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九月-01 [高校生会議-07]

夏休みを終えて、まずは先生と話し合った。
結果、三月までは高校に籍を残す事に。
十月から通う大学を何時迄にするか決めていないので、高校へ通う回数はもう多くないかもしれない。
入学した頃は優秀な成績で卒業と思っていたのが、休みがちになって一年で中退するとは人生分からないものだ。
会社の方は遥香コーポレーションの正式スタートに合わせて発表する予定だった企画から三つほど先延ばしにした。
社員達は残業してでも間に合わせたい様だったが、三つ減らしても充分過ぎる発表内容だからと納得して貰った。
残業をしないという習慣を定着させる為だ。
会社創立式典の日が近づくと、多くの岩崎王国関係者が岩崎本部が組んだスケジュールに従ってやって来た。
勿論、スケジュールに関しては私の意見も聞いて貰っている。
彼等は工場見学の他、遥香システムを紹介する研修会にも参加。
夜は…。

「おお~、姫さまも同席して下さるとは嬉しい。」
「本日は遠路はるばるお越し下さいまして有難う御座います。」
「いえ、来た甲斐が有りました、美しい遥香姫…、映像で親衛隊が姫に忠誠を誓う場面を拝見させて頂きましたが、私も忠誠を誓います。
遥香システムもすぐに導入準備に入らさせて頂きます。
人的に時間が掛かるという事でしたが、こちらからシステムエンジニアを派遣して研修を受けさせるという事で如何でしょうか。」
「有難う御座います、杉浦、それで問題有りませんね。」
「はい遥香さま、開発部の人材不足も補えます。」
「それなら、うちも派遣出来ます。」
「あっ、もしかしてここに呼ばれたのはシステムエンジニアを派遣出来そうな企業の…。」
「ふふ、杉浦、ばれてしまいましたね。」
「はい、皆さん、この席は遥香さまからの御指示で遥香システムを導入し易い企業のトップの方のみ、他の方々は別の指示に従って会食をされております。」
「業種もバラバラ、企業規模もバラバラだと思っていましたが基準が有ったのですね。
杉浦社長は遥香コーポレーションの社員になると聞きましたが本当なのですか?」
「はい、順調なので平社員から係長に昇進出来そうです。」
「初めて聞いた時は冗談かと思いましたが、遥香システムを見せて頂いて納得しました。」
「遥香さま、私にもダブルワークで遥香コーポレーションの平社員という可能性は有りますか?」
「笹山社長の所で扱っておられる商品から最高級の物を、プリンセス遥香ブランドという形で売り出すのは如何でしょう。
普通に契約を結んでも良いのですが、社長のダブルワークという話題性はプラスになると思います。
これからプリンセス遥香のブランド価値を高めて行く手助けをお願い出来ないでしょうか。」
「わ、分かりました。」
「う~ん、うちは部品メーカーだから接点はないですね。」
「いえ、飯田社長の芸術的センスと会社の技術力で、プリンセス遥香関連を飾る装飾品をお願いしたいと考えていたのですが。」
「えっ?」
「だめですか。」
「私の事も調べて…。」
「嫌ですわ、普通に公表なされてるじゃないですか。」
「…、装飾品ですか…。」
「沢山売れる訳では有りませんが、技術研修の一環として複雑な物に挑戦という事も考えてみては如何でしょう、販売の方は何とかしますから。」
「はは、それは私が担当という事ですね、飯田さん、我々大人が姫さまの掌の上で遊ばれている感覚では有りますが、それもなぜか心地よいじゃないですか、私も姫さまに忠誠を誓いますよ。」

この夜新規事業が幾つかスタート、担当は社長ばかりだから、本社サイドの負担は大して増えないだろう。
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九月-02 [高校生会議-07]

会社創立式典は盛大なイベントになった。
親会社から一部門を切り離す形で創立された新会社は、すでに親会社の規模を超えるレベルまで規模拡大の見通しが立っている。
岩崎王国の特別職『姫』が社長を務める会社として話題性は充分、プリンセス遥香ブランドでの展開を見越し幾つかの発表をした。

