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近衛予備隊-41 [高校生バトル-47]

「プリンセスが野鳥と戯れる奇跡に関連して、ここへ野鳥研究の専門家がやって来る事になったのだけど、既に近隣のホテルは満室で宿泊施設に余裕はないだろ、そこで急遽キャンプ場建設を前倒しすることになったんだ。」
「研究の専門家がキャンプ場暮らしで良いの?」
「野鳥の観察をしている人達はキャンプ生活に慣れてる人が多いとかでね、ただ、テントと言っても軍が使う様なもので管理をしっかりすれば、俺達の家より住み心地が良いそうだよ。
 長期滞在でも問題無い様にしっかり建て、少なくともプリンセスの滞在中はそこを野鳥観察の拠点にするそうだ。
 ただ、彼らにテントで生活して貰うとしても、この先期間が長くなるかもしれないし、今後コテージを建ててキャンプ場運営をして行くことを考えると、上下水道を早めに完備しないと衛生上の問題が有るそうでね。
 で、寮の建設予定地として確保して有った土地とも近いから、一気に整備を進めた方が効率的だと言う話が出たそうだ。
 プリンセス詩織記念公園は野鳥観察施設も含めた形にして、規模を拡大したいと言う話も有ってね。」
「計画が変更されるの?」
「次に着工予定だった寮の建設用地が公園施設に転用されると決まれば、話は早そうなんだ。」
「プリンセスが小鳥達と自然に戯れる奇跡の動画が公開されてから、まだ間が無いのに…。」
「プリンセスの脳、チーム詩織も興奮気味だそうでね。
 野鳥カードの製造販売は承認されて急ピッチで制作中、プリンセスと戯れる鳥達のことをもっと知れたら楽しいと思う人が彼らの中にも少なからずいるそうだよ。
 野鳥達がプリンセスと仲良しなら、彼らも自分達の仲間だと言う人も居てね。
 プリンセスを迎える為に用意していた飾りつけには、鳥の姿を模した物が加えられることになり、作業を急いでる。
 今後、野鳥は店の売りとなり、プリンセスに関連する店舗ごとにシンボルとなる野鳥を決める事になったんだ。」
「この店はどんな鳥に?」
「個人的に鷹を推したら即座に却下されたよ、平和的な店のイメージにそぐわないとかでね、シャルロット、鷹でも良いと思わないか?」
「プリンセスの映像では鷹の登場で小鳥が逃げ出して終わるのも有るからでしょ、猛禽類は店のイメージに合わないわ。
 でも…、近衛予備隊第三部隊の象徴にするのなら有りかもね、他の部隊がそう言うことを考えていない内に宣言してしまうのはどうかしら、早い者勝ちってことで。」
「それは良い、明日にでも皆に諮って宣言しようか。」
「でも…、第一部隊や第二部隊が異論を唱える様なら、鷹を予備隊のシンボルにするのも有かな。」
「う~ん、そうなると近衛隊がどう考えるのかが…、予備隊が鷹で近衛隊が可愛らしい小鳥ではさすがにおかしいよな。」
「確かにそうね、近衛隊か…、武器を持たず戦わない軍隊…、ねえ、近衛隊には知恵の象徴フクロウを推薦してみたらどうかしら。」
「そうだな、俺達は近衛隊の知恵と力を借りて…、メアリーとも相談してみるよ。」
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近衛予備隊-42 [高校生バトル-47]

 プリンセス詩織来訪の前日、店は当初の予定通り休みとなりプリンセス歓迎イベントに向けての準備を行っているが、予備隊はメアリー総指揮の下、歓迎儀式の最終確認。
 総指揮はメアリーだが、俺はトップとなって号令を掛け、プリンセスを歓迎する言葉を述べと一番目立つ立場、否が応でも緊張感は高まって来る。
 一通りのリハーサルを終えメアリーからオーケーが出た後、皆が着替えて食堂に集まったのはプリンセス詩織が空港に到着する映像を見る為だ。

