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141-反響 [岩崎雄太-15]

ドラマの放送を受けて。

「里美、ドラマの反響はどうだった?」
「お父さまにも出演して頂いたお陰で、なかなか好評です、視聴率も合格点と言って良いと思います。
ドラマでは敢えてCMを流しませんでしたが、簡単な調査では充分な宣伝効果も見られています。
来週、メイキング映像中心のドキュメンタリーが放送されたら、もう一度注目されると思いますが、すでにファンクラブの掲示板だけでなく、ネットで盛り上がってます。
ドラマのどの場面がどのCM撮影時とリンクするとか、誰でも分かる初級から、余程のマニアでないと気付かない様なレベルまで、敢えて仕込んで有りますから。
何処までがノンフィクションなのか、という事で、みんなのプロフィールにも注目が集まっています。」
「みんなに抵抗はなかったのかな。」
「各自の判断で経歴を出していますから大丈夫だと思います、出身の施設名を出す事で後輩を励ましたいという思いも有るそうです。」
「そうか、兄、姉として色々考えてくれているのだな。」
「素敵な子達です、チケットオークションの入札額が一気に上昇してますし、公演中の芝居を中心にまとめたDVDや正平のCDも売り上げを伸ばして、さすがにドラマの宣伝効果は大きいです。」
「続編は?」
「すでにCMの続編を打診して下さってる企業も幾つか有りますし、新規のCM依頼も来ています。
続編の制作には問題なさそうです。」
「流石に連続ドラマとまでは行かないか?」
「ええ、公演との絡みも有りますし、でも二か月に一本を長く続けられたら、ワンシーズン週一のドラマを放送するのとは違った効果が有ると思います。」
「成程、三か月程度で十本放映するか、一年六本のペースで続けて行くか、試みとして悪くないかもな…、月一は難しいのか?」
「今後の視聴率次第でしょうか、撮影自体は工夫すれば何とかなると譲治や他のスタッフ達は話していました。」
「う~ん、視聴率か…、人気女優、イケメン俳優にゲスト出演して貰うのはどうだ?」
「ふふ、少なくともみんなが喜ぶ事は間違いないと思います、でも設定によっては、どろどろしてしまうのでしょうか。」
「今のままでは、小さく固まってしまう気がするんだ、外部から刺激が加わる事で面白くなると思わないか?」
「そうですね…、う~ん、彼は空いてるかな…。」
「里美、今、思いっきり職権乱用を考えなかったか?」
「えっ、そ、そんな…、今、人気の俳優に参加して貰った方が宣伝効果が大きいじゃないですか、もう、お父さまったら…。」
「なぜ、そこで赤くなる?」
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142-続編 [岩崎雄太-15]