「前野さん、色々お疲れさまでした」
「いえ、遥香さまこそ、気を使われることが多かったのでは有りませんか。」
「それでも、社長のダブルワークで事業規模の拡大が進みそうで嬉しいです。
問題は、今日から本格スタートする、プリンセス遥香ブランドがどれぐらいの売り上げを得られるかですね。」
「社員や実習生達が自分も着たいと話しています、売れる商品だと思います。」
「イベントの映像は何時頃からですか?」
「ネット向けの編集作業が済み次第アップして情報を流します。
式典と各イベントを分けて一つずつ上げて行きますから、気になる人は何度もサイトを見る事になります。
ファンクラブ遥香姫親衛隊の案内、ファンクラブサイト内での通販の案内も並行して始めて行きます。
テレビは明日の情報番組で流れる様です。」
「どれぐらいの反響が有るか楽しみですね。
今日リニューアルオープンの店はどうでしょう、気になりますね。」
「はい、パソコンどうぞ。」
「有難う…。
ファミレスは、この額ならずっと満席ね…。
ブティックは…、ふふ、改装前の一か月分ぐらい売り上げてるわ。」
「行けそうですね。」
「ええ…、この勢いが通販や今後オープンさせる店舗でも有れば、強気の製造計画で正解だったと言えますね。」
「応援要請が必要になるレベルかもしれません。」
「そこまで伸びて欲しいですね。
これから毎週の様にプリンセス遥香系列として店をリニューアルオープン、サイトが賑やかになれば相乗効果も期待出来る…、問題は各店舗がきちんとワンランク上げてくれるかですね。」
「はい、その辺りの調査は遥香姫親衛隊にお願いしてみたら、と静香隊長から提案が有りまして準備を進めています。」
「良いわね、お客様も一体になって店の質を維持向上させるのは店舗展開の理想形かもしれません。」
「それも遥香さまあっての事です、社長にファンクラブが有るなんて聞いた事が有りません。」
「それを静香は上手く活用してくれているのね。」
「はい、隊長からは良い提案を幾つか頂いております。」
「始めは少しイレギュラーな形で高校生社員になって貰ったけど間違ってなかったみたいね。」
「ですね、初めて彼女を見た時はどうしてこの子をと思いましたが、みるみる成長して、素質のある子は環境が良ければ伸びるが早いのですね。」
「私が高校生会議に拘っているのはそこなの、素質が有るのにそれを活かす環境がなくて無駄な時間を過ごしている人達にチャンスを上げたくて。」
「分かります、ファミレス研修の子達も真面目に取り組んでホールの仕事だけでなく、店の仕事全般に興味を示し学習していると聞きました。」
「高校生会議での研修で、そういう人を優先して貰ってます。
単にバイトしたいというのではなく、実習を通して自分のスキルアップを考える人の為のプログラムなのです。」
「分かりました、今後強く意識して事に当たらせて頂きます。」
「お願いします。」

前野さんには色々お願いしてる事も有って、高校生会議に対する想いは話すタイミングを逃して来た。
前野さんが強く意識して下さるだけでも心強い。
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九月-03 [高校生会議-07]

プリンセス遥香ブランドの商品は順調に売れている。
遥香コーポレーション創立から一週間ほどのタイミングで、学校を休み朝から社員達と過ごす事にした。
社員を労う意味も有る。
日頃はシステムを通してのやり取りだが実際に会って話す事も大切だ。

「遥香さま、親衛隊の制服ですが関係企業から百着単位の注文が幾つか来ています、タオルなどのグッズは千単位ですが…。」
「承知しています、社長がうちの社員になりますから販売にも力を入れて下さっています、押し売りにならない様、指示は出しておきましたから安心して下さい。
他の商品はまとめて発注とは行きませんので通販サイトを通してとなるのでしょう。」
「製造を応援にも回してよろしいですか?」
「すぐに依頼して下さい、無理の無い様に進めないと質が落ちたりお客様を無駄に待たせる事になります。
白井さん、親衛隊の制服を元に、遥香システム開発部の制服を企画して貰えませんか、彼等からのリクエストでも有りますが、今後多方面で同様の企画を進めて行きたいと思います。」
「分かりました、すぐにデザイナー会議を招集します。」
「著名デザイナーをチョイスした企画は、最高の私という売りで如何でしょうか、検討お願いします。」
「はい、デザイナーの方との調整は進んでいます、遥香さまをイメージしてという声が有りまして、モデルをお願いしてよろしいでしょうか?」
「大丈夫です、私のスケジュールには気を付けて下さいね。」
「はい。」
「遥香さま、笹山社長よりのサンプル画像が届いていますが、もうご覧になられましたか?」
「はい、鈴木さんはどう思われましたか?」
「高級感が有りますし、インテリアとして部屋に合う様カスタマイズも可能、文句の付けようが有りません。」
「では、製造販売の計画を笹山社長と調整して下さい。
利益率を高く設定、安易な値引きは厳禁という事を忘れないで下さいね。」
「承知しました。」
「あっ、滝さん、お久しぶりです、出して下さった企画、面白いです、まずはローカルでの展開となりますが、それを踏まえての全国展開を考えています。
入社間もない状況で動きにくいかも知れませんがサポートも付いて貰いますので進めて下さい、お願いします。」
「はい、遥香さまに納得して頂ける結果を出したいと思います。」
「前野さん、どうかされましたか?」
「いえ、遥香さまが来て下さって皆さん嬉しそうです、でも作業効率は落ちますね。」
「たまの事だから許して下さいよ、前野さんは遥香さまのおそばにいる時間、長すぎです、代わって下さい~。」
「ふふ、良いのですか、私のそばにいると痩せる思いだと話す人もいますが。」
「お願いします~、最近太り気味なんです~。」
「ち、違うだろ、私の姫さまに失礼じゃないか。」
「あっ、前野氏が怒った。」
「はいはい、今度奢って上げますから皆さん仲良くして下さいね。
立ち上げまで落ち着きませんでしたが…、まあこれからも落ち着かないとは思いますが、私は十月から、しばらくこの地を離れます。
それまでに皆さんと会食の機会が有ればと思っています、勿論、強制では有りませんよ。」
「大宴会ですか?」
「いえ、それでは皆さんと落ち着いて話が出来ません、グループ分けは白井さんにお願いして良いですか?」
「は、はい、勿論です。」
「白井、親衛隊は程よく分散させろよ、遥香さまをお守りしなくてはならないからな。」
「何言ってんだ、遥香姫親衛隊に登録してない社員なんていないぞ。」
「遥香さま、ここは不思議な会社ですよね、社員一同社長に忠誠を誓い…、社長の事が大好きで。
そして私達の常識を遥かに超える、姫社長のお力…。」
「ふふ、それを発揮できるのも皆さんのお力有っての事ですよ、これからもよろしくお願いしますね。」
「勿論です、でも…、時々は今日の様に来て下さると嬉しいのですが…。」
「来ますよ、でないと白井さんの恋の行方を確認できないじゃないですか。」
「えっ、え~、白井さん、本当なの?」
「も~、遥香さまったら、また悪い御冗談を…。」
「う~ん、白井さんも高校生会議のサポートスタッフになったら如何?
ボランティアだけど活動を通して出会いが有るかも知れませんよ。」
「は、はい…。」
「社内恋愛も推奨します、皆さん真面目な交際をして下さい、不倫はだめですよ。
それと会食のグループ分けに希望の有る人は白井さんにお願いして下さい。
勿論白井さんと同じグループ希望という男性社員を大募集してますからね。」
「どうして私ばかり…。」
「白井さんの目標は三十迄に結婚、準備を考えると残された時間は僅かです。」
「そんな事、遥香さまに話した覚えは有りませんが…。」
「父から聞きましたが。」
「あ~、清音部長か…。」
「はは、思わぬ情報源だな、白井さん、辞令が下りたから、もう清音副社長だよ。
そうだ、いっそこれから本社で採用する男性は白井さんの好みに合わせて貰えばどうだ、遥香さま如何です?」
「そうね、でも、問題は相手の人が白井さんではなく他の女性を選んでしまう確率の高さかしら。
うん、新企画、白井さんの女としての魅力を引き出す、もしくはでっち上げる。
社長補佐をお願いする時にワンランク上を目指して頂く筈でしたが、今一つ結果が見えていません。
コーチを置いて、ワンランク上の女性に作り上げましょう。
その過程をまとめて、ファンクラブサイトにアップしても良いです。
その為の人員確保は前野さん、お願いしますね。」
「了解しました、漫画作成チームにも協力して貰いましょう。」
「私、仕事が…。」
「雑事は部下に指示し任せて下さい。
ダブルワークでうちの社員になって下さる社長達の事も有りますから、社内組織も再検討します。
システム内には社内組織に関するページを作りましたので一度確認して下さい。」
「これは白井さんに対する鞭なのか?」
「多分愛の鞭だろう。」