「あの飛行機に乗ってらっしゃるのね。」
「プリンセスって超美人で姉ちゃんと同い年とは思えないんだよな~。」
「そうね、やっぱ女神様なのかしら。」
「でも両親は普通の人間なのだろ。」
「お父さまも遠江王家の一員だけど国王とは全く血縁関係が無い、そこからして不思議な存在よね、メアリー。」
「そうね、遠江王国そのものが…、謎に包まれてる訳では無いのだけど世界の常識が通用しなくて、血筋なんてリーダーとしての資質に関係ないと言い切ってる、かつての王国では王家の血統を守る為に命がけで戦っていた人達がいたのだけど。」
「戦いもだけど、その為に第二夫人とか第三夫人がいたのでしょ。」
「ええ、一人では心許なかったのでしょうね。
 この国ではどうだったの?」
「部族間の争いが有ったそうだけど、俺達の感覚からしたら族長なんて村長みたいなものさ、あっさり植民地になったからな。」
「植民地になったから町が発展したとは聞いてるけど私達には関係ない事、でも、村の大人達もそう考えて来たから、私達の村は色々と遅れてしまったのよね。
 ねえ、メアリー、どうしてこの村が選ばれたの?」
「そうね、貧乏な村で鉄道の駅からバスでそんなに時間が掛からない…、道路工事が完了したら駅からここまで、バスでの時間は三十分ぐらいに短縮されるのよ。
 それと、人口が少なく畑も少なかったから、全部を作り直すのに丁度良かったの。
 その隣村に素敵な子ども達が住んでることは当初分かって無くてラッキーな想定外だったけどね。」
「はは。」
「あっ、タラップに近衛の人が出て来たわ。」
「ならばすぐにプリンセスのお出ましよ、彼女はもったぶるのが嫌いでね、このシーンを見ている人の存在をご存じの筈だから。」
「おお~。」

 飛行機から降りたプリンセスは、近衛に守られながら、国軍の長に迎えられる。
 当初の予定では、護衛の部隊長が迎えることになっていたがプリンセスの奇跡を見た軍幹部が予定を変更し、国軍のアピールを考えたのだとメアリーが教えてくれた。
 プリンセスはこのまま空港近くのホテルで宿泊、明日の早朝に出発しこの村へ、朝のうちに歓迎式典を始めるという予定だ。
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近衛予備隊-43 [高校生バトル-47]

 プリンセス歓迎式典の朝、俺達は落ち着かない時間を過ごしている。
 昨夜、予備隊の幹部は遅れていた飾りつけ作業を手伝い、そのまま店の仮眠施設で宿泊し朝を向かえたのだが、朝食を済ませ、隊の制服に着替えてからは食堂で待機している様に指示されていて自由に動き回れない。
 隊員達は何時になく早めに揃い遅刻者の心配をすることもなく、プリンセスはホテルを予定通りに出発し到着予定時刻に変更は無いなどの情報は流れて来るものの兎に角落ち着かなかった、それでも映像が入って…。

