土の中で始まるおはなし [おにいとぽてち]
俺が気づいた時、辺りは真っ暗だった。
どうやら土の中の様だ。
魔術をしくじったらしい。
憑依していた男に飽きたから他の人間に意識を移そうと思ったのだが、ターゲットにした大金持ちではなく…、
生まれたばかりの、か、かめに精神を移し換えてしまったようだ!
まぁいっか。
しばらくは、かめとして生きてみるのも悪くはない…、
といいが。
かめ屋 [おにいとぽてち]
「庭でかめが産卵しました。」
穴掘るの大変そうだったね。
「うん、結構時間がかかるからな、なんせあの後ろ足で少しずつ掘っていくのだから、今回も一時間以上かかったと思うよ。」
またかめが増えるんだね。
「どうかな、うちは環境が悪いみたいで孵化の成功率かなり低いんだよ。」
ほんとは増やしたかったんでしょ。
「ああ、売るつもりでいた、ところが…。」
ところが?
「ミシシッピーアカミミガメ、通称ミドリガメは売れなくなってしまったんだ。」
どうして?
「自然界でも増え過ぎてしまって、日本の生態系のバランスを崩してしまったんだ。」
ふむふむ。
「そこで本来の日本固有の種を守るという考え方が広まりつつあってミシシッピーアカミミガメ受難の時代がやってきたということだな。」
色々難しいんだね。
「全くだ、おかげでかめ屋になりそこねたよ。」
レントより遅く [おにいとぽてち]
ねえ、おにい、前から気になっていたんだけど、Lentoってどういう意味なの?
「音楽で使う速度に関する標語だよ、ぽてち。」
へ~。
「ゆるやかに、ということなんだ。」
なんか速度を表すにしては、微妙に曖昧なんだね。
「そうだよな、まぁ演奏者の感覚まかせってことだろう。」
今聞いてる曲ぐらいの感じなの?
「この曲はドビュッシーのレントより遅くだよ。」
じゃあレントはこれよりは速いのかな?
「どうなんだろうね、アレクシス・ワイセンベルクはこの速さで弾いてるけど、人によって違うかもね。」
ゆるやかに、かぁ~。
「うん、ゆるやかに暮らしていきたいな。」
そうだね。
天国と地獄 序曲 [おにいとぽてち]
「ぽてち今日、天国と地獄 序曲を聞いたよ。」
ああ、あの運動会定番の曲だね、おにい。
「うん、ジャック・オッフェンバックが作曲したんだ。」
で?
「ふと思ったんだけどさ。」
うん。
「この曲が運動会の定番曲になるなんてオッフェンバックは思いもしなかったと思わないか?」
そりゃそうだね。
「オッフェンバックが知ったらどんな気持ちになるんだろうな。」
「あれっぽてち何してるの。」
準備オーケーだから天国と地獄 序曲流していいよ。
「何の準備?」
逃げる準備。
「?、あっ! 私のおやつ!」
ちゃんちゃ~ん♪ ちゃちゃちゃちゃ♪ ちゃんちゃん♪ ちゃちゃちゃちゃ♪…。
「ぽ、ぽてち~、ま、待て~。」
ぽてちの紹介 [おにいとぽてち]
「おにい、そう言えばさ、ぼくのこと良く分からない人が、多いかもって思わないかい?」
「えっ? そうかな? 二本足で歩いて人間と口を使わずにお話ができる、普通のかめ…、とりあえず
土の中で始まるおはなしでは、紹介しておいたけどさ…。」
「あのお話し長いしさ、ぼくの趣味がジョギングで、好きな食べ物は、たこ焼き、特技は、つまみ食いなんて分かんないじゃないか。」
「立った時の身長は10センチぐらい、後、この前の失敗談はっと…。」
「あ~ん、それは言わないで~。」
新しい靴 前編 [おにいとぽてち]
「それにしても、ぽてちって足遅いよなぁ~。」
「え~! 余計なお世話だよ、まぁそれも昨日までのぼくさ。」
「?。」
「ジャ~ン! この靴どう?」
「お~!、かっこいいじゃん!」
「いいでしょう。」
「はは~おみそれいたしました~。」
「早速走ってみるね。」
「いち、に、さん、し、いち、に、さん、し…。」
「やっぱり遅いじゃん。」
「これからトレーニングして速くなるの!」
「いち、に、さん、し、いち、に、さん、し…。」
「ぽてちがんばれよ。」
「うんがんばるよ、いち、に、さん、し、いち、に、さん、し…。」
「う~ん、ぽてちは所詮カメだからなぁ~、ガメラにでも…。」
「おにいなんか言った?」
「い、いや何でもない。」
「ちなみに亀用の靴は売ってないと思いますので悪しからず…。」