白井さんは気を付けていないと、部下に任せるべき所も自分で進めてしまおうとする傾向が有る。
結局、そこも含めての白井さん改造企画には高校生会議のメンバーにも参加して貰い、メイクや衣装から管理者の有り方までの研究という事になった。
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九月-04 [高校生会議-07]

会社創立式典などはテレビの情報番組で紹介された。
そのテレビ局関係者から一つの打診が有ったが、これには少し迷った。
情報番組内でプリンセス遥香のコーナーを設けてはという事だ。
現時点での売り上げ状況から考えると、余り目立ってしまうと売り上げがさらに伸び生産能力の限界を超える可能性が出て来る。
生産体制の混乱は避けたいが、有名ブランドの仲間入りをするチャンスでは有る。
ここまでグループ企業とも連携し、強気で生産能力を高めて来た。
だが規模を拡大するとリスクも大きくなる。
色々考えたが…。

「遥香、会社の方はどうだ?」
「うん、お父さん、強気で攻める事にした。」
「あっという間にでかくなったが、大丈夫か?」
「デザイナー達の力を信じる事にしたの。」
「成程、ブランドの商品が売れているのはデザイナーの力ということか。」
「勿論、プリンセス遥香のイメージ戦略が成功した事もあるわ。
でも、この先伸びるかどうかは商品その物を気に入って貰えるかどうかでしょ。
今の所の分析では、一度購入された方が次もと考えて下さる確率は低くないのよ。」
「製造は大丈夫なのか? すでに王国内に応援要請をしているのだろう?」
「今の所は喜んで頂けるレベル、余力の有り過ぎた工場と生産計画の調整をしているわ。
後は、潰れかけの縫製工場を買収する方向でね。
グッズ関連は余力の有る工場を選んで、そこで製造できるものをグッズとして売り出す様に指示して有るの。」
「王国内の無駄をなくすという事か。」
「ダブルワークの社長達も指示に従って動いて下さってる、少しぐらいの損失ならカバー出来る体制が有ると考えての強気なの。」
「それで、今後の展開は?」
「テレビ局からの打診に乗る事にしたわ。
情報番組内に週一回十分程度でプリンセス遥香のコーナーを年明けぐらいからスタート。
条件を煮詰めるのはこれからだけど、出演のメインは私と静香、脇は高校生会議から出て貰う。
こっちは、宣伝の為にお金を出すけど、出演料の形で一部を回収、視聴率に貢献出来ればギャラの交渉となるかな。」
「という事は、その十分は遥香の好きな様に出来るという事か?」
「まあね、局の担当は他の番組にも出れば、こちらの負担分はさらに回収出来ると話してたわ。
高校も中退するから、適当に広告塔になろうと思うの。」
「歌の話はどうなんだ?」
「そっちは岩崎のお母さまにお任せしてあって、レコーディングやテレビ出演もスケジュールに組み込まれてる、それが有るから、番組は年明けからにしようと思うのよ。」
「そうか、頑張ってるんだな…、私は会社で遥香さまのお父さんという立場が微妙なんだが。」
「何か問題でも?」
「皆が遥香の事知りたがってな、適当に誤魔化しているが。」
「適当に失敗談とか作る? 口裏は合わせるわよ。」
「岩崎本家からは美しさと知性でとの指示なんだろ?」
「少しぐらいは皆さんに楽しんで頂けるエピソードが有っても良いと思うわ、作り話しでも。
家族しか知らない事ならバレないわよ。」
「作るか…、遥香はほんとに卒なく育ったからな…、いっそ嘘かも知れないと思わせる逸話を作って、突っ込まれたら嘘でしたと白状するパターンにしようかな。」
「頑張ってよ、岩崎のお父さまと一緒にテレビ出演なんて事も有るかもだからね。」
「それは勘弁して欲しいが…。」
「ぼやぼやしてると、岩崎のお父さまは親馬鹿全開だから負けちゃうわよ。」
「う~ん、勝負なのか…。」

