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大銀河帝国-01 [シトワイヤン-32]

舞姫さまが大銀河帝国建国宣言を行う地下大神殿は工期に余裕が有った訳ではないが、プロジェクションマッピングを最大限に活用する事で建国宣言の日に間に合わせた。
一方、建国宣言の二週間前から世界各地で祝賀イベントが始まっている。
帝国の文化省が主導し、帝国の臣民になると宣言した歌手やダンサー達が参加、その利益は帝国の社会福祉省が管理し各イベント開催地の貧困対策に充てられることになっている。
すでに、姫さまが歴訪した地域の住民を中心に多くの人が国民登録を済ませたが、彼らはこの祝賀イベントを地球の歴史始まって以来最大のお祭りイベントにすべく準備して来た。
著名なアーティスト達が集まり、舞姫さまを讃え大銀河帝国の建国を祝う歌は世界中に配信された。
各地のイベントは映像を通して共有され、舞姫さまに感謝する人の多さを世界中の人達にアピール。
まだDVDでしか舞姫さまを感じていない人達にも、大銀河帝国によって世界が変わるのだと実感出来る程にだ。
姫さまが訪問したことの有る地域が特に熱く盛り上がったのは言うまでもない。

「姫さまの祝福を感じた人達は、地球市民党の理念にも触れ市民意識が著しく向上しているとは聞いてたけど、思っていた以上みたいね。」
「愛華は犯罪発生率の報告は見てなかったのか?」
「もしかして減ってるの?」
「姫さまの訪問した国では大幅にね。
「舞姫さまが舞う映像は、刑務所や病院、学校などでも流され人々に癒しの効果を発揮している。
そのメカニズムは全く解明されてないが、その効果が顕著なので誰も否定出来ず、まだ舞姫さまのことが良く知られていない国にも浸透しつつあるそうだよ。
そして、舞姫さまに感謝の念を持つ人たちは、姫さまを中心とした大銀河帝国によって世界がより平和になって行く事を期待し喜んでいるのさ。
大銀河帝国建国祭は宣言を挟んでの一か月間、世界中で大小様々なイベントが開かれるのだけど、姫さまの祝福を感じた人達が中心となってるから、普通に起こりそうな金銭がらみのトラブルもまだ報告が入ってなくて、人類史上最大のお祭りは良いスタートを切れてると思うよ。」
「姫さまとしては如何ですか?」
「とてつもなく多くの人達が私の事を考えていて下さるからか、熱いエネルギーを感じています。」
「だからかな、万里、さっき報告が入って、万里の祝福を感じられるエリアが広がっているそうなの、この地への巡礼者も数えきれなくて、MAIHIME TOWN同様仮設トイレがフル稼働、今後の緑化事業に向けて有機肥料が沢山出来そうなんだって。」
「へー、MAIHIME TOWNでは土壌改良に使われたと聞いてたけど。」
「なあ智里、巡礼者達はイスラムの礼拝をしているのだろうか?」
「どうでしょう、スタッフに確認して貰いますが、舞姫さまに忠誠を誓い大銀河帝国の民となった人達が、万里の祝福を感じながら礼拝をするものなのでしょうか。
確かに帝国でも信仰の自由を保障していますが。」
「智里、多くの人が来て宿泊は大丈夫なのですか?」
「ふふ、清香さんと違ってワイルドな人達なのです、皆さんは初めから野営するつもりで来ていますよ。
王子さまの指示で、長時間滞在すのではなく交代でこの近辺を訪れるスケジュールが組まれています、ほとんどの人は建国宣言の場に立ち会える訳では有りませんが、祝福を感じられる機会を得られた事に感謝している人ばかりだと聞いています、昨年、祝福を感じた人達は人間的に成長しているとも。」
「姫さまの登場で、人類は精神的に進化しようとしているのでしょうか。」
「それを可能にし、最大限の結果にするのが私達の役目なのよね、我らの姫さまをお守りしつつ。」
「愛華さん、だからと言って過保護は駄目ですよ。」
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大銀河帝国-02 [シトワイヤン-32]

