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近衛予備隊-101 [高校生バトル-53]

 訓練生達が真面目に働いてくれるので、荒れ地は順調に整備されつつある。
 警察官にとっては仕事に直接結びつく作業では無いのだが、きつい肉体労働を想定していたのに最新式の重機が用意されていたので作業が楽しいそうだ。
 当初危惧していた警官と兵士の仲に全く問題が無いのも作業が楽しいと言うことが関係しているのだと思う。
 毎週新人が送られて来るが、先輩達が丁寧に教えているのでスタートから二か月程トラブルは無く仮設住宅、仮設会議室の建設と着手、仮設住宅の完成が近づいたので、次は学校の仮設校舎にも着手しようかと言うタイミングで逮捕者が出た。
 禁止薬物を売りさばこうとした警察官がいたのだ。
 彼の誤算は真面目な警察官や兵士ばかりだったことで、売りさばこうとしたらすぐに逮捕され取り調べとなった。
 結果、彼の背後で指示を出していたのは町で働く現職の警察官だと判明。
 薬の売人となっていた警察官はその指示で動いていただけの下っ端、若手ばかりが集められ普段より給料が良いここでなら簡単に売り捌けると考え送り込まれたのだが、店のプリペイドカードで薬物が買える訳もなく、売人役の警察官は焦っていたそうだ。

 逮捕を受け、急遽完成間近の仮設住宅が拘置所としての役目を果たすべく補強され、研修の一環として町に住む警察官の逮捕に出向き村まで護送して来ることになった。
 それと合わせて、予定していた検事や裁判官などの研修を前倒しすることになる。
 そう、プリンセス詩織は単なる警察や国軍の訓練だとは始めから考えていなかったのだ。
 若手の検事や裁判官の住まいには宮殿内、近衛隊メンバーの寮が充てられることに。
 それが可能になったのは、近衛隊メンバーがここでの滞在期間が伸びたことに合わせ、この国の調査の為、各地に派遣されたからだ。
 一方、逮捕者が出たことにシャルロットは心配な様で…。

「拘置所は仮設で大丈夫なの?」
「多分な、逃げられない様に色々な工夫が施して有るだけでなく美味しい食事を提供するそうだ。
 取り調べは様々な研修の一環として行われるので長期間になると伝えたら、それに従うと答えたそうだ、下っ端だからか協力的、売人としての扱いはひどかったみたいだよ。」
「彼はずっと拘置所暮らしになるの?」
「いや、作業をして貰うし、それに対する賃金も支払われる、額は少ないが買える物も少ないから充分だろう。
 作業して貰わないと、これから刑務所も建てて行かなくてはならないからな。」
「学校の近くに?」
「殺人とかを犯した凶悪犯の為の刑務所ではないから大丈夫だよ、近くと言っても隣接して建てる訳ではないし、農場を開き囚人に働いて貰うことを考えているそうでね。
 今は荒れ果てているけど、昔は大規模農場を目指してた土地で余裕が有るからな。」
「あの土地がそんな使われ方をするとは思ってもみなかったわ。」
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近衛予備隊-102 [高校生バトル-53]

 研修の一環として町で警察官を逮捕する時には大統領が特別に発行させた逮捕状が用いられ、逮捕される警察官の上司は介入を許されなかった。
 その上司が薬物犯罪に加担していないとは言い切れなかったからだが、このことは警察関係者、特に幹部にとって衝撃的なことだったそうだ。
 下っ端の研修だと思っていたら、大統領がバックについていたからだ。
 ただ、彼らは大統領が何をしようとしているのか邪推することしか出来ず、また目立った動きはそれだけで終わったので、町から遠く離れた村で様々な研修が進められていることまでは知る由も無かった。
 村で検察官や裁判官、それを支える裏方の人達が研修を受けている内容が極力外に漏れないようにしているのはそれが禁止薬物の密売組織に知られない為だそうだ。

