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131-中傷 [岩崎雄太-14]

ツアーは順調だ、チケット収入だけでなく物販の収入も大きい。
大阪で録音したCDも完成し、ファンクラブサイトを中心に売れている。

「明日から名古屋、CM撮影も始まるから気合いを入れ直そうか。」
「譲治兄さん、何時だって気合は入ってますよ。」
「はは、そうだったな、みんなの演技は随分良くなった、監督さんにもずっと練習映像を見て頂てるが、最近はお褒めの言葉が増えてるよ。」
「でも変な感じよね、自分で自分を演じる、人の目を意識出来る様になって来たとは思っているけど、ほんとの自分はどうなの、って考えてしまう事も有るわ。」
「普段から動きに気を付けて来た成果なのか…、確かに微妙では有るな、まあ、演技が良くなったと言っても素人だから自分以外の役がこなせるかどうかは怪しいが、ん? 京子どうかしたのか?」
「譲治、週刊誌に悪意ある記事を書かれたわ、村の方へは連絡入ってたみたいだけど。」
「記事は読めるのか?」
「ええ、これよ。」
「譲治兄さん、どんな感じなの?」
「うん、何でも児童福祉という名目で俺達は暴利をむさぼっているそうだ。
誹謗中傷の内容は伝聞の形で出鱈目な事を書いてる、これは面白くなりそうだな、京子。」
「面白くないわよ、これからCM撮りが始まるのに。」
「そのタイミングを計って仕掛けて来たのかな、京子、まず会計の実態をファンクラブ向けに公表しよう、俺達がここに書かれているよりもっと稼いでいる事、その中から児童養護施設にどんな形でどれだけの支援をしているのか、岐阜と長野の展開や進学支援の予算も含めてね。」
「でも、お世話になってるテレビ局とかには…。」
「里美姉さんを通して、必要最低限な所に…、そっちは姉さんと史枝とで動くから心配するな。
ファンクラブの皆さん向けに動画を撮影したいな、すぐ用意出来ないか?」
「はい、すぐ用意します、え~っと三十分も有れば機材の準備は出来ます。」
「衣装は明るい感じが良いわね、謝罪する訳ではないから、すぐ選んで来るわ。」
「メイクは譲治だけで良いの?」
「そうだな、早くUPしたいから単独で良いだろう。」
「正確な経理だと時間が掛かるわよ。」
「大丈夫だ、取り敢えず概算で良いし、動画に間に合わなくても問題ない、史枝、里美姉さんに連絡してくれるか。」
「今、話してる所、笑ってるわ。」
「では、作戦を練るか。」
「そうね、こんな記事だけでは注目度低すぎよね。」
「まずは、この週刊誌の発行元の調査ですね、里美姉さん。」
『少し調べてみたけどグループ企業がすべての広告掲載をやめたら、それなりのダメージになると思うわよ。』
「さすが、早いですね、岩崎ファミリーに根拠のない誹謗中傷した結果がどうなるかを見せつけますか、それをうちに関係するマスコミを利用して世に広めると同時に、お父さまが進めている福祉事業に人の目を集めるという事でどうでしょう?」
『良いわよ、お父さまにも伝えておくわ、ことを急がずじっくり、この馬鹿な出版社を利用させて貰いましょう。』
「分かりました、取り敢えずはファンクラブの人に安心して頂く様、すぐメッセージを公開します。
ただ気がかりなのは、記者と編集者がただの馬鹿なら問題ないのですが、こちらの力を理解した上で仕掛けて来たのなら、自社が不利益を被ると分ってやっているとしたら、その意図が引っかかりませんか。」
『う~ん、自社がブラック企業なので敢えて貶める、もしくはこちらにダメージを与える隠し玉を持ているのか…、調べる様に指示を出しておくわね、でもこちらのイメージを落とす訳には行かないから、まずは全面対決で行こうか、余計な仕事が増えてしまうけど、CMの方は大丈夫?』
「準備はしっかりしてきましたから、堂々とCM撮影に入る事で、関係者が馬鹿げた記事をスルーしてると分らせますよ。」
『ふふ、頼もしいわ、じゃあ明後日、名古屋で会おうね。』
「はい。」
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132-コメント [岩崎雄太-14]

ファンクラブサイトに上げられた動画は譲治が静かに語るもの。

「この度、某週刊誌で我々の事が悪意有る形で取り上げられました。
ご存知の方には思わぬ形でご心配をおかけしてしまって申し訳分け有りません。
ただ我々は自分達の活動で何ら人に恥じる様な事はしておりません。
記事内容に関して謝罪をする必要は一切ないと考えています。
逆に、今回、馬鹿げた記事が出た事を良い機会と捉え、一度私どもの活動を皆さんに知って頂きたいと思います。

