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脱東京-01 [シトワイヤン-11]

市長の話を伺う時間が終わり。

「愛華、今日は随分雰囲気の違う衣装なのね。」
「はい、Citoyenの新作野良着です、機能性を重視しつつファッション性を兼ね備えています。」
「田圃でそれを着てたら目立つでしょうね。」
「そこが狙いなんですよ、田畑に咲く一輪の花、奥さまがどこにいらっしゃるのかすぐ分かった方が良いじゃないですか。
作業中に具合を悪くされる方も見えると聞きまして思い切った色にしたのです。」
「そっか、でも、汚れも目立ちそうだわ。」
「洗い易さも追及しているのですよ。
そして皆さんにお知らせです、Citoyen苗川店では、こんな苗川限定商品を明日から順次販売して行きます。
キッズからシニア向けまで一気に種類を増やしましたので宜しくお願いします。」

Citoyen直営店はすでに大都市圏中心に数店舗オープンしているが、人口の少ない地方都市では苗川が初めて。
開店から一か月、大きな売り上げを維持しているのは、苗川に党員が二万人以上いるという証。

「明日からの企画に合わせたのね、そっちは清香の担当だったかしら。」
「はい、今回の市民祭は番組の脱東京企画を知った女子高生の発案です。
春休み期間だけの、桜の様にパッと散る様な企画で良いからと募集した結果、多くの企画が持ち込まれました。
それを苗川の大人達が全面的にバックアップ、明日のオープニングは番組でも紹介させて頂きます。」
「脱東京企画に関係するのね。」
「ええ、発案者の女の子は、東京ってなんだろうと考えたそうです、憧れる気持ちは有りながらテレビで見る人ごみの風景には抵抗を感じたそうで。
そんな中、苗川が若者にとって魅力ある町だったらと。
それには東京の真似をするのではなく、苗川から発信するぐらいの、まあ、気持ちだけでも、だそうです。」
「そうね、ファッション、流行なんて一部の人に踊らされてるだけだもの。
その一部の人が原宿ではなく苗川を選んだら、規模は小さくても何かが変わるのかも…。
でも、大きな儲けが期待出来ないと動かないでしょうね。」
「実行委員の人達は苗川独自の文化をこれから作って行けたらと話してみえました。」
「その文化が世間に受け入れられるかどうかが問題なのよね。」
「たとえ広がらなかったとしても、個性的な町になり、町の活気に繋がる気がします。」
「う~ん、そうね、でもあの踊りは…。」
「ふふ、梅子姉さん目線では少し残念な企画も有りますが、土日は是非苗川へ遊びに来て下さい。」

金曜日の午後、番組に合わせてオープニング、土日を中心に発案者曰く学園祭の様な市民祭が始まる。
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脱東京-02 [シトワイヤン-11]

市民祭は大学生が中心となっての企画運営。
『田舎の力を見せつけろ!』と県外からの参加も呼びかけた。
三月中の土日が中心となるが、平日の企画も予定されている。
オープニングイベントでは。

「県内の学生中心に他県からの応援もあっての市民祭開催となりました。
参加することに意義の有る企画も有りますので皆さんの力で盛り上げて下さい。
まずは市民祭期間中、イベント会場で皆さんと一緒に踊りたい踊りの紹介です。」

子ども向きのシンプルな曲に合わせたシンプルな踊りから、若者向け、盆踊り風と披露される。

「各種パフォーマンスの間に曲がかかったら踊って下さい。」
「屋台エリアには県内各地から祭りの為に出店して頂きました、皆さん、この県を…。」

市民祭と銘打っているが学生党員達は県を強調している、それは知事選を意識しての事。
彼らは、イベントを通して知事選の費用を稼ぐことも考えていて、かなり質の高い学園祭を目指しているのだ。
市民政党若葉の県組織はほとんど形になっていない県から、県知事候補を擁立する県まで様々。
市町村支部が増えそれぞれが大きくなったこの県では自然発生的に県連が誕生している。
オープニングイベント終了後、本間市長と雑談。

