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架空サークル-51 [動植物園再生-06]

発足式から一か月が過ぎた。
順調に進んでいるプロジェクトもあれば苦しんでいる学生達もいる。
大きな問題は起きていない。
目立っているのはまだ似顔絵プロジェクト、生演奏プロジェクトぐらいだが、空き店舗の改修工事もまもなく始まる。
まだ表に出てこないプロジェクトも静かに進行している。

そんな頃、似顔絵プロジェクトは。

「準くん準備はおっけいよ、今日は任せてね。」
「ああ、今日は俺も描かせて貰うからな、えっと綾ちゃんの後だから一時間後ぐらいか。」
「絵描き一人十枚って決めたから計算が楽になったよね。」
「だな、それぞれのペースも掴めているから、受付が楽になったし、待って頂くこともそんなになくなってきたよな。
絵描き達も、自分の担当が終わったら気軽にスケッチや写真撮影に行けるって、初回は余裕が無かったから…。」
「作品展の方もお客さん増えるといいな~。」
「それにしても思わぬことばかりだよな…。」
「初回からあんなに盛り上がるとはね…。」
「リピーターも増えてきてるし、個人的に絵を頼みたいという方なんて想定していなかったし。」
「あっ、どうなったの、? 絵描き指名で何枚もお願いしたいって方。」
「佐々木さんに相談したら、絵描きさえ良ければお受けしようって。
それで、幾つか注意することを文書でも頂いた。
これからも色々出てくると思うから、ルールはきちんとしておいて欲しいと…。
佐々木さんにとっては想定してた範囲のことだったみたい。」
「そうなんだ…。」
「絵描き達には色々なオファーが来る可能性があるって。
絵描きにとってプラスにならないオファーは断って、プラスになるオファーはきちんと引き受けて、もし迷うようなら、相談役の先生からアドバイスを貰えば良いからって。
それと、お金の事は大切だから、安売りしない様にとも。」
「私たち素人は買って頂けるなら百円でも良いと思っちゃうけど。」
「先を見据えた方が良いって。」
「佐々木さん絶対同い年とは思えない、年齢詐称してるんじゃない?」
「はは、かもな。」


花ワールド-hirata
ぷちぎふと工房 コンサルジュ

架空サークル-52 [動植物園再生-06]

準が似顔絵を描き始めた頃。
動物園の正門に現れたのはフルートを手にした一人の女性。
軽やかにフルートを吹きながら園内を颯爽と歩いて行く。
楽しげな演奏だ。
来場者の中には後をついていく者も。
その数は徐々に増えていく。
そこにさりげなくバイオリンが加わる。
さらにクラリネット…。
次々と増えて行く演奏者。
曲も変わって行くがメドレーになっていて途切れない。

フルートが立ち止まるとそれに合わせて全員が止まる。
そしてコントラバスも登場。
と、観客の中から出てきた男女が踊り出す。
演奏者も増えるが、さりげなく抜ける者もいる。
気が付けば管楽器がずいぶん増えている。
しばらくして曲は子どもたちが皆知ってる踊れるものに。
そこに現れたダンサー達は、体を動かし始めた子達を前に導き一緒に踊る。
そこから曲調が変わると、彼らは子どもたちの手を引いて観客の中に消える。
別のダンサーが登場…。
しばらくすると演奏者、ダンサーの人数が減り始める。
出番が終わると、何事もなかったかの様に場から離れて行く演者達。
最後に残ったのは一人のバイオリニストと一人のパフォーマー。
バイオリンの調べに合わせ無言で演じているのは恋する乙女。
恋心とその切なさが伝わる。
結局何かを決意したした乙女は鞄に色々詰め込んで退場。
バイオリニストは最後に…、ありったけの思いを込めた演奏をしたかと思うと、バイオリンをケースに入れて退場。
次は? という観客の期待を裏切って終わる。
えっ、今の何だったの?