雄太がゴーサインを出した事によりドラマの続編制作へ向けて大きく動き始めた。

「譲治、ドラマの続編が動き出したと聞いたけどどんな感じなの?」
「時間は掛かりそうだよ、まだ公表できない話も進み始めてね、そうだなゲストでイケメン俳優にも参加して貰うから、史枝との絡みも用意しようか?」
「遠慮しとくわ、譲治や葵さんのお陰で正平と真正面から向き合える様になったところだし、ドラマの内容がそのまま私達の現実だなんて、当事者としては複雑な心境だったから。」
「御免な、晒し者にしてしまって。」
「良いのよ自分で受けた事だもの、お陰で色々吹っ切れたし、正平も今まで以上に優しくしてくれてる、ドラマが続いたらどこかで婚約とか結婚とかの場面を入れたいかも。」
「良いね、ドラマチックな出来事はそうそうは起こらないからな、二人が決断したら俺としても祝福したい。」
「ゲストが加わるとなると、その設定はどうするの?」
「CM撮影で出会うという形を考えているが、色々進行中でややこしくなって来たから、自然な出会いとは出来なくなりそう…、後はみんな次第かな。」
「ふふ、大変そうね。」
「ベースのノンフィクション風は変えないで進めようと話し合ってるが、部外者が加わるからな、でも違った視点で物語を進められないかとも考えている。
案としては俳優さんだけ台本を用意して、周りは全員アドリブというかドキュメントを撮影してる感覚というか、もちろん、きっちりした台本は用意できないから俳優さんのアドリブも有りだし、話の進展に合わせて、撮影中に細かい台本を書くとか。」
「かなり大変そうだけど。」
「今までになかった手法を色々試してみたいと思っているんだ。
まあ、大きな話の流れを全員が掴んでいれば大丈夫じゃないかな。」
「ドラマのテーマは?」
「次回は、葵さんメインの事件を展開しながら、施設での暮らしぶりを紹介となるかな。
その後は、毎回中心人物を交代してエピソードを展開しつつ、お父さまのこれまでの軌跡を追って行く事も考えている。」
「毎回ゲストが変わるの?」
「始めの内は二人が交代という形にしたいと考えている、登場人物を増やし過ぎると分かりにくくなるからね。」
「そっか、やはり女優さんと男優さんなの?」
「ああ、CMの都合もあるし。」
「人選は?」
「忙しすぎず暇過ぎない、年齢は俺達に近い人という条件で探して貰ってる。
仲間内にいないタイプの人、出来れば役者として力の有る人で、みんなに演技のアドバイスをしてくれると嬉しいとは伝えた。」
「そうね、私はセリフがないから、演技しようと思う時は全身の微妙な動きまで気を使い易いけど、セリフが有ると大変だと思うわ。」
「まあ、セリフは短く、ナレーション多目で胡麻化して来たけどな。」
「ふふ、これからは誤魔化しが効かなくなっていくのね、第二話は何時頃放送の予定なの?」
「CMとの絡みが有るから半年ぐらい先かな。」
「そんなに先なの…。」
「でも番組の枠は月一で確保して有って、しばらくは舞台での芝居を放送したり、正平の歌や俺達の紹介とか、二話の放送が近づいたら一話の再放送も有りだね。」
「そうか、月一でも何かが続いていれば…、後は飽きられない事ね。」
「その為のゲストだよ、ゲスト効果が弱かったら考えなくちゃいけないけど、今はチケットオークションも好調だからね、好調ですと報じて貰える内は大丈夫だと思う。」
「千人規模のホールが中心だけど地方都市をじっくり回ってる内にチケット価格がどんどん上がってるって感じよね。
一度来て下さった方が、公演会場が遠くなる前にもう一度と来て下さってるみたいだ。
平日昼間の公演でも常に満席なのは、お金にも時間にも余裕の有る層をターゲットにした成果、Family IWASAKIの商品もグッズも順調に売り上げを伸ばしているから、商品開発チームを増やす方向で、製造拠点も増やす方向で進めているわ。」
「問題はドラマやCMの撮影と公演のバランスだな、色々な調整が…、聡志はスタッフの教育が追いつかないとこぼしていたよ。」
「分かったわ、里美姉さんと相談しておく、う~ん、姉さんの後輩なら即戦力になって貰えるかも、スタッフが慣れるまでの繋ぎでも良いでしょ。」
「大学生か、それは色々な意味で面白くなるかもしれないな。」
「ふふ、色々ね…。」
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143-女優 [岩崎雄太-15]

ドラマの続編制作へ向けて、若手の女優が岩崎ファミリーの宿泊先を訪れた。

「初めまして神楽坂結衣です、よろしくお願いします。」
「岩崎譲治です、今回は注文の多い企画にも係わらず承諾して下さいまして有難う御座います。」
「いえ、時間的タイミングも良かったですし、実験的ドラマって楽しそうです、映画のお話しが確定したら…、発案は岩崎さんだとお聞きしました、俳優ならやってみたい人が多そうな企画、是非お願いしたいのですが。」
「まず、岩崎さんではだめです、譲治と呼んで下さい、岩崎では誰の事だか分かりませんから。」
「あっ、そうでしたね、私の事も結衣でお願いします、譲治さん。」
「はい、映画の件は父も賛成してくれました、ただ、ドラマ、映画、CMと岩崎ファミリーとの絡みの仕事ばかりだと、結衣さんに一つのイメージが付きかねないかと思うのですが大丈夫ですか?」
「私のイメージにプラスになると考えています、岩崎ファミリーに同行させて頂ければ、週刊誌にでっち上げられた変な噂も収まるかもしれませんし。」
「ならば良いのですが…、我々は本来ならテレビドラマすら有り得ない素人集団で申し訳ないです。」
「そんな事無いですよ、みなさんの自然な姿がとても素敵でした、リアルで…。」
「でも、そろそろ演技も練習して行きたいと、自分も含めてですが。」
「何か訳でも?」
「この先正平以外のアーティストも表に出して、チームを増やせないかと考えているのです。
中高年の方に受け入れて頂ける様な若手を育てて、地方都市を中心に公演を展開していけないかと。」
「それで…、分かりました、私なりに、で、映画は私に主演をやらせて頂けそうですか。」
「随分積極的なのですね。」
「主役になれたらと思うと、どきどきするくらい魅力的な役ですから譲治さんからも監督さんとかに話を通して頂けたら嬉しいのですが。」
「ドラマと合わせると、しばらくホテル暮らしの旅となりなります、それでもよろしければお願いします、すぐにでもゴーサインを出しますよ。」
「えっ、譲治さんに主役の決定権が有ったりするのですか?」
「自分は総合演出という事で、ドラマ制作の担当者、映画監督、CM制作担当者、岩崎ファミリーの舞台監督と調整して行く立場に有ります、ちなみに私に胡麻を擂ってもギャラは上がりませんからね。」
「ふふ、事務所はどうか分かりませんけど、私自身はギャラとは関係なく今までとは違った経験が出来るのが楽しみで、映画が決まったら他の仕事を入れないという話もしてます。」
「では、映画『女優』の主演は結衣さんにお願いすると連絡を入れます、皆に紹介しますので少し待ってて頂けますか。」
「はい。」
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144-神楽坂結衣 [岩崎雄太-15]