大銀河帝国建国宣言の当日、セレモニーは帝国を特別な国家と認めた国々の音楽家達が神殿の舞台に立ち帝国を讃える曲を合同で演奏して始まった。
国歌や愛唱歌の候補はすでに幾つか有り、その中の一つだ。
最初のスピーチはこの国の王子。
舞姫さまに対する感謝に始まり、地球を一つにしようと言う帝国の思惑を語り、最後に、イスラムの教えによって紛争が無くならないのなら、自分はイスラムの教えを離れ、ただ舞姫さまと共に平和を希求して行くと宣言した。
一年前、舞姫さまがこの地に祝福をもたらしてから、長年続く中東各地の紛争と向き有って来た人物の言葉で重みが有る。
その王子に呼ばれる形で舞台に立った姫さまは、この場を用意してくれた王子と国民に感謝の言葉を述べた後…。

「地球上のあらゆる問題と向き合う多くの人々と共に平和な世界の確立を目指し、全ての国家と手を取り合い明日の地球を守って行く大銀河帝国、その建国をここに宣言します。」

この瞬間、神殿にいた各国の要人は歓声を上げた。
そして、この模様を中継で見ていた世界中の人達が、それぞれの流儀で祝う。
真夜中の国では花火が打ち上げられ、朝日に向かって建国を祝う歌を歌う人達がいれば、夕日を前に踊り出す人達も。
神殿に用意された巨大モニターには、そんな各国の様子が映し出されて行く。
三十分程すると、姫さまの舞が始まり、世界中の人達が注目する。
ふわり、そんな音が聞こえて来そうな感じで宙に浮き、姫さま曰く喜びの舞が舞われる。
今回、音楽はなく、手に持った鈴の音だけが神殿に響き渡る。
それがまた幻想的、舞姫さまが人を超えた存在で有ると改めて確信させられた。
舞が終わり、人々がその余韻に浸る時間を充分にとった所で、各国の要人によるスピーチが始まる。
トップは日本の総理大臣。
大銀河帝国建国に対し祝いの言葉を述べた後。

「我が国の国民の多くは、大銀河帝国の国民でも有ります、日本は舞姫さまの祝福を一番多く頂いている国でも有り、姫さまと共に歩んで行きたいと考えております。
地球防衛軍の日本師団につきましては、自衛隊からも人員を送り込み、日本のみならず世界の環境改善の為に尽力して行きたいです。
我が国は諸事情により平和を目的とした軍事活動に対して積極的に関わることが出来ませんでした。
その分、地球防衛軍の描く理想に向けて出来る限りの支援をさせて頂きます…。」

総理が自信を持って協力を約束出来るのは、姫さまが日本中に祝福を届けて下さったからに他ならない。
本当は自衛隊をそのまま地球防衛軍にしたいところなのだが、まだ国際情勢はそれを許すに至っていない。
ただ、周辺諸国の国民が大銀河帝国に多く登録してくれれば、日本の持つ戦力を削減出来ると思う。
おっと、日本の憲法では戦力を保持しないとなっていた。
日本を守る為の防衛力を戦力ではないと言う人がいて、未だに自衛隊はおかしな存在のままだが、周辺諸国と共に大銀河帝国を盛り立てて行ける状況に持ち込めるのなら、自衛隊から武器を無くしその全てを地球防衛軍日本師団に再編出来るかも知れない。
そうなれば憲法を改正することなく、言葉通りの憲法九条が成立するのだが、まだ高いハードルが残っている。
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大銀河帝国-03 [シトワイヤン-32]

日本の総理に続いて、ヨーロッパや東南アジアの首脳達がスピーチ。
舞姫さまの下に集まる国同士が経済交流を活発にして行く、地球防衛軍により一国では解決出来ない問題に取り組むなど、世界の枠組みを変えて行く構想が語られたのは、国連より自由度が高いからだ、大銀河帝国の方向性に対して反対する国に気を遣う必要はない。
会場を提供した王国と今まで良好な関係を築けてなかった国も、未来志向の協力を王子達と合意したと発表した。
大銀河帝国との、これからの協力関係を自慢げに話せる首脳達の話が一通り終わってからは、単なる祝辞が続き終了。
その夜の晩餐会も和やかな雰囲気で進む。
舞姫さまの前で恥ずかしい話は出来ない、そう、誰しもが苗川で内面の恰好良い市民を目指す運動の存在を知っている。
舞姫さま関連の企業が莫大な利益を上げ、その利益を社会に大きく還元していることも。
ある首相は、国家間の格差は簡単に縮まらないにしても、貧困層を減らし国民の多くが中流意識を持てる国にして行くことは、富裕層の意識改革が進み始めている今、それほど難しい事ではないと話す。
すでに舞姫さまに忠誠を誓う者達は、バランスの取れた社会を目指して動き出しているとも。
そこからは、各国の自慢話、舞姫さまの意向に沿って我が国ではと。
姫さまの前で、楽しそうに語り合う首脳達の姿は世界中に伝えられ、その内容を誇らしげに受け止める国民が多かったそうだ。
一夜明けて。

