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鍵山昇-01 [高校生会議2-04]

僕が岩崎高校生会議の遥香システム研修を始めたのは高二の夏休み。
久兼リーダーを始めとする第十七支部のスタッフ達の研修が有る程度進んだタイミング。
遥香システムには興味が有った、天才少女がその構築の中心にいたという事だけでなく、一早く導入した会社に勤めているお父さんから色々聞かされていたからだ。
実際触れてみると、基礎的な部分は簡単だが応用まで本当の意味で使いこなすのは少し難しい事が分かった。
それでも何とかなりそうな気はしている…。

「鍵山、遥香システムはどう、君なら極める事が出来ると思うけど。」
「あっ、久兼くん…、奥が深そうだね、このシステムは。」
「ああ、でもこれからは趣味でも使って貰おうと思ってる、お堅い内容ばかりでは研修が進まないだろ。」
「と、言うと?」
「鍵山の趣味は生かせないかな、皆が遥香システムに慣れる為に。」
「う~ん…、システムってデータベースの意味合いもあるでしょ、だから…、笑わないでくれるなら話すけど…。」
「それって笑う用意をしとけって事か?」
「…、頑張って笑われない様に説明すると…、バーチャル王国として岩崎王国が動いているでしょ。
お遊びの世界でもバーチャルの…。」
「バーチャルの?」
「異世界の星を構築出来ないかと思ったんだ。」
「地球ではない星か、具体的にどんな事を思い描いてる?」
「架空の世界を一つ作り上げる、そこを舞台にしてライトノベルや漫画が描かれたら、読み手は基本的な世界情報が統一されている事で背景の理解が早くなるだけでなく、より親近感が湧くかも知れないと思ったのだけど。」
「一つの世界観を作って、複数の作品で共有するという事かな。」
「そんな感じ。」
「面白いね、かなり大変な事になりそうだけど、それだけにシステム研修として有効だね。
どう、運営リーダーかスタッフとして取り組んでみないか?」
「リーダーというのは苦手なのでスタッフとしてなら…。」
「じゃあ頼むよ。」

久兼くんは恰好良い、公認の彼女が三人いるのにアイドル並みの人気だ。
その彼が自分の案を真面目に受け止めてくれたのは嬉しい。
彼に話して二時間後には翌日スタッフ会議を開くからと連絡が有った…。
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鍵山昇-02 [高校生会議2-04]

翌日のスタッフ会議は自分にとって居心地の良い場ではなかった。
元々、人付き合いは得意な方ではないが、更に自分以外は全員が知的な美男美女、彼等は活発に…。

「鍵山からの提案は各自考えてくれたかな?」
「かなりの規模に出来そうね、遥香システムをどこまで使いこなせるかなんだけど、可能性は広がると思うわ。
色々な国の政治体制を描いてみたり各国の力関係、軍事力、貿易といったところまで踏み込めば政治経済の学習や研究に繋がると思わない?」
「通販部門を組み込む事も可能だろ。
有る程度出来上がったら、誰でも訪問できる形にして、シミュレーションゲーム的要素を組み込めないかな。」
「世界の完成度が高くなると現実逃避の場になり兼ねない、時間的制限を設ける必要が出て来るかもね。」
「学習システムと連動させ、テスト結果によってパワーが与えられるというのはどうかな?
テストで結果を出せば長時間滞在できる、結果が出せなかったら異世界への門は閉ざされたままとかさ。
高校生以外は別ルールが必要だけど。」
「悪くないね、問題は運営組織が大きくなる、と言うより大きくするから、如何にして遥香システム上に機能的な組織を構築出来るかだね、学習や仕事とのバランスが取れないとまずいし。」
「まずは役割分担ね…、剛太は神かしら。」
「ああ、それが無難だな、他の役職も兼務してるから。」
「まずは世界地図の作成かも知れないけど、スタートで紹介するのは一つの国だけにしておいて、順次周辺国を紹介して行く形でどうかしら?」
「無難だね、ただ大きな設定として、文明レベルとか魔法使いやエルフといった架空の存在、その設定を統一しておきたいかな。」
「ドラゴン、悪魔、鬼、幽霊などの登場時にはそれを審査する必要が有る訳だ。」
「後、著作権関連も気を付けないと行けないわよ。
他者の作品を侵害しては駄目なだけでなく、このプログラムに参加してくれる人達の権利を守らないとね。」
「そこは、岩崎本部の力を借りられると思うよ、専門部署に任せないと俺達では無理が有るからね。」
「お~、さすが神、というか人脈がかなり広がっているということか?」
「まあな、それが俺の役割だし。」
「私達は参加者を募って、その整理から始めれば良いのかしら?」
「そうだね、遥香システムをどの程度使いこなせるかで力量は把握出来る、ある意味、システムがフィルターの役目をしてくれると思うな。」
「これからは顔を合わせての会合は減らして、システム上で意見交換となるのね、他支部からの参加も有るでしょうし、人数も増えるでしょうから。」