「ジョン、刑務所の一部が完成したら他の刑務所から受刑者を移送すると聞いたけど大丈夫なの?」
「心配には及ばないよシャルロット、定員をオーバーしてる刑務所から模範囚を選び面接した上での移送で、それぞれが新しい刑務所で仕事をする前提、どんな仕事をするのか決まってからになるし、刑期を終えた後のことも視野に入っているからね。」
「労働力として?」
「ああ、今までは刑期を終えても、次は捕まらない様に上手に悪事を働こうと考えるしかなかったが、ここでの取り組みは犯罪から足を洗えそうな人の為に環境を整えることも考えていてね。
 刑務所の二期工事に従事したり受刑者の食事を作ったり床屋や洗濯と言った仕事が今までの経験に基づいて割り振られることになっているんだ。」
「その二期工事が終わったら本格的に動き始めるのかしら?」
「一気に薬物を流通させている組織を叩き壊滅させるまでには少し時間が掛かると聞いている、刑務所の規模が大きくなればその為の人員が必要になり、まだまだ研修が続くそうでね。」
「学校のスタートの方が先になるのかしら?」
「多分ね、研修に来てる人達の中には妻帯者が家族で移住して来るパターンも増え始めているから、早く仮設住宅から新たに建設中の寮に移り住んで貰わないと。
 刑務所の二期工事が終わるまでに仮設住宅を物置にする計画も有るからな。」
「村の人口が一気に増えたけど、更に増えるのね。」
「ああ、内密な調査期間を経た後、本格始動のタイミングで大統領から大きな発表が有るそうだよ。」
「この国から薬物犯罪が減るのかしら?」
「そうなって欲しいね。」
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近衛予備隊-103 [高校生バトル-53]

 受刑者が移送されて来ることに対して当初は村人から心配する声も聞かれたが、実際に移送され訓練生の指揮下で働き始めると何の問題もない事が村人達にも伝わった様だ。
 それは単に模範囚を集めたからだけでなく、元いた刑務所より食事の質を良くし、研修を受け看守となった元兵士達が、出所後には犯罪から足を洗い真面目に働くよう優しく導いているからだろう。
 それはほとんど人間扱いされていなかった受刑者にとってとてつもなく大きな変化だったことは間違いない。
 労働力が増えたことで道路環境も改善され村人達がその恩恵を受けていることも大きい。
 今までは町から店への道路以外に舗装されている道はなく、ぬかるみにタイヤを取られ抜け出すのに苦労する車をよく見かけたものだが、それが少しずつ改善されていると感じる。
 プリンセスの指示により村人に対して受刑者受け入れのメリットを目に見える形でと進めた結果だ。

「詩織、設備に対する投資額が膨らんでいると思うのですが大丈夫ですか?」
「問題ないわ、広くなった村のインフラ整備は元からの予定に有ったことなの、確かに治安回復の為の取り組みは予定外だったけど、受刑者が真面目に働いてくれて人件費を抑えられているからね。
 あなた達の家も二軒めに取り掛かるのでしょ。
 少しづつ綺麗になって行く村が国中で最も治安の良い村になるだけで経済効果が見込めるのよ。」
「経済効果ですか…。」
「ここの話を聞きつけたお金持ちが移住を考え始めたみたいなの、訓練生にオフの日も極力制服を着用して貰ってる効果が表れ始めたわね。」
「治安が良いと移住まで考えるものなのですか?」
「ええ、お金持ちは強盗の標的になりかねないでしょ、それなりの対策にお金を使いながら怯えて暮らすより移住した方が良いでしょ、ここは町に無い様な娯楽施設を建てる計画も有るのだから。」

 村の人口は受刑者を含め勢い良く増えている。
 警察官の手を煩わせる程では無いが、元からの住人と店や公園整備の為に移住して来た人の間でトラブルが発生しているとも聞くので少し不安なのだが、プリンセスは色々な人がいるのだから少しばかりのトラブルは有って当然だと言う。
 そこから犯罪に繋がらないだけの体制を維持したいとも。
 確かの町の犯罪発生件数は少なめに発表されていると聞く割に多過ぎると感じる。
 この村が正真正銘国中で最も治安の良い村で有り続ける様に自分も出来ることをしたものだと思う。
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近衛予備隊-104 [高校生バトル-53]

「シャルロット、また喧嘩騒ぎが有ったみたいだね。」
「ええ、ここでの生活に慣れて来た人の気が緩んでいるのかしら?」
「どうだろう、外から移住して来た人と元からこの地に住んでいる人が上手く行かないと言うのは分かる気がしないでもないが…。」
「移住して来た人同士でも喧嘩してるし前からの住民同士でも、仕方ないことかしら。」
「かもな、原因は些細いなことばかりだと聞いてる…、でも、近衛隊メンバーが喧嘩したと言う話は聞いたことないよな。
 俺達も喧嘩らしい喧嘩はしたことないし。」
「それはジョンが優しいからよ、ただ…、近衛隊メンバーは趣味を持っている人が多くて仕事にも熱心でしょ、その辺りの違いが関係してる可能性はどうかしら?」
「そうだな…、俺達の部落で家を建てる作業を手伝って貰ってるのはやりたいと言ってくれた人、彼らは結構楽しそうに作業していて趣味になってると言えるのかもしれないし、最近喧嘩の話を聞くことが減った気がするよ。」
「そうね、協力して作業すると言うことが良かったのかも。」
「村人達から趣味の話は聞かないし、現場の違う人と協力して作業することなんてないものな。」
「趣味と呼べそうなのは、喧嘩の原因になりかねない博打ぐらいなのよね…。」