テレビ出演の話は結構来ている、だが、しばらくは商品の生産能力と売り上げを見ながらスケジュールを決める様に指示してある。
丁寧に製造している事もあって生産規模の拡大には時間が掛かりそうだからだ。
通販では、商品が届くまでに時間が掛かりますと告知しているが冬物が春に届く様では信用をなくす。
販売数を限定する事も考え始めているが、宣伝をして置いて売り切れましたというのも微妙では有る。
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九月-05 [高校生会議-07]

遥香姫親衛隊、つまり私のファンクラブは募集開始後から急速に会員数を増やしている。
岩崎王国関連企業では社員の半数以上が登録という所も少なくない。
王国外の人も順調に増えている。
当初はプリンセス遥香の紹介やネット販売を主に考えていたが、事業規模の拡大に合わせ、こちらが親衛隊の力を借りる事も。
勿論、ファンクラブの会員だから、強制する事はない。

「静香、親衛隊の力は大きいわね。」
「はい、プリンセス遥香系列店が遥香さまの思っておられるレベルで有り続ける様にと提案させて頂きましたが、そこから随分発展しました。
皆さん、遥香さまの為に働けると喜んで下さっています。」
「ファンクラブ会費を払って、商品買って、ただ働き…、実態がバレたら私の腹黒さを非難する声が殺到しそうだな~。」
「大丈夫だと思いますが…。」
「リニューアルオープンした店も、親衛隊の目が有る事で程よい緊張感が有るみたいね。
こちらが必要としてる工場の情報も、お勧めの潰れかけ工場情報とか、パート先が遥香コーポレーションの傘下になったら嬉しいとか、実際に社員が調査に入って吸収合併の検討を始めた所も有るのよ。」
「そこまでとは思っていませんでした。」
「合併を成立させるまでの過程は岩崎本部から慣れた人に来て貰って、私のスキルアップを兼ねてと考えているの、その交渉の過程で親衛隊からの情報は貴重だわ。」
「遥香さまが自ら動かれるのですか?」
「ええ、一度は経験しておきたいの、次回からは担当者にお任せね。
規模の拡大に合わせて合併だけでなく組織の再編成を考える必要が…、常に有るのかしら。
ダブルワークの形で社員になって下さった社長達が動き易い様にしないといけないでしょ。」
「社員は社長達のパワーに圧倒されている様です、事業規模が一気に拡大へ向かっていて。」
「でしょうね、皆さん実績の有る方ばかりですから、でも、彼等も初心に帰れて新鮮で楽しいそうなの、その勢いで高校生会議にも力を注いで下さるそうよ。」
「それは優子さん達も喜んでくれそうですね、高校生会議全体がより活発になる事は王国の発展に繋がると。」
「高校生会議メンバーも親衛隊に大勢登録してくれたわね。」
「一過性のブームに終わっても良いから、今は遥香さまを多くの人に認知して貰おうと動いています、遥香さまは岩崎高校生会議のシンボルでも有るのですから。」
「う~ん、そうね…、テレビでは短期間売れて消えてしまった様な人でも、その時の知名度を利用して、その後もそれなりに稼いでる人もいるって、静香は知ってた?」
「余り興味がないので…、でも知名度は強みだと思います。」
「私も昨日教えて貰ったの、でも今はね…、静香、現時点での問題点は把握できてる?」
「一つはプリンセス遥香ブランド商品の売れ行きと生産能力のバランスだと思います。
後は社内組織の構築が急激な拡大に追いつけていない事かと。」
「うん、大きな所は理解してくれてるのね、宣伝し過ぎると混乱しかねない状況、それで洋服関係を抑え気味にして他の商品を表に出して行こうと考えているの。
静香は男性からも女性からも憧れられる存在としてファンが増えてるから、商品紹介に力を貸して欲しいのだけど。」
「ちょっと恥ずかしいです、でも、私は少しでも遥香さまのお役に立てればと、ただそれだけですから。」
「ふふ、その謙虚さが人の心に届くのでしょう、来月から会う機会が減りますが、ファンサービスは私の分もお願いしますね。」
「はい、まだまだ不慣れですが遥香さまの負担を減らせればと考えています。
グッズの販売に人の目を向けて貰える様にすれば良いのですね。」
「ええ、高級品中心になるから衣装は女王様っぽくね。」

静香とは完全に主従関係が出来上がってしまった。
彼女がそれを望んでいる事も有るが、現代社会で…、でも私達だけでなくこの様な主従関係は色々な形で存在している気もする。
人は平等ではないのだ。
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九月-06 [高校生会議-07]