「市長、知事選の感触は如何です?」
「県連代表は少し不利だと話してたよ、市民政党が強い市町村ばかりじゃないから、弱小支部のテコ入れが必要だな。」
「う~ん、ドライブついでに支部巡りでもしましょうか?」
「良いのか?」
「苗川を拠点にあちこち見て回るつもりでしたので、いずれ東京からの移住を全県に広げて行きたいと考えています。」
「成程、県連代表に連絡を入れてお勧めのドライブコースを組んで貰おう。」
「ついでにCitoyenの行商部隊を連れて…、それと『脱東京』の最終週は県内各地から中継の予定、日程が確定したら連絡させて頂きます、連絡はどこにすればよろしいですか?」
「それぐらいは私で構わない、知事選で勢いをつけて国政選挙に繋げたいのだろ。」
「ええ、市長は国会議員への転身とか考えておられるのですか?」
「いや、苗川が好きで越して来たのだからな、知事の話を断ったのも同じ理由さ。
市長としては、知事を市民政党若葉から出して市と県の連携を強めたいんだよ。」
「やはり県と市の役割分担には問題が?」
「簡単にどうこう出来る話ではないが無駄は多いと思う。
国、県、市町村が同じ方向を向いていれば少しは解消出来るのだがな。」
「知事選はその為の第一歩ということなのですね。」
「ああ、県内の支部は良い感じでまとまってる、知事選で勝てれば一気に市民政党若葉が広がる、社会を変えて行くには大きな力が必要だろ。」
「はい、ここで成功したら他県へも広がって行くと思います、知事選の応援にも来ますからね。」
「頼むよ。」

国会議員は無所属からの参加や所属政党を離党しての参加が有り九名になった。
だが、それでは全く足りない。
地方で力をつけ党勢を拡大して行く必要が有る。
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脱東京-03 [シトワイヤン-11]

その夜。

「愛華、市民祭はしっかり盛り上がりそうだな。」
「ええ、この勢いなら私達は予定通り県内ドライブに時間を掛けられるわ。
市町村支部を回ることになったから、スタッフも同行して貰うのでしょ。」
「ああ、カメラマンが必要だな、各支部での写真は三人が一緒に写ってた方が良いだろ。
番組用の風景写真を写すプロは必要ない、学生スタッフで充分だな。」
「プロの写真は、住みたくなる様な風景になってるのかしら?」
「少なくとも観光に行きたくなるレベルだと信じたい。
各支部の様子が分からないから、観光を兼ねての学生スタッフにも同行して貰おうか。」
「そうね、スケジュールも変更するのでしょ。」
「うん、本間さんと連絡をとって指示を出しておくよ、訪問先の支部とも調整が必要になるからな。」
「何とか知事選に向けて盛り上げたいわね。」
「ああ、今後の展開に大きく影響する、ここで知事を誕生させる事に成功したら、国会の議席も増やせるだろう。」

そこへスタッフと連絡を取り合っていた清香が戻って来た。
「清香、どうだった?」
「お賽銭は、五万円近く入ってたそうです、市民祭へ行く前に『瀬田和馬が十万円で購入した土地』を見に行かれた方が多かったそうで。」
「何のご利益もない女神像の前に置いた賽銭箱なのに、設置後半日でその額なら支部の資金源として合格だな。」
「女神像と賽銭箱を自分達の支部にも置きたいと言う声も出ています。」
「そうか、こちらで一か所ずつ増やして行こうと思っていたが、支部向けにセット販売しても良いのかな。」
「女神像は統一するか個性を出すか…、あっ、各地の女神像を回るスタンプラリーが出来る様にしたらどうかしら?」
「うん、十か所回ってくれたら一か所十円でも百円の収入になる訳だな。
それならサイズを統一して、ポーズは各支部毎に変えた方が良いね、スタンプの試作も依頼しよう。」
「では祠制作チームに伝えておきます、スタンプのデザインも女神像に合わせたものが良いですね。」
「設置される場所の土地柄も反映されるべきだな。」
「ご朱印状サイズや手帳サイズが有っても良いわね、でも、苗川の女神像は建設の始まったログハウスで管理出来るから良いけど、各地の支部はどうするのか…、まあ、完成は知事選に間に合わないけど、そんなことが選挙戦の箸休め的な話題になるのかもね。」
「スリーDプリンターで作ったサンプルなら短期間で県内全支部に置く事は可能だぞ、苗川と同じポーズになるが。
サンプルを見せて、祠と賽銭箱付きのオリジナル女神像をスタンプ付きで販売して行くのも有りだな。」
「でも、全国の支部から依頼が来ると凄い数になるわよ、オリジナルポーズには限界が有りそう。」
「髪型を変えるだけでも印象は大きく変わります、ショートヘアの女神さまがいらしたり、お顔も表情も色々有れば楽しいです。
直ぐに大量という訳では有りませんので皆さんの希望を取り入れながらで良いでは有りませんか。」
「そうだな、始めは市民政党の聖地を巡礼して頂こうと考えていたのだが…、はは、全女神像コンプリートを目指す人が現れたら面白いな。」
「党支部が増え続けて挫折するでしょうね。」
「何のご利益もない女神像だが、まずは知事選の勝利をお願いされる形にはしよう。」
「当選となったら選挙の女神になるのですね。」
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脱東京-04 [シトワイヤン-11]

