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政権-01 [シトワイヤン-14]

衆議院解散を受けての、市民政党若葉党首、鷹上新之助の記者会見には多くの記者が詰めかけた。
国会ではまだ小さな存在に過ぎない政党だが、統一地方選挙の圧勝で無視出来ない存在となりつつ有る。
定刻通りに始まった会見、党首の両脇には愛華と清香が武道の道着をモチーフにしたオリジナルの衣装で花を添える。
党首の話に合わせて表情を変えてるからか、カメラマンの意識は党首より二人の美女に行きがちになっている様だ。
質疑を終え最後はフォトセッションで締めくくられたので自分の勘違いでは無かったと思う。
その後は党関係者として自分も記者に囲まれコメントを求められた。
会場が落ち着いて。

「愛華、記者会見の最後がフォトセッションとは思ってもいなかったよ。」
「会見中は私達離れて座ってたでしょ、それでカメラマンから強い要望が有ったの、政策面での争点が少ない選挙だから、こちらとしてもイメージが大切なのは分かっている、ということで急遽ね、見ててどうだった?」
「決意、決断がキーワードになるのかな、二人とも恰好良くてとても素敵だった、鷹上党首だけだったら新聞の取り上げ方が小さくなりかねない所に、良いインパクトを与えられたと思うよ、しかも只の飾り物でなく、党の発起人でも有る訳だからな。」
「一応、鷹上党首に向けられた質問は自分でも応じられるか考えていたのよ。」
「市民政党の強みは、そんな人がやたら多いということだよな、俺は面倒になったら党のサイトを見て下さい、で済ますけど。」
「ふふ、手抜きはイメージを悪くするわよ。
ねえ、鷹上党首に呼ばれているのでしょ、そろそろ行っても良いんじゃない?」
「ああ。」

鷹上党首達は記者会見の反応を確認している所だった。
「おお、和馬くんお疲れ様、しつこい記者はいなかったかね?」
「残念ながら。
記者を洗脳して党の言いなりにしようというミッションを考えていたのですが、近づいて来るのが党のファンばかりで達成出来ませんでした。
皆さんの興味は、市民政党若葉私設応援団や『瀬田和馬が十万円で購入した土地』の現状とかなのですよ。
世紀の政権交代を楽しみにしていると話して下さる方もいましたが。」
「SNSの反響は、清香くんと愛華くんがカッコ良すぎる、とのコメントに負け気味だが、党を支持する声は多い、私設応援団の面々はブログで熱く語ってくれてるよ。」
「それらがすべて票に結び付けば良いのですが。」
「ああ、浮かれ気味なのは有権者の一部に過ぎない、和馬くんも頼むよ。」
「勿論ですが、テレビ番組では公平性の観点から、選挙終了まで選挙関係の発言は控え目になります。
まあ、自分達から市民政党を連想して下さる方は多そうですので、発言に気を付けながら目立つ様にはして行きますが。」
「そうだったな、私設応援団へは協力への感謝と共に公職選挙法関係での注意事項を伝えさせて貰ってるよ。
心強いのは、応援団の皆さんが雰囲気に流されてる人では無く、党員として学習した上での応援ということ、だから尚更、選挙違反はゼロにしたいんだ。」
「ですね、自分達のチャンネルからも発信して行きます。」

それから暫く選挙戦の話をした。
我々にとって大きな国政選挙は初めてのことだ。
数千票の得票で当選する地方選挙とは選挙運動も大きく違って来る。
その辺りの作戦を確認したのだが、それで充分なのかどうかは分からない。
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政権-02 [シトワイヤン-14]

翌日の朝刊は衆参同日選挙決定の話題が大きく紙面を埋めた。
そんな中、鷹上党首、愛華、清香のスリーショットは人目を引く。
康太は…。

「なあ和馬、これって一つ間違えたらコスプレだよな。」
「まあ、道着をモチーフにした衣装を党首の記者会見で披露だから違和感を感じた人はいるだろう。
でも、戦うことをイメージ、日本風の衣装でと考えた結果だなんだ、彼女達は表情とかも研究して来たそうでね。
鷹上党首の全力を尽くして政権政党を目指す、という決意を後押し出来たのではないか、二人のここまで真剣な表情は初めてだよ。」
「それは否定出来ない、選挙には間に合わないがポスターにして売り出すべきかな。」
「清香が来たぞ、直接相談したら?」

