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近衛予備隊-111 [高校生バトル-54]

「会議室に集まったのは三十名ほどだったが、手の空いてる近衛隊メンバーはモニターでその進行を見ることも、メールで会議に参加することも出来るシステムになっている。
 まずはプリンセスから。

「戒厳令そのものに関して私達は見守る立場になります。
 それぞれが意見を持っていたにしても、この国の問題に対して口を挟むことは控えて下さい。
 現在進行中の案件には、戒厳令からの流れに直接関わるものも有りますので慎重にお願いします。
 その一つとして、全ての公的機関へコンピューターシステムを導入して行く作業が有ります。
 実は、システム導入に向けての作業を利用して多くの不正が確認され大統領親衛隊に対して秘密裏に情報を流してきました。
 今後も作業が進むにつれて様々な不正が露見して来ることが予測されますが、それを発見したと言う功績は、作業に携わっているこの国のスタッフのものにすることが理想だと考えています。
 私達は、今回の件で目立つべきでは無いと考えていますので…、ジョンもそう思うでしょ。」
「はい、功績を上げることは名誉なことでは有りますが同時に責任が生じます、それを私的なチームが負うことは避けるべきだと思います。」
「ですね、その辺りのところを担当リーダーは慎重にお願いします。
 不正だらけ、辻褄の合わないデータばかりで大変だとは思いますが、データを正常な形にしてシステム運用を開始することが行財政改革の第一歩だと考えています。
 もう一つ、大きな案件として有るのがマーケットの多店舗展開です。
 各地で調査に当たって下さっているスタッフからの報告によれば、治安がそれ程悪くないエリアはそれなりに有り、そんな所から早めに新店舗を立ち上げて行きたいと考えています。
 店舗スタッフを雇うことで、ささやかでも雇用の場を生み出せますので。
 但し、先ほど恩赦の規模を大統領に確認したのですが、ここの刑務所に入ってる人だけでなく、かなりの規模を考えておられました。
 これから一気に増えるであろう受刑者対策でも有るのですが、恩赦によって出所した人達に対して住まいや職を考える余裕は大統領の管轄下には無さそうです、そこを私達の手で何とかカバーしたいのですが、何か雇用の場を生み出す案を持っている人はいませんか?」
「ジョン、どうぞ。」
「マーケットの多店舗展開に合わせて、販売する商品を自社製造と言う形に出来ないでしょうか。
 勿論予算面で難しいことは分かっていますが、輸入を増やして対応するより効率的な商品は有ると思うのです。
 成功すれば利益率も上げられます。」
「ジョンの意見について、どう思います?」
「時間が掛かっても進めるべきですね。」
「遠江王国の協力が得られれば、そんなに時間は掛からないと思います、宜しければ遠江の本部と掛け合ってみますが如何でしょう?」
「そうね、相談すれば良いアイディアが出て来るかも知れません、こちらの状況を伝えて向こうでも考えて貰いましょう。
 大統領の思惑通りに事が運べば、今後今の低所得者層が内需を拡大してくれる可能性は大いに有りますが、その過程で貧困層が押し潰されない無い様に雇用の問題は私達にとって最重要課題に位置付けたいと思います。
 これからの困難を乗り越えることが出来れば海外資本がこの国の可能性に気付き動く、いえ、私達の力で海外資本を動かすぐらいの気持ちで向き合って行きたいと考えていますので皆さん、よろしくお願いします。」
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近衛予備隊-112 [高校生バトル-54]

 会議を通してプリンセスの、そして近衛隊のこの地に於ける方向性が見えた気がする。
 プリンセスは、この国が治安の良い国を目指すのなら協力を惜しまないと大統領に伝えてあったそうで、いささか乱暴な方法では有っても大統領の覚悟が伝わって来たのだから、この国の改革に対し積極的に援助して行きたいと表明された。
 それが出来るのはプリンセスの予定が大きく変わったことにもよる。
 当初は多くの国にこの村と同じ様な拠点を築いて行く計画だったが、プリンセスに対する民衆の支持は高くても、各国の指導者にはそれぞれの事情が有り思う様に行かないとの判断がなされたのだ。
 そこから多くの国を意識するより、これまで拠点を作り上げることに成功した国、その中でも特に状態の悪いこの国に力を注ぎ、改革を進め結果を出すと言う方向性をプリンセス詩織は会社の幹部に示し了承されていた。
 そんな事情も有り資金的に難しいと思いながら提案した、マーケットで販売する自社製品製造の案は前向きに検討されることに。
 新店をオープンさせながらの商品製造と言うことでハードルは高そうだが、遠江王国の助力が期待出来るので有れば無理な話ではない。
 勿論マーケットでは利益を出さなくてはならないが、道路沿いにオープンしたマーケット一号店は規模が小さいため売り上げこそ大きく無いが予定通り黒字となっていて、人口の少なさやエリアの所得水準の低さを考えれば上出来と言える。

