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調査-61 [花鈴-07]

 徳沢さん達が先生からの聞き取り調査を始めて間もなく四年生の学級担任が休職した。
 彼女が何か問題を抱えていたことは間違いない。

「徳沢さん、あの人には誰かに聞いて欲しいことが有ったのでしょ。
 前はあんなに子ども達に嫌われる様な人では無かったのよ。」
「ああ、教頭先生と相談して決めたと話しておられたから良かったのだろう。」
「人生色々?」
「そんなとこだな。」
「徳沢さんが聞き取り調査をしなかったらずるずると長引いたのかしら?」
「先生だって人間だからな、個人的な問題を抱えている教師は日本中にいるかもと気付かされたよ。
 自分達がここでの調査を始めるに当たっては全く意識してなかったことだけどね。」
「そっか、調査は順調に進んでるの?」
「う~ん…、今回のことで、まだ表面的なことしか見えて無いと実感させられたからな。
 花鈴姫は見返りを求めて来るし。」
「見返りも無くアンケートに答える人は暇人だけでしょ。」
「かもな、そう考えると調査の信頼度がね。」
「信頼度?」
「ここでの調査に入るに当たって電話調査の信頼度に関する話を教えて貰ったんだ。」
「ふむ。」
「電話が今ほど普及して無かった頃、選挙に関する調査を電話で行ったんだ。」
「電話を持ってる人の意見を知りたかったのね。」
「残念ながらそんな意識を持ってない人達の調査だったら、それを市民全員の意識として報道、電話を持ってない人達の考えとは程遠くて、選挙結果は彼らの予想とは全く違うものになったのさ。」
「それに懲りて電話調査はやめたの?」
「いや、未だに続けてるのだけど、携帯電話が普及した結果、知らない番号からの電話には出ない人もいるだろ。
 そう考えたら電話アンケートの精度はどうなんだってことなんだ。
 自分にも一度そんな電話が掛かって来てね、知らない番号だったから出ずに、後でパソコンで番号を調べたらかなりまともな電話調査、その結果に自分の考えが反映されないのもどうかと思ったよ。」
「ふ~ん。」
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調査-62 [花鈴-07]

 そんな徳沢さんの話をお父さんにしたら標本調査の話をしてくれた。
 それが面白かったので大賢者に。

「…、だから、サンプルの選び方が正しくて、サンプルに選ばれた人達が全員協力的だったら国民全員の意識を数千人に対する調査でかなり正確に導き出せるのよ。」
「統計学なのかな、僕は特に学習してないのだけど。」
「正確さの前提が面白くない?」
「あっ、確かに条件が厳しいかも、実際の調査では有り得なさそうだ。」
「そこから生じる誤差を意識しながら調査結果を判断する必要が有るのだとか。」
「それが会社経営を左右するのかな?」
「売れると思った商品があまり売れなかったり、期待して無かった商品が何かの弾みで人気商品になったりするそうで、結果良ければ全て良しなんだって。」
「はは、それでも調査は必要なのだろ。」
「勿論よ、調査通りの結果になることが多いからね。」
「徳沢さん達の調査研究は、随分違うのだろうな。」
「そうね、内容も規模も、でも、ここでの研究成果からギフテッドと呼ばれてる子に対する体制が良く成れば目出度いわ。」
「だよな、子どもの才能を伸ばす筈の学校でそれが出来ていないのだから。
 花鈴姫に言われてクラスの子達を授業中に見ているのだけど、先生の話を聞いているのか怪しい子は一人や二人ではないと思う、結局学校では学習出来なくて塾に通っていたりするのかも。」
「こんな田舎にも有るのよね。
 私達が一年生の相手をしてる様に少人数でなければ、授業は無駄が多いのよ。」
「だよな、聞く気の無い授業の為に椅子に座っている、他に出来ることは幾らでも有ると思うよ。」
「クラスをレベル別に分け、それぞれに教える時間は十分程度、後は本を読み問題を解くのなら、教師の人数を増やすことなく学習効率が上がると思うわ。」
「そんなことも徳沢さんに話しているのか?」
「まだよ、見返りがまだ微妙だから。」
「見返りはそんなに必要?」
「彼らの調査研究が簡単に成果を上げることは無いと思うけど、私達のことを軽く見られるのも良くないと思うの。
 私の家族はこの方針に賛成なのよ。」
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調査-63 [花鈴-07]