「姫さま、開いている証券市場では、大銀河帝国に関連する企業の株価が一気に上がっています。
株式会社舞姫も上場してあればとんでもない事になったでしょうね。」
「う~ん、実態の伴わないバブル状態にならないかしら。」
「高値で株を手放した人は、その資金で何をすれば良いのか、舞姫さまに喜んで頂くには何をすれば良いのか分かっていると話していました。
大金を手にして私利私欲に走るのか、その資金をバランスの取れた社会構築に役立てるのかと言えば、圧倒的に後者が増えています。
企業家を評価する基準として、多く稼いだではなく、安定雇用の場をどれだけ多く作り上げる事に成功したかとしよう、という声も上がって来ています。」
「なら、私もその基準で評価される様に頑張ろうかな。」
「姫さまは、そこにいて下さるだけで…、姫さまは評価の対象にはなり得ません。」
「え~、経営について研究して来たし、実績も出ているのだけどな。」
「残念ながら姫さまがどれだけ多くの実績を上げられた所で、凡人と比較するのは失礼だと誰しもが思います。」
「少し残念な気もするけど…、せめてお手本になる様な形を模索して、お小遣いの使い方を考えてみようかしら。」
「お願いします、今までも姫さまの指示で運用された資金は大きく社会に貢献した上で利益を出しています。」
「小学生の頃はビジネスで成功、なんて事も考えてたのですよ。」
「姫さまは何をなされても成功すると思いますが…、今は目標とかあるのですか?」
「そうね、本間さんとは、世界のトップリーダーとしての在り方をね、何もしないでのほほんと生きて行くのも有りなのだけど。」
「あっ、本間さんは後継者に上手く引き継ぐ道筋を考えていると…、表向きは引退して…。」
「ふふ、裏で、私達のフォローを考えて下さっているのですよ。
今まで色々な方々とお話させて頂きましたが、本間塾長の素養は群を抜いていると思います。
苗川大改造の成功を市民の力だと話されますが、リーダーとしてそれを導いた塾長のお力無くしてはスタートすら出来なかったでしょう。
その彼が、市長職を後継者にお任せして、苗川の地から世界に対して影響力を発揮して下さるのです。」
「本間さんの肩書はどうされるのですか?」
「う~ん、何か怪しげなのはないかしら。」
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大銀河帝国-04 [シトワイヤン-32]

大銀河帝国に関わる人達は多国籍で有る為、様々なルールが定められている。
例えば、自分が所属する国の利益を優先することなく、弱小国に目を向けること。
帝国を利用しての経済活動は奨励するが、得られた利益は極力社会に還元する形で投資すること。
各国の食糧自給率に配慮することなど。
これらは、帝国の法として正式に定められた訳ではないが、仮の法として姫さまの承認を得たもの。
法的拘束力は皆無の努力目標と言えなくも無いのだが、国家間の交渉でも相手国の事情に配慮する事が増えているのはこういったルールが浸透し始めているからに他ならない。
舞姫さま登場以前の世界では、ひたすら自国の利益をぶつけ合いながら妥協点を模索して来たのだから大きな変化。
因みに正式な帝国の法は、新しい形態である帝国組織がもう少し固まってから整備をして行く、今は大銀河帝国に相応しい法体系を研究している段階だ。

