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夏休み-171 [花鈴-18]

「温室の建設はやはり高額なの?」
「絵梨、温度管理システムが重要なだけでなく、評判になるぐらい立派なもので無いと意味が無いでしょ。」
「ビニールハウスレベルの物じゃないんだ。」
「勿論よ、うちの家族会議では皆が前向きで規模が段々大きくなって来てるの、お父さんは作るのなら世界に誇れるレベルにしたいとか言い始めて。」
「予算はどこから?」
「温室の名前に社名を含めることで会社のお金も使えるのだけど、温室絡みの事業計画が将来的に黒字を見通せるものにしないと駄目なの。
 だから、私達は付加価値を付けてより黒字となり易い事業展開をと考えてるのよ。
 多額の投資でもそれを取り戻せる見通しが立っていれば良くてね。
 ここを公園エリアに出来て集客に成功させられたら難しくは無いでしょ。」
「公園エリアと呼べるものに出来るのかしら?」
「ハイキングコースの整備は今も進んでるし、このキャンプ場も来年には本格稼働、私達の店は春にオープン、実験的農業公園は少しずつだけど広げて行けそうなのよ。
 竹林の中にカフェと言う案も出てて、色々試しながら少しずつ公園としての規模を拡大出来たら楽しいと思うわ。」
「でも余程のインパクトが無いと注目して貰えなく無い?」
「案として出したのは重機操作体験。
 きちんとした講習を受けてからだけど、実際に重機を使った作業が体験出来るって、大賢者、どう?」
「あっ、それは需要が有ると思う、ロボットを操縦する感覚が味わえそうだからな。」
「作業効率は無視、観光で訪れる人にお金を払って講習を受けて貰い実際に作業を体験して貰う。
 それでここの開発を進められたら一石二鳥でしょ。」
「やっぱ姫はずるいことを考えてるんだ。」
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夏休み-172 [花鈴-18]

「そんなにずるいことでは無いわよ。
 観光客の人に重機の操作を楽しんで貰いながら、ここの土地造成を進めて行くだけなのだから。」
「でも重機をプロが操作することと比べたら作業効率は凄く低くなるのでしょ?」
「絵梨は重機の稼働率って考えたこと有る?」
「勿論無いわ。」
「余程効率良く作業の注文が入らない限り眠ってる時間の長い重機は少なからず有るのよ、会社の担当者次第だけどね。
 今、ここで考えてる作業は急ぐ必要が無いの、だから指導者の給料を講習費で確保しつつ造成工事などを観光客がしてくれたら金銭的な効率は凄く良くなるかもでね。
 作業体験と言う名目で観光客にお金を払って貰って働いて貰うなんて素敵じゃない?」
「姫が腹黒だとは知ってたけど、そこまでとわね…。」
「え~、誰もが納得するシステムでしょ、お金を払ってでも重機の操作は体験してみたいものでしょ、ねえ、大賢者?」
「だと思うよ、でも平日は体験希望者が少なくて赤字にならないかな?」
「その辺りは有給休暇を取って平日に、なんてキャンペーンも有りだと思うの。
 有給休暇を取る切っ掛けがないまま使わない人がいるみたいでね。
 免許取得を目的としての講習になるのだから有休を使う理由になるでしょ。」
「免許か、取っても使い道が無かったりして。」
「そんな人の為には、免許取得後に現場実習として整地作業とかに当たって貰うの。
 あくまでも実習で有って労働ではないのだけど、美味しい食事に作業後のお風呂やお酒を楽しんで貰って満足して貰いつつ、自分が整地した土地が公園となって行く姿を思い描いて貰うなんて夢も有って楽しそうでしょ。」
「うん、有りかも、僕だってブルドーザーを動かしてみたいと思うからな。」
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夏休み-173 [花鈴-18]