「そうなんだ、ちょっと聞かれるままに答え過ぎてるかな、僕は。」
「見返りはどうなの?」
「見返りと言う訳では無いけど湯山さんと数学の話をするのは楽しいし、今後の研究テーマについて相談に乗って貰ってる。」
「そんなことをしながら大賢者の数学能力を計っているのね。
 どう、数学だけなら大学生になれそう?」
「どうかな、大学入試とは関係ないことにも取り組んでいるから一般の試験では駄目かも。
 それ以前に日本は飛び級制度が無いから、自分の目標としては人に認められる数学の論文を書くことなんだ、出来れば早い内にね。」
「それも湯山さんに相談してるの?」
「うん、その辺りが調査の見返りになるのかな。
 彼のここでの調査期間はもう直ぐ終わるけど、連絡は取り合うことになっているんだ。」
「双方にとってプラスになるのなら問題ないわね。」
「そっか、花鈴姫にはそう言ったことが無いんだ。」
「算数とかの教え方を考えているのは面白いからで、将来教師に成りたい訳ではないのよ。
 徳沢さん達が私の能力をどの程度理解してるのか、まだ分からなくてね。
 お父さんは、たまに徳沢さんと話してその理解度を調べているのだけど。」
「はは、調査に来てる学生を調査してる訳だ。」
「ええ、魅力的な学生がいたら会社にスカウトしたいそうだけど、今の四人はこちらから入社をお願いするレベルでは無いみたい、優秀な大学生でも視野が狭そうだとかで。
 社長が直々に声を掛けるに値する人がやって来る確率は低そうなの。
 国立大学の学生ならいきなりでも英語で自己紹介ぐらい出来ないと、って話してたわ。」
「がっかりしてた?」
「始めからあまり期待してなかったみたい。
 来年ぐらいからここでインターンシップの学生を受け入れることを考えての意識調査をさりげなくやっているだけだから。」
「インターンシップ?」
「大学生の企業体験みたいなこと、こんな田舎の本社で募集して、希望者はいると思う?」
「満員電車での通勤を考えたら悪くないよ、花鈴姫は過疎化の原因として、そこに仕事が無かったからと教えてくれたけど、ここには仕事が有るのだろ。」
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調査-64 [花鈴-07]

 お父さんは会社の人達と色々調査を進めているそうだ。
 その結果次第で、ここの会社関係の施設をどの程度拡張して行くかが決まって行く。

「お父さん、本社は大きくなりそうなの?」
「まだ分からないよ、働き方改革の一環として田舎の本社勤務を選択肢としたが、子どもの学校を始め様々な問題が有るからな。
 それでも宿泊施設は充実させ、研修などで利用して貰うから今よりは賑やかになるだろう。」
「地元の人には喜んで貰えそうね。
 地元で切り出された木材を使って地元の工務店の人が作業するのでしょ。」
「ああ、工務店の人達にとって安定した仕事になる様、少しづつ建てて行くように指示してある。
 名古屋に住んでた頃は何時も近所のどこかで住宅建設してただろ。
 そんな感じに出来れば住人の人達も活気を感じられるだろう。」
「住んでくれる人が増えるのが理想よね。」
「総務が行った社員アンケートでは、田舎暮らしをしてみたいと言う人は少なく無いんだ。
 住人が増えれば国道沿いにスーパーマーケットを建てることになり買い物の不便さは解消される、と言っても町の中心部は今でも然程不便ではないし、スーパーが出来ても町の中心部から離れた所は不便なままだろうな。」
「買い物難民ね、移動販売はどんな感じなのかしら?」
「我々の感覚だと、ここで運営してる会社はお年寄りの為のボランティア、売上は限られるからな。」
「移動販売に支えられている人達の意識はどうなのかな…。
 移動販売先の家庭は自分達が食べる野菜を作ってる所が多いと思うのだけど、野菜って自分達で食べる以上に収穫出来るよね。」
「まあ、うちでも野菜を貰うことは多いな。」
「そんなのを移動販売の人にあげるとかはしてるのかしら?」
「あっ、積極的には考えて無いと思うが有りうるよな、ある程度の量の野菜を貰えたらそれを売ることで会社が少しは潤うかも知れない。
 う~ん、調べてみる価値は有りそうだ、移動販売の善意に対して感謝してる人は少なく無いだろうから。」
「きちんと説明したら販売する物より貰う物が多くなりトラックに積めなくなったりして。」
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調査-65 [花鈴-07]