譲治から神楽坂結衣を紹介されたメンバーは、美人女優を大歓迎した。
その後。

「プロの女優さんと一緒に仕事させて頂けるなんて夢みたいです。」
「あらっ、葵さんの演技もなかなかでしたよ、あれだけの自然な演技は簡単には出来ません。」
「私達のは譲治の…、知らない内に本番が終わってたりのインチキなんです。」
「譲治兄さまは策士なのですよ、まあそんな兄さまだから、お父さまも安心してこのチームを任せてるのだと思いますが。」
「ドラマだと譲治さんの女性関係って微妙じゃないですか、実の所どうなのです?」
「それに関してはほとんどノンフィクションなんです、みんな譲治の事が大好きだから…。」
「続編では私が紗友里さんのライバルになって、みんなから嫌われるという役かとも思ってたけど。」
「どうかしら、次は葵さんの過去が明かされる、というぐらいしか聞いてなくて。」
「結衣さんは譲治兄さんの事、まだ会ったばかりで分からないかもだけど、話してみてどうでした?」
「う~ん、ドラマではライバル関係の三人が…、でも三人とも、葵さんは年上だけど、実質的には兄的存在として見てて、うんドラマでもそれがうまく表現されててほっこりしたわ、でも御免なさい、彼女の座はまだ空席なのよね、私、紗友里さんに嫌われるかも、ドラマ見て憧れて譲治さんと実際会って…。」
「それはドラマの演出上の事ですか?」
「困った事に真面目なの、皆さんの敵になってしまうのかも。」
「そっか…、でも譲治兄さまを幸せにしてくれるのなら。」
「美沙さんはもっと反発されるのかと思ってましたわ。」
「譲治兄さまはとても優しくて、姉妹に対しても、だから身近な存在は彼女にとか考えにくいのかなって、でもお兄さまには幸せになって頂きたいの。」
「譲治さんだけでなく、みなさんが幸せに暮らして下さればと思います。」
「今までの人生で今が一番幸せなのよね、私達。」
「あっ、そうでしたか…、でも立場上始めから波風を立てる事になりますね、私は。」
「う~ん、お兄さまに、結衣さんを選んだ理由を問いただしてみようかしら。」
「美沙、譲治は忙しいから…。」
「そうなのよね、舞台に立ったりテレビに呼ばれたりしながら、総合演出担当として。」
「譲治は、やはり結衣さんを演技力で選んだと思うわ、映画『女優』の主役は演技力のない役者じゃあ無理でしょ。」
「だとしたら、とても嬉しいです、しばらく同行させて頂く事になります、よろしくお願いします。」
「こちらこそですが、どれぐらいの期間になりそうですか?」
「個人的には、ドラマから降ろされるか譲治さんの事を諦めるまでとか、まずはマンションを引き払って…、皆さんは荷物、どうされているのですか?」
「専用のバスに積んだままで必要な物だけホテルの部屋へ、私達の衣類は普段着も基本Family IWASAKIで、歩く広告塔の私達に合わせて、選択肢が少ない代わりに衣装担当の子が色々気を使ってくれて…、個人的な荷物は少ないのです。」
「私もFamily IWASAKIの広告塔になると聞いています、思ったより荷物減らせるのかしら。」
「必要な物が有ったら買って来て貰ってます、結衣さんはマネージャーとかどうされるのですか? 今日はお一人で来られましたが。」
「細かい事はこれから相談して行く事になると思います。」