「帝国の建国宣言以降、帝国を認め新たな国際的な枠組みを模索している国々は活気づいてるみたいですね。」
「舞姫さまと共に歩む道を実り有るものにして行こうと、各国のリーダーだけでなく国民達が考えているのだから、今までとは違った価値観が定着しつつ有るみたいだね。
お金の使い方を変えたら、尊敬される様になり企業の収益が向上しているという話を耳にしたよ。
ただな…、智里は我々と距離を置いてる国をどう思う?」
「独裁者にとっては自分以上で有る、万里の存在は疎ましいでしょうね。
スパイを送り込むと、国を見限って亡命してしまうのだから、彼らに出来る事は無視を決め込むぐらい、でも、国民に全てを隠しておくことは不可能でしょう。
今は過激な手段を選ばない事を祈りつつ静観するしかないですね。」
「ねえ、お姉ちゃん、こちらから動くことを考えても良いと思うのだけど。」
「万里、こちらからって、何をするの?」
「内戦を頑張ってる国に、私が遊びに行くとか。」
「そ、それは…、私だけでなく、世界中の人達を心配させることになるでしょ。」
「多くの人にとって、よその国の内戦とか、知らない国同士の紛争なんてどうでも良い事、でも地球市民としてはどうなのかな。」
「そりゃあ、万里がそんな所へ足を運んだら、世界中が注目するでしょうね。」
「難民達には祖国を再生する力になって貰う、難民の発生源を減らし再開発することで、多くの難民を受け入れて来た国の負担を減らして行きたいと思うの、その切っ掛けとしてね。
まずは隣国から国境付近を視察する形でどうかしら。
中東を重視という意思表示が、まだ充分とは思えないの。」
「姫さまに危険の無い様…、当然、そこの人々は姫さまの祝福を感じるだろうから…、ただ、遠距離からのミサイル攻撃には無力です。」
「和馬さん、それは怖いですが、私が飾り物の女王では私に忠誠を誓って下さってる方々に申し訳ないです。
世界平和に向けて攻める姿勢も必要ではないでしょうか。」
「でも、万里に何かあったら…、そうね…、現状、万里を銀河の果てに飛ばす様な国が、その先地上に残るとは思えないかな…、大銀河帝国の力を示す意味でも、まずは万里の意向を各国に伝えてみてから検討しましょうか。」
「う~ん、姫さまの力を信じてはいますが…。」
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大銀河帝国-05 [シトワイヤン-32]

姫さまが治安の悪い地域へ足を踏み入れる。
万が一の事が有ったら大変だが、舞姫さまの力がそのエリア一体へ及べば、出口の見えない紛争に何らかの良い変化が生じるかも知れない。
賛否様々な意見が出たが、姫さまの意向でも有り、議論はその方法論になった。
結果、姫さまはターゲットにするエリアの隣国に王子の仕切る王国から入り、内戦中の国との国境を目指す事に。
王子が中心となり、隣国及び内戦中の指導者達と交渉を進めつつ姫さまを迎え入れる準備を整えて行った。
のんびりしていると酷暑の季節になってしまうと作業は急がれ、隣国がほぼ了解という段階で、姫さまともう一度王国へ飛んだ。

「今回は国境近くの町という事で設備が整っていないと聞いていましたが、なかなか立派な屋敷ですね、上空から見た所では荒れた感じの土地が広がっていましたが。」
「姫さま、急遽整備したそうです、この居住エリアの整備と共に、巡礼者の為に仮設トイレや仮設店舗も建てられまして。
ここは舞姫さま特別警護隊の本部としても機能します。」
「警護隊は、あえて多国籍なのですよね。」
「ええ、当初、王子は自国の軍だけで充分、指揮系統を考えたら無駄も無く安全だと主張したのですが、今後、地球防衛軍として災害時、多国籍で展開する事を念頭に妥協して下さいました、コミュニケーションの方法を色々試す事になると思います。」
「非常時に意思疎通が出来ないと大きな問題になりますね、時間を作って警護隊の方ともお話したいです。」
「分かりました、その様に手配しておきます。」
「ここから先は陸路ですね。」
「はい、すでに先行部隊が整備し警備上の問題がないか確認しています、国境から先も隣国との交渉がまとまりましたので、向こうの軍隊と共に準備を進めているそうです。」
「どんな車で行くのですか?」
「防弾対策の施されたリムジンバスになります、軍隊の車両が前後を固め上空からヘリが交代で監視します。
マスコミ関係の車両も含めるとちょっとしたパレードになります。
国境を越えてからの宿泊施設として、内外装を女王さまに相応しい仕様にしたトレーラーハウスが用意されていまして、それも車列に加わります。
状況に応じて、リムジンバスかトレーラーハウスを先行させ、そこまではヘリで移動という事も検討されています。
米軍がこの辺りの監視を強化していますが、今の所、特に目立った動きはないそうです。」
「やはり緊張感が違いますか?」
「はい、目指している国との国境付近では最近死者が出ています。
自分は、姫さまをお守りすることしか考えていません。」
「そういった事をマスコミは世界へ発信してくれているのでしょうか?」
「勿論です、世界中にいる大銀河帝国の臣民達は、姫さまの無事を祈っています。
また、争っている連中が妥協点を見い出せたら、どんな支援が最も有効なのか、国を越えての話し合いも行われています。」
「何とか結果を出したいですね。」
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大銀河帝国-06 [シトワイヤン-32]