「おっ、パレード開始地点の映像に切り替わったな。」
「人が多そう…、人の整理も国軍が担当なのね。」
「この映像が流されているのは国内だけではないからな、国軍としては、その存在をアピールしたいのだろう。」
「でも、近衛隊と比べたら軍服がダサいのよね。」
「だな、一応会社として軍服のサンプルを作って営業に行ったらしいけど予算が無さそうで、契約出来ても儀仗兵用の百着程度が限界だとか。」
「儀仗兵用なら一着当たりの単価は高く利益率も高めに設定出来るだろうが、色々な要求をされて実質的な利益は期待出来ないのじゃないか。」
「ああ、でも、それを足掛かりにして装備品を売り込んで行けたらと担当者は話してた、まあ、金の流れを見極めた後、総合的に判断して割が合わない様なら撤退するそうだ。」
「金の流れね、軍ではある所まで昇進するといきなり生活が良くなると聞いたわ。」
「軍人としての資質より金儲けの才能が昇進に関係してそうだ、まあ、戦争の予定は無いのだからそれでも問題無いのかな。」
「俺の従兄は給料の安さに嫌気が差して除隊したが、ジョンなら軍隊でも幹部クラスに成れるのではないか?」
「いやいや、軍からは良からぬ話しか伝わって来ないだろ、こことは雲泥の差だよ。」
「国軍なんかに入ったらだめ、折角ここで経済を学んでいるのだから、それをここで活かして欲しいわ、シャルロットもそう思ってるのでしょ?」
「ええ、私達の村を良くして行くのにはジョンの力が必要なの。」
「村の改革か、最初にメアリーから言われた時はピンと来なかったけど、自分達の村が誇れる所の何もない村だと知ってしまったからな、ジョンが村長に成ればと思うよ。」
「おいおい、この後のことを考えたら落ち着かないし、パレードが開始されたら俺達の出番まで一時間だろ、ただでさえ緊張してる所へ変なプレッシャーを掛けないでくれよ。」
「はは、ジョンが何時になく緊張してるみたいだから敢えてさ、プリンセス歓迎儀式の三十分間と村長としての人生を頑張ってくれよ。」
「あのな~。」
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近衛予備隊-44 [高校生バトル-47]

 歓迎式典の開始時間がせまり、俺は整列した隊員たちに向けて…。

「さあ、いよいよ本番だ。
 俺達はこの日の為に訓練を重ねて来たのだからしっかりな。
 かと言ってミス無くこなすなんてのは可愛げがないとメアリーから言われている、ミスしても気にせず堂々としていよう。
 第三部隊の結成から今まで、俺達は確実に成長した、その姿を世界中の人達にしっかり見て貰おうじゃないか。」

 自分に言い聞かせた様なものだ。

 行進をし、大広場に整列、プリンセス一行の車列を待つ。
 大勢の観客に交じって大きなカメラも見えている。
 じっとしている時間が一番きついのだが、隊員達はぶれなかった。
 永遠とも思われる数分の後、車列が到着。
 プリンセスの車が所定の位置に止まる。
 車から降りられたプリンセスと目が合う。
 いや目が合った気がしたと言った方が正しい、まだ距離が離れていたからだ。
 それでも俺はプリンセスが俺に向かって微笑んでくれた気がして、変な緊張が無くなった。
 タイミングを図って号令を掛け儀式をスタートさせる。

 隊員達は皆誇らしげな表情をしているが目が合うと微笑んでくれた、自分も仲間と共にプリンセスを迎えられることが嬉しくて、メアリーからは凛々しくと言われてたのだが、まあ可愛げが有って良いだろう、なんて考えていた。

 歓迎のスピーチは、式を長引かせない為と、ご老人の挨拶は要らないと言うことで俺だけ。
 発音に気を付け何度も練習して来たが、本番では心の底からプリンセスを歓迎してる自分がいた。

 プリンセスの退場前、もう一度プリンセスと目が合った。
 これは気のせいでは無いと思う、お疲れ様とねぎらって下さったと感じたのだ。

 プリンセスの車を見送った後、俺達も退場、任務終了となった。
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近衛予備隊-45 [高校生バトル-47]

「プリンセスはとても綺麗だったよね、シャルロット、花束を渡す時どうだった?」
「にっこり微笑んで下さって、なんだろ、もっと緊張してておかしくない筈なのに嬉しくてね。」
「わかる~、車から降りられた時に私と目が合って微笑んで下さったのよ。
 もう、緊張が吹き飛ぶぐらいに嬉しく、気持ちが乗っかって、ねえ、ジョン、今日のパフォーマンスは最高の出来だったと思わない?」
「はは、もしかして全員がプリンセスと目が合って微笑んで貰えたと思ってるとか?」
「だよな、俺だけに微笑んで下さる訳がない…。」
「俺はメアリーから言われてた、凛々しく、とは出来なかったけど皆は最高に良かったと思うよ。」
「ジョンが余裕の表情だったからリラックスして出来たのだと思うわ、何時も以上にカッコ良かったし。」

