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近衛予備隊-411 [高校生バトル-84]

 日本から移住して来た亮二には高校へ移籍後、数か月の準備期間を経て、数学研修室の室長になって貰った。
 室長になるまでは高校生だったが、大学で流体力学を学んだり高校生に数学を教えたりしながら近衛予備隊の新兵訓練を楽しくこなし、大学に籍を置く資格を得たのだ。
 そのサポートには佐伯学長を始め多くの大学関係者が関わっていて…。

「佐伯学長、亮二はどうですか?」
「思っていたより問題は無さそうだよ。
 子どもにしては几帳面で、我々と組んだスケジュール通りにことを進めるのが楽しくて高校生や大学生の友達と仲良くやってる。
 数学研究室は趣味で数学に取り組む学生が難題と向き合うだけでなく、教育学部数学科として数学教育について研究しているが、数学を楽しく学べる工夫を子どもに考えて貰うといったアイディアも出ていて取り組み始めているよ。」
「それは以前から行われていたことでは?」
「そういったことは理解の進んでる子が中心だっただろ。
 取り組み始めたのは、数学が苦手な子が自分で考えたり、後輩に教えると言ったことでね。
 数学の苦手な高校生が取り組み始めたのだが、状況を見ながら中学でも試してみる価値が有ると思っているんだ。」
「感触が良いのですね。」
「教えることに関しては、自分が頑張って合格点を取れた単元、数学に苦労してる後輩はかつての自分なんだ、数学の得意な子からしたら見劣りするレベルの子達だが、今まで『教える』を学び自信を持って教えて来た先輩とは違う視点で、数学の苦手な子と向き合っている。
 教えられる側も自分の気持が分かる子達から教えられるのは、色々な意味でプラスになってるみたいで、まあ仲間という感覚なのかな。」
「成程、数学が得意な子には苦手な子の感覚は理解出来ないかも知れません。」
「中学で実践出来たら学力はともあれ、子ども達に今までとは違った学習への取り組みの場を提供できると考えてるよ。
 大切なのは単位認定試験で高得点を取ることだけではないだろ。」
「ええ、算数は生活に必要ですが、数学は人によって必要としない内容も多いです。
 それでも推奨しているのは理数系に強い人を増やすと言う意味が有りますが、論理的に考える力を養って欲しいからです。」
「その辺りのことも数学研究室で考え始めていて、必ずしも数字と記号を使わなくても、論理的思考力を鍛えられるのではないかと、子ども向けの謎解きやパズルを生み出して行きたいと動き出しているよ、亮二が日本から取り寄せたのを参考にしながらね。」
「日本からだと日本語ばかりで一般の学生は困っていませんか?」
「そこは外国語学部日本語学科の連中が手伝ってるのだが、日本からの移住者や留学生を巻き込んでいるんだ。」
「楽しくやっているのでしょうか?」
「勿論さ、亮二は人気者でね。」
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近衛予備隊-412 [高校生バトル-84]

「佐伯学長、数学研究室の建物が完成したと聞きましたが。」
「ああ、彼らに言わせると完成したのは第一期工事で、これからどんどん増築して行くそうだ。
 どうやら、数学研究室と言うのは建前で、皆のたまり場が欲しかったみたいだな。」
「確かに彼らが使える施設は限られます。」
「しかし驚いたよ、一応近衛予備隊の訓練を兼ねてと言うことだったが、広い土地の開拓から始めるとは思って無くてな。
 さぞ大変な作業だろうと見に行ったのだが、重機を使い大勢が交代で作業してるからか楽しそうでね、調理班が食事の用意をしてるし、作業を切り上げてからは酒も出て、焚火を囲んで歌ったり踊ったりしてた。
 仕事が休みの日に作業をしていたのだから、そう言ったことも必要なのだろうな。」
「近衛予備隊が発足した頃には考えられなかったことです、月日を重ね大人の隊員が増えました。