目の前に座る美少女と目を合わせない様にしながら、その姿を盗み見るという事に、随分意識を持って行かれてはいたが、僕はひとまず、異世界設定を考える事になった。
異世界の惑星、その一つ目の国、一つ目の町、そこが異世界惑星の基準になる。
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鍵山昇-03 [高校生会議2-04]

異世界のバーチャル惑星を構築して行く作業に係わる事になって、高校生会議のメインスタッフと話す機会が増えた。
彼等は僕が内向的な事を理解して気を遣ってくれる。
今年度は久兼リーダー中心に優秀な人達が積極的に係ってるとは聞いていたが、それが間違いで無い事が良く分かった、頭が良いだけでなく人間的にも自分とは比べ物にならないレベルで良い人ばかりだ。
類は友を呼ぶという事だろうか。
彼らとの話は緊張するが…。

「鍵山、スタッフで学習会を開いてるのだけど参加してみる?」
「い、いえ自分なんか皆さんについて行けそうに有りませんから。」
「いや、鍵山はバランスが悪いみたいだけど、総合的に見て近い成績の奴もスタッフにはいるよ、時には教え合ったりしながらやってるんだ。
一人で夏休みの課題をこなすのも良いけど、ちょっとした気分転換になると思うよ。」
「気分転換ですか…、太一さんは成績優秀と聞きましたが、高校生会議にかなりの時間を掛けてるのですよね、学習時間は充分なのですか?」
「はは、俺達の中にがり勉はいないよ、皆、それぞれのペースを守って、学校の学習に時間を掛け過ぎない様にしているんだ。
時間を掛ければよりレベルの高い大学に合格出来るかもしれないが、それだけの事、その時間を高校生会議に費やす事の意味は大きいんだよ。
俺達の目標は大学に入る事では無く、将来どんな職場でどんな仕事をするか。
だから馬鹿みたいに受験勉強している奴らとは就職した段階で大きな差をつけられると思う。
でも、高校生だからそれなりに学校の学習にも取り組まないとね。」
「メインスタッフの方々は皆さんその様に考えておられるのですか?」
「まあね、効率の良い学習計画を立て実行して行く事は就職後に向けてのトレーニングでも有る、というのが共通認識かな。」

高二にして就職後を考えているとは思いもしなかった。
ぼんやりと進学を考えていた自分にとってはちょっとショック。
自分も少しは考えないといけないのだろうか…。
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鍵山昇-04 [高校生会議2-04]

学習会への参加を決めたのは、学習会の後でスタッフ会議が開かれる事と夏休みの課題を一気に進めたかったから。
家では誘惑が多過ぎて学習に身が入らない。
実際、十五人程の参加者全員が黙々と学習に取り組んでいる環境は学習に集中出来た。
学習時間が終わって話し掛けてくれたのは井上さん…。

「鍵山くん、課題は進んだ?」
「はい、一気に進みました、自分は皆さんと違って優秀でないので、間違いが多いかも知れませんが。」
「あらっ、私だって優秀じゃないわよ、自分で決めた目標はクリアしてるけど…。
そうね…、優秀な高校生では無いけど有能な労働者になるつもりよ、私は。」
「あっ、太一さんも同じ様な事を話していました。」
「高一の頃にみんなで出した結論だからね。
何の為の学習なのか、私達は大学に入学する事を目標にしてないの、岩崎関連なら学歴より実力重視、歴史の成績が悪くても企業の売り上げアップに貢献出来れば良いのよ。」
「そんな事を高一の頃から考えていたのですか…。」
「そうよ、その中心が久兼剛太リーダー、あのルックスに憧れてる人は多いけど私達は人柄や能力を含めて尊敬しているわ。」
「はい、遠い存在です…。」
「ふふ、それで神、剛太リーダーが見守る、異世界惑星の設定は…、あっ、会議が始まるわね。」