『脱東京』梅子姉さんとの番組は苗川からの放送となっても支障はなく、オフィスを地方へ移転という話は別番組でも取り上げて貰ったお蔭で反響が大きかった。
地方の若者は東京に憧れるが、東京に職場の有る中年は過密状態に疲れている様だ。
番組では『脱東京宣言』を著名人にして貰っている。
最近地方都市に移り住んだ作家は、仕事には全く支障がないと話す。
梅子姉さんの友人、有名ミュージシャンは夜遊びに興味が無くなったら広い家に住みたくなったと、海の見える豪邸を紹介してくれた。

「お金持ちの『脱東京宣言』を続けた後、東京在住と地方在住の方の家計を家賃と遊興を中心に比較するのですね。」
「清香には一般庶民の金銭感覚は分からないだろうな。」
「それでも、子どもの頃は何でも買って貰える訳では有りませんでしたので、お小遣い帳をつけていたのですよ。」
「ご両親の教育なんだね。」
「ただ、最近分かって来たのは、お年玉の額が皆さんとは違っていたという事です。」
「はは、ようやく気付いたのか、どうだ苗川に別荘を建てる計画、進める?」
「はい、今日報告が有りまして、土地はすでに確保出来たそうです、ただ、単なる別荘ではなく多くの方に使って頂けるものにしません?
そうですね、党の学生スタッフが気軽に使える様な、災害時に被災者を一時的に受け入れる事も視野に入れた宿泊施設とか、十億ぐらい掛ければそれなりの施設が出来ると思います。」
「土地は買ったの?」
「はい、うちは借りるより買うが原則なんです、必要が有って購入した不動産が後に高値で売れたのが事業拡大に繋がったと聞いています。」
「必要が有って土地を購入出来る資産が、まず違ってたのだろうけどな。
でも、苗川の土地が高値で売れる可能性は低いと思うよ。」
「ならば、付加価値を高め、活かし続ければ良いのです。」
「清香はどんな付加価値を考えているの?」
「近隣に有る廃屋の撤去や耕作放棄地の再生で、視覚的価値を高めます。」
「随分費用が掛かりそうだな。」
「集中投資すれば直ぐに返って来ます、廃屋をお洒落な商業施設にし、和馬が十万円で買った土地を見に来る人をターゲットとします。
全体を魅力的なエリアにすれば、担当者曰く、ただみいな額、で手に入る土地の価値が上がるのです。」
「話は進んでいるのか?」
「ええ、売るに売れなくて持ち主が困ってる土地の話を、本間市長から聞かされていましたので、別荘地以外にも土地を買い進める方向で私のスタッフに動いて貰っています。
父も市長が本間さんになったことでOKを出してくれました。」
「本間市長の計画とはぶつからないのかな?」
「大丈夫です、市長とも担当者が話し合っています。
地域経済の活性化を卒論のテーマにしようと考えていますので早く結果を出したいのです。」
「う~ん、卒論の為にどれだけの予算を組んだんだ?」
「取り敢えず二十億です、私が相続して持ってた株を売って欲しいという話が有りまして、曽祖父にも喜んで頂ける研究にしたいです。」
「父上は株を売る事に対して反対されなかったの?」
「はい、多分社内で権力争いが起きてるのだろうと、この先株価が下がる確率は低くないと判断しました。
相続してから随分値上がりしましたが、売った時がピークだったかも知れません。」
「売り時ってことか。」
「土地の活用法は和馬も考えて下さいね。」
「ああ、まずは店と従業員の為の住まいかな、そうなって行くと新しく株式会社を起こすのか?」
「ええ、父の会社で営業課長をしていた人を社長にして、苗川に本社を置きます。
彼の趣味はスキーだそうで、子どもを自然の中で育てたいと名乗りを上げて下さいました。」
「まさしく脱東京ということか。」

