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猫田小夜-41 [化け猫亭-05]

「佳代ちゃんもお客さんに甘える事を覚えたんだね。」
「ふふ、小夜ちゃんに教えて貰いました、多田さんは甘えて良い人なんです。」
「どういう風に教えて貰ったの?」
「会話の中から、相手の気持ちを汲み取って…、でも、竹内さんの事はまだ分かりません。」
「佳代さん、竹内さんはとても分かり易い方ではないですか。」
「え~、小夜ちゃん、私はそんなに単純な男か?」
「とても素敵な男性という事です、ですから安心してお話し出来るのです。」
「参ったな、真顔で言われると…、恰好悪い事出来ないな。」
「気になさらず、普段通りでお願いします。」
「あ、ああ、たこ焼きに合わせて飲み物どう?」
「有難う御座います、竹内さん、お酒の御代わりは如何ですか?」
「お願いするよ。」
「はい、少々お待ちください。」

「佳代ちゃん、どうしたの?」
「いえ、小夜ちゃんには勝てないと思いまして、お客様から振られた話題には、どんな内容でも応じられるし、多田さんにたこ焼きをおねだりしたのも、きっと何かしらの理由が有るのですよ、マスターも多田さんに買いに行って頂く方向で話していましたし。」
「へ~、そうなんだ、まあ、私も彼女の掌の上で遊んで貰ってる様なものなのかな…、多田君みたいにパシリをさせられても嫌じゃないし。」
「今は就職に向けて小夜ちゃんからも色々学んでいるのですよ。」
「やはり、就職には不安が付きまとうのかな?」
「はい、人間関係を一から作って行く必要が有るじゃないですか。
上司が竹内さんみたいな人なら安心ですが、実際は分からないですよね。」
「おっ、小夜ちゃんから学んだ、よいしょを早速実践か、だが、上司だって佳代ちゃんみたいな部下なら安心だと思うんじゃないのかな、新人教育って結構大変なんだよ。」
「あっ、そうですよね、何も分からずに配属されて来た部下になるんだ、私も。」
「でも、化け猫亭での経験は活かされると思うよ、コミュニケーション能力は大きいんだ。
相手に対してどう自分をアピールするのかも。」
「ですよね、それは自分なりに考えていたのですが、小夜ちゃんを見てると、凄く自由に振る舞っているのに、お客様方からの人気が…、ここのスタッフは知性が売り物ですので学力的には負けてない人ばかりだと思うのですが。」
「能力は人それぞれだよ、君は君の良さを発揮すれば良い、まあ、君が多田君にたこ焼きのおねだりを出来る様になったのは大きな進歩だね、真面目なだけの子が良い仕事を出来る訳でも無くて、バランス感覚が必要なのさ。」
「バランス感覚ですか…、小夜ちゃんは、そこがずば抜けているのでしょうか。」
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猫田小夜-42 [化け猫亭-05]

「たこ焼き買って来たよ、佳代ちゃん、これはそちらの皆さんでどうぞ。」
「有難う御座います。」
「小夜ちゃん、お待ちどうさま。」
「有難う御座います多田さん、一緒に食べましょう、でも熱過ぎるのは良く無いです、少し待ってて下さいね。」
「それで、小夜ちゃんは組長を目指してるのか?」
「まさか、考えているのは法の隙間を利用する事のない真っ当な会社の社長です、規模は小さいですが。」
「あっ、経営コンサルタントの会社は真面目に考えてるんだ。」
「はい、まだ動き始めたばかりで、自分のトレーニング計画を立てている段階です、でも、応援して下さる方は多いのですよ。」
「そうか、君の力が発揮出来る仕事だろうからな。」
「多田さんは応援して下さらないのですか?」
「勿論、応援するよ。」
「では、多田さんの会社が私の顧客になる可能性は如何です?」
「う~ん、うちの立て直しをお願いしたいとは思うが、セクハラ系のおやじが何人か居てね、彼等に小夜ちゃんを紹介する事は考えたくもないね。」
「そういうハードルも有るのですか…、でも立て直しを考える様な状況なのですね。」
「ああ、抜本的な改革を必要としてるのだが、社内の派閥とか力関係とか有ってさ、会社の幹部が私利私欲に囚われない高校生だったら、と思うぐらいだよ。」
「そうでしたか、まあ、たこ焼きを程よくほぐして適温にしましたら、はい、あ~ん。」
「もぐもぐ、あ~、思ってたより美味しいな。」
「でしょ、で、どうします、このまま嫌な事を忘れてお酒を飲むか、今後の対策を考えるか、因みに景気が上向いてますから転職という選択肢も有りますよ。」
「あっ、俺って?」
「マスターが言うには、最近、顔つきが厳しくなって、痩せて来たそうです。」
「そ、そうかな…。」
「多田さんは暴力団事務所で働いてる訳では無いですよね。」
「違うとは思うが、そう聞かれてしまうと…。」
「多田、もう全て白状して楽になったらどうだ。」
「小夜ちゃん、ここでその台詞?」
「では、かつ丼を用意しましょうか?」
「はは、有難う、たこ焼きで充分だよ。」
「では、問題点の整理をしてみましょう…。」
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猫田小夜-43 [化け猫亭-05]