 役目を終えてみんな興奮気味だった、店は歓迎式典の後、普段より時間を遅らせて開店していたが、俺達は午後少し遅めからのシフトになっているので余韻に浸る時間は充分有る。

「みんなお疲れ様、上出来過ぎて可愛げが無くなりそうな所を笑顔でカバー出来ていて良かったわよ、プリンセスもとても喜んでいらしてね。」
「メアリーはプリンセスと話されたのですか?」
「ええ、滞在される宮殿まで送って行く間に少しだけね。
 あなた達のパフォーマンスからみんなの仲の良さが凄く伝わって来たと話されていたわ。」
「仲の良さね…、そう言えば弱い者いじめをしてた男子も少し変わって来たかしら…。」
「何時までも子どもじゃないさ、ジョンにたしなめられもしたからな。」
「今日は特別だったからか仲間だって凄く感じて、みんなと沢山目が合った気がする。」
「俺に惚れたか?」
「ふふ、もう一息かしら、ジョンにシャルロットがいなかったら問題外だったけど。
 メアリー、ジョンのスピーチも心がこもってて良かったよね?」
「ええ、口先だけの言葉でなく…、ジョンが本番に強いタイプとは知らなかったわ。」
「う~ん、それもプリンセスの力かな、観客たちも皆笑顔で。
 明日から近衛隊の皆さんと行動することになるけど何の不安もなくなったな。」
「ジョンは英語を褒められることが多いから問題ないだろ。」
「いや、褒められると言うことは、俺がまだ練習中なのだと相手が感じてる証拠、英語を褒められている内はまだまだなんだ。」
「そうね、みんな店で使う日常英会話は上達してるけど、明日からは環境が変わるからね。」

 環境が変わるのはプリンセスと共に到着した近衛隊の本隊が、この村全体を見直し、全体をワンランク上げる作業が始まるからだ。
 今まで俺達が担って来た作業は大人達に移管して行き、俺達は学習や実習の時間が増えるが、サブフロアーマネージャーと言った役職は変わらず給料が下がることはない。
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近衛予備隊-46 [高校生バトル-47]

 プリンセスを迎えた翌日は部署毎に近衛隊担当者との顔合わせをするところから始まった。
 予備隊の幹部は、それぞれ重要な役割を任されているので、そのまま打ち合わせに入る。
 一般の隊員は自分の担当部署に付いたが、農業実習、建築実習などが再開され、店舗内で働く隊員はぐっと減った。
 店内作業担当も今後は作業時間が減らされ研修時間が増えることになっている。
 それはマネージャー達が打ち出した、成長する店と言うコンセプトに基づく。
 販売アイテム数を徐々に増やしながら、高額商品を扱う高級店として店員達の教育を進めて行くと言う方針は、客が店の成長を感じられたなら、リピーターは着実に増えて行くと目論んでのこと。

 今日から開店前と閉店前のパフォーマンスは近衛隊が担当する、状況を見ながら予備隊も参加することになると言われたが、開店前に見せて貰った彼らのパフォーマンスは迫力が有り予備隊とは全く違っう、練習しても参加出来るかどうかは微妙だと思う。
 もし近衛隊が次の滞在地へ移動した後もパフォーマンスを続けるのなら、形を根本的に変えるべきかも知れない。

 俺はフロアマネージャーの指示で、近衛隊メンバー五名に俺達の担当して来たフロアの説明をし質問を受け、その後の昼食は予備隊幹部の担当だと言うエミリーとフロアマネージャーと共に…。

