会社を見つめることを始める。
それは、梶田さんの視点、もし淳一が協力してくれるとしたら、それに淳一の視点が加わる。
それを梶田さんにとってマイナスにすることなく、プラスにすることがチームの一つの目標。
みんなで考えて、良い方向へ持っていく。
そして、そのことが淳一にとって良い経験となることも大切なことなんだけどね。」
「俺で良ければ協力したいけど。」
「うん、ありがとう。」

「お父さま、ちさとはチーム赤澤のメンバーになれるでしょうか?」
「もちろんさ、演劇を通して演ずるというテーマを持ってるからね。
知ってる人も多いと思うけど、ちさとは俺の娘って役どころを演じてる時もある。
文化祭を意識してのことなんだけど…。
ただ…、その内、極悪非道の大悪魔なんてのを演じ始めるかもしれないから、みんな気をつけてね。」
「はは。」
「あら、お父さま、私はせいぜい小悪魔ですわ。」
「ははは。」

「チーム赤澤って、何人ぐらいいるんですか?」
「う~ん、とりあえず四十人は越したらしいけど、今増えたし…。」
「入会金とか会費とかは?」
「えっ? そんなこと考えてなかった。
別に金儲けが目当てじゃないからね。
う~ん、今の所は必要ないってことかな、将来的にはわからないけど。」
「チームに、登録? する方法はどうなの?」
「今のメインスタッフが面接して、問題なければアンケート用紙に記入してもらってって感じ、個人データはパソコンデータベースで管理している。
竹田さんって人が、絶対人数増えるから、初めからきちんと管理できる体制を整えるべきだって。
今、参加を表明してくれた人には後でアンケート用紙を配るからね。」
「チーム赤澤に参加するってことは、大学生たちとも交流できるってことですか?」
「もちろんっていうか、チームの目的の一つでもある。
俺たちをとりまく教育システムは、同学年との付き合いに限定される傾向が強すぎるって…、俺の叔父がよく言ってることなんだけどね。
学校では一日の大半を同じ学年の人と暮らしている。
けど社会に出たら、うんと年上の人から年下の人までのつきあいになる。
その環境の変化についていけない人も少なからずいるみたいなんだ。
まあ、視野も狭くなってるって、叔父は言ってた。」
「あっ、省吾さんは大学生たちとの交流もあるから広い視野を持ってるってことなんだ。」
「はは、親父たちはそんなことを目論んでいたみたい。」
「へ~、どんな感じで?」
「留学生をうちに呼んだりしてね…。
小さい頃、留学生の研究材料にされたこともあった。
カナダからの留学生だったんだけど、英語しか話さないんだ。
でも、よく遊んでくれて、帰国してからも手紙とかメールでやりとりしてるけど、この前久しぶりに日本に来てね。
そしたら日本語ペラペラでさ。
何でも俺は、幼児期における語学習得能力の研究材料だったらしくて、俺とはあえて英語のみにしていたそうなんだ。
まあ、おかげで英語は得意教科になったけどね。」

なんかうらやましいような…。
でも俺と省吾だったら、全然違う結果になったんだろうな…。
えっ? 得意教科? 省吾に不得意な科目ってあるのか?
得意でなくても俺たちに教えるレベルってことか。
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F組三国志 11-4 [F組三国志 11 黒川淳一]