結衣は数日間同行し譲治達と会議を重ねた後、一旦帰宅、休養を取りマンションを引き払った後、岩崎ファミリーと合流した。
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145-恋人 [岩崎雄太-15]

神楽坂結衣の合流はメンバー達にとって、とても刺激的な事となった。

「ねえねえ、今日の結衣さん見た?」
「素敵よね三十代の素敵なお姉さん、優しく微笑む姿に見とれてしまったわ。」
「昨日は、十代のちょっぴり怖いけど、譲治兄さまラブな役柄を演じながら、舞台メンバーに演技指導もしてた…、まさしく女優とは何かを見せつけられたわね。」
「撮影の関係もあってだろうけど、日替わりで何人もの人物を演じ分けるって、でも映画に向けてのサンプル的なものでしょ。」
「ドラマで使うかもって、後はメイキングとかドキュメントとか。」
「公演の舞台にも出て下さるのよね。」
「そうよ、情報を流したらチケットオークションの入札価格がまた上昇したって、流石に知名度が高くて、若手でも演技力に定評が有る、その演技を生で見られている私達って幸せよね。」
「譲治兄さまに感謝かな。」
「でも、結衣さんは譲治兄さまのファンという噂も聞いたわ、ちょっと微妙かしら。」
「やきもちなの? 私は女優を姉に持てたら自慢できると思うな。」
「今日の結衣さんなら色々質問しても応えて下さると思わない?」
「優しい人物を演じてみえる日が狙い目か、でもお話しするきっかけがないかも。」
「私は衣装についてのご希望とか聞かせて頂かないといけないの。」
「え~、い~な~。」
「これから長いから、その内自然にお話し出来る様になるわよ、というより、そうならないとね。」
「美人女優に対してうちの男達は近寄りがたいみたいね。」
「住む世界の違いを見せつけられてるからかなぁ…、あっ結衣さんと、美沙だ。」
「並んで歩いてるだけなのに絵になるわ。」

「美沙、結衣さんと一緒で楽しそうね、譲治兄さまと歩いてる時よりも。」
「ふふ、有難う、今度の舞台で隣を歩くのは譲治兄さまなの、結衣さんに指導して頂いてるのよ。」
「すごい、演技指導でそれだけ変わるんだ。」
「皆さんもエキストラとしてドラマや映画に出て頂く事になります、よろしくお願いしますね。」
「はい、映画は結衣さんのアイディアも盛り込まれると聞きましたが本当なのですか?」
「ええ、譲治さんの実験的企画の一つで、最終的には監督さんにまとめて頂きますが、そこまでの過程をメインキャストとスタッフが相談して作って行く、普通の映画とは全く違う制作過程を辿ると思います、譲治さんの発想はすごく柔軟で楽しいですよ。」
「結衣さんが譲治兄さまのファンというのは本当なのですか?」
「いいえ、ファンではなく恋人候補です、彼の恋人の座を狙ってる人とは勝負ね。」
「そんなにはっきり言ってしまって大丈夫なのですか、カメラが回ってますが。」
「これは本心だから大丈夫なの、嘘も演技も関係ない、撃沈したら慰めて下さいね。」
「うっ、その笑顔で撃沈なんて有り得ない…、でも今は三十歳メイクで、ほんとは兄さまの一つ下ですよね。」
「あっ、美沙や私達と変わらない、ねえ美沙はどんな気分なの、結衣さんと一緒にいて。」
「昨日は年下、今日は歳の離れたお姉さん、同じ人かどうか信じられないという奇妙な体験をさせて頂いてるわ、これが明日以降も続くそうなの。」
「でも、どんな人を演じていても譲治さんの事が好きという事だけはぶれませんからね。」
「どうして、そこまでお兄さまの事を?」
「ルックスだけじゃない滲み出て来る魅力はあなた方も感じてるでしょ、今まで出会った事の無い大きさを感じさせてくれる、今までだって恋心を抱いた人は居たけど、そんなの全部吹き飛ばしてくれて。
女優として主役の座を射止めるのは大変だったけど目標として頑張った、今は彼に私の魅力を、そう彼に認めて貰える女になりたいというのが目標かしら。」
「そこまではっきり言われてしまうと、応援するしかないのかな。」
「お願いしますね。」