「マネージャー、第三部隊は優秀だと聞いてたけど、ここまでとは思って無かったわ、マネージャーが育て上げたの?」
「育て上げたと言うより、大人の従業員より信頼出来ると感じてね。
 特に幹部達は頭が良くて素直なんだ、エミリー、この素直さと言うのは成長の速さに直結しているのだよ。」
「大人達がジョンに一目置いてると感じたのだけど。」
「英語の話せない人が多いし、判断力に問題が有ったりしてね。
 分かり易く書かれた指示書通りの作業が出来なかったり、明らかに指示書が間違っていても、それに気付けなかったんだ、それでうろうろしてる所をジョンに助けられることが多くてね、年齢は関係ないのだよ。
 ジョンを通して彼らが私に要求して来た事のほとんどを了承して来たことも有り、彼らにとってジョンは立派で頼れる上司なんだ。」
「成程、ルックスだけで選ばれた隊長ではないのね。
 マネージャーはジョンが現場から離れても大丈夫なの?」
「完全に離れる訳ではないからな、一日一時間程度サブとして動いてくれれば充分だろう、それよりプリンセスや近衛隊がいる内に沢山学んで欲しいんだ。」
「育てて行きたいと言うことなのね、分かったわ。」
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近衛予備隊-47 [高校生バトル-47]

 フロアマネージャーは何時も俺達の成長を考えてくれ、それを感じ取ってからは尊敬の念が増したのだが、このエミリーと言う人はどうなのだろう、とか考えていたら、話がこちらに…。

「ジョンは、特に学びたいこととか有る?」
「これまで店のことを学んで来たのですが、マネージャーやメアリーからは学ぶべきことはまだ沢山有ると言われてます。」
「店以外のことではどうなの?」
「そうですね…、自分達の村が色んな意味で恥ずかしいレベルだと知ってから、もう少しましな村にしたいと考えていまして…。」
「それって、真面目に考えてることなの?」
「はい、この店が出来て自分達は村を離れなくても良くなりました、ここで結婚し子を育ててと考え始めてから村の改革は自分達のすべき事だと思う様になっています。」
「そうなると、学ぶことが増えるけど大丈夫かしら?」
「どうでしょう、メアリーが村にやって来てからと言うもの考える事、学ぶ事が沢山増えてしまって…。」
「ジョンなら大丈夫だよ、シャルロットやルーシーと一緒に学んだら良いさ。
 メアリーも先乗りとしての仕事に一段落付くから、ジョン達のサポートに入りたいと話してたよ。」
「彼女は休暇を取るのでは無かったのですか?」
「お前たちと過ごす方が、余程楽しく有意義だと気付いたそうでね、暫くは担当を持たず半分休暇モードで動くことの承認を貰うのだとか。」
「そんなのが承認されるのですか?」
「お前たちは気付いて無いかも知れないが、彼女は第三部隊の為に沢山働き、この店のオープニングがスムーズに行くように尽力してくれたんだ。
 少しぐらいの我儘が許されて良いほどにね。
 お前たちが使ってるパソコンだって当初予定より台数が増えたのは彼女の力だぞ。」
「へ~。」
「あっ、パソコンに関しては今日の午後に試験を行い、それに合格したら一人一台、専用のが貸与されるからね。」
「エミリー、ホントですか!」
「ええ、家に持ち帰っても良いわよ。」
「う~ん、家ではネット環境が…、それと村は電気事情が良くないのです。」
「そっか、充電は店でして行けば良いけどネット環境はね。」
「どうだ、いっそ店に住まないか?」
「住むと言っても…、仮眠室はそれなりに使われていますよね。」
「ほら、窃盗犯とかを留置する為の部屋が有るだろ、あそこは予想に反して全然使われてないじゃないか。
 何時でも家に帰れるのだから荷物は最低限にして、本来の用途で使われる時は仮眠室に移動したら良い、店内ならWi-Fiルーターの取り付けも簡単だからな。」
「そうね、これから忙しくなるのだから、まあ、逃げ出したくなったらお家に帰れば良いわ。」
「えっ?」
「エミリー、可愛い私の部下をいじめないでくれよ。」
「多分、大丈夫。」
「多分ですか…。」
「無理はさせないから安心して良いわよ、無理はプリンセス詩織が最も嫌うことだからね。」

 ここでプリンセスの名が出たことにはドキッとした。
 遠い存在だったプリンセスは、色んな意味で俺の近くにいらしているのだ。
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近衛予備隊-48 [高校生バトル-47]

