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高松加奈-01 [化け猫亭-08]

「おやっ、小夜ちゃん、うちの孫がピアノを弾き始めたが問題無いのか?」
「はい、お上手ですね、あっ、お孫さんは大学で何度かお見かけした事が有ります、お話しした事は有りませんが服のセンスが良いです。」

「高松、一区切りついたのか?」
「ああ、店の事も教えて貰った。」
「小夜ちゃん、次の対局は有るの?」
「いえ、今日の将棋は高松さんで終わりです、深沢さん、私は席を外した方が良ろしいですか?」
「はは、冗談だろ、最近話せて無かったから近況報告をしてくれよ。」
「分かりました、でも、まずは高松さんのお孫さん自慢をお聞きしたいです。」
「加奈ちゃんの事が気になるのかな?」
「勿論です、綺麗でセンスが良くて、多分知的レベルは低くない、下心が有るにせよ車椅子の祖父と行動を共に出来る優しさが有って…、ここのスタッフになる事を考えているのなら大歓迎です。」
「はは、儂が自慢する前に言われてしまったな。」
「ピアノも良いね、小夜ちゃんもだが才能の有る人には多才な人が少なく無い、やはりコツを掴むのが上手なのかな?」
「でも、頭では分かっても、体がついて行かない競技が多いのですよ。」
「万能になる必要はないな、ねえ、小夜ちゃんの目から見て加奈ちゃんのピアノはどうだい?」
「あらっ、音楽は目で見るのでは無く耳で聴くものですよ。」
「はは。」
「ピアノだけに集中していたらプロになれたかも知れません、でも彼女はその道を選ばなかった。
今は店のBGMを、お客様方のじゃまにならない様に奏でていて、注目は集めていますが気遣いの出来る方です、私とは芸風が違いますから比べないで下さいね。」
「芸風?」
「加奈さんは楽譜に忠実ですが、私は楽譜通りに弾けないのです。」
「加奈も家ではかなりいい加減だがな。」
「そうなのですか、では、少し失礼します。」
「ああ…。」
「小夜ちゃんピアノの方へ行っちゃいましたが…。」
「連弾をするのか?」
「みたいですね。」
「深沢は小夜ちゃんのピアノ聴いた事有るのか?」
「いや、店内がざわついているのは誰も小夜ちゃんの演奏を聴いた事が無いからだ、ここで猫踏んじゃったを演奏しかねない人だし…。」
「演奏中の加奈さんに何か声を掛けましたね。」
「あっ!」

「凄いな、プロでは無い様な事を話してたが…。」
「即興で掛け合い…、終わりかな。」

「今日はお爺さまの付き添いか、お爺さまに付き添われてかは存じませんが、演奏して下さったのは高松加奈さんです、もう一度拍手をお願いします。」

「はは、すでにスタンディングオベーションだよな。」

「今、お友達になりましたので皆さんも宜しくお願いします。」
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高松加奈-02 [化け猫亭-08]

