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近衛予備隊-31 [高校生バトル-46]

 隊長では有るものの自分だけ荷物を運ぶ作業をしないで店内を歩き回ることには始めの内、気が引けた。
 だが教官のアドバイスも有り、自分の役目がそれなりに重要だと分かって来てからは、沢山見て沢山質問する様にしている。
 何故取りにくい位置、見にくい場所に商品を置くのか質問すると、答えが出て来ないことが多いと気付いてからは特にだ。
 答えを返せない理由は様々だが指示書を理解出来てないパターンが少なくない。
 考えれば分かりそうだと思いながら丁寧に説明するが、指示書にミスが有ると感じた時などはフロアマネージャーに報告する。
 その後、彼がレイアウト変更の指示を出すので俺の判断は間違っていない様だ。
 指示を出し始めた頃は従業員や隊員達から俺への反発が有るのではと気にしていたが、それはほとんど無かった。
 英語の話せない連中は直接フロアマネジャーに意見を言えなかったし、何と言ってもルーシーが俺の役割についてみんなに話してくれたのが大きかったと思う。

「搬入作業は随分進んだみたいね。」
「まあな、でもフロアマネージャーに言わせると日本では考えられないぐらいゆっくりだそうだよ。
 研修を並行して行っているし、俺達を含めこういった店のシステムに慣れてない人ばかりなのだから仕方ないとは思うのだけど。」
「こんな店で買い物したことすら無いのだいのだからね、ねえ、ジョンはお客さん役をやってみたの?」
「ああ、従業員全員が貰った十ドル入金済のプリペイドカードに入金してみたし、ジュースの自動販売機も試してみた、ルーシーは?」
「貴重な十ドルだからお菓子の入荷を待つつもり、入荷日はチェック済だからね。」
「台風で入荷が遅れるかも知れないのだろ。」
「大丈夫、私は待てる子なの。」
「はいはい、オープン時は店員が慣れていないことも有って商品の種類は少ないけど、商品の種類が増えても対応出来そうか?」
「出来そうでは無く対応して行かないと給料は上がらないのよ、順次商品を増やして行くことでリピーターを確保するのでしょ、ある程度増やしたら、売れない商品を廃番にしつつ新商品を棚へ、同じタイプの製品でも新型に切り替わって行く…、私達が無くても生活出来てた商品をこんなに見せられて、生活水準と言う事を考えさせられたわ。」
「ワンテンポ遅らせてオープンする近隣住民向けの低価格品コーナーが始まらないと俺達が買える物は限られるものな、ルーシーが買うつもりのお菓子は高くないのか?」
「高いからおデブになれる程買えそうにないのよ、メアリー達にとっては気にならない額みたいで近衛の人から何度も貰ってたのだけど。」
「真面目に学びながら働いていれば近い将来メアリーが貰ってると同じぐらいの給料になると聞いただろ。
 俺は今日フロアマネージャーに言われて暫くの間サブフロアマネージャーを隊長と兼務することになり昇給が決まったよ、それだけ責任が増すのだけどね。」
「私もサービスカウンターのチーフになって昇給すると聞いたのだけど良いのかしら?」
「大人以上のことをしているからな、大人の従業員でも英語の出来る人は限られているだろ。
 応援に来てくれてる外国人スタッフはサービスカウンターに行けばルーシーかシャルロットが居るから助かってると話してたよ。
 真面目に働いて実績を上げれば食べたいお菓子は食べ放題の給料になるかもな。」
「もぉ~、ジョンたら私をそんなに太らせたいの?」
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近衛予備隊-32 [高校生バトル-46]

 給料についてはフロアマネージャーから、サブフロアマネージャーとしての仕事ぶりが良ければ、彼の裁量だけで一般従業員の最低額までは簡単に上げらえると言われている。
 それは一般的な給料から衣食住に掛かる費用を差し引いた額だと言うが俺にとっては魅力的な金額だ。
 ちなみに隊の制服は店内作業用など追加で支給されているし、昼食も基本の日替わり定食は無料。
 俺は日本人スタッフに気に入られているみたいで、今まで食べた事のない美味しい有料メニューを奢って貰うことが多く、共に食事する時間は自分にとって英語力を高めることにも繋がってる。
 そして給料が一般従業員の最低額になってから更に頑張れば職能給や住居手当などが加算されるだけでなく、シャルロットと結婚すれば祝い金、子どもが生まれれば扶養手当などが支給されるそうだ。
 そんな話をシャルロットに…。