 彼らは食事会をするから集まれというより、近衛予備隊の開拓者魂を見せると言った方が大勢集まると思います。」
「そうか、彼らにとっては作業も楽しいイベントなのだな。
 作業後に汚れた服のまま川に入って遊んだりもしてたし、女子達のサポートも有って。
 だが、整地が一通り終わったら、後は毎日計画通りに進めていて感心したよ。」
「日によっては仕事が休みの人が少ないことも考慮してスケジュールを組んでいた筈ですが、それでも皆が楽しめる所まで計算に入れていたと思います。」
「日々の仕事も大変そうだからな。
 作業後の焚火を囲む飲み会に混ぜて貰ったことが有るが、仲間の仕事を気遣う発言から、リーダーとしての気苦労を教えて貰ったりもしたんだ。
 政府機関で働いていて、昔の癖が抜け切らない部下をどう扱って行くかとか。
 若い管理職ばかりだったみたいでね。」
「その辺りが自分の悩みでも有るのです、改革を急ぐには若い力が必要だったのですが、かと言って勤続年数が長いだけの連中をクビにする訳にも行かず、労働者は充分に居ても必要な人材は全く足りて無いと感じています。」
「それで、留学生からも教員を採用してるのか…。」
「彼らには国情を説明し、教員としてではなく公務員としての採用で、学校以外の場でも働いて貰っています。」
「それを納得してのことなら…、だが他の現場で役に立っているのか?」
「基本、公務員として働く近衛予備隊隊員の下で動いて貰っていますので大丈夫でしょう。
 彼らにとっては古い職員と価値観の違いをどうして行くかになりますが、面接を通してこの国の事情を理解した上での公務員採用です、特に問題が起きてるとは聞いていません。
 もっとも彼らの問題が大統領にまで伝わって来る様では、別の意味で問題なのですが。」
「そうだな、少し興味を持ったから彼らがどんな価値観を見出して行くのか、学生にも協力して貰って探ってみるよ。
 この国の為に雇った日本人公務員が役立たずでは悲しいからな。」
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近衛予備隊-413 [高校生バトル-84]

「大学内での留学生はどうなのです?」
「留学生サポート担当の学生は、学費や食住の費用を払ってくれるお客さんだと思ってるみたいだが、彼らは異文化と触れ合うと言う留学の意義を強く感じているそうだよ。
 自分達が経験して来た学校システムとは全く違うシステムの学校に対し、その欠点を見つけ出すことに躍起になってる奴もいるが、今は不登校児向けの学習環境構築に興味の有る子が引っ張っていて、学校の原点と理想を考えている。
 彼は日本の、我慢をさせ耐えさせる教育から得られるのは歪しかないと話してたよ。」
「そんなに我慢を強いているのですか?」
「少なくとも退屈な授業を受けてる子どもは沢山いるだろうな。
 子どもが授業に集中出来る時間なんて限られるだろ?」
「はい、義務教育では授業形式の時間を十五分前後としました。」
「その短さには小学校の授業見学に行った時に驚かされたが、もっと先生の話を聞きたいぐらいのタイミングで問題が出され自習中心の学習に変わるのは悪くないと思ったよ。
 先生への質問は自由だが、先生が質問者だけでなく全員を意識しながら質問に応えてたのは印象的だったな。」
「子ども達は他の子に対する先生の説明に聞き耳を立てているのです。
 基本的に単元クリアをゲーム感覚で競い合っていますので、授業形式の時間以上に集中しているのですよ。」
「他の子が何を教えられてるのか気になるのかな?」
「そんな所です、学習意欲の無い子でも、寝っ転がりながら話を耳にしてる内に時間が掛かっても単元をクリアして行くそうです。
 まあ、大きく成れば就職を考える様になり、学ぶことは自己責任だと気付く子がほとんどですが、それに気付けない子でも、肉体労働は出来ますので問題有りません。」
「留学生達は、その辺りの感覚について行けないみたいだよ。