「じゃあ始めるよ、鍵山が簡単な設定を決めてくれたのに対して、ワークシート上では反対が無かったけど、そのままで良いのかな?」
「たぶん良いと思う、ただ正式運用開始日を決めて、それまでに不都合が有ったら修正して良いと思うわ。
逆に言えば、正式運用開始後の大きな設定変更はして欲しくない、そうなると町を壊滅させるとか、あまり起こしたくないイベントを発生させるしかなくなるでしょ。
それは避けたいから矛盾点は徹底的に洗い出しておきたいわね。」
「うん、どうでも良い事かも知れないけど、時間、重力と言語。
異世界は別次元の地球に相当する惑星、だから一年は三百六十五日、一日は二十四時間、重力も地球と同じという設定にして置いた方が良いと思う。
SF映画に出て来る、地球外の惑星では無視してるのも有るけど、重力は天体によって異なる筈、そこで生活していたら当然人体に色々な影響が有ると思うんだ。」
「そうか、パラレルワールドに存在するもう一つの地球、但しうんと昔に別の進化を始めたという感じかな。」
「何にしても、変な設定にしておくと先々面倒な事に成りそうなのね。
でも大陸の形は地球と変えるのでしょ。」
「そうだね、地球の歴史とは大きく変えたいと思うよ。」
「まだ正式運用開始日を決める段階でもないから色々検討しよう。
それで、皆がワークシートを、ホームページに相当する形で始めて良いと思うんだ。
鍵山が作成しているのは神殿の神官とかにしてね、他のメンバーは街づくりを担う役職に…、移住者管理局とか、まあシミュレーションゲームの始まりって事かな。」
「そうね、何でも有りで始めてみてから考えれば良いわよね。
上位管理者を鍵山くんに設定して始めましょう。」
「えっ、僕?」
「現時点で唯一のワークシート管理者だからな。」
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鍵山昇-05 [高校生会議2-04]

会議から帰ってまず行ったのは町を模した簡易マップをシステム上に置く作業。
このマップから店などのワークシートへ移動出来、店が増えても分かりにくくならない様に工夫してある。
もう少しデザインを修正してからと考えていたが動き始めたのだから仕方ない。
このマップは遥香システム開発部の承認済だ。
開発部の方とは久兼くんが間に入ってくれ交流が始まり、今はメールのやり取り中心に連絡を取り合っている。
自分で構築したマップに対して、開発部の人がプログラムのシンプルさを褒めてくれたのは嬉しかった。
それで少し調子に乗って、システム開発部の方に異世界惑星の可能性を提案、それに対して、前向きに検討したいが今は遥香システム導入計画が全体的に早まって人手不足、真剣に取り組むのであれば指導者を紹介するとの返事を頂いた。
さすがに自分では決められなくてお父さんに相談した結果、お父さんが調べて開発部の方と調整してくれる事になる。
お父さんからは異世界惑星企画で自分の力を発揮する様に言われた、絶対良い経験になるからと。
僕には余り干渉してこなかった人だが、今回は遊びの様な企画なのに色々真剣に話してくれた。
それに対して、高校生会議スタッフの話しや、今はゲームとかに係わる仕事が出来たらと考え始めているなんて話が出来た。
少し大人になれて、ほんの少しだけ他のスタッフに近づけた様な気がしている。

マップを設置した翌日から、マップ上に少しずつ建物を建て始めた。
まだ暫定的なものばかりだが、町長の家、移民局に始まり、店も幾つか。
暫定移民局長に就任してくれた井上さんが新規スタッフとの調整をしてくれる。
彼女とはシステムを通して何度も連絡を取り合う様になった、面と向かって話さなくて良いので気持ち的には楽だ、井上さんの笑顔を見られないのは残念、でも緊張しないで済む…、とても微妙な気分…。
移民という形でスタッフ参加してくれる人達は、各自、店のオープン準備などを始めている。
暫定名称大工は美術部のチームが統一感のある街並み作りを目論んでいて、完成したらその街並みの絵からそれぞれの建物へ移動出来る様にする予定だ。
内装は別の業者、大学生のチームが名乗りを上げてくれた。
パン屋さんや花屋さんはしばらくの間、商売をせずに、街の風景に彩りを添える為にオープン。
紙芝居のおじさんは町の設定を紹介するような話を創作中。
色々混乱しているが、夏休みの終わりが近づいて町長の動きが活発になった…。
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鍵山昇-06 [高校生会議2-04]

