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権じい学園にて-1 [権じいの村-SPO-01]

権じい学園、開校から間もない四月の教室でのこと。

「小栗くん、権じい学園はどうかな?」
「純也先生、ぼく…、頭悪いから…。」
「ふ~ん、そうなんだ、で?」
「頭の良い子がいっぱいいるここでやっていけるか…。」
「はは、そんなこと気にしなくて良いよ。」
「でも…。」
「大切なことはね…、そうだな、君が今まで通っていた学校では、テストで良い点を取りなさいって感じだったのかな?」
「はい。」
「でもね、テストの結果なんてどうでもいいんだよ。」
「えっ?」
「大切なことは何を身に付けるかってことかな。」
「?」
「小栗くんは何のために学習するんだと思う?」
「う~ん、やっぱ良い高校へ入って…。」
「で?」
「就職に有利なんて、前の学校の先生が…。」
「はは、小栗くんは将来のこと考えてる?」
「大人になったら…、ですか?」
「ああ。」
「父ちゃんは村に帰って一緒に農業やろう、って、で…。」
「農業か、良いね。」
「自分は、まだ全然分かりません…。」
「そうだね、中学三年生では、まだ先のことなんて決められないよね。」
「はい…。」
「今は大人になって自分で働いて自立していくまでの準備期間だから…、あせる必要はないからね。」
「はぁ…。」
「そうだな、この学園で学ぶにあたって大切なことはね、何のための学習か、ということを心にしっかり持っていて欲しいということかな。」
「何のため?」
「そもそも、学校ってテストで良い点を取ることが目的ではないってことだよ。」
「でも…。」
「学生時代のテストの結果がどうであろうと、大人になった時、自分が満足のできる仕事ができれば、何の問題もないってこと、この世の中、仕事は色々有るからね、そりゃテストで好成績を上げるような能力がないと就くことの出来ない職種もあるけど…、そればかりじゃないってことだな。」
「農業やるなら、勉強しなくて良いってことですか?」
「それは違う、農業やるならしっかり学習して欲しいな。」
「でも、畑を耕して…。」
「農薬を使うなら理科の化学の知識が必要になるし、今は無農薬という考えも広がっているから、無農薬で作物を育てる場合の知識とかも…、昔は農作業に関する知識が親から子へと伝えられてきただろ。
それが学習だったんだ。
中には、もっと効率良く、とか、もっとおいしい作物をと考えて農業に取り組んだ人もいた。
まあ、研究ということに取り組んだ人もいたってことさ。
農業をやっていくには、それなりの知識や経験が必要になってくる、それを自分の物にして行く力が必要だということだね。」
「そうか…、農業やってくには体力だけでは、だめってことですか…。」
「その、通りさ。」
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権じい学園にて-2 [権じいの村-SPO-01]

さわやかな風が木立を揺らす五月。

「そうか、沙代里ちゃんは美容師希望なんだ。」
「はい、和史先生、だから…、こんな山奥には来たくなかったのですけど…。」
「はは、ここでだって美容師は目指せるよ、その、気持ちをしっかり持っていればね。」
「でも…。」
「そうだな、沙代里ちゃんは美容師になるには、何が必要だと思う?」
「やっぱし、テクニックとかセンスを磨かないと…、でも…、ここでは…。」
「美容師になるための試験で、皆が苦労することが何か知ってる?」
「えっ? 何ですか?」
「化学の知識なんだ。」
「えっ? 化学なんて、無関係じゃ?」
「とんでもない、化粧品とかって、ある意味化学物質だから、使い方を間違えると人体に悪影響を与えかねない。
お客さんの見かけをいくら良くしたって、お客さんの寿命を縮めることになってしまったらだめだろ。」
「あっ、そうか…、私、化学とかって自分に関係ないと思ってた…。」
「はは、そうなんだ。
大切なことも沢山学んでいるんだぞ。」
「はい?」
「混ぜるな危険、とかも。」
「? あっ、トイレ掃除の洗剤ですか?」
「そう、下手に違った種類の洗剤を混ぜると、化学反応を起して人体に有害なガスを発生させることになってしまう、そんな知識を知らないのと知っているのとでは、大きな違いがあるだろ。」
「はい。」