「戒厳令が出され、これからどうなるのかは分からないけど、私達は国が良い方向に向かうと信じて経済面を考えることになりそうね。」
「そうだな、汚職が減り治安が良くなるとしても、経済面が改善されないと先が見えない、ここは長い目で見たい所だが、すぐに恩赦で住む所が無くなる人達をフォローして行く必要が有る。」
「今後、刑務所への入居者がどんなペースになるのかが問題よね、恩赦で出る人との入れ替わりがスムーズに行けば良いのだけど。」
「まずは、恩赦になる人達の調査だな、帰る家が有るのか仕事は有るのか。」
「テント生活でも構わないのなら、各自のスキルを聞いておいて仕事の割り振りに役立てる?」
「そのまま刑務所内の施設を使わせて貰えるので有れば、今の仕事を続けて貰うと言う手も有るのかな。」
「新工場の建設はどう?」
「工場は必要になるだろうが、問題はそこで何を作るかだろ、そこが決まらないと…。」
「戒厳令によって不足する物とか出て来るのかしら?」
「う~ん、何がどうなって行くのかさっぱり分からない。」
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近衛予備隊-113 [高校生バトル-54]

 戒厳令に関するニュースは毎日入って来るが、村はあまり影響を受けていない。
 警察関連の施設へは連日逮捕された人達が送られて来ている様だが、それ以外は大統領が滞在している関係で警備が厳重になっているぐらいだ。
 大統領は何か問題の起きる度に大統領令を出し、問題解決の指針を示していることも有ってか、揉め事は起きても今の所大きなトラブルにまでは至らない。
 いきなりの戒厳令で日頃犯罪に手を染めてた連中も戸惑っているのではないかと思う。
 大統領は戒厳令に乗じて自分の都合に合わせた大統領令を連日出しているとも言えるのだが、基本的には犯罪によって富を得た連中を罰する内容が主なので一般民衆はそれを支持している様だ。
 罰の主流が罰金や財産の没収なのは、刑務所の定員問題が関係しているのだが、全財産を没収するのではなく、贅沢しなければ暫く暮らして行ける様に配慮もしているので罪を犯した自覚の有る者は文句も言えない。
 犯罪者の摘発は、当初大統領親衛隊だけでは人手が足りなかったそうだが、若い警察官、軍隊の若い兵士が大統領の指示で再編され犯人逮捕を手伝い、町の巡回警備を担う様になり汚職摘発のニュースは毎日途切れることはない。
 彼らにまで新しい制服は用意出来ず、代わりの目印として大統領の思い切った改革路線に賛意を表す胸章を付け活動している。
 この胸章、表向きは警察官らの自発的なものとされているが、実は大統領親衛隊が仕掛けたこと、裏は有っても上手く機能してるのだから問題はないだろう。
 戒厳令下の町は表向き、国軍の兵士が警備の為に巡回してるぐらいで、ニュースと言えば主に公務員関係の汚職者が新たに摘発されたことと大統領令関連ばかりである意味平和だった、昨日までは。

「ついに組織犯罪集団、マフィアとの交戦が始まってしまったわね。」
「しかし、国軍の軍事車両を投入とは大統領親衛隊も思い切ったことをしたものだな。
 これだけテレビで流され、しかもほとんど親衛隊側の一方的な交戦風景を見せられたら他のマフィア連中は大人しくなるしかないのではないか?」
「それが狙いなのかもね、でも、マフィアが大人しくなるのかしら?」
「戒厳令下で大統領親衛隊に逆らったら銃殺されても仕方ないみたいな大統領令も出されているが…。
 それが実行され、いよいよ本格的な独裁国家になって行くのか…。」
「ポイントは平和的な反政府勢力に対しても銃が向けられるかどうかでしょ?」
「現状、そんな勢力に力はないみたいだな、先々のことは分からないが…。
 力で抑え込まれたマフィアの人達はどうすると思う?」
「う~ん、犯罪とは言えそれで生計を立てていた構成員にとっては仕事を失うことになるのか…。」
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近衛予備隊-114 [高校生バトル-54]