まず、記事では児童福祉という名目で暴利をむさぼっていると有り、売上額が書かれていますが、はっきり言って、桁が一桁少ないです。
私達はとても多くの方々の支援を受けています、週刊誌の記者がどういう計算をしたのか分かりませんが、暴利と書きつつ随分控え目な金額では、こちらが恥ずかしくなります。
多くの方々の支援を低く見られた事が心外ですので、このツアーでどれぐらいの利益を得ているのか、概算になりますが会計報告させて頂こうと考えています。
ただ、単純に計算できない部分も有りますので、少しお時間を下さい。
さて支出の部分ですが、我々の利益、その大きな部分は児童養護施設の運営に充てています。
父の指示で建てられた、島根、長野と岐阜の施設では入所者を増やしつつ有ります。
どの施設でも小学生から高校生までが、地域の方々にも支えて頂いて、ハンデを乗り越えて行こうと頑張っています、みんな戸籍に関係なく私達の弟や妹です。
彼等が少しでも心豊かな生活を送れる様に、岩崎ファミリースタッフ一同、父の考えに賛同して下さっている多くの方々と共に守って行きます。
進学したい子にはその環境を整えて行こうと考えていますので、今後とも応援よろしくお願いします。

なお、某週刊誌への対応は何時もの番組内で報告させて頂きます。
次回の放送は名古屋のスタジオから、珍しく生で姉の里美とツーショットの予定です、相変わらず恋バナは聞けそうに有りませんが、ご覧頂けたら幸いです、ではまた。」

動画に関してメールで告知した事も有り、励ましの言葉を多く頂く事となった。
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133-生放送 [岩崎雄太-14]

週刊誌騒ぎの翌週、普段は録画で登場している番組に里美と譲治が生出演となった。
ひとしきり近況についてのやりとりが有った後、週刊誌のネタとなり、譲治のファンクラブ向けコメントも流されて…。

「里美さん、私達は岩崎ファミリーをずっと追っていますから、これを書いた記者のいい加減さは充分過ぎる程分かりますけど、それを知らない人が読んだら随分勘違いされそうな記事ですよね。」
「そこなんですよ、そろそろ気付いて御免なさいって言って来るかと待っているのですが、未だに謝って来ないのです。」
「このまま泣き寝入りという事では有りませんよね。」
「お書きになられた記者の方や編集の方の意図が分からなくて、問題を抱えている出版社なのかと、譲治とも話しているのですが、もう私達ではどうしようも有りません。」
「と、言いますと。」
「私どものスポンサー企業中心に、この出版社から全面撤退の方向で動き始めていまして、まず雑誌広告はすべてキャンセル、この出版社と何らかの繋がりの有った部署は全面的に関係を断つそうです、他には攻撃的キャンペーンを展開する案も出ています。」
「全面戦争ですか、お父上の御指示で?」
「父は、そんな指示を出す様なお人では有りません、多くの方に尊敬されています。
その子ども達が中心となり真面目にやってる活動に対して、誹謗中傷する記事を掲載した出版社に怒りしか無いと話される方が多くて。」
「番組でも、これまでの功績を、改めて紹介させて頂こうと考えています。」
「有難う御座います、何なら第三者の方、記事を掲載した出版社指定の方にも参加して頂いて経理を検証して頂いても構いません。」
「口止めされてるおねだり企画も公表して良いですよね、譲治兄さん。」
「それはだめですよ、吉沢さん、今の発言は編集でカットして下さいね。」
「残念ながら今日は生放送です、そのおねだり企画って何ですか、隠さないとまずいような事なのですか?」
「いえ、こっそりやってるから楽しい事なので…。」
「もう駄目です、諦めて説明なさって下さい。」
「人に話す様な事では無いのですが…、養護施設で暮らしていると欲しい物が有っても我慢する事が多いのです、玩具を頂いても特に欲しい物では無かったという事もあります。
それで三つの施設の子には特別に…、大きく報じられてしまうと、全国に同じ様な境遇の子が少なからずいて寂しい思いをさせかねなくて…、私達の給料では全然足りません…。」
「まずはバラしてしまった吉沢アナの給料を全部をつぎ込むという事でどうでしょう?」
「足りますかね…。」
「あ~、頑張ります…。」
「ふふ、譲治、あまりいじめちゃだめでしょ。」
「姉さん、予定外のフライング発言ですよ、吉沢さん生放送って怖いですね。」
「はい…、事情を良く考えずに話してしまいました、御免なさい。」
「おねだり企画の全国展開は、もう少し時間を掛けるつもりだったのです、施設の職員にとっても負担になりかねませんから、でも局として応援して頂ければ、吉沢さんが生活に困らなくて済みます、後で相談しましょう。」
「お願いします。」
「先ほどもお話しさせて頂いた通り、施設で暮らす子は、欲しい物を気楽におねだり出来る環境に有りません。
そんな経験して来た私達は、三つの施設の子の兄や姉として、おねだりを聞いてあげる事にしました。
どの施設でも我々の仲間が働いていまして、子ども達の声を聞いて相談してくれています。
比較的安価な物に関しては各現場の裁量に任せています、若干高価なおねだりに関してはこちらに振って貰う事も有りまして、兄や姉として対応しています。
兄弟のいないメンバー、兄弟がいるのかどうかも分からないメンバーが多いですが、メールや手紙でやりとりしながら、すぐ買って上げたり、ちょっとじらしてみたり、条件を付けて買って上げるという事をしています。
我々ツアーメンバーは運営が用意したホテルで寝泊りし食事の心配はなく、服は宣伝も兼ねて支給されたFamily IWASAKIブランドを着る事が基本になってます、そんな背景も有って給料の半分以上を使って、おねだりに応えている者もいます。
ただ原則誰が誰に上げたか分からない様にしてます、特定の子に好かれたくてプレゼントというのは問題になりかねませんから。
でも、みんな楽しんでいましてね、想いはそれぞれだと思いますが。」
「そうなんですよ~、私は施設への取材で知ったのです、その後で岩崎ファミリーの皆さんの気持ちも聞かせて頂いて、皆さん素敵な方ばかりなのにあんなひどい記事が出て来るなんて…、私はもうあの出版社の本は絶対買いません。」
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134-示談 [岩崎雄太-14]