「大賢者、チェーンソーはどう、使ってみたくない?」
「勿論使ってみたいよ。
 仕事としては厳しくても、たまににならやってみたいと思う人は少なからずいると思うな。」
「だよね、そっちも考えているのよ。
 整地する土地は無限にある訳では無いけど、チェーンソーを使う作業は無くならないから。
 チェーンソー作業を体験してみようから始めて森のことを考えて貰い私達の仲間になって貰えたら楽しいでしょ。」
「姫はとことんボランティアで働いてくれる人を増やしたいのね。」
「そうやって若い人を呼び寄せて行かないとお年寄りばかりのこの地に明日は無いのよ。
 仕事として呼び寄せるには限界が有るでしょ。
 ここは日帰り出来る圏内に都会が有るのだから地の利を生かして活性化を進めたくてね。」
「でも重機の免許を取ったりとかは大変じゃないの?」
「免許によるけど、例えばフォークリフト運転技能講習修了証を取得する場合、条件は十八歳以上であることだけ。
 関係する免許を持っているかどうかで取得までの時間や費用は変わるけど、取得に掛かる時間も費用も、それ程大変なものでは無いの。
 だからこの地の開発に直接関係無くても講習の場を作ることを考えていて、三日から一週間程度の滞在で観光をしながら取得を目指すコースとかね。
 工場従業員を意識してのことでも有るのだけど。」
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夏休み-174 [花鈴-18]

「このキャンプ場を優先的に使える工場の従業員達ね。
 従業員のスキルアップを本社の有るこの地でと言うのなら不自然では無いわね。」
「でしょ、こことの距離を考えたら色々な企画を考え、工場の人達とこことの結び付きを強めたくも有るのよ。」
「そんなの会社として命令したら済むことじゃないの?」
「強制なんて駄目よ、あくまでも会社として場を提供するだけにしておくべきなの。
 福利厚生施設を充実させ、フォークリフトを扱える資格を持っていたら仕事の幅が広がり手当が増えると説明、その取得には会社から助成金が支払われる、そんな感じでね。」
「それでスキルアップして他企業に転職する人が出て来ないかしら?」
「そんな人がいるかもだけど、それでも良いんじゃないかな。
 お父さんの会社は心の狭い会社では無いから転職して後悔する可能性が高いのよ。」
「自信が有るのね。」
「本社の移転だって都会暮らしを強制しないとの意味合いが有るのよ。
 移転に関して転勤を強制してないし、元々単身赴任は特別な場合を除いて禁止していてね。
 社員の皆さんに豊かな生活を送って欲しいと言う取り組みは今までも色々して来たの。」
「企業が社員の為にってこと?」
「うん、企業は真面目に働いてくれる社員の存在で成り立ってるのよ、うちが安定してるのは社員を大切にしてるからなの、パート従業員も含めてね。」
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夏休み-175 [花鈴-18]

「普通に考えたら当たり前のことに思えるけど。」
「大賢者、企業には利益を出す為に人件費を抑えようとして来た歴史が有るの。
 業績が悪化した時に備えて解雇しにくい正社員を減らし、切り易い派遣社員を使ったりしてね。
 日本の少子化は企業が作り出したとも言えるのよ。」
「良く分からないけど…。」
「安心して結婚し子育て出来ない若者を増やしたってこと。
 安定した正社員になれない人が増えたことで少子化が進んだのよ。」
「御免、僕には全然分からない。」
「絵梨、大賢者はそっち関係の事情には疎いのよ、興味の対象外だったから。」
「まっ、そうでしょうね、でもこれからの社会を考えたら花鈴姫の考えを知っておくべきだと思うわ。」
「勿論だけど焦る必要は無いのよ、大人になるまでに時間は有るからね。」
「同級生に子ども扱いされるとはね、まあ子どもなんだけど。
 高校生が学ぶレベルの数学はクリア出来ても花鈴姫と比べたら全然子どもだと自覚し始めてはいるよ。
 でも僕にだってプライドは有るから人間社会についても考え始めてはいるんだ。」
「人間社会には色々な人がいるから難しいことが多いって理解出来てる?」
「前よりはね、僕だって色々な人の一人なのだろ。」
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夏休み-176 [花鈴-18]