 犯罪に手を染める者を乱暴に分けると生きて行く為か私利私欲の為かの二種類になると思う。
 地位を利用し不正蓄財を目論んだ者に同情の余地は無いが、マフィアの子分でしか生きられない者もいるだろう。
 そんな話をプリンセス詩織にした。

「そうね、そんな彼らも救済の対象にして行く必要は有りそうだわ。
 ただ、雇用の創設は簡単なことでは無いし…、彼らに真っ当な仕事が出来るのかどうかも…。」
「マフィアのボスでも会社を組織し極めてグレーな商売をしている人もいるとか、昨日のニュース解説でやっていました。」
「表向きは真っ当な商売を装い裏では美味しい商売、まあ、それなりに頭の良い経営者では有るのでしょうが、その活動で迷惑を被る人がいるのではね。
 それでも能力の低い人にとっては都合の良い雇用の場となっていたのかしら。」
「かも知れません、それに代わる雇用の場を創り出して行くのは更に難しそうですが。」
「ジョン、パシリとして雇ってみる?」
「問題を起こさない様に教育出来るでしょうか?」
「どうかしらね、でも、近衛隊メンバーが自分でする必要のないレベルの雑事に時間を取られているのが現状でしょ、それを解決出来るので有れば試してみる価値は有ると思うのだけど。」
「英語の出来る人は少ないと思いますから制約は多そうです、それでも役に立つので有れば…、問題は人件費でしょうか?」
「そうね、でもここで働く社員の給料を変則的にでは有るのだけど、少し上げようと思って計算して貰ってるの。
 計算の結果が悪くなければ増員も視野に入れられるから、パシリとして何人か雇ってみても良いわ。」
「変則的とは?」
「給料として受け取る中でプリペイドカードに直接入金する分に関してだけ五%ほどアップ、実質的な社員割引になるのだけど、パシリには衣食住を保証する代わり受け取る給料全額プリペイドカードへ入金とすれば、労働条件としてそんなに悪くならないのと思うの。
 博打をするにしても酒とか嗜好品を買ってそれを賭けて貰えば良いでしょ。」
「一応、法律上は現金を賭けての博打は禁止になっていますから、それを前面に出せば良いかも知れません。」
「あら、禁止されてたとは知らなかったわ。」
「まあ、警察官でも普通に博打をしている国ですから…。」
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近衛予備隊-115 [高校生バトル-54]

 戒厳令は解除されることなく続いているが、その影響が一般人に及んでいるのは役所関係の手続きぐらい、ただ役所は元々市民にとって余計な時間を費やさせられる存在だったそうで、あまり関係無いと言うより、職員の意識が向上し、むしろマシになったとニュース番組で報じていた。
 取り締まりの対象は、汚職をしていた公務員から暴力的な事件で目立っていた犯罪組織へ、そして陰でこっそり禁止薬物の売買を行っている密売組織へと変化しているそうで、公務員改革が進んでいるのかも知れない。
 これまでに多くの者が逮捕されたが、罰金を納めて釈放された者も多い、とは言え公務員などへの復職はかなわず、犯罪組織は壊滅状態となり、最大の問題は釈放された者に対して健全な職を斡旋することになっている。
 国としては、没収した財産や罰金を原資に雇用の場を創設しようと試みてはいるが先行きは不透明なままだ。
 プリンセス詩織指示の下、俺達の所属する会社でも雇用の拡大に関して色々検討している。

