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F組三国志 11-5 [F組三国志 11 黒川淳一]

「ねえ、みんな、提案があるんだけど。」

清水さんが立ち上がった。
何だろう、提案って。

「えっとね、美咲さまの呼び方、みんな秋山さんって呼んだり委員長って呼んだりしてるけど、みんな、美咲さまって呼んでくれないかな、ちょっと抵抗のある人もいるかもしれないけど…。
私はね、F組って何か別世界って気がしてるの。
う~ん、私の勝手な思い込みと言われてしまうと何も返せないけど。」
「ちさと、わかるわよ。」
「ありがとう由香。
もう一部には浸透してるけど、みんながのってくれたら嬉しいと思ってさ。
私は、お母さまって呼ぶこともあるけど…、私のお父さまは、省吾さまとかお師匠さまでさ。
え~っと、私のことも、ちさとって男の子も呼び捨てにしてくれたらって思うし、あっ、和彦さんはちゃんと、ちさとお嬢さまって呼んでね。」
「ははは。」
「面白いかも、女子の間では結構広まってるから、男子がのってくれるかどうかってとこね。」
「そうよね、ファーストネームで呼び合ったら、よりフレンドリーな感じになるわよね。」
「まだ、付き合いが長いわけじゃないから抵抗があるかもしれないけど…。」
「そう言えば、哲平って、入学した頃から、哲平って呼んでくれっていってたな。」
「同じクラスの仲間になるのに苗字で呼びあってたら嫌だったからさ。」
「哲平さんの苗字忘れた。」
「ははは。」
「省吾さまのお考えは?」
「うん、お互いどう呼び合うかって大切なことだと思う。
哲平とも、四月の早い時期からファーストネームで呼び合っていたからか、いつの間にか仲良くなってた。
俺を、省吾さまと呼ぶ必要はないけどね。」
「それは、だめ、省吾さまと美咲さまはF組団結の象徴なんだから。」
「なんかなぁ~、そうそう、哲平は女の子限定で、哲平兄さんとかも有りって言ってたけど。」
「哲平さん、最近…、ああ、もう私には、妹の座しか残ってないの…?」
「ははは。」

「ちさとの言う通りF組の中で別の世界が広がり始めてるかも。」
「ちさとは文化祭で劇をやりたいのよね。」
「うん、でもまだ、お師匠さま、その奥方の美咲さま、二人の娘の私、お父さまの弟子、門下生の和彦さんって感じで人数不足なの、留美に脚本とか頼んでるんだけど…。」
「じゃあ、俺、お師匠さまの門下生になろうか。」
「黒川くん、ほんと! ありがとう。」
「えっと、ちさとお嬢さま、自分のことは淳一とお呼び下さいね。」
「はは、なら俺も、徹でいいから、三人目の門下生になるかな。」
「門下生ばかりじゃつまんないよね。」
「あっ、麻里子さん…、麻里子さんはね…。」
「ふふ、星屋くんの大好きなお姉さん、ちょっと弟に厳しいけどって、どう? 麻里子。」
「お師匠さまには弟の面倒を見てもらって感謝してる。」
「う~ん、省吾さまに、ちょっと恋心も抱いていて…。」
「お~、美咲さまと…、三角関係か?」
「ちょっと~、勝手に変な話しを作んないでよ。」
「でも、面白いんじゃないか、おしゃべり好きな、麻里子の友人たちが三人加わったぞ。」
「え~、でも、友人その一とかじゃ…。」
「私は友人その二で構わないけど。」
「じゃあ、その三は、私か。」
「ふふ、省吾さまの門下生に恋する友人ってどう?」
「おっ、そういう展開もあるか。」
「留美と考えてたテーマもあるんだけど。」
「ちさと、テーマって?」
「劇を通して訴えたいこと、伝えたいことをきちんと織り込みたいの。」
「真面目に取り組んでいるんだ。」
「もちろんよ、劇の中では面白いエピソードとかも盛り込みたいけど、大切なのは私たちが、劇を通して何を伝えたいかなんだ。」
「う~ん、F組の団結ってことを伝えられないかしら。」
「あのさ、私…。」
「榛、どうしたの?」

纐纈さん真面目な顔してる。

「私、ジャズダンスやってるの、で、劇中にダンスも取り入れてくれたら嬉しいんだけど…。
どうかな?」
「そうね…。」
「ダンスって言ってもね、難しいのばかりじゃないの、クラスのみんながきちんと向き合ってくれたら、ダンスを通してF組の団結を伝えられるかと思って。」
「じゃあ、洋子の歌も入れてもらえないかな。」
「麻里子…。」
「洋子の歌は、きちんと声楽の基礎からやってるから、ちょっと違うわよ。」
「へ~、それは聞いてみたいな。」
「歌あり踊りありって、ちさと、面白くない?」
「うん、留美、F組には色んな人がいる、楽しい脚本お願いね。」
「う~ん、歌と踊りは想定外だったから…。
そうだ、みんなの特技とか…、今のうちに教えてくれると嬉しいんだけど、どうかな。」
「あっ、淳一の特技はチェロだよ。」
「徹、それは秘密だって言ったろ。」
「でも、この前のコンクールで優勝したじゃないか。」
「あれは、ローカルな小さなコンクールだったし、チェロはバイオリンほどやってる人多くないからね。」
「それでも優勝だろ。」
「へ~、黒川くんて…、黒川くんのチェロ聞いてみたいなぁ~。」
「いや、そんな…、まあ小学生の頃にバイオリンから転向して、好きだから今も続けているけど…、ちょっと照れくさかったりする。」
「お願い、黒川くん、聞かせて。」
「舘内さん、チェロって結構大きくて気軽に持ち運びできないんだ。」
「でも…。」
「私も聞きたいな。」
「ほら、美咲さまも聞きたがっているし。」
「じゃあさ、一度、松永さんの歌や、淳一のチェロ、他に楽器とかやってる人がいたらその演奏を聞かせてもらったり、纐纈さんのダンスとかも見せてもらう機会を作らないか。
淳一、楽器の移動とかは何とかするから。」
「お~、省吾さまが動くぞ~。」
「はは、それを参考にして留美さんに劇を作ってもらう、ってどう?」
「うわ~、なんか楽しくなりそう。」

う~ん、クラスのみんなにチェロを披露することになるとは思ってなかった。
そうだ。

「ね、誰かピアノ伴奏してくれないかな。
即席のコンビになるけどさ。」
「伴奏したい!」
「おっ、四人も手を挙げた、黒川~、もてもてだな。」
「はは。」
「お願い私にやらせて!」
「舘内さん…。」
「お~、亜美ったら何か積極的ね。」
「別に一人に絞る必要ないだろ、淳一。」
「ああ。」

ちょっと驚いた…、舘内亜美か、球技大会の係りにもなってくれたし。
チーム麻里子の中でも明るくて…。
そういえば…。
俺って鈍感だったのか?
俺の勘違いじゃなかったらいいけど。

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