フラッシュモブは大成功と言える。
偶然その場に居合わせた者たちは感動しつつ発信していた。
『初めてフラッシュモブ見た、動物園、楽しかった。』
『生演奏良かった…。』
『パフォーマンスやってた子綺麗、バイオリンの子もかわいかった。』
『涙が出る程素敵だった…。』

などなど。


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架空サークル-53 [動植物園再生-06]

フラッシュモブには多くの学生が色々な形で参加した。
カメラを持って撮影していた者もいる、プロの指導を受けて。
そんな学生カメラマンの姿をテレビ局のカメラが追っていたりもする。
今回の映像は一つの局が代表して撮影するということになった。
多くのカメラが入り過ぎてはフラッシュモブの面白さが損なわれるという気遣いと、局を越えての連携という放送局にとって実験的な取り組みという意味合いもある。

翌日には地元放送局が様々な形で紹介した。
フラッシュモブだけでなく、似顔絵プロジェクト、音楽演奏、パフォーマンス、そして表向きは静かに進行しているプロジェクトも含めてだ。

さよりの友人、佐伯明香はそれを両親と見ていた。

「明香は出てないのか?」
「父さん、私は裏方よ、今回は友達が出てるからね…、やった! 裕子目立ってる! やっぱメインは裕子と桜子だ。」
「ほんと素敵ね、これだけのレベルなら…、明香、行けるわよ。」
「でしょ、母さん、嬉しい、あの子たちほんとに頑張ってたの、裕子なんてハードル高すぎって落ち込むことも有ったの、皆で励ましたの。」
「衣装も良いわね。」
「デザインしたのも、縫ったのも学生…、あっ、ちゃんとそれも伝えてくれてる。」
「これは応援したくなるなあ…。」
「そういう演出なんだけどね、遠藤先輩がすごくこだわってた、単なる紹介ではなく見てる人が応援したくなるのを見せられなかったら、俺たちに明日はないって。」
「あら? 気障キャラって佐々木さんじゃなかったかしら?」
「はは、遠藤先輩にも伝染っていうか…、何か企んでるみたいね。」
「あっ、工学部が出てきたぞ。」
「当たり前でしょ父さん、地元の活性化を考えたら絶対外せないわ。」
「うん、まあな…、うちの会社でも明香たちの活動をバックアップって話しを聞かされて、いまいち、ピンと来なかったけど…。」
「父さんは佐々木先輩の企画書見てないの?」
「いや。」
「もうすぐ誰にでも読みやすい形の本になるから微妙だけど、コピー持ってるから読んでみる? いいえ、読んで下さい。」
「わ、分かったよ。」
「今、取ってくるね。」

「な、明香ってあんな子だったか?」
「何時までも子どもじゃないですよ、しかも佐々木さんの企画書は、もう伝説になりつつあるんです。」
「えっ? どういうことなんだ?」
「まあ、読んでみて下さいな。」


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架空サークル-54 [動植物園再生-06]

フラッシュモブの翌週、売店の改装作業が行われた。

「小規模案件ながら、早い段階から注目を集めたことも有り、多くの参加をいただけて嬉しいです。」
緊張の面持で話し始めたのは中山。
「作業そのものも大切ですが、この機会に工務店の方のお話しを伺ったり、今後の活動に向けて横の繋がりという事なども想定していますので宜しくお願いします。」

準備はしっかりなされてきた。
改装工事そのものはスムーズに進む。
小規模なので実際の作業に係わる人数は限られた。
作業に参加しない者達は工務店担当者の話しに耳を傾ける。
彼らの多くは建築系を専攻している。
彼らは将来、設計、現場監督といった道を歩む。
実際に自らの筋力を使って建物を作っていくことを想定していない。
が、故に、現場の話しを聞くことは有益だった。

「あの時の現場はね、設計ミスだったとしか言えなかったんだよ、図面通りに施工したらとんでもないことになりそうで…。」
工務店の部長が経験談を話す。
こんな話に笑いはするものの、自分が設計者の立場になった時を考えたら笑えない。

昼食は近くの大学の学生が用意してくれた。

「どうぞ、ここでの販売も視野に入れたお弁当です。」
「有難うございます。」
「おいおい、お前変に緊張してないか?」
「ま、まあ仕方ないだろ、高校は男子校だったし、工学部は女性の比率低いし。」
「皆さんは、やはり将来は建築のお仕事ですか?」
「就職はそうなると思ってるよ。」
「こいつ、見かけによらず優秀なんですよ、良かったら。」
「よせよ。」
「建設業界はこれからしばらく強いからね、リニア新幹線がらみとかオリンピック関連とか、戦後に建てられたビルの建て替えや、補修もあるからね。」
「あ、そうですよね。」
「君達は、ここでどんな活動を?」
「このお店をベースにして色々な実習を目論んでいます。」
「男手が必要になったら何時でも、こいつ貸すからね。」
「おいおい。」
「よろしくお願いします。」
「よし、第一関門クリアってとこだな、がんばれよ。」
「だから…、ちょっと…。」
「お前、うじうじしてたらみっともないぞ。」
「心の準備もしてないのに、お前ら勝手に…。」
「じゃあ、次は心の準備させとくんで。」
「はい、期待してます。」
「…。」