ポスターは党首を含めた三人バージョンと愛華と二人のバージョンで進めることに、そして…。

「ミュージックビデオに出て欲しいという話が来ています。
撮影風景だけを先行で配信するのなら選挙期間に間に合うとのことで。」
「私設応援団の皆さんは、選挙戦がイメージ戦になることを分かってるからな。
清香、大学の方はどうするんだ?」
「ここが正念場です、大学をお休みしてでも、やれる事をやっておきたいです。」
「うん、その撮影風景を見たことによって、市民政党若葉に一票、となる可能性は否定出来ない、その積み重ねが議席に影響するだろう。
自分からは候補者に対する、友人知人推薦人からの紹介をもっと増やすことを提案しておいた。
色んなエピソードを知れば、大した情報の無い対立候補よりもより身近な存在になるだろ。
今回は政策面での対立が少ないのだから、徹底的にイメージ戦略を展開する必要が有るんだ。」
「党としての徹底した情報公開、党のシステムによって従来の政党とは大きく異なる党運営、ご老人の出馬が無く女性候補が多い、多くの著名人に応援されてる、康太はこれ以外に何か思い浮かびますか?」
「資金も公開してるし…、隠してるのは清香のスリーサイズくらいか?」
「それは誰も興味ないでしょう。」
「どうかな、まあ、改めて投票という事を考えてみたけど、政策や候補者の主張を客観的に判断出来る有権者は決して多くないと思うんだ、イギリスの国民投票によるEU離脱のごたごたは良い例じゃないのか。」
「だよな、ややこしい問題が有ったとは言え、EUとしては更なる離脱を防ぐ意味で甘く出来る訳がなく英国にとって不利益が生じる事は明白だったのに、離脱を国民が選択したのだからな。」
「民主主義の原則に則って公正な選挙でなければいけないとは思うが、主観的な判断で投票する人が多ければ、本来の意味をなしていない気がする。
市民政党若葉のシステムこそが民主主義の有るべき姿なのかも知れない、それを国政に生かし発展させて行く為の、タレント候補や私設応援団の応援による議席数確保は間違ってないと思うよ。」
「まあ、アンチの攻撃材料はそれぐらいだからな。」
「タレント候補の皆さんは、党システムを通して学ばれています、皆さんトーク力の有る頭の良い方ばかりですので、アンチに負けていませんね。」
「逆にアンチを利用して得票を伸ばすのかな。」
「ネット上での前哨戦といったところか…、公示日が待ち遠しいな。」
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政権-03 [シトワイヤン-14]