清香のスタッフが多少動いていることは聞いていたが、ここまで進めているとは思っていなかった。
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脱東京-05 [シトワイヤン-11]

今日はドライブ、車中では。

「なあ、清香、子どもの頃付けてたお小遣い帳には株の配当なんて項目も有ったのか?」
「いえ、自分の資産を教えられたのは高校生になってからです。」
「株を売って二十億というのには流石に驚いたわ。」
「愛華、株は難しく、気軽に売れない資産なのです。」
「まだまだ持ってるってことなのね。」
「私の名義でも簡単には現金化出来ません、今の所その必要は有りませんが。」
「かなりの広さの土地を確保したのだろ、そこへの投資はどうして行くんだ?」
「一部は富裕層向けの別荘地として整備、うちの優秀なスタッフはすでに動き始めています。」
「中途半端な別荘ではなさそうだね。」
「部外者立ち入り禁止、都会のマンションと同程度のセキュリティーを村の規模で実現させます。
表向きはイノシシや熊の侵入を防ぐ為と称して人の侵入を防ぐシステム、村内の森林はクリーンアップして高低差の少ない散歩道と、アップダウンの有るトレーニングコースを設置します。」
「維持管理が大変そうだな。」
「ええ、隣に維持管理スタッフの為の村を作ります。」
「そんなに話が進んでいるのなら、もったいぶらずに教えてくれたら良いのに。」
「いえ、スタッフの動きが早くて私も企画を知ったばかりなのです、皆さん、私が地域経済の活性化を卒論にという話はご存じですので、経済効果予測などと合わせて報告が有りました。」
「経済効果か、都会なら埋もれてしまいそうな金額でも地方都市としては大きいだろうね。
建設関係とハウスキーパーかな。」
「苗川の建設会社を一つ買収します、ハウスキーパーはもう少し先の話です。」
「高給優遇なの?」
「ええ、給料に不満が有っては顧客に迷惑を掛けかねません、富裕層のお金が一般市民の為に使われるのですから社会にとってプラスになります。」
「建設会社は下請けでは無く買収の方が良いのか?」
「手抜き工事が有っては行けませんでしょ。」
「そうなると二十億で足りるのか?」
「顧客からの前金が充分でなければ、銀行から借入れます。」
「党の方針の一つ、地方の活性化は、お金持ちが動けば簡単なんだな。」
「それでも町のイメージが良くなかったら顧客の心は掴めません。
スタッフが急いでいるのは『脱東京』のイメージが残ってる内に売り込みたいと考えての事なのです。」
「番組の経済効果か。」
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脱東京-06 [シトワイヤン-11]