「沙代里ちゃんはどんな美容師になりたいの?」
「そりゃ、お客さんのヘアースタイルをばっちり決めて、誰からもそのテクニックを認めてもらえるような…。」
「うん、そうか、でもね本当に上を目指すなら、手先のテクニックだけじゃだめなんだな。」
「えっ?」
「美容師だけじゃない、他の仕事でも言えることなんだけど、接客のテクニックということも大切だったりするんだ。」
「そりゃ、お客さま相手の仕事ですから。」
「そんなトレーニングなんて今からだってできるんだな。」
「はい?」
「指名されることの多い美容師は、他の人とどこが違うと思う?」
「そりゃテクが。」
「でも、それだけじゃない、お客さんのことをよく考えている人なんだ。」
「う~ん、当たり前のような…。」
「そうだな、洗髪の時、目に水が入らないように気を配る、なんて当たり前の気遣いだけど…、次元が違うかな、時には、愚痴を聞いてもらいたいと思っているお客も来るだろ。
そんなとこを察して愚痴の聞き役になってあげたりとかね。」
「でも、それは美容師の仕事とは…。」
「直接関係ないと思うかもしれない、でもね一人の人をより輝かせるのが美容師の仕事なんだ。
そう、考えたら、見せかけだけでなく、内面だって大切じゃないかな。」
「う~ん。」
「上を目指すなら、人の心に気を配れるようになること、人の心を感じることことのできる美容師になって欲しいな。」
「う~ん、そんなこと考えたこともなかったな…。」
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権じい学園にて-3 [権じいの村-SPO-01]

六月、校庭の片隅には紫陽花が。

「ねえ慶子先生はどうしてここの先生になったの?」
「そうね、大切なことをあなた達に伝えるためかな。」
「大切なこと?」
「そう、私は前に勤めていた学校ではだめ先生だったの。」
「え~、本当~?」
「ええ、出さなきゃいけない書類は何時も後回し、記録もいい加減。」
「だめじゃん。」
「でしょ、でもね、そんなことに時間使ってたら生徒たちときちんと向き合える時間がなくなってしまうと考えていたの。」
「ふ~ん。」
「その学校の校長先生は、勉強はつまらないことだけど必要なことだから…、嫌でも我慢してがんばりなさいって感じの人だったの。」
「え~、あっ、でも、そうね、私の前の学校もそんな感じだったかも…、でも、権じい学園に来てからは色々教えてもらうことが楽しいわ。」
「そう言ってくれると嬉しいわね、私達はみんなに学ぶ喜びを感じて欲しいと思っているの。」
「うん。
どうして苦手な数学をやらなきゃいけないのって、信雄先生に聞いたらきちんと応えてくれた。」
「どう、納得できた。」
「そうね、頭のトレーニングなんだって、苦手なのは変わらないけど…、自分の出来る範囲で挑戦してみてごらん、って言われたから、前ほど数学が嫌いじゃなくなったかな。」
「今まで知らなかったことに出会う、私は楽しいことだと思っているの、でもね、それがテストの為とかだったらつまらないものになってしまうわ。」
「そう言えば、省吾や啓介たちはゲーム感覚で色々な教科に取り組んでいるみたい、私とは別次元の生物ね奴らは。」
「ふふ、人それぞれよ。
真紀ちゃんは優しい心を持ってるし、あなたの絵、私は好きよ。」
「へへ、こんな山奥、最初は抵抗あったけど、今はね…。」
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権じい学園にて-4 [権じいの村-SPO-01]

七月になって。
子ども達も村での生活にずいぶん馴れてきた。
馴れてくると色々はめを外す余裕も出て来る。
親に内緒で夜の冒険に出かけ、後で親にこっぴどく怒られた子、池に落ちてずぶ濡れになった子もいる。
都会では味わえない体験は、また危険とも隣り合わせで大人たちの心配は尽きない。

「洋二、ルールはあまり増やしたくないけど、夏休みに向けて安全の為のルールはちゃんとしておいた方がいいかもな。」

生徒会長、佐伯洋二に声を掛けたのは、高三の池上峻。

「うん、峻兄、安雄たちが黙って夜の冒険に出かけたり、良夫が池に落っこちたりと大人たちに心配を掛けるようなことが続いたからね。」
「俺としてはさ、先生方から話しが来る前に自分達できちんとしておきたいと思うんだ。」
「うん。」
「冒険も、水遊びもどんどんやったら良いと思うけど事故は起して欲しくないからな。」
「やっぱり、何々しちゃだめ! ってなことを決める?」
「それじゃ、権じい学園じゃなくなっちゃうから…。
まずは皆で話し合ってみるか?」
「じゃあ明日のフリーミーティングのテーマにするね。」
「ああ。」