慌ただしい準備期間を経て衆参同日選挙の選挙戦が始まった。
その三日目の夜、俺達三人は各自ノートパソコンを見ながら。

「和馬、苗川の人達は選挙運動の意味がなくて盛り上がりに欠けてるみたいね。」
「まあそうだろうな、周辺の自治体でも市民政党の支持者が増えてる、あのエリアは熱心な党員がすでに党の支持層を拡大済、他党の支持者は隠れキリシタン状態になっていても不思議ではないだろう。」
「あの選挙区は一早く当確でしょう、問題は現職候補が強いところです。」
「大臣経験者だろ、うちの候補者達は現政権を大きく非難することなく、違いをアピールする方向だがどうだろうな。」
「例え勝てなくても圧勝だけはさせない、というのが目標です。」
「総理の対立候補が勝ったら面白いのにね。」
「そこまでは甘くない、彼女自身次回への布石と考え、市民政党の宣伝を第一に考えているそうだよ。」
「あっ、政党支持率のデータが入りました。」
「新聞社の?」
「はい、どういう調査なのか分かりませんが、市民政党の支持率が六十三%となっています。」
「国民の皆さんに政権交代に対する期待感が高まっているのかな。」
「そうね、その数字に対する反応も早いわ、解散は総理の判断ミスとの声が一気に、まあ、そうなんだけど。」
「大臣経験者からも…、これはコメントを求めた記者の誘導としても、完全に失言です。
この数字を見て、何とか挽回することを考えるべき人が…、自分達の総裁を批判して…、それがマイナスにしかならないと気付けないのでは…、総理も大変だったでしょう。」
「問題はその支持率が信頼出来る数字かどうか、それを見て有権者がどう動くかだね。」
「勢い良く圧勝して政権交代となれば面白いのだけど、準備は出来てるし。」
「支持率を受けて私設応援団の方々も盛り上がっています。
この数字に気を緩めず、更なる支持率アップ、選挙での圧勝を目指しましょう。
連呼しない運動スタイルを貫いて、騒音を発生させずに勝ちましょう。
市民の手によるガラス張りの政党による政治を実現させよう。
など、一人一人のフォロワー数を考えたら、影響力は大きいですね。」
「アンチは?」
「経験の少なさを指摘していますが、お年寄り議員の弊害を指摘されて沈黙。
ネット上のアンチが少ない事を考えると、支持率六十三%は間違っていないのかも知れません。」
「あっ、弱小野党、いよいよ消滅か、だって。」
「確かに野党の中には支持率ゼロ%となってる党が有ります。」
「僅かな支持者が市民政党に動いたのだろうが、調査の回答者が千人ぐらいなら、その中にその党を支持する人が一人もいなかったとしてもおかしくないな。
逆に、市民政党支持を意思表示したい人は積極的に回答するだろうから、高めになるかも知れない。」
「統計の仕組みを党員に示して、油断しないように、お願いするべきじゃないかしら、党本部にメールを送りましょうか?」
「そうだな、もう動いているかも知れないが念のために。」
「目標、支持率百%、目指せ一党独裁なんてコメントに、肯定的な意見が多いわ、支持率百%は無理だとしても、市民政党のシステムを新総理大臣が軽視しない限り、きめ細かな法整備を短期間で実現出来るとか。」
「実質的な国会を党システムが担うと、国会議員の役割も変わって行くだろうね、当分の間は参議院で過半数を取れないが、そこで野党がどう動くか楽しみだ…、何てことを考えるのは早過ぎるかな。」
「投票結果が出ないとね。」

今は期待と不安が入り混じっている、それなりの議席は確保出来ると確信しているが、党としては衆議院での過半数、圧勝を目指していて、政権を取れなかったら敗北だと考えてる人も少なくない。
投票結果が出るまで落ち着かない日々が続きそうだ。
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政権-04 [シトワイヤン-14]

投票日、党の用意した祝勝会場(仮)には早めに入り開票を待つ。

「和馬、Citoyenの売り上げは選挙期間中、予想以上に伸びたそうよ、党員はすでに購入済みという前提だったのに。」
「党員登録も増えました、どちらも党に対して応援したいという一つの意志表示ではないでしょうか。」
「うん、グッズの中では俺達発起人関連の商品がバカ売れなんだろ、製造会社を随分潤していると康太が自慢してた。」
「康太はまだなの?」
「社長は忙しいのさ、でももう直ぐ来ると思うよ。」
「党の発起人、四人が揃わないとね。」
「ああ、大学生の提案に大学関係者や企業人が賛同して設立され大きくなった政党、ということが強調されて来た。
俺達の出会いから党の立ち上げまでが、すでに伝説の如く語られていては、今日ぐらい発起人が揃わないとな。」

暫くして康太が荷物を手に。
「おう、康太、それは?」
「当選記念グッズのサンプル、当選したら何かと物入りだろ、沢山買って頂いて資金の足しにね。」
「もう製造済みなのか?」
「有る程度はね、明日から工場がフル稼働になると信じているよ。
えっと…、そろそろじゃないか。」

開票速報、一気に当確が報じられる。
暫くの間、衆議院も参議院も市民政党若葉の候補者ばかりが続く、予想通りだがやはり嬉しい。

「党員の多い選挙区はやはり楽勝だったわね。」
「選挙戦で盛り上がらなかった苗川も、今日はお祭り騒ぎだろうな。」
「それは他の選挙区次第じゃないの、彼ら的には投票前から当確同然の地元候補達より、政権を取れるかどうかが問題でしょ。」