「凄いわね、町へ働きに出るより余程良いんじゃない。」
「シャルロット、彼は責任の重いストアマネージャーやフロアマネージャーとなれば更に昇給すると話した後、にやりと笑いながら第二夫人を持てるぐらいにと口にしてね。
 ルーシーの奴、フロアマネージャーにまで第二夫人の話をしてたみたいなんだ。」
「仕方ないわよ、ジョンは魅力的だもの、ルーシーは入隊してから自信を付け明るくなってはいるものの、ハンディのことを本当に理解してくれてる男性はジョンだけだと話してるの、そして本当に私達のことが大好きだともね、第二夫人の話をするぐらいのことは許して上げたら。」
「シャルロットが気にしないのなら良いけど。」
「普通に綺麗な女の子だから、ジョンが嫌いじゃないって言う気持ちも分かるわ。」
「友達だから嫌いな訳ないだろ。」
「ふふ、この間休憩時間に日本からの応援スタッフと話してたら、男女の間に友情はどの程度成立するのかと言う話題で盛り上がってね。」
「結論は?」
「結論が出ないから盛り上がるのよ。
 私からジョンを奪い取りたいと話す人や、ジョンの第三夫人でも構わないと言う人もいてね、日本では離婚するカップルがそれなりにいるそうなんだけど、夫婦の関係にもっとバリエーションが有れば子育てだって楽になる、夫婦二人だけで問題を抱え込むのはどうかなんて話もね。
 近所に喧嘩の絶えない夫婦がいる話をしたら、そこからも色々な意見が出たの、私達とは環境が随分違うみたいだけどね。」
「へ~。」
「ジョンのことを褒める女性ばかりだったけど、まだ誘惑されてないの?」
「されてるよ、フロアマネージャーに話したら、仕事とは言え異国で数か月の滞在、羽目を外したくなる子もいるだろうって、タイプじゃなくてしつこいのがいたら報告してくれってさ。」
「タイプだったら?」
「好きにすれば良いそうだ、相手は大人だから、でも避妊はしとけって。」
「避妊?」
「妊娠を望まない人の為にお勧めの物が有るそうで、売れ筋商品だとか。
 性欲を適度に発散させながら、望まない妊娠を避けることは必要だそうでね。」
「望まない妊娠か…。」
「この村でも夫婦がもう少し計画的に出産していれば生活が楽になると言われた。」
「確かにそうかもだけど、子は宝で授かりもの、結婚したらジョンの子を沢山産みたいわ。」
「だよな、日本では育児が大変だとかで体に異常が無くても一人も子どもを儲けない夫婦や、子どもは少なめを考える夫婦が多いそうでね、豊かな国なのだけど何かと大変、その挙句少子化と言うのが問題になっていて人口が減りつつあるそうだ。」
「確か平均寿命は長いのよね。」
「ああ、マネージャーは老人達が少子化の進む環境を作り出したが、人口の増え過ぎてる国も有って難しいと話してたよ。」
「プリンセス詩織の教えではバランス重視だけど…。」
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近衛予備隊-33 [高校生バトル-46]