 子どもに対しては、将来より良い生活を送れる様に大人が導くみたいな感覚が強過ぎるみたいで、肉体労働をかなり低く捉えていることもあってな。
 ここの子達には義務教育内容以外は学ばなくて良いと言う選択肢が有るし、義務教育内容は簡単で、普通の子には然程負担にならないだろ。
 だが日本の子達はテストの成績が悪いと色々嫌な思いをさせられる。
 能力の低い子は学校生活で嫌なことを沢山経験し、社会に出てからも差別されかねないのだよ。」
「正直言って能力の低い子を増やしたくは無いのですが、自分も実際に相手してみて色々覚えさせるのは難しいと感じることも有りました。
 それでも、人として素敵に育ってくれたら問題無いと思っています。」
「そこだよな、学力以上に人としての資質を高めることに力を入れていると感じた。
 大統領からの指示が学校に浸透してるとね。」
「大統領からと言うよりは、近衛予備隊総司令官からの指示としています。
 現場の連中にとって肩書には意味が有るのですよ。」
「その辺りのことは私も理解し切れていないのだが…。」
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近衛予備隊-414 [高校生バトル-84]

「近衛予備隊はスタート時こそ無試験でしたが、近衛隊のスタッフが直ぐにリーダー育成の必要性を感じたそうで、有能な子のみを隊員とすることになりまして。
 無試験の一期生がパフォーマンスで人気者になったことも有って、子ども達が憧れる存在になり、入隊を目指して学習に励む子が増え、詩織さま直属の名誉ある隊との認識が確立されたのです。
 入隊後は隊の団結を強調する先輩に指導されますし、何と言っても最も多感な時代を共に暮らす近衛予備隊の仲間は家族以上の存在になって行くのですよ。
 その近衛予備隊総司令官からの指示には重みが有るのです。」
「高校生の服装は自由だが隊服を着ている子が多いのは、そんな気持ちの表れなのかな?」
「彼らは隊服を身に付け誇らしい気持ちになり、学習や実習に励むのです。」
「その指示を大統領が出してはダメなのか?」
「駄目では有りませんが、彼らにとって大統領が何をしてるのかは学習を通してだけで、然程有難味の有る存在では無いのです。
 それに比べたら近衛予備隊総司令官は指揮系統のトップですからね。
 これまで災害時に度々出動して貰っていますが、彼らは指揮系統が乱れたら作戦行動が失敗すると認識しています。」
「う~ん…、同一人物なのだから大統領からの指示でも良さそうなものだが…。」
「まあ、気持ちの問題なのですよ。
 総司令官は隊員たちの健やかな成長を願っていますが、大統領は国民全体のことを考えています。」
「あまり考えたことは無かったが、大学生も同じ認識なのかな?」
「大学生の中には自分の授業を受けた学生が少なからずいます。
 最近は回数が減りネットを介してのみになっていますが、過去の授業映像も見て貰っています。」
「特別な授業なのか?」
「そうですね、以前は普通に英語を教えていましたが、今は何故数学に取り組んで欲しいのかなど隊員が学ぶことの再確認を中心に話しています。
 それと我々が目指している社会環境については全隊員向けに話をし、質問にも応えて来たのですよ。」
「そうか…、近衛予備隊総司令官は隊員と向き合っているということかな。」
「ええ、時間は限られますが可能な限り。」
「そして大統領は自身の職務に励み彼らのことは忘れてると?」
「忘れてはいませんが、まあ、そんなとこです。」
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近衛予備隊-415 [高校生バトル-84]

「日本人の佐伯学長は、こんな近衛予備隊を中心とした学校に対して違和感を感じておられますか?」
「そうだな、正直戸惑うことも有るが、彼らが戦争で戦うことは無いのだろ?」
「それは絶対に避けるべきことで、隊としての訓練は戦争を想定してのものでは有りません。」
