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近衛予備隊-401 [高校生バトル-83]

 大学祭の核となっている学生達には我が国の文化活動を盛んにしたいと言う想いが有り、それがプログラムにも反映されている。
 例えば各地の学校でのミニコンサートやお絵かき会、収益は望めないのだが交通費自腹でも、学生達が協力して運営してくれている。
 楽器の生演奏を初めて聴く子もいるそうで、自分で演奏してみたいと思う子も…。

「詩織、中学生にも楽器に触れる機会を作って行きたいですね。」
「高校生は充分なの?」
「充分と言いますか…、近衛予備隊マーチングバンドは五編成に増えましたがイベントの報酬などで楽器を更新しているそうです。
 古い楽器は新人の手に渡るのですが、既に何人もの手を渡って来た物も有ります。
 楽器と共にその楽器を使って来た先輩からのメッセージが書かれたノートが手渡されますので雑には扱えません。
 ノートの中にはその楽器を寄付してくれた日本人からのメッセージが張られたものも有りまして。」
「大切に使っていれば長く使えるから、数としては足りて来たのね。」
「働いた給料で購入する子もいます。
 ただ楽器は大切に扱っていても壊れることが有ります、元々は中古ばかりでしたのでサックスなど構造が複雑な楽器では少なからず、自分の預かった楽器が壊れ落ち込む子は可哀そうでした。」
「修理は?」
「以前は知識が無くて簡単に修理出来なかったのです。」
「今も?」
「時間は掛かりましたが、遠江の楽器メーカー担当者協力の下、数名が修理技術を覚え簡単な修理は出来るようになりました。
 今も少しずつ古い楽器の寄付を頂いていますので、中学生に渡す体制は整えられます。
 どこの中学校からにするか検討する必要は有りますが。」
「壊れても大丈夫なのね。」
「ただ、修理出来ないまま眠ってる楽器も有りまして、修理担当者のスキルアップを図れたらとも。」
「出来そうなの?」
「遠江王国への留学となります。
 多額の費用を必要とはしますが、身に付けた技術を仲間に伝えてくれればと。」
「大学生?」
「ええ、近衛予備隊マーチングバンドで活動しながら修理を担当して来た人で、楽器販売部門の店員として働いています。」
「ジョンとしては留学では無く社員研修の一環として送り出したいのね?」
「はい、公費留学は費用負担に対する反発が有りそうです。
 また、公費留学の前例を作った場合、一人だけに止められなくなる可能性が有りまして。」
「そうね、楽器メーカーとの繋がりは有るから大丈夫だと思うわ。
 ただ、修理部門だと英語では難しいかも知れないわよ。」
「彼の顧客は日本人が多いので日本語の学習をしてはいるのですが、専門用語とかは難しいのでしょうね。」
「それは大丈夫よ、専門用語を覚えれば良いだけだから、真面目に取り組んでいたら何度でも出て来る単語でしょ。」
「あっ、専門外の人にとっては難しくても、その分野を学ぶ人にとっては関係無いのですね。」
「むしろそれ以外で苦労するかも。
 まあ遠江王国内の工場なら、うちのスタッフに動いて貰うわ。
 そうね、ついでに使わなくなった楽器を寄付して貰うキャンペーンをもう一度展開して、中学生による吹奏楽団を作って行きましょうか。」
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近衛予備隊-402 [高校生バトル-83]

 大学祭実行委員会のメンバーは地道に成果を上げている。

「ジョン、ミュージカルは大成功だったけど、ミニコンサートでも地味に稼いでいるのね。」
「ああ、観光客が足を運んでくれてるからな、ミニとは言えないイベントも増えつつ有るのだが、その辺りは実行委員会の作戦が成功しているよ。」
「作戦?」
「演奏技術はプロに及ばなくても、色々付加価値を加えているんだ。
 カフェでの演奏は、そのカフェの雰囲気に合わせダンスを見せ、花のコンサートではステージだけでなく客席も花で一杯にし花にまつわる明るい曲ばかりを演奏、その模様をYouTubeに上げた所、生で見たいと問い合わせが殺到し、今は三回先まで予約で満席になってるそうだよ。」
「花で一杯だとかなり費用が掛かるのでしょ?」
「その分チケットが高くても普通に売れるのだから問題ないし、花関係で農学部や実習農場を潤しているんだ、来場者は素朴な花飾りを貰ってご満悦だとか。」
「演奏の未熟さを演出でカバーしてるのね。」
「その演奏も大勢の前での場数を踏んで着実に良くなってる、本番の演奏で鍛えられているとかでね。」
「そうか、演奏家は百回の練習より一回の本番で伸びると聞いたことが有るわ。
 何よりも聴衆の存在が演奏家にとって大切なのね。」
「元々芸術学部は働きながら演奏活動をしているアマチュアだと認識されている、アマチュアの大学生にしては上手だと感じて貰えれば良いだろ。
 大学祭実行委員会は企画の段階からその辺りを意識し、大学祭参加登録者と調整しているそうだ。」
「登録者はかなりの人数になってると聞いたけど忙し過ぎるとかないのかしら?」
「彼らにとっては実習の一環だからな、人が足りなければ高校と交渉して実習生を受け入れたりもしている、委員会の仕事をしながら多くを実践的に学んでいるのだよ。
 演奏者に成り代わってあちこちと交渉しイベントを成功させるのは、やりがいの有る仕事だそうだ。」
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近衛予備隊-403 [高校生バトル-83]