 それまで俺達は村全体の生活水準向上を考えてはいたものの、趣味と言う領域まで考えたことは無かった。
 改めて自分の生活を見直すと、宮殿などで様々なことを学ぶのが楽しく仕事も充実している。
 村人の多くは、仕事に追われる人生を歩んで来た人達で、今まで趣味何て考えられなかっただろう。
 そんな差が有ることを近衛隊メンバーに話してみたら、自分達もそこまでは考えて無かったとなり、それが新たなチーム立ち上げの切っ掛けとなった。
 趣味普及チームは、お金が掛かり過ぎることなく取っ付き易そうな遊びを中心に考えて行くことにしたが、場合によっては趣味と実益を考えて展開するのも有りだと思う。
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近衛予備隊-105 [高校生バトル-53]

 趣味普及チームが、まず取り組んだのは玩具作り、玩具作り教室として募集を掛けたところ我が子の為に、また子どもがいなくても面白そうだからと参加者が集まった。
 作り方を教える玩具は、近衛隊メンバーがそれぞれの出身国で作られている物をサンプルとして用意したものを製作難易度別に分け各自選んで貰うが、材料は主に木材や布など自分達で用意出来るものに。
 最初に様々な遊び道具が紹介されたが、中には作り始める前から大人達が夢中になるものも有り、図らずしもそれまで交流の無かった人達が交流する場ともなった。

「ジョン、玩具作り教室は盛況みたいね。」
「ええ、詩織、遊びに来てるだけの人もいますが、それはそれで良いと思っています。」
「玩具の出来栄えはどうなの?」
「人によって差は有りますが、手先の器用な人が作った物は欲しがる人が居るぐらいで、先々店の商品として販売することを視野に入れてると伝えて有ります、そんなハイレベルな作品は多くないですがマーケットで利益率を抑えれば売れそうな物は普通に作られています、問題外のも有りますが。」
「受刑者でも作れるかしら?」
「それなりの人数がいるのですから、作れる人もそれなり居るのと思います、刑務所で作って売りますか?」
「出所後に出来る仕事の種類を増やしたいと思ってるの、今は農作業に人手を使ってるけど近い将来機械化を進め始めるからね。」
「工場を建てるのですか?」
「出所後の人達を雇用する為にも必要でしょ、今は何を作るか検討してるのだけど利益を考えると難しくてね、質の良い玩具なら輸出を視野に入れられると思って。」
「日本には安価な物しか送れていませんものね、利益がここに還元されて無かったら二国間の貿易は酷くバランスが悪いものだと思います。」
「ええ、理想としては自力で生活環境を良くして行くことだからね、どうしても良い商品を見つけられなかったら、関係企業の下請けと言う手が有るのだけど、うちの傘下では有っても出来れば下請け企業では無く自立した会社にしたいの。」

 この村はずっと会社に頼って改革を進めて来たが、ずっとその状態では無く自分達の手で自分達の村を造って行ける様にならなければ村造りに成功したとは言えない、とは、プリンセスが近衛予備隊に対して口にされて来た言葉だ。
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近衛予備隊-106 [高校生バトル-53]

 男性が作る玩具とは違い、女性達は人形やぬいぐるみ作りに取り組む人が多い。
 特に夫と同居する為に越して来た人達は、ここでの生活に慣れ始めると家事に取られる時間がかなり少なくなり、今は空いた時間を使って同じ境遇の人達と共に、おしゃべりしながらのぬいぐるみ作りに精を出している。
 村に慣れたら店で働いて貰うことも考えていたが、彼女達の作業を見ていると慣れない接客よりオリジナルのぬいぐるみや人形を作って貰い、その販売を考えた方が良いと思えプリンセスに相談することにした。