社員との夕食会は毎晩の様に開かれた。
主だった幹部社員は数名ずつ、他の社員はまとめて創立記念パーティーの形でとなった。
幹部社員との席では…。

「遥香さま、今日笹山社長の所から、遥香コーポレーションの支社を置きたいとの打診が有りました。
部屋は確保出来るとの事です。」
「そうですね、了承して他の社長社員へも情報を流して下さい。
杉浦さんの所の様に近くの支社に属している所は必要有りません。
支社で色々負担して頂いて本社の負担を減らしましょう。
笹山さんの方で支社長を決めて頂いて構わないとお伝え願います。
それと杉浦さんはシステム販売部部長に昇進して頂いて、遥香システムは本社から切り離して下さい、向こうの支社に任せましょう。」
「分かりました、今、済ませてもよろしいですか、ノートパソコン有りますので。
遥香システムを使えばすぐ済みます。」
「大丈夫です。」
「では、失礼します。」
「新しい支社が機能すれば組織固めの目途が立ちますね。」
「ですね、短期間で一気に拡大、服を売るブランドから高級品中心の総合ブランドになりそうです。
遥香さまは岩崎王国内のすべての高級品をプリンセス遥香ブランドでと考えていらしたのですか?」
「勿論です、特別職、姫としての務めです。」
「とんでもない事を当たり前の様に話されるから…。」
「混乱はしていますが、そこから色々見えていませんか?」
「はい、スタッフの力量や各自のモチベーションが、誰がリーダーに向いているのかも。」
「確かにそうだ、混乱が無かったら私のサブも決めづらかったと思う。
皆が納得する働きをしてくれる機会になった事がプラスに作用しましたが、遥香さまは、そこまで見通してみえたのですか?」
「偶然が重なっての規模拡大、見通していたというよりは、それを利用する事を考えました。
私はシステムを通して社員を見ているだけです。」
「私の昇進は遥香さまのご指示と伺っていますが、やはりシステムを通しての判断だったのですか?」
「はい、一早くシステムの可能性に気付いて下さいましたから。」
「随分、アドバイスを頂いての事でしたが…。」
「同様の助言をしても、成果を上げられない人もいます。
上の立場になった事で、個人の力量差を感じていませんか。」
「それは感じます、それに対してバランスの取れた指示を出す様、遥香さまからアドバイスを頂きましたが難しいです。」
「五人に同じ作業結果を求める必要は有りません、人それですから、後は私の様に腹黒く指示を出せば良いのですよ。」
「えっ、腹黒くですか?」
「相手の心理状態を見ながら指示を出して行く、隣の社員の倍働いても、本人が納得していれば問題ないのですよ、ふふ、私って、嫌な小娘でしょ。」
「い、嫌じゃないです! 大好きです!」
「お~、大胆告白、勇者だなお前、俺は思っていても口には出来ん。」
「わ、私は遥香さまの外見だけでなく、リーダーとしての器に惚れての部下ですから。」
「有難う、斎藤さんがリーダーとして成長して行く所を見守っていますからね。」
「は、はい!」
「あ~、完全に遥香さまの掌の上で遊ばれてるわね。」
「俺達も似た様なものだろ。」
「そうね、それが何故か心地よいのよ。」
「美しき天才少女に酔いそうだな…。」
「お前、飲んでないだろ。」
「遥香さまとの貴重な時間を酔っぱらって忘れてしまったら一生の不覚だぞ。」
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九月-07 [高校生会議-07]

プリンセス遥香グループとしてリニューアルオープンした店へは顔を出しておきたかったが、店を混乱させる事になりそうなので諦めた。

「ねえ、静香がファミレスで働いていてもお客さんが騒いだりしないの?」
「はい、主に厨房で働いていますから、雨の日とか来客が少な目の日はホールに出る事も有ります。」
「そうか、元々料理得意だったものね、得意料理とか有るの?」
「基本的にマニュアル通りという感覚です、得意不得意は感じません、それがチェーン店だと思っています。
ただ接客は、遥香さまに指摘されてから、マニュアルの限界をホール担当と話し合っています。
皆、マニュアル通りでは心のこもった接客は出来ないと考えています。
必ずしも将来接客業に就こうと考えてる人ばかりでは有りませんが、例え実習でもお金を頂いている以上プロとして誇りを持って働こうと真面目に取り組んでいます。」
「高校生会議での研修が生きてるのね、大人の人のバイト体験を聞いていると、雇う側に余裕が無かったり、雇われる側の意識が低かったりという事が結構あるみたいなの。
きちんと取り組めばどちらにとってもプラスになるのにね。
静香の自己研修は今後どんな予定?」
「正直、もう少しファミレスで働きたいのですが、親衛隊関連に多くの時間を使いたいと思っています。
研修の比率を調整しながらになりますが、モデルの仕事も有りますし、遥香さまに言われた、人を使う練習も…、自信はないですが、遥香さまのお近くにいたいですから…。」
「大丈夫、静香なら出来るわ、なに、隊長に成りきってしまえば良いのよ。
あなたは数万人規模の親衛隊隊長なんだからね。」
「それは全く実感出来ません。」
「う~ん、一度、親衛隊に集合を掛けてみる?
集ってくれた人が喜びそうなイベントを開いて、その中の少しの時間を利用して協力を呼びかけるとか。
そんな企画も信頼出来る部下に任せて、静香はチェックしたりしてれば良いの。」
「そうですね…、考えてみます。」
「イベントの案だって親衛隊に振れば色々出て来るかもよ。」
「そういう事なのですね、白井さんの話は聞いています、そういった事も含めて自分の研修を考えてみます。
現実はともかく、バーチャル王国では一番多くの部下を従えていると言われてますので。」
「うん、遥香姫親衛隊隊長の名において指示を出してあげなさい、みんな隊長からの指示を待ってると思うわ。」
「はい。」
「で、話を戻すのだけど。」
「えっ、何処までですか?」
「厨房のマニュアル、あのファミレスチェーン店は順次プリンセス遥香仕様にして行く訳だけど、各店舗ごとに個性を出して行きたいと思うの、どの店でも同じ料理ではなくね、まずは高校生向けを提案して好評な訳だけど、静香がマニュアル通りに作るだけと感じるメニューばかりでは、厨房のモチベーションが上がらないと思うのよ。
日替わりで、誰かの得意料理とかどうかな?」
「あっ、はい、相談してみます、今は満席の時間が長いですが、続くかどうかは今後のメニューに掛かってると思います、これからリニューアルする店にも…、こんな時も遥香システムは便利ですね。」
「そう、思うのは静香がシステムを使いこなせているからよ、レベルに合わせて微調整してるけど、静香はフルシステムを使いこなしてるのだからね。」