結衣はとびっきりの笑顔でお願いした。
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146-告白 [岩崎雄太-15]

結衣が合流して一週間ほど過ぎた日の夜。

「譲治さん、この一週間で少し皆さんと馴染めた気はしてます。」
「結衣さんの演技力にみんな驚かされたみたいですね、女優の力を目の当たりにして。」
「譲治さんの提案通りに動いただけです。」
「部外者を役者として尊敬する形で受け入れさせる事に成功しました、しかし、役の上の事とは言え自分への事はいささか…、週刊誌が喜びそうなネタは、どこから漏れるか分かりませんよ。」
「御免なさい、でもライバルがいたら早めに決着を付けて…、私は完全にアウエイじゃないですか、皆さん譲治さんの事大好きで…、でも…、今、お付き合いしてる方いないのですよね。」
「まあね、みんなのお兄さまになってしまったからな。」
「私、本気で好きだから、マンションも引き払って来たのです。
直接はなかなか言えなくてファミリーの皆さんに話してましたが…、大好きなんです。」
「有難う、こんな旅暮らし、しかも日常を堂々と撮影されてる環境で落ち着かないだろうけど…、俺は演技に関して素人だから、より感情移入し易すそうな人を選んだ訳さ、俺と付き合ってくれるか?」
「うわ~ん…、おねがいじまず~。」
「おいおい、泣き過ぎだろ、そんなに泣いたらメイクが…。」
「御免なさい…、今日まで頑張って良かった…。」
「結衣さんなら、もっと良い男とでも簡単に付き合えそうだと思うけどな。」
「譲治さんが最高なんです、譲治さんは大きな仕事を成功させる人、人望も厚い、未熟な私を成長させてくれる、そんな人。」
「随分過大評価な気もするが。」
「女の感、でも私はこの感のお陰で主役を張れる女優になった実績が有ります。」
「そうか…、あ、もしかしてメイクしてなかったの?」
「素顔で好きな人の前にいられるのはこの先長くないかもしれませんが、まだ若いですから。」
「うん、綺麗だよ。」

「何か夢みたい、ふふ、でもこのシーンもドラマに入れないとお話が盛り上がらないのかしら。」
「結衣が泣く所も? 普段の演技とのギャップが大きくて他人には見せたくないのだけど。」
「ドラマで撮る時は綺麗に演じますよ、イメージを作りましょうか。
でも何時も演技してる訳ではないですよ、今までだって譲治さんの前では素顔の神楽坂結衣でしたからね。」
「そんなに気にしなくて良いよ、舞台に立っていない人でも、普通に演じてる時は有ると思ってるから。」

翌日、譲治はメンバーに対して神楽坂結衣と付き合うと宣言した。
変な憶測で惑わす事を避ける意味合いも有ったが、ファミリーのストーリーが大きく変わって行く事になるからだ。
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147-一座 [岩崎雄太-15]