生放送に対しての反響は大きかった。

「譲治、あの出版社が謝って来たそうよ。」
「へ~、ようやくですか、こちらからは一切コンタクト取ってないのですよね、里美姉さんの方でも。」
「ええ、岩崎家としては無視する事にしたからね、先方は、抗議が殺到してようやく事の重大さが分かったみたい、広告の取りやめとかも着々と進んでいるしね、編集者と記者は解雇するそうよ。」
「それで許してあげるのですか?」
「無理でしょうね、岩崎家の子ども達がひどい事を書かれたのよ、簡単に許してしまってはお父さまの私達に対する想いが軽く思われてしまう、下手に許してしまったら今度は実子でないから許せるとか、他の週刊誌に書かれるわよ、ファンクラブの会員だけでなくスポンサー企業中心に熱くなってしまってるから簡単には収まらないわ。
知り合いのライターからも、自分のイメージが悪くなるから、あの出版社関係から手を引くってメールが入ったぐらい、すでにかなりのダメージになっているでしょうね。」
「結局記者の意図は分からないまま終わりそうですか?」
「単純な懲戒解雇では済まないレベルになりそうだから、ただの馬鹿だったのかしらね。」
「覚せい剤とかが絡んでいる可能性はどうでしょう?」
「否定できないわね、調査担当にも伝えておくわね。」
「岩崎ファミリーとして、落としどころはどうします? 謝って来たのなら。」
「示談という事でも無いけど、おねだり企画に協力して貰うって形にしようと思うけど、どう? お金ぐらい貰ってあげても良いでしょ。」
「金額を公表してあげるのですね。」
「金額が妥当であれば攻撃の手が緩むのかな、でも…、多分、売り上げが落ちてる最中でしょうからね、幾らぐらい出せるかしら、何にしてもどうなって行くのか、楽しめそうね。」
「おねだり企画の全国展開はどうします?」
「吉沢さんが生放送で口を滑らせ、さらに譲治が上手く視聴者に印象付けたから、局としても動かざるを得ない、というより乗り気みたいよ、キー局の偉い人から連絡が入って、大きなキャンペーンにしましょうと話して下さったわ。
毎年放送してるチャリティー番組の柱にしたいそうよ。」
「それなら小学生への誕生日プレゼントぐらいは何とかなりますかね。」
「ええ、でも人のシステムを構築して、進学支援とかをもっと充実させるレベルまでにしたいわ、視聴者の方から応援したいという申し出もすでに来てるそうだから。」
「運営体制がまだ確立出来てないからな…、里美姉さん、施設の職員って結構忙しいですから、事を急いで負担を掛けたくなかったのですよ。」
「分かったわ、配慮する様に強く指示しておく…、そう言った部分へも番組で目を向けて貰うべきね。
今回の事でテレビへの出演回数が増えるかもしれないわ、私達のチャンスにしましょうね。」
「はい。」
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135-女子会 [岩崎雄太-14]