「テレビ局の取材が入りますが宜しいですか?」
「はい、どうぞ。」

取材を受けたり選挙報道を見たりしながら、当確が出るのを待つ。
そして…。

「過半数、行きそうね。」
「ああ、政権交代確定だ、後はどこまで議席を伸ばすかだな。」
「皆さん集まり始めています。」
「鷹上党首、満面の笑みだな。」

『バンザーイ。』
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政権-05 [シトワイヤン-14]

新しい内閣は前政権の形を踏襲する形でスタート。
大臣に兼務はなく其々専門家があたる。
当たり前のことだが順番待ちで就任する様な名前だけの大臣ではない。
党の国会議員達はそれぞれのスタッフと共に各省庁へ割り振られ直ぐに動き始めた。
大臣の指示という形で各省庁の実情を確認、無理や無駄が無いか調べ組織改革の検討に入る。
市民政党若葉に賛同する協力的な官僚がいれば、既得権益を奪われるのではないかと怪しげな行動を取る者もいる、だが、すべては内閣総理大臣の指示によるもので有り、逆らうことは職務上出来ない。
悪事を暴く事が目的ではなく組織改革を目指しての事だが、公表すべきと感じられた事は積極的に公開された。
これと並行して官僚の天下り先も、そのメリット、デメリットの検証とともに官民の癒着が起きないのか確認作業を進める。
今まで第三者の目に触れることの少なかった、巨大組織は時間を掛けて無駄を減らし無理を無くして行く。
小さなことと思われるかも知れないが、例えば国会答弁の原稿、官僚が徹夜して作成するシステムからの脱却を目指し、大臣のスタッフが作成に関わる方向に。
もっとも今までの大臣とは違いその分野のプロ、副大臣以下のスタッフが支えれば官僚の作る原稿そのものが不要になるかも知れない。

さて、組織の見直しは法の見直しでも有る。
法の中にはその時々の事情によって、増改築を繰り返している内に迷路になってしまった建物のようなものも存在する。
必要性が減っているにも関わらず、法に則って無駄な作業をしていないかのチェックが進む。
党のシステムで党員の意見を聞き議員たちがまとめ、大臣が判断、最終判断は総理大臣となるが、そこはほとんど形だけで法案の審議へ進む。
国に係わる国家公務員組織改革は国民に好意的に受け止められた。
様々なトラブルが起きたのだが、隠す必要のない事ばかりだったのだ。

前政権から引き継ぐ形になった事業は基本的に継続、政権交代によって不利益を被る人を出したくないという思惑が有ったが、必要だと思える事業が多いので積極的に推進。
国は多額の借金を抱えているのだから、それを減らすべきとの意見も有る、だが多額の借金が有っても返済計画が健全なら問題ない、政権交代して緊縮財政にしたら、たちどころに財政破綻する、というのが党の判断だった。
予算全般を見直し改革を進めながら、借金は減らす方向だが無理はしない。
この方針を前に、野党第一党に転落した党は何も言えず、絶滅危惧種に指定されそうな泡沫野党の存在感は失われつつ有る。
各種法案は与党で有る市民政党若葉が過半数の議席を確保していない参議院でも順調に可決されて行く。
政府に対する圧倒的な支持率の前に野党は何も出来なくなっていたのだ。

自分達は、そんな政府関連の動きとは別に…。
話を政権交代が決まった頃に戻す。
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政権-06 [シトワイヤン-14]

選挙後の夏休み、俺達は海外メディアを含め沢山の取材依頼を受けた。
それは、とても個別には対処しきれない件数なので記者会見を開くことにしたのだが、勿論、会場は苗川だ。
記者達には苗川の豊かな自然と、大きく工事中の地方都市を見て頂く。
海外メディアの方々は記者会見後に夕食会へ招いた。
勿論それなりに思惑有ってのこと…。

