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近衛予備隊-151 [高校生バトル-58]

「日本の様な国でもか…、我が国の麻薬関連犯罪はかなり抑え込まれたとは言え、やめることが出来ずに事件を起こす人が後を絶たない、大統領は子どもを麻薬から守ると宣言したが、すでに中毒になっている人のことは諦める方向だよな。」
「自業自得とは言えね…。」
「俺達の村だって転入者が持ち込んでいないとは言い切れない、村としても対策を…、子どもの喫煙問題を含めて強化すべきかもな。」
「大統領親衛隊の人と相談してみる?」
「ああ、それと遠江王国や日本国がどんな対策をしてるのかも知っておきたいね。」
「親衛隊の方は知り合いにメールを送ってみるわね。」
「ここの状況は明日にでも…、明日は高校生との交流だから、まずは高校生に聞いてみようか?」
「高校生って私達と同世代なのよね、この年頃をどう過ごすかによって将来が決まるなんて結衣が話してたけど。」
「日本では大学受験が有るからだろ、う~ん、村から大学に進学する人が出る様になって行くのかな…。」
「この先高度な知識を必要とする職業に就く人の育成も考えなくては行けないのでしょ。」
「でも、今一つ大学と言うものが良く分からないのだよな、俺達は必要を感じた知識を近衛予備隊で学んだだけでなく、マネージャー達にもお世話になって。」
「店長は社員教育の一環だと話してたわよ。」
「社員教育って幅が広いのよね、ホントに基礎的なことから高度なことまで、私達は時々大学レベルの内容だと言われながら難しい学習に取り組んで来たでしょ。」
「ホントは会社に入る前に学習して置くべきことを学ぶ為の学校、入社後の社員教育と言うことなのかしら?」
「遠江王国の高校生には色々聞いてみたいね、こんな機会、そんなに無いだろ。」
「そうね、あまり時間が無いけど質問内容をまとめておく?」
「今日頑張り過ぎるより、仲良くなって、先々メールのやりとりで教えて貰うとか。」
「じゃあ、取り敢えず子どもと犯罪みたいな話をしながら…、まあ、ジョンのファンが多いそうだから頑張ってね。」
「女の子同志の方が話し易いことも有るのではないのか?」
「メールのやり取りは私達でするから、ジョンはファンサービスしてあげて。」
「ファンサービスか…。」
「写真を撮らせてあげるだけで良いのよ。」
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近衛予備隊-152 [高校生バトル-58]

 高校生との交流会は女子生徒ばかり十二名と。
 彼女達はプリンセス詩織と関係の有る様々なグループのリーダーから希望者を募り、そこから抽選で選ばれた人達。
 俺達のYouTubeチャンネル登録者ばかりで、村長業務や戒厳令後の状況に関する質問など真面目な話し中心に進み、自分達からの子どもと犯罪に関する質問にも応えて貰えた。

「どう、彼女達と連絡先の交換、出来た?」
「ええ、私達のグッズが売れてると教えてくれ、日本へ輸出したい物が有ったら協力するとも言ってくれたわ。」
「確かにグッズの売れ行きは好調だな、収録済みの番組にはまだ放送されて無いのも有るから、まだまだ売れそうだと売れ筋商品を中心に追加で送る話が来てたよ、その利益は村の教育関係に回して行きたいものだな。」
「そうね、転入者のピークは過ぎたと思うけどマーケット向け商品の工場はまだ拡大計画が進んでる最中、犯罪予備軍を生み出さない為にも、学校に余力は必要だわ。」
「村の運営が税金では無く企業からの資金援助で成り立ってることに高校生は違和感を感じたそうよ。」
「実質的に会社が村に納めた税金を使って村の運営をしている様なものだろ、住民の多くが会社の関係者なのだからおかしな話では無いさ。
 ただ、国として地方自治体のシステムが未完成なのは何とかするべきなのだろうな。」
「周辺自治体の現状はひどいものね…、でも税収を充分な額にと考えると税金が高額になってしまい、反政府組織の活動が活発化するだけでしょうね。
 先進国の存在を知らなければ、現状を受け入れるだけなのかも知れないけど…。」
「そうだな、俺達の村が少し前までどんなだったかを知った時は、とても暮らして行けないと思ったと言われたよ、俺達は普通に暮らしていたのだがな。」
「私は治安の悪い町には住めそうにないと言われたけど、戒厳令が出された頃に町で暮らしてた子達はどうしてたのかしら?」
「慣れてしまえば何ともないとか。」
「ひどい暮らしに慣れてた人が良い暮らしに慣れるのは簡単だけど、逆は大変だと思わないか?」
「ええ、私達にとって当たり前のことだった停電を、経験した記憶がないって人がいたわね。
 多くの電化製品に囲まれて育って来たのだろうから、それが使えなくなったらどうするのかしら?」
「この先、私達の村に生まれ育つ子もそんな感じになるのかな?」
「う~ん、便利さに慣れ過ぎるのも怖いものが有りそうだな。」
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近衛予備隊-153 [高校生バトル-58]