「小夜ちゃん有難う、お陰で、自分の問題点が見えて来たよ。」
「無理はなさらないで下さいね。」

「多田さん、たこ焼きご馳走様でした。」
「いえいえ、竹内さんのお口に合いましたか?」
「美味しかったね、今度は私が買って来るよ、で、宜しかったら一杯奢らせて貰えないか。」
「いえ、そんなつもりでは有りませんでしたし、今日から少し酒の量を減らそうかと思いまして。」
「そうか、残念だが無理強いは出来ないな。」
「竹内さんの会社、就職状況は如何です?」
「微妙だね…、人材は欲しいが社員のレベルは下げたくない、小夜ちゃん、誰でも良いという訳には行かないだろ。」
「中途採用はされているのですか?」
「随時採用してるよ、ずっと売り上げが伸びているから新卒だけでは追いつかないんだ。
ブラックな状態には絶対したくないからな。」
「やはりセクハラやパワハラの被害を受けて辞めて行く人の穴埋めも必要なのですね。」
「はは、辞めて貰うとしたらセクハラやパワハラをした側の人間だよ。
うちを辞めて行くのはお年寄りぐらい、定年も曖昧で、退職して頂く条件を示して有り、その条件に当てはまり出した人が自主的に退職日を決める形がほとんどなんだ。
社長は社員を大切にする人でね、この前一緒だったろ。
「お優しそうな方でした。」
「俺達取締役は彼の下、一丸となって社員にとっても魅力ある企業を目指しているよ。」
「羨ましいです、うちとは全然違って…。」
「そうか、マスターが最近やつれたと心配していたが、お悩みは仕事関係?」
「はい、今、小夜ちゃんからアドバイスを貰っていた所です、会社を立て直すか、転職するか。
竹内さんのお話を聞かせて頂いて、改めて考えて見ると会社の体質は簡単には変えられない、派閥に属さない課長ではとても無理そうです。」
「お若いのに課長ですか?」
「それが気に入らない人もいる訳です。」
「もし転職を決意したら、うちも候補に入れてくれないか?」
「はい、お願いします、何か小夜ちゃんとマスターに導かれている様ですが…。」
「化け猫亭の客というだけで一次試験合格ですよ、美人揃いのスタッフに失礼な発言をしたら入店出来なくなる店で何度も一緒になっている…、小夜ちゃんからは失礼な言葉を浴びせられているかも知れないが。」
「そんな事無いですよ、何時もさり気ない気配りをして貰っています。
小夜ちゃんに言われた通り、自分をすり減らす前に転職したいです、ここでお話しさせて頂いているのも何かの縁、宜しければ面接、お願いします。」
「では、人事に話を通しておくよ連絡先を交換しよう。」
「はい。」
「ところで、小夜ちゃんの目から見て多田さんはどんな人なの?」
「竹内さんと同じぐらい素敵な男性ですよ、社長さんも気に入って下さると思います。
先回お見えになった時はお仕事の話をして下さったのですが、とても分かり易くて参考になりました。」
「小夜ちゃんは誰でも褒めるからな…。」
「そんな事無いですよ、雇ってみればすぐ分かります。」
「はは、社長には、小夜ちゃんの推薦だと伝えておくよ。」
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猫田小夜-44 [化け猫亭-05]