「そうね、大賢者は一般的な小学生の範疇に納まり切らないから、普通の学校では浮いた存在になってしまった、そして、それに対応出来る小学校は多くないのよね。」
「それは姫達も同じじゃないのか?」
「まあね。」
「兎沢小学校では実験的な取り組みを進めているけど、これからどうなって行くのかな?」
「どうかしら、私達がYouTubeチャンネルで発信はしてるけど、公的には大きく動いてないから…。
 姫、それでも転校生は来るのよね?」
「みたいね、いじめられて不登校になった子が二学期から来るみたい。」
「そんな情報はどこから?」
「お父さんの会社、社員からの相談に応える形で決まりそうでね、父親は本社勤務、母親は私の会社で雇う方向なの。」
「姫の会社も増員するんだ。」
「来年の春とは言え新店舗のオープンは決まっていることでしょ。
 大学生が担当してくれてる試験販売は、これからも続けて行くから人手は欲しいの、ボランティアに頼り切るのも何だからね。」
「ボランティアでは有るけど、合宿所を整備したりとお金は掛かってるのでしょ?」
「気持ちの問題かな、直接的な金銭のやり取りが無く、互いに満足してるのだから良いのだけど。
 過疎地の再生をテーマにしている研究室が参加してくれる話が出て来たから、もっと盛り上げられそうなのよ、当分YouTubeチャンネルのねたに困ることは無いから、絵梨も頑張ってね。」
「うん、私は宣伝活動を頑張れば良いのね。」
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夏休み-177 [花鈴-18]

「僕も手伝いたいけど。」
「是非お願いしたいわ。
 ピーマンの会は個性的な子を持つ五家族を中心に広がりつつ有るでしょ。
 その活動紹介動画に対する反応は結構良いのよ。」
「姫のお兄さんが肥料の施し方について論理的に解説してくれた回は今も閲覧回数が伸びているものね。
 週に一回の液肥と単純に考えるのではなく天候によって調整するべきだとの説明に対して根腐れのことを考えてなかった自分がバカでしたとのコメントが有ったりしたわ。」
「うん、菜園に取り組み始めた頃、液肥について家族で調べてる時、推奨されてる週一回の液肥が梅雨時の根腐れを助長しかねないと言い出したのは兄なの。
 調べてみたらその通りでね、植物のことに然程興味が有る訳では無いと思ってたのに。
 論理的に考えたらそうなるのだろうけど、肥料を意識してる時に根腐れを意識出来る兄は流石だと思ったわ。」
「知識を活かしているのね、大賢者は自身の知識を活かしている?」
「そう言われると微妙だな、数学が得意だと自慢出来ても、それを活かしてるとは言えないかも。」
「数学的視点から新しい店の売り上げアップを考えてみるとかはどう?」
「うっ、そんなこと考えもしなかった、でも…、面白いかも、数学を教えて貰ってる先生にも相談してみるよ。
 論理的に考える、人間と言う複雑な変数を持つ存在を絡めるのは簡単では無いと思うけど。」
「そうかしら、単純な思考回路の人は少なく無いわよ。」
「姫はそう見てるのか…。」
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夏休み-178 [花鈴-18]

「単純でしょ、自分の欲しい物を安く買いたいのが一般人の基本的な考えで、試験販売が成功してるのは安く販売してるからなの。
 それでも一般のスーパーとは仕入れが違うから利益率が高いのよ。
 その辺りの販売価格を決めるのに、人の心理を絡めて考えてはいるのだけど、判断を簡単に且つ最も利益の出る状態にしたいの。
 売れ残りが出ず、効率的に売れる販売価格を数学的に割り出せたら、勿論客層など様々な要素が絡むから単純ではないのだけど、そこは調査でカバー出来ると思うのよ。」
「データを整理しそこから最適解を導き出すのか。」
「そんなとこ、兄が動き始めてくれてるのだけど、大賢者の能力に興味が有ると話していてね。」
「それは光栄だな、僕も姫のお兄さんに憧れてプログラミングの学習を始めたばかりなんだ。」
「それは知らなかった。」
「親と交渉してたからね。」
「予算の問題?」
「うん、出来たら自分で稼いで欲しいと、冗談ぽくでは有るけど言われたよ。
 なら稼げば良いじゃん、うちのYouTubeチャンネルでもっと活躍すれば良いのよ。」
「絵に描いた梨よ、簡単言うけどそんなに簡単なことでは無いだろ。」
「大賢者が数学的視点から商品の販売価格を決める取り組みに挑戦、と言う企画に対して真面目に取り組んだら、視聴数が伸びてギャラをはずんで貰える可能性は有るわ。
 因みに私は自分で稼いだお金で好きに本を買えたりしてるのよ。」
「そうだったな…。」
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夏休み-179 [花鈴-18]

