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大銀河帝国-10 [シトワイヤン-32]

交渉がスムーズに進んだのは、彼らが姫さまを神の如き存在と認めたからに他ならない。
そして、姫さまが国中を飛び回った事により国民達も、美しき女神の如き存在を女王として受け入れた。
だが、これはとてつもなく特別なこと、中東に女王、しかも他国の人間だ。
これまで争って来た人達が連名で、舞姫さまを中心とした臨時政府を樹立し大銀河帝国の保護下に入るとした宣言は多くの人達に衝撃を与えた。
その宣言を受け、復興のプロセスを早め支えたのは、地球防衛軍。
疲弊した一つの国を舞姫さまの下に再生する為、様々なチームが組まれた。
教育の分野だけでも、子ども達に対する基礎教育、若者中心の技術教育、市民教育、そして教育者を育成するシステムなど多岐に渡る。
大人達は地球防衛軍に志願し職を得たり、経済活動再生チームが立ち上げた会社に就職して行く。
武器は防衛軍が買い上げ、転売出来る物は転売し、それが叶わぬ物は鉄くずとしてリサイクルへ。
停止していた油田関連事業は国営企業として、日本企業による全面バックアップの元、再スタート。
それらの活動を後押しする為、姫さまは精力的に動かれている。
中東各国を歴訪し各国首脳と会談。
舞姫さまが自国に足を踏み入れる事は各国の指導者にとって、かなり微妙なことだったが、一国を代表しての訪問なので断れない。
勿論国民は美しき姫さまの来訪を大歓迎だ。
こうした二国間の話し合いとは別に、王子に手伝って貰いながら様々な国際会議を開き中東の問題と向き合っている。

「姫さま、姫さまの祝福を体験した人が中東総人口の七割を超えたとの試算が出ていまして、それに伴いイスラム教の弱体化が進んでいます
また、大銀河帝国が目指す処の、人と国の在り方が、宗教が如く広まりつつ有るようで、姫さまの中東諸国歴訪は大きな成果を得られたと思います。」
「でも、紛争に明け暮れて来たこの地を、住民がユートピアだと思えるレベルにまで出来るのでしょうか?」
「まだ経済的には心許ないですが、内戦が終わった段階ですぐに支援を開始出来ましたので、人の意識が大きく変わっているみたいです。
我々の目にはまだ貧しい状態でも、以前より生活が安定したことで姫さまに感謝する気持ちがかなり強くなっているとの報告が届いています。」
「まあ、あちこちの国に随分おねだりしましたからね。」
「後ろめたい思いの有る国や難民を帰還させて楽になろうと目論んでいる国ばかりですよ。
姫さまのお小遣いは子どもの教育に使われていますので、投資の回収は難しそうですが。」
「ふふ、良い子が住んでる良い町になれば良いのです。」
「えっ?」
「よい子が住んでる♪ よい町は♪ 楽しい楽しい♪ 歌の町♪
昔の童謡ですが小さい頃に本間さんから教えて頂いて、本間さんは苗川をこの歌の様な町にしたいって。
この地でつらい経験をして来た子ども達が、ひねくれた大人にならず明るい町にしてくれたら、それで充分じゃないですか。」
「は、はい。」

オイルマネーによる裕福な国と紛争により不安定な状態を続けて来た国の混在する中東、宗教上の聖地が混乱の元凶になりもして来たが、姫さまは富める者に経済的支援をさせつつ、自身が意識しないまま、イスラム教を弱体化させていった。
ヨーロッパでも、姫さまの登場によりカトリック系の団体がダメージを受けていることが、イスラムの指導者にとっての僅かな救いだったが、彼らの信仰心もまた姫さまの祝福によって大きく揺らぎ、姫さまと共に歩むべく…。
そう、人々の価値観は姫さまによって大きく変わり、アッラーへの礼拝はDVDで舞姫さまの舞を見、大銀河帝国について学ぶ時間に。
地上に存在する唯一の神、それが舞姫さまなのだ。
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