「市民政党若葉では海外の皆さんとのネットワーク構築を考えています、政府の動きなど随時伝えて行きますし質問に答えて行きますが、皆さんから、世界で起こっている大きな出来事に対する自国民の反応などを教えて頂けたらと思っています、如何でしょうか。」
「それなら、前向きに考えたいが具体的には?」
「それぞれの事情が有るでしょうから簡単には行かないかも知れませんが、市民政党若葉のシステムを応用した世界規模の情報ネットワークシステムを立ち上げます。」
「記者会見の話題よりビッグニュースかも。」
「その立ち上げに我々が参加出来るということですか?」
「お願いします、このシステムは単なる情報交換だけでなく、貿易を通して各国の貧困問題と向き合うと言った事も考えています。」
「市民政党若葉としてのメリットは?」
「日本のイメージアップを試みつつ、貿易の中で利益を出して行きます。
「貿易会社を始めるのですか?」
「はい、ただ単に物を売り買いするだけでなく、国際交流を通して、例えば反日国がとんでもない話をでっち上げているとか知って頂きたいです。」
「あっ、それは分かります、私は双方の主張を調べましたので、確かに彼の国の主張を鵜呑みにしている人達は日本に対する印象を悪くしているでしょう。」
「有難う御座います、正直申しまして私達は、日本の新しい内閣が外交面では…、新しい政党からの新人総理ですので低く見られると考えています。
直ぐには無理でも、日本が信頼に足る国、戦争したいと考えてる人は極僅かだという事を知って頂きたいのです。」
「その為のネットワークですか?」
「はい、それには皆さんの協力が必要ですし、我々はまた皆さんの国の事をもっと知る必要が有ると考えています。」
「貿易をするのなら、私のおじさんは良い物を作ってるのになかなか売れないと嘆いています、和馬はそんなおじさんの悩みを解決してくれますか?」
「本当に良い物なのかどうかが問題ですが、マーケティング能力に問題が有るだけなら支援は可能です。
勿論コンサルタント料は発生しますが、データを見させて頂くだけなら無料で構いません。
そこから売れると判断したら、話し合うことになります。」
「遠く離れた国でも?」
「はい、この企画を立ち上げるあたって各国で暮らす、市民政党若葉の党員にも協力を呼び掛けています。」
「そんなにも人数がいるのか?」
「ええ、彼らの所属企業もネットワークへの参加を表明してくれていますので。」
「その様なものに、私が気軽に参加して良いのだろうか?」
「登録は企業としてお願いすることになります、利害関係が発生しますので。」
「当たり前だな、契約書を交わす事になるのだろ、うちは何時でも手続きに入らさせて貰うよ。」

この様な話が、英語で交わされた。
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政権-07 [シトワイヤン-14]

市民政党若葉の特殊性は海外メディアの人達から注目されていた。
党の運営費を発起人で有る大学生が中心になって稼いでいることだけでも特異なことだからだ。
こちらからの提案に対して、彼等がすぐに参加の意思表示をすべきだと考えたのは自然な流れだったと言える。

「和馬、その事業展開、ビジネスの部分で何か具体的に考えてることは有るの?」
「はい、Citoyenブランドの海外生産、まずはささやかながら各国に雇用の場を、と考えています。」
「人件費が安いから?」
「いえ、質を維持する必要が有りますので人件費は国内と同等で有ることをイメージしています。」
「日本国内の生産を減らしても構わないと?」
「いえ、これから作業着中心に、世界的ブランドを目指して行きます、国内生産には影響しません。」
「強気なのね。」
「機能性を重視したタイプが、売れ始めていましてね、割高でも工場のユニフォームにという注文が海外からも入っているのですよ。
市民政党に協力的な企業が、海外の工場でユニフォームとして採用したことが切っ掛けなのですが。」
「そこなのよね、市民政党を単体として捉えてはいけない、そこに集まってる企業も含めての巨大な組織、私は株式会社和馬だけを掘り下げて失敗しかけたわ。」
「不気味でも有る、和馬の下にはどれだけの人がいるのか、底知れないね。」
「いえいえ、自分の下には大した人数いませんよ、株式会社和馬だって、まだ規模の小さい頃に、清香や愛華が面白がってネーミングしただけで、自分がその経営に大きく関わっている訳では有りません。」
「そんな会社が、今では市民政党を支えつつ規模を拡大というのが驚きなのよ。」
「はは、売り上げのほとんどは党員による、寄付みたいなものです。」
「党員から党費を集める事無く、Citoyenブランドの販売で、というのは正解だったの?」
「一般党員から党費を集めるとしても、一人当たりの額を高く設定しては党員は増えません。
党費を要求されない事で増えた党員達が、率先して党のグッズを購入する形は狙っていました。
実際、それによって雇用の場が生まれましたので正解でしたね。
愛華が着ている様な華やかなCitoyenブランドの裏で、各種作業着がその機能性故に売れているのですよ。」
「知ってる、と言うか私も愛用しているよ、和馬、わが国で発売する時には協力させて貰うからな。」
「有難う御座います、来週あたりから今後のスケジュールが発表されますので注目していて下さい。」
「それは海外展開のスケジュールなの?」
「ええ、皆さんと始める、市民政党若葉を核とした世界展開の始まりです。」
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政権-08 [シトワイヤン-14]