「質の良いオリジナルデザイン商品を製造出来るので有れば彼女達にとってプラスになるわね、長時間拘束する必要はないのだから各自マイペースで働いて貰えば良いわ。
 デザイナーとも相談してみるけど、ジョンは彼女達と相談してくれる?」
「はい、相談してみますが、ルーシーは制服姿の人形を提案してくれました、ここは制服姿の人が多くて女の子達にとって憧れの存在になっているのです。
 今後、ここでトレーニングを受けた警察官や兵士の制服はデザインが一新されると聞いていますので、近衛隊、予備隊と合わせて製造してみるのはどうでしょう、子どもが遊ぶ為の物だけでなく室内装飾の一部となる様なクオリティーの高い物まで用意出来ればと思うのです。
 子どもの為には店の制服などを身に纏う人形も有れば喜ばれます。」
「では、マーケットで売る安価な子ども向けは、ぬいぐるみ作りに取り組んでる人達と相談するとして、ハイクオリティーな着せ替え人形は本体を日本から、それにここで作った制服と合わせるという方向でどうかしら?」
「本体は難しいのですね?」
「ええ、売れ行きが良ければここでの製造を考えても良いけど、まずは服からスタートした方が無難だと思うの。」
「分かりました、本体のサンプルは誰にお願いすれば良いですか?」
「そっちは私の方で手配するから気にしなくて良いわよ。」
「人形に関しては試作品を作って貰ってから検討ですね、それで…、少し気になっているのは警察官と兵士の制服なのですが…。」
「今のは少しダサいでしょ、近衛隊や予備隊と同じ様にスタイリッシュな物に替えるのよ。」
「しかし、警察官や兵士全員では無くここの人だけが一新と聞きまして、問題になると思うのですが。」
「大統領の判断だから大丈夫でしょう、詳しくはまだ話せないけど、近い内に大統領がこちらへいらして発表となるから、その時にね。」
「はあ…。」

 どうやらまだ秘密にしておかなくては行けない事情が有る様だ。
 制服の話は親しい警察官や兵士達も知らないそうで、噂の出どころは制服を運んだ運送屋だとも聞いていたが、プリンセスが明かしてくれたことで運送屋の話は本当なのだろう。
 ただ、プリンセスが教えてくれなかった大統領からの発表はとても気になっている。
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近衛予備隊-107 [高校生バトル-53]

 ぬいぐるみや玩具をマーケットで売る話が広まると、今まで玩具作りに関心の無かった人が興味を持ち始め、玩具作り教室は更に盛り上がり始めたのだが、そんな折、村に戦車がやって来た。
 戦車だけでなく国軍の車両が相当数、列を連ねて村に入って来たのだが、それはプリンセス詩織にさえ知らされて無かったこと。
 国軍高官からの説明は大統領の訪問を前にした警備強化の一環だと言う一言だけだ。
 この様なことは先回の訪問時に無かったことで村中がざわついている。
 知り合いの訓練生は、知らされていたものの他言無用となっていたと話してくれたが、それ以上のことは自身も大統領の発表待ちだそうで、村人たちを落ち着かせるネタを仕入れることは出来なかった。

「シャルロット、予備隊幹部の学習、明日は中止になったよ、代わりに大統領関係のテレビ番組を見る様にと指示が有った
「では食堂に集合ね、テレビ放送の時間を確認して連絡しておくわ、それにしても大統領からの発表はそんなに重要なのかしら?」
「戦車付きの国軍を護衛に伴うレベルだから少し心配だな、戦争ではないと思うが。」
「それなら、この村に来る必要はないものね。」
「うん、最近町へ行くからと挨拶に来る訓練生が多くて…、何か関係が有るのかな。」
「村長に挨拶とは律儀ね。」
「だろ、それが皆さん一様に真面目な顔をしていて、人には言えない何かを秘めてるみたいなんだ。」
「町へ行ったままになるの?」
「いや、日程は決まってないが仕事の関係で一時的なことだそうだ。
 その穴を埋める為に戦車が来たのではないよな。」
「そんなバカげたことを言い出す程、情報が無いのね。」
「ああ。」

 ここの所、訓練生からの情報が全然入って来なくなっている。
 大統領関係や訓練施設関係のことで気になってることを聞いても、本当に知らないか、何か隠しているかのどちらかだ。
 ただ、必死に隠そうとしてる人に対して、追及すべきでは無いと考えているので、自分に分かるのはその彼が隠し事をしていると言うことだけ。
 明日、大統領からの発表を聞けばすっきりするのだろうか…。
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近衛予備隊-108 [高校生バトル-53]