「加奈ちゃん、演奏前に小夜ちゃんから何を言われたの?」
「遊びましょう、と一言、ふふ、楽しかったわ、小夜ちゃんなのね。」
「ええ、マスターと話してたそうだけどスタッフ希望なの?」
「はい、先輩宜しくお願いします。」
「そうか、鮮烈なデビューを飾ったな。」
「たまに音大の子が演奏に来るが、芸風が違うという事か。」
「彼女達の目的はコンクールの為の場慣れ、私達程自由では無いのですよ。」
「加奈、小夜ちゃんに将棋で負けてな。」
「お爺ちゃんは結構強いのでしょ?」
「いや、井の中の蛙だったよ、加奈と小夜ちゃんは同じ大学の様だが接点はなかったのか?」
「そうね、たまに見かける程度、でも、さりげなくファッションの参考にさせて貰ってたの。」
「美人同士、ライバル心が有ったりしたのか?」
「全然無いわ、外見より中身で勝負、でも、人に良い印象を持って貰う事は大切って、お爺ちゃんの教えでしょ。」
「ふふ、素敵なお爺さまなのね、深沢さん、月一ぐらいで高松さんをお誘いして下さいな。」
「いや、もっと来たい、ちょっとおっくうで外出は控え目だったが、この店なら、なあ、加奈、良いだろ。」
「そうね、お婆ちゃんものんびり出来て良いんじゃない。」
「高松さんは将棋以外にどんなスキルをお持ちなのですか?」
「スキルか…。」
「お爺ちゃんのスキルは経営全般でしょ、中堅企業を長年潰すことなく成長させるのは簡単な事とは思えない、日本の経済がずっと安定してた訳では無いのでしょ。」
「うん、苦しい時も有ったがな、でも世の中変化してるからもうついて行けない…。」
「将棋の時と違って随分弱気に聞こえます、若造にご自身の経験を語り諭すぐらいの方で無いと化け猫亭の会員に推薦出来ないのですが。」
「いや、年寄りは静かに身を引くべきではないかね。」
「深沢さんはそんな事考えてませんよ、少しボケてるぐらいで調度良いのです。」
「お、おい、俺はまだボケてないぞ。」
「そうそう、こんな感じで長生きして下さい。」
「はは、なかなかのお嬢さんだ、私は化け猫亭の会員になれるのかね?」
「約束事を守って頂けるのであれば。」
「勿論だ、店のルールは深沢から聞いている、でなければ、可愛い孫娘と来たりはしない。」
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高松加奈-03 [化け猫亭-08]

「初めまして、高松加奈と申します、永井さんですね。」
「おお、スタッフになってくれたんだ、この前のピアノ演奏良かったよ。」
「有難う御座います。」
「小夜ちゃんとは、どれぐらい練習したの?」
「練習なんて何もしていません、話したのも演奏後が初めてです。」
「へ~。」
「小夜は芸風が近いかもと思い、一緒に弾いてみようと思ったそうです。」
「実際は?」
「近いですね、普段家で弾いてるのはショパンもどきだったりしますが、彼女も似た様なものだと。」
「そこに、もどきが付く意味は?」
「ショパンを弾き始めても途中から楽譜を追うのが面倒になって適当に演奏、頭は全然別の事を考えていたりして、母から曲では無いと言われます。」
「音楽の天才では無いのだね。」
「はい、ただ、父は録音して何か分析しようとしています。」
「う~ん…、ただの親馬鹿なのか、どこかに天性の才能を見出しているのか…、お会い出来たらお聞きしてみたいものだな。」
「もう直ぐ来ますので紹介させて下さい。」
「それは嬉しいね。」
「永井さんは何か楽器をなさるのですか?」
「高校生時代クラリネットを、あまり上手くなかったけどな。」
「今はされてないのですか?」
「もっぱら聴く方さ。
ねえ、加奈さんは同じ楽器でも…、例えばクラリネットがクラシックの演奏家によって演奏されるのと、JAZZプレイヤーによって演奏されるのでは何か違うし、マーチングバンドでの演奏…、プロとアマの差も有って、同じ楽器でも演奏者によって随分違うと思わないかい?」
「そうですね、私はCDでプロの演奏を聴くぐらいですが、そう言う視点は面白いです。
ピアノでも同じで、小夜と私が同じ曲を同じピアノで譜面通りに弾いても違ったものになります。
まあ、小夜とは譜面を見ながらの演奏は無いと思いますが。」
「インプロビゼーションか、練習無し、初めての共演が…、二人はプロになれるのでは?」
「いいえ、本当のプロは全然違います、私達のはお遊びレベルですよ。」
「お遊びね…、で、また聴かせてくれるの?」
「ええ、父が聴きたいと言ってましたので、今夜は小夜を誘って有ります、もう直ぐ遊びに来ますよ。」
「もう友達感覚なの?」
「はい、意気投合という感じです。」
「個性的な子だろ。」
「ただ単に正直で素直なだけではないのですか。
小夜は自分自身の為に私の父との接点を持ちたいと話してくれました。
変に言い訳めいた事を言わず、社長との接点を作る事で自分の可能性を広げる為と、私の周りは何かうじうじした人が多くて。」
「そうだな、その辺りがおじさん達を弄んでいても人気の理由なのかな。
加奈さんも弄ぶタイプ?」
「そんな~、私は永井さんに弄ばれないかと震える、か弱き乙女ですよ。」
「う~ん、小夜ちゃんと同じ波動を感じる…。」
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高松加奈-04 [化け猫亭-08]