結衣は舞台の芝居にも積極的に取り組んだ。

「結衣、有難うな、君のお陰で全体のレベルが上がってるよ。」
「譲治さん、私嬉しいのです、子役からやって来て溜まってた思いが。」
「思い?」
「舞台でもドラマでも監督さんの注文に応えて演技して来ました。
でも、この監督さんでは余り良い作品にはならないと思う事も有って、実際に評価の低い作品の主役を演じた事も、自分の評価が下がっても何も言えませんでした。
役者を活かせない監督作品を経験している内に、自分が監督になりたいという気持ちが強くなって、高校の学習は普通に卒業出来る程度にして、演劇の勉強に明け暮れてました。
尊敬出来る監督さんから色々学ばせて頂いたりと。
ですから映画『女優』の話を知った時、女優も台本作りの段階から参加できる、内容も絶対面白く出来ると思って、絶対参加したいと思ったのです。」
「それで熱心に…。」
「はい、舞台、ドラマ、映画、CM、どれも単なる受け身の演技ではなく…、譲治さんと一緒に作って行ける、こんな楽しい事は有りません。」
「うん、結衣が舞台に立つのは一か月後の公演からだけど、座長という形はどうかな。
簡単なストーリーとしては、ドラマのゲストとして岩崎ファミリーに合流した結衣が、演技のお手本を見せて、メンバーに受け入れられる。
その後、演技指導をする様になって、そのまま座長に、君が座長になる事は誰も反対してないからね。
この回の見どころは、演技のお手本と演技指導で行こうと思うがどうかな?」
「譲治さんとの事は?」
「その次ぐらいでどう?」
「私、台本を書いてみても良いですか?」
「もちろん座長の自由にすれば良い、君が加わる事で観客の目は君に集中する、芝居時間を延長しても皆の負担は少ないと思うから、その辺りも考えてくれるかな。」
「はい、新人も積極的に舞台に上げたいと思います、正平さん中心の公演とお芝居中心の公演を別で組む、二チーム体制目指して頑張りますね。」
「ああ、素人相手で大変だろうけど。」
「そんな事ないですよ、皆さん自分を演じる事でスキルが上がってます、同じ役を演じ続けている俳優なんてざらにはいませんから、ふふ、譲治さんの勝利ですよ。
あと私が座長になったら、岩崎結衣一座(仮)なんてどうです?」
「アイディアとしては面白いが…、(仮)を何時外すかが問題だな。」
「私は何時でも構いません、うちの両親は適当に公演に呼びます。」
「あっ、ご両親は反対とかされてないのか?」
「大丈夫ですよ、実家は私のギャラで建てましたから文句は言わせません。
でも母に話したら、色々調べたそうで反対する理由は見当たらないと言ってます。」
「孤児である事は…。」
「多分譲治さんのご両親は才能豊かな方だったのだろうと、今のご両親には全く文句のつけようが有りませんし。」
「岩崎の両親に改めて感謝だな、近い内に遊びに来て下さる事になってるから、その時紹介するよ。」
「うふっ、また楽しみが増えてしまうな、ドラマのワンシーンでは本人役もお願い出来るのでしょ?」
「多分大丈夫だ。」
「最高のドラマにしましょうね。」
「ドラマチックに俺をふる、とか言うのだけは勘弁して欲しいのだが。」
「まさか、演出は凝り過ぎてもだめなの、自然な演技が岩崎ファミリーの売りでしょ。」
「はは、俺も結衣に身を委ねるしかなさそうだな。」
「覚悟して下さいね。」
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148-バラエティー [岩崎雄太-15]

神楽坂結衣と岩崎ファミリーの関係は世間を驚かせた。
正平の添え物的、自称素人芝居に一流の女優が加わる事だけでも驚きだったのが、岩崎結衣一座(仮)と銘打ってみたり、結衣が譲治に告白する話だったりとなれば、情報番組も積極的に取り上げざるを得ない。

「ドラマの視聴率が結衣の登場で一気に上がったそうだ。」
「演出の勝利ね。」
「いや結衣の知名度の高さを改めて確認させて貰ったよ、月一から毎週に出来ないか打診が有った。」
「レギュラー放送になるのね、時間帯は?」
「十九時からのゴールデン。」
「勝負どころかしら、連続ドラマなの?」
「公演の関係も有るから、週一のドラマは無理だと伝えてある、契約の詳細を任せている株式会社岩崎の担当者によれば、バラエティー番組も有りだとか。」
「ここで高視聴率番組を提供出来たら大きいわね。」
「ゴールデンで高視聴率は難しそうじゃないのか?」
「そうかしら、結構マンネリ化してる業界に新しい風を吹き込めたら…、私達で壁を壊して岩崎ファミリーを安定させたいわ。」
「はは結衣と挑戦するのなら楽しいかな…、視聴者の皆さんにどれだけ話題を提供し続けていけるだろう、案は有る?」
「岩崎結衣(仮)を前面に押し出して色々な役に挑戦するってどうかしら?」
「具体的には?」
「アナウンサー、アシスタント、設定をクイズ番組とか、グルメ番組とか色々変えて、どんな役でも任せてね。」
「神楽坂結衣を全面的にアピールしていく訳か。」
「だめだめ、岩崎結衣(仮)をアピールしてくから面白くなるんじゃない。」
「でも、結衣の男性ファンは、確実に減りそうだな。」
「違うファンを増やしたいのよ、外見しか見てくれない、譲治さんとの事を受け入れてくれない様な人は岩崎ファミリーにとってさほど重要ではないでしょ、正平さんのファン層とも違うし。」
「単なる女優でない、座長としての結衣をアピールする訳だな。」
「どうせなら、岩崎に関係のある人や会社をピックアップして行きたいわね。」
「うん、その方向で行こう、岐阜チームや…、里美姉さんとも相談かな。
でもセットとか組むとなると大変そうだ。」
「無駄なセットを組むより宣伝して欲しい施設やお店で収録すれば良いと思うわ。
時間に余裕が無かったら、譲治さんと私だけでも一時間番組作れるからね。」
「確かに出来なくはないな、でも、恵子や美沙は頭の回転が早いから、特に恵子はまだドラマには出てないから、この先バラエティー中心で動いて貰うというのも有りだな、男性陣はちょっと弱いが…。」
「そうね、余裕の有る時に色々経験して貰って見極めて行きましょうか。」
「座長、よろしくお願いしますね。」
「はい、スタッフも増強しないと…、番組制作会社を立ち上げるって、どうかしら?」
「すぐ検討する様に指示を出すよ、週一の放送をして行くなら今後のスケジュールも見直さないといけないし、企画も…、企画案は岩崎大ファミリーからも募ってみようか?」
「この間、お父さまが話しておられた、グループ企業全体に応援を求めるって事ね。」
「恵子や美沙も呼んで相談しようか?」
「ええ、私、声かけて来るわ。」
「じゃあ、俺は指示のメールを送っておくよ。」
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149-事務所 [岩崎雄太-15]