「小夜ちゃん、少し聞かせて貰ってたけど、多田さんの話はマスターと相談していたの?」
「ええ、マスターから悩みが無いか聞き出せないかと頼まれていて、でも佳代さんが、たこ焼きをおねだりして下さったのはグッジョブでした、おかげで竹内さんにもたこ焼きを食べて頂けましたので。」
「少し図々しく甘える事でお客様との距離を縮める、って教えてくれたのはあなたよ。
それで、多田さんや竹内さんの会社の事は知ってたの?」
「ええ、店でお話しさせて頂いたお客様方の会社は一通り確認しています、私なりに今後の業績推移を予測した上でお話を、あの場に竹内さんがおられた事で話が早くなりました。
総合的に考えて多田さんは転職すべきなのです。」
「そうなんだ…、ねえ、就職先は、ほぼ決まっているのだけど入社まで時間が有る、そんな私が今しておくべき事って何だと思う?」
「配属先はまだ分からないのですよね?」
「ええ。」
「まずは直接担当者に相談しては如何ですか。
企業サイドとしても新入社員のスキルが高いに越した事は有りません。
後は、無駄になるかも知れませんが、私なら就職先の情報を出来る限り入手します、取引先も含めて。
休みを利用して支社巡りとかも楽しそうですね、中に入る事が出来なくても近くで食事をしてそこの噂を聞いてみたり。
がっかりするような情報ばかりなら就職を考え直しますが、そうでなかったら、少なくとも他の新入社員とは差を付けた状態で新人教育を受けられます。
情報を多く持っていれば、何かとイメージし易いですよ。」
「イメージか…。」
「福岡支社と言われた時に、その建物が直ぐに浮かべば親しみが涌きますし、その近所に美味しい、もつ鍋を食べられる店が有る事を知ってたら楽しいじゃないですか、運が良ければ社員とも出会えるかも知れませんね、本社は何処です?」
「名古屋だけど。」
「まずは名古屋本社徹底解明ですね、楽しそうだな。」
「そ、そうね、事前に知っておける事は多く無いかもだけど、そこまで考える新人は少ないと思う、最初に差を付けておけるのならそれに越した事は無いのか。」
「小学校に上がる時、四月生まれと三月生まれでは大きな差が有るのですよ、大人になった今、その差は小さくなっていますが、就職というタイミングでは、生まれた月に関係なく準備によって差を付けられるのです。
そして、不安を減らせると思いませんか?」
「そうね。」
「内定が取れてる企業を教えて下されば私も調べるお手伝いをさせて頂きますよ。」
「それは、悪いわ。」
「いいえ、私の調査、学習の為ですし、場合に依っては顧客に、人脈は重要なのです。
佳代さんでも、将来、竹内さんの知り合いだという事が役に立つかも知れないのですよ。」
「そうか、化け猫亭でスキルアップを考えていたけど、まだまだ甘かったな。」
「社内で、どこを目指すかによりますね、頑張って社長を目指して下さい。」
「ふふ、さすがにそこまではイメージ出来ないわ、でも、それなりに活躍したい、まず自分で調べてみるから、それを見てくれるかしら。」
「ええ、研究してみましょう。」
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猫田小夜-45 [化け猫亭-05]