「こんばんは、化け猫亭のスタッフになったばかりの高松加奈と申します。
小夜とのピアノ演奏前に、父と祖父を紹介する様にとマスターから指示が有りましたので、私の事も父から聞いて下さい、はいお父さま、お願いしますね。」
「はは、失礼します、娘がスタッフにという事で私共も会員にして頂きました。
私は…。」

「父も祖父もここでの出会いを楽しみに、勿論私もですので、家族一同宜しくお願いします。
さて、小夜との演奏は打ち合わせや準備なしなので、スタートは誰もが知っている様な小品をリクエストして頂けると嬉しいのですが、如何でしょう?」
「子犬のワルツってどう?」

その瞬間小夜はメロディを奏で始め、それを追う様に加奈が加わる。
二匹の子犬がじゃれ合うかの如く、でも、それは一台のピアノでの事、演奏している二人の手もじゃれ合ってるかの様に交差しながら、鍵盤上を所狭しと動き回る、子犬のワルツを主題とした変奏曲は観客を楽しませた。
そこからは、誰しもが知る曲のフレーズを織り交ぜながらの即興演奏が繰り広げられる。
My Favorite Thingsのメロディを加奈が奏でた後に、小夜が金平糖の踊りを弾き始める、といった具合だ、相手が主旋律を弾いている時は適度にと言うか適当にコードを合わせている。
途中からはピアノで対話している様な雰囲気に。
客達は小夜が驚いたとか加奈が笑っているとか感じながらそれを楽しんだ。
演奏を終了し、大きな拍手を貰った後。

「小夜ちゃん、締めくくりのフレーズは、たこ焼き食べた~いと聞こえたのだけど気のせいかな?」
「流石、永井さんです、私の気持ちが伝わりましたね。」
「俺の耳にもそう聞こえたぞ、私が買ってこよう、えっと幾つ買ってこれば良いのかな?」
「今までの経験から考えると六パックで良いと思う。」
「分かった、行って来るよ。」
「小夜さん、良い演奏だったよ。」
「有難う御座います、高松社長。」
「小夜さんの事は加奈から聞いた、企業コンサルタントを目指しているんだって?」
「はい、まだ大いなる助走の段階ですが。」
「その助走に我が社を利用してくれて構わないからね、加奈も会社の実情を学習したいと考えている、二人で会社に来てくれると嬉しいのだが。」
「私からもお願い、一人で行くとお嬢様扱いで動けないの、小夜が一緒なら心強いわ。」
「お願いします、今は色々な会社を見たいと考えていますので。
でも、今までここのお客様の会社を何社か見学させて頂いたのですが一人で行くと目立ってしまいまして、加奈と一緒だともっと目立ってしまいそうですが。」
「では会長とセットでもっと目立って貰おうかな。」
「同族経営を強調して良いのですか?」
「私が名大で済む所を東大へ行ったのは、社長の器を社員達に知らしめる為なんだ。
会社に入った時、社内に東大卒はいなかった、まあ、学歴を利用しつつ実力を発揮して社長になった。
私は三代目にあたるのだが、二代目の息子だからという理由だけでは無いと社員達は分かってるのさ。」
「三代目が潰すパターンでは無いのですね、加奈はどうするの?」
「お爺ちゃんやお父さんが頑張った結果、会社が大きくなって経営者の責任も大きくなっているわ、私は株主として見守る立場を模索中、でも、しっかり任せられる人が見つからなかったら自分が社長になる事も選択肢の一つなの。」
「結婚相手を社長にとかは?」
「都合良くそんな相手が見つかると思う?」
「そうね、化け猫亭で出会った重役さんと大学の男子を比べるのは間違ってるとは思うけど、ここの会員になれそうな人には、しっかり彼女がいるか…。」
「はは、少し人生経験を積んだ年上を見ても良いと思うがな。」
「高松社長、この店でお話しさせて頂くお客様はおじさんやお爺さんばかりですので、適度な出会いが無いのですよ。」
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高松加奈-05 [化け猫亭-08]