こんな会話で静香に自信を付けて貰って来た。
話してる内容に嘘は無いが、静香の心をコントロールしている訳で、少し自己嫌悪に陥る、彼女は素直だから何も疑う事無く作業を進めるだろう。
私は少しばかりの後ろめたさを、王国拡大という大義に隠して進むしかない。
リーダーの孤独という事か…、今度、社長達に聞いてみようか、岩崎社長レベルだとどんな感じなのだろう。
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九月-08 [高校生会議-07]

静香が実績を上げてくれた事で高校生社員の可能性を社員達も考える様になった。
そこで、うちへの就職がほぼ決まった実習生対象に、バイト実習生から高校生社員へのステップアップを可能にした。
就職内定の四人全員が応じてくれて…。

「もう聞いていると思いますが高校生社員になっても、自分の都合に合わせて働くという事に変わりは有りません。
違いの一つは、まずファミレスのバイト実習生としてファミレスから給料が出ていたのが、同じ仕事をしていても遥香コーポレーションからの給料となり、ささやかですが昇給する事。
もう一つは遥香システムへのアクセスが可能になるという事です。」
「遥香さま、システムは難しいのですか?」
「何を担当するか、どう使うかによって難易度は変わります。
まずは、ファミレス関連で使ってみて慣れて下さい、静香達が構築したワークシートを、まずは皆さんと静香を含めた五人で更新して貰います、実際に使って慣れて下さい。
使い方が分かって来たら個人でワークシートを作成したり、閲覧可能なワークシートを見るのも良いでしょう。
閲覧中に気付いた事が有ったら静香の個人シートにアクセスして意見交換、使い方は担当社員が教えますが、しばらくは静香を上司だと思って下さい。
ただ、静香は色々な仕事を抱えています、四人の中から次のリーダーを選び、彼女にはファミレスのワークシート更新から離れて貰います、出来ればリーダーを目指して競い合って下さい。
四人とも上を目指して下さる方と伺っています。
静香には実験的に高校生社員となって貰いましたが、皆さんの実績次第でこれから徐々に増やして行こうと考えています。
ワークシートの更新状況から判断して、後輩の指導をお願いする事も有ると理解して下さい。」
「やはり、高校卒業後から研修を始めるより効率が良いとのお考えですか。」
「はい、でも単純な前倒しと言う事だけでなく、正式入社後の部署を決める参考にさせて頂きます。
また、皆さんが王国内転籍を希望された場合、遥香システムは王国標準になっていきますので、慣れておいて損は有りません。」
「遥香さまの下で働きたくて頑張ったのですから、システムにも頑張って慣れるようにします。」
「はい期待しています、開発チーム遥香姫として私がアクセスする事も有りますからね。」
「随分お忙しそうですが大丈夫ですか?」
「優秀な部下が揃っています、のんびり高校へ通いながらという計画は、親馬鹿全開のお父さまに却下されましたが、それでも余裕は有るのですよ。
そうだ、来月から大学へ行きまので大学生を紹介します、大学生とも交流すれば視野が広がると思います。
う~ん…、そうね…、皆さんの練習として真面目な出会い系を作る様に指示しておきます、既婚者にはアスセス権を与えずに、細かい事は相談して決めて下さい…。
条件に応じて閲覧出来る形で…、システムを利用している全社で使える様に構築しましょう。
うちは社内恋愛を推奨していますからね。」
「えっ、何社ぐらいになるのですか?」
「今は絶賛拡大中、そうね年内に二十社ぐらいは普通に使える様になるかしら、会社によって調整が必要なの、メインシステムは同じですが。
来年は一気に拡大させます、維持管理は遥香コーポレーション、遥香システム管理部が受け持つ、うちの重要な収入源なの。」
「そんな部門が有るなんて知りませんでした。」
「システム販売部、システム開発部も有るのよ。
そうね、そのまま王国内の合コンやお見合いを企画する部署を作りましょうか。」
「簡単に出来るものなのですか?」
「無理かしら?」
「部署によっては男女比のバランスが悪かったり、性格的に後押しを必要とする人もいます。
私は需要も有り、企画そのものが楽しければ事業として成り立つと思います。」
「では、聡美さんはその部署の企画を練って下さい。
担当社員にもその旨、伝えておきますからね。
有る程度形が出来た段階で公開します。
そこから社員がどう対応するか体験して下さい。」
「は、はい、全力で頑張ります。」
「聡美さん、それはだめなの、全力でやろうとして他がおろそかになって欲しくないわ、ファミレスのシフトから外れても良いですが、自分の労働計画を担当社員と相談して決めて、時間外労働をしない様に気を付けて下さい。」
「はい。」
「遥香さまの下で働くって、こういう感じなのですね、私も頑張ります、勉強も疎かにしない様に気を付けて。」
「お願いします、高校生社員の可能性には期待の声と不安の声が届いています。
でも高校生会議での研修、ファミレスでの実習を経験して来た皆さんなら大丈夫だと思っていますし、人事担当の推薦が有って採用させて頂く訳で、期待の声の方がうんと多いですからね。」
「そうなるとファミレスは聡美を抜いた三人でという事ですね。」
「どうかしら、聡美さんがシステムを理解したら分かりませんよ、担当者は教えるのが上手ですから。
仕事ではライバルになって、でも普段は仲良くして下さいね、あっ、恋のライバルになる可能性は有るのかしら。」
「聡美は彼氏いるけど私達は…。」
「あ~、私も恋のライバルになりたいな~。」
「それはだめです、遥香さまと釣り合う様な男性は身近にいません。」
「皆さんそう仰るのよ…、私は一生独身なのかしら。」
「いえ、いつか王子様が現れますよ。」
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九月-09 [高校生会議-07]