 午後からは予備隊の幹部を中心としたグループメンバーが集められた。
 因みに隊員たちは大きく三つに分けられ、学習よりも実習中心に経験値を高め、仕事ぶりを認められ本人が希望したら、そのままその現場で正式雇用される者たち、近い内に正式雇用される前提でスキルアップを目指しながら学習と店内作業を両立させて行くグループ、そして俺達幹部中心のメンバーは自分達にとって高度な学習をして行くことになっている。
 これまで教官達と話し合い、それぞれがどこにどんな形で所属して行くのか考えて分けられた。
 実習組は各現場責任者、両立組は教官が中心になって指導、そして俺達はこれからの二か月間、近衛隊に身を委ねることになっている。

 まずはパソコン操作の試験が行われた。
 内容は簡単過ぎたがエミリーは…。

「へ~、入力も早いわね、入隊後に初めてパソコンに触れた人ばかりなのでしょ、英語をさぼってて、少し遅れて始めた人もいると聞いてたけど。」
「始めは英語の得意なメンバーだけが使わせて貰ってたのですが、パソコンを使ってみたくて英語を頑張った奴がいたのです。」
「ジョン、どんな練習をしたのか教えてくれる?」
「基本は助け合いながら競い合う、先にコツを掴んだ人が教えて、競い合いながら練習。
 自分達には英語学習と言う大きなテーマが有りますから、一人が英文を読み上げそれを誰が一番正確に入力出来るかと言う勝負をして来ました。」
「成程。」
「始めの内はゆっくり読み上げて貰っても全然ダメだったのですが、勝負の勝ち負けが面白くなって必死に練習したのです。
 少し慣れた頃からは、読み上げて貰う文章に、綴りを間違える人の多かった単語を意識的に使うとか、店のオープンを意識して、お客さんとの想定対話文を取り入れたり、最近は早口言葉レベルのスピードに挑戦したりと楽しんでいます。」
「ついキーボードを見てしまったりとかなかったの?」
「勝負の時は布を掛けてキーボードが見えない状態、パソコンの台数に限りが有りますから監視役も充分にいまして、その監視役もただ見てるだけでは自分が勝負する時に勝てませんので、綴りの確認をしながらの監視です。」
「そっか、次からは試験するにしても、入力して貰う英文の内容をもっと真面目に考える事にするわ。
 こんなレベルの文じゃあ、あなた達に失礼だったわね。」
「いえそんな事は、それで…、全員合格ですよね?」
「勿論よ。」
「やった~!」
「でも、エミリー、十四人全員に一台ずつとなると、それなりの費用が掛かると思うのですが大丈夫なのですか?」
「あなた達が使うので有れば安いものよ、今使ってるのは後輩達に譲らなければならないでしょ。」
「後輩か…。」
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近衛予備隊-49 [高校生バトル-47]