「日本からの輸入品、仕上げをこの国で行うメリットってどうなのかしら、雇用面を考えると小規模なのでしょ?」
「それでもやらないよりマシさ、今は雇える人数が少なくても、状況次第で拡大して行けるだろうし、半製品状態の方が船に多く積めると言う利点も有るんだ。
 効率が良く成れば利益率も向上させられる、それを畑や工場の設備投資に回して行かないと追いつかない、マーケット関連の投資だけでも相当な額になりそうだからな。」
「マーケットは国中でオープンして行くのかと思ったら随分偏っているのよね。」
「エリアを決めて出店を集中させることで配送の効率化を図る計画なんだ、遠くまで運ぶより近くでまとめて配送した方が安上がり、それだけの店舗数をオープンさせても、競合し合うことは無いそうだよ、人が普段買い物に行く距離を考えたらね。」
「予定通りに売れるのかしら?」
「どうかな、まあ、マーケット関連の畑や工場が増えれば、そこの従業員がマーケットで買い物をするから何とかなるだろう。」
「何とかならなかったら、貧困層が犯罪に走って治安は良くならないのよね。」
「その可能性を否定出来ないから国も動いているのだが…、雇用を安定させるには社会全体の経済状態が良くならないとな。」
「良く出来るのかしら?」
「今まで一部の金持ちが溜め込み止まってたお金が、まず安い給料で働いていた警察官や兵士の給料を上げることに使われ動くだろ、彼らは買いたい物が有っても買えない生活をして来たのだから、昇給分が消費に回される可能性は高い。
 それによって売り上げの伸びた店が従業員の待遇改善を考えてくれれば効率が良いのだが、まあ、普通の店では店主の懐に入って終わりだ、でも、うちのマーケットやその関連企業では従業員の待遇を他より良くするから当然彼らの消費支出が伸びる、今の所、給料の多くを従業員専用プリペイドカード振り込みにする人が多いからマーケットは普通に売り上げを伸ばし、その売り上げの殆どがうちの会社と関連企業の売り上げになって良い循環が出来上がる筈なんだ。」
「私達はマーケットの展開が成功することを祈るしか出来ないのね。」
「そうでもないよ、マーケット向けに売り出されたシャルロットのグッズは、そのデザインの良さと現代版ジャンヌダルク風の宣伝が好評で売り上げが伸びてるそうだ。
 これからオープンされて行くマーケットでも売れたら、この国の経済発展に貢献出来るのではないかな。」
「ふふ、ジョンたら大袈裟なんだから。」
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近衛予備隊-116 [高校生バトル-54]

 シャルロットは大袈裟だと言うが、まだ三店舗しかないマーケットまで遠くから買いに来る人が増えていることを考えたら、この先沢山売れる可能性は否定出来ない。

「これからマーケットの店舗数が増えのだから、どれぐらい伸びるか分からないぞ。
 YouTubeで少し宣伝しただけなのに遠くから買いに来る人が居るぐらいなのだからな。」
「増えるって、どれぐらいの店舗数を想定してるの?」
「最低でも二百店舗と聞いている、一軒当たりの利益は大きくなくても黒字には出来そうだとかでね、ある程度まとまった店舗数になると効率が上り無駄が減るんだ。
 全店プリペイドカードによる支払いのみだから、一般の従業員が現金を扱わないで済むことも大きいと思う、経理で不正を働いて逮捕された人でも雇い易いだろ。」
「そういう人は店の商品に手を出したりしないかしら?」
「次に逮捕され有罪になったら罰金では済まされず、重労働が待ってると分かっていても手を汚す人には、開拓を頑張って貰えば良いさ。
 大統領曰く、何度も法を犯す輩には死刑の方がマシだと思わせるぐらいの罰を、だからな。」
「大統領って独裁者的な表現を好んで使うのだけど、あくまでも犯罪者に厳しく真面目な人には優しくと言う路線をはっきり示してるからか支持者が多いのよね。」
「その辺りは、プリンセスが送り込んだ近衛隊メンバーの入れ知恵だそうだよ。
 九割を味方に付ける為の心理作戦だとか。」
「残りの一割は悪事を働いて稼ごうとしてる人か反政府系の人なのね、その人達が過激にならなければ良いのだけど。」
「まだ微妙だから戒厳令が出されたまま、と言っても戒厳令のことなんて皆忘れていそうだがな。」
「一般人にはほとんど影響がないものね。
 でも、大統領は何時まで宮殿で暮らすつもりなのかしら?」
「暮らし易いだけでなく、各地との連絡が取り易く且つ地形的に警備が楽だとか、何時になるか分からない戒厳令の解除まで居座り続けそうだな、俺は慣れたからどうでも良いけど。」
「警備の兵士は…、少し気が緩んで来てると思わない?」
「それは有るだろう、警備と言っても形だけになってる、兵士を交代させてくれると店の売り上げが伸びるのだけど、せめて訓練か教育活動でもしてくれれば…、もし国軍をクビになったらどうやって生活して行くかを考えて貰い、雇用の拡大に繋がる案を出した人にはボーナス支給とかどうだろう、俺達とは違った視点からの案が出て来ないかな?」
「そこまでの能力が有るのか疑問に感じる人ばかりだけど、プリンセスと相談してみる?
 今のままだと良からぬことをしそうな人が出て来そうな気がするわ。」
「ああ、暇過ぎるのは良くないものな。」