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架空サークル-55 [動植物園再生-06]

改装された店がスタートしたのは六月中頃のことだ、初日営業終了後。

「売り上げは事前調査から予測された範囲内だったわ。」
「でも特製サンドイッチの予想外の売れ行きはちょっとびっくりじゃなかった?」
「そうよね、やっぱ見た目にこだわったのが良かったんじゃない。」
「売り切れのタイミングが早すぎたと思うな。」
「二時ぐらいまでは販売したかったよね。」
「今日のデータから明日の販売予定決めるけど、天気の他に変動要素有るかな?」
「明日って、パフォーマーチームが協力してくれるんでしょ。」
「あっ、忘れてた…、うわ~、来客数読めないよ~、テレビ局も取材してくれてたよね、今日。」
「焦らないで、私たちの目的を忘れちゃだめよ、売り切れでも構わないんだからね。」
「でも先輩、似顔絵チームもパフォーマンスチームも実績上げてるじゃないですか。」
「確かに彼らは寄付金集めに成功してる、でも私たちの活動はそれだけが目標じゃないでしょ。」
「はい。」
「私はね、すぐに結果を出す必要はないって考えているの、この先長く後輩に受け継いで貰える活動の土台を作りたいかな。」
「どこまで本気でやれるかですよね。」

「私達らしさって伝わったのかしら?」
「それは今後の課題かも…。」
「単なる模擬店としか受け止めて貰えなかったら残念よね。」
「ちゃんと私たちの活動紹介パネルを見て下さってる方もいたわよ。」
「う~ん、まずは成功ということで良いのかな。」
「はは、良いスタートだったんじゃない、今日は。」
「そう思いたいわ、で、今後のスケジュール調整の方は大丈夫よね。」
「はい、なんとか、でもここじゃ狭すぎませんか?」
「ここに参加したい学生多いからどんどん交代して行くって、少し物足らないな。」
「そうよね。」
「別の場、別の展開も色々有るって、佐々木くんの話し聞いてなかったの?」
「具体的には教えて貰ってないけど、私たちが地元活性化の原動力だなんて話し…、まだ理解しきれてないんですけど…。」
「ここは一つのシンボルになりそうだし、別の展開ってのを期待しましょうか。」


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架空サークル-56 [動植物園再生-06]

店二日目。
店の近くでは学生によるパフォーマンスも披露されている。
それを遠藤真一は地元テレビ局のディレクター柏木と見ていた。

「遠藤君がパフォーマンス系を仕切ってるの?」
「仕切るという程では有りませんが、方向性を示して行こうかと、サポートしていた似顔絵の方も形が出来てきて落着きましたから…、対外的にはパフォーマンス部の部長という事になりました。」
「あっ組織の方は、結局その方向になったんだね。」
「はい、会社組織というものを我々が理解していくには良い機会だと思っています。」
「部長ともなると大変だろう。」
「ま、楽では有りませんが課長達が優秀ですから。」
「う~ん、その言葉が出るという事は…、君は優秀なリーダーになれそうだね。」
「いえいえ。」
「遠藤部長的にパフォーマンス部の方向性はどうなの?」
「はは、部長はよして下さいよ、まあ方向性としては…、まず個々の力量は自分で伸ばすしかない、もちろん先生の指導を受けたりすることは必要だけど最後は自分で考える事だと思ってます。
プロとアマの違いをじっくり考えようというアドバイスをする様にしています。
でもパフォーマンス部の存在意義は、とことん演出力だと考えています。
同じダンスでも衣装によって人の感じ方は変わります、同じ曲でも演出によって伝わり方は全く違ったものになっていく。
一人のパフォーマーをどう演出して行くか、それによって何が引き出せるのか、パフォーマー自身だけでなく周りの学生にとっても挑戦なんです。」
「うん良いね、面白い。」
「どんなジャンルのパフォーマンスだって…、今は一人で演じているものでも、演出を考えたら総合芸術に出来るという気持ちが、課長クラスだけでなく係長クラスにまで広まりつつ有るんです。」
「成程、君が部長になった理由が分かった気がするよ、うちでも応援させてもらうよ。」
「あっ、すでに別の局の方が…。」
「大丈夫、その辺りは調整させて貰うからね、かなり異例なことなんだけどな。」
「ライバル関係にある地元局が協力、という話しは多少耳にしていますが。」
「簡単に言えば、地元が盛り上がればスポンサーのサイフの紐が緩むということだ。」
「はは納得しました、どこまでサイフの紐を緩ませることが出来るかも俺たちの挑戦の一つにしますよ。」
「頼むな、東京のキー局程の力はなくても、地元発の良質な番組を発信して行きたいと我々も思っているからね。」
「その辺りも地元局がんばってるって演出を考えてみましょうか?」
「ははそうだな、がんばってる人を応援したくなる心理か…。」
「はい。」