翌日のフリーミーティング。
権じいの下に三十名程が集まる。
権じいが作る木陰に初夏の日差しを和らげてもらいながら話し合いが始まる。

「今日のテーマは遊びと安全ということなんだけど。」
「洋ちゃんごめん…。
ぼくら、ちょっと…。」
「? 安雄、気にするなよ、お前らを責める訳じゃないから、ね、峻兄。」
「ああ、安雄、夜の森はどうだった? どきどき?」
「うん、そりゃもう、どきどき。
健二なんかびびって泣きそうになって、帰ろうって言い出したけど…。
でもさ、空を見上げたら星が一杯でさ、蛍も見つけたし。
ヒメホタルかな、幼虫が道端でぼんやりと光ってたりさ…。
でも、黙って出かけたから、後で母さんたちから、ずいぶん怒られちゃった。」
「はは、俺はさ、冒険すべし、だと思うんだ。
せっかくこんな自然豊かなとこで暮らしてるのにさ、冒険しなかったらもったいないと思うよ。
でも、もう理解してると思うけど、森には危険も付き物ということだな。」
「うん、光男が途中でころんじゃって泣きだしてさ、あいつまだちっこいから連れて行きたくなかったけど、連れてけってしつこかったから。」
「安雄はちゃんと光男の面倒もみたのか?」
「仕方ないからおんぶして帰ってきた。」
「ちゃんとリーダーの役目を果たしたということだな。」
「へへ。」
「まあ、冒険はすべしなんだけど、やっぱり自分勝手にやって事故を起したら大問題だということは、ここに居る皆はもう解っていると思う。
でも、これから先も、この大切なことを忘れて冒険に出かけようとする子が出て来るかもしれない。
その時、事故が起きない様にということを今日話し合っておきたいと思うんだ。」

「峻、まずは山での危険について皆がもっと理解することも必要じゃないかしら。
私達ここに移り住んでまだ四ヶ月程度でしょ。
少しは馴れてきたけど、まだまだ…、そうね…、本当の住人にはなりきれてない気もするから。」
「うん、確かに翔子の言う通りだ、四月に一通りの安全点検はしたつもりだったけど、それはここでの暮らしを良く知らない段階でのものだったかもな。」
「峻兄、じゃあ皆で安全について見直す会を開く?」

「なあ。」
「あっ、啓吾兄ちゃん、なに?」
「全校生徒で冒険…っていうか、村内探検をやらないか?」
「えっ?」
「ふふ、安雄たちにも案内してもらったりしてさ、実際に危険な所も皆で確認しながらさ。
色々なグループに分かれて村中を、そうだな今まで皆が足を踏み入れたことのないとこへも行ってみて…、まあ調査だな。
大きいっ子ルールは定着してきてるから、調査結果を共有していけばずいぶん違うと思うし…、皆がこの村のことをもっと知ることにもなるし。」
「あっ、それ良いかも。
やろうやろう、企画は俺が進めるよ。」
「はは、高志はイベント好きだな。」

「そうだよな、大きいっ子ルール、大きい子が小さい子の面倒を見る。
今思うと、当たり前のことなんだけど、前の学校ではそんな雰囲気あまりなかった。
何かここでは自然に根付いたな。」
「はは、家では末っ子でも、学校では兄ちゃん姉ちゃんになれるって大切なことだからな。
家では経験できないことを、集団の中で経験できることは大きいと思うよ。」
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権じい学園にて-5 [権じいの村-SPO-01]

夏休み。
といっても旅行に出かけた子以外はほとんど学園に通ってきていた。
普段と同じように学習に取り組む子もいれば、普段とは違ったテーマに取り組む子、スポーツに励む子もいれば、夏ならではの遊びに興じる子たちもいる。
実習や研究で上がってくる大学生も普段より多くなり、色々な交流もある。

