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妻籠宿-1 [短編集-5]

今日は、俺の会社の慰安旅行。
しかし慣れないバス旅行のためか頭が痛く気分も悪い。
つきあいとも考えて参加にしたが、適当な理由を作って欠席にするべきだったのかも…。

ああ、やっと妻籠についたみたいだ。
とっとと降りて新鮮な空気を吸うか。

ふう、ちょっと楽になった。
トイレに行ってる奴らを待つ間にちょっと…。

ふむふむ妻籠宿は中山道の宿場で、町並みの保存に力を入れているのか。

「お~い、山中~、行くぞ~。」

あ、佐藤が呼んでる。
行くとするか、どんな町並みなんだろうな。

うわっ、何だこの人ごみは…、町並みと言っても土産物屋と飲食店? ばかり…、また頭が痛くなってきた…。





…。






妻籠


う~ん…、あっあれっ? 俺はどうしてたんだ。
頭が急に痛くなって…、それから…。

あれっ? 誰もいない…、さっきまでの人ごみは…。
少し歩いてみるか。


妻籠


振り返ってみても誰もいない。
静かだな。

聞こえて来るのはヒグラシか。

宿場…、江戸時代の人たちもここを歩いたわけか。

タイムスリップ?

まさか。

階段があるな。


妻籠
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妻籠宿-2 [短編集-5]

妻籠

やっぱり誰もいない…。

妻籠

待てよ、雨戸がしまっている…、もう夕方か?
もしかしてバスは俺を置き去りにして行ってしまったのか?

妻籠

それにしても落ち着いた町並みだな。
しばらく時の旅人気分をあじわうか…。





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妻籠宿-3 [短編集-5]

「おい山中、山中、しっかりしろ。」
「あれ、佐藤どうした? う? 人でいっぱいだ。」
「大丈夫か、急に座り込んで動かなくなるから、びっくりしたぞ。」
「ああ、夢を見てたのかなぁ…。」


妻籠


「どうされました、大丈夫ですか?」
「ええ、あの~地元の方ですか?」
「はい。」
「ここってまだ明るいのに雨戸が全部閉まる、なんてことあるのですか?」
「えっ、ええ、今の季節だと5時半ぐらいには、ほとんどの店が店を閉め終えていますけど。」
「う~ん…、それにしても素敵な町並みですね、特別に保存とかされているのですか?」
「はい、町並みを守るために家や土地を・売らない・貸さない・壊さない、と木曽路のどの宿場よりも保存に力を入れてきましたから。」
「また、すぐ来たいのですが、今日はバスの団体旅行なんで…。」
「それなら観光案内所へどうぞ、私も今から行くところですからご一緒しましょうか?」
「お願いします。」

「佐藤、時間はあるんだろ。」
「ああ大丈夫だ。」
「じゃあ、ちょっと行ってくる、バスヘは何時に戻ればいいんだっけ?」
「心配だからついていってやるよ。」
「サンキュー。」
「ここが余程気に入ったみたいだな。」
「うん、夕方の町並みは良いぞ。」
「えっ? ここは初めてじゃなかったか?」
「どうやら、タイムスリップしたみたいなんだ、ぷちのな。


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妻籠についてはこちらをどうぞ
妻籠観光協会

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馬籠宿から-1 [短編集-5]

バスから降りた若い二人連れ。

「ようやく馬籠に着いたのね、正樹。」
「うん、香織、まずは少し上って何か飲む?」
「ええ軽めのジュースを飲みたいわ…、えっ? 上がる?」
「こっちだよ。」
「なるほど、いきなり坂を上る訳なのね。」
「ああ馬籠宿は坂の宿場なんだ。」
「じゃあここからずっと上っていくの?」
「うん、坂道の両側にお店が、まあ昔は宿屋が並んでたのかな…、この店でどうだい?」
「いいわよ。」

店に入り飲み物の注文が終わると正樹が…。

「学生の頃さ、夏休みともなればね、バイクに寝袋とか積んでさ、あちこち走り周っていたんだ。」
「ふふ、学生特権の旅をしてたのね。」
「まぁ、そんなとこだね、でさ歴史好きだったから宿場とかも色々周ったんだ。」
「うん。」
「俺の行った宿場の中で、坂道の両側に建物が並んでいるのはここだけだったんだよ。」
「へ~。」

そこへ飲み物が届く。

「お待たせしました。」
「ありがとうございます、こんな坂道で大変ではないのですか?」
「はは、慣れっこですからね。」
「でも楽ではなさそうです。」
「昔は今ほど道がしっかりしてなかったと思いますから…。」
「あっ、そうか…、昔はもっと大変だったのか…。」

香織と店員の会話を微笑みながら見ている正樹。

「ねえ香織、藤村の夜明け前、読めた?」
「うん、何とか、文学少女を自認してた私だけど、さすがに明治時代の文体って気軽に読めるものじゃなかったわ。」
「だよな。」
「でもね。」
「うん。」
「どうして島崎藤村、夜明け前が日本の文学史の中で大きな評価を得たか初めて分かった気がするの。」
「だろ。」

「ねえ、馬籠ってさ昔の宿場っていうから古い建物ばかりなのかと思ってたけど、そうでもないのね。」
「ああ、大火事があったからね。」
「そうなんだ。」




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馬籠宿から-2 [短編集-5]

