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三学期-301 [花鈴-31]

 大学生と沢山話せた新年会がお正月最大の出来事だったが、何時までもお正月気分ではいられない。
 三学期となり学校での日々が始まった。

「姫は算数の時間、何をするの?」
「大学生の新年会で提案されたことの検討かな、昨日メールで届いた案件も有るし。
 絵梨は?」
「数学の自習、姫がどんどん先へ進んでしまってるから少しは追いつかないと。」
「中一レベルはそんなに難しく無いから。
 でも、大賢者が取り組んでるレベルの数学になると訳が分からないのよ。」
「だよね、まあ、簡単過ぎる小五の算数に無駄な時間を取られずに済むのは、ここに転校した大きなメリット、普通の公立小学校に通う、私達レベルの子達はどうしてるのかしら?
 退屈な思いをしてるのかな?」
「本当に能力の高い子は、そんな環境でも適当に自分の知的欲求を満たしてそうな気がするけど、そこまででは無い子達は無駄な時間を過ごしてるのかもね。」
「ねえ、三学期の初めに転校して来る予定だったギフテッドの子はどうなったの?」
「私もトラブルが有ったとしか聞いてないのよ。
 理数系が得意な小学五年生だけど、絶対音感を持ちピアノも上手な子だとは聞いていたのだけど。
 絶対友達になってYouTubeチャンネルに参加して欲しいと思ってたのに。」
「写真では可愛い感じの男の子だったものね。」
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三学期-302 [花鈴-31]

 当初の予定より遅れて転校して来た杉本薫君が私達と馴染むのには時間が掛かった。
 前の学校で色々有ったらしく警戒されたのだ。
 それでも、数学関係で大賢者と話す様になり、絶対音感の話をしてくれる様になって私達と馴染んでくれつつ有る。

「薫、ここでの生活はどう?」
「悪くないかも、自分と話の合う人が複数いる小学校がイメージ出来なくて学校に通うことを拒んでいたのが間違いだったと気付いたよ。」
「やはり不登校だったの?」
「うん、算数の授業を受けるの何てバカバカしいと姫も思っていたのでしょ?」
「ええ、簡単過ぎる事に何時間も拘束されるなんてね。
 ここは教頭先生が協力的だったから、私達は自由を勝ち取れたの。」
「大変だった?」
「そうでも無いかな、お父さんを含め協力的な大人達が色々動いてくれたからね。」
「転校して来たばかりの頃は、こんな田舎暮らしはと思い姫にも失礼な態度を取っていたと思う、御免なさい。」
「気にしなくて良いのよ、ここがそんなに悪くない土地だと気付いてくれたのでしょ?」
「都会で暮らしてる時は田舎暮らしなんて考えられ無かったけど、全然不自由無く景色が良いし、姫や大賢者達が親切にしてくれて。」
「そう言って貰えると嬉しいわ。」
「僕も姫達の活動に参加したいと思い始めてるのだけど。」
「有難う、勿論大歓迎よ、私としては音楽の才能を世に知らしめて欲しいかな。」
「あまり期待されても困るのだけど…、花鈴姫をイメージした曲を作ったんだ、聴いてくれるかな?」
「勿論!」
「じゃあ音楽室へ。」

 薫君のピアノ演奏はとても素敵だった、惚れてしまうって…。」
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三学期-303 [花鈴-31]

 一芸に秀でる者は多芸に通ず、とは薫を表現するのにぴったりな言葉。
 そう、彼は多才、音楽だけでなく絵も上手い、数学や英語も得意な小学五年生なのだ。
 苦手なのは人と話すことだと言っていたが、あまり話さず笑わなかった彼も、最近はピーマンの会メンバーと打ち解けて来ている。