「おっ、今日は小夜ちゃん、出勤なんだ。」
「もしかして沼田さんとはすれ違ってましたか?」
「ああ、先回来た時、君はオフ、会えなくて寂しかったよ、猫田小夜論で盛り上がってはいたけどね。」
「私は研究対象ですか?」
「君みたいな二十歳は、そうはいないからな、やっぱり司法試験を受けるの?」
「はい、大まかなスケジュールが組めた所です、経営コンサルタント関係の学習と大学の学習も有りますので急ぎませんが。」
「へ~、同時進行って大変そうだな。」
「そうでも無いです、経営コンサルタントについては、お客様から教えて頂く事も有りまして、楽しい学習の時間です。
司法試験は経営に関連する法律から始める事で二つを関連付け効率を上げています。
学習のコツを掴み、今後の学習効率を上げる事を考えながらですが。
大学は片手間で卒業出来ます。」
「片手間って…、しかし、この先卒論も有るのだろ?」
「そっちは一年生の時書いた論文を見直して提出すれば大丈夫だと思っています、まだ父にしか見せていませんが。」
「はぁ~、優秀な人は違うね、化け猫亭以外の時間はずっと学習かい?」
「そうでも無いです、結構遊んでいますよ。」
「小夜ちゃんの遊びには興味があるな。」
「最近は大学でスポーツを見ていたり、音楽を聴く事が多いです。」
「スポーツはしないの?」
「はい、あまり得意では有りませんし、判断を必要とする事は学習の妨げになりますので。」
「えっ、学習って…、本を読みながらスポーツ観戦?」
「いえ、かっこいい人の姿を追いながら、覚えた条文の意味を掘り下げていたり、お客様から教えて頂いた事を整理したりです。
時にはサッカーやバスケのルールを思い出したり、一番簡単な詰将棋を解いている事も有ります。」
「全部頭の中だけで?」
「ええ。」
「この前、猫田小夜論で盛り上がった時、同時に幾つかの事を考えていると聞いたが、本当だったのか。」
「同時というか、短時間で切り替えているのです、沼田さんと同じですよ。
ほら、今日の私の髪型の事や夏美さんの胸元、麻里さんのお尻に意識を向けながら私と会話していたでは有りませんか。」
「うっ、さりげに観察されてたのか、でも、小夜ちゃんの場合はその中身が濃いのだろ?」
「濃いかどうかは分かりませんが…、たこ焼き食べたいという事と明日のお昼ごはん、時々民法の所有権について考えながら沼田さんと話していました。」
「いつもそうなの?」
「いえ、沼田さんのご質問が簡単な内容でしたので、たこ焼き食べたいとか…。」
「では、難しい話だったら?」
「内容によりますが、たこ焼き食べたいと考える事は有ります。」
「わ、分かったよ、たこ焼きを奢れば良いのか?」
「今、マスターは手が離せないみたいです、バス停近くの店は、ご存知ですよね。」
「ああ、最近出来た店だな、行って来るよ。」
「麻里さんや夏美さんの分も忘れないで下さいね。」
「お、おう。」
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猫田小夜-46 [化け猫亭-05]

「小夜ちゃんは、たこ焼きをおねだりするんだね、でも、お客さんに買いに行って貰って良いのか?」
「大丈夫ですよ、買いに行って頂く方は選んでいますので、沼田さんは、おねだりされて嬉しそうに見えませんでしたか?」
「はは、確かにそうだったな。」
「多分大喜びで帰ってらっしゃいますよ。
私は、檜田さんとも、お話ししたかったのです。」
「はは、嬉しい事を言ってくれるね、今日は一人で来店してる客が多いから、静かに飲むのも有りかと思っていたのだよ。」
「ふふ、お客様の鏡です。
それで、先日の話なのですが、マスターが将棋の駒と盤を用意しても良いと話していまして。」
「そうか、試してみる事にしたのか、それなら私の方で用意させて貰うよ、高過ぎず安過ぎずというのを持っているんだ、安物では店の雰囲気にそぐわないからな。」
「有難う御座います、檜田さん、私にも教えて下さいますか?」
「勿論さ。」
「初心者向け、詰将棋を始めたのです。」
「うん、やってみてどう?」
「他事を考えられない所が新鮮です、今まで真剣に頭を使う遊びはして来ませんでしたので。」
「そうか、でも、やり過ぎて学習に影響を与えてはまずいのだが。」
「そこはコントロール出来ています、将棋を覚えたとしても指すのは化け猫将棋道場だけにしようと思っています。」
「ふむ、少し残念な気もするが、二十歳から始めた天才がここでの仕事中だけでどこまで強くなれるのか楽しみだよ。
なあ、羽生竜王が車の運転をしないのは、将棋の事をつい考えてしまうと他の事が疎かになって危険だからだと聞いた事が有るのだが、小夜ちゃんもそういう所は有る?」
「どうでしょう、そこまで集中して考える事は余り有りませんでしたので。」
「そうか。」
「今はまだ簡単な詰将棋で精一杯ですし。」
「どうやって解いてるの?、駒を並べて?」
「ネットで見つけた問題を覚えておいて、頭の中で解いてます、そういうものでは無いのですか?」
「普通に問題見ながら解かないの?」
「それでは簡単過ぎるじゃないですか。」
「うっ、問題見ながらもっと難しいのに挑戦しても良いと思うがね。」
「あくまでも気分転換ですので。」
「なるほど…。」
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猫田小夜-47 [化け猫亭-05]