聡美さんの仕事は早かった。
それは、自分で多く考える前に、骨格だけをまとめて社員の意見を聞く様にとの助言を彼女が素直に受け止めてくれたからだ。
彼女は、提案の形で遥香コーポレーション全社員に発信、社内優先度は低くしたが高校生社員からの発信という事で注目を集めた。
その状況を父と確認…。

「お父さん、公開時から見ててくれた?」
「ああ、遥香の指示だからな。
休憩時間の暇つぶしにかなりのアクセスが有ったぞ。
社員達はワークシートの構築を手伝ったり、助言したり、システム開発部は部長の許可を得て登録のサンプルページその一を作成…、ほらこれだ。」
「開発部にとっては簡単なことでしょうね。」
「公開時シンプルだったワークシートがすでに婚活支援部(仮)として…、このままスタート出来そうな勢いだな。」
「履歴を見ると一人一人は仕事の合間の短時間で自分達の作業に支障はなさそうね。」
「まあ長時間作業していたらすぐに上司が指示を出すだろう、その為に各自が作業しているシートを上司が確認できるシステムにしたのだろ。」
「う~ん、休憩時間を使ってのサービス労働かしら?」
「いや、後輩の指導で息抜きだろう、聡美くんは普通に可愛いじゃないか。」
「あっ、彼女の指導担当者と今後の相談が進んでるわね。」
「新たな事業として進めるのか?」
「ええ、思ってたより社員に余裕が有りそうで嬉しいわ。」
「かなり増員してるのだろ?」
「それでも研修に時間が掛かると思ってたの。」
「そうか、新人がトレーニングの一環という形でアクセスし提案も有ったがシステムの基本は理解出来てる様だったな。」
「聡美さんはどう?」
「学校の休み時間にアクセス、授業後は作業終了を担当者から告げられるまで、ずっと張り付いていたみたいだ。
まあ、助言を素直に受け入れていた。」
「相反する助言はなかったの?」
「有ったが、それに対する対応の仕方は学生が助言していた。」
「彼女の判断は?」
「まだ、判断するレベルに至ってないと思う、事がもう少し進まないとな、彼女の力量はまだ分からない。」
「新規事業で彼女をどのポジションに置くかを急ぐ必要は無いわね、彼女抜きで進める事も有りかな。」
「トレーニングを始めたばかりなんだろ、今回の事だって少し荷が重かったかもしれないぞ。」
「そこは指導担当と相談してあるの、どの程度の力量でも無理なく、バランスを考えての指導を心掛けてくれてる筈よ。
ただね、彼女は合理的に考えた上で、進学ではなく就職を選んでるの、遊び半分で進学するより、早く自立したいと。
高校生会議での評価も高いのよ。
彼女が今後良い形で目立ってくれれば良い影響が広がると思ってるの。」
「分かった、私も気にかけておくよ。
ところで男子生徒は採用しないのか?」
「元々は女性をターゲットにして始めたでしょ、だから高校生の男の子では色々な意味でハードルが高いみたい、社員になって欲しいレベルの子は進学が多いしね。
支社では大学生社員計画を進めて貰っていて、多分男性が多くなりそうよ。」
「どうなんだ、遥香は婚活支援部が出来たら利用するのか?」
「そうね、姫になってから告白される事が無くなった、どさくさに紛れて好きですと言ってくれる人はいる、でも付き合って下さいって雰囲気ではないの、私、お嫁に行けるのかな?」
「そんな心配しないで、ずっとここで暮らせば良いからな。」
「ねえ、もし私がお嫁に行ったら泣く?」
「はは…、泣く訳ないだろ…。」