「それにしても寄付する人、多いよな。」
「有りがたいことです。」
「大道芸的な演出の成功ってことかな?」
「それも有りますが、今日は取材も考慮して今までに人気のあった連中を中心に組んでいます。
彼らすでに結構な寄付を頂いているんです、さらにトークの苦手な子にはトークの上手い子を付けてますから。」
「そうか…、すでに色々考えているってことか…、あの募金箱? も?」
「はい。」


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架空サークル-57 [動植物園再生-06]

募金箱は早い段階で予算化され作成された。
箱には公式の物で有ること、パフォーマンスが許可を得てのものであることなどが明記され鍵が取り付けられ、園内の植物会館で管理されている。

店から少し離れた植物会館へは一人の学生が募金箱を取りに来ていた。
「一時から日本庭園での木管四重奏をサポートする鈴木です、募金箱をお借りに来ました。」
「はい鈴木君ご苦労様、じゃあこの用紙にサインお願い。」
「はい。」

「何かあったらすぐ連絡してね、ここに連絡先有るから。
たぶんガイドボランティアの方も聴きに行かれる思うから、見かけたら声を掛けておくのよ。
変な人はいないと思うけど、万が一の時は助けて下さると思いますからね。」
「はい、先輩方からもコミュニケーションを取る様に言われてます。」
「今日は佐々木代表聴きに来られるの?」
「どうでしょう、お忙しい方ですから。」
「素敵よね~彼、まだテレビでしか見たことないけど…、あら御免なさい、終了予定は?」
「二時半です、三時までには募金箱をお返しに来る予定です。」
「了解、もし遅れる様なら連絡お願いね。」
「はい、じゃあ行ってきます。」
「気を付けてね。」

園内パフォーマンスには必ずサポートの学生が付く。
演奏中募金箱を置きっぱなしには出来ないのでその管理者が必要だ。
また、演者関連の宣伝ビラなども配りたいということで、ちらしの管理をする者もいる。
演奏者の紹介や曲紹介を別の大学の学生が行う事もある。
演奏当日来なくても、サイトでの告知という形でサポートする学生もいる。
何をするでなく曲にあった衣装を纏って花を添える女学生。
撮影をする者、その他裏方として動く学生達。
ほとんどは少し離れた所から来園者の妨げにならないように見守っている。

「鈴木くん、天気が良くて助かったわね。」
「だね、屋外は天気に左右されるから。」

「寄付はこちらで良いのかしら?」
「はい、有難うございます。」
「屋外で生演奏も良い物ね、鳥のさえずりも聴こえて楽しかったわ。」
「音響面とか如何でした?」
「変に作られていないナチュラルさが新鮮だったわ。」
「よろしかったら彼らの演奏会も有りますので。」
「まあそうなの、チラシ頂くわ、テレビで見たわよ皆がんばってね、応援してるわよ。」
「有難うございます。」

「今の方お札だったよね、大きい方の。」
「ああ、応援して貰ってるんだな俺たち。」
「単なる演奏の魅力だけではない価値を生み出す、遠藤先輩が話してみえたのってこういうことなのかも。」


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架空サークル-58 [動植物園再生-06]