「小夜ちゃん、ただいま~。」
「お帰りなさい、随分ゆっくりでしたね。」
「色々聞いて来たよ、内緒にしておく必要なんて無かったぞ。」
「ご機嫌な沼田氏よ、私にも教えて下さらんかね。」
「檜田さん、たこ焼き買いに行ったら桜さんがいましてね、最近会えてなかったから嬉しくて。
お店の店長だそうで、オーナーはマスターなんですよ。」
「はは、それで小夜ちゃんはたこ焼きをおねだりしたのか。」
「純粋に美味しいのです、沼田さんは桜さんのファンですので喜んで頂こうかと。
少し待ってて下さいね…、沼田さん、たこ焼きは食べて来ましたか?」
「いや、小夜ちゃんが待ってたからな。」
「ならば…、適温になってますので、沼田さん、はい、あ~ん。」
「もぐもぐ、う~ん、うまい。」
「檜田さんもどうぞ。」
「はは…。」
「如何です?」
「たこ焼きは久しぶりに食べたが美味しいよ。」
「桜さんが研究を重ね、マスターが認めた味なのです。」
「そう言う事か。」
「たこ焼きは誰でも作れますが、商品となると話は違って来ますよね。」
「だろうな。」
「小夜ちゃんも関係してるの?」
「はい、店は桜さん達が随分前から準備しての開店でしたが、最近は私も提案させて頂いてます。」
「どんな感じで?」
「売り上げを増やしたいですから集客の作戦です。
この辺りは学生が多いので、元々女子学生をメインターゲットと考えお洒落な店に仕上げて有るのですが、そこに間違い探しの要素を加えて画像をネットに上げて貰っています。」
「間違い探し?」
「はい、毎日、店の外と中の二か所に変化を付けていまして、物を移動させるだけだったり、新たなお洒落アイテムを置いてみたり、お洒落な写真が撮影出来る様に配慮しながらです。
店の常連になりつつ有る方々も、変化を見つけて撮影し発信して下さる様になり、それを見て来店して下さる方も出始めています。」
「続けるのは大変じゃないのか?」
「店のスタッフにも好評で、案を出し合ってるそうです。
いずれは飽きられるかも知れましんが、しばらくは売り上げアップに繋がりそうです。」
「スタッフは学生?」
「はい、マスターと桜さんは、学生に良質なバイトの場を提供しつつ、店舗運営の実際を学んで貰う場として店を立ち上げました。
事前研修は、全員が店長になるつもりで受けて貰ったそうで、スタッフからは店の売り上げが自分達の給料に大きく影響する事を理解出来たと聞いています。」
「給料は幾らにしたのかな?」
「桜さん以外は千円スタート、実力や売り上げを見て昇給という制度を学生スタッフが決めたそうです、昇給は売り上げと二店舗目を見据えながら考えて行くそうです。」
「自分達の店という感覚でバイト出来るのは良い事だね。」
「ええ、スタッフの中には二店舗目を立ち上げるとしたら、というシミュレーションを始めている人達もいまして、活きた学習の場になっています。
こんな場をもっと多くの学生に、と考えているスタッフも。」
「さすがマスターだな、化け猫亭も半分趣味みたいだし。」
「オーナーとしての利益はあまり考えて無くて初期投資を回収出来れば良いそうですが、実社会の現実とのギャップが大き過ぎては学生スタッフにとってマイナス、そんな訳で利益が出たら二店舗目への投資だそうです。」
「私もバイト体験が就職してから役に立った、ブラックでないバイトの場が広がると良いね。」
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猫田小夜-48 [化け猫亭-05]