町に滞在中、巡礼者を標的に自爆テロを計画していた者が、姫さまの祝福を感じて投降してきた。
舞姫さま特別警護隊を緊張させたが、それは以前にも有った事、姫さまの力を改めて確認出来、安心させもした。
警護隊にとって悩ましいのは姫さまがしばしば宙に浮いてしまわれること。
狙撃されたらと思うと、何も出来ない自分の無力さを感じるのだが、宙を舞う姿が美し過ぎて、見とれてしまうそうだ。

「姫さま、今回は宙に浮かれる事が今までより多いのですが、何か理由が有るのですか?」
「宗教に関係している人達は過去の亡霊に縛られていると思いませんか、民族間の対立もですが。」
「そうですね。」
「そんな人達に向けて、宇宙人みたいな私の存在をインパクト有る形で示す一番の方法だと思うのです。」
「警護隊からは無防備過ぎて心配する声が、一応、姫さまの足が地を離れると姫さまを視認出来る範囲の警戒度を高めてはいるそうですが、せめて高さは控えめにして頂きたいとか。」
「そうね、気を付けるわ、でも多くの人にハヤブサと共に空を舞う姿を見て頂きたくも有るのです。」
「あのハヤブサは姫さまのことを覚えていたのですか?」
「それはあの子に失礼です、飼い主が嫉妬するぐらいに仲良しなのですから。」
「そうでしたか、確かに随行のカメラマンが撮影した姫さまの腕にとまるハヤブサの写真は誇らしげに見えました。
明日からはリムジンバスでの移動になりますが、マスコミ関係者はハヤブサを旅のシンボルにしたいと話していまして、彼と絡むシーンを色々撮影したいそうです。」
「移動中は変化が少ないですものね、バスの車内や停車時などにカメラマンにサービス出来る様、考えておきます。
後、警護隊の人達とのシーンもお願いしたいですね、非番の方々と。
多国籍をアピールしたいですし、下手でも私がアラビア語を使えば、中東を重視しているとアピールすることにもなると思います。」
「彼らも喜ぶでしょう、警護隊に選ばれただけでも名誉だと考えている連中です。
今の所、最新の監視機器は正常に働いているそうで、明日からのルートに問題は無いとの報告を受けています。
本当に緊張感が高まるのは先の事ですので、明日はリムジンバスに乗り込む隊員達と交流して下さい。
リムジンバス内でしたら何を話されても構いません、撮影はしますが外部へは編集したものしか出しませんので。」
「そんなややこしい話はしませんよ。」
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大銀河帝国-07 [シトワイヤン-32]

陸路を選んだのは姫さまの祝福をより多くの人に感じて貰う為、今回の旅行は通過する国を大銀河帝国の側に引き込む狙いも有る。
姫さまの存在を恐れているイスラム指導者は少なからずいて、どこからミサイルが飛んで来てもおかしくはないのだが、大銀河帝国を積極的に支持している国々のことを考えると、それは自殺行為に等しいと彼らは理解している様だ。
まあ、こちらの目論見通り、国境を越えてからも巡礼者の出迎えを受けている。
姫さまが、その影響力を及ぼす範囲は広いので実数は把握出来ないが、宿泊地に選んだ町や村での歓迎ぶりは国内外に広く伝えられ、何よりも日本人だと言う事で好感を持たれているという。
それには日本が十字軍に関わっていなかったという歴史的な事実が影響していると話す人もいて、改めて国民感情の難しさを考えさせられた。
この国四日目の宿泊地に到着し。