「大学祭は芸術学部の活動だけでは無いのでしょ。」
「ああ、教育学部の理科教育科と工学部が協力して、子どもを楽しませる実験を絡めた企画なども進めているよ、一つ一つが小規模なこともあって目立ってはいないが。」
「目立つ活動だから祭り、大学祭だと思っていたのだけど。」
「大学祭、一つの目的は大学の存在を広く知って貰うことだけど、必ずしも派手である必要はないんだ、小規模でも飾りつけに拘って祭りっぽくしてるが内容が大切でね。
 コンサートでは敢えて裏方を所属学部学科付きで紹介し大学祭らしさを演出してるそうだが、小規模なイベントでは、具体的にどんな研究をし何を学んでいると言った話も分かり易く簡単にしている。
 大人達も大学のことは分かって無いから興味を持って聞いてくれるのだとか、内容によっては自分達の仕事とも関係するからな。」
「大学祭を通して大人達との交流もしているのね。」
「少しずつだけどな、彼らは自分達の大学祭そのものを研究対象とし始めていて、我が国に大学が置かれた意味から見直し始めているよ、大統領に質問をして来るぐらいだから間違いない。
 そもそも海外では大学祭なるものを行っていない大学の方が多いそうだよ。」
「みたいね、切っ掛けは日本の留学生に教えられて、でしょ?」
「ああ、彼らが頼もしいのは、それを単に真似ようとせず、大学祭を通して国民に大学のことを知って貰う場にしようと考えてくれたことだ。
 大学祭の話が出てから自分も日本人スタッフに教えて貰ったのだが、日本では学生のお遊びばかりが目立つ大学が多いそうでね。」
「日本の人達は大学祭をどう捉えているのかしら?」
「どうだろうな、大学進学は就職に対して有利に、と言うことらしいが、就職前にのんびり暮らす場と考えてる学生もいるそうだから。」
「我が国でも大学生の方が就職に対して有利になって行くのかしら?」
「その可能性は有る、既に高校生を雇いたい雇用主は多いからな。
 これから、大学の認知度が上がれば…、う~ん、考えてみると微妙だな、既に就職してる子が多いし、芸術学部は趣味的要素が強く、教育学部は仕事の延長、工学部はすでに企業の傘下となってるだろ、就職とはあまり関係ないのかも。」
「大学祭実行委員会のメンバーはどうなの?」
「彼らが一般企業に就職すれば幹部候補だろうが、既にうちの会社が声を掛けてるからな。」
「大学祭実行委員会に入る様な子は、就職がとても有利なのね。」
「そうなるのか…、彼らに有利とかそんな意識は無いと思うが、先々のことは何とも言えないな。」
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近衛予備隊-404 [高校生バトル-83]

 当初は想定していなかったのだが、大学祭実行委員会は学生全体をまとめる組織としても機能し始めている。
 大学祭だけに留まらず学生達のあらゆる活動に対する支援を目指しての活動は、大学運営チームとは異なる視点からのもので学生にとって心強いと思う。
 それだけに留まらず…。