ドラマでありながらも神楽坂結衣の普段の姿が垣間見られるという事でドラマの視聴率は伸びている。
そんなタイミングで結衣は今までの所属事務所を離れた。

「結衣さんが事務所から離れるというだけで取材が沢山来るのね。」
「さすが我らが大女優、でも事務所側にしてみれば大損失なんでしょ。」
「とは言っても、この所岩崎ファミリー絡みの仕事しかしてなかったから、契約更新の意味はないのよね、何もしなくても事務所にはお金が入っていただろうけど、更に別の仕事を入れようなんて欲張りな事考えてたそうよ。」
「これからは正平兄さんと同じ事務所になるのでしょ、事務所も安泰って事かしら。」
「芸能界で事務所を変わるのって難しいと聞いたけど、今の状態ならノープロブレムよね。」
「そう言えば、譲治兄さまとの所得格差が大きいと報じてる番組が有ったわ。」
「ふふ、二人とも全く気にして無さそうよね。」
「でも、結婚となったらそうも行かないでしょ。」
「譲治兄さまがされてる仕事は給料が今の五倍でもおかしくないレベルだって聡志兄さんが話してたけど。」
「金銭欲の塊みたいな人には理解出来ない世界でしょうか。」
「お金使わないのよね、Family IWASAKIの商品を着なくちゃいけないというより、これだって後輩が私に合わせて作ってくれた服で気に入ってるし、生活関連は運営サイドが面倒見てくれる。
高校生の頃は将来に対して不安しかなかったけど、仲間がいて彼氏が出来て…、職業訓練で島根を選んで本当に良かったわ、こんな仕事をするとは思ってなかったけど。」
「もう直ぐ希望調査だけど、どうするの?」
「私達はこのまま続ける、正平兄さんをメインのチームと結衣さんメインのチームに別れての展開も予定されてるでしょ、彼も後輩の面倒をみたいって話してるの。」
「私も、もうしばらくは旅暮らしでも良いかなって、でも将来的にはどこかのお店で働きたいとの希望は伝えるつもりよ、今はその為のトレーニングという事も自覚してるからね。」
「譲治兄さま達の婚約発表も近いみたいでしょ、ご結婚まで見届けたいなぁ~、結婚式に出たいですって希望出そうかな。」
「はぁ~、そういう希望調査じゃないでしょうが…。」
「婚約発表となったら、またマスコミの取材が殺到しそうよね。」
「適度に話題を提供して、岩崎ファミリーに注目を集める、この前は自分達のデート風景を撮影してたもんな。」
「目的がはっきりしてるから、やれる事は何でもやるって、自分の商品価値は今がピークだからって、譲治兄さまは話してたね。」
「カメラが回っていても楽しそうだからな、う~ん、何処までが演技なのか結局分からないというモヤモヤが残るのよね~。」
「それが視聴率に繋がってのかしら。」
「この前のバラエティーコーナーでの喧嘩のシーンはすごかったよね。」
「本番前という設定で、二人仲良くいちゃついてるシーンから始まったのが、番組スタートの合図でいきなり喧嘩状態になってたあれでしょ、一瞬で場の雰囲気が変わって、しばらくしたら喧嘩の理由の説明になって、馬鹿馬鹿しさで笑いを取りつつ商品の紹介、最後は二人の笑顔で幕。」
「驚かされたわよね、二人が喧嘩してる所なんて見た事無かったし。」
「演技なのよね…、大女優の、でも譲治兄さまも違和感なくて、それも結衣さんの実力なのかもだけど。」
「何にしてもお二人のお陰で、岩崎ファミリーは売り上げを伸ばし、結果、福祉村を充実させ、弟や妹達の為になっている事は間違いないのよね。」
「お父さまが過疎地の再開発に取り組んで行く過程で、住人には援助を必要としてる人をと考えて下さって、私達は娘として頂いて…、頑張んなきゃね。」
「うん。」
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150-プロポーズ [岩崎雄太-15]