 大統領の到着に対して、今回はそれを歓迎する式典などの華やかな催しが行われないにも関わらずテレビ放送が有るのは、大統領が国民に向けてのメッセージを発信する予定が有るからだ。
 食堂のテレビで、局のアナウンサーが我が国の刑務所事情について説明する様子を見ていると、画面はいきなり新たに建てられた警察署の前、大統領を始め首相や国軍、警察などのトップが勢揃いした映像に切り替わった、彼らこそが戦車を以てして国軍が守らねばならないメンバーなのだろう。
 局のアナウンサーが彼らを一通り紹介した後、話し始めたのは大統領報道官と紹介された女性。

「ここにはこの警察署の他、刑務所や警察官向け研修施設を含め多くの建物が建てられましたが、これらは遠江王国、プリンセス詩織の協力無くしては完成させることが出来ませんでした。
 改めてプリンセス詩織と遠江王国に感謝します。
 さて、今日は国民の皆さんに我が国の司法制度を紹介させて頂きたいと思います。
 そう、犯罪を犯した人がどの様な過程を経て裁きを受けることになるかです。
 今回の犯人役はここに並んでいる方々にお願いして有ります。
 まずは逮捕、我が国では犯罪件数の増加に伴い簡略化されていますが逮捕の理由は告げられています。
 たった今、被疑者達が逮捕され手錠が掛けられましたが、逮捕してくれた人の制服は見慣れた警察官のそれとは少し違いますね。
 実は大統領が犯罪を減らす目的で新設した大統領親衛隊の一員なのです。
 大統領親衛隊は警察官と国軍の兵士からの選抜チームですが、今は警察にも国軍にも所属しない大統領の指揮下に有る独立した組織で、警察官と同じ権限を持っています。
 少しお話を伺ってみましょう。
 この方の容疑は何ですか?」
「とても多いのですが、罪状として告げたのは収賄です。
 警察のトップで有りながら犯罪組織のボスと癒着していまして、お金を受け取って罪を見逃して来たのです。
 我が国から組織犯罪が減らないと思われている方も多いと思いますが、その元凶だったのです。」
「ひどい人なのですね、容疑が多いと言うことは、他に余罪が有るのですか?」
「ええ、自宅を新築した時の費用は公費を流用していますが、それだけでは無く、経費を胡麻化し気に入った女性に高価な宝石を買い与えたり、気に入らない下級の警察官にやってもいない罪をなすり付け刑務所送りにしたりと、調査していて気が滅入りました。」
「こんなひどい人はこの後どうなるのですか?」
「まずは、留置場に入れられ、露見した悪事に関して調書を取られます。」
「有難うございました、それでは留置場へどうぞ。」

 お、おい、これって本当に逮捕したってことじゃないのか!
 警察のトップを。
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近衛予備隊-109 [高校生バトル-53]

 その場で手錠を掛けられ逮捕の理由を告げられたのは、国軍のトップ、首相、裁判所のトップなど計八名、全員の顔が青ざめていたことから犯人役では無く、犯人として拘置されたのだと分かる。
 八名が留置場へ送られたところで大統領が話し始めた。

「国民の皆さん、今の逮捕は芝居では有りません、この場で八名の犯罪者を逮捕しました。
 全員に余罪が有りますが、これが我が国の現状です。
 各組織のトップを逮捕した訳ですので、これから内政に混乱が起きることになります。
 しかし、同時に逮捕しないと逃げたり証拠を隠滅する輩が出たと思います。
 今、この時も、この番組を見て証拠隠滅を図ってる者が何人もいることでしょう。
 先ほど紹介されました大統領親衛隊は警察官と国軍兵士から組織しましたが、彼らは今、各地でそれぞれの地域の真面目な警察官と協力し犯罪者の逮捕にあたっています、但し充分な人数とは言えません。
 そこで戒厳令を敷きます。
 混乱に乗じての逃亡者、及び混乱を大きくしようとした者は厳しく罰せられます。
 この戒厳令が解除されるまで、どれだけの時間が掛かるかは国民の皆さん次第になります。
 皆さんが冷静に普段通りの生活をし、今まで犯罪を犯して来た者がそれを反省し自ら警察に出頭するので有れば解除までの期間は短くなります。
 今回の特例として自ら出頭した場合は減刑となりますが、裏でこっそりお金を渡しての減刑依頼は重罪となり、お金持ちでも貧乏人でも同様に裁かれます。
 また、明らかに冤罪で刑務所行きとされた者、軽微な犯罪で逮捕されたが模範囚として刑務所で過ごして来た者に対しては恩赦が適用されます。
 この国から病巣を取り除き暮らし易い国に出来るかどうかは国民一人一人に掛かっていると考えて下さい。
 また…。」