「詩織、大学祭実行委員会から感謝のメッセージが届いていましたが、何かされたのですか?」
「彼らが頑張ってるから私のお小遣いから少し送金したのよ。
 彼らに託せば学生達の為に間違いなく活かしてくれるでしょ。」
「ですね、組織が拡大すると私利私欲に走る人が現れる確率が上がるそうですが、犯罪研究室ではその辺りの心理と不正行為を犯させない環境を考えていまして、大学祭実行委員会はその研究の場ともなっているのです、間違いは無いでしょう。」
「大学生らしい研究なのかしら?」
「ええ、彼らの中には不正行為の仕方を考えてる人もいるのです。」
「不正の方法が解れば、その対策を立て易いということかしら?」
「ええ、国の機関も少し気が緩んで来ていますので彼らにチェックをお願いしました。」
「大規模に?」
「はい、行政システムなどを研究している大学生にも協力して貰うことになりますが、その取りまとめは大学祭実行委員会に委ねることにしました。
 警察とは違う視点で見てくれると思います。」
「お祭りから随分離れることになるけど。」
「名称は兎も角、学生の為の組織として機能していますので安心なのです、全員が近衛予備隊の隊員ですので。
 取り敢えず、直ぐにバレる様な不正行為をしている人に向けて、直ちに名乗り出れば減刑するとの通達を出してからの予定で準備して貰っています。」
「バレない自信の有る人との対決になるのね。」
「少額だと見つけにくいかもですが、それなりの額を胡麻化して来た人を見つけ出したいですね。」
「そんなに不正が横行しているの?」
「いえ、表面化はしていませんが、もし不正行為を胡麻化し切れてる人がいたら、その能力は活かされるべきだと思いませんか?」
「刑務所でのただ働きは頭脳労働に?」
「本人次第です、最もシステム上、不正は行われていないことになっていますので、本当にないかも知れません。」
「不正をしている人の勝ちというパターンはどう?」
「犯罪研究室は色々考えていまして、まずは簡単な調査を行い不正行為が見つからなかったと発表しますが、それを受けて犯罪者の気が緩んだタイミングからが本番だそうです。
 犯罪研究室に勝ったと思ったら、それを誰かに話したくなると思いませんか?」
「そうね、でもそこで話したら小物だわ。」
「国の機関に肝の据わった大物の犯罪者が存在する確率は極めて低いですよ。
 もしいたら、大学生達がその処遇を考えるですが。」
「学生が考えるの?」
「ええ、それも含めての実習です。」
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近衛予備隊-405 [高校生バトル-83]

「大学生の実習は高校生とはレベルが違うのかしら?」
「ええ、高校で学び経験したことの上を研究していますので。
 政府から大学祭実行委員会経由で研究を依頼してることも幾つか有るのですよ。
 大学へ国費からの助成に理由を付ける意味合いも有りますが、研究機関としての位置づけを明確にしたいと考えてのことです。」
「成果はどう?」
「直ぐに結果の出ることでは有りません。
 例えば、今までの水害対策は対症療法的なもので根本解決には程遠いものでしたが、彼らは河川改修をすることによって被害を抑えられると考えています。
 ただ、予算に限りが有るので、最低限の予算で最大限の効果をと考え設計してくれています。
 水害の恐れが有る地域は複数有りますが、まずは一か所目の工事に取り掛かる所です。」
「予算が組めたのね。」
「水害抑制事業費としましたが、直接今の生活に関係することでなく、保険的な考えの出来ない国民性ですので理解されているのかどうか分かりません。
 しかし、ここまで大統領として大きな間違いを犯していないと評価されていますので。」
「独裁者だものね。」
「ええ、今まで独裁的に進めて来た義務教育などの事業が結果を出していますので、国軍の増強に取り掛かろうと考えています。」
「いよいよ侵略?」
「いえ、子沢山な状況で子どもの死亡率が大きく減っています。
 それ自体は良いことなのですが、今後無策では雇用状況の悪化は避けられません。
 軍事費は有る程度必要だと考えられていますので、軍人を増やしても問題ないと考えています。」
「周辺国との関係は良好なのでしょ?」
「ええ、良好が故に我が国だけ軍人が少ないと言うのも外交的な問題になるのです。
 現実的な話しでは無いのですが、外敵に対して周辺国と協力して対応するとの合意が有りまして。」
「本格的に武装を強化した国に攻め込まれても大丈夫なの?」
「簡単に占領されるでしょうが、今時何の理由もなく平和な国を侵略してどれだけのメリットが有るのか分かりません。
 まあ、国軍の増強は武力とは関係有りませんので。」
「兵士を増やすのに?」
「表向きは兵士ですが、彼らの訓練は水害対策の工事が中心になります。
 敵は自然の猛威なのですよ。」
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近衛予備隊-406 [高校生バトル-83]