「そのバランスを取るのが難しいから日本では貧富の差が拡大しているそうだよ、ただ、その貧困層でさえ俺達より良い暮らしをしてるみたいだけど。」
「店に並ぶ商品の数々を見て私達の…、色々な意味での貧しさを更に知ったわ。」
「無くても困らないが、有れば便利過ぎる物が高額で売られてるよな、フロアーマネージャーにこんなに高額な物が売れるのですかと尋ねたら、今まで展開してる店では売り切れ続出で入荷待ちだと言う商品も有り、他の店で買えなかった人が、ここまで買いに来るかもしれないと話してたよ、高品質だから製造出来る数に限りが有るそうでね。」
「私達も真面目に働いていれば買える様になるのかしら…。」
「取り敢えずはシャワーとトイレを目標にしよう、清潔な環境を整えるだけでも病気が減らせるだろ。」
「隣村には診療所もオープンするのよね、プリンセス詩織の滞在に合わせて。」
「ああ、バスが使える様になったから町の診療所まででも時間が掛からなくなったが、新しい診療所は町のとは全然違うし、医師もしっかりした人だと聞いたよ。」
「でも診て貰うにはお金が掛かりそうだわ。」
「シャルロットは医療保険のこと理解出来てないのかな?」
「診療所のオープンに合わせて給料から保険料が引かれるとは聞いたけど…、店のオープンに合わせて給料が上がるからあまり気にしてなかった。」
「払っておけば、診療所で診て貰うことになった時、安く済むんだ。
 まずは本人だけを対象にしてのスタートだが、保険料を多く払うことで家族が病気になった時でも安く見て貰えるシステムにして行くそうだよ。」
「システムと言う言葉が出て来る度にジョンを頼らなくてはならないのよね、私は…。」
「はは、まあ、町の診療所よりしっかりした体制で皆が安く診て貰える、その為に健康な時から費用を負担、ずっと健康で診療所のお世話になる事が無くてもね。
 でも、それは自身の健康の証で有り、診療所を利用する人達を支えることになるんだ。」
「皆の為になるのなら少しぐらいの負担は気にならないわ、それだけ昇給してるものね。」
「その昇給の加減が難しいとフロアマネージャーは言ってたよ、周りの会社と比べうちだけが突出して良いとなったら問題が起こるかも知れないそうでね。
 衣食住を負担する代わりに給料が安いと言うのは周りとのバランスも考えた上でのことなんだ。」
「バランスか…。」
「少し話は違うけど、彼から少し面白い話を教えて貰ったよ。」
「うん、どんなの?」
「自然界のバランスでね…。」
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近衛予備隊-34 [高校生バトル-46]

「例えば人間が金になると思って植えた作物が全然売れなくて放棄された畑が有るとするだろ。
 その作物を気に入った野兎が豊富な餌のお蔭で一気に増える訳だ。
 だが増えて目立つ様になると鷹などの餌となり易くなって数を減らす、そうやってバランスが取られているのだけど、鷹はどうかと言うと、縄張りが有る為か増え過ぎないみたいでね。
 そんな自然界の生態系、弱肉強食は人間社会にも存在していて、町へ働きに出掛けてる兄貴達は強者の食い物にされている野兎同然だが、村で細々と食い繋いだ所で野兎以下で人間界での強者には到底成れない、富は人間界の鷹たちが溜め込んでいるからな。
 俺達は貧困層だとはっきり言われたよ、簡単には抜け出すことの出来ないね。
 でも、プリンセス詩織は俺達貧困層の生活改善を考えてくれているんだ。
 教育と医療、そして仕事の環境、シャルロットもその辺りは分かってるだろ。」
「ええ、村の子達は今までとは違った教育を受けられる様になり可能性が広がるのよね。」
「フロアマネージャーは良い事ばかりではないと話していたが、リーダー次第で変わるとも。
 俺達が人間社会のことを考えながら学び、この村をリードして行けばとね。」
「ジョンはリーダーだもの、この村はジョン次第だと思うわよ、この前も村長と詩織近衛予備隊隊長ではどちらが格上かなんて、暇そうな大人達が話してたから。
 将来を考えたらお年を召された村長よりジョンの方が信頼度が高いとか。」
「そんな無責任な話は俺も耳にしたが、少し前なら冗談はよせって感じだったと思う、でも、店での作業を見てたら大人だからと言って能力が高いと言う訳ではないと思い始めてね、勿論俺達が学ぶべきことは沢山有るのだけど。
 前にメアリーから村の環境改善について言われたことはずっと考えていたんだ。」
「自分達の力で村を変えるって話ね。」
「今までは余裕が無かったから、大人達は取り敢えず現状の暮らしを維持することで精一杯だった。
 でも俺達予備隊なら、会社の力を借りて村を変えられると思うんだ。」
「会社の力は借りられるの?」
「教育環境の改善は教官達が既に進めているだろ。
 でも、その成果を高められるかどうかは俺達次第、自分達の村のことだからな。」
「大人達はそこまで考えてなさそうね。」
「視野が狭いからな、でも俺達はネットを通して色々学んでいる。
 隣村で体験してるシャワーやトイレをここでも使いたいじゃないか。
 清潔な環境になって病死する子どもが減れば良だろ…。」
「何か引っ掛かることが有るの?」
「それによって人口が増え過ぎる可能性を聞かされたんだ。
 自然界で多くの卵を産む生物は、生まれて来た多くが上位種の餌となることを前提にしてるとか…。」
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近衛予備隊-35 [高校生バトル-46]