「私達と始めるか…、取材対象との距離には気を付けなくてはいけないのだが。」
「それなら、夕食会に招かれてる時点でアウトね。
私は単なる取材対象とは考えていないわ、市民政党は我が国の政治の有り方に警鐘を鳴らしてくれると思うのよ、汚職するために政治家を目指す人達、既存の政党がだめなら、と新しく出来た政党も結局同じ道を進む、私利私欲が国民性ならもう日本に移住したいぐらいだわ。」
「程度の差こそ有れ、どの国でも起きることだな。」
「和馬は事業展開を通して、市民政党を世界に広げようと?」
「そうですね、紹介させて頂ければとは思っています、ただ市民政党若葉として広げると、静かな侵略と受け止められかねませんので。」
「難しいところだな、貧しい国は大国に守られたいと思ってるかもしれないだろ。」
「国家間の格差はどうにもならない、でも独立国では有りたい。」
「内紛が続く国も有るが、彼らの正義は理解出来ないね。」
「和馬が展開するシステムを他国が政治利用することは可能なのか?」
「そうですね、市民政党若葉の規約に反しない限り大丈夫です、バーチャルからリアルへの移行はハードルが高いと思いますが。」
「逆に言えばバーチャルなら、国境の無い政党も可能なのかな。」
「一つのシンクタンクというか、巨大シンクタンクを構築して行く事は、日本で市民政党が大きくなった事を考えると全く無理な話ではないわね。」
「はは、和馬が平然としているという事は、それぐらいは検討済ということなのか?」
「始まってみないと分かりませんが、自分達の目標は鷹上政権の外交がスムーズに行くこと、つまりは友好国との関係がより良い方向に向かう事です。
その辺りで利害関係を丸く収められるかどうかですね。」
「国としてより、党としての方が動き易いのかな。」
「はい、党として動くのなら国交のない国とも繋がれます。」
「党員になるのに国籍を問わないと言うのは、少し意外でした、自分は党員になれて市民政党若葉のことを知る事が出来、助かりましたが。」
「トラブルは有った様ですが、第三者の視点で発言をして下さるがみえて、党にとってもプラスになっていると思います。
参政権の問題に関しては、悪意有る第三国を否定出来ませんので、皆さんの気に障る事が有ったと思いますが。」
「いや、それは間違っていない、逆に油断して欲しくないと思うよ。」
「新しいネットワークシステムでも約束事は必要だね、その辺りは検討中なのかな?」
「一通り完成していますが、参加者によって改定されて行くことになります、但し、どうしても譲れない麻薬取引の禁止などは日本の法に沿って頂くことになります。」
「スタート時に多くの参加者を確保すれば有利になるのかな?」
「有利になった分、弱小国を守る責務が強まる、としたいです、自国の利益ばかりを強調する方には退場して頂くシステムを構築したいですね。」
「警告を出されても考えを改めなかったら、という感じに?」
「はい、党の方針から外れる、悪意有る参加者をどう排除して行くかが最大の課題かも知れません。」
「だろうな、それで、名称はどうするの?」
「仮の名称としては世界市民党、正式名称は皆さんに決めて頂きたいです。」
「候補を挙げて投票システムを利用するのね。」
「市民政党若葉のスタート時の様に暫くはベータ版みたいな運用になるのかな?」
「はい、将来的に大きくしたいですので、スタート時点で出来る限りの問題点を取り除いておきたいです。」
「私は発起人達の素敵な出会いから党の設立、その後の発展を知ってる。
だから、その素敵な発起人との新たな取り組みに参加出来ることにワクワク感しかないわ。」
「市民政党若葉に興味を持ってる知り合いは多いんだ、和馬が世界規模の政党を目指してると知ったら、みんな参加したがると思うよ。」
「凄い事をやってのけた市民政党若葉の取材に来て、更なる展開を聞かされるとは思ってもいなかった、和馬、苗川まで来たのは私にとって正解だったのかな。」
「どうでしょう、党本部もそれなりのネタは持っていますが、向こうは事務的な事が中心になりますので。
さあ、お好みのお酒を、もっと召し上がって下さい、市民政党が政権を取ったお祝いですから。」