 交流会の翌日、結衣と…。

「日本国の人達はとても便利な生活を当たり前の様に享受してるみたいですが、もし停電になったらとかは考えていないのですか?」
「災害への備えは日頃から考えているけど、実際に長期間の停電となったら大変でしょうね。
 遠江王国では発電のバリエーションを増やすことで、メインの送電が止まっても完全な停電とはならない様にしてはいるのだけど。」
「バリエーションですか?」
「太陽光や風力発電を非常時の電力として使える様にして有るだけでなく、燃料電池車向けの水素ステーションは非常時に小規模発電所の役目を担うし、他にもね。」
「水素利用の自動車はあまり台数が増えていないのですよね?」
「遠江王国はそこも特別なの、この辺りは何時大地震が起きてもおかしくないと長年言われ続けていることも有り、世界的には温室効果ガス削減に向け電気自動車にシフトしつつある中、保険の意味も兼ねて水素の利用を進めているの、効率だけを考えたら電気自動車に絞った方が良いのだろうけど。」
「それも大企業が実験都市の構築に参加しているからなのですね。」
「ええ、水素は自働車の燃料としてだけでなく、化石燃料に代わるエネルギーとして可能性を研究中、扱い易さは化石燃料に遠く及ばないのだけど。
 まあ、バリエーションは有っても、あくまで非常用の発電だから普段通りに電気を使える生活とはならないのだけどね。」
「便利な生活に慣れてる人達はどうするのでしょう?」
「災害の規模にもよるけど、何とかしてしまうのが日本人かしら、まあ、普段からキャンプを楽しんでる人がいるし、薪の備蓄も有るからね、森を大切にしてる見返りはそれなりに有るのよ。」
「子ども達もですか?」
「野外キャンプは教育の一環としても重視されていてね、薪を使ってご飯を炊ける中学生は少なく無いと思うわ。」
「へ~、意外です、教育の目的は非常時でも生活出来る為にと言うことなのですね。」
「それ以上にキャンプでの団体生活を通して協調性を高めることかな。
 協力し合って炊事したりと言った活動を通して集団のルールを考えたりとか。」
「集団のルールと言うことは犯罪の抑止も考えてのことですか?」
「犯罪まで意識してるかどうかは分からないけど、遠江王国では指導者がしっかりしていればキャンプの教育的価値は高いと考えられていてね。」
「統計的な結果も?」
「元々犯罪の少ない土地だったからデータは取りにくいと思うし、花の街作戦に参加してる子が多かったりとか、他の要因も有るから明確な統計は取れないと思う。」
「そうですか…。」
「子どものキャンプを指導してる知り合いがいるから、会って話せる機会を作りましょうか?」
「是非お願いします。」
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近衛予備隊-154 [高校生バトル-58]

 キャンプが気になったのは、村に出来たキャンプ場の存在にもよる。
 元々観光客向けのキャンプ場設営計画が有った所に、プリンセス詩織が鳥と戯れる映像が広まり、鳥類研究家の為に整備作業を前倒ししたキャンプ場。
 今では観光客向けコテージなどが整い、まずまずの利益を出しているのだが、俺はコテージが建ち始める頃までキャンプ場とはホテルの一種だと思い込んでいた。
 その頃自分達が住んでいた家より、テントでさえ快適な住まいに思えたからだ。
 おかげで、キャンプを趣味としている近衛隊メンバーが、話の流れから俺の勘違いに気付いた時には、本当の野営とは何かと言う講義をみっちり受けさせられることに。
 でも当時の俺達は彼の言う所のキャンプ生活とあまり違わない暮らしぶり、野営の経験も無かったので、わざわざ電気の使えない生活をする意味が分からなかった。
 ただ、完成したキャンプ場は、シャワーやトイレ完備の立派なコテージが建ち並び、冷蔵庫などの家電品を利用することが出来ると言う充実ぶりで、当時講義をしてくれた彼は、あそこはキャンプ場と言う名のホテルだと残念そうに話してから、キャンプの話をしなくなったのだった。