町長である水神茜さんが本格的に動き始めたという情報は井上さんからのメールで…。

『街並みを検討していたチームは茜の指示ですぐに完成させるみたいよ。
チーム内でまとまらなかった所は暫定的にジャンケンで決定、どうしても修正したくなったら火事を起こして建て直せば良いと言われて納得したそうなの。
他も似たような事で一気に動き始めるみたい、茜が本格的に動き始めたという事は剛太リーダーが動き始めたという事だからね。
鍵山くんも早めに助手を作った方が良さそうよ。
遥香システムの研修で理解の早かった人中心に住人登録が始まってる事、忘れないでね。
一度各ワークシートのチェックをして置く事をお勧めするわよ。』

僕は少し油断していたのかもしれない、まだ時間が掛かるだろうと。
多くの人が参加してくれる魅力的なシュミレーションゲーム状態にしたいと考えていたが、その理想に遠く及ばない段階で人口が増えるのはマイナスになり兼ねない。
だが研修からの住人登録の話は久兼くんから聞いていた事だ。
残念な事に助手と言われても、その心当たりは全くない。
少し迷ったが、そんな状況を井上さんに正直に伝えた。
情けない奴だと思われてしまうだろうが仕方なかった。
それから二日ほどして水神町長から連絡が…。

『住人登録をして現状を見てくれた人の中から、鍵山くんのしている作業に興味の有りそうな人に打診させて貰ったところ、三人の人が手伝いたいと申し出てくれました。
良かったら手伝って頂いてはどうでしょうか。
それと書き込み制限を緩めないと協力者は見つかりませんよ。』

三人の人達と連絡を取ってみたら、みんな書き込み制限がなかったら自分で協力を申し出てたそうだ。
僕は謝罪して協力を要請した、他支部の人ばかりなので直に会う機会は当分ないと思う。
それと共に書き込み制限を解除したところ、更に二人の人が協力を申し出てくれた。
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鍵山昇-07 [高校生会議2-04]

五人の仲間が出来た事は自分にとって新鮮な事だった。
まずは各自のスキルを自己紹介と共に共有ワークシート上で公開。
このシートは自分達六人の他、町長だけが閲覧と書き込みが可能。
町長は僕らの監督者、毎日見てくれている事がログで分かり、僕に安心感を与えてくれる。
この段階で自分はリーダータイプではないと宣言させて貰った。
自分で指示を出したり、皆をまとめて行ける自信はない。
それに対して、リーダーでなくとも基礎を作ったという事で僕の考えを尊重すると返事が。
五人とも能力が高いだけでなく謙虚な人達だと思う。
自分が考えていた今後の方向性を示させて貰った後は、各自の案を出して貰い検討し作業を進める。
リーダーがいない事で進行が遅れそうになるまで、表向きの代表は僕がする事になった。
他のスタッフと簡単に顔を合わせる事が出来る人が他に居なかったからだ。
遥香システムは顔を合わせて打ち合わせる必要のないシステムだと全員が理解している。
それでもスタートから間が無いし、作業内容によっては直接話し合った方が早いとの結論に達した。
今のところリーダーを必要とする状況にはなっていない…。

”山”『いずれはVRで現実離れをと考えていたけど、町を訪れる人は必ずしもバーチャルリアリティを求めている人ばかりでないみたいです、リアルさを追求しすぎると機能性が犠牲になり兼ねません。』
”福”『そうですね、自宅から目的地まで十分掛けてリアルさを味わうというのは、すぐに飽きると思います。
街並みのイメージは簡単に提示しておいて、移動は、瞬間移動魔法が使えるという設定で、まあワンクリックでの移動という形を優先させましょう。』
”谷”『直接目的地までとなると画面が見づらくなりますね、簡易マップを組み合わせて、見易さとクリック回数のバランスを取りたいです。』
”長”『はい、バランスは大切だと思います、ただ現時点では異世界らしさが弱い気がしませんか?』
”福”『確かにそうです、視覚的なトリックを魔法とかで演出できないでしょうか?』
”山”『そうですね、こちらからどんな事が可能なのかサンプルを提示して、町の人に検討して貰っては如何でしょう?』
”佐”『まだ異世界の町そのものがイメージしきれていないとも思います。
ライトノベル作家、画家、漫画家、アニメーターがバラバラに動いている感じがしませんか?』
”山”『他を見ていないのかも知れませんね、自分達の作業が中心で。』
”町長”『それは私も感じていました、私から世界を広く見る様指示を出させて頂きます。』
”鍵”『よろしくお願いします。』