ドラマの方はメンバーが交代で主役を務める形で続いているが。
それとは別に譲治と結衣の生活は、実話を元にしたフィクションとして、ドラマのない週に放送中。
『出会い』『告白』『デート』『ご挨拶』といったタイトルを付けてドラマ形式の映像を流した後、恵子中心に情報をまとめて紹介したり話し合ったり。
例えば、『ご挨拶』では実際に結衣の両親の元へ交際の挨拶に向かう映像や岩崎雄太の父や祖父の元へ挨拶に向かう場面を撮影。
同じ場面を何度か演技を変えて撮影したが、全員自分役をすれば良いからか和やかに撮影は進み、義理の親族が親しくなるきっかけともなった。
そんな場面を編集して放送した後、こういった場面で気を付ける事は何か、礼儀作法も含め失敗風景を交えての解説も。

ドラマ『プロポーズ』の場合は結衣が、お洒落なカフェに現れるシーンから始まる。
客の視線をさらりとかわし、席に着きしばし物思いに耽る。
そこへ、譲治が入って来る。

「待った?」
「ううん、私も来たばかりよ、なかなか洒落な良いお店ね。」
「ああ、里美姉さんお勧めさ。」

オーダーを済ませ。

「結衣、そろそろプロポーズシーンを撮ろうか。」
「えっ、本当、嬉しいわ。」

結衣の、とびっきりの笑顔は視聴者の心を鷲掴みにした、短いやりとりの中に凝縮されたものは大きかった。
その後、場所を変え設定を変えて短い三本のプロポーズシーンを流した後で。

「ではプロポーズ評論家の葵さん、四っつのプロポーズシーンをご覧になられて如何でしたか?」
「そうね、譲治の相手が美人過ぎて現実離れし過ぎてましたが、あの二人だから成立する、そろそろプロポーズシーンを撮ろうか、なんてセリフにはすっかりやられました。」
「ちなみに、四つの映像、衣装などの準備に時間は掛かってますが、撮影はすべて一発撮りだそうです、特に一本目は撮影内容の打ち合わせシーンを撮影という事で、結衣さんはプロポーズだとは知らされてなかったそうです、後の三本は完全に演技だったのですが。」
「う~ん、演技でも良いからあんなプロポーズされたいなぁ~。」
「美沙はまだおこちゃまだから先の事よね。」
「ふふ、葵さんは大丈夫ですか? 花の命は短いですよ。」
「ねえ美沙、私的にはあのカメラマンとかタイプなんだけど、どう思う?」
「だめです、新田さんは既婚者ですよ、それより本命はプロデューサーの片岡さんでしょ?」
「うっ、それは…。」
「という事は、葵さんは片岡プロデューサーからプロポーズされたいという事ですか?」
「ちょっと待ってよ台本にないじゃない、そんなの。」
「恵子さん、この取り乱し方はひょっとしたらです、今夜は葵さんで楽しめそうですね。」
「はい、今夜の女子会テーマが決まった所で次週のお知らせになります、美沙、お願いね。」
「次週は月一ドラマ、岩崎ファミリー新人メンバーの恐怖体験になります。」
「ズバリ、次回のフィクション度は?」
「七十%がフィクション、三十%はノンフィクションです、お楽しみに~。」
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