植物園で木管四重奏の演奏が行われていた頃、糞処理研究チームのメンバーが話し合いをしていた。

「動物生態調査チームからの一次報告を受けてちょっと調べてみたんだ、ほらイヌ科とかいたろ、だったら犬を飼ってる人にとって糞の始末はどうなのかと思ってさ、大変そうだろ。」
「ああ、確かに糞の始末は面倒だよ、散歩の途中だしね。」
「それなりのアイテムが売られていることは把握した、糞の処理とかのさ。」
「ペットショップで売ってたな、うちでは使ってないけど。」
「そんなのを動物園の動物に応用して改良を加えて、犬用のアイテムにフィードバックっていうか製品に反映させるってどうかな。」
「あっ、その考え良いかも。」
「で、思ったのが糞をくるむ素材なんだ、どうやら犬の糞は可燃物として処理されることが多いみたいだけど臭いの問題とか扱い易さとか。」
「使ってる人に聞いてみないと分からないな。」
「調査チームに頼んでみるか?」
「だな。」
「な、動物園で考えた時にさ、獣舎の床全面にシート貼っておいて、動物が別室に居る時に丸めて交換ってどうだ? 小部屋の動物に限るけど。」
「良いかも。」
「問題は歩き心地とかか?」
「動物達って糞をする場所決まってないのかな?」
「タヌキは決まってるらしいな。」
「ため糞だろ。」
「じゃあ、そこにシートを敷いておいて簡単お掃除って出来ないかな。」
「微妙な気もするが…。」
「逆に場所が決まってるなら今までも処理の手間は少な目だったかもな。」
「う~ん、犬猫って室内で飼うこと多くなって来てるから、トイレのしつけとか有るんだろ。」
「あっ、ここでしなさいってトレーニングか。」
「猫に出来ることならライオンにだってということか…。」
「実際どうなんだ?」
「そっちは動物生態調査チームに問い合わせてみるか。」
「だな、ついでにシート利用で簡単お掃除が可能な動物がいないかも。」
「なあ、糞の種類を動物生態調査チームから教えて貰ってるけどさ、丸くて転がりそうなのあるよな。」
「ああ、確かに。」
「獣舎に傾斜をつけて、糞をしたら転がって下に溜まる構造ってどうだ?」
「傾斜地での生活にストレスを感じない動物なら良いかもだけど。」
「それも問い合わせて見よう、転がり易そうな糞で傾斜地OKな動物ってことだな。」
「俺はシート材質に興味が有る、臭い物を効率良く包んで臭いが気にならないレベルに出来たら色々応用が効くと思わないか?」
「まずは今使われている商品の調査だな、そのまま動物園でも応用出来ればそれも良し、改良の余地が有れば面白いかもな。」
「だな、当面の作業をまとめて後で分担を決めようか。」
「ああ、じゃあ他の取り組み考えている人は?」
「やっぱり掃除ロボット作りたい。」
「だよな、できれば動物のいる所でロボットが動いていたらと思う。」
「うん、夢が有るよな、そんな風景を見た子ども達が将来工学部を目指してくれたらと思うよ。」
「問題は動物にとっての負担か?」
「大人しいけど神経は図太いってのじゃないと難しい気もするが…。」
「そんな動物存在するのか?」
「その辺りがチャレンジなんじゃないか、うまく行かなかったとしてもさ。」
「だな…、絶滅危惧種はスルーだけど…、自動管理で飼育される動物って…、家畜の飼育に応用される可能性ないか?」
「そうだな、すでに有りそうだけど…、あったとしても改良のヒントが見付けられるかもしれない。」
「う~ん、無駄に人型にしたい気も。」
「やっぱ効率重視から行きたいけど…、子どもに見せるということを考えると、お前の意見も無視できんな。」

「ちょっと整理しておこうか、糞処理としては獣舎の掃除の部分と集められた糞をどう処理するかの大きく二つに分けられる。
獣舎の掃除に関する事は他のチームとも相談しつつ、一つ一つ検討していく。
糞の処理に関してはゴミ処理チームとも連携して検討していく。
後は担当を決めてということで良いかな?」
「新たに加わってくれたメンバーも希望とかあったら気軽に話して欲しい。」
「そうだね、我々の次のステップへ向けて、今のリーダー、サブリーダーは早い段階で交代という方向性が有ることを新規メンバーにも理解しておいてもらわないとね。」
「どういうことなんです?」
「それは…。」


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架空サークル-59 [動植物園再生-06]