テレビで岩崎ファミリーの出演するCMが流れ始めてしばらくした頃。

「例の週刊誌の記者、薬物関係でトラブル起こして捕まったんだって。」
「譲治兄さまの推測が当たってたんだ、でも編集者とか気付かなかったのかしらね。」
「普段から、いい加減な記事が多かったのでしょ、とても下品な。」
「今回の一件で、その週刊誌は廃刊になりそうよ、うちとは関係ない企業も広告をやめたし不買運動も盛り上がったからね、逆にあの出版社の他の雑誌では岩崎ファミリーやFamily IWASAKIの特集記事を組んでみたり、おねだり企画へ多額の寄付、そうでもしないと生き残れそうになかったけど、記者の逮捕をきっかけに何とかなりそうって情報番組で取り上げられてたわよ。」
「出版業界って大変だと聞いてたけど大丈夫かしらね。」
「あんな記事書かれても、同情するの?」
「犯人が逮捕されたのなら、他の人は関係ないでしょ。」
「会社の体質にも問題が有ったと見直してるそうで、場合によっては里美姉さんの後輩が立て直しに参加するかもってさ。」
「そっか、丸く収まってくれれば、それが一番なのかな。」
「それよりさ、譲治兄さまにテレビ出演の依頼がまた来たのでしょ?」
「単独?」
「史枝姉さんは美沙も出演の方向だと話してた。」
「美沙は良いよなぁ~、早々と妹キャラを確立して譲治兄さまと一番近い存在になって、うまく立ち回ってるよね、う~ん、血は繋がってませんから結婚出来るんです~、何て堂々と話してるし。」
「でも、彼女の度胸には私等、到底太刀打ちできないでしょ、明るくて可愛いし、両親の顔を知らない様な子に見えないわ。」
「虐待されてた過去がないだけましなのかもよ、はは、私は心が歪んでるから…。」
「あなたは大して歪んでないわよ、施設で一緒だった子はひどかったわ。」
「私のとこにもいた、でさ美沙を見習おうよって紗友里姉さんに言われたのよ、紗友里姉さんなんて、めっちゃ譲治兄さまの事が好きで美沙に嫉妬してるだろうに…。」
「争い事はみんな嫌だからね、でも美沙だってね、近くで見てる人は、そう紗友里姉さんも気付いてるのじゃないかな、たまにメチャ悲しそうな顔してるのよ、そんな日の舞台は何時も以上に甘えん坊モードなんだけど紗友里姉さん達、譲治兄さま取り巻きメンバーも優しくしてて…。」
「恋敵を演じてるのに、互いに尊重してるから、どろどろした雰囲気にならないのか…。」
「一夫多妻が認められていたら、丸く収まるのにね。」
「そうなったら、余った男子が可哀そうじゃん。」
「譲治兄さまは、大好きなお兄さまで有って私のアイドル、彼氏には無理とは分かってるけど、お兄さまに彼女がいないままというのも微妙なのよね、お幸せになって欲しいわ。」
「ねえ、恵子姉さんと怪しくない? 一緒にいる事多いでしょ。」
「それは、恵子姉さんが最近合流して不慣れだからじゃないのかしら?」
「そうよ、お似合いは紗友里姉さんじゃないの?」
「美沙は妹としてしか見てない気がするけど…、意外と里美姉さんの線、有りじゃない?
里美姉さんは何時も譲治兄さまの意見を尊重してるし。」
「年上か、でもルックス的にも身長的にもお似合いかもね。」
「美男美女は夢が有りそうで無いのよね、恰好良い男の人がそれ程でもない人と結婚すると、私もって夢が膨らむでしょ。」
「問題は中身よ、でも私等兄弟での結婚を前提にしてない?」
「はは、兄弟なら似た様な境遇という安心感が有るからかな。」
「あっ、お茶のお代わり、どう?」
「私、お菓子、取って来るね。」
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136-続・女子会 [岩崎雄太-14]

