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九月-10 [高校生会議-07]

思っていたより九月は慌ただしく過ぎた。
それは事業拡大を優先した自分に責任が有る。
まあ、それなりに楽しかったので問題は無いのだが。
大学入学に向けての、個人的な課題である高等学校卒業程度認定試験は、調べてみた所、名前を書き忘れると言った初歩的なミスさえ犯さなければ合格出来そう。
岩崎社長が私の為と言い切る大学は一旦仮校舎で始まる予定だが、準備は着実に進んでいる。
三年生の優子さんとは同学年になる予定。

「遥香さまはここで大学一年生となられる訳ですが、私はやはり本校なのですか?」
「はい、ここでの初年度は実験的な展開になります、一年生は私だけで後は実習を兼ねた本校からの先輩方でスタートします、システムに問題が無ければ優子さんを受け入れる事も可能ですが、本校で色々体験なさるのも良いと思います。」
「そうですね、父からは向こうでの人脈も大切だと言われました。
でも…、私の進学が決まった頃は寂しそうだったのに、最近の話題は遥香さまの事ばかりで。」
「久兼社長にはお世話になっています。」
「父親なんてどうでも良いと思ってましたが何か妬けるのですよ、遥香さま。」
「ふふ、それより高校生会議にも遥香システムを導入しますから早く慣れて下さいね。
そのまま、大学での学習や研究に役立つ様にしますので。」
「分かりました、導入されるのが楽しみです。
遥香さまは何時頃まで大学で作業をされるのですか?」
「決めていないの、急ぐ必要はないでしょ、岩崎村にもしばらく滞在しようと思って…、でもどちらも寒いのよ、寒さに負けて帰って来るかも。」
「はは…。」
「もし冬休み期間に向こうにいたら、遊びに来て下さいね、最優先で使える別荘が二軒有るの、大学の近くと、お父さま宅の近くにね。」
「家族旅行で行きますから時間が合えば、寄らせて頂きます。」
「では久兼社長と相談しておきますね。」
「父さんも遥香コーポレーションの平社員を兼務すると話していましたが本当ですか?」
「ええ、杉浦社長がうちの部長を兼務して下さっているのは知ってるでしょ、同じ形なんだけど社員のダブルワークも試してみる事になったの。
部署によっては作業量が一定では無くて暇になる事も有るそうなの、そんな社員から希望者を選んで
暇な時間は遥香コーポレーションの作業をお願いする訳。」
「効率は良いのでしょうか、給料とかが複雑になりませんか?」
「給与体系は基本的に同じ、協力関係に有る会社同士だから給料負担比率はあまり細かく計算しないで済むと思うわ。
毎日同じ作業というより、変化が欲しい人向けの働き方、予備調査によると希望者は少なからずいるそうなの。」
「父さんがその調整をするのですか?」
「そうね、でも実際はうちから出向の形で久兼社長の部下になる社員が回してくれるでしょう、そうね久兼社長はうちの係長って事かな。」
「それで嬉しそうだったのか…、実際どんな作業を遥香コーポレーションから依頼するのですか?」
「遥香システムを使える人は、本社業務の遅れている所などの応援、使えない人は商品の製造をお願いしたいと思ってるの、うちの高級品は手作業が多いからね。」
「誰にでも出来る仕事ですか?」
「品質が命だから誰でもとは行かないわ、でも予備調査ではやりたいという人が結構いて、いっそ転籍したいという人も。
後は材料の搬入、製品の検品、梱包、発送と仕事は様々、工場の敷地に余裕が有るからうちの直営工場を建てる計画も有るのよ。」
「では二つの会社の結びつきがさらに強くなるという事ですね。」
「ええ、そのまま合併も視野に入ってるわ、お父さまは賛成して下さってるの。」
「でも業務内容は随分違いますよね。」
「遥香コーポレーションでも、遥香システム関連と、プリンセス遥香関連は全くの別物よ。
分社化しても良いぐらいね。
優子さんは分社化についてどう考えてる?」
「えっと…、確か、経営判断を迅速にする為とか…。」
「そうね、逆に言えば形の上で合併しても、経営判断を下す部分を変えなければ同じでしょ。
社長である私が責任を取る訳だけど、今でも経営上の判断はほとんど部長の判断で行って貰ってる。
つまりうちは部長が社長に近い権限を持って動かしてるの。
今後は部長を副社長という形にして、実質的には大勢の副社長がそれぞれの部署を回して行くという形を考えてるの。」
「合併するメリットは有るのですか?」
「給料を払うのは遥香コーポレーション、今まで転籍だった事が、部署の移動になる。
商品の売れ行きが悪くなった時は、すぐ余剰人員を他の部署に転属、転属でなくても、忙しい部署の応援だってし易くなる、ダブルワークも無駄なく出来る様な会社システムにすれば、そうね業績不振な部署で働いていても安心感が有るでしょ。
勿論欠点も有るわ、今はその辺りを分析し研究してる段階、決定じゃないから久兼社長以外とはこの話はしないでね。」
「守秘義務ですね、でもそんな話をなぜ私に?」
「優子さんは大学で経済学部を選ぶと聞きました。
変わった事例として久兼社長と話し合われては如何ですか。」
「私の学習の為ですか。」
「ええ、合併がどうなるにしても、他の学生が簡単には体験できない事です、優子さんにとって貴重な経験となりますよ。」
「はい…。」
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