 目新しい事ばかりで店のオープンまでの日々はあっという間に過ぎた。
 フロアマネージャーに言わせるとのんびりした作業だそうだが、慣れない俺にとっては指示を出すことに緊張したり…、応援に来ているお姉さま方に誘惑されたり新たに加わった女子隊員になつかれたりと余計な面倒事も有ったが、忙しくも充実した日々だったことは間違いない。
 予定されてた商品の中には届いて無い物も有ったが、店は翌日のオープンを待つばかりになっていた…。

「ジョン、君がルールを守る意識が弱いと話してた隊員の一人が、警備体制チェックに一役買ってくれたよ。」
「何かやらかしたのですか?」
「店の商品を盗み出そうとして、警備員に捕まったんだ。」
「ハイテク監視カメラが機能したのですね。」
「ああ、監視体制の話は彼に伝わってなかったのかな?」
「本能のままに動く連中に言葉は伝わりませんよ。
 まあ、そいつを見せしめにすれば他の連中は大人しくなるでしょう、盗みなどの犯罪を犯した場合の処遇は提示して有るのですから、その通りにします。」
「それで構わないが、彼を追い詰め過ぎることの無い様に出来るか?」
「隊員の心得として必要以上に時間を掛けて説明したのですから、隊からの除名後、警察への引き渡しまで、規定通りに進めます。」
「その後犯罪組織の一員になる可能性は無いのかな?」
「どうですかね、自分が要注意グループとして伝えた連中は弱い者いじめをしていた連中で、予備隊の活動を通してまともになって欲しいとは思っていたのですが、元々犯罪に走る可能性は高かったので。」
「プリンセス詩織は犯罪に走る輩を減らしたいと考えておられるのだが、ジョンはどう思う?」
「う~ん、そんな奴らも、それぞれの担当を真面目にこなし始めていて…、捕まった奴はそいつらをも裏切ったと思うのです。
 一罰百戒と考えているのですが…、マネージャーは反省するならチャンスを与えると言う考えなのですか?」
「甘くし過ぎると規律が乱れてしまうから慎重に事を運ぶ必要は有る、その辺りのバランスを考えた上で…、ここを追い出すのは簡単だが、そうした場合、彼が今後辿りそうな道筋は社会にとって良いものになるとは思えない、ここで反省してくれると良いのだが。」
「そうですね…、一度話しをしてみて…、そいつは今、何処にいるのです?」
「店で捉えた犯罪者を一時的に監禁して置く部屋の居心地を試して貰ってるよ。
「そんな部屋も有ったのですね。」
「窃盗犯の確保は想定内のことだからな。」
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近衛予備隊-36 [高校生バトル-46]

 俺は店の警備体制を甘く見ていた馬鹿な奴と話をすることに。

「なかなか住み心地良さそうな部屋だな、くつろげているか?」
「ジョン、冗談はよせよ、俺はしくじった、それだけだろ。」
「はは、今後の事は考えてる?」
「ああ、警察に引き渡され、親父に殴られるのだろうな。」
「少しは反省した?」
「こんな店が出来るから悪いんだ、俺だって前は盗みなんて考えたことなかったんだ、美味しいお菓子が置いて有ればつまみ食いぐらい誰だってするじゃないか。」
「それを実行したのはお前だけだがな、しては行けない事として俺が説明したにも関わらず。
 それで親に殴られた後はどうするんだ?」
「畑の仕事をさせられるだろうな。」
「それなら農業実習で慣れていて問題ないか。」
「馬鹿言え、給料貰って美味しい物を食べさせて貰える訳ではなく、こき使われるだけ、直ぐに逃げ出して町へ行くつもりだよ。」
「それなりに計画は有るのだな、で、町でどうやって暮らして行く?」
「誰でも雇ってくれる所が有ると聞いてるんだ、何とかなるさ。」
「そんなの犯罪組織じゃないのか?」
「別に構わないだろ、下っ端の待遇は悪そうだけど。」
「そうだな、予備隊の殆どはこのままここで働くことを希望している、お前には俺達の代表となって町の生活を体験して来て欲しいと思う、気が向いたら報告に来てくれよ。
 もし、町の暮らしに合わないと思ったら…、その時にここがどうなってるのか分からないが、多分お前一人ぐらい受け入れる余裕は有るだろう、犯罪を犯して無かったらだけどな。
 因みに俺達には条件付きだが昇給予定が続いていてね、真面目にやってたら最低でも大人の最低ランクより高額になる、住宅手当が加算されるからな。
 その金額が町で稼げる額より多いのかどうかは分からないが。」
「ジョンの給料はすでに結構良いのだろ、能力給や隊長としての手当とか有って。」
「まあな、それなりに努力した結果だが。」
「俺でも頑張ればそんな給料になったのか?」
「無理だな、我慢することとか、お前にはここで認められるのに必要なことが色々欠けている。
 だが、これから経験することを糧として成長したなら、この会社はお前を必要な社員として迎えてくれると思う、犯罪に手を染めてなかったらの話しだがな。」
「悪い事はするなってことか…、親に説教されるより…。」
「フロアマネージャーの配慮で、警察に引き渡される前に、ここに来てる様々な経歴の持ち主達と話す機会を作るそうだ、店のオープンで忙しくは有るがそれぐらいの余裕は有るそうでね。」
「配慮か…。」
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近衛予備隊-37 [高校生バトル-46]