「成程、軍事費を使って水害対策を押し進めるのね。」
「ええ、国軍を最強の土木工事部隊にしたいです。
 まだ荒れた土地が多いですから、そこを造り変えて行くことを国軍の訓練とします。」
「兵士はどう思うのかしら?」
「土木工事は暫く前までの人力頼りでは有りませんので受け入れてくれると思います、重機の扱いに慣れ現場で統率の取れた行動が取れることが一つの目標、工事で慣れれば災害復旧活動の効率も上がると思っています。」
「水害対策工事費としては充分な予算を取れなくても、軍事費としてなら問題無いのね。」
「はい、そこでも大学生に協力して貰います。
 大学生の頭脳と国軍の力が合わされば大工事も安心して進められます。
 新たに整備した土地で新たな産業を興すことも考えて貰えると思っています。」
「独裁者ジョンの命令とあれば誰も逆らえないのね。」
「別に国軍の兵士も大学生も自由ですから、無理して大統領の方針に従う必要はないです。
 ただ、大統領の仲間でいた方が楽しいと思ってくれてるみたいで。」
「そっか、それで仲間になりたくないと言ってた反政府組織は壊滅出来たの?」
「いえ、違法行為をしないで吠えてるだけの連中は放置して有ります、数は随分減りましたが。」
「一気に弾圧した方が独裁者らしいのに。」
「いえいえ、愛される独裁者を目指していますので。
 自分としては、論理的に破綻してる彼らが、この先どうなって行くのかに興味が有りまして。」
「社会学的な視点なのね、それでどうなりそう?」
「反政府組織でリーダーをしている人の子でも頭の良い子は親から離れています、高校生になった子もいるのですよ。」
「色々な意味で大丈夫?」
「個々の近況が伝わって来ませんので問題無く学習に取り組んでいるのでしょう。」
「親が刑務所で働いてる子もいるのよね?」
「ええ、高校生ぐらいだと、その方が伸び伸びと暮らせると思います。
 親から論理の破綻したイデオロギーを聞かされてるよりはマシだと思いませんか?」
「そうね、うちの高校生達は親が犯罪者だろうが何だろうが何の躊躇いもなく接するものね、それも近衛予備隊の隊長だったジョンの力かしら?」
「いえいえ、ひとえに詩織の教えによる所ですよ。」
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近衛予備隊-407 [高校生バトル-83]

 大学生の研究課題には共和制と王政の比較と言ったものも有るが、国政に関わることなので学部に関係なく意見が交わされているそうだ。
 共和国内に王国が存在する体制の評価は彼らの間でも分かれる所だが、大統領が王家の人間なので、既に王国と呼んでもおかしくないとの意見も。
 大企業のトップでも有る王国の女王と、その部下でも有る共和国の大統領が極めて平和的に統治する国となっているから、彼らから国の体制に対する批判は聞こえて来ない。
 そんな状況でも国が問題なく連綿と続いて行くには後継者の問題が有る。
 詩織さまも自分もまだ若いので、それに関して気に掛ける人は少ないが、我々は王家の血筋を否定していて、自分の子ども達は王家の一員ですらない。
 アビュニス王国関連でシェリルが王家の一員となっているので今の王家は三人、何か起きたら遠江王家から王を迎えると言う話は有るが、それに対して違和感は拭い去れない。
 我々の王家は誰もが認める能力有る人を迎え入れる必要が有り、そのことは大学生達にも語って来たのだが…。

「大学生達は王家に次ぐ爵位を持ったグループの形成を考えています、悪くは無いのですが歴史的に見て、それが先々腐敗や混乱の原因になりはしないかと、詩織はどう思います?」
「王家に招き入れられる人材かどうか見極めるには良いのかもね。
 爵位による階級付けは無しにして平等に…、貴族と呼ぶのかしら? 
 そのグループに相応しい名称が思い浮かばないのだけど。」
「我々の王家に入る為のステップになるのなら、人々に誤解を与えたくないですものね。
 今、王家を支えてくれてるリーダー達に対して一律に王家の手前となる称号を用意するのか、そこで競い合って貰うのかは難しいと大学生も話していました。」
「そうね、野心家が国のトップを目指すと国を良からぬ方向へ導きかねないし、私利私欲に走られてもね、ジョンの様なバランスの取れた純粋な人を見つけるのは…、すでに実績を上げてくれてる人達よりも、若い世代から探したいかも。
 大学生達には王族を育てるという発想は無いのかしら?」
「そこが一番難しいのかも知れません。
 自分の場合、どさくさ紛れに村長となり王子になりましたが、国が安定して来た今、我々が実績の無い子を王家の一員にしますと言っても受け入れて貰えるのかどうか。
 勿論、我々の考えているシステムでは無能な人が国王になることは有り得ませんが。」
「国王や大統領に関わらず、リーダーを育てる環境は必要よね、今活躍してくれてる人を含め先を見据えた組織は不可欠かも。」
「各組織のリーダーに横の繋がりは希薄ですので、その溝も埋められたらと思いますが…、取り敢えず現役リーダーの皆さんには大学に籍を置いて頂くのはどうでしょうか?」
「そうね、後を大学生に任せてみるのも面白いかも、少なくとも国の根幹に関わることを老人に託すことだけはしたくないわ。」
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近衛予備隊-408 [高校生バトル-83]