 結衣の案内で訪問することになった遠江王国の国立キャンプ場も、立派な宿泊棟が建っているそうなのでホテルタイプのキャンプ場なのだろう。
 ルーシーは車で結衣と共に直接現地まで、俺とシャルロットは途中から森の中のハイキングコースを歩いて行くことにした。

「この辺りは人工林なのね、私達の村とは随分雰囲気が違うわ。」
「手入れされているし木の種類も違うからな、冬は寒いから木の成長が遅いそうだ、その代わり材質は良いそうで条件が良ければ何百年も持つのだとか。」
「村の建物は傷むのが早かったものね、今度の新築はお金が掛かってるから長持ちしそうだけど。」
「技術的な差も有るらしいよ、何百年も前に地震に強い構造の建物を建てられたのだからな。」
「そう言った技術力の差が今にも影響してるのかしら?」
「多分な、それでも日本には日本なりの問題が有るのだから、そこを学びながら俺達の村を良くして行けば良いのさ。」
「すでに随分良くなったとは思うけど。」
「でも、自力ではないだろ、だから周辺に住む人から羨ましがられても、簡単には広げられない。
 色々積み重ねて行かないと国は良くならないのに、どこかで間違えて治安の悪い国になっていたからな。」
「村長としては村を広げたいと考えているの?」
「いや、その必要はないだろう。
 ただ、地方自治体の財政が健全になって日本の様なシステムを確立させたいとは思う。
 なあ、シャルロット、日本では千年以上前に税制を始め国を運営する形が出来ていたそうだが、千年前の我が国はどうだったと思う?」
「う~ん、良く分かってないのよね…、もし猿レベルだったら少し悲しいかな…。」
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近衛予備隊-155 [高校生バトル-58]

 それから話題は猿の真似が得意な予備隊の子に移り他愛のない話へと。
 森の中の道を二人で歩くのは心地良く、旅の緊張が解ける気がした。

「建物が有るよ、あそこがキャンプ場みたいだな。」
「森の中に赤い屋根の木造か…、始めて見る建物なのに何故か懐かしさを感じるわ。」
「だな、木々に囲まれているからか木造だからか。
 前はコンクリート製の近代的な建物に憧れたが、所詮俺は山猿なのかもな。」
「山猿で良いのよ、他人を喰いものにする文明人より、仲間を大切にする進化した猿ならね。」
「ああ、日本人の様に祖先が遺してくれたものは少なくても、いや子孫の為に良い文化を残して行きたいかな。」
「結構大きな施設ね。」
「だな、結衣が言ってた管理棟は…。」

「あっ、あれってジョンとシャルロットじゃない?」
「えっ?」
「ほんとだ、絶対そうだよ。」
「凄い、めっちゃカッコいいし超美人じゃん。」
「お、おい、お前、声掛けてみろよ。」
「私が?」
「お、俺にはムリだ。」

「おいおい、君達、聞こえてたよ。」
「あ~、どうしよう…。」
「管理棟を探しているのだけどね。」
「は、はい、案内します、御免なさい、この人達が失礼なことを。」
「気にしてないよ、君がリーダーなのかな?」
「いえ、グループのリーダーは異世界人とのファーストコンタクトに戸惑ってしまったみたいで。」
「はは、今日はキャンプしに来てるの?」
「ええ、今から昼食を作るところです。」
「何を作るのかな?」
「今日はパスタに挑戦です、ケイトさんほど凝ったものでは有りませんが。」
「あっ、YouTube、見てくれたの?」
「ええ、毎回楽しみにしています、登場する皆さんが素敵な人ばかりですので。」
「それぞれ色々有るのだけどな。」
「管理棟まで案内させて頂きますね。」
「料理の方は大丈夫?」
「彼らは頼りなさそうに見えて結構しっかりしているのですよ、料理には結構慣れていまして。」
「普段からやってるのかな?」
「はい、今日は学校行事として来ていますが、地域活動の一環として小学生を連れて来る事も有るのです。」
「指導的な立場で?」
「ええ、そこの頼りなさそうな男子でも、小学生の前では偉そうにしてるのですよ。」
「はは、彼は何か言いたそうだがな。」
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近衛予備隊-156 [高校生バトル-58]

 管理棟まで案内してくれたのは香菜、中学一年生。
 今日は理科の学習と調理実習で、リニアモーターカーの終着駅とキャンプ場間の往復は体育の授業として扱われるそうだ。
 ルーシー達と落ち合った後、案内をしてくれる指導員の提案で香菜達の調理実習を見学させて貰うことに。