「永井さん、娘にお見合いの相手とかいませんか?」
「高松社長、彼女達と釣り合う男はそんなにいませんよ、加奈さんは、まだ恋とかしたい年頃でしょうし。」
「高齢出産で苦労はして欲しくないです、早く孫の顔が…、なあ親父もひ孫の顔が見たいだろ。」
「それはそうだが、加奈に無理強いはしたくないわな。」
「加奈さんはどう考えてるの?」
「寄って来るのは中身の軽そうな人ばかりなのです、まだ妥協したく有りません。」
「う~ん、真面目な連中は、君の美貌に圧倒されているのかもな、小夜ちゃんも似た様な事を話してたね。」
「はい、ハイレベルな変わり者の遺伝子だけを頂いてシングルマザーというのも有りかと考えています。」
「突っ込み所満載の発言だが、シングルマザーは大変じゃないのかな。」
「しっかり稼いで家事は家政婦さんに任せれば良いのです。
離婚率の高さを考えると、結婚の時点で離婚時に関する契約を交わしておくのも有りですね。
相手はどんな形で有れ充分な収入の有る人、養育費を出せない様なレベルの人との結婚とならない様に人を見る目を養っているのです。」
「私の周りで離婚した人は少ないよ。」
「社会的地位の高い方は人目を気にしますし、互いに離婚のデメリットを考えつつ適度に遊んでいるとか有りませんか。」
「それは有るかもな、私は適度に遊ぶと言うより適度な距離感を気にしているが。」
「加奈さんのお母さんという事は、奥さんはお綺麗なのでしょうね。」
「まあ、知的美人だよ、ちなみに加奈の妹達もね。」
「そこまで自信もって話せるというのは羨ましいです。」
「親父のお陰で金は有りましたし、親父の会社を引き継ぎ易い様にと意識した学歴が結婚でも役に立ちました。」
「大勢の中から選んだという事ですか?」
「ええ、一番知的で真面目だった、加奈の事をもっと知れば自ずと分かります。」
「加奈さん、君の父上は何時もこうなのかい?」
「ふふ、夫婦同伴でのパーティ―の後とか、母が一番綺麗だったって自慢してますよ。」
「では、浮気とかは一切なしで?」
「それは分かりません、父は普通にもてますので、私は弟が欲しいとおねだりしていたのですが。」
「はは、変な噂が流れたら社員達にも申し訳ない、浮気願望は無いですよ。」
「突如現れた加奈の異母弟、それによって荒れる高松家、そんな中、その彼とと私が恋に落ちて、あ~この恋はどうなるのか~、という展開は無いのですか?」
「ないない、小夜ちゃんは何を考えていたの?」
「小説のあらすじですが、インパクトが弱いので作品化はやめておきます。」
「うちで最大の波乱は妹が東京の大学に行った事ぐらいよね、お爺ちゃんもお父さんも口では頑張ってとか言いつつ、泣きそうな顔してた。」
「まあ、性格的に一人暮らしを考えるだろうとは思っていたが…、変な男に騙される事無く卒業して欲しいな…。」
「大丈夫よ、しっかり自己管理出来てるわ、夏休みに彼氏を連れて来るかもしれないけど、少なくともうちの財産目当ての人ではなさそうよ。」
「そ、そうなのか…、親父、父親としてはどう対応すれば良いのかな?」
「う~ん、分からん、儂の子はお前を筆頭に男三人だぞ、分かる訳ないだろ。」
「やはり、娘が彼氏を連れて来たら狼狽えますよね。」
「永井さんは経験されているのですか?」
「中学生の娘が…。」
「もちろん、うちの娘と付き合う事など許さ~んって、ぶん殴ったのですよね。」
「小夜ちゃん、中学生相手にそんな事出来ないよ、それより、中学生ながらにきちんと挨拶してくれたから…、中学生時代の自分には無理だったと思って、狼狽えながら、節度ある交際をと言うのがやっとだったよ。」
「へ~、恰好良い子なのですね、その後はどうなのですか?」
「妻が気に入って、しっかり見守ってる、このまま無事に結婚して欲しいが、先の事は分からない。」
「羨ましいな、私にはそんな出会いが無かったのですよ。」
「小夜ちゃんは中学生時代から男の子を弄んでいたの?」
「弄ぶだなんてとんでもない、頭が悪いのに告白して来る連中には私の怖さを教えて差し上げましたが。」
「何をしたのか、知りたい様な知りたくない様な…。」
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高松加奈-06 [化け猫亭-08]