 各組織のリーダーに、敢えて大学に籍を置いて貰うのには大きな意味が有る。
 大学でこの国の将来像を考えて貰うのだが、参加者全員が大学生という同じ立場で語り合うことにより個々の考え方が出て来ると思うからだ。
 若者に対してどの様な態度を取る人物なのか分かれば、今後の人事で参考になる。
 参加を呼び掛けて応えない人は問題外とし、各組織で活躍している人と大学生によって構成される我が国の賢人会議、その場で次期王族候補に関する話し合いをして貰えれば良いだろう。

「シャルロット、国の事業を始めとした様々な分野で影響を与えて来た詩織近衛隊は、その活動の引継ぎを進め、本来の役目、このエリアに於ける経済活動の活性化、すなわち我々の企業活動に専念して貰うことになるよ。」
「当初の予定通りとは言え、随分掛かったわね。
 それだけ教育制度が不十分で優秀な人材が乏しかったのね。」
「そうだな、近衛予備隊が成長して支えている職場も多く、年上で頭の悪い部下相手に頑張ってくれてるよ。」
「賢人会議には、そんな近衛予備隊の人にも参加して貰うの?」
「準備を進めてる人達は、大学生に成れる資格を持つ近衛予備隊や高校生と、特別に大学生資格を与える各部署で優秀な成績を上げているリーダー達から、人数制限なしに賢人会議の下部組織を作る所から始めようと考えている。
 そこから話し合いや選挙を行い賢人会議を構成するメンバーを決めるそうだよ。」
「時間が掛かりそうね。」
「だが、肩書だけで選ばれる様な賢人会議よりは良い組織になると思う、下部組織にも賢人会議で話し合われている内容が届く様にするからな。」
「肩書だけで選ばれる様な賢人会議も有るのね。」
「ああ、そんなのは保守的な考えしか出て来ないと思わないか?」
「余程有能な人で無いと建設的な意見は出せないかしら。」
「建設的な意見が出ても他の参加者に潰されかねないと思う、そんな賢人会議なら無意味だと、担当者とも話し合ってるんだ。」
「賢人会議に大統領は参加するの?」
「彼らの意見を左右しかねないから直接参加することは無いが、賢人会議メンバーと話し合う時間は取りたいね、この国を引っ張ってくれてる人達が国の将来についてどう考えているのかは知っておきたいだろ。」
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近衛予備隊-409 [高校生バトル-83]

 当初は寄せ集めで形作られた大学も学生達の頑張りで、それらしい物になりつつある。
 遠江大学メンバーから助言を受け試行錯誤して来た結果だが、大学運営を担う事務局と学生組織で有る大学祭実行委員会は、大学を成長させる両輪として互いに尊重し合い大学組織を強固なものに。
 こちらとしては賢人会議などの無理難題を押し付けて来た訳だが、それらが無理難題と受け止められることはなく、むしろ新たな課題を与えられることが喜びだと言わんばかりに取り組んで来てくれた。
 工学部の強化と言う当初からの課題は残っているが、パソコンが有れば研究も学習も出来る分野を中心に活動は活発、明日の教育を考える教育学部とも積極的に連携を取ってくれている様だ。