「あなたは後輩の事、考えてないの?」
「前倒しして入隊して来た後輩はジョンのファンばかりなのですよ。」
「メアリーから聞いたわ、でも彼女たちはジョンの第三夫人の座を狙ってる訳では無いのでしょ?」
「だと思いますが…。」
「あなた達の頑張りのお蔭で第三部隊には余裕が出来、予備隊運営チームとしては対象年齢を下げての入隊を当初予定より早めて行くことになりそうで、学校との調整を進めているのよ。」
「やはり希望者全員を受け入れて行くのですか?」
「その辺りの調整をしてるのだけど、元々ここの学校は公立では無く慈善団体が運営してるでしょ。
 だから予備隊が生徒の一部を引き受ける事に協力的でね。」
「今の私達レベルを指導出来る先生はいないから優秀な子は予備隊へ、団体本部との兼ね合いが有るから、そうで無い子は自分達の手で農業実習などを経て極力ここで働ける様に、それぐらいの指導なら先生達でも出来るとか、そんなことを考えているのではないのかしら。」
「ルーシーは、そこまで読めてるのね。
 教官達は先生の教育も考えていて、まずは子どものレベルに応じた役割分担をすることになりそうなの、でも予備隊へ入らない子達もあなた達の後輩でしょ。」
「勿論ですよ、シャルロットがおしめを替えてた子もいますからね。」
「先輩が後輩の面倒を見るのは集団の理想なのだけど、あなた達は第三部隊のスタートメンバーだから、先輩としては少し頼りない第一部隊や第二部隊しかいなかったし、ジョンは年齢的にも先輩に当たる彼らに助言をしてたのでしょ。」
「どうしてそれを?」
「私は第一部隊の担当者とも連絡を取り合っているのよ、でも、ジョンに関する話はあまり信じて無かったのが事実でね。」
「どうしてです?」
「貧乏な村の状況は教えて貰ってたし、似た様な環境の村を見て来たから、そんな村の子が…、正直、今でもあなた達が店に大きく貢献して来たことは信じられないのだけど、何か秘密が有るの?」
「私達は同じ集落の出身なのですが、集落から町へ出た人の中に教育の重要性を感じた人がいまして。
 その彼は無理をしてでも私達の為に本を送ってくれ、その気持ちに応えたいと思ったのが、ここにいるメンバーなのです、それでも予備隊に入隊するまでは限界が有りました。」
「その限界を突き破ってくれたのがメアリーで有り、教官やマネージャーを始めとするここのメインスタッフの皆さんなのです。」
「そっか、私はみんなが後輩のことを思って行動してくれたら、その彼らの想いに応えることにもなると思うのだけど、どう?」
「集団としての成長を考えるべきだと、マネージャーに言われています。
 自分達の村は、何の成長もないまま長い年月を送って来ましたので、自分が学び、それを後輩に伝えて行くことで変えて行きたいですね。」
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近衛予備隊-50 [高校生バトル-47]

「ジョンは真面目に村のことを考えているみたいだけど、あなた達はどうなの?」
「私は、将来ジョンが村長になってくれたらと思っています。」
「ジョンを村長にと言う理由は?」
「隊長として、サブフロアマネージャーとしての実績は隊員たちが村人に伝えていまして、女性からの信頼は圧倒的なのです、子どもから大人まで。」
「人口の半分か…。」
「いえ、男性達もメアリー達と交渉する時、ジョンが単に通訳として間に入っていただけではないと理解していまして、全く使われてなかった土地をキャンプ場や寮にと言う話し合いがスムーズに進んだのはジョンのお蔭だと考えてる人は少なくないと思います。」
「まだ若いのにそこまでとはね、プリンセスが興味を示しそうな話だわ。
 この村と接しているのはあなた方の村だけなのよね。」
「はい、他は山へと続く森に囲まれた村です。」

 エミリーは何か思惑が有りそうなそぶりをしたが、そこからは話題を変え、店の運営に関係する学習計画を暫定的だと言いながら説明し、俺達の希望を聞きながら決めて行った。
 村を改革する話について、彼女が皆に多くを訊ねなかったのは、皆の表情からこのメンバーがルーシーと同意見だと感じ取ったからだと思う。
 明日は、店舗運営に関する学習を行った後、店内の確認作業をすると言われ、解散となる。
 予習しておくべきことは、と質問したが、まだ必要ないと言われた。

「エミリーはメアリーとタイプは違うけど私達のことを考えてくれそうね。」
「ルーシー、大丈夫か、彼女は教官達とは違って甘くなさそうだぞ。」
「そうなの?」
「昼食の時、無理はさせないと話してはいたが、ぎりぎりまで俺達を追い詰めそうな目をしながらだったからな。」
「でも、ジョンが守るのだろ、ルーシーとシャルロットのことは。」
「まあな、で、俺達は真面目に協力し合いながら彼女と向き合って行くべきだと感じたんだ。
 俺達の村に関することでもね。」
「村のことに興味を示してくれたのかと思ったけど、話はあっさり終わってしまったよね?」
「だよな、俺も自分の気持ちを伝えたいと思ったのに…。」
「お前の気持ちは伝わったと思うよ。」
「何も話して無いのにか?」
「話してはいないが、顔に大きく書いて有っただろ。」
「えっ?」
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