 戒厳令下の我が村は至って平和なのだ。
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近衛予備隊-117 [高校生バトル-54]

「詩織、そろそろ戒厳令が解除されると噂されていますがどうなのです?」
「長引かせて反政府組織を弱体化させると言う大統領の思惑通りに行ってるみたいだから、そろそろ解除されて良いかもね。」
「詩織から大統領に戒厳令を終わらせる提案とかはしないのですか?」
「私から口出しする気はないわよ、そう言う立場ではないのだから。」
「でも、国軍の兵士に警察官と同等の権限を与えたのは詩織の発案だと聞きました。」
「それはあまり真剣な話しでは無かったの、国軍の腐敗を暴くのは警察に任せられても、警察の腐敗を警察に任せては揉み消されるのがオチ、なんて話を大統領から聞かされてね、ならば仲の悪い警察と国軍、互いに不正の追及をさせ合ったら面白いって話したの、国軍の兵士は国の規模の割に多過ぎると感じていたことも有ってね。」
「何代か前の大統領が失業対策の一環として兵士を増やしたそうです、でも兵士の給料が国の財政を圧迫してしまい当時の大統領は失脚、その後の大統領が兵を減らしたそうですが、今の人数以下には軍部が許さず、結局クーデターを起こされるのが怖くてずるずると、そんな事情が有りましたから真っ先に国軍の幹部を逮捕したのは正解だったのです。」
「兵士の一部に大統領親衛隊として警察の仕事をして貰ってるとは言え、まだまだ兵士は多過ぎる、かと言って簡単にクビにする訳ににも行かないのよね。」
「はい、国軍は国にとって利益を生み出す存在ではないので、失業率を下げ兵士を減らすことが出来れば良いのですが。」
「ジョン、少し給料が良くなって喜んでる兵士の皆さんには道路の改善に当たって貰うとかどうかしら?
 そうね、有事の際に軍隊を速やかに移動させる為とか理由を作って、軍事訓練をした所で他国を攻める気も他国から攻められる理由も無いのでしょ。」
「目立った資源が有る訳でも無いこの国を武力によって占領しても、国際社会の批判を受けるだけでメリットが有るとは思えません。
 この国の道路事情は、映像で見る先進国のそれとは雲泥の差ですから、道路整備に兵士の力を使い、物流の効率化を図ることには大統領も賛成されると思います。」
「新規オープンを考えているマーケットまでの所要時間が距離の割に掛かり過ぎる設定になってるのだけど、その理由が、ぬかるみにタイヤを取られて抜け出せなることが良く有り、その時間を考慮してのことだとかで、びっくり。」
「遠江王国ではそういうこと、ないのですか?」
「余程の山奥で無い限り道路は舗装して有るのが当たり前だから考えられないわね、お客さんの利便性も考慮してマーケットまでの道路事情を改善しないと駄目だめだわ。」
「そこを国軍の力を利用し、低予算で出来ればと言うことですか。」
「この機会に国軍の規模を縮小し、余剰人員は建設業へ転職して貰っても良いのだけどね。」
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近衛予備隊-118 [高校生バトル-54]

 結局、戒厳令が解除されるまでに数か月を要した。
 自分達の村では戒厳令下に行われた取り締まりの効果は全く実感出来ないが、町の治安はかなり良くなり、殺人や傷害などの事件は激減したそうだ。
 その代わり刑務所はどこも定員オーバー、受刑者の仕事の一つは刑務所の増築と出所後の仮住まいや作業場を建てる作業で、職業訓練の一環として行われている。
 特にこの村では刑務所の隣に広がる土地を利用し、刑務所からの出所後、自立した生活の目途が立たない人を中心にした自立支援施設の拡充を図っているのだが、その原動力となっているのは出所したばかりの人達、まだまだ残ってる荒れ地の整備をしたり、新しくこの地に出来たマーケットやマーケット向けの商品を生産、製造する施設で近衛隊メンバーによる指導の下働いている。