鷹上政権にとって外交問題は難しい、せめて知日派親日派のマスコミ関係を増やしておきたいと考えている。
世界展開は形になるまで時間が掛かるだろうが、地道に進めて行きたい。
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政権-09 [シトワイヤン-14]

俺達は市民政党若葉が政権を握るとしたら、一番のウイークポイントは外交だと捉えていた。
そして、外交に関して自分達に出来ることは無さそうだとも。
それが変わったのは、統一地方選挙の前、海外メディアの取材を受けてから。
取材してくれた彼は党のシステムに興味を持ち、他国での展開は可能なのかと尋ねてくれた。
俺達は話し合い、国境なき政党の可能性を考え、ネット上に構築するのなら出来なくはないとの結論に、そして準備を進めて来た。
参議院選挙後にと考えていたのが、党が政権を握ってのスタートとなる。
その正式発表を前に本間市長と。

「海外メディアはどうだった?」
「日本を含め五か国でスタート出来そうです。
四つのメディアとは正式に契約を交わし、双方の不利益にならない形を取ります。」
「スムーズに行ってるのか?」
「はい、苗川まで取材に来る人達です、市民政党がどう成長して来たのかご存じですし、そこからの発展形は大きな社会実験として興味深いと感じて頂けた様です。
スタートからの参加とはならない数社も取材し報道してくれることになってます。」
「何から始まるのかな?」
「まずは党のルール確認、それと並行して、国際問題の研究に取り組んで行きます。
党本部のみでスタート後、各国のエリアを順次オープン、貧困層に仕事を作れるかどうかをメインテーマに動き始める予定で、輸入出来る商品を模索することになると思います。」
「苗川に輸入雑貨の店でもオープンするのか?」
「ええ、まずは参加五か国の商品を置きたいです、Citoyenの店と抱合せる形で全国展開を目指します。」
「はは、気が早いね。」
「世界市民党が社会貢献を考えている事をはっきり示して行きたいですからね。
一括購入で輸送コストを下げます。」
「政治的な活動は?」
「まずは研究からになります、国境なき政党として、参加者が統一見解を持って国際社会にアピール出来るまでには時間が掛かります。」
「でも、それを狙っているのだろ。」
「はい、国家レベルでは動きにくい事でも、国を離れた国際的な組織、透明性の高い組織が国連とは違った視点で活動して行く事に大きな可能性を感じています。」
「維持管理センターを苗川に置く以外はすべてネット上で展開、流石に市民政党若葉の様なリアル政党にはならないだろうな。」
「そうですね、世界市民党としては有り得ないと思います、ただ、市民政党若葉のシステムを利用した政党作りの動きは幾つか有りまして、上手く行けば株式会社和馬の収入源に成るかも知れません、人口が日本ほど多くない国の政治をクリーンにするのは難しくないと考えている人たちがいるのですよ。」
「そこと、世界市民党との関係はどうなのかな?」
「全く別でスタートしますが、協力関係が築けたら、既存の枠組みとは違うものが出来るかも知れません。
国民性の違いから、簡単ではないと思いますが。」
「国民性の違いか、価値観の相違は大きそうか?」
「経済的に余裕が出来れば…、衣食足りて礼節を知るということだと思います。」
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政権-10 [シトワイヤン-14]