「姫、まずはこれからの計画を整理する必要が有るのかな。」
「温室が実現するにしても何年後かになるかもでしょ、結構長期的な計画を立てる必要が有ると思うの。
 期日をはっきり定めない長期計画を軸に、中期計画短期計画と定め、短期計画は何月何日までに若しくは何月何日にと具体的なスケージュールを組んで行くことになるわね。」
「そっか、会社ってそんな感じなんだ。」
「そうだ大賢者、会社と委託契約を結ぶ?」
「委託契約?」
「クワガタの繁殖に関して調べ実際の繁殖活動に助言とか、数学的に考えた売り上げアップ案の提示、会社はそれに対して報酬を払うと言う契約。
 具体的な契約内容は大学生の実習を兼ねて相談して行くことになるのだけど。
 勿論、絵梨達もね。」
「大人扱いされるのは嬉しいけど、良く分からないわ。」
「雇用契約で無く時間的な拘束はしないし、手伝ってくれたことで会社が利益を得られたら、それに対する報酬みたいな。
 絵梨が小枝子さんと口約束でお小遣いを貰ってるのを、きちんとした契約書の形にするの。
 契約書があれば、会社は誤魔化せないでしょ。」
 契約書の作成作業は大学生の経験値を上げることにも繋がるのよ。
 但し、中途半端に稼いでしまうと税金の関係で不利益を被ることも有るからご両親とも相談ね。」
「親が理解しているのなら問題無いわ。
 姫が話してくれるのでしょ?」
「ええ、YouTubeチャンネルのネタにもなるからね。」
「確かに。」
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夏休み-180 [花鈴-18]

「報酬って幾らぐらいになるのかな?」
「雇用じゃないから成功報酬みたいなのをイメージしているのだけどどうかしら?
 会社の利益に貢献してくれたら、その利益の何%かを支払うみたいな。
 金額は利益に左右されるから何とも言えないけど…。
 例えば利益の五%だとして、一千万円の五%と一万円の五%では大きく違うでしょ。」
「一千万円の利益に対して目に見える形で貢献していたら五十万円の報酬ってことか…。」
「但し、あくまでも利益の五%、一千万円の売り上げが有っても、そこから必要経費を差し引いた利益だから、一千万円の利益を出すには売り上げは二千万とか必要になるかな。」
「大人と違って毎日働く訳ではないのだから…。」
「でも、良いアイディアを出してくれて、企画がヒットしたら…、まあクワガタでそこまでの利益は見込めるとは思ってないけど。」
「だよな、僕らが扱えるのは普通のクワガタだから、額は小学生に相応しいレベルになるのかな。」
「会社からの報酬としてはね、でもYouTubeのネタとして小枝子さんに売り込むから、そこでも報酬が発生するでしょ、そっちの方はみんな次第だけど期待出来ると思うのよ。
 Lilyをメインにした企画も売り込んでいてね。」
「あっ、お母さんは前向きに考えてるみたいだけどLily自身はどうなのかしら?」
「チャレンジしたいと言ってくれたわ、四月に初めて会った頃のLilyとは違うのよ。」
「言われてみれば、あの頃のLilyは自信なげにおどおどしてたものね。
 苦手としていた国語にも慣れて来たみたいで。」
「だよな、大学生とも普通に話せる様になって来たし。」
「あれは、大学生相手に困ったら英語で話せば良いって姫のアドバイスが効いたのよね。
 英語の苦手な学生は近寄り難いみたいだけど。」
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