「では、ここで省吾への質問やチーム赤澤のことは打ち切って、今後のF組について、球技大会のことは正規のホームルーム時間内に済ませたいので、協力お願いします。」

球技大会のことなんかも委員長が…。

「ねえ、委員長、みんなに話したいことがあるんだけど。」
「何? 黒川くん。」
「なあ、みんな、四月にさ、訳の分からないまま係りとか決めたけど、今まで秋山さんばかりに動いてもらってた気がしないか。」
「そうよね、美咲さまは通常の委員長の仕事だけでなく企画関係、学習関係でも動いていてくれたから。」
「でしょ、だから、係りの見直しをしてはどうかと思うんだ。
球技大会も…、そうだな球技大会の委員なんてのを決めてもいいんじゃないか。
今まで委員長がやってくれてた仕事もみんなで分担してさ。」
「おう、淳一に賛成、俺もF組のために働きたい。」
「私も。」
「ねえ、秋山さん、球技大会のことで今日やっておかなきゃいけないことは、それぞれの種目のチーム分け、その最終確認ぐらいなんでしょ?」
「ええ、だいたいはみんなの希望に副って割り振りが出来てるけど、バスケ希望者が多くて、ドッジボール希望者が足りてないの。」
「それぐらいの調整なら俺たちでも、な、徹。」
「おう。」
「そうだ、この後の打ち上げに参加しない人って誰?」
「そうか、抜ける人の希望を聞いておけばゆっくり相談できるな。」
「えっと、まずは球技大会、俺たちで仕切ってもいいか?」
「おお、黒川に任せる。」
「意義な~し。」
「黒川くんと林くんだけでは…、女子は?」
「私、やっても良いわ。」
「舘内さん、ありがとう。」
「私もやりたい。」
「うん、加藤さん、ありがとう、え~っと他に希望がなかったら、この四人で球技大会仕切っていいかな?
え~っと、一応賛成の人挙手をお願い。」

みんな手を挙げてくれた。
じゃあ…。

「決定だね、球技大会のことは委員長から俺たちが引き継ぐ、で、この後の打ち上げに参加しない人の希望とか先に聞いておきたいんだけど。」
「じゃあさ、打ち上げに参加しない人はこっちに来てくれない、淳一は係りの見直しについて、残る人たちと相談してくれよ。」
「おっけい。」

あれ? みんな動かないな。

「打ち上げには全員参加ってこと?」
「はは、林の出番はなかったな。」
「じゃあ、係りについて、委員長、俺が進めても良いの?」
「ふふ、黒川くん、どうぞお願いします、ね、省吾。」
「実は、F組内の役割分担ということも今日みんなに相談したかったことなんだ。
淳一や徹が積極的に動いてくれると助かる。」
「ならば、まずは今までのクラスの仕事の見直しだね…、大変そうな仕事としては…。」
「F組通信じゃない?」
「確かにそうだ、秋山さん、ずいぶん発行回数が多いと思ったんだけど、どうなの?」
「そうね、今の所は、私や省吾が書いた原稿を、麻里子が整理してくれて、それをしずかちゃんが仕上げ。
後の印刷とかは、星屋くんとちさとが手伝ってくれてるけど。」
「そうか…、でも印刷とかだったら秋山さんがいなくても済ませられないかな。」
「星屋、どう?」
「は、はい、じ、自分も、て、て、手順は…。」
「星屋! しっかりせんか!」
「は、はい、姉御、すいやせん。」
「ははは。」
「ふふ、私も慣れたからそんなに大変じゃないけど、そうだな、みんなもF組のための仕事に参加したら、もっとF組が好きになるかも。」
「し、清水さんの言う通りです。」
「あら、だめよ、和彦さんはちゃんと、ちさとお嬢さまって呼んでくれなきゃ。」
「ははは。」
「省吾さまからの参考資料の印刷とかも大変だったんじゃない?」
「そうね、そっちも手伝ってもらってたけど。」
「なあ、みんな、秋山さんじゃなくてもできることは、極力みんなで協力しあってやっていかないか?」
「賛成、俺も手伝うよ。」
「私も。」
「じゃあ、その取りまとめを誰かに頼めないかな、俺がやってもいいけど。」
「え、えっと。」
「おっ、星屋が手を挙げた。」
「そうだ、星屋、それでこそあたしの一の子分だ。」
「はは。」
「和彦さん、ちさともお手伝いしますからね。」
「えっと、印刷機の使い方とかは大丈夫だから…。」
「ほんと、星屋くんは先生方より手馴れたって感じだから、お願いね。」
「は、はい。」
「奥田さんや山影さんはどう? 大変じゃない?」
「全然、原稿がきちんとしてるから、私はたいしたことしてないの、静さんは?」
「私も大丈夫です、フォーマットが出来上がっていますし、麻里子さんからのデータもきちんとしてるから大した手間ではないんです。」