「ジョン、新しいマーケットはどうだった?」
「特に問題は無さそうだよ、研修を兼ねてるから従業員が異様に多かったけどね。」
「これからオープンして行くマーケットで働いて貰っても大丈夫かしら。」
「多分ね、元々ここに来てる人達は生きて行く為に軽い罪を犯した人ばかりで、真面目に働ける仕事が有れば犯罪を犯そうとは思わない人が多いと聞いていたが、今日見学に行って改めてそれを実感した。
 殺人や傷害事件を起こした人がいないからか、言われなければ元受刑者とは分からない人ばかりだったんだ。
 ここで研修を受け一般社会で普通に暮らして行けそうな人は各地のマーケットへ、その自信を持てない人は、しばらく刑務所の有るエリアで暮らすことになる。」
「マーケットが出来たから、あそこから出ないでも生活出来るのね、でも出入りは自由なのでしょ?」
「勿論さ、ただ、あのエリアは今までの町暮らしがあまり良いもので無かった人達にとって、男女問わず似た様な境遇の人ばかりで気の休まる場所だそうだ。
 暴行を受けながら犯罪組織で働かさせられていた人は、真面目な警察官ばかりで安心出来ると話してたよ。」
「元受刑者で有りながら、被害者でも有ったのね。」
「ああ、そんな人達は町へ戻るのではなく、この村の住人になることを希望していた。」
「その希望は叶えてあげるの?」
「土地に余裕は有るからな、昔、一度開拓されて平らになってる荒れ地だけでなく、その奥の土地も造成すれば使えそうだと聞いてる。
 土壌改良を進めれば高く売れる作物を栽培出来るし、工場を建ててマーケット向けの商品を製造しても良いだろう。
 住まいは仮設でもトイレとシャワーが綺麗な今の住宅をとても気に入ってるそうでね。
 衣食住の心配が要らないから、給料は今のままで構わないそうだ。」
「社員としての給料は最低ランクで、マーケットのプリペイドカードへ給料の八割以上入金されても不満はないと?」
「真面目に働けば昇給するし、今はマーケット以外で買い物することは無いだろうからな。」
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近衛予備隊-119 [高校生バトル-54]

 大統領が戒厳令を発令し大胆な改革を断行したからと言って、全く犯罪が無くなったと言う訳ではないが、町の様子を伝えるニュース番組では犯罪の減った今の状態を維持しようと言う気運が市民に広がり始めていると伝えていた。
 それにはプリンセス詩織からのメッセージも影響していると思う。
 プリンセスは治安の良さを維持して行く為に一人一人の意識が大切だと説いたのだが、彼女の指示によって安定した雇用の場を拡大していることは多くの市民に知られていること、口先だけの人に貸す耳を持たない人にとっても彼女の言葉には重みが有る。
 雇用の場を本格的に拡大して行くまでには時間が掛かったが、この国へ商品を輸出しているプリンセス詩織に関係する会社の協力は大きかった。
 それまで完成品を船便で送って来ていたのを、徐々に半製品をこちらの体制に合わせて輸送し、港近くに確保した工場で完成させると言う形に、それを送られて来る商品の完成度を少しずつ下げる形で充実させてくれた。
 始めの内は最後の個別梱包作業だけをこの国で行っていたのが、製品最後の組み立て作業まで担当すると言った具合に。
 その過程で技術指導にも要員を割いてくれたおかげで、毎月従業員を増員しながら無理なく完成品の出荷が出来ている。
 また、売れ筋商品は周辺諸国へも営業をかけ販路を広げているので、工場からの出荷額は右肩上がりに伸びているのだが、そんな商品は一つや二つでは無いのだ。
 プリンセスの関連企業は、必ずこの国の平均賃金を上回る給料を提示してくれるので、人気の職場となり離職率は極めて低いと聞いている。
 低賃金でスタートした元受刑者が働く工場や農場も、今では平均賃金並みになって来てるのだが、それはプリンセス詩織に関係する多くの人々が商品に付加価値を付ける工夫をしたり効果的な宣伝を考えたりと動いてくれた結果だ。
 また、俺達の村が農地改革を進め、高値で輸出出来る果実栽培に力を注げるのも、日本向けの加工も含め販売戦略を考えてくれる協力企業の力による所が大きい。