「あっ、それ美味しいよね、買い置き?」
「ええ、CMに使って頂いたからには、ささやかでも売り上げに貢献しなくちゃだめでしょ。」
「でも先輩、CMに出たら食べて下さいって沢山頂けるものかと思っていましたけど、ささやかでしたよね。」
「私達はきちんとお給料頂いて働いてるのだから当然でしょ、頂いたサンプルは関連する企業に配らせて頂いたのよ、それとは別に子ども向けのお菓子も頂いて、それは弟や妹達の口に入ってるわよ、間違ってこっちに送られて来たら、あなたがダイエットで苦しむ事になるでしょうね。」
「そっか~。」
「ふふ、あなたは呑気だから…、ガリガリに痩せちゃだめだけど、暑苦しく、見苦しく太って行くのだけは勘弁してね。」
「は~い。」
「これのCMが始まって二週間よね、評判はどうなのかしら?」
「私は、譲治お兄さまと紗友里姉さんのが好きだな、姉さんの、好きって言いたくて言えない雰囲気が短時間に凝縮されているでしょ。」
「美沙とのバージョンは兎に角明るく、可愛くて良いのよね、あの子の良さが一発で伝わっていると思うわ。」
「葵姉さんとのは色っぽくて、同じ商品で似た様なセットなのに三パターン全然違う、譲治兄さまの三つの表情が素敵なのよね。」
「口紅のCMでは紗友里姉さんのメイクを葵姉さんがしながら、セリフは色っぽく『譲治がね』の一言だけ、一瞬で変わる紗友里姉さんの表情が素敵、更にお菓子のCMとリンクしてて意味深、譲治兄さまは出てないのに顔が浮かんでしまうのよね。」
「ファンクラブの人からは、短いCMでも色々イメージが膨らんで、紗友里ねえさんを応援したくなった、とかの書き込みも有ったわ。」
「でも、他は史枝姉さんが正平兄さんの曲を聴きながらもの想いに耽ってるCMとか、里美姉さんと美沙の買い物シーンだったりで、繋がらないのよね。」
「ふっ、甘いわね、甘すぎるわ、譲治兄さまのスケールをあなたは、し・ら・な・い・の・よ。」
「あ~ん、だって仕事が販売系だと情報入って来ないのよ。」
「ふっふ~、まずは第一ヒント、CM撮影は結構簡単に終わってるのに、何故か撮影時間は異常に長いのです。」
「えっ、どういう事?」
「CM以外で使う分も撮影してるとか。」
「CM以外って、何が有るのよ。」
「う~ん、正平兄さんのDVD?」
「曲のイメージに合わせてるのかな?」
「ふふ、では教えてあげよう、実はドラマ制作の話が進んでいるのです。」
「え~! ドラマ?」
「ちょっと変わったドラマでね、CMの風景がそのまま使われるの、譲治兄さまの発案に大勢の人が乗ってね。」
「何本ものCMを繋げてドラマにするって事?」
「そうよ、ノンフィクション風フィクションなんだって、ドラマの台本に沿ってCMの台本が書かれているの、成功したら話題性抜群でしょ。
さらにドラマ自体にCM効果が有るから、通常のCMなしで放送する予定なんだって。
正平兄さんを含めた音楽チームは、ドラマ向けの曲にも取り組んでいるのよ。」
「面白そうね。」
「でしょ、みんなにもエキストラの仕事が回ってくるかもよ。」
「そうなると、見苦しく太る訳にいかないわよ…、あれ? あなたお菓子ほとんど一人で食べてない?」
「明日からダイエットするわ。」
「…。」
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137-芝居 [岩崎雄太-14]

CMが話題になった事も有り、普段出演している番組とは違う番組に、譲治と美沙が出演。
他のメンバーは生放送という事で出演はしり込みしたが、マネージャー感覚で何名か付き添っている。
ひとしきり紹介された後。