「香菜、ここの施設はよく使うの?」
「はい、学校からは月に一回程度、小学校の高学年からは宿泊学習も有りますが、それ以外に土日や夏休みを利用してサークルの合宿でも利用させて貰っています。」
「サークル?」
「私は花の街作戦に参加している第十七花壇サークルに所属していますので、その仲間と花壇造りに関する学習と親睦会を兼ねて合宿をしたり、他にも色々有りまして。」
「へ~、中学生ばかりで?」
「いえ、花壇サークルには小学校高学年からお年寄りまで色々な人がメンバーがいます。
 うちにはお菓子メーカーがスポンサーについてくれていますので、お菓子目当ての子もいるのですが、私達の管理している花壇は評判良いのですよ。」
「うん、遠江王国に来て驚いたのは綺麗な花壇の多さだ、サークルには多くの人が参加してるのかな?」
「ええ、多過ぎるぐらいの方が個人の負担が少なくて済むからと、どの花壇サークルも人数制限をしていません、私は正式なメンバーになる前から、学校の行き帰りに見頃を終えた花を摘み取っていたのですよ。」
「お金が掛かってると言うより、多くの人の手間が掛かって綺麗に維持されているのだね。」
「お金は…、花の街作戦が始まった頃は予算の確保に苦労したと聞いていますが、直ぐに参加者が増えスポンサーが名乗りを上げたそうで、花の街と綺麗な森の存在は、遠江王国の誇りだと聞かされています。」
「そうだね、森の管理も行き届いてると感じたが、ボランティアの力なのかな?」
「はい、私達は王家の方々から王国内全ての土地は国民全員の庭だと聞かされています。
 自分ちのちっぽけな庭のことしか考えない人もいるそうですが、多くの国民はこの森も自分達の庭だと考えています。
 自分の庭だからと森の中の遊歩道を利用する人は多いですし、散歩中に気になる箇所を見つけたら声を掛け合って整備しているのです。
 去年、台風で山のあちこちが荒れてしまった時には多くの人が補修作業に参加して、台風の前より道が良くなったのですよ、その作業中は皆さん声を掛け合い、持って来たお弁当を分け合い、私はお手伝いをしていて楽しかったです。」
「素敵な国を支えているのは素適な国民なんだね。」
「ふふ、あっ、そこが私達の調理スペースです。」
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近衛予備隊-157 [高校生バトル-58]

「もう作業を始めていたのだね、香菜、忙しいところを有難う。」
「いえ、今日は簡単なメニューで人は余り気味なのですよ。」
「はは、香菜はこんなこと言ってるけど君達は大丈夫なの?」
「はい、香菜は要領が良過ぎるので、その気になって作業されると私がおろおろしてる内に終わってしまうのです。
 リーダーから今日は香菜抜きで作ってみようと言う指示も有りました。」
「香菜は有能なんだ。」
「へへ、でも考えてみて下さい、普通七人分の料理を七人で作りますか?」
「確かに一人でも作れるね」
「最近は、下準備の段階でしっかり働いて調理の時はのんびり、完成が遅れそうになったら手伝うと言うスタンスにし、主に食べる係をしているのです。」
「食べる係は重要だよな、自分も近衛予備隊の調理実習を見に行った時は食べる係だよ。」
「ジョンに食べて貰えたら嬉しいだろうな~。」
「そう言うものか?」
「そう言うものですよ、ね、シャルロット。」
「ええ、でもジョンはプリンセス詩織をはじめ、皆さんに可愛がられ、毎日の様に美味しいものを食べさせて貰って来たので本心からの美味しいを引き出すのは結構難しいのよ、自分でも料理するし。」
「へ~、日本とは味付けとか違いますか?」
「村の食事とは違うけど、私達を餌付けしたのは主に日本人だからね、こっちに来て何の違和感もなく食べてるわよ、美味しい物ばかりでルーシーは太りそうなのだけど。」
「香菜、不公平だと思わない?
 シャルロットと食事の量は同じ筈なのに、私は油断してると体重も体積も、体積は兎も角体重は増やせない事情が有ってね。」
「長年車椅子生活だったからですね、そんな風には見えませんが。」
「ちなみにルーシーと私、食事の量は同じでも間食の量が全然違うから不公平ではないのよ。」
「ふふ、知ってました、YouTube見てますからね。」
「そこなのよね、日本向けだから少しぐらい恥ずかしい映像でも良いかと思ってたのだけど、日本に来てから行く先々でおやつに気を使われて、お菓子が好きだからと美味しいのを出して貰えるのだけど量が少なめで。」
「私達と同じ量なのに、自分のは小さいとか言い出してジョンの分も食べようとするのよ、ルーシーはお子ちゃまでしょ。」
「はは。」
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近衛予備隊-158 [高校生バトル-58]