藤村記念館にて。

「あっ、そうか、夜明け前って…、藤村は家族をモデルに書いたのね。」
「うん、他の作品でも家族や知人をモデルにしてるらしいよ。」
「ふ~ん、これ見て、作中の人物とそのモデルとなった人たちが対比できて面白いわ。」
「違った角度から、その人物像を推測できるよな。」

「正樹がここへ来る前に夜明け前を読んでおくことを勧めてくれた理由がよくわかる。」
「はは、読んでなかったらもう帰りたくなってたろ。」
「かもね。」

「ふふ少し人間ウオッチングしてみる?」
「え?」
「ここに来る人たちってさ、藤村とか歴史とかに興味のある人と興味はないけど来てしまった人に分かれる気がするんだ。」
「うん…、あの人はずいぶん熱心に資料を見てるわね。」
「心は明治時代にってとこかな…、あの人たち早いな~。」
「ほとんど見てないかもね…。」
「まあそれでも、馬籠を訪れて藤村に触れたことに変わりはないさ。」

「ねえ、私はゆっくり見たいけど時間は大丈夫?」
「うん、じっくり見ようぜ。」

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馬籠宿から-3 [短編集-5]

藤村記念館を出て遅めの昼食、しばらく宿場内を散策した後二人は展望台へ。

「今日の恵那山はかすみ気味だな。」
「うまく撮れそう? 正樹。」
「ちょっとインパクトが弱そうだから…。」

恵那山

「ふふ、ここを通った昔の旅人たちも、あの山を見たのかしらね。」
「うん、多少崩れているから今と全く同じとは言えないだろうけど、旅の人も宿場の人も見ていたと思う。」
「そして恵那山もここの人たちを見守ってきたのね。」

「香織、そろそろ現代の旅人も出発するか。」
「ええ、まずは馬籠峠を目指すのね、遠いの?」
「距離はたいしたことないけどちょっと登りが急かな、でも峠を過ぎればだらだらと下って行くだけさ。」

「こうして歩いていると色々なものが目に入るわね。」
「うん、車で通りすぎたのでは気づかないものにも目がいくだろ。」
「ええ、道端の小さな花、何時からここで旅人を見守っていたのって感じの、えっと道祖神かしら。」
「歩くというのは、今では贅沢な旅かもな。」
「そうね、こんなのんびりした気分、久しぶりかも。」
「登りが続いてるけど大丈夫か?」
「これぐらい何でもないわよ。」
「もうすぐ、馬籠峠だからな。」
「うん。」

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馬籠宿から-4 [短編集-5]

馬籠峠を越えると下りが続く。
歩きながら。

「正樹ってさ、色んなことに興味が行くのね。」
「まぁな、それまで知らなかったことに触れてさ、へ~って思ったりするの楽しいじゃないか。」
「ふ~ん、今は何に興味がいってるの?」
「そりゃ…、香織のことかな。」
「えっ、私?」
「さすが、文学少女って思うよ。」
「ふふ、元、少女。」
「香織といるとさ、感性とか近いものがあって落ち着くんだ。」
「私も…、あらっ、滝が…。」

男滝

「うわ~、涼しいな。」
「ええ、涼しいというより寒いくらい。」
「手を離すなよ。」
「ええ…。」





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中山道大湫宿の大杉 [短編集-5]

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「わ~、すごくおっき~。」
「上の方が落雷にやられたり枯れたりしてるから高さはそれほどでもないけど、樹齢は千二百年とか千三百年とか言われているから、幹の太さは歴史を感じさせるだろ。」
「そうね、ず~っとここで生きてきたのね。」
「ああ、で、実は権じいの村の大杉、権じいのイメージでもあるんだ。」
「ふ~ん。」
「お話しの中では丘の上って感じの設定にしたけどね。
まあ何も語らない大杉さまに少しだけ語っていただいたってことかな。」
「そうか…、でも黙していても歴史を語ってるなぁ~。」

「ふふ、ここ大湫宿は、旧中山道美濃路の宿場だからね、中山道にまつわるビッグイベントと言えば千八百六十一年、皇女和宮の御降嫁、徳川十四代将軍家茂へのさ。
大行列がここを通り、和宮もこの宿場で一夜をすごされたらしい。」
「知ってる、島崎藤村の夜明け前にも出てくる、すごい大行列だったのよね。」
「うん、そんな行列も、この大杉は黙って見下ろしていたんだろうな。」


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大湫小学校 [短編集-5]

IMG_0001_14.JPG

「ここが大湫小学校、う~ん旧大湫小学校って言わなきゃいけないのかな、寂しいけど。」
「廃校になったってこと?」
「うん、村立大湫小学校、2005年、釜戸小学校に統合ってことらしい。」
「だから平日なのに静かなのね。」
「でも、荒れてるわけでもない…、権じいの村に描いた過疎化で廃校になった旧権現小学校と重なるよ…。」

『「校舎だけは源太郎さん中心に守られてきたんだね。」
「はい、何かあったら小学校に避難とか…、でも、また子どもたちがここで学んでくれたら、というのがじいちゃんたちの本心です。」』

「…、と、お話しの中では簡単に書いたけど、実際には校舎の維持管理に費用がかかるし、今は耐震性とか問われるから…。」
「いずれ取り壊される可能性もあるってことね。」
「ああ…、こんな校舎が、権じい学園みたいになったら良いのにな。」
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