鷹上政権は、その成り立ちから海外でも大きな注目を集めているのだが、その情報を積極的に流しているのが地球市民党、世界市民党(仮)から変わって正式名称となった存在だ。
地球市民党は、海外の研究家や著名人が鷹上政権の政策をどう捉えているかなどの情報も集約していて、それが党初期段階の大きな役割ともなっている。
鷹上総理の方針は外交問題でも公表出来ることは極力公表。
二国間の問題で有っても地球市民党を通して考えや立場を明らかにし世界中から意見を聞き参考に。
外交上の駆け引きに不利だとの意見が有ったが、譲れないことは譲らないという姿勢を示したことで信用度が高まったと評価されている。

「ニュースを見てると『国民が国民で有ることに誇りの持てる国、海外から尊敬される国を目指す』鷹上総理の掲げた方針、半年ではまだまだなのかしら。」
「愛華、仕方ないさ、まだ前政権から受け継いだものを修正している段階だろ、一気に変えたら混乱するよ。
それより市民政党若葉の党員が人としての意識改革を進めて来たのが形になり始めてるだろ。
総理大臣からお願いされたら反発が大きかっただろうが、党員達は市民一人一人の心を動かしているからな。」
「そうね、愛国心を教育でと考えてた人がいたけど、根本が違うのよね。
『愛せる国を作る事が国民の義務、愛せる国に暮らせることが国民の権利』市民政党の拡大に伴って個人と国の関係、個人と地域社会の関係を見直す人が増えたし、アーティスト達の活動、メッセージソングの力も大きいわ。」
「次は、地球市民党を大きくして行くことですね。」
「ああ、自分の国だけが良ければ良いという考え方から抜け出さないとな。
まずは友好国の輪を広げて行く、各国政府とも良好な関係でいたいが、地球市民党の活動は国家権力とは一線を画す、地球市民による民間交流をどこまで広げられるかだね。」
「地球市民党がスタートするまでは、ただの外国、それが同じ党の仲間の暮らす国に変わりました。
この感覚を多くの方が共有して下されば良いのですが。」
「色々な価値観が有って簡単なことではないのよね。」
「俺達が政党を立ち上げようと思い始めた頃も、簡単なこととは思ってなかったよな。
それでも、真っ直ぐな声を上げたら真っ直ぐな人達が受け止めてくれた。
世の中、楽して金儲け出来るのなら、他人に迷惑を掛けることを何とも思わない人は少なくないが、そんな人ばかりではなかった訳で、それは海外でも同じだと思うんだ。」
「そうね『愛せる国を作る事が国民の義務、愛せる国に暮らせることが国民の権利』だけど『大切な地球を守って行く事が人間の義務、その地球上で生きて行くのが地球市民の権利』なのよね。」
「本のキーワードだね、本の仕上がり具合はどう?」
「日本語版も英語版も間もなく印刷に入るわ。」
「日本語版はともかく、英語版はどれだけ売れるか想像がつかないね、全く売れなかったりして。」
「あら、私達意外と有名人なのよ、ドイツ語やフランス語での出版も準備に入ったそうで、売れないなんてことは想定してない、というか、お願いしなくても地球市民党関連が宣伝してくれるでしょう。」
「へ~、売れたら印税の使い道はどうする?」
「実験的に小さい国へ投資してみるのは如何ですか、私達の投資だけで国を良く出来る可能性が有ります。」
「あっ、国家予算の少ない国か、それは面白そうだな、社会学的な実験も色々出来そうだ。」
「和馬が王様になるとかね。」
「はは、絶対王政は可能なのかな?」
「国民の生活水準を上げることが出来れば難しくないと思います、私が目を付けてる国は…。」

清香はすでに考えを巡らせていた。
小さな国なら数億円規模の投資でも、効率よく行えば大きな成果となる。
人口の少ない国を一つ、我々の手で変えて行くのは悪くない。
勿論、党のシステムを導入して政治面の実験も出来るだろう。
それから俺達は絶対王政の可能性を語り合った。
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