「薫は笑わない人かと思ってたけど普通に笑うのね。」
「う~ん…、そうかも、家族からは最近明るくなったって言われてる。
 ここに来るまで友達と思える子はいなかったからな。」
「周りの子が幼く思えたとか?」
「周りに合わせるのが下手なんだと思う。
 でも、姫達とは話が合うし、Lilyと英語で話せるのは楽しい。
 仲間って良いなって思ってるよ。」
「そうね、ピーマンの会、小学五年生の六人がバラバラで暮らしてたら楽しく無かったと思うわ。
 他の子達とも話はするけど、本当の友達と思えるのは薫を含めた六人だもの。」
「僕も友達に入れてくれるんだね。」
「勿論よ、私の為に曲を作ってくれる人なんて他にいないもの。
 素敵な曲を有難うね。
 今、絵梨のお父さんがYouTubeでの演出を考えてるから案がまとまったら演奏お願いね。」
「うん、そうだ、絵梨に詞を書いて貰って僕が作曲、姫が日本語で歌い、Lilyが英語で歌う…、大賢者とひろっちには踊って貰うとか?」
「大賢者も歌は苦手なのよね、数学の才は踊りに活かせるのかしら?」
「姫から課題として出されれば彼なりに考えると思う、どんな踊りになるのかは全く分からないけど。」
「ふふ、まあ、踊りは兎も角、薫に歌を作曲して貰えるのなら嬉しいわ。
 今までYouTubeチャンネルで発表した歌にオリジナルは無くてね。
 カバーだから視聴回数が伸びたとも言えるけど、私の歌として挑戦出来たら絶対楽しいと思うな。」
「素人の作曲だから人気は出ないかもだけど。」
「良いのよ、薫の才能を世に出して行く事が大切なの。
 一つ目で直ぐに結果が出なかったとしても、何本も出して良いでしょ。
 ヒットが出れば、この地の再生資金に充てられるけど、絶対ヒットさせなくては何て状況では無いのだから気軽に作曲して欲しいわ。
 お~い、絵梨、薫からの提案なんだけど…。」
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三学期-304 [花鈴-31]

「う~ん…、作詞か…、今まで考えたことなかったな。」
「今まで絵梨が書いて来たのとは全く別の分野だものね。
 まあ、失敗しても問題無いし、何事も経験と言う軽い気持ちで良いのよ。」
「そうね…、でもさ…、ヒット曲を多く出して来た人達には何か秘密が有ると思わない?
 秘密と言うよりコツ…、万人受けするテクとか…。」
「ヒット曲を一曲出すだけでも大変なのに、何曲もヒットさせられる人は天才なのかもな。」
「薫は私の詞に曲を付けるなんて面倒ではないの?」
「僕だって素人だから、姫をイメージしたピアノ曲は自然と出来たけど、詞に曲を付けると言うのに挑戦してみるのも有りかと思ったんだ。
 姫の詞に曲を付けたくも有るのだけど、ここは絵梨に敬意を。」
「そう言われてしまうと書くしか無いわね。
 で、姫はどんな歌を歌いたいの?」
「学校の皆が元気良く歌ってくれる歌が良いかな。」
「う~ん…、兎沢小学校のカッコ良い子ども達をテーマにする?」
「良いかも、カッコ悪い子ばかりの小学校に刺激を与えられたら面白いかも。」
「良いね、曲のイメージが湧いて来たよ、絵梨、いきなり完成された詞をくれるより相談しながらってどうかな?」
「そうね、作詞は初めてだから、今までのヒット曲を分析しながらになるけど、少なくとも兎沢小学校で流行る曲にはしたい、未完成のを皆に聴いて貰いながら完成させて行くのも有りよね。」
「良いと思う、作詞小栗絵梨、作曲杉本薫で一曲作ってみよう。
 英語の詞はLilyと相談になるし、姫が気持ち良く歌える様、姫の意見も取り入れてさ。」
「うん、何かワクワクして来た。
 説明っぽくならない様にしながらカッコ良いを如何に表現するのかがポイントになるのかな。
 君、カッコ良いぞ!
 何てのを姫に言われたら嬉しくなるだろうから、第一のキーワードは決定ね。」
「カッコ悪いぞ、も入れる?」
「入れるべきだな、いじめをしてるカッコ悪い奴は沢山居そうだろ。
 一番をカッコ良いぞにして二番はカッコ悪いぞで良いかも。」
「絵梨、どんな行いがカッコ良いか具体的に教えないと駄目な子もいるよね。
 その辺りをぎゅっと凝縮したバージョンと具体的に教えて行くバージョンを作るってどうかな?」
「凝縮した短めのバージョンで人の心を惹きつけられたら、色々教えるバージョン…、長くしないで短めのを沢山作るのも有り。
 お爺ちゃんに教えて貰ったのだけど、鉄道唱歌なんて全部で三百三十四番まで有るんだ。
 それを同じメロディで歌うのさ。」
「三百三十五番まで作ったら話題になるだろうけど私一人ではとても無理だわ。」
「だよな、その辺りは一番二番の歌詞とメロディーを完成させてから考えることにしようよ。」
「そうだね。」
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三学期-305 [花鈴-31]