 大統領の話は続いているが、俺は様々なことを考え始めていた。
 村に大統領親衛隊の本拠地が有るので、犯罪による混乱は考えにくいが、混乱に陥った地域から、ここへの避難を考える人が出て来る可能性は否定出来ない。
 問題はその規模が大きくなってしまった時、我々が上手く対応出来るかどうかだ。
 丈夫で大きいテントは大統領親衛隊が訓練生時代の初期に使っていた物が有る筈、設営する場所は刑務所の近くの広場が使えるが、それで足りるだろうか…。
 この戒厳令に対して犯罪組織がどう動くかについては予測出来る情報を持ち合わせていない。
 これから近衛隊や予備隊のメンバーと情報を集めながら、俺達に何が出来るのかを考え、大統領親衛隊の活動を見守って行く必要が有るだろう。
 う~ん、恩赦が適用される人達には住む所と仕事が必要だが…、大統領はそこまで考えているのだろうか、多分ここの刑務所に入れられている連中は、そのほとんどが恩赦の対象になる筈。
 プリンセス詩織と相談する必要が有りそうだ。
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近衛予備隊-110 [高校生バトル-53]

 大統領は今後についての説明をした後、戒厳令の宣言を強調して話を締めくくる。
 俺は真剣な顔をして町へ行くと挨拶に来てくれた訓練生、今は大統領親衛隊となったであろう人達の顔を思い浮かべていた。
 彼らは今、困難な任務に就いていることだろう、そう考えると安全な場所でのんびりしている訳には行かない。
 まずは一緒にテレビを見ていた予備隊の幹部達と意見交換し、俺達に出来ることをしようとなった。
 大統領は暫く宮殿で生活することになっているので、宮殿で近衛隊メンバーと意見交換をするのはどうかとも思ったが、スティーブに電話を掛けたら予備隊幹部の意見も聞きたいとのこと、特に予定の無い八人が宮殿へ向かうことに。
 宮殿までの道は国軍の兵士が警備に当たっていたが、近衛隊の隊服を着ている俺を先頭に予備隊の隊服姿で整然と歩いてるからか、呼び止められることも無く宮殿まで行くことが出来た。
 スティーブが話を通しておいてくれたらしく、宮殿ではそのまま会議室へ行く様にと指示を受ける。
 少し意外だったのは、その場にプリンセス詩織もいたこと、まだ会議が始まると言う雰囲気でもなかったので…。

「詩織は今回の戒厳令について、ご存じだったのですか?」
「いいえ、今日逮捕された人達に知られない様、箝口令が敷かれていたとかで、近衛隊メンバーでは大統領の相談役として送り込んで有った一人が知ってるだけだったの。
 その一人の発案で今日の逮捕劇が演じられたそうだけどね。」
「各組織のトップを真っ先に逮捕なんて思ってもみませんでしたが、良い作戦だったと思います。」
「でも、国の重要な組織が全て崩壊しかねないでしょ?」
「警察や国軍の組織は一度崩壊させるしかないかもと、今は大統領親衛隊となった訓練生第一陣の人達と語り合った夜を思い出します。」
「現場の人はそんな風に組織の現状を捉えていたのね。
 問題は現場がどの程度混乱するかだけど…。」
「詩織はどう思います。」
「鍵を握るのはコンピューターシステムの導入に掛かってる気がしてるの。」
「何処に導入するのです?」
「国の組織全てにね、我が社が全てを請け負う代わりに資金面でかなりの借金を引き受けることになったわ。
 でも、大統領は刑務所などの施設もだけど、我が社が公的な事業に対して費用負担している部分は全て返済して行きたいと考えていてね。」
「それは返済されたら、詩織がそのままこの国に投資してくれる人だからではないですか?」
「かもね、でも以前の指導者なら考えもしなかったこと、だからそれで良いのよ。
 それよりインフレを進ませた時に貧困層の生活が崩壊しないかという問題が有るでしょ。」
「あっ、資金の流れが変わるから、それに伴って消費動向に変化が生じると…。」
「今まで不正な形で溜め込んでいたお金持ち達のお金が、低所得だった公務員に流れる様になれば、店の売れ筋商品も大きく変わると思わない?」
「戒厳令からの社会変化は単なる治安の問題だけで済みそうにないのですね。」
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