新しい靴 後編 [おにいとぽてち]
「ぽてちもトレーニングして少しは速くなったのかい。」
「もちろんさ。」
「どれぐらい?」
「これくらい。」
「お~、それは良かったって結果がわかんないし。」
「それよりもね。」
「おお、速く走れることよりも何だい?」
「う~ん、嫌味だなぁ~。」
「はは。」
「それよりも、足が楽なんだよ。」
「ああ、そうか、足に合ってるってわけだね。」
「うん。」
「私も以前、安物の靴でひどい目にあったからなぁ~。
足だけじゃなくて、あちこちおかしくなって…。」
「で、そのまま頭がおかしいままなんだよね。」
「うん、そうなんだ…ってコラ~。」
「だ~しゅ!(逃げ)」
「あれ、あいつそれなりに速くなってる…。」
止まれ [おにいとぽてち]
「なんだい、おにい…、てさ、ぼく、このブログに登場するのずいぶん久しぶりな気がするんだけど。」
「まぁ気にするな、細かいこと気にする奴は大物になれんぞ。」
「べつに大物になれなくてもいいよ、で?」
「ふと気付いたんだけどさ、ここってさ写真ないよな。」
「確かに、ひたすら文字の並ぶブログだよね。」
「4月の中頃から色んな人のブログを回り初めてな。」
「そう言えば、おにいは長い間書くだけの人だったよね。」
「うん、でさ皆さんのブログには綺麗な写真があってだな。」
「あっ、おにいも写真UPしたくなったんだ。」
「まあな、でもデジカメは壊れてるし、前に撮ったお気に入りの写真もパソコンの調子が悪かった時に消えちゃったからさ。」
「で?」
「生き残っていた一枚がこれなんだけどさ、画質は悪いけど逆立ちして苦労して撮った一枚なんだ。」
「止まれ、なんだね。」
「ああ、たまには立ち止まることも大切かなって思ってさ。」
ペンネーム [おにいとぽてち]
「ペンネーム? おにい、って立派なのがあるじゃん。」
「まあ確かにそうなんだけど、おにいって呼ばれている人はこの世に数え切れないほどいるんだぞ。」
「どうしておにいにしたの?」
「それはだなぁ…、って話し始めると長くなるから置いといて…。」
「置いとく訳なんだね、でどんなペンネーム?」
「かめ屋吉兵衛か、かめ屋吉右衛門 。」
「かめ屋はかめを飼ってるから?」
「うん、ほんとに売るつもりだったんだけどね。」
「えっ、どれぐらい本気で?」
「これくらい。」
「って、3センチぐらいなの…。」
「まぁ石亀と草亀だけにしとけばほんとに売れる可能性があったけどね、勢いでミシシピーアカミミガメ、小さい頃はミドリガメと呼ばれてる奴に手を出したのがすべての間違いの元だったな。」
「ふ~ん。」
「ミドリガメは、まあ、外来種ということでね、自然界でも増えすぎてしまって…、売って1000円ぐらい稼ぐということは断念したよ。」
「で、吉兵衛とか吉右衛門 って?」
「なんか、めでたそうだろ?」
「えっ? そうかな? でも、おにいには立派すぎるんじゃない?」
「確かに…、ぽてちはどんなペンネームが良いと思う?」
「かめ屋へそまがり、なんてどう?」
「え~! まぁ間違ってはないけど、ちょっとかっこ悪いぞ。」
「おにいにぴた~りだと思うけどな~。」
「い、いや、そんなの…、ひねりもないし…。」
猫 [おにいとぽてち]
隣家が猫たちの溜まり場になっているからだ。
近所の猫好きさん達が餌を与えているから、常にと言っていいほど猫がいる。
我が家はスーパーの裏に位置する。
そのスーパーの鮮魚部の人が餌を与えることもあって…、刺身とか、私より良い物を食べてる時もある。
猫の数は増えたり減ったり、今は少な目だが多いときは10匹を超えることも。
子猫が生まれると一気に増える訳だ。
それがしばらくすると減っていく。
恵まれた環境だから、そのまま居座っても良さそうなものなのだが、やはり近親交配を防ぐ本能で移動していくのだろうか。
「ぽてち、今日はエッセイ風に書き始めてみたけどどうだい?」
「ふ~ん、じゃあ、ぼくも書いてみようかな。」
おうちを出るとね、すぐ猫ちゃんたちにこんにちは~。
おとなりさんちがね、にゃんこの集会場さ。
おさかなやさんとかが、ごはんをあげてるから、おにいより良い物食べてることも多いんだよ~。
「ぽてち、微妙にパクリじゃないか?」
「え~、そうかな、おにいよりは上手に書けたろ。」