「加奈さんはピアノ何時からやってるの?」
「五歳ぐらいだったかしら。」
「練習が嫌になったりしなかった?」
「先生が楽しくて自由な人だったのですよ、偶然小夜も同じ先生の指導を受けていまして。」
「だから芸風が似ていて、直ぐに息の合った演奏が出来たのか。
で、どんな、指導だったの?」
「好きな様に演奏して良いんです、ただ、ここはこう弾くともっと楽しくなるとか、綺麗に聞こえるとか示して下さって、先生の真似をすると確かに良くなるので嬉しかったです。
コンクールで賞を取りたいとかプロを目指すという人には違う指導をされてたみたいですが。」
「そうか、プロを目指すのでなければ、楽しく続ける事が一番大切かもな。」
「永井さんはクラリネットの練習どうでしたか?」
「弱小ブラスバンド部だったから、先輩から教えて貰う程度、その先輩が綺麗な人だったから結構頑張った、でも、才能の無さを感じてたよ。」
「指導者の先生はいなかったのですか?」
「顧問はいたが、特に楽器が出来る訳でもなく、私の卒業後しばらくして軽音部に変わったという程度だったんだ。」
「もし、優秀な指導者がいたらどうだったのでしょう?」
「私は入部出来なかった可能性が有る。」
「そういうものですか?」
「それぐらい不器用だったのだよ。」
「永井さんは管理職ですよね、不器用でも昇進出来た理由を教えて頂けませんか?」
「まあ、手先の器用さと管理能力は違う訳だが、仕事が出来ない連中の心理を把握してるという事かな。
私自身、挫折も経験して来た、クラリネットが上達しなかった自分を思い出しながら部下を指導して来たんだ、部下の心理を考えながら、指示を出し教育して来た成果が今の肩書だよ。」
「なるほど、上司が部下の事を把握していれば成果が上がるという事ですね。」
「ああ、そこで君の父上達と話してる小夜ちゃんは、その辺りの能力に長けている、もし君が四代目の社長になる道を選ぶのなら、彼女に手伝って貰う事を考えるべきだな。」
「分かります、まだ、沢山お話しした訳では有りませんが、彼女には色々な事が見えてるのだと感じます。」
「ねえ、君はリーダーシップを取る事も有るの?」
「サブ的な立場で全体を見るという経験はした事は有ります、その時にリーダーの役割を学びました。」
「そうか、ここの桜さんと話した事は有る?」
「はい、小夜に紹介して貰いました、私もCAT'S TAIL二号店オープンのお手伝いをさせて頂くつもりです。」
「桜さんは新会社の社長になるのだから共に学べると良いね。」
「はい、規模は小さくても、と言うより規模が小さいので経営全体を見させて頂けます。」
「君自身が起業するという考えはないの?」
「小夜や桜さんから影響を受けて考え始めました、小夜に出会うまではその選択肢に気付きもしませんでしたが。」
「お父上には相談したの?」
「ええ、資本金一億までOKだそうです、これから、小夜に手伝って貰いながら事業計画を立てようかと、ぼんやり考えている段階ですが。」
「一億か…、さすがだな、高松社長は君の力を考えての事だろう、何をするのか決まったら教えてくれな。」
「勿論です。」
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高松加奈-07 [化け猫亭-08]