 初めての人との会話を和ませる時、シャルロットはルーシーがお子ちゃまだと言う話しをするのだが、その辺りはルーシーも心得ていて、時に自虐を交えながら周りを楽しませてくれる。
 香菜が物怖じしない子と言うことも有ったが、仲良く成るのに時間は掛からなかった。

「香菜、作業に慣れてる子と慣れてない子の差が有るみたいだね。」
「はい、リーダーや私は小学生の頃から学校外の行事によく参加していましたので、そうで無い子とは差が有ります。
 親に連れられキャンプやバーベキューに行くと色々なことを教えて貰えて楽しかったのですよ。」
「中学一年生にして経験の差が有る訳だ。」
「ええ、うちは父も料理が好きで小さな頃から一緒に調理をしていました、昨日今日始めた素人には負けません。
 王家の方々は、料理が出来ると職業の選択肢が広がるだけでなく心が豊かになる、また、料理人としての資質を上げようとすれば自ずと総合的な能力を伸ばすことに繋がると、子どもの頃から料理することを推奨して来られました。
 うちは両親共に王家の方々を尊敬していますので自然な流れだったと思います。」
「自分達も王家の方々を紹介して頂いたが、素敵な人達で尊敬してるよ。」
「ジョンも子どもの頃から料理をしていたのですか?」
「うん、何時頃からだったかな…。」
「十歳ぐらいじゃなかったかしら、大人が作ったものより食べやすかった記憶があるわ、それからも時々作ってくれて。」
「だが、今考えると材料や調味料に限界が有って、美味しいとまで言えるものは出来なかったな。」
「YouTubeで話してたのは大袈裟にしてた訳では無かったのですね。」
「ああ、君たちが見たらあまりの見すぼらしさにビックリする様な村だったんだ。」
「そんな村の出身者とは思えません。」
「プリンセス詩織が来て下さらなかったらと思うとゾッとするわね。
 ねえ、香菜は想い出に残ってるキャンプとか有るの?」
「そうですね、沢山有りますが、五年生の時に参加した夏休みの英語キャンプはスリル満点で特に楽しかったです。
 英語しか使っちゃダメなのだけど、まだそんなに話せる訳でも無く、指示されたことが分からないまま、それまでの少ない経験と勘で何とかしようとしたのですが失敗して怒られたり、思わぬところで何故か褒められたり、まあ、笑って済ませられる程度のミスしかしなかったのは料理の基礎を親から教え込まれていたからだと思います。」
「スリルね…。」
「キャンプ中に使われそうな言い回しを予習して参加したのですが、いざとなると出て来なくて、そのキャンプを切っ掛けに使える英語を目指して英語学習を頑張る様になったのです。」
「我々は英語でも構わないよ、むしろ日本語より英語の方が得意なのだけどね。」
「う~ん、まだそこまでは…、緊張して…。」
「はは、それで英語キャンプの時は英語だけで安全面は確保出来ていたのかな?」
「スタッフや先輩方が気を配っていて下さいました、その時は一番年下でしたので。」
「その後も英語キャンプには参加してるの?」
「はい、中学生になりましたので今年のキャンプでは先輩として小学生達の面倒を見ていたのですよ。」
「大変だったでしょ?」
「いえ、自分達がして貰ったことですし、先輩方も一緒です。
 英語キャンプなどでは先輩や後輩と一緒に色々なことが経験出来て楽しいのですよ。」
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近衛予備隊-159 [高校生バトル-58]