とてもさりげなく町長は僕達を見守ってくれていた。
町長からは、町の中で他のチームとの交流を推奨する通達が出された。
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鍵山昇-08 [高校生会議2-04]

町長からの通達は大きな効果をもたらした。
すぐに交流が始まり、煮詰まっていたチームの中には、その答えを他チームで見つけたところも有った様だ。
一気に交流が広がった事で、町としての統一感が感じられる様になり始めている。
そもそも基本設定だけでストーリーを構成して行くのは無理が有った、他のチームと調整して行く事で世界観が統一の方向へ向かった訳だ。
ライトノベルの原稿からインスピレーションを得てイラストが描かれたり、そこから漫画のストーリーへと発展した。
イラストからイメージを膨らませストーリーを完成させた人もいる。
それに伴って各チームのワークシートを充実させる事が楽になった。
それは井上さんも感じている様で…。

「鍵山くん、最近、町がまとまってきたね。」
「はい、皆さん大人だと思います、画風に関しても自己主張し過ぎないで互いに寄せてくれる様になりました。
お陰で、違うチームの作品を合わせても違和感なく仕上げる事が出来ます。
趣味ではなく仕事の領域に近づけたいと考えて下さった結果だと思います。」
「それでコラボ企画が増えたのね。」
「町長が和という方針を明確にして下さいましたから。」
「移民の受け入れ態勢はどう?」
「受け入れだけなら一人一部屋、もう何人でも大丈夫です、アバターの選択肢を増やしましたし、部屋の模様替えバリエーションも増え続けています。
まだ既存のサービスレベルですが、有料サービスが始まったら他には無い手作業を交えたサービスを計画中です。」
「課金システムは何時頃完成するの?」
「もう少しかかりそうです。
間違いが有ってはいけないので、完成したら僕等のコーチに見て貰って、そこで合格したらシステム開発部で確認して貰って、それから運用試験、そこで問題がなかったら試用期間を経て本格運用です。」
「さすがにお金が係わる事だものね。
でもそれぐらいの時間は、他の部分も、異世界惑星の本格運用までには掛かりそうよね。」
「はい、焦っていい加減な形で始めても魅力的なものにはなりません。
本格運用後に足を踏み入れた人が町のすべてを知りたいと思う状態が理想です。」
「そうね、随分楽しいコンテンツが増えたとは言え、まだまだこれから、でもライトノベルのシステムは面白かったわ、ページをめくったら、綺麗なイラストが現れたり、短い動画が始まったり、文字だけのバージョンと選べるのも親切ね。」
「今はサンプル版ですが有料バージョンではもっとダイナミックに出来ないかと検討中です。
完全なアニメ化はハードルが高いですが、文字の方が多くの情報を伝え易い場合と映像の方が理解が早い場合が有って、そのバランスを取る事が出来れば新たな表現形態として売り出せるのではないかと、そうですね絵本の発展形と言いますか。」
「手間は掛かるのでしょ?」
「はい、それでも今は各自趣味のレベル、本業に差し障りが無いように互いに注意しながら作業を楽しんでいます、僕達もですが。」
「人数が増えてリーダーやサブリーダー達の手間は増えてるけど、システムで確認出来る範囲では問題無さそう、それ以外は確認出来ないから働き過ぎてるとかの情報を掴んだら教えてね。」
「それを…、僕に?」
「はは、そうだった、人付き合いは苦手だったかしら…、でも鍵山くん、システム上ではずいぶん頼られてるみたいだけどな。」
「そ、そんな事ないですよ…。」
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鍵山昇-09 [高校生会議2-04]