糞処理研究チームのメンバーが話し合いをしていた頃、動物生態調査チーム映像班は一つの問題を検討していた。

「映像に迫力というか、面白さがないと思わないか?」
「だよな、来園者がちょっと見て次へ行ってしまうような映像ならいらないと思う、研究用としては良いかもしれないけど、この映像じゃ子ども達が十秒で飽きちゃうんじゃないか?」
「遠藤が言ってた演出だよ、俺たちがどこまでここの動物たちを魅力的に見せるかっていう。」
「遠すぎるよな、これじゃあどう編集したって…。」
「アップとか撮れないかな?」
「望遠では動きを追いづらいかも。」
「近くからアップを撮る位置では奴ら警戒しないか?」
「小型カメラで、さらにカモフラージュすればどうです?」
「違和感は察知されないだろうか?」
「初めはだめでもずっと置いといて慣れされるという手はどうですか?」
「それは試す価値有りそうだ。」
「一匹の頭とかに小型カメラ付けれたら面白いんだけど…。」
「それはさすがに…。」
「まずは馬とかの視点ってどうだ、比較的カメラを付け易い動物だと思うけど。」
「あっそうか馬が何を見てるのか追ってみたら面白いかもな。」
「動物は人間と違って色の識別が苦手って聞いたことが有るけど…、この動物にはたぶんこんな感じで見えてますって、そんな画像処理は難しくないよな。」
「そうだな、生態調査の方は今までやってきたことを拡充させて行く、来園者の方に見て頂く映像は動物目線だったり、もっと近づいた映像とかを…、近づいた映像なら今まで気付かなかった生態も分かるかもしれないしな。」
「予備的な実験ならうちの猫とか使ってくれて良いぞ。」
「そうだな、犬猫で試してから動物園で運用の方が効率が良いかもしれない。」
「じゃあうちのポチも。」
「犬猫以外でも試してみたいな。」
「協力者募集してみる?」
「じゃあ俺は人間として協力しようか。」
「はは、そうだな誰かウェアラブルカメラ使ってみたこと有る?」
「俺はまだ使ったことないけど兄貴が買ったって言ってたから、今度借りて来るよ。」
「おう、その結果を踏まえて色々…、工学部の連中とも相談だな。」
「観察機材チームの力が無かったら面白い映像なんて無理だよな、制約多いから。」
「問題は盗撮に応用する奴らだ。」
「技術が進むとそれを悪用する輩が出て来るって…、何か嫌だな。」
「人間の欲望が…、様々な技術を発展させてきたという側面もあるが…。」
「あっ、それ次の作品テーマにしようかな。」
「慶介の前作良かったから、うん、その線で行くなら俺も手伝うよ。」
「俺も手伝うけど、盗撮はするなよ。」
「当たり前だろ!」


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架空サークル-60 [動植物園再生-06]

動植物園では様々な取り組みが進んでいる。
7月の某日、国井さよりと西山健一。

「ねえ、健くん色々忙しかったりもしたけど結構順調よね。」
「だな、寄付はパフォーマーチームと似顔絵チームの活躍により六月末時点で三百万円越えたよ。」
「そこまで行くとは想像してなかったな、お店の方も夏休み明けにはかなりの額を寄付させて頂けるって琴美が言ってた。」
「そうかお店は収支をきちんと管理して…、それも実習だったね。」
「サークル全体のお金の管理もね、監査担当も作ったって…、ふふ、わざと間違った帳簿を監査担当に見せて気付くかどうかって。」
「うわっ、そんなことまでやってんのか。」
「でも気付けなかったら監査の意味がないかもでしょ。」
「ハードな実習だな…。」

「小さな補修作業は申請から許可までが早いから、どんどん進めてるみたいね。」
「ああ、景気が最悪だった頃にやってたら、仕事を取るなってクレームが来そうな勢いなんだってさ。」
「ね、全体の組織は上手く動いているの?」
「ああ、さよりのパフォーマンス部だけじゃなく、他も特に問題は起きていないよ、部長達の力だね。」
「うん、うちの部長、遠藤先輩すごいと思うもん、佐々木先輩が目立ってるから気付いてない人も多いみたいだけど…、部長やってる先輩方レベルの方とは、自分の大学しか知らなかったら出会えなかったろうな…。
うちの学長がこの活動に期待してたのは、上を知りなさいってことだったのかも。
ねえ、健くんは、総務部秘書課長となってどうなの?」
「総務の仕事も秘書の仕事も範囲が広くて…、秘書課の皆に教えて貰ってるって感じ、部長はお気楽に、秘書課の子と浮気したら、さよりにちくるからなって。」
「ふふ、まだ教えて貰ってないな~。」
「課長クラスは学校の成績落とせないし…、結構余裕ないんだよ。」
「今年度を乗り切れたら少しは楽になるんじゃない?」
「うん、そう思ってがんばってるよ…、さよりは余裕?」
「余裕って程じゃないけど、充実してるからね、ワクワクしながら大学の講義も受けてるわ。」
「そっか、負けてられないな。」


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