 結局の所、彼は人手を欲しがっていた部署に引き取られ、汗を流しながら働くこととなった。
 予備隊からは除籍となったが、真面目に働けば昇給も有ると言われ警察への引き渡しも保留となり断る理由は何もなかったそうだ。
 それはオープンしたら予想以上の客足だったことにもよる。
 オープン初日…。

「ジョン、宣伝はYouTubeだけ、それでこれだけの来客数とは想定外だな、どう言うことなんだ?」
「それを自分に言われましても…。
 それでも、客はYouTubeを見た人ばかりで会計システムを理解した上での来店、予想していたプリペイドカードがらみのトラブルは少なくて良かったです。」
「従業員が慣れるまでは宣伝を控える方針で、のんびりしたスタートになると思っていたのだがな。」
「プリンセス詩織の動画が切っ掛けでしょうか?」
「新しい動画が公開されたのか?」
「ええ、ご覧になってないのです?
 食堂ではエンドレスで流されていますよ。」
「ならば遅くなった昼食ついでに見てみようか。」
「はい、報告としては、プリセス関連のグッズが特に売れてます。
 追加発注を早めに掛ける様に指示を出したところ、担当者が数をどうするか悩んでいましたので本部と相談する様に指示して置きました。
 既に売り切れてるアイテムも有りまして。」
「午前から凄い売り上げだったからな、私も本部と連絡を取っておくよ。」

 フロアマネージャーとは一旦別れざっと売り場を回ってから食堂で落ち合うことに。
 店は応援の人達が手際よく捌いてくれているので、混雑していても何とか回っていた。

「従業員たちは昼食を済ませたのかな?」
「はい、各部署のリーダーに確認を取りました、この後の休憩も予定通りに入れる様、念押ししておきました。」
「うん、混雑が今日だけなら少々無理しても良いが続きそうだからな。
 おっ、大モニターはプリンセス詩織か…。
 小鳥が挨拶に来てるのはCGか…、いや本物だよな…。
 あっ、終了なのか、チーフ?」
「いえ、マネージャー、新たな動画がアップされましたのでそちらに切り替えます。」
「チーフ、この小鳥達は本物だよな?」
「ええ、今からの映像を撮影し始めたら餌付けした訳でも無いのに集まって来たそうです。
 奇跡的な映像ですよ。」

 切り替えられた映像のプリンセスは衣装も違い更に神々しく優しい笑みで小鳥達と戯れていた。
 暫く俺達は食事も忘れ、無言で画面を見つめるばかり。
 
「ジョン、本部に問い合わせたら、プリンセス詩織関連のグッズは扱ってる全ての店舗から追加発注が大量に来ていて希望通りの数は無理だと言われてね、これを見て納得したよ。
 製造計画を前倒しして対応するそうだが、品切れ情報は早めに出した方が良さそうだな。」
「はい、入荷予定に関する情報は何時頃出るのでしょう?」
「本部にとっても想定外だから、まずは入荷予定未定として告知するしかないだろう、早めに告知しておかないと店頭でごねる客が出かねないぞ。」
「分かりました、直ぐに指示を出します。」
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近衛予備隊-38 [高校生バトル-46]