「番組からの経済効果は他でも出始めてるわ、でも、苗川のイメージアップみたいなのは、じわじわと結果が出て来るものよね。」
「ああ、本間市長は市内の景観アップを目指して、廃屋の撤去、古くても趣の有る建物は補修して残す、飲食店中心に外装の見直しなどを提案されたが、長い目で見て大切な事だと思う。」
「看板については賛否が分かれている様ですが、美しい風景を壊す様な看板はどうなのでしょう、本当に宣伝効果が有るのか疑問に思う物も有ります。」
「効果に疑問が有っても宣伝広告費として処理し易いとか。
景観としては、海外で街並みの綺麗な所は電柱が無いのよね、電力会社だけの問題とは思えないけど、日本は何処へ行っても電柱が立ち並んでいて残念な気持ちになるわ。」
「電線の地中化はコスト面に問題が有るのだろう、始めから、電線を地中に通す事を前提にしていれば、高コストだとしても当たり前の経費でそれほど気にならなかったのだろうが。
本間市長でさえ、電線の地中化には触れてないから、かなりの差が有るのかもな。」
「でも、ログハウス村は景観重視だから電柱は不要、清香が進める別荘村も当然地中線化よね?」
「安っぽい電柱はいりません、インフラ整備は普段全く意識していませんでしたが、村の再開発を考え始めて改めて大変なことだと思っています。」
「富裕層向け別荘村なら、非常時の自家発電とかも考えているのだろ?」
「そうですね、顧客に不自由な思いはさせられないです。」
「いっそ発電所も作っちゃえば?
木質バイオマス発電とか、別荘地内外の森林を整備する過程で木に由来する屑が出て来るのでしょ。」
「コストパフォーマンスはどうなんだ?」
「少し目にしただけで詳しく調べた訳ではないのよ、でも国際情勢の変化で原油価格が高騰した時でも安心でしょ。」
「そうですね、調べて貰います、売電事業として成立するのなら土地の有効活用にもなります。」
「非常時に別荘の電力を確保するという目的からは外れそうだな。」
「小規模水力発電を併用したらどうかしら?」
「はは、電力会社になりそうだな、原子力発電所も作る?」
「エネルギー政策は難しいのよね、確実に負の遺産になる原発に手を出した結果が…。
それでも、原油や天然ガスを輸入に頼ってる現状と、今までの投資を考えたら簡単には手放せません、というのが結論みたいね。」
「福島の事故を調べて驚いたのは、頭の良い人達が津波を軽視してた事、地震が起きて当たり前の日本なのに、原発を海岸から離すと効率が悪いと考えたのでしょう、安全と効率のバランスを考えられない人が起こした人災です。」
「おかげで過疎化が進んでるのよね。」
「愛華も原発反対なんだな。」
「当然でしょ、色々な形で子孫に負の遺産を残す事になるもの、清香が電力会社を立ち上げるのなら応援するわ。」
「そうだな、老朽化した火力発電所を動かして穴埋めをしてるとも聞く、ビジネスとして成り立つので有れば…、初期投資にどれだけ掛かるのか想像出来ないが。」
「調べて貰わないと分かりませんが、苗川に本社を置いて社員を募集するのなら経済効果も見込めます、株式を引き受けて下さる方が少なくても、銀行から百億ぐらいは借りられます。」
「問題は従業員の確保か?」
「確保した土地は市の中心部から凄く遠いという訳でも有りません、社宅や社員寮を充実させれば、そうですね、苗川を住みたくなる町に出来れば大丈夫です。」
「別荘地を維持する人と発電所関係で働く人の村を作るということになるのか…、そうなると学校の問題が出て来ないか?」
「本間市長と相談ですね。」

ドライブ中、話題に困ることはない、清香は発電についての調査を指示するだろう。
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脱東京-07 [シトワイヤン-11]