「長いツアーの途中だそうですが、今までを振り返って如何です、美沙さん。」
「そうですね、スタートした頃はスーパーの駐車場が会場だったり、私達も正平兄さんの後ろで簡単なポーズを取る程度でした、それがCMに出させて頂くほどになって、不思議な感じです。」
「岩崎ファミリーとして成長したという事ですか?」
「はい、譲治兄さまが表の顔として総合演出役で加わってから、色々楽しいアイディアを出してくれて、チームとしても随分成長出来たと思っています。」
「えっと、私は未だによく分かっていないのですが、譲治さんと美沙さんが兄と妹というのは舞台上の設定なんですよね、譲治さん。」
「美沙は、普段から甘えん坊で、他の妹達は遠慮がちに甘えて来るのですが、遠慮がないと言いますか…。」
「ふふ、私達、劇は完全に素人です、でも役が自分なら、自分の気持ちを表現するのなら出来そうな気がしませんか? 舞台の上でもCMでも自分の心に忠実に演じています、勿論、少なからずの演出は有りますから、ノンフィクション風フィクションという事になっています。」
「では、譲治さんが大好きというのは本心なのですか。」
「はい、もちろん大好きです、でも私だけじゃないのですよ、紗友里さんも葵さんも…、岩崎ファミリーの、特に女性陣はみ~んな兄さまの事が大好きなんです。」
「譲治さんはモテモテなんですね。」
「美沙、少し盛り過ぎだぞ。」
「はは、でも正平さんのファンクラブとして発足させた、岩崎ファミリーでも人気は抜群と聞いてますが。」
「そうなのです、でもそれは単にルックスが良いからだけでなく、優しいし、総合演出担当として皆を輝かせてくれるからでも有るのです。」
「例えば?」
「大阪地区後半の公演から、プログラムに二十分程度の芝居を入れています、同じ内容は連続五公演程度、一話完結ですが、その次の芝居内容は微妙に続編になっています。
新人が登場するだけでなく、時には裏方が舞台に上がったり、お客さん役でファンクラブの人が舞台に上がったり、芝居が変わる頃に録画して来た物を編集して放送、次の公演観覧予定の方は見逃せません。」
「私も見させて頂きました、岩崎ファミリーの暖かい雰囲気が伝わってきますね。」
「でも事件は起こる、週刊誌の一件はリアルに嫌でしたが、お話としては喜んで頂けたようです。
次回は可愛い後輩がやらかしてしまったというエピソードです。」
「そういったストーリーも譲治さんが?」
「ええ、拓也兄さんという売れない貧乏作家と一緒に。」
「こらこら、誤解されるだろ、貧乏作家は身内の設定で、給料は私達と変わらないのですよ。」
「皆さん給料制なんですね、お二方の活躍なら高給ですよね?」
「株式会社岩崎で働く同世代とそんなに変わりません。」
「売り上げはかなりの額だそうですが、ご不満はないのですか?」
「有りません、特に欲しい物も有りませんし、充分贅沢な生活をさせて頂いてますから。
会社が儲かっていれば、岩崎の大ファミリー、父の下で働く多くの人達も安心して下さいますし、新たに弟や妹を迎える事も出来ます。」
「岩崎雄太社長率いる企業グループの全社員とその家族は互いに守り合うという事でしたね。」
「はい、そこに私達と同じ様な境遇の子ども達や真面目なのに貧困から抜け出せない人を迎え入れて行こうと考えています。」
「今の勢いなら、随分増やせそうですね。」
「無理をして共倒れになってはいけませんから、我々の力を計算しながらです、それでも確実に拡大していますが。」
「大きな問題に真正面から取り組まれておられるのですね。」
「はい。」
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138-告知 [岩崎雄太-14]

番組の最後に。

「ではここでチケットオークションに関するお知らせです。
岩崎ファミリーの今後のスケジュールが決まり、順次ネットオークションが始まります。
また、こちらのアーティスト達の公演もチケットオークションでの販売が決定しました。
一定額以上を越した分はそれぞれのアーティストの意思により寄付されるというシステムです。
このチケットオークションシステムは譲治さんの発案だそうですが。」
「はい、運営がチケット価格の設定に頭を悩ませていましたので、全席オークションで市場原理に即した価格設定に出来ないかと思いました。
私どもの場合は、当初からチャリティー的な側面も有りましたから。」
「一流アーティストの利用も意識してみえたのですか?」
「ええ、転売目的でチケットを購入する人が少なからずいると聞いていましたから、それくらいならばダイレクトに高値で買って頂いて一部を寄付、という形に乗って下さるアーティストの方も見えるだろうと。」
「全席オークションを何度か経験されて、そのメリット、デメリットは如何でしょう?」
「メリットはお客さんの思いがそのままアーテイストに伝わる事ではないでしょうか、極端な話、一万円のチケットに対して、十万円払っても良いと考える人がいるから、転売屋による搾取が可能になってる訳です、始めからオークションにすれば転売屋のメリットはなくなります。
シビアな話としては、アーティストの人気度が分かり易くなります、その反面空席という事は起こりにくいでしょう、五百円で落札という事も有り得ますから。
でも、その五百円で落札したお客さんが満足すれば、次からは二千円払ってでもとなると思います。
大きなデメリットは人気アーティストの公演チケットを、今までは五千円で手に入れる事が出来たかもしれない人が、高騰によって手に入れられなくなる可能性です。
この問題故に、今回チケットオークションを利用しての販売に踏み切ったアーティストでも、ファンクラブ中心に今まで通りの販売を続けるそうです、転売対策を講じながらですが。」
「成程、お金に余裕が無いと好きなアーティストのコンサートには行けなくなるのですね。」
「ですね、人気が有れば高くてもチケットは売れ、人気が落ちれば高値では売れなくなる、ただこのシステムの利点も欠点もしばらく運用してみないと見えて来ないかもしれません。
でも、高くてコンサートに行けないのならば、これから伸びそうな人を探してみるのは如何でしょう、それもまた楽しいかもしれませんよ。」
「譲治さんは見つけたのですか?」
「ええ、正平がそうです、ただ彼は不器用なので周りの手助けが必要だったのです。」
「成程、でも、これからは演奏会のチケット価格が高騰しそうですね。」
「対策として内容の同じ五回公演をセットと考え、オークション参加制限をかけています、一公演は千人から千五百人となりますが、セット公演内ではお一人一枠のみとさせて頂いています。
実質、六千人規模で一枠のみ、今後は一般的落札価格を考慮してセット枠を調整させて頂こうと考えています。」
「色々考えてみえるのですね。」
「実験的な取り組みで有る事に違いは有りません、ファンクラブの方のご意見を聞かせて頂きながら今後の方向性を見極めて行きたいです。」
「会場の確保は大変ではないのですか?」
「地方都市のホールは平日空きが多いのです、ささやかながら地方の活性化にも協力させて頂いているのですよ。」
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139-撮影 [岩崎雄太-14]