「なあ省吾、今日一つの発見をしたよ。」
「どんな? 啓介のことだから…、また下らないことか?」
「いやいや、俺達、趣味のごとく高校の数学やってるじゃん。」
「ああ、数学は微妙に俺がリードしてるけどな。」
「大した差じゃないさ。
でさ、微分積分もそろそろクリアだろ。」
「うん。」
「微分積分って何に使うと思う?」
「使う?」
「昨日さ、測量してた土木工学科の人と話しをしたんだ。
少し測量のことについて教えてもらったんだけどさ。」
「うん。」
「数学の知識を結構使ってんだよ。」
「ふ~ん。」
「ふと、思い出したのは中一の頃の同級生。
数学なんて勉強しても役に立たないとか言ってた奴がいてさ、つまない奴だと思った。
まぁ、それに応えられない先生にもがっかりしたけどな。」
「はは、そんな奴には測量なんて関係ないんじゃないのか?」
「まあな。
でさ、明日の午前、測量を手伝わさせてもらってさ、その後の処理なんかも教えてもらう約束をしたんだ。
省吾もどう?」
「う~ん、自由研究のテーマにするの?」
「俺にとっては四つ目のね。」
「そうだな知らない人から何か教えてもらうということは、自分の自由研究のテーマとも関係するから…。
明日なら…、自分の予定変更だけで済むから、行くよ。」
「じゃあ、明日、何時ものとこな。」
「おっけい。」
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権じい学園にて-6 [権じいの村-SPO-01]

「お兄ちゃんたち、何してんの?
水遊び?」
「はは、まあ水遊びみたいなことかな。
ここに小さな水路を作っているんだよ。」
「作ってどうするの?」
「小さなダムも作って水車を置くんだ。」
「へ~、大っきなのを作るの?」
「いやいや、小っこいのをね。」
「ふ~ん、やっぱり研究とか実験なの?」
「うん、君達が電気のことを学習する時の教材作りが一つの目的なんだ。」
「電気?」
「電気って直接目に見えないだろ、だから、なかなか理解できない子もいる訳さ。」
「ぼくは少し勉強したよ。」
「そうか、じゃあ発電の仕組みってわかるかい?」
「わかんない。」
「だろ、だからここで実際に発電してみようという訳さ。」
「ふ~ん。」
「ここでは、子ども達だけでも組み立てられるような模型みたいな物を作れないかと、もちろんちゃんと発電できるのだけどね。」
「面白そうじゃん。
手伝おうか?」
「おう、手伝ってくれるか。」
「うん。」

「お~い、この子作業を手伝ってくれるって~。」
「それは助かるな~。」

「じゃあ、みんなを呼んでくるね。」
「えっ?」

「行っちゃったぞ。」
「ふふ、やっぱり直人の言ってた通りだな、子ども達の興味を引くのは実習的なことだよな。」
でもさ、彼に、俺達がやってることが今まで有り得なかったことだなんて、理解できないだろうな。」
「はは、大人でも理解できないかもってレベルだからな。」
「現時点での最先端の技術を小さな水車に取り入れて、色々条件を変えてデータを取って、子ども達の学習にも役立てて。」
「実際の過疎地での電力供給源として模索して。」
「それに携わっているのが色々な学部の学生の集まり。」
「大学も違っていたりとな。」

「おい、あの子、大勢連れてきたぞ!」
「こりゃ、教育学部の山中の出番だな。」
「いやいや、子どもの相手は清水がうまかったりする。」
「でも、なんか面白いことになりそうだな。」
「はは。」
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権じい学園にて-7 [権じいの村-SPO-01]

「おい、山中、気付いたか?」
「何にだ、清水。」
「あの子さ、大勢連れてきた。」
「うん、安雄は、がき大将というよりリーダーだな。」
「俺達の話をちゃんと理解して子ども達を動かしてる。
それも、それぞれの年齢に合った役割を振ってるし、小さい子にも気を配ってるし。」

「おい、ここをもう少し補強しておきたいんだけど材料どうする?」
「う~ん、極力自然の素材をと思ってたけど…。」
「どうしたの?」
「うん、安雄くん、ここさ、ちょっと弱そうで崩れそうだろ?」
「う~ん、崩れたらやばいね。
こういったことは…、清水さん、ちょっと待ってってね。
今メモを書くから…。
山中さん、何か足りないもの有る?
後からでも足りないものが有ったら教えてね。」
「う、うん。」

「お~い、祥司、頼む。」

「どうしたの、安雄。」
「このメモを学校まで届けて欲しいんだけど。」
「おっけい。
誰に渡せば良いの?」
「洋二くんに渡して、帰りにトランシーバーを受け取って来てよ。」
「うん。」
「で、このメモは、今日のおやつ当番の翔子姉ちゃんに、祥司がここでの作業が大変だってことをうまく伝えれたら、今日のおやつの量が増えると思うから頼むぜ。」
「ふふ、解ってるよ、もちろんお兄さん達の分もだろ。」
「うん、それもメモに書いておいた。
それと、もうすぐお昼だから香織さんとこに行けばさ。」
「うん、帰りは香織スペシャルに便乗だね。
じゃあいってくる。」
「こけるなよ!」
「おお!」