「外国からこの国へ進出して来る企業は、この国の安価な労働力が目当てだと聞いていましたが、詩織の会社は少し違うのですね。」
「まあね、もう少し賃金を上げても良いのだけど、一気に給与水準を上げると、それはそれで問題が起きるから控えめにし、その分は設備投資に回して貰っているの。
 周辺諸国への完成品輸出や日本への果実輸出が順調に伸びて来てるからそれぞれの企業も儲かっているのよ。」
「今まで進出して来た企業は、給料を抑え大した投資をしないで丸儲けだったのでしょうか?」
「それはそれで企業としては伸びなかったのでは無いかしら、労働者のモチベーションが上がらないし、半端な設備投資では作業効率が上がらず、生産性が悪いままでしょ。
 うちでは更に社員教育や社員の子弟に対する教育にも力を入れ将来をも見据えた企業運営を心掛けて貰ってるから一味違うのよ。」
「今後、この国の安い労働力に目を付ける海外企業は増えるのでしょうか?」
「気付かれる前に少し賃金を上げておきたいのだけど、失業率を下げたいから誘致も考えないとね。
 ホントはこの国の人自らが起業し雇用の拡大を目指すのが理想なのだろうけど、今までの教育環境がそこにまで至って無かったから…、ジョン、課題はまだまだ多いのよ。」
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近衛予備隊-120 [高校生バトル-54]

 プリンセスが思ってる以上に課題は多いのではないかとも思う、凶悪な事件が随分減ったとは言え、今日も凶悪犯を収容している刑務所で暴動が起きたと報じられていたのだ。
 単なる噂に過ぎないのかも知れないが、更生の見込みが薄い囚人は逮捕される前に反目し合っていた者同士を敢えて同室にし喧嘩させ、あわよくば人数を減らせればと…。
 まだ、貧困問題が解決された訳でも無く、失業率は以前より下がったとは言え、もう少し下がらないと安全で安心な国にはならないとニュース解説で強調されていた。
 ただ俺達の村は平和で活気が有る。
 大統領が首都へ戻り警備の物々しさが無くなった後も、大統領親衛隊の研修施設に警察官や兵士が滞在して再教育を受けている関係も有り制服姿は目立つものの、元受刑者を含め村の新しい工場や農場で働く人は増え、元からの住民達の暮らしぶりも良くなって来ている。
 家の建て替えは俺達の部落だけでなく、少しずつでは有るが村中に広まりつつ有り、その参考にと俺達が新築した住居を見学に来る人もいるぐらいだ。

「この調子なら、この部落は全部新築に出来そうね。」
「ああ、皆さんに協力して頂いたおかげで日本向けYouTubeチャンネルをはじめ、思ってた以上の収入になったからな。
 村に四店舗目のマーケットをオープンさせても充分黒字に出来そうだと言うことで、今までマーケットまで遠かった、町よりのエリアに建設候補地を探すそうだよ。」
「やはりオープンに合わせて周辺道路も良くなるの?」
「その予算も組み込まれての新店計画だからな、でないと折角立ち上げ上げた建設会社が潰れかねないだろ。」
「それは無いわよ、治安が良くなって消費が伸びてるみたいだし、大統領も景気を良くする為、外国から資金を援助して貰って公共事業を増やして行くと話していたでしょ。」
「それで税収が伸びて返済に困らなければ問題ないのだけど、その辺りも今後の課題の一つじゃないのかな。」
「プリンセスが進めてる事業も多額の事業資金は借入なのでしょ?」
「まあ、そうだが返済計画がしっかりしてるし、実際に問題なく返済出来ているからな。
 何と言っても計画を立ててる人達の能力が高いんだ、それと比べると政府関係者はね、己の私利私欲中心に考え行動していた人達よりはマシになったのだろうけど、知識と経験に問題が有りそうなんだ。
 近衛隊としてもフォロー出来る所はフォローして行くそうだけど。」
「最大の課題は教育なのかしら…。」
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