公演の合間を縫ってドラマの撮影は進められ、完成した。
今回は一話完結だが、反響が良ければ続編もと監督を始めスタッフ達は考えている。

そのドラマは舞台で歌う正平と彼を見つめる史枝のシーンで始まる。
正平が歌うのはドラマの主題歌。
正平と史枝は恋人同士という設定だ。
史枝は今まで人前で声を発した事はない、セリフが無いのは他に仕事を抱えていてセリフ合わせの時間が取りにくかった事も有るが、メイクの力で美少女となった彼女を、よりミステリアスな存在に見せる演出でもある。
演技は…、この二人のシーンで演技はないのかもしれない。
正平は史枝の為に歌う、史枝は忙しい中、正平とデートの時間が出来てそれがたまたま舞台の上だっただけかの様に振る舞っている。
カメラはそんな二人の様を優しく捉えていた。
続いて、主要登場人物の姿を見せて行く。
しばらくは人間関係が分かる様にドラマの背景を描いてるのだが。
実際の撮影風景は…。

「譲治兄さまは?」
「雑誌の取材が入ってもう少し待って欲しいって。」
「カメラの人達も待ってみえるのに、御免なさいね、お茶する時間有りそうだから用意しましょうか?」
「いえ、紗友里さん、それよりカメラテストをしておきたいのでお願い出来ませんか。」
「は、はい。」
「音声テストもしますのでマイクも入れますね。」
「セリフの練習しておきたいけど、譲治兄さまが来ないと分らないの、御免なさい。」
「美沙さん、セリフなんて気にしないくて良いですよ、でも適当に会話していて下さると助かります。」
「ふふ、適当が一番難しいのよね。」
「今度、島根から来る子に我々の関心は有るのですが。」
「あ~、加藤さん写真見たんだ、留美ちゃん可愛いからね、加藤さんには気を付ける様にと言っとかなくちゃ。」
「え~、気を付けるとかでなく、普通に紹介して下さいよ、美沙さん。」
「譲治兄さまに憧れて来る子なのよ、恵子姉さん一押しで、可愛いだけでなく歌やダンスも伸びしろが有るって。」
「あら大変、美沙、妹の座は大丈夫なの?」
「大丈夫よ、元々譲治兄さまを、私が独り占め出来るとは思ってないわ。」
「あらっ、良い子ぶってちゃって。」
「あ~ん、葵さんの意地悪。」
「大丈夫、譲治は美沙の事、一番大切な妹だって思ってるわよ。」
「ほんとかな、やっぱ紗友里さんは優しいや、今度兄さまと三人でデートしましょうね。」
「まあ、頑張んなさい、譲治には大人の魅力を私がたっぷりと。」
「べ~、お兄さまは、健全な女の子がタイプなの!」
「ふふ、まんまおこちゃまね。」
「うん、おこちゃまで良いもん、葵さんの事も嫌いにならない様に、譲治兄さんに頼んどいてあげるわ。」
「?」
「仲良くないのが一番だめなの、お兄さまもそう話してた、ファミリーのみんなが仲良くしてれば、施設で暮らす子達の希望にもなれるって。」
「そんな事私だって分かってるわよ、仲良し家族ごっこをするのが私達の役目、う~ん、私は隠し味ってとこかな。」
「ふふ、CMでも全然隠してなかったと思うけどな、あれが演技なら、お主腕を上げたなというしかないわよ、ね、紗友里さん。」
「うん、葵さん、ますます色っぽくなられて…。」
「美沙、私より紗友里の表情が良かったわよ、撮影中にあの表情されたら…、あ~、私はこんな可愛い子の心を弄ぶ悪役なんだって実感させられたわ。」
「悪役なのか…、でも、葵さんはそれを楽しんでないかしら。」
「もちろんよ、可愛い仲間達と演じてるのだから楽しくてしょうがないわ。」
「譲治さん遅いわね。」
「私、様子見てこようか?」
「あっ、美沙さん大丈夫ですよ、連絡が入って今日の撮影は中止になりました。」
「え~、加藤さん御免なさいね、しっかり準備してみえたのに。」
「そうですね、一コマだけお願いします、真ん中に美沙さん、両脇に紗友里さんと葵さん、イメージは譲治さんに対して、三人は仲良しなのよってアピールする感じでお願いします。」

