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147-一座 [岩崎雄太-15]

結衣は舞台の芝居にも積極的に取り組んだ。

「結衣、有難うな、君のお陰で全体のレベルが上がってるよ。」
「譲治さん、私嬉しいのです、子役からやって来て溜まってた思いが。」
「思い?」
「舞台でもドラマでも監督さんの注文に応えて演技して来ました。
でも、この監督さんでは余り良い作品にはならないと思う事も有って、実際に評価の低い作品の主役を演じた事も、自分の評価が下がっても何も言えませんでした。
役者を活かせない監督作品を経験している内に、自分が監督になりたいという気持ちが強くなって、高校の学習は普通に卒業出来る程度にして、演劇の勉強に明け暮れてました。
尊敬出来る監督さんから色々学ばせて頂いたりと。
ですから映画『女優』の話を知った時、女優も台本作りの段階から参加できる、内容も絶対面白く出来ると思って、絶対参加したいと思ったのです。」
「それで熱心に…。」
「はい、舞台、ドラマ、映画、CM、どれも単なる受け身の演技ではなく…、譲治さんと一緒に作って行ける、こんな楽しい事は有りません。」
「うん、結衣が舞台に立つのは一か月後の公演からだけど、座長という形はどうかな。
簡単なストーリーとしては、ドラマのゲストとして岩崎ファミリーに合流した結衣が、演技のお手本を見せて、メンバーに受け入れられる。
その後、演技指導をする様になって、そのまま座長に、君が座長になる事は誰も反対してないからね。
この回の見どころは、演技のお手本と演技指導で行こうと思うがどうかな?」
「譲治さんとの事は?」
「その次ぐらいでどう?」
「私、台本を書いてみても良いですか?」
「もちろん座長の自由にすれば良い、君が加わる事で観客の目は君に集中する、芝居時間を延長しても皆の負担は少ないと思うから、その辺りも考えてくれるかな。」
「はい、新人も積極的に舞台に上げたいと思います、正平さん中心の公演とお芝居中心の公演を別で組む、二チーム体制目指して頑張りますね。」
「ああ、素人相手で大変だろうけど。」
「そんな事ないですよ、皆さん自分を演じる事でスキルが上がってます、同じ役を演じ続けている俳優なんてざらにはいませんから、ふふ、譲治さんの勝利ですよ。
あと私が座長になったら、岩崎結衣一座(仮)なんてどうです?」
「アイディアとしては面白いが…、(仮)を何時外すかが問題だな。」
「私は何時でも構いません、うちの両親は適当に公演に呼びます。」
「あっ、ご両親は反対とかされてないのか?」
「大丈夫ですよ、実家は私のギャラで建てましたから文句は言わせません。
でも母に話したら、色々調べたそうで反対する理由は見当たらないと言ってます。」
「孤児である事は…。」
「多分譲治さんのご両親は才能豊かな方だったのだろうと、今のご両親には全く文句のつけようが有りませんし。」
「岩崎の両親に改めて感謝だな、近い内に遊びに来て下さる事になってるから、その時紹介するよ。」
「うふっ、また楽しみが増えてしまうな、ドラマのワンシーンでは本人役もお願い出来るのでしょ?」
「多分大丈夫だ。」
「最高のドラマにしましょうね。」
「ドラマチックに俺をふる、とか言うのだけは勘弁して欲しいのだが。」
「まさか、演出は凝り過ぎてもだめなの、自然な演技が岩崎ファミリーの売りでしょ。」
「はは、俺も結衣に身を委ねるしかなさそうだな。」
「覚悟して下さいね。」
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