「姫さま、ここまで時間を掛けた甲斐が有りまして、この国に中東三か所目の社を建設する話が進み、場所の選定に入りました。」
「中東の拠点が一つ増えるのですね、宗教指導者の不機嫌そうな顔が思い浮かびます。」
「大銀河帝国に歩み寄ることにより政治的経済的な安定を優先する方向に傾きました。
この国も国民が一致団結というのには程遠い状況ですが、巡礼者達は姫さまの祝福を感じて国の改革に取り組む方向に。
隣国からの情報も刺激になっていた様で、古い因習からの脱却、それを成功させないと隣国との国力差が広がり過ぎるとの危機感を感じていたそうです。」
「あの王子さまは、派手な投資しつつ、しっかり稼いでいますからね。
そして、イスラムの戒律を緩める方向性は国民の支持を得ています。
それだけに、新たな対立を生み出しかねないのですが…、その兆候は有りませんか?」
「今回の訪問が、その出鼻を挫く形になったみたいです。
世界中の注目を集めている今の状況下で、姫さまや大銀河帝国に対する批判を展開したくても、その根拠は用意出来ないでしょう。
姫さまの祝福を感じた人達の間にはイスラムの戒律に対する疑問が膨らんでいますが、中東各国の権力者達は、姫さまに対して忠誠を誓う者達を抑え込もうなんて事をしようものなら暴動になり兼ねず動けないのです。
巡礼者の人数はそれだけの規模になっていますので。」
「今回の目的地で対立してる人達の反応はどうですか?」
「今の所、姫さまにお見せした彼らの自己主張から進展は有りません。」
「調停案に対する返答も無いのですね。」
「はい、彼等にもプライドが有って引っ込みがつかないのだろうと王子は話していました。」
「そっか、小娘の提案は飲めないと…。」
「ここで、姫さまから怒りの鉄槌とかはないのですか?」
「えっ、そもそも怒っていませんし…、呆れてはいますが…、鉄槌を下すより彼の地に舞姫フレンズを増やせば何とかなると思いません?」
「どうなのでしょう、彼らの価値観が今一つ理解出来ていなくて。」
「対立の構図は単純では無いのですが、皆さんが大銀河帝国の価値観を理解して下さればシンプルに解決すると思います。
この国も隣の王国を見習って宗教改革が進みそうだと、特別警護隊の方が話しておられました。
そのまま様々な対立構造が緩んで行けば、いずれ国を離れた難民たちも元の国に落ち着けるとも。」
「そうですね、時間が掛かっても何とかしたいです。
ヨーロッパに余力を作らないと、アフリカの問題にまで踏み込めないと思うのです。」
「まずは明日からですね。」
「はい、明日は国境近くまで移動、その地に内戦の当事者達を集めたいのですが、まだはっきりしていなくて、国連関係ではない、大銀河帝国舞姫さま特別警護隊の存在を彼らがどう捉えてるのかも分かりません。」
「焦る必要はないです、じっくり取り組みましょう。」
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大銀河帝国-08 [シトワイヤン-32]

国境近くのキャンプ地は大規模なものになった。
大銀河帝国舞姫さま特別警護隊が守る外側をこの国の軍隊が更に固めてくれたが、その周囲には姫さまの祝福を感じられるエリアが広がり、隣国の内戦を気にしない人達が集まって来ている。
過去の遺物の様な神では無く、人々を分け隔て無く癒して下さる姫さまの噂は大きく広まっていて、舞姫さまの前にイスラム教は無力化されつつある様だ。
陸路や空路で補給物資が届けられているので食事の質は落ちる事無く、給水車や電源車が姫さまに不自由な思いをさせていない。
大銀河帝国の移動販売車は姫さまグッズを売りまくっているが、巡礼者目当ての行商人も来ている。
元々何もない所だったのだが、隣国で争う勢力の支配地域を考慮して選ばれただけのこの地は、今後新たな町となるのかも知れないと朧げに考えている。
ただ、この地に来て一週間、状況は進展せず思わしくない。