「加奈さん、化け猫亭には慣れた?」
「はい、宮田さん、楽しくやってますよ。」
「加奈さんはピアノが上手で音楽は好きなんだよね。」
「はい。」
「ねえ、最近音楽を聴く余裕が増えて来たのだけど、君が気になってる演奏家とかいない?」
「そうですね、ピアニストではないですが、Jackie Evanchoはご存知ですか?」
「いや、知らないね。」
「十歳ぐらいの頃に大人顔負けの発声でオペラの曲を披露、今は十八ですが謎めいた美人なのです。」
「へ~。」
「聴いてみますか?」
「ああ、是非。」
「えっと…、十一歳頃の演奏です…。」

「私のお父さんか…、で、これが十一歳の声?」
「でしょ、合唱やってる子でもこの発声は簡単には出来ません。
生まれ変わりとか信じる方ではないのですが、ちょっと考えてしまいませんか?」
「だな…。」
「画像は手元にないので調べて頂きたいのですが、十五歳ぐらいでしっかり大人の美人になってたのですよ、人種の違いも有るのでしょうが。
そして、画像か映像を見たら彼女の首筋を確認して欲しいのです。」
「首筋?」
「印象的なホクロが有って、どんな人の生まれ変わりなのだろうと想像したくなる様な。」
「へ~。」
「お兄さんがお姉さんになる頃にトランプ大統領の就任式で国家独唱をしたりもしているのですよ。」
「えっ、どういう事?」
「そのままです、綺麗な人だから是非調べて下さい。」
「分かった、ちょっと失礼して良いかな?」
「はい?」
「スマホよりノート派なんだよ…。」

「宮田さん、如何でした?」
「どうして今まで知らなかったんだろう…?」
「来日した事は有っても、スタッフが日本をマーケットとは考えなかったのではないですか。
クラシック系のCDはあまり売れません、今は成長して普通のプロ歌手、意外性は無くなっていますし。
それでも、私にとってはミステリアスな存在なのです。」
「分かるよ、明日はゆっくりダウンロードしたり、じっくり調べたりして楽しむよ、教えてくれて有難うね。」
「どういたしまして。」
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高松加奈-08 [化け猫亭-08]