「整列や行進が訓練の中に盛り込まれてはいるが、皆笑顔だものな。
 詩織に関する式典では真剣な表情より笑顔が大切だと教えられているのだとか。」
「近衛予備隊には元々観光客を楽しませる為のパフォーマンスを意識して結成されたという一面が有りますが、その訓練を通して意識が変わり成長しています。
 何の緊張感も無く育って来た子ども達が、新兵教育を経て変わって行くのですよ。」
「みたいだな、あの新兵教育はメリハリが有って見ていて楽しかったよ。
 素早く整列出来るかどうかもゲーム感覚だが、素早く整列出来たら指導官は笑顔でジョークを言ったりしていた。
 緊張感を持っての訓練だったが、ずっと緊張していては疲れるだけだものな。」
「集合整列の訓練を行ってることにより集団で移動する時の効率が良いのです。
 点呼を如何に短時間で済ませられるかが彼らの課題でも有るのですよ。」
「統制が取れてないと人数確認に時間が掛かる、自分が中学生だった頃の遠足は、今思えばひどいものだったよ。」
「点呼の訓練は小中学校でも取り入れ始めています、お手本で有る近衛予備隊が彼らにとって憧れの存在ですので概ね好評なのですが、国軍出身者に指導させない様にするのが大変なのだとか。」
「軍隊式の厳しいものになってしまうとか?」
「ええ、小中学生には必要の無いレベル、いえ、これからも平和を維持して行けたら国軍の訓練も近衛予備隊レベルで良いと考えています。
 国軍、特に国軍OBは認めないでしょうが。」
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近衛予備隊-416 [高校生バトル-84]

「国軍のOBはうるさいのか?」
「ええ、軍事力を意図的に低下させているのが気に食わないのでしょう。
 兵士には本来なら軍事訓練を行う所を、災害復旧支援や災害の被害を減らすための土木工事で鍛えて貰っていますし、武器の予算は戦争ではなく暴動が起きた時に鎮圧することを想定して組んでいます。」
「軍人としての誇りとかが絡むのかな?」
「どうでしょう、今まで国軍が目立っていたのは軍事パレードぐらいで彼らは実際に戦ったことは有りません。」
「だとすると近衛予備隊の子達が目立っているのが気に食わないのかもな。」
「それは有ると思います、国家改革について行けなくて、論理的に破綻している主張を繰り返している連中ですので。」
「そのまま放置して置いて問題ないのか?」
「彼らも犯罪行為を犯したらどうなるのかは分かっているので大した問題にはなっていませんが、国軍の幹部に対して何かと圧力を掛けようとしていますので、どうしようも無く成ったら大統領令を出して抑え込むことになります。
 大統領が独裁者だと言うことを国民は忘れがちですので良いタイミングかも知れません。」
「抑え込むとなると刑務所へ?」
「その前に、軍に対する過度の干渉をやめる様、命令します、大統領の方針に従って動いている国軍なのですから。」
「それに従わなかったら刑務所送りになるのだな。」
「ええ、刑務所の労働も随分変化しましたので、体力の衰えた人達でも役に立つと思います。
 反抗的な態度を取れば重労働が待っていますので彼らも考えるでしょう。」
「国の政治に関して研究している学生もいるが、彼らから独裁的な手法に対して反対する声は聞こえてこないのか?」
「彼らからは、政府の方針に対して反対する輩には、もっと厳しく対応して欲しいと言われています。
 国家改革をより推し進めたい子ばかりで、過去の独裁政治を調べた上でのことです。」
「調べた上での判断なのだな。」
「権力を国王が握る王政の国でも、国民が不満を抱えているかと言うとそうでも無いみたいです。
 自分も前大統領の思い切った改革を受け継ぎ国を発展させていますので、それなりに支持されているのですよ。」
「それなりにではなく、圧倒的な支持なのだろ。」
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近衛予備隊-417 [高校生バトル-84]