「ねえ、その曲の前に、ひろっちを主人公にした歌って作れないかな。
 普通に真面目な男の子を題材として。
 兎沢小学校の子達にとってイメージし易い存在を主人公にした方が親しみ易いでしょ。」
「うん、有りかもね。」
「有りだな。
 練習として作曲してみたい。」
「まずは兎沢小学校の子達に受け入れて貰える詞を作れないことには、ヒット曲なんて無理だわ。
 ひろっちの日常は良く知ってるから、それを誇張すれば良いのよね。
 本人の気分を害することが有っても、それを歌い広めるのが姫なら彼は絶対文句を言わないから。」
「彼は、嫌々転校して来た僕に色々気を遣ってくれ、不機嫌な自分がそっけない態度を取っても嫌な顔一つせず接してくれたからな。
 あの頃のことを謝ったら気にしないでと言ってくれて、ちょっと尊敬してるんだ。」
「ちょっと現実離れした内容にして皆の反応を見たくも有るのよ。」
「現実離れ?」
「ひろっちがヒーローとして活躍する、私達のグループではあまり目立たない存在だらこそ、面白い歌が作れたらインパクトが大きいと思ってね。」
「そうね、カッコ良い、カッコ悪いを教える歌を作るとしても、そのベースに目立たないヒーローの存在が有るのは良いわ。
 姫の僕として動くことに喜びを感じている変態でも有るのだけど。」
「おいおい、変態は言い過ぎだろ?」
「まあ、姫のことが好き過ぎるのかもね~。」
「私も彼の事は好きよ。
 だから楽しい曲を作って貰えたら嬉しいかしら。」
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三学期-306 [花鈴-31]

 新曲、ミラクルプリンスひろっちには、約一名から抗議の声が上がったが、敢えて姫として押さえつけた。
 人柄の良い、ひろっちの普段をデフォルメした曲は絵梨と薫の合作だが私達も曲作りに参加した。
 只の小学五年生がヒーローとなる歌は詞の面白さと曲の楽しさで是非ともヒットさせたいと思う。

「お兄ちゃんはこの曲、どう思う?」
「行けると思う、小学五年生が完成させた曲とは思えないレベルで仕上がっている、YouTubeチャンネルだけで行くのか?」
「YouTubeで伸びたら色々、これで稼げると楽になるのだけど。」
「過疎地の再生なんて金が掛かるばかりだからな。
 それで、大賢者、ひろっち、薫の内、花鈴の本命は誰なんだ?」
「本命って?」
「一番好きな男の子。」
「そう言われても…、薫は絵梨のことが気になってるみたい、大賢者は自分に無い物を持ってるLilyに魅かれてるみたいで、ひろっちは私のことを何時も気に掛けてくれてる。
 でも三人とも大切な仲間かな。」
「恋心は芽生えてないのか?」
「薫が私にピアノ曲をプレゼントしてくれたのは嬉しかった、大賢者は同志…、三人とも好きなの。」
「本命はひろっちかと思っていたのだけど。」
「優しくて安心出来るけど、まだ恋なのか良く分からないかな。
 でも、仲の良い友達で有ることは間違いないわよ。」

 お兄ちゃんには、そんな風に話したけど、私はひろっちのことが好きなんだと思う。
 曲作りの提案は薫と絵梨の時間を増やしてみたいと考えてのことでも有るし、大賢者にはLilyとの時間を作る様に仕向けている。
 まあ、全員が仲良しなのだから特にどうとかないのだけど、そんなことも考える様なお年頃なのです、私達は。
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三学期-307 [花鈴-31]