「和馬さん、彼らからの動きは無いのですか?」
「ああ、智里が叱り飛ばさないと駄目なのかもな。」
「ホント、叱り飛ばしてやりたいわ、はっきりしない態度で。」
「それでも、国境の向こう側、姫さまの祝福を充分に感じらる筈のエリアに人が集まってるのだから、この時間も無駄にはなっていないと思っているよ。
国境を越えて来る人でも武器を持っていなければ、このキャンプ地での買い物を自由にさせてるしね。
姫さまの祝福をどれぐらいの人が感じてるのかは、さっぱり分からないが、その中に各陣営の幹部が紛れ込んでいてもおかしくない。
互いに牽制し合いつつも、彼らなりに落とし所を模索してると信じているんだ。」
「根拠は有るのですか?」
「王子さまが交渉を始めてから、戦闘行動はすっかり納まっていることが確認されてる。
姫さまからの調停案の中には、大銀河帝国を信じられないと受け入れられない案も有る。
客観的に見て最も楽に内戦状態からの復興が出来る案だから、彼らなりに調べているのではないかな。」
「如何にして他の勢力を出し抜いて優位に立つのか考えていそうな人達ですが…。」
「入って来ている情報では、各陣営とも指導者を支持する力が弱まっているみたいなんだ。
まあ、命ぜられるがままに動いて来た人達が疲弊している所へ、姫さまの登場というタイミングなのではないかな。
内戦に疲れて内部分裂の可能性も有る、更なる混沌を招きかねない状況を解決するには、絶対的な指導者が必要だね。」
「そんな人がいたら内戦状態にはならなかったでしょうが、指導者に心当たりでも?」
「姫さまに従う人は少なくないと思うのだが。」
「それは…。」
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大銀河帝国-09 [シトワイヤン-32]

彼らが交渉のテーブルに付くまで時間が掛かったのは、対立の構図が複雑だった事や大銀河帝国に対して組織内でも意見が分かれた事が原因だった。
それでも何とか五つの組織から代表者が日時を合わせて我々のキャンプに来ることに。
それぞれに対する護衛をこちらから派遣して、まず国境を越えて来る前、姫さまの祝福を充分感じられる様に時間を取る。
代表者を送って来た兵士達が他の組織と交戦しない様に距離を取り、休戦を確約させ、休戦が守られなかった場合、今後の交渉で大きく不利になると脅しをかけて貰ったが、姫さまの祝福を感じ美味しい食事を提供された兵士達に戦意はなさそうだとの報告が入る。
各組織の代表達も穏やかな表情になったというので、国境を越えてキャンプ地へ来て貰うことに。
私達の前に現れた代表者達は、神妙に考え込んでいる様に見えた。
一同が揃いテーブルに着いた所で姫さまの登場。
彼らは立ち上がり、胸の前で手を組む、それが自然なことの様に。
姫さまは遠路来てくれた事に感謝の言葉を述べたそうだが、私は生憎アラビア語が分からない。
そこからの会議は全てアラビア語でなされた。

「姫さま、結局話はまとまったのですか?」
「多分ね、それぞれに地球市民党のスタッフと特別警護隊の隊員がついて、内戦終結に向けてのプロセスを調整して行くことになります。
今まで政府軍を名乗っていた人達も一旦他の組織と同格とし、臨時政府を大銀河帝国の保護下、監視下の元に成立させることで合意に至りました。
一旦各陣営間の境界線をはっきりさせますが、国境では有りませんので自由に行き来出来ます。
私は、ヘリで空から国中を見た後、各組織の拠点を訪問して行きます。」
「祝福をまずは空から、広い範囲にという事ですね。
攻撃目標にされたりしないでしょうか?」
「特別警護隊が護衛のヘリを用意してくれますし、監視衛星からの映像を常に確認。
私に対して軍事行動を起こしたら、今回合意してくれた五つの組織に対する攻撃で有るとみなされ、瞬時に抹殺されるそうです。
でも、こちらが余程の高速で移動しない限り、私の影響下に入るので大丈夫だろうと皆さん仰ってました。」
「自身がそれだけのインパクトを姫さまから感じたと言う事ですね。」
「ええ、皆さん私への忠誠を誓って下さいまして、大銀河帝国領となり私と共に歩みたいとの発言に反対する人はいませんでした。」
「対立の原因は解消されたのですか?」
「そうですね、暫定的に国のトップを私に預けて貰うことになりましたので、一番大きな部分は先送り出来ました。
当面は大銀河帝国の自治領といった形を模索して行く事になりそうです。
帝国の力で、経済面を安定させて行けば落ち着いて行くでしょう。
二つの国家、場合によっては三つの国に分けるという提案もしたのですが、それでは国力が弱くなると分かっているそうで、何とか現状を維持、ただ周辺諸国との不自然な国境問題は大銀河帝国も気に掛けて欲しいとのことでした。
人を無視して乱暴に一直線の国境を定めてしまったが為に多くの争いを生み出したのですからね。
まあ、国境を持たない大銀河帝国の理想も考えて欲しくは有りますが。」