異世界惑星に町はまだ一つだけ、でも内容はかなり充実してきた、ここまでに時間はしっかり掛かったが、VRで異世界の森や公園の散歩を楽しめるだけでなくモードを切り替えれば、そこで出会った人とコミュニケーションを取る事が出来るといった、僕の力では到底作れそうに無いコンテンツも加わっている。
本格運用を前に岩崎高校生会議メンバーに対して公開を始めたが評判は悪くない。
惑星上の色々な仕掛けを構築しているのは僕らのチームだが、チームの人数は随分増えた。
それはシステムエンジニアやプログラマーを養成する学校がバックについてくれたからだ。
学生の実習の場として、新たなプログラム実験の場として、それから僕等高校生がハイレベルな技術に接する場と考えられてのことだそうだ。
チームリーダーは二十歳の学生が引き受けてくれた。
彼は久兼くん達が立ち上げた株式会社Team Seventeenの社員という扱いになっている。
異世界惑星は営利目的でも有るからだ。
コンテンツの多くは趣味を発展させた様なもの、だがみんなで意見を出し合った結果、そのクオリティはかなり高くなったと思う。
ここまでに出来たのは企画の趣旨を理解してくれたスタッフの力だ。
そして…。

「鍵山くんは異世界惑星企画を通して自分の将来とか考える事、出来た?」
「はい井上さん、随分固まりました。
今は遥香システムを使う企業が増えているのでシステムエンジニアとかが不足気味だそうです。
遥香システムを最大限に活かして行くにはそれなりの人材が必要な訳で、自分もその一人になれないかと考えています。」
「そっか…、絵描きや物書き達はそれぞれ自分の力を知る機会になったみたいで、自分の力量では絵では食べて行けないとかシビアな判断をし始めているの、鍵山くんは大丈夫?」
「何とか合格点は頂けています、まだまだ経験を積む必要は有りますが何とかなりそうです。」
「成程ね、そんな自信が顔にも表れているのかしら、企画がスタートした頃とは全然違うわよ。」
「そ、そうですか…、自分では分かりませんが…。」
「後は下を向く癖を無くす事ね、企画のきっかけを作った人物として注目している人もいるのだから。」
「そんな事言われても…、現実逃避出来る場が欲しかっただけの男です…。」
「ふふ、現実と向き合えていると思うわよ、将来の事も考えているのだから。
ねえ、春休みに画家や物書き達と集まるのだけど鍵山くんも参加しない?
システム上で鍵山くんの事を知っている人達と、たまにはリアルに会って話してみるのも良いでしょ?」
「うっ、緊張しそうですが…。」
「大丈夫よ、私と話していても以前ほどでは無くなったでしょ。」
「は、はい…。」
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鍵山昇-10 [高校生会議2-04]

春休み、井上さんに誘われて参加した会には、名前は知っているが会うのは初めて、つまりシステム上だけでやり取りして来た人達が集まっていた、ただ女の子が多目で…。

「鍵山くんって思ってたイメージと違ったわ。」
「えっ? どう違うのですか?」
「ふふ、もっと根暗でダサい感じの人かと思ってた。」
「あ、あの…。」
「服も似合ってる、自分で選んだの?」
「い、いや、あの、妹が選んでくれて…。」
「へ~仲良いんだ。」
「はい、自分とは違って社交的で可愛い妹です。」
「ねえ、鍵山くんのプロフィール写真ってあれは女の子を寄せ付けない為だったの?」
「えっ? あ、あれは…、去年の四月頃普通に写したのをそのまま…。」
「そうなの、今と全然違うじゃん、写真の人とは一緒に歩きたくないけど、今の鍵山くんとなら有りよ。」
「はあ、でも僕は話とか上手じゃないし…。」
「ふふ、私の理想は話をうんうんって聞いてくれる人かな。」
「鍵山君は、私達の要望にしっかり応えてくれてた、真面目な人柄はシステムを通しても伝わって来るものなのよ。」

この日僕は生まれて初めて女の子達から沢山褒められた気がする。
まあ戸惑いはしたが楽しいひと時だった。
ただ珍しく女の子達と話した事によって、改めて井上さんの存在は自分にとって特別だと思った。
ずっと僕の事を認めてくれて、褒めてくれたり、励ましてくれたり…。
それが自信に繋がった気がする。
面と向かって話す事に以前ほど緊張しなくなったとは言え、可愛らしい笑顔にはドキッとさせられる事が多い…。
もうすぐ高三、今まで彼女という存在は自分と無関係だと思っていた。
でも…。
妹以外の女の子で話の出来る数少ない女の子…。
異世界惑星企画の正式スタートは近い…、このタイミングで…、告白…? 僕が? 誰に? 井上さんしかいないだろ…。
こんな事相談出来る人は…、井上さんしかいない…、ば、馬鹿か、そんな相談出来る訳ないじゃないか…。
あ~。

あっ、井上さんからメールだ。
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