ドライブの目的地でトークイベントに参加した後、市民政党若葉の県知事候補、作田さんと。

「瀬田くん、苗川は盛り上がってる様だね。」
「はい、周辺の自治体を巻き込んでの市民祭は観光客を呼び込んでいます。
問題は市民祭終了後ですが、実行委員会は年間を通してのイベントを計画中で、今回ほどの規模でなくても経済の活性化に繋げて行こうとしています。」
「それは県内全域に広げて行きたいね、毎週どこかでお祭りとかどうだろう?」
「昔ながらの祭りがなければ市民祭ですね、間にアイドルグループとかのイベントを誘致すれば…、冬場は雪祭りですか。
でも過疎化が進んでいる所では、運営する人が居なかったり、居てもお客さんが来なかったりしそうです。」
「ああ、町でも空き家が目立つ、まずは町から元気にして行きたいね。」
「作田さんは県内を回られて如何でしたか?」
「賑わっている観光地も有るが…、そうだな、改めて少子高齢化を実感したよ、市民政党若葉はネットで始まったという事情が有り高齢者に弱いだろ、選挙戦のネックだな。」
「その辺りは党員の方に頑張って頂くしか無いですね。」
「でも君達が、肩書として市民政党若葉発起人とか初代代表を使ってくれてる事で、市民政党若葉の名前を広めてくれてるのは大きいよ、県連副会長として各支部を回らせて貰っているが、どこでも君達のグッズ販売目当てに人が集まってるのが実情さ。
爺さんと婆さんが、愛華さんか清香さんのポスターどちらにするかで揉めて、結局両方買って行ったりとかね。
政策は良く分からんが、瀬田和馬が立ち上げた党なら一票入れるという人もいたよ。」
「一般市民に政策を深く理解して頂くのは難しいです、県政が直接自身の生活に影響するのは一部の人だけです、結局選挙は知名度に左右されますね。
自分達は、公職選挙法や制約が無ければテレビでも応援出来るのですが…。」
「それは仕方ない、選挙戦を頑張るよ、市町村と一体となった県政を目指してね。
県内の全市町村長が市民政党若葉所属となれば、更に党のシステムが活かせるのだが、党員以外には理解されにくいのだよな。」
「ですね、本間市長が表明した、公営エネルギーセンター構想でも、党員はその有効性を理解していますが、党員外にはまだ伝わっていない様です。」
「民間のガソリンスタンドに代わる施設、高めに設定するというガソリン価格にばかり目が行ってるみたいだからな。」
「ガソリンを入れに行くためだけにガソリンを消費しているという現実と向き合って貰わないと、批判的な記事を書いてるのは都会に暮らす三流記者でしょう、まあこれから地方の現状を番組で紹介して行きますから大恥を欠く事になりますが、大した取材をしない人はそんなことは気にしないかも知れません。」
「私が知事になったら県営としてガソリン供給も電気や水道ど同じ列に加えるつもりだよ、そこまで本間さんと話を進めているんだ。
まずは、苗川で試験運用だが単独の市では効率が悪いだろ。」
「ですね、作田さんはエネルギーセンター構想を県営として進める場合、どの様な構想をお持ちなのですか?」
「本間さんと相談しているのは、ガソリンスタンドを維持し、水素ステーション、電気自動車向けの充電スタンドの他にプロパンガスや炭や薪まで扱う事を視野に入れ、大型店には商業施設を併設する、国道沿いを中心にバランス良く配置したいね。
民間のガソリンスタンドが消えつつ有るのだから、行政がカバーして行く一つのモデルケースとして全国のガソリンスタンド過疎地に可能性を発信したいんだよ。」
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脱東京-08 [シトワイヤン-11]

本間市長が提唱し作田県連副会長が賛同したのは、公営エネルギーセンター。

「作田さん、採算は取れますか?」
「市町村には補助金が出る、ただ維持費がね、建設は市町村、維持管理を県営の会社が請け負って色々試し、場合によっては民営化という流れを考えているんだ。」
「市町村が個別に管理するより効率が良いという事ですね。」
「ああ、法的な整備が必要になるだろうから、国とも相談だがな。
ガソリンスタンドが遠くて、更に過疎化が進むという事は何としても止めたいんだ。」
「皮肉な話ですよね、車の燃費が良くなった事でガソリン消費量が減りスタンドが減って不便になったのですから。」
「実はそれだけではなくてね、消防法改正によりガソリンスタンドの地下に埋められている四十年を超えるタンクの改修が義務付けられたんだ。
そのコストの高さに廃業の道を選んだ高齢の経営者も少なくない、消防法を改正した人達は安全を重視、だが、それに伴う民間の負荷を気にしなかったのさ。」
「そんなところが、立法の難しさなのですね。」
「法によって得する人と損をする人がいるからな、それだけにしっかりした根拠が必要なんだ。」
「ガソリンだけでなく充電スタンドなどを設置するのは、そういった思惑も有ってのことですか?」
「電気自動車が普及することは悪くないからね、まあ、軽自動車に乗ってる人が気軽に乗り換えられる価格ではないし、デメリットも有る。」
「一回の充電で走行出来る距離が冷暖房によってかなり短くなるのですよね。
では、燃料電池車は普及すると思いますか。」
「難しいね、普及までにはかなり時間が掛かりそうだな、現時点で水素ステーションは無いに等しい、エネルギーセンターに設置するとしても遠い話だろう。
国策として進めるのなら、かなりの先行投資が必要だな。」
「結局はガソリンなのですね。」
「効率が良いからな。
なあ社会環境は変化している訳だろ、その変化に対応して行くには、県と県内の市町村が手を組んで行くべきだと思わないか。」
「勿論ですが、今は、それが充分では無いのですね。」
「ああ、県全体を市民政党若葉で押さえれば可能性が広がると思うだろ。」
「はい、党員の皆さんから様々な提案が出ています、まずは知事選に勝利したいです。」
「応援頼むな。」
「ええ、美しく住みたくなる県を目指して、ですね。」