「そうすると、後の仕事は? 秋山さん。」
「後は、委員長としての仕事かな。」
「省吾さまの秘書的なことは?」
「そ、それは私がするから。」
「はは、絶対譲る気はないって感じだね。」
「ははは。」

「じゃあ、とにかくみんなで協力して、もっとF組を盛り上げようってことでいいのかな? 秋山さん。」
「ええ、みんなよろしくね。」

ちょっと気になってたことが解決かな。
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F組三国志 11-5 [F組三国志 11 黒川淳一]

「ねえ、みんな、提案があるんだけど。」

清水さんが立ち上がった。
何だろう、提案って。

「えっとね、美咲さまの呼び方、みんな秋山さんって呼んだり委員長って呼んだりしてるけど、みんな、美咲さまって呼んでくれないかな、ちょっと抵抗のある人もいるかもしれないけど…。
私はね、F組って何か別世界って気がしてるの。
う~ん、私の勝手な思い込みと言われてしまうと何も返せないけど。」
「ちさと、わかるわよ。」
「ありがとう由香。
もう一部には浸透してるけど、みんながのってくれたら嬉しいと思ってさ。
私は、お母さまって呼ぶこともあるけど…、私のお父さまは、省吾さまとかお師匠さまでさ。
え~っと、私のことも、ちさとって男の子も呼び捨てにしてくれたらって思うし、あっ、和彦さんはちゃんと、ちさとお嬢さまって呼んでね。」
「ははは。」
「面白いかも、女子の間では結構広まってるから、男子がのってくれるかどうかってとこね。」
「そうよね、ファーストネームで呼び合ったら、よりフレンドリーな感じになるわよね。」
「まだ、付き合いが長いわけじゃないから抵抗があるかもしれないけど…。」
「そう言えば、哲平って、入学した頃から、哲平って呼んでくれっていってたな。」
「同じクラスの仲間になるのに苗字で呼びあってたら嫌だったからさ。」
「哲平さんの苗字忘れた。」
「ははは。」
「省吾さまのお考えは?」
「うん、お互いどう呼び合うかって大切なことだと思う。
哲平とも、四月の早い時期からファーストネームで呼び合っていたからか、いつの間にか仲良くなってた。
俺を、省吾さまと呼ぶ必要はないけどね。」
「それは、だめ、省吾さまと美咲さまはF組団結の象徴なんだから。」
「なんかなぁ~、そうそう、哲平は女の子限定で、哲平兄さんとかも有りって言ってたけど。」
「哲平さん、最近…、ああ、もう私には、妹の座しか残ってないの…?」
「ははは。」