 俺達は閉店後YouTube向けの動画を撮影することに。
 初日の報告と合わせプリンセス詩織関係グッズが品切れしたことを謝罪をし、世界的に爆売れしている為入荷が遅れるだけでなく入荷数も少なくなると説明。
 入荷量が落ち着くまでは店でのオークション販売とし、定価以上の利益は教育環境の充実に充てさせて貰うと発表した。
 その後はフリートーク…。

「ねえ、ジョン、私のプリンセスは女神様だったのね。」
「ルーシーのじゃない、小鳥達も含めたみんなの女神様だよ、俺達を守って下さっているね。」
「守られているって感じてる?」
「ああ、店のオープン初日からYouTubeでしか宣伝してないのに多くの人が来て下さっただろ、当然良からぬ輩も来るだろうと警備の人達は緊張したさ。
 でも、予想していた万引き犯が一人も現れず、混雑してて売り切れが出ているのに不満を口にする人は僅かでね、女神様の店だから悪い事をしては行けないと考える人ばかりだったのではないかな。」
「そっか、今日は沢山売れたけど、お店に並べる商品は大丈夫なの?」
「プリンセス詩織関連以外でも思わぬ人気での売り切れは有るけど、港の倉庫から今も運んでいてどんどん補充してるんだ。
 倉庫が空になる勢いだから船便を増便出来ないかと本部も動いていてね、天気さえ良ければ長くお待たせすることは無いと思う、プリンセスグッズ以外はな。」
「会社は儲かるのね。」
「儲かってくれないと、この周辺の村は貧乏なままさ。」
「その辺りが普通の会社とは違うのよね。」
「店の利益は周辺のインフラ整備や教育に使って貰える、お客さんにも会社にも感謝しかない、勿論プリンセス詩織にもね。」

 簡単な台本を用意し単なる金儲けだけを考えてる店で無いことをアピールした後は商品の宣伝も。
 
「ルーシーは何か気に入った商品有る?」
「これよ、マジックハンド、車椅子に座ったまま下の物を拾えるの。」
「なるほど。」
「こうやってジョンを掴んで引き寄せる事もね。」
「あらっ、私のジョンに何をする気かしら。」

 シャルロットとルーシーで茶番劇を繰り広げた後は、詩織近衛予備隊のパフォーマンス映像で締めくくることにした。
 これから毎日、開店前と閉店前に隊員三十名程度での行進とパフォーマンスを行う。
 初日の感触は悪くなかったが、リピーターを呼ぶ原動力に成れるのかどうかは分からない。
 まあ、俺達の役割は当初の予定以上に増えているのでパフォーマンスが必要なくなっても、クビになる心配はない。
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近衛予備隊-39 [高校生バトル-46]

 オープンから一週間、店はプリンセス詩織のグッズが少なくても盛況で、既にリピーターの存在も確認されている。
 この国の人にとって馴染の無い商品が多いので、使い方の説明を見るだけで時間が過ぎ、フロアマネージャーがかなり抑えたと言うアイテム数でもショッピングを充分楽しめる様だ。
 高額商品を立派な車一杯に買い込んで行く客もいて、お金持ちと言う存在を初めて実感した。
 店の順調さは、他店の立ち上げ応援を経験して来た人達が驚くぐらいだと言う。
 第一部隊が手伝ってる店では、プリンセスが近衛隊と共にやって来るまで、かなりトラブルが多かったそうだ。
 順調さは俺達第三部隊の頑張りによる所だと褒められたが、実際は日本人スタッフの優秀さとプリンセスが小鳥と戯れる映像の効果だと思う。
 その映像に関連して俺の所へ依頼が有った。

