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猫田小夜-48 [化け猫亭-05]

「小夜ちゃん、あの規模の店を学生スタッフで回すとなると、スタッフは全部で何人ぐらいになるの?」
「百人近いです、ですから初期投資の大きな部分を研修費が占めています。」
「そんなに…、さっき行って来た時のスタッフは四人ぐらいみたいだったが…。」
「学業優先ですので一人が働く時間は長く無いのです、ある意味ロスは大きいでしょうね。
ですが、百人のスタッフが週に一度でも普通の客として店でお金を使うとしたらどうです、客目線で店の改善点を考えながら。
研修に時間を掛けた結果、スタッフが店の実情をしっかり理解していますので、友人を誘って店を訪れるだけでなく、混んでいたら店の手伝いに入ってくれる人もいるそうです。
すでに常連客になっているスタッフも何人かいるのですよ。」
「自分達の店を盛り立てて行こうとスタッフが考える店か、ファミレスとかで指示されて働くのとは随分違う訳だな、大変そうだが上手く行くと良いね。」
「はい、マスターは実験的な店だと話していましたが、面白い取り組みです。」
「化け猫亭のスタッフも応援を?」
「お客さんという程度です、でも、あの店のスタッフから化け猫亭のスタッフになる人が出て来るかも知れません。」
「そうか、今までは先輩の紹介が中心だと聞いていたが、これからはあの店のスタッフからのスカウトも有るんだ。」
「ええ、店の趣旨を理解している真面目な学生しか採用していないそうですので、安心してお誘い出来そうです。
今の時間帯に働いてる人なら、沼田さんの推薦から面接という流れが有っても良いですね。」
「そうか、ならば、通わねばならないな。」
「但し、桜さんが店に居る事は多くないです、会えなくてもがっかりしないで下さいね。」
「大丈夫、店を応援するよ。
さっき桜さんに聞きそびれたのだが、彼女の就職がどうなっているのか知ってる?」
「ええ、すでに、化け猫亭の運営会社に就職しています。」
「卒業していないのに?」
「何か、問題有りますか?」
「う~ん…、そう言われると…、でも、大学に通いながらだと、忙しくて大変そうだな。」
「マスターが、そんな契約を結ぶと思いますか?」
「そう言われると、どんな契約なのか気になる、でも、公には出来ないのだろ。」
「具体的な金額は私も知りませんので大丈夫です。」
「ならば、是非。」
「皆さんの目が輝いて見えるのは気のせいでしょうか。」
「マスターは謎多き男だからな、彼が桜さんとどんな契約を結んだのかはとても気になる。」
「ふふ、そうですか、最大のポイントは労働時間です、大学生の内は学校で過ごす時間も労働時間とみなし、仕事と合わせて週40時間を越えてはいけないのです。」
「なるほど、彼女は真面目な四年生、それなら仕事と両立出来そうだな。」
「でも、条件が有るのですよ。」
「だろうな。」
「一つは、極力自分で仕事をしない事、もう一つは遊んでいるかの如く働く事。
あくせく働いたら月給はダウンなのです。」
「え~、なにそれ!」
「はは、なるほどな。」
「檜田さんは理解出来るのですか?」
「単純明快だろ。」
「どこがです?」
「マスターは桜さんを重役として育てようと考えているのだよ。
彼女の資質を考えたら最善手だな。」
「重役…、あっ、自分で動くのではなく…、学生達を動かすという事か…。」
「う~ん、それは分かりますが、遊んでいるかの如くというのは、どういう事でしょう?」
「桜さんは知的美人、店のシンボル的存在だろう、シンボルは、あくせく働いているよりニコニコしてた方が良いと思わないか?」
「そうですか…、てきぱきと人を顎でこき使う桜さんを見てみたい気もしますが。」
「はは、こき使われたいの間違いだろ。」
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