出口の見えなかった内戦状態からの脱却、それは姫さまにしか成し得なかった事だと誰しもが思う。
根本的な部分での人と人の対立は、本当に力有る存在が必要なのだ。
姫さまの介入により、政府軍を支援していた国も反政府軍を支援していた国も手を引かざるを得なくなり、大銀河帝国の存在を世界にアピールする事となった。
だが内戦によって疲弊し切った国の復興は容易な事ではない。
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大銀河帝国-10 [シトワイヤン-32]

交渉がスムーズに進んだのは、彼らが姫さまを神の如き存在と認めたからに他ならない。
そして、姫さまが国中を飛び回った事により国民達も、美しき女神の如き存在を女王として受け入れた。
だが、これはとてつもなく特別なこと、中東に女王、しかも他国の人間だ。
これまで争って来た人達が連名で、舞姫さまを中心とした臨時政府を樹立し大銀河帝国の保護下に入るとした宣言は多くの人達に衝撃を与えた。
その宣言を受け、復興のプロセスを早め支えたのは、地球防衛軍。
疲弊した一つの国を舞姫さまの下に再生する為、様々なチームが組まれた。
教育の分野だけでも、子ども達に対する基礎教育、若者中心の技術教育、市民教育、そして教育者を育成するシステムなど多岐に渡る。
大人達は地球防衛軍に志願し職を得たり、経済活動再生チームが立ち上げた会社に就職して行く。
武器は防衛軍が買い上げ、転売出来る物は転売し、それが叶わぬ物は鉄くずとしてリサイクルへ。
停止していた油田関連事業は国営企業として、日本企業による全面バックアップの元、再スタート。
それらの活動を後押しする為、姫さまは精力的に動かれている。
中東各国を歴訪し各国首脳と会談。
舞姫さまが自国に足を踏み入れる事は各国の指導者にとって、かなり微妙なことだったが、一国を代表しての訪問なので断れない。
勿論国民は美しき姫さまの来訪を大歓迎だ。
こうした二国間の話し合いとは別に、王子に手伝って貰いながら様々な国際会議を開き中東の問題と向き合っている。

「姫さま、姫さまの祝福を体験した人が中東総人口の七割を超えたとの試算が出ていまして、それに伴いイスラム教の弱体化が進んでいます
また、大銀河帝国が目指す処の、人と国の在り方が、宗教が如く広まりつつ有るようで、姫さまの中東諸国歴訪は大きな成果を得られたと思います。」
「でも、紛争に明け暮れて来たこの地を、住民がユートピアだと思えるレベルにまで出来るのでしょうか?」
「まだ経済的には心許ないですが、内戦が終わった段階ですぐに支援を開始出来ましたので、人の意識が大きく変わっているみたいです。
我々の目にはまだ貧しい状態でも、以前より生活が安定したことで姫さまに感謝する気持ちがかなり強くなっているとの報告が届いています。」
「まあ、あちこちの国に随分おねだりしましたからね。」
「後ろめたい思いの有る国や難民を帰還させて楽になろうと目論んでいる国ばかりですよ。
姫さまのお小遣いは子どもの教育に使われていますので、投資の回収は難しそうですが。」
「ふふ、良い子が住んでる良い町になれば良いのです。」
「えっ?」
「よい子が住んでる♪ よい町は♪ 楽しい楽しい♪ 歌の町♪
昔の童謡ですが小さい頃に本間さんから教えて頂いて、本間さんは苗川をこの歌の様な町にしたいって。
この地でつらい経験をして来た子ども達が、ひねくれた大人にならず明るい町にしてくれたら、それで充分じゃないですか。」
「は、はい。」

オイルマネーによる裕福な国と紛争により不安定な状態を続けて来た国の混在する中東、宗教上の聖地が混乱の元凶になりもして来たが、姫さまは富める者に経済的支援をさせつつ、自身が意識しないまま、イスラム教を弱体化させていった。
ヨーロッパでも、姫さまの登場によりカトリック系の団体がダメージを受けていることが、イスラムの指導者にとっての僅かな救いだったが、彼らの信仰心もまた姫さまの祝福によって大きく揺らぎ、姫さまと共に歩むべく…。
そう、人々の価値観は姫さまによって大きく変わり、アッラーへの礼拝はDVDで舞姫さまの舞を見、大銀河帝国について学ぶ時間に。
地上に存在する唯一の神、それが舞姫さまなのだ。
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