「小夜ちゃん、あの規模の店を学生スタッフで回すとなると、スタッフは全部で何人ぐらいになるの?」
「百人近いです、ですから初期投資の大きな部分を研修費が占めています。」
「そんなに…、さっき行って来た時のスタッフは四人ぐらいみたいだったが…。」
「学業優先ですので一人が働く時間は長く無いのです、ある意味ロスは大きいでしょうね。
ですが、百人のスタッフが週に一度でも普通の客として店でお金を使うとしたらどうです、客目線で店の改善点を考えながら。
研修に時間を掛けた結果、スタッフが店の実情をしっかり理解していますので、友人を誘って店を訪れるだけでなく、混んでいたら店の手伝いに入ってくれる人もいるそうです。
すでに常連客になっているスタッフも何人かいるのですよ。」
「自分達の店を盛り立てて行こうとスタッフが考える店か、ファミレスとかで指示されて働くのとは随分違う訳だな、大変そうだが上手く行くと良いね。」
「はい、マスターは実験的な店だと話していましたが、面白い取り組みです。」
「化け猫亭のスタッフも応援を?」
「お客さんという程度です、でも、あの店のスタッフから化け猫亭のスタッフになる人が出て来るかも知れません。」
「そうか、今までは先輩の紹介が中心だと聞いていたが、これからはあの店のスタッフからのスカウトも有るんだ。」
「ええ、店の趣旨を理解している真面目な学生しか採用していないそうですので、安心してお誘い出来そうです。
今の時間帯に働いてる人なら、沼田さんの推薦から面接という流れが有っても良いですね。」
「そうか、ならば、通わねばならないな。」
「但し、桜さんが店に居る事は多くないです、会えなくてもがっかりしないで下さいね。」
「大丈夫、店を応援するよ。
さっき桜さんに聞きそびれたのだが、彼女の就職がどうなっているのか知ってる?」
「ええ、すでに、化け猫亭の運営会社に就職しています。」
「卒業していないのに?」
「何か、問題有りますか?」
「う~ん…、そう言われると…、でも、大学に通いながらだと、忙しくて大変そうだな。」
「マスターが、そんな契約を結ぶと思いますか?」
「そう言われると、どんな契約なのか気になる、でも、公には出来ないのだろ。」
「具体的な金額は私も知りませんので大丈夫です。」
「ならば、是非。」
「皆さんの目が輝いて見えるのは気のせいでしょうか。」
「マスターは謎多き男だからな、彼が桜さんとどんな契約を結んだのかはとても気になる。」
「ふふ、そうですか、最大のポイントは労働時間です、大学生の内は学校で過ごす時間も労働時間とみなし、仕事と合わせて週40時間を越えてはいけないのです。」
「なるほど、彼女は真面目な四年生、それなら仕事と両立出来そうだな。」
「でも、条件が有るのですよ。」
「だろうな。」
「一つは、極力自分で仕事をしない事、もう一つは遊んでいるかの如く働く事。
あくせく働いたら月給はダウンなのです。」
「え~、なにそれ!」
「はは、なるほどな。」
「檜田さんは理解出来るのですか?」
「単純明快だろ。」
「どこがです?」
「マスターは桜さんを重役として育てようと考えているのだよ。
彼女の資質を考えたら最善手だな。」
「重役…、あっ、自分で動くのではなく…、学生達を動かすという事か…。」
「う~ん、それは分かりますが、遊んでいるかの如くというのは、どういう事でしょう?」
「桜さんは知的美人、店のシンボル的存在だろう、シンボルは、あくせく働いているよりニコニコしてた方が良いと思わないか?」
「そうですか…、てきぱきと人を顎でこき使う桜さんを見てみたい気もしますが。」
「はは、こき使われたいの間違いだろ。」
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猫田小夜-49 [化け猫亭-05]