「学生達は私の娘と大統領に感謝していると良く口にするよ、尊敬する女王や大統領の為にもっと働いて国家改革を進めて行きたいともね。」
「詩織さまがどれだけこの国の為に動いて下さったのかは皆知っています。
 自分は詩織さまの意向に沿って共和国の運営に携わっているのに過ぎないのですが、一応国家のシンボルなので。」
「尊敬に値する人物が国を動かしてるのだから、自分達が甘えてはいけないそうでね。
 大学の予算は少ないのだが増額要求は新規事業に繋がる工学部ぐらい、大学ってこんなに安く運営出来るのかと、思わず日本の大学を調べてしまったよ。」
「遠江大学は趣味の集まりなのか金銭を要求して来ないのですよね?」
「ああ、彼らはお金に余裕の有る人達だが、教育水準の低い国が改善されて行く様を見てるのが楽しいと聞いたことが有る、手土産持参で遊びに来て、ついでに学習指導とかしてくれる連中だからな。」
「しかし大学の予算が足りてないのは心苦しいです。」
「そこは気にしなくて良いよ、工学部の研究者は我々の会社に籍を置いていて会社から給料を受け取っているし、文学部など多くの学部には給料を受け取る存在がいないからな。
 様々な情報にアクセス出来る様にして有るから、自分から学ぶ姿勢の有る学生に先生は必要ない、趣味で相談に乗ってくれる遠江大学メンバーだけで充分なんだ。」
「彼らがもっと上を目指す様になってもですか?」
「ああ、試行錯誤しながらも現場と直結で研究している教育学部は、常に今考えられる最高の教育を目指している。
 それ以上の教育学部なんて存在しないんだ。
 それを、外国語学部を始めとした各学部がサポートしてるのだから、最高の大学だと思う。
 工学部が背伸びする必要は無いからな。
 各小学校に併設されたサテライトキャンパスは数だけでなくパソコンなどの環境も充実させ大学生が活用しているが、そこに数学研究室の建物が加わったからな。」
「しかし学生ボランティアが建築に当たっているとしても、建設資材の費用はどうしたのですか?」
「聞いて無いのか?
 一期工事は近衛予備隊の先輩である君の第一夫人が全額負担し、二期工事は第二夫人が、三期工事以降は自分達で起業して得た利益でと、起業に関する初期投資は私が相談に乗っているんだ。」
「妻達のお小遣いで建てられる程度でしたか…。」
「学生達は立派な建物を望んでいないんだ、誰でも気軽に入れるのが理想なのだそうでね。」
「そうでしたか、王宮関連の建物とは逆なのですね。」
「王宮は王室の権威付けも一つの目的になるし、それ以上に観光名所だからな。」
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近衛予備隊-418 [高校生バトル-84]

「佐伯学長の指示で建てられた丘の上に見えるシステムエンジニア関連部門の建物も宮殿らしい装飾が好評ですが、もう稼働しているのですか?」
「ああ、大学の事務局は元々小規模だから建物の完成前から使用を始めている、他もパソコンやサーバーの搬入が済んで、今は大学生達が使い勝手を調べてる段階、問題が無ければ日本から移住したがってる社員を少しずつ呼び寄せることになる。
 まあ、パソコンさえまともに動いてくれてれば何とでもなるのだけどな。」
「移住して来る社員の規模はどの程度を想定しているのです?」
「まずは十名程度、情報学部の学生を指導してくれることになっている。
 学生達は彼らに鍛えられ、OKが出た時点で我が社の社員となって貰うつもりだ。
 会社はシステムエンジニアやプログラマーを増やしているのだが、仕事が自然に増えてしまって、増員を頑張らないとブラックな職場になりそうでね。」
「そこまでの需要が有るのですか?」
「ああ、まだまだ伸びると思うから採用を強化して来たのだが、大卒を雇っても教育し直す必要の有る子もいるんだ。
 その点、ここでは大学生として教育しながら雇用して行けば良いだろ、実習で結果を出せた学生から社員として戦力になって貰う、学生の多くは既に働いているが調整出来るだろう。」