「加奈さん、この前は桜さん小夜ちゃんと三人で話してたね。」
「ええ、たまには店の売り上げに貢献しようかと。」
「何、話してたの?」
「起業についてです、桜さんは、CAT'S TAILだけでなく違う展開も視野に入れています、小夜は企業のお手伝いを考えていますが、私はまだ何も描けてませんでしたので、色々案を出して貰っていたのです。」
「良い案は出た?」
「加瀬さんのご意見も聞かせて頂けたら幸いなのですが、まずは社会貢献というテーマを掲げました。
社員にとっても顧客にとっても嬉しい会社です。
社長令嬢の私が言うな、と怒られそうですが、今は貧富の差が激しいです、そこを少しでも解消出来る事業をビジネスとして成り立たせる事は出来ないのかと、意見を出し合ったのです。」
「貧困問題は本人の自覚や能力が大きく影響して難しそうだね。」
「そうかも知れません、ですが、生活設計を真面目にサポートしてくれる人がいれば、シングルマザーになってしまったけど前向きに考えてる人は楽になると思うのです。」
「貧困ビジネスではないよね?」
「勿論です、まずは公的機関から情報を頂いて、私達の手で支える事の出来る人の応援から始めたいと考えています。」
「それを加奈さんが一人で?」
「いえ、CAT'S TAILのスタッフにお願いします、株式会社を立ち上げる時も、学生の実習を兼ねる事になります。」
「まずは学生に働いて貰う訳か。」
「桜さんによれば、こういった作業をやりたい人は少なく無いそうです。」
「しかし、ビジネスとして成り立たせられるのかな。」
「難しいとは思いますが、まずはシングルマザーの支援を考えています。
小学生以下の子どもを抱えたシングルマザー専用のシェアハウスを作れば彼女達の負担が減ると思いませんか。」
「あっ、彼女達にとっては効率が良いかもな。」
「気の合う人同士食事を一緒に作ったり交換したり、子ども同士遊んだり出来ます。
一つの案として、彼女達には保育や調理を学んで貰い、父の会社の保育園拡充や社員食堂で働いて貰う、とか、桜さんが今後展開する会社の従業員や小夜が人手不足と判断した企業に斡旋したり、その過程で会社側から、運営費を出して貰うという形、単に従業員を確保という事ではなく、弱者の生活を安定させる活動の一環だと捉えて頂ければ維持は出来ると思うのです。
その中に力のある人が居れば、別事業展開を考える事も出来、成功すれば規模を拡大出来ます。」
「スタート時が一番難しいのかな。」
「はい、社としての収入が無い段階で、研修中から、住まいを用意し安心して生活出来る給料を支払う必要が有ります、桜さんと小夜はスポンサー探しが私の役目だと。」
「分かった事業計画がまとまって来たら私にも報告してくれないか、社会貢献は優良企業の義務だからね。」
「はい、お願いします。」
「彼女達の立場は派遣社員にするのか?」
「そちらは法律を学習中の小夜が法学部の人達と検討してくれます。
どんな働き方が子育てをしながらの女性に最適なのかは、誰と相談しようかという段階ですが、仲間には様々な学部の真面目な学生がいるからと、桜さんが動いて下さいます。」
「そうか、営利企業としてより社会福祉法人の様な形態は考えないの?」
「いいえ、スタートは赤字でも人を集める事が出来ればそこから事業拡大出来ます、業種に拘らず拡大し利益を上げる事を目標にしています。」
「なるほど、どうなって行くのか楽しみだね。」
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高松加奈-09 [化け猫亭-08]

「加奈、スポンサーの方はどう?」
「今の所七社ぐらいは行けそうよ、さすが化け猫亭のお客様方ね、マスターにも協力して頂いて小夜ご推薦の方々にお話しさせて頂いたからか話が早いの。」
「加奈がにっこり微笑めば、おじさま方は簡単に落ちるのか。」
「どうかしら、皆さん社会福祉事業だから、弱者救済だからと話されてたわよ。」
「金額的には?」
「まだ具体的な金額は出てないのだけど、皆さんシェアハウスの規模は目立つ大きさにするべきだと仰って下さった、お父さまも資本金とは別で建設資金を出すと話して下さったわ、娘の事業が他社からの支援中心では恰好悪いそうで。」
「それも見越してたね?」
「少しだけ、それでさ、シェアハウスの建設だけど建物は学生コンペという案が出て来たの、スポンサーになるから建設は任せて欲しいという方からなのだけど。」
「CAT'S TAILの方向性を考えて下さっているのね。」
「スポンサーとしては、テレビ出演を考えて欲しいとも、若者が真面目な事業に取り組む姿は絵になるそうで。」
「テレビデビューするのか。」
「うん、ただね、小夜、桜さんと三人でと仰っていて、タイプの違う三人の美女が経営を考えながら社会貢献をと言うのが良い絵になるそうなの。」
「桜さんは、そのままCAT'S TAILの宣伝になるから断れないか、私は…、彼氏見つかるかな?」
「ふふ、小夜のハードルは高すぎるから目立たないとクリア出来る男性、現れないわよ。」
「そうね、中身で勝負と考えて来たけど出会いを増やさないと…、でも、出会いたくない人とも沢山出会う事にならない?」
「そういう人に嫌われるのは得意なのでしょ?」
「でも、手間でしょ。」
「確かに、まあ、理想のタイプを詳しく公言しておけば、簡単じゃないの。」
「そうね…、そうなると私達が商品になるのか。」
「ええ、小夜も名前を知って頂いた方が仕事が楽になると思う、コンサルタント会社を設立したら、会社の顔になる訳でしょ。」
「断る理由はないか…、他に動きは?」
「動きと言うか問題としては、シェアハウスで育つ子ども達、特に男の子達が中学高校になったら色々悩ましいかもって指摘されたわ。」
「う~ん、その辺りは男子に聞かないと分からないわね…、男子寮を作る必要が有るのかしら?」
「一応、全体の事業計画をまとめて貰ってるメンバーには伝えたわ。」
「チームは組めたの?」
「ええ、桜さんの推薦だけ有って頼もしいわよ、近い内に事業計画の素案をお客様方に見て頂けると思うわ。」
「スタートは何時ぐらいになりそう?」
「正式には来年ぐらいだけど、まずはうちで三人ぐらい働いて頂こうかと考えてるの、長年働いて下さってた家政婦さんが高齢になったし増員しても良いかなって、ベテラン家政婦を先生に研修を受けて頂くつもりよ。」
「住み込み?」
「いえ、近くの社員寮が空いてるからそこに。」
「そうか、お金持ちは簡単に雇用の場を生み出せるんだ。」
「三人ぐらいならね、まずは小さく動き始めるわよ。」
「分かった、見守るね。」
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高松加奈-10 [化け猫亭-08]