 作詞作曲には大人達からの助言を貰った。
 例えば…。
「絵梨ちゃんなら分かって貰えると思うけど日本語を大切にしてね。」
 と話したのは私の母。
「どういう事です?」
「昔ヒットした曲に、なごり雪と言う曲が有ってね、悪くは無いのだけど…、なごり雪も降る時を知り、ってフレーズが有るのだけど、なごり雪も降る時、お尻、って聴こえたの。
 日本語のイントネーションを無視して曲を付けた結果ね。」
「あっ、聴いたことが有ります、私にもお尻って聴こえました。
 そっか、日本語のイントネーション…、ねえ薫、作曲する時に気を付けられる?」
「イントネーションなんてことは、今まで歌の作曲に取り組んで来なかったから意識して無かった、試作を聴いて変な所が有ったら修正して行くから言ってね。」
「英語版も作ると聞いたが、無理に同じメロディーにしない方が良いかもだぞ。」
 とは、父。
「クラッシックの曲や英語の曲に対して、無理やり日本語を当て嵌めて違和感しか感じない歌も存在するんだ。
 日本語版ドレミの歌は、英語の歌詞を知ってる花鈴にとって歌いたくない曲なのだが、歌詞を訳詞では無く全くの別物にしたことで成功したと言えてね。」
「Lilyは、どう思う?」
「日本語と英語は全く違う言語ですから、薫くん、手間が掛かるかもだけど良いかな?」
「勿論さ、姫も日本語版ドレミの歌は好きじゃないんだ。」
「何かダサくない?」
「だよな、ダサくならない様に気を付けるよ。
 歌はピアノ曲を作るのとは違ったハードルが有るけど、それが面白い。
 言葉を大切にしつつ、言葉遊び的な要素を入れられたらと、絵梨の詞は韻を踏んでて良いんだ。」
「そう言うのが無いと小学校で歌って貰えないでしょ?
 韻を踏むことはお母さんに教えて貰ってね、試作曲でも意識してたのだけど、もう一度見直してみるわ、皆も面白い表現が有ったら宜しく。
 それに合わせてメロディーの修正は出来るのでしょ、薫。」
「ああ、頑張るよ。
 仲間と作る曲なんて今まで考えたことも無かったから楽しくてね。」
「ふふ、うちのお兄ちゃんも試作曲を褒めてたのよ。
 作詞と作曲の相性が良いとね。」
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三学期-308 [花鈴-31]

「相性は分からないけど、作詞に関しては皆から案を貰えたからね。
 ひろっちには悪かったけど、ひろっちと言う語感が良かったし、敵を作らないひろっちの人柄の良さは誰もが…、姫の様に目立ってはいないけど誰もが認めていると思うの。
 まずは我らが兎沢小学校の愛唱歌としたいわ。」
「ひっそりと姫を支える存在で有りたかったのだけどな。」
「ひろっちは今まで通りで良いの、目立たない所で活躍してたひろっちの事を皆が認識する、そこが大切でね、大賢者や薫、Lilyの様な特別な能力を持って無さそうなひろっちを目標にして欲しいと言う意味合いも有ったの。
 ひろっちの能力は目立って無かったから、自分もってなり易いのよ。」
「姫、良く分からないです…。」
「一般人にとって薫や大賢者、Lilyは別世界の人間、でも、ひろっちは優秀だけど普通の人って捉えられているのよ。
 だから、より身近に感じられるだろうし、その真面目さをお手本にして欲しいと思ってね。」
「確かに、大賢者の真似は普通の小学生には無理だ、その点、ひろっちは努力の人だからな。」
「でも、やはり基本的な能力は高いわ、算数を教えてると基礎的な能力差を感じるのよね。」
「うん、テストの成績が悪い子に努力が足りないと言う大人が居るけど、そんな単純な話では無いのよ。
 分からない事を理解しろと言われても無理な子がいるし、大体四月生まれと三月生まれでは生まれてから十一か月の差が有って、その差は小さくないのよね。」
「そうなんだ…。」
「まあ、大賢者には理解出来無いだろうけど。」
「否、ここに来るまでは周りが見えて無かったから全く理解出来なかったけど、人それぞれ得意不得意が有るって分かって来たよ。
 僕だって、運動能力に関しては最下位グループだからな。」
「音楽や絵も得意では無いでしょう?」
「ああ認める、その点薫は凄いよな。」
「いやいや、数学は大賢者の足元にも及ばないし、会社経営に携わっている姫のことは尊敬してる。」
「たまたま、そう言う環境下で生まれ育っただけのことよ、ね、お父さん?」
「ああ、しかし君達は互いを尊敬し尊重し合っている素敵なチームなのだね。
 やりたい事が有ったらどんどん提案して欲しいかな、お金の掛かる事でも全面的にバックアップしたいと思っているんだ。」
「それでしたら…。」
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三学期-309 [花鈴-31]