お父さんは泣くと思う。
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九月-10 [高校生会議-07]

思っていたより九月は慌ただしく過ぎた。
それは事業拡大を優先した自分に責任が有る。
まあ、それなりに楽しかったので問題は無いのだが。
大学入学に向けての、個人的な課題である高等学校卒業程度認定試験は、調べてみた所、名前を書き忘れると言った初歩的なミスさえ犯さなければ合格出来そう。
岩崎社長が私の為と言い切る大学は一旦仮校舎で始まる予定だが、準備は着実に進んでいる。
三年生の優子さんとは同学年になる予定。

「遥香さまはここで大学一年生となられる訳ですが、私はやはり本校なのですか?」
「はい、ここでの初年度は実験的な展開になります、一年生は私だけで後は実習を兼ねた本校からの先輩方でスタートします、システムに問題が無ければ優子さんを受け入れる事も可能ですが、本校で色々体験なさるのも良いと思います。」
「そうですね、父からは向こうでの人脈も大切だと言われました。
でも…、私の進学が決まった頃は寂しそうだったのに、最近の話題は遥香さまの事ばかりで。」
「久兼社長にはお世話になっています。」
「父親なんてどうでも良いと思ってましたが何か妬けるのですよ、遥香さま。」
「ふふ、それより高校生会議にも遥香システムを導入しますから早く慣れて下さいね。
そのまま、大学での学習や研究に役立つ様にしますので。」
「分かりました、導入されるのが楽しみです。
遥香さまは何時頃まで大学で作業をされるのですか?」
「決めていないの、急ぐ必要はないでしょ、岩崎村にもしばらく滞在しようと思って…、でもどちらも寒いのよ、寒さに負けて帰って来るかも。」
「はは…。」
「もし冬休み期間に向こうにいたら、遊びに来て下さいね、最優先で使える別荘が二軒有るの、大学の近くと、お父さま宅の近くにね。」
「家族旅行で行きますから時間が合えば、寄らせて頂きます。」
「では久兼社長と相談しておきますね。」
「父さんも遥香コーポレーションの平社員を兼務すると話していましたが本当ですか?」
「ええ、杉浦社長がうちの部長を兼務して下さっているのは知ってるでしょ、同じ形なんだけど社員のダブルワークも試してみる事になったの。
部署によっては作業量が一定では無くて暇になる事も有るそうなの、そんな社員から希望者を選んで
暇な時間は遥香コーポレーションの作業をお願いする訳。」
「効率は良いのでしょうか、給料とかが複雑になりませんか?」
「給与体系は基本的に同じ、協力関係に有る会社同士だから給料負担比率はあまり細かく計算しないで済むと思うわ。
毎日同じ作業というより、変化が欲しい人向けの働き方、予備調査によると希望者は少なからずいるそうなの。」
「父さんがその調整をするのですか?」
「そうね、でも実際はうちから出向の形で久兼社長の部下になる社員が回してくれるでしょう、そうね久兼社長はうちの係長って事かな。」
「それで嬉しそうだったのか…、実際どんな作業を遥香コーポレーションから依頼するのですか?」
「遥香システムを使える人は、本社業務の遅れている所などの応援、使えない人は商品の製造をお願いしたいと思ってるの、うちの高級品は手作業が多いからね。」
「誰にでも出来る仕事ですか?」
「品質が命だから誰でもとは行かないわ、でも予備調査ではやりたいという人が結構いて、いっそ転籍したいという人も。
後は材料の搬入、製品の検品、梱包、発送と仕事は様々、工場の敷地に余裕が有るからうちの直営工場を建てる計画も有るのよ。」
「では二つの会社の結びつきがさらに強くなるという事ですね。」
「ええ、そのまま合併も視野に入ってるわ、お父さまは賛成して下さってるの。」
「でも業務内容は随分違いますよね。」
「遥香コーポレーションでも、遥香システム関連と、プリンセス遥香関連は全くの別物よ。
分社化しても良いぐらいね。
優子さんは分社化についてどう考えてる?」
「えっと…、確か、経営判断を迅速にする為とか…。」
「そうね、逆に言えば形の上で合併しても、経営判断を下す部分を変えなければ同じでしょ。
社長である私が責任を取る訳だけど、今でも経営上の判断はほとんど部長の判断で行って貰ってる。
つまりうちは部長が社長に近い権限を持って動かしてるの。
今後は部長を副社長という形にして、実質的には大勢の副社長がそれぞれの部署を回して行くという形を考えてるの。」
「合併するメリットは有るのですか?」
「給料を払うのは遥香コーポレーション、今まで転籍だった事が、部署の移動になる。
商品の売れ行きが悪くなった時は、すぐ余剰人員を他の部署に転属、転属でなくても、忙しい部署の応援だってし易くなる、ダブルワークも無駄なく出来る様な会社システムにすれば、そうね業績不振な部署で働いていても安心感が有るでしょ。
勿論欠点も有るわ、今はその辺りを分析し研究してる段階、決定じゃないから久兼社長以外とはこの話はしないでね。」
「守秘義務ですね、でもそんな話をなぜ私に?」
「優子さんは大学で経済学部を選ぶと聞きました。
変わった事例として久兼社長と話し合われては如何ですか。」
「私の学習の為ですか。」
「ええ、合併がどうなるにしても、他の学生が簡単には体験できない事です、優子さんにとって貴重な経験となりますよ。」
「はい…。」
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