「あっ、早いな、あの子。」
「でしょ、かけっこじゃ大っきい子でも勝てないんだ、祥司にはね。」
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権じい学園にて-8 [権じいの村-SPO-01]

「安雄くん、おななかすいた~。」
「うん、良太、もう少し待ってな、もうすぐ香織さんが来てくれると思うからさ。」
「うん。」

「香織さん?」
「うん、山中さん達もお昼ご飯頼んだんでしょ? お店にさ。」
「ああ、そう言えば届けてくれることになってたけど…。
三次郎さんちの近くね、とか言って済んじゃったけど、ここ解るのかな?」
「香織さんなら大丈夫さ、祥司も一緒に来ると思うし。
ほら見えてきた。」
「なかなかおしゃれな車だな。」
「でしょ、真紀姉ちゃんの絵が採用されたんだ。
翔くんのも良かったんだけど、この村にはあのデザインの方が良いって。」
「なるほど。」

「みんなお待たせ。」
「わ~い、お弁当、お弁当! 香織さん、早く早く!」
「あら、ちょっと待ってて。」
「こらこら、慌てちゃだめよ、皆、手を洗ってきて、タオルはここにあるからね。」
「はは、こういう時は綾香ちゃんが仕切る訳か。」
「うん、綾香は小っちゃい子の面倒も良くみてくれるんだ。」

「えっと、みずぐるまプロジェクトの人たちね、はい、お弁当。」
「有難うございます。」
「どう、作業は?」
「子どもたちにも手伝ってもらって順調です。」
「ふふ、みんなもがんぱってんだ。」
「ぼくもお手伝いしたんだよ。」
「そうか、勇くんえらいぞ。」
「へへ。」

「安雄、はい、トランシーバー。」
「さんきゅ~。」
「もうすぐ、峻兄ちゃんも自転車で来るよ。」
「峻兄ちゃん忙しいと思うけど大丈夫なのかな?」
「なんかここのお兄ちゃんたちとも相談したいことがあったっんだって。」
「そっか、ならいっか。」
「峻兄ちゃんって?」
「あっ、清水さん、峻兄ちゃんは学園の一番上のお兄ちゃんなんだ。
色々なことを教えてくれる…。」
「安雄はお母さんの言うことは聞かなくても、峻兄ちゃんのことは聞くもんね。」
「綾香、余計なこと言わなくて良いよ。
そう言う、綾香だってさ。」
「あ~、内緒内緒。」
「はは綾香ちゃん、お顔が真っ赤だよ。」
「あ~、高くんたち、また喧嘩してる、いかなきゃ。」
「あっ、逃げたな…。」
「はは、君達ってみんな仲良いんだね。」
「え~、そうでもないけど…、喧嘩もするし。」

「あ~! 峻兄ちゃんだ!」
「ほんどだ! わ~い、峻兄ちゃ~ん!」

「彼が峻兄ちゃんか、あっという間に子ども達に囲まれちゃったな。」
「峻兄ちゃんはここでの色々なことに関係してるから忙しいんだ、でも時間を作って小っちゃい子たちとも遊んでくれるんだ。」
「へ~、じゃあ俺達にも紹介してくれるかな。」
「もちろんさ。
ちょっと待っててね…。
お~いみんな、峻兄ちゃんは、こっちのお兄さんたちとお話しがあるからね。
綾香、頼むな~。」
「おっけ~。
さあ、みんな、ご飯途中でしょ。」

「おっ、安雄、有難うな、助かったよ。」
「へへ。」
「こんにちは、みずぐるまプロジェクトの人ですね。
自分は権じい学園の池上峻です。
よろしくお願いします。」
「こちらこそ、プロジェクトリーダーの佐藤和夫です。
今日は子ども達が手伝ってくれて…、みんな仲、良いですね。」
「ええ、がき大将グループを作ることが権じい学園の大きな目標でもありましたから。」
「はは、安雄くんががき大将ってことか。」
「ええ、でもそれだけじゃないんです。
安雄達とはリーダー論の研究もしています。
リーダーの役割とか、どういう場面ではどう行動すべきか。」
「なるほど、ただのがきじゃない訳だ。」
「ここでの経験を将来生かして欲しいと思っています。」
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