「Lily、何か?」
「えっと…、兎沢小学校で子ども達の国内留学を受け入れると言うのはどうでしょう?
 兎沢小学校を多くの子に体験して欲しいと思うのです。
 いじめに合ってる子達の逃げ場所としてでも。」
「国内留学か…、君達の家庭の様に最低でも四年間はここで暮らすと考えて引っ越して来るのはハードルが高いが、一か月とか半年とかの国内留学なら小学生はともかく中学生なら単身でも有りかもな。」
「ですね、小学生は親が一緒で無いと大変だろうから…、でも親だって田舎暮らしを体験する…、親も田舎暮らしを学ぶ留学と言う感覚で参加して貰うのなら、参加してみたいと言う希望者は居そうです。
 YouTubeチャンネルへのコメントを見てると田舎暮らしを経験してみたい、なんてのが有るから、短期留学は子どもに限定する必要は無いと思います。
 田舎を学ぶ、田舎に学ぶ、何てキャッチで幅広く募集してみるのも有りでは?」
「絵梨、欲張ると整理が大変になるかもよ。
 でも、この地の事を考えたら悪くないわね。」
「移住計画と並行して、大人も含めた短期留学…、田舎の仕事を体験出来る企画とか考えてみるか?」
「うん、お父さん、我が社で引き受けるわ。
 で、この企画に協力してくれる人には我が社の小学生社員になって貰いたいのだけど。」
「花鈴、大学生社員から一気に小学社員にまで広げるのか?」
「話題性だけでなく、皆が大人社会の事を学ぶ機会にもなるでしょ。
 私は会社の会長になってから、凄く視野が広がったと感じてるの。
 勿論、それがお父さんの狙いだったのだろうけどね。」
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三学期-310 [花鈴-31]

「視野か…、自分は他の子とは違うと感じて育って来たけど、姫達と出会うまでは視野が狭かったと思ってる。
 ここに来なかったら、例え数学の学者に成れたとしても視野の狭い人間のまま問題の有る恥ずかしい大人に、なんてことを考えていたんだ。
 姫が会長をやってるぐらいだから僕らが社員になるのも有り、Lilyも社員になるのだろ?」
「国内留学企画を提案して置いて自分は手伝いません、何て情けない子では有りません、私は。」
「大賢者とLilyは決定なのね、私は給料次第かしら?」
「絵梨はお金に拘ってるけど何か理由が有るのか?」
「親に養われている状態から自立したいの、その方が恰好良いでしょ?」
「自立?」
「自分のことを自分で全部出来たら大人、中学生になるまでにはそんな風に成りたいかな。」
「一人暮らししたいとか?」
「そうでも無いのだけど、私は大人を目指して来たのよ。」
「確かに絵梨は大人だと思うよ、弟や妹の面倒を見てるし、お母さんとも対等の関係を築いている。
 作文を書けば小五の作だとは思って貰えないしな。」
「有難うございます、大人の真似事が好きだと言われてた頃も有ったのですが、最近は大人扱いしてくれる人が増えて来ました。」
「それだけの働きをしてるのだから当たり前だよ。
 会社を立ち上げたいとか思ったら私に相談してくれな。」
「は、はい、まだ、そう言った計画は有りませんが、将来的には…。
 今は株式会社花鈴を盛り立てることに力を注いで行きたい思いが有るのです。
 両親とも、過疎地の再開発について話し合うことが有りますので。」
「日本中に過疎地は有る、この地だけでなく広い視野で過疎地の問題と向き合ってくれるかな?」
「はい、YouTubeチャンネルを通して情報を貰っています。
 全ての大企業が本社業務はそのままに、本社所在地を過疎地に移したら国内バランスが良くなる何て提案が有りまして、そんな案が出て来るのも大社長がここに本社を移転したからだと思うのです。」
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