知事選の 告示は間もなくだ。
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脱東京-09 [シトワイヤン-11]

苗川でのイベントは知事選を意識して、市民政党若葉を知って貰うという意味合いが有る。
そのイベントが盛り上がる中、知事選が告示され作田さんが立候補。

「作田さんは、党県連の副会長という立場で党の宣伝をしてこられましたが、これからは知事候補。
立候補は三名ですが、お一方は落選決定の様で事実上の一騎打ちです、和馬は作田さんが当選されると思いますか?」
「知事選を分析してるチームは互角と見ている、市民政党若葉の候補ならと投票して下さる方は増えているものの、高齢者中心に馴染の薄い政党の候補者を選ばない人も少なくないだろうとね。」
「Citoyenの行商チームが大きな売り上げを出してるから、もう少し有利かと思ってたわ、そうなると番組で宣伝出来ないのが残念ね、公平性に欠くから仕方無いのだけど。」
「代わりに知事選応援イベントで笑顔を振りまいてくれよ、番組を見てる人達は、俺達が苗川だけでなく県全体を応援してると分かって下さっていると思うんだ。」
「知事選は市町村の選挙とは規模が違います、効率良く応援出来るでしょうか?」
「そこはボランティア党員任せだが、誰でも無料で党員になれるという利点を活かして党員を増やしている、ネット環境の無い人向けの紙に書いて貰う党員登録、まあ党を支持しますという宣言でしかないのだが、それでも無理の無い拡大に繋がっていると思うよ。」
「紙での新規登録者はテレビで党の事を知った人でしょうね。
行商チームからは、地方支部が用意した会場へ新作野良着を買いに来て初めてCitoyenブランドが市民政党若葉のグッズだと知った人でも、その事に抵抗を感じる人はいないし、その場で党員登録する人も少なくないと報告に有ったわ、それなのに互角だとここから大変そうね。
今更、行商チームの増強は出来ないでしょ、商品の生産が間に合ってないし。」
「新作野良着はそんなに売れてるのか?」
「ええ、様々な工夫を凝らして有って、年齢に関係なく受け入れられているのよ。
企画した人の、田舎でもお洒落に暮らす、農作業にも潤いをというコンセプトが成功したみたいね。」
「確かに、ドライブしてても目にするな。」
「ゴキブリは1匹見つけたら100匹いるでしょ、そういうレベルなのよ。」
「その例えは他で使うなよ、でも、それだけ広まり始めてるということか。」
「色違いで二着目三着目とかね、サイズに工夫が有って普段Sサイズ着てる人がLサイズをお洒落に着こなすとか、女子高生の間でも広がってるのよ。」
「野良着が?」
「紐で調節しフォルムを変えられるタイプが人気、着心地の良さとファッション性を生み出していてね。
彼女達は田舎の文化として個性を出して広めたいと話していたわ、ひらひらした服で田圃道を歩きたいとは思わないし、お婆ちゃんと色違いをシェア出来るとこが面白いとか。」
「そこから知事選へ繋げて行けるのかな?」
「商品は、党のグッズだから、党の主張とか印刷したものを同封しているでしょ。
それが真面目に受け止められてるみたい、選挙権を得たばかりだという子達からも、市民政党若葉の候補に一票入れますと言って貰えてるの。
知事候補がどんな人物かは分からなくても、素敵なグッズを提供する党の候補というのは一つの判断材料になるのね。」
「そうだな、対立候補だって極悪非道な人ではない人間的にも優れた人だろうから、そんなレベルでも差を付けないと勝てないのだろうな。」
「弱気なの?」
「作田さんが知事になるのがこの県の再生には一番良いと思う、でも、万が一の場合、対立候補は政党の推薦は受けているが無所属、先々協力関係を築いて行くべきという一面が有って、それは作田さんも考えておられるんだ。」
「対立候補を誹謗中傷する様な選挙運動は一切禁止、の根拠なのですね。」
「理想は作田さんを知事に、対立候補の方には副知事などの要職について頂くことで県内の有権者を一つにまとめる、まあ簡単な事ではないだろうね。」
「県内に対立を生み出さす事無く…、でもトラブルの元にはなりそうです。」
「大差での勝利でない限り、何事につけ反対する人は出て来るだろう、その人達に納得して貰い効率の良い県政を進めて行く為なんだ。
圧勝出来たら気にする必要はないけど、対立候補と手を組めるのならそれが一番健全かも知れないだろ。」
「そうですね、そこまで考えて下さっている作田さんには是非当選して頂きたいです。」
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脱東京-10 [シトワイヤン-11]