「加奈さん、どう、事業の方は。」
「小さく始めています、まもなくウエブ上で進捗を確認出来る様になりますので、宮田さんも見て下さい。」
「それは楽しみだな、始まったのはどんな事?」
「まずは株式会社設立の準備です、それに伴う事業計画の作成、そしてシングルマザーを三人雇いました。」
「もう?」
「はい、家政婦として、ベテラン家政婦の指導を受けながらです、うちにも必要性が有りましたので。
資質を見極めた後は別の職場へと言う可能性も了解済です。」
「成程、三人分の給料を高松家が負担するだけで君の計画が進む訳か。」
「はい、能力の高い人には早目に職場を変わって貰いますが、とりあえずシングルマザーの声を直接聞く事が出来ます。」
「その中から君の会社の社員に、という事も有るのかな。」
「はい、そのつもりです。」
「子どもは何人?」
「二歳から五歳の五人です、今後の保育に関してはこれからですが、保育士を目指している学生にも相談に乗って貰います。」
「いっその事、保育園も作ったらどうだ?」
「あっ、そうですね、保育料無償化だから、維持費はあまり心配しなくて良いのかも知れません。
認可保育園にして、幼児教育を学んでいる学生が実習という事も視野に入れて…、宮田さん有難う御座います、もっと難しく考えていました。」
「はは、認可保育園を経営というのも簡単では無いと思うよ。」
「はい、子を預かるという事は大変な事だと思います、事故や病気の可能性は常に有りますので。」
「うん、それが分かっていれば大丈夫だろう、シェアハウスの一角を保育施設にすれば安心じゃないか?」
「そうですね、色々検討したいと思います。」
「スタッフはどんな感じなんだい、学生なんだろ?」
「はい、CAT'S TAILのスタッフから桜さんが紹介して下さいました。
三名が専属スタッフとして、私は彼等に依頼し彼等の報告を受けています。
彼等が必要を感じたら他のスタッフを動かしてくれます。」
「給料や必要経費の管理は?」
「それもお任せして有りますが、毎日私を含め多くの学生がチェックしています。
経費がどれぐらい、何に掛かるのか興味が有る人が多いのです。」
「そうか、CAT'S TAILと同様、生きた教材という事なのかな。」
「でも、本来、正社員が行う作業をバイト待遇の学生が進めていますので、金額的には参考にならないと思います。」
「学生達もそれぐらいは理解してるだろう、それより、家政婦として雇う人達の立場や給料は?」
「一旦父の会社で雇いますが、いずれ私の会社に移籍して頂きます。
今は彼女達の不利益にならない様、労働者派遣法とか職業斡旋法を小夜から学び始めた所です。」
「三人は簡単に決まったの?」
「はい、お爺さまと相談して決めた条件はひとまず彼女達が安心出来るものだったみたいです。」
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