こんな風景をしっかり撮影、編集されたものが舞台裏の設定としてドラマに使われている。
演技をしていない、素の表情が自然だが、ドラマで使えてしまうのには訳が有る。
譲治が仕切り始めてから、舞台に立つ者達は、普段から発声や活舌などに気を付ける様にして来た、カメラテストならば表情にも自然と意識が行く、緊張感は無くても微妙に演技している、それが三人の魅力を引き出す。
本人達はドラマが完成するまで知らされていなかった事で、自分達の出番は少ないと感じていたそうだ。
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140-ドラマ [岩崎雄太-14]

ドラマは譲治を取り巻く恋愛事情を紹介する事でほのぼのとした雰囲気を醸し出しつつ、史枝の実体験を明らかにしながら、貧困や虐待の現状を訴えるもの。
史枝の気持ちはすべて周りの人物が代弁し、史枝本人は話の中心人物でありながらオープニングとエンディングにしか登場しない。
ドラマには岩崎雄太夫妻が本人役で登場、以下はドラマのワンシーン。

「お父さまの記者会見が始まるわよ。」
「でも何の記者会見なのかしら。」
「始まれば分かるさ。」
「あっ、お母さまもご一緒なんだ。」

『本日はこのドラマをご覧いただきまして有難うございます。』
『ノンフィクション風フィクション、どこまでが事実なのか楽しんで下さい。』
『今後とも、岩崎ファミリーをよろしくお願いします。』

「あ~、お父さまもお母さまもお忙しいのに出演して下さるなんて。」
「う~ん、これってフィクションなのか?」
「私のお兄さまに対する気持ちは本物よ。」
「はは、それは毎日感じさせて貰ってる。」
「美沙はお気楽で良いけど、私は史枝が心配だわ、最近表情暗くない?」
「葵さん、実は…、正平の事大好きなんだけど将来を考えると分らなくなるって、彼女は虐待を経験して心に傷を抱えているじゃないですか。」
「やはり悩んでたのね、紗友里は何か聞いてないの?」
「立場上の事ですが、二人が恋人同士だという事は多くの人がご存知、でも、いえ、だから…、もし心変わりしてしまったら、どうしたら良いか分からないって、両親だって好きだから結婚しただろうに離婚して…、よその子は大切にされてたのにって…。」
「私達の家族ごっこは楽しくない事を避けようとしてきたわね。」
「でも、人生は楽しい事ばかりじゃない、とは言っても…、史枝は沢山楽しくない事経験して来たみたいだから…、史枝だけじゃないけど…。」
「史枝姉さんには幸せになって欲しいな、正平兄さんがもう少し頼れる男だったら良かったのに。」
「ここは少し、正平にプレッシャーをかけてみるか?」
「大丈夫? 正平もトラウマ抱えてると思うけど。」
「少しずつ、二人で向き合って行けば…、正平だって史枝が悩んでる事に気付いて…、いないのかな。」
「史枝は、正平の前だと特に明るく振る舞うからね。」
「そこよ! 史枝姉さんは自分の素顔を正平に隠している、その事に気付き始めたから悩んでるんじゃない?」
「隠したままでは、先が見えないだろうな。」
「それなら葵姉さんに任せなさい、今度メイクする時にでも色々話してみるわ。」
「俺は正平に探りを入れつつ史枝の事を話してみるよ。」

舞台の演技とは全く違う自然体、演技ではない様な雰囲気を醸し出した事により、個性的なドラマに仕上がっている。
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