「ちさとの言う通りF組の中で別の世界が広がり始めてるかも。」
「ちさとは文化祭で劇をやりたいのよね。」
「うん、でもまだ、お師匠さま、その奥方の美咲さま、二人の娘の私、お父さまの弟子、門下生の和彦さんって感じで人数不足なの、留美に脚本とか頼んでるんだけど…。」
「じゃあ、俺、お師匠さまの門下生になろうか。」
「黒川くん、ほんと! ありがとう。」
「えっと、ちさとお嬢さま、自分のことは淳一とお呼び下さいね。」
「はは、なら俺も、徹でいいから、三人目の門下生になるかな。」
「門下生ばかりじゃつまんないよね。」
「あっ、麻里子さん…、麻里子さんはね…。」
「ふふ、星屋くんの大好きなお姉さん、ちょっと弟に厳しいけどって、どう? 麻里子。」
「お師匠さまには弟の面倒を見てもらって感謝してる。」
「う~ん、省吾さまに、ちょっと恋心も抱いていて…。」
「お~、美咲さまと…、三角関係か?」
「ちょっと~、勝手に変な話しを作んないでよ。」
「でも、面白いんじゃないか、おしゃべり好きな、麻里子の友人たちが三人加わったぞ。」
「え~、でも、友人その一とかじゃ…。」
「私は友人その二で構わないけど。」
「じゃあ、その三は、私か。」
「ふふ、省吾さまの門下生に恋する友人ってどう?」
「おっ、そういう展開もあるか。」
「留美と考えてたテーマもあるんだけど。」
「ちさと、テーマって?」
「劇を通して訴えたいこと、伝えたいことをきちんと織り込みたいの。」
「真面目に取り組んでいるんだ。」
「もちろんよ、劇の中では面白いエピソードとかも盛り込みたいけど、大切なのは私たちが、劇を通して何を伝えたいかなんだ。」
「う~ん、F組の団結ってことを伝えられないかしら。」
「あのさ、私…。」
「榛、どうしたの?」

纐纈さん真面目な顔してる。

「私、ジャズダンスやってるの、で、劇中にダンスも取り入れてくれたら嬉しいんだけど…。
どうかな?」
「そうね…。」
「ダンスって言ってもね、難しいのばかりじゃないの、クラスのみんながきちんと向き合ってくれたら、ダンスを通してF組の団結を伝えられるかと思って。」
「じゃあ、洋子の歌も入れてもらえないかな。」
「麻里子…。」
「洋子の歌は、きちんと声楽の基礎からやってるから、ちょっと違うわよ。」
「へ~、それは聞いてみたいな。」
「歌あり踊りありって、ちさと、面白くない?」
「うん、留美、F組には色んな人がいる、楽しい脚本お願いね。」
「う~ん、歌と踊りは想定外だったから…。
そうだ、みんなの特技とか…、今のうちに教えてくれると嬉しいんだけど、どうかな。」
「あっ、淳一の特技はチェロだよ。」
「徹、それは秘密だって言ったろ。」
「でも、この前のコンクールで優勝したじゃないか。」
「あれは、ローカルな小さなコンクールだったし、チェロはバイオリンほどやってる人多くないからね。」
「それでも優勝だろ。」
「へ~、黒川くんて…、黒川くんのチェロ聞いてみたいなぁ~。」
「いや、そんな…、まあ小学生の頃にバイオリンから転向して、好きだから今も続けているけど…、ちょっと照れくさかったりする。」
「お願い、黒川くん、聞かせて。」
「舘内さん、チェロって結構大きくて気軽に持ち運びできないんだ。」
「でも…。」
「私も聞きたいな。」
「ほら、美咲さまも聞きたがっているし。」
「じゃあさ、一度、松永さんの歌や、淳一のチェロ、他に楽器とかやってる人がいたらその演奏を聞かせてもらったり、纐纈さんのダンスとかも見せてもらう機会を作らないか。
淳一、楽器の移動とかは何とかするから。」
「お~、省吾さまが動くぞ~。」
「はは、それを参考にして留美さんに劇を作ってもらう、ってどう?」
「うわ~、なんか楽しくなりそう。」

う~ん、クラスのみんなにチェロを披露することになるとは思ってなかった。
そうだ。

「ね、誰かピアノ伴奏してくれないかな。
即席のコンビになるけどさ。」
「伴奏したい!」
「おっ、四人も手を挙げた、黒川~、もてもてだな。」
「はは。」
「お願い私にやらせて!」
「舘内さん…。」
「お~、亜美ったら何か積極的ね。」
「別に一人に絞る必要ないだろ、淳一。」
「ああ。」

ちょっと驚いた…、舘内亜美か、球技大会の係りにもなってくれたし。
チーム麻里子の中でも明るくて…。
そういえば…。
俺って鈍感だったのか?
俺の勘違いじゃなかったらいいけど。

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