苗川を中心とした一か月を超す俺達の旅は、知事選投票日に終了。
選挙結果は清香の実家で待つことに、柚木社長とも久しぶりだ。

「和馬は選挙戦に貢献出来たのか?」
「どうですかね、清香と愛華の客寄せ効果は大きかったみたいですが。」
「お父さま、和馬が目立つと、瀬田和馬と書かれた無効票が増えるという話が出たのですよ。」
「はは、有りそうな話だな、どこかの雑誌では総理大臣になって欲しい人というアンケート結果で九位にランクインしたそうじゃないか。」
「あれは、調査対象に偏りが有ると思います、でも、ああいったアンケート結果に影響される人もいるのでしょうね。」
「それで、君達の脱東京計画はどうなんだ。」
「脱東京というより苗川市を中心に周りの市町村を巻き込んでの活性化を考えています。」
「活性化か、すでに盛り上がってるみたいだが。」
「まだまだです、本間市長の考えを我々が後押しすることで、他の市町村のお手本になるようなレベルに、作田さんが知事に当選すれば、それがスムーズに行くと思います。」
「清香が考えている投資も、その一部ということか?」
「はい、本間市長が進めておられる企業誘致との相乗効果を見越しています。
ログハウス村で作業が進んで行く光景に、人は興味を持ちました。
何もない所に村が出来て行くのは楽しいと、番組では週一回のコーナーとして紹介していますが、評判は良いですよ。
同じことを苗川市でも、都市計画を発表し、町が綺麗になっていく姿をゆっくり見せて行きます。
生まれ変わる町を見て貰うことで親しみを覚えて頂けると考えています。」
「土地区画整理事業を進めるということなのかな?」
「はい、地権者との協議を始めています、苗川市土地区画整理組合の組合長になった人は力の有る人なので話が早いそうです、地権者に市民政党の党員が多い事も有りますが。
宅地造成と並行して、駅周辺の大胆な再開発、田舎の町を大改造しながら企業誘致を進めて行きます。
魅力ある町にする計画が有れば企業誘致も進め易いと。」
「だろうな、廃れて行く町には、大胆な投資が出来ない。」
「はい、中途半端な投資では結果が出にくいと思います。
住みたくなる地方都市を大都市から離れた位置に形作る意味は大きいですが難しい、でも、本間市長なら実現出来ます。」
「地方の人口減少に歯止めを掛かる切っ掛けになるのかな?」
「まずは、人口三万の地方都市に注目を集め続けることで、何とかしたいです。」

『脱東京』は本間市長の企業誘致次第となる、ただ他の事業は地方から地方への移住になる可能性を否定できない、田舎暮らしの良さを知る人に安定した職を用意するという一面が有るからだ。
それでも、地方都市が生まれ変わるのなら面白い。
近い将来、苗川を自分達の拠点にというのには愛華も賛成している。
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