「給料が違うのですね。」
「私が指導してる子達にはそれなりの額を提示してある、頑張って力を付けられたらと、馬の鼻先にニンジンをぶら下げてる訳だが全員がニンジンにありつけることになるだろう。」
「今の雇用先で重宝されてる子もいると思いますが…。」
「それぞれがどんな仕事をしているのかは把握している、調整し円満に退社、気持ち良くうちで働いて貰うよ。」
「お手間を取らせてしまいますが、よろしくお願いします。」
「まだ、人数が少ないから大した手間でも無いよ。
 日本で大学生を採用となると、募集してから応募者との面談や採用試験とか色々有るのに、大学卒業後からの新人教育が必要で無駄が多過ぎるんだ。
 普通に戦力になりそうな学生でも、卒業まで待つ必要が有ってね。」
「実習の延長で雇用とは行かないのですか?」
「職種によってはアルバイトからの正式雇用もあるが、十四歳の子が実習で気に入られて就職なんて日本では有り得ないからな。」
「それでも学校には子ども達の就職先を監督して貰っていますからね。
 国軍から派遣された学校職員の仕事です。」
「監督する必要を感じさせることが有ったのか?」
「ええ、数件の報告を受けた後、監督制度を充実させる様に指示し、大統領令でパワハラ、セクハラなどをした者は即刑務所で重労働にと。」
「裁判は?」
「監督官が微妙だと感じた場合は裁判を行いますが、犯行が明白な事例ばかりだったのですよ。
 子どもだけでなく大人達の労働環境も改善させて行く必要が有りましたので。
 幸い、景気が良くなり始めたタイミングでしたので、真面目に働く気が有れば他の仕事を紹介出来ました。」
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近衛予備隊-419 [高校生バトル-84]

「学生達にも仕事先で不当な扱いを受けたら報告する様に…、報告し易いシステムを整える様に指示して置くよ。」
「お願いします、近衛予備隊時代から教えていることですが、大人の圧力に負けてしまうことも有りそうですので。」
「まあ、私の周りの学生は大人に圧力を掛けている様だがな。」
「それは頼もしいですね。」
「パソコン導入前は三人掛かりでこなしていた作業を一人でこなしているのだが、それを半日で終わらせて大学の学習時間に充てることに同意して貰ったとか、作業効率を上げる提案を通して工場全体の生産性を高めつつ、工場のシステムを再構築する為に私の下へ学びに来させて貰ってるとか。
 彼らをうちの社員とし、それらの企業に対して技術指導と言う形にすれば問題ないだろう。」
「まだパソコンを使いこなせてる人が充分とは言えませんからね。」
「そこがネックなのだろうな、日本でもパソコンが導入され始めた頃は中年の管理職が苦労したそうだ。
 この国でも同じ様なことが起きているのだろうが、うちの高校生大学生とこの国の大人とでは知的格差が大き過ぎるみたいだな。」
「ええ、教育の力を実感しています、指導に当たって来た教官達の作戦が成功しました。」
「作戦?」
「子ども達は良い実習先に送り込んで貰えると、そこでの働きによってお小遣いが貰えるのですが、そんな実習先への派遣条件は苦手な子の多い割合計算をマスターすることだったり、英語の検定試験に合格することだったりなのです。」
「分かり易く魅力的な目標を示されれば頑張れるのだな。」
「その過程で指導してくれる高校生に憧れを感じた者は王立高等学校を目指すのです。
 高校生は教育実習の時、必ず近衛予備隊の隊服を身に纏って臨みますので。」
「教育実習でもお小遣いは貰えるのか?」
「勿論です、彼らには仕事として子どもと向き合って貰っていますから。
 正直に言いますと、教育環境を充実させても、子ども達の学習レベルがここまで上がるとは考えていませんでした。
 教育先進国との格差は限りなく大きいと思っていましたので。」