「ジョン、大学で留学生と話してたら…、私達の大学はかなり特殊なのね。」
「ああ、シャルロットが教育学部の学生になるのに試験は無かっただろ。」
「ええ、大統領夫人だから簡単に済ませてくれたのかも知れないけど。」
「いや、近衛予備隊で実績を上げていれば誰でも簡単に大学生になれる。
 自分も大統領職を退いたら教育学部の学生になろうと思ってるよ。」
「かなり先のことになりそうだけど、大学生になる資格は充分過ぎる程有るものね。
 日本からの留学生は大学入試が大変だったとかで、苦労して合格した大学は悪く無かったのだけど、ここへ留学して来て考えさせられてるそうよ。」
「そんな話は色々聞いている、本当に学ぶ気持ち研究する気持ちが有れば、大学のレベルに拘り過ぎる必要はなかったのだろう、ただ、日本で優良企業への就職を考えたら有名大学の方が有利なのだとか。
 我が国に大学は一つしかないし、学生の多くは既に就職しているから、彼らの価値観とは随分違うのだろうな。」
「義務教育課程に取り組む大人がいるぐらい教育が遅れていたのだけど、大学生は皆総合力が高くて、友達になった留学生は近衛予備隊、高等学校の教育内容に興味が有ると話してたわ、教官の人数が少ないこともね。」
「先輩が導いているからな、後輩に教えることによって自身の成長に繋がり、実習を通して社会を知り成長する、特別なシステムでは無いのだがな。」
「それは大統領からの、格好の良い大人になって欲しい、との言葉がどの学校でも重視され浸透した結果でも有ると思うの。
 人として格好の悪い行いをすると友達から窘められる、学校がそんな雰囲気になってるから、子ども達は学力に関係なく素敵に育ってるのよ。」
「そこは詩織さまのお蔭で学力が低くてもそれなりの収入になる仕事が有るからな。
 取り敢えず衣食住に関して貧困層の生活を改善して来た結果だ。」
「今後、要支援世帯は減らせそうなの?」
「働けない人に対しては支援を継続して行くことになり、今以上に減らすのは難しいだろう。
 ただ、働けていない人にも社会参加のチャンスを作って行きたいと、学生達は考えているよ。
 働けない理由を調査し直して、働く意思が有ったら出来る仕事を作り出して行こうとね。」
「ハンディを持つ人にも出来る仕事をと言うこと?」
「ああ、それはこの先人口が増えても失業率を上げないことを考えての取り組みでも有って、様々な可能性を考えていてくれるよ。」
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近衛予備隊-410 [高校生バトル-83]

「新たな仕事?」
「ハンディを持った人達には働き方の見直しを含めて検討してくれてるよ。
 一日一時間、観光客で賑わう所のチエックをし汚れなどを報告する仕事とか、報告を受けて掃除したり修理したりする仕事、ハンディの有る人には出来る事だけして貰えば良い。
 勿論大した収入にはならないが、支援を受けてるだけの生活よりは良いだろ。
 手間もコストも掛かるが、観光客は大きな利益をもたらしてくれている、そんな観光客に気持ち良く過ごして貰うには、こういった地道な活動をもっとして良いと思ってる。」
「そうね、観光業界で伸びてる所にはリピーターを増やすべく明日への投資を促しているのでしょ、観光業に携わる人達がその意味を理解してくれると良いわね。
 でも、国民の意識を、犯罪が多発し治安の悪かった国が人に優しい国に成る、そんな方向に向かわせては来たけどまだまだだわ。」
「ハンディを持つ人に優しい社会になるまでの道のりは長いだろうが、教育活動を続けていれば少しずつでも改善されて行くだろう。
 学生達は我が国を様々な意味で誇れる国にしたいと考えているからな。」
「誇れる国が一つのテーマなのかしら?」
「少なくとも彼らは自分が大金持ちになるとか考えていない。
 足るを知る、詩織さまの教えを突き詰めて考えた結果、海外の贅沢しても使い切れない資産を持っていても更に私腹を肥やすことにただただ貪欲な人に対して、犯罪者だと思う様になってるよ。
 彼らは事業を成功させ利益を上げることを考えているが、その利益は自身の為でなく社会の為にと。
 大人と違って純粋なんだ。」
「そんな純粋な人達が国を支えてくれたら安心だけど、それも、王家が私財を国民の為に使って来たからでしょうね。」
「シャルロットはもっとお金が欲しかったとか?」
「まさか、ジョンが大統領として恥ずかしい暮らしをしているのなら兎も角、私達は充分贅沢な暮らしをしているわ。
 キラキラ光る石を見せびらかす様な悪趣味ではないのだから。
 色々やって来たから収入は多いけど、孤児院とかは適度にお金が掛かるでしょ。」
「まあな、だが彼らは稼げる実習に熱心だから今の支援額のままで良いそうだ。
 余裕が有るから次は学校向けの楽器購入に充てようか?」
「それも明日への投資なのよね。
 中学生で組んだブラスバンドチームは思っていたより上手だったわ、そして、その演奏を生で聴けることに意義が有るのよね。」
「ああ、プロの演奏よりは当然劣るが、ラジオから流れる音楽とは違うからな。」
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