「残念ですね、沼田さんは学生では有りませんので、桜さんにこき使われる事が出来ないのです。」
「分かってるよ、でも、スタッフを引き抜いてしまって、桜さんは困らないのか?」
「スタッフは今も増員中です、少しぐらい引き抜いても問題無いです。」
「多く成り過ぎる心配とか…、そもそも適正な人数がイメージ出来ないのだが。」
「本当にお金を必要としている人は、他のバイトと掛け持ちしています。
店舗運営の実際を学ぶ場と考えている人ばかりですので、週に四時間だけ店で働くとか、シフトを組んだり事務作業をしているスタッフもいます。
全員必ず月に最低一時間は店で働くというのが条件、それは店の運営に於いて接客を忘れない為だそうです。」
「という事は、もっと人数が多くても大丈夫だが、少なくても問題無いって事かな。」
「はい、二店舗目へ向けての準備スタッフが動き始めても、大丈夫な体制をと考えての増員計画で、卒業の時期に、スタッフが大勢フェイドアウトして行く事も視野に入っています。」
「そうか、スタッフの入れ替わりが前提か…、店舗数をどれぐらい増やして行くとか長期ビジョンは有るのかな?」
「桜さんは、まず、大学に近い地下鉄駅中心に広げたいと考えています、星丘、八事辺りなら本山一号店のスタッフを分けて開業出来ますので候補ですね。
後は、スタッフの質が下がらないレベルを見極めて、卒業後も店のスタッフだった事を誇りに出来る、そんな店を目指したいと話して下さいました。
お金の力でチェーン店を増やして行く訳では無くて、大学生の体験の場として自然に拡大して行く事が理想なのです。
サークル的なノリの部分も有りますが、開店時から色々な統計を取っている学生がいるそうですし、店で出せるオリジナルスイーツの開発に取り組んでいる人もいます。
また、週替わりで芸大生の作品を飾る話も進行中です。」
「そうか、色々な分野の学生が係わると、それはそれで楽しそうだな。」
「工学部の学生から、オリジナルロボットを店に置いて欲しいという話も来ているそうですが、費用対効果を考えると、まだ難しいとか。」
「だろうな…。」
「小夜ちゃん、そこまでの取り組みならスポンサーをバックに置く事を考えても良いと思うよ。
桜さんの考えから外れない様、契約内容を充分吟味した上でないとまずいが、真面目な学生の活動を後押ししたいと思う人は少なく無い、店の予算を回しにくいロボットに関する取り組みなら…、そうだなその学生達の本気度によっては、私の方で後押ししても良いよ。」
「おお~、本間さんは、さりげにたこ焼きを食べていた訳では無かったのですね。」
「はは、社としても学生との繋がりは重要なんだ、優秀な学生全員を大企業に持っていかれる訳には行かなくて、努力してるんだよ。」
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猫田小夜-50 [化け猫亭-05]

「百人近くのスタッフがいるのなら、活動の幅を増やす事を考えてはどうかな。
例えば、うちの株主総会で、たこ焼きの出張販売とか、来てくれた学生には株主総会の見学だけでなく、我が社の紹介をさせて貰ったり、就職に関するアドバイスをさせて貰ったりといった時間も作れるよ。」
「うちでは社内イベントを手伝って欲しいかも、真面目な学生とは交流の場を持ちたいね。
我が社に就職してくれなくても、将来取引先となる可能性も有るからな。」
「ふふ、皆さんはただ、たこ焼きにつられて集って来た訳では無かったのですね。」
「当たり前だろ、小夜ちゃんの話は聞きたいし、桜さんに会えなくなって寂しい思いをしていたのは沼田氏だけじゃないんだ。
桜さん中心に出来上がる学生集団には興味津々だよ。」
「では、今夜十時から十一時まで桜さんが化け猫亭に出勤です、効率良く提案出来る様に相談しておきましょう。」
「おっ、そうなのか、う~ん…、取りまとめは松山氏にお願いして、沼田氏にはたこ焼きの追加と今までの話を桜さんに伝えて来て貰うという事でどうです?」
「分かった、たこ焼き買って来るよ。」
「私が進行すれば良いのか?」
「松山さんが適任だと思います。」
「はは、小夜ちゃんにそう言われてはやるしかないな。
このメンバーが動けば大きな力になるが、今日来てない常連へのフォローは小夜ちゃんに任せれば良いのか?」
「さりげなく聞き耳を立てているマスターが何とかしてくれます。」
「了解、では限られた時間だから…。」

時間を一時間と限定しておいたのは、ダラダラと長引かせない為。
準備をし時間を区切れば内容が濃くなる。
松山さんは、私の期待に応え、お客様方の意見をまとめて一時間分のスケジュールを組んで下さった。
そのスケジュールに沿った桜さんとの時間、皆さんは桜さんに見とれながらも建設的な話を。
ほぼ、私達が事前に考えていた通りとなり、学生組織と企業の接点を増やす事に成功しそうだ。
元々、化け猫亭のスタイルをマスターが考えたのは、真面目な女子大生と真面目な企業人との接点を作る事が目的。
その場を拡大して行く意味でオープンさせた店、CAT'S TAILは、当初から企業の後押しをイメージしていた。
今後の具体的な話は、桜さんの管理下、学生達が進めて行く事に成る。
マスターと桜さんが作った組織がどうなって行くのか、楽しみでしかないのは私だけしょうか?
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