「先進国には優等生がいれば劣等生もいるが、ここには劣等生という概念がそもそも存在してないと感じる。
 自力で生活して行く力が有れば良いのだが、それがなくても大家族が支え合って暮らしていて何とかなるのだろ?」
「はい、世帯収入が増えていますので以前より楽に暮らせてると思います。
 残る貧困者はハンディを抱えてる人ぐらいになりつつ有りまして。」
「貧困層への集中的な支援、様々な指導を含めての支援活動が実を結びつつ有るのだな。」
「ええ、公的扶助の考えが国民に存在しない状態からでしたので苦労しましたが、我々の活動により生活の良くなった人達が支えてくれたのです。
 衣食が充分に足りていれば、心に余裕が出来るのでしょう。」
「だが、日本には心の狭い金持ちも少なからずいる、ここの人達も生活の変化によって今後変わって行くかも知れないが、折角生活環境が改善つつ有るのだから、ここの子達には心の狭い大人にはなって欲しくないものだな。」
「はい、その為の教育だと思っています。」
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近衛予備隊-420 [高校生バトル-84]

「その辺りの指導は詩織の教えに沿っているのだな。」
「ええ、詩織さまと相談し、この国に合わせて少し変えてありますが根幹は遠江王家と同じです。
 宗教者の教えには良く分からない部分が有りますが、詩織さまの教えは論理的ですので高校生達にも好評、彼らにとって詩織さまは神様ですので、近衛予備隊を強固なものにしているのです。」
「同じ思想に元ずく教育を受けて来た者同士の連帯感が有ると学生から聞いたよ。」
「彼らが数学研究室の建設作業に進んで集まって来るのも、その連帯感を再確認したいからで、彼らは近衛予備隊隊員として詩織さまに忠誠を誓っていますが、それは神に対する信仰心に近しいのです。」
「そうか、娘が女神になったと聞いた時は驚いたが彼らにとって良い存在なのかな。」
「勿論です、王国内では当たり前ですが共和国でも多くの国民から尊敬される存在、我が国民だけでなく周辺諸国の人達からもです。」
「周りの国々にも影響を与えているのか?」
「ええ、近衛隊はただの社員ではなく、マーケットの展開で各国に雇用の場を生み出したり教育のサポートも、我が国が軍事費を兵器に使う必要がないのも彼らの功績なのです。
 国旗の一部にユニオンジャックを取り入れている国と英国との関係とは少し異なりますが、詩織さまを女王としてして迎え、立憲君主制への移行を考えてる共和国も幾つかあるのですよ。」
「アビュニス王国とは違う形なのかな?」
「アビュニス王国は王国全体が一つの企業となっていますので、詩織さまは女王で有り企業の会長なのですが、詩織さまを女王として戴きたいと考えてる国々は、女王をシンボルとしその傘下の国同士が協力して発展して行くことを目論んでいます。
 それ以前に、各国の国民が詩織さまという女神さまを女王に迎えたいと考えているのです。」
「共和国が法律を変え女王を迎えると言うのは難しいだろう。」
「どうでしょう、来年に王国を名乗る為の国民投票を実施する国は有ります。
 オーストラリアの国王が英国の国王で有ることのメリットは良く分かりませんが、彼らは詩織さまの経済的な影響力を期待しているみたいですね。」
「オーストラリアの国民からしたら時代に逆行したことだと思うのではないかな。」
「かも知れませんが、詩織さまの命を受け、近衛隊は他国で利益を得たらその国に投資と言う方針を貫いていまして、それが好感され我々のマーケット展開が進んでいるのです。」
「海外展開は詩織に任せっきりだったから詳しく無いのだが、利益をその国での再投資に充てても、我々のグループ企業にとってマーケットの拡大は大きなメリットが有るからな。」
「はい、マーケットでは我々のグループ企業で生産された商品を中心に販売していますので。」
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