「英語キャンプか…。」
「香菜、私達の村でも教育キャンプを実施出来ないか考えていてね。
 もしキャンプをするとしたら何に気を付けたら良い?」
「兎に角、火です。
 キャンプでは火と人間の関りを見つめ直すのですが、便利な火でも使い方を誤ったら大変なことになります。
 主催者サイドは初心者に対し服装に関する注意を事前にしているのですが、毎回初心者の内何人かは火に弱い化学繊維の服や、軍手では無く化学繊維製の手袋を持って来るのです。
 用意は親がしてると思うのですが情けなくなりますね。」
「説明を読まない親がいるのかな?」
「だと思います、そんな子は火の近くに行かせないのですが、それでも野外活動に向いてない服装なので服に穴を開けてしまったり、先輩方は親の教育が必要だと笑っていますが。」
「分かるよ、村人の中にも理解力の低い大人がいてね…、やはり安全教育は重要だよな。」
「はい、今日の理科は身近な危険をテーマに実験することになっていまして。
 古着を火に近付けてどんな服がどんな感じで燃えるのかを確認したり、混ぜるな危険、と書いて有る意味を実際にここの安全学習広場で試してみます。」
「成程、言葉では理解していても真面目にルールを守っていると実際どんなに危険なのかが理解しにくいかも、そんな実験をする学習、日本の学校ではどこでも普通に行われているのかな?」
「先生、どうなのです?」
「はは、全部香菜ちゃんに任せておけば大丈夫かと思ってた見てたよ。
 そうですね、日本の理科教育の現場では、そもそも子どもに実験をさせなくなって来てるのです。
 理科教育を考えたら根本的に間違っているのですけどね。」
「どうして実験をさせないのですか?」
「教師の力量不足や大学入試に向けた偏向的な学習カリキュラム、安全面での不安を言い訳にしている所も有ります。
 根本的に理科で行う実験の意義を理解出来てない人が多いのですよ、教育界でさえ。」
「実験を行う意義ですか?」
「調べれば分かる、ネットで映像を探せば出て来るかも知れませんが、それらは実際に目の前で起こってることではないのです。」

 先生は理科教育に於ける実験の重要性を熱く語ってくれた。
 自分も近衛予備隊に入隊してからの学習過程で体験した実験は印象に残っている。
 実験とは言わないが調理することも実体験をすると言う意味で実験に通じるところが有ると思える。
 そう考えてくと、職業訓練も同様なのかも知れない。
 体験を伴う学習とそれを伴わない学習、教育キャンプの目指している所が少し見えて来た気がする。
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近衛予備隊-160 [高校生バトル-58]

 先生の話を聞いてる間に、香菜は調理していた子に声を掛け俺達が試食出来る様、パスタを仕上げてくれた。

「これはお世辞抜きで美味しいね。」
「YouTubeでジョンが茄子を使った料理を美味しそうに食べてたから、ちょっと茄子を貰って来てアレンジしてみたのです。」
「環境の整った台所では無いのに火加減とか難しくないの?」
「ふふ、その辺りは父の直伝なのですよ。」
「おっ、一子相伝なのですね。」
「ルーシー、そんな大げさなものでは有りません、でも一子相伝なんて言葉を知ってるなんて意外でした。」
「単にルーシーがアニメオタクなだけよ、でも日本語学習を考えたらアニメは少し微妙なのよね。」
「何処がです?」
「普通の人が使わない言い回しが出て来るでしょ。
 私達が日本語に慣れない頃はそこで戸惑ったのだけど、教えてくれる日本人がいなかったらルーシーは今でも、ルーシーでござる、なんて言ってたかもよ。」
「それを普通の日本語だと教えてしまう意地悪な人を知ってますが、教える人によって随分違って来ますよね、父は調理を論理的に教えてくれますが、母は感覚的なのです。」
「人それぞれだからな、自分は論理的に教えて欲しいし論理的に教えたい。
 香菜は教える教師によって生徒の学力に差が出て来ると思う?」
「どうでしょう、学ぶ側の姿勢にもよると思いますが…、先生、そもそも学力の定義が遠江王国と日本では違って来てるのですよね?」
「ああ、そうだな。
 ジョン、大学入試を目指す能力ばかりが重視されていた日本の教育に対して、我が国では学んだことを活かせる能力にも重きを置くべきではないかとなりましてね。
 遠江大学が中心となって教育の見直しがなされているのですよ。
 ただ、教師の資質による格差は、王家の運営する高校生バトルと言う通信教育みたいな取り組みでカバーしています。」
「成程、高校生バトルはプリンセス詩織に教えて貰い自分達も随分お世話になりました。
 通信環境が整ってさえいれば、世界中どこにいても同じ講師の講義を受けられますからね、無料の代わりに入るCMも自分にとっては有益な情報です。」
「まだ日本語中心で、英語に関しては今後充実させて行くそうですが。」
「それでも、既に英語でのネットワークが広がっていますし、近衛予備隊の隊員達はプリンセス詩織に対する憧れも有って日本語に興味を持ってる子が多いのですよ。
 村立の学校でも施設を充実させ、活用して行きたいと考えています。」
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