「シャルロット、野鳥に関する調査依頼が来たよ。」
「調査?」
「何でも第二部隊の村ではプリンセスが訪れてから野鳥が増えたのではないかと言う人が居るそうでね、ホントはきちんとした生息数調査をしたいそうだが、時間的に無理だろ、だから簡単な調査なんだ。」
「何をすれば良いの?」
「店への往復、バスから見えた鳥の数を大雑把で良いから記録して欲しいそうでね。」
「種類に関係なく?」
「そうだな、種類が分かればその方が良いのだろうが…、シャルロットは鳥を見分けられるのか?」
「微妙だけど、プリンセスの動画に登場する鳥はここでも見られるのが多いと感じたのわ。」
「う~ん、プリンセスがいらっしゃるまでに日が無いから充分な準備は出来ないけど、野鳥の写真を用意して皆で名前を覚えるとか、映像から野鳥に興味を持った人もいるだろうから…、野鳥カードみたいのを作り販売とかを考えて良いかもな。」
「提案してみる?」
「一応ね、野鳥観察会の話が出ていて、もう進めてるかもしれないけど。
 プリンセスが来られてからのスケジュールも変更で、野鳥と戯れる機会を作るそうだから、売れると思うんだ。」
「プリンセス詩織がいらしたら今まで以上にお客さんが増えるのよね、対応出来るのかしら。」
「そこは詩織近衛隊の本体が何とかしてくれるだろうとフロアマネージャーが話してたよ。
 店のオープニングでトラブルの多かった店も近衛隊が一気に改善したそうでね。
 うちは順調だから、もっと楽になるのかも。
 俺達はプリンセス詩織と彼らを迎え入れる儀式を行ってからは、隊として近衛隊の指揮下に入るからな。」
「もう直ぐ映像では無いプリンセスの姿を見られるのね。」
「シャルロットは花束を渡すのだからな。」
「うん、ドキドキして来た。」
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近衛予備隊-40 [高校生バトル-46]

 プリンセスの来訪を前にして従業員全員に百ドルのボーナスが出た。

「ジョン、一人百ドルって私達にとって大きな金額、全員だと相当な額よね、それだけ出せる利益がオープンから十日程で出たってことなの?」
「売上額はシャルロットも確認してるだろ、そこから諸々の経費を差し引いても、店のオープン記念とプリンセスが来て下さるお祝いとして無理なく出せる金額なんだ。
 まあ、今回のボーナスはプリペイドカードへの入金だから、いずれ全額店の売り上げになるのだけどな。」
「そっか、ここだけで回るお金か…、プリペイドカードは他の系列店でも使えると言っても、この国では他に店が無いものね。
 始めの内は良く分からなかったけど、少しずつ仕組みが分かって来たわ。」
「シャルロットは俺達の写真が売れてるの知ってた?」
「そうなの、全然気にしてなかった。」
「近衛予備隊のパフォーマンスを見たくてリピーターになってくれてる人もいるんだよ、まあ、バスの乗車賃程度でしか売り上げに貢献していない人もいるそうだけど、それでもお客さんだからな。
 そんな人達を中心に売れてる写真にサインをお願いされる事が増えているんだ。」
「ジョンのファン?」
「みたいだな、シャルロットはそんなことないのか?」
「う~ん、ジョンみたいに動き回っていないし、ジョンの婚約者だとYouTubeで話してるからか無いわね、男女で感覚に違いが有るのかしら。」
「シャルロットが写ってる写真も沢山売れてるのだけどな。
 売上額は入荷量が少ないままのプリンセス関連のグッズにさえ遠く及ばないが、それでも売り上げは俺達のボーナスに直結するだろ、全隊員で均等に分けても一人十ドル分ぐらいにはなりそうな勢いなんだ。」
「その額が多いのか少ないのか分からないのだけど。」
「大した取り柄も無い俺達の写真が…、十ドル掛ける隊員数で出て来る額は写真の売り上げの十%だからな、そう考えたら俺達の写真が如何に売れてるのか分かるだろ。」
「え~っと…、そんなに売れてるの!
 信じられないわ。」
「担当してくれてる隊員は俺達の写真が特に売れてるから、ボーナスは均等でなく俺達には多めにと言ってくれたが、シャルロットはどう思う?」
「均等で良いわよ、私達は他で色々優遇されてるのだから。」
「だよな。
 それと俺達へのボーナスは他にも出そうなんだ。」
「何かのご褒美?」
「従業員の寮を俺達の村に建設する話が有ったろ。」
「何年後かにでしょ?」
「それを年内着工に早める案が出てね、決まれば上下水道などのインフラ整備が進められ、俺達がシャワーやトイレを設置する時の費用をかなり抑えられることになるみたいなんだ。」
「へ~、でもどうして?」
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