「そこまでは必要以上に作って無いと思うが、移動販売を正常な形で維持して行くことを考えたら相談してみる価値は有る、社員の給料が安過ぎるんだ。」
「調べたの?」
「ああ、本社を移転するに当たり、この地がより魅力的になることを考えて来たからな。
 移動販売を正常な形で継続させるには従業員の待遇をもう少し良くするべきなのだが、物が沢山売れる訳ではないし、お年寄りから手数料を貰うのもどうかと言うことで難しそうでね。
 手数料をお金で支払う代わりに、自分達が食べる為に作ってる野菜の残りでと言うことなら受け入れて貰い易いかも知れない。」
「お金に困って無いのにお金を使いたく無いお年寄りでも、畑で採れたものは気前良くプレゼントしてるものね。」
「病気になって入院した場合とかを考えているのだろうが、貯め過ぎてる人にはもっとお金を使って欲しいし、年金を直ぐ使ってしまう人にはもう少し計画的にと、調査に当たった人は嘆いてたよ。」
「人それぞれなのね。」
「だな、それで、この機会に移動販売の会社を支えてみたいと思うのだが、花鈴が大株主になって色々提案して行くってどうだ?」
「面白そうでは有るけど…、調査の必要が有るわね。」
「調査担当者からの情報で足りなければ、花鈴が指示を出すのも有りだよ。
 実際、野菜を貰ってもそれをお金にするのに手間が掛かり過ぎては無意味だからな。」
「国道沿いに店を開きたいかな。」
「規模にもよるが資金は幾らぐらい必要だ?」
「そんなの私に分かる訳ないでしょ。
 国道沿いで駐車場は広めに、野菜だけでなく色々売りたいけど、まずは国道を通る人が立ち寄りたくなる様な飲食店が必要かな。」
「花鈴が真面目に取り組んでくれるのなら、人もお金も動かせるがどうする?」
「遊びじゃないのね、私に出来るかしら?」
「今、思い浮かべたことだけでも教えてくれるか?」
「寄付して貰った野菜を売る場をと考えたのだけど、お年寄りが暇つぶしに作った物を観光客向けに売ったりしても良いかな。
 お年寄り向けのデイサービスセンターで作ってたことを思い出したの。
 そう考えると、老人福祉施設とかで野菜を買って貰うとかも有り…。
 と考えてたら、幾つかのサービスがバラバラで運営されてるのを一まとめに出来たら効率的かもと思うのだけど。」
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調査-66 [花鈴-07]

 お父さんは私が思ったことが可能かどうか調べる様に指示を出した。
 この地域の人達とより良好な関係を築いて行けるよう本社内には担当部署が有るのだ。
 担当者は社長直々の指示だからと頑張ってくれたそうで…。

「花鈴、何社かの状況を調べさせて貰った所、買収し持ち株会社の傘下で協力し合って貰う形に出来たら、この地をより住み易く出来そうだとの報告が来たよ。」
「買収ね…、予算は有るの?」
「小さい事業所ばかりだから大した金額にはならない、私がゴーサインを出したら移動販売をしてる会社だけでなく四社ぐらいはすぐに買収出来そうなんだ。」
「リスクは?」
「ここに本社を建てたんだぞ、小さなリスクを考えるより地元の利益だ。」
「と言うことは進めるのね。」
「ああ、株式会社花鈴でどうだ、花鈴は会長、社長は田中さんで。」
「会長?」
「まあ名誉職で有り社の広告塔の役割、田中さんが社長なら色々話し易いだろ。」
「そうね、畑仕事しながら過疎地の話をしてくれたけど、ここに本社を移転させたお父さんの考えに賛同していると話してくれてたわ。
 でも色々な会社をまとめて行くって大変そうだな。」
「そこで花鈴の出番なのさ、各社の利害を調整して行くのは大変な作業になると思うが、会長の花鈴が文句を言わせなければ、田中さんも楽だろ。」
「小学生には文句を言いにくいからって、お父さん、ずるくない?」
「そこは花鈴次第、皆さんに気持ち良く納得して頂ければ良いだけのことさ。」
「人の調整さえ上手く行けば効率がかなり良くなると思うのだけど、そこが一番難しいのよね。」
「だな、ただ田中さんは様々な仕事を一まとめにした輪の中に、新たな移住者も組み込んで行くことが出来れば移住者がこの地に馴染易くなるから、皆の為にも汗をかきたいと話してくれたよ。」
「移住者も当然顧客になるものね、大変そうだな~。」
「花鈴は手伝ってあげないのか?」
「私は絵梨の様な初対面の人にも図々しく話せるだけの度胸は無いのよ。」
「何事も経験だぞ。」
「う~ん、慣れるまでは絵梨に…、あっ忘れてた、小枝子さんなら絶対興味を持つよね。」
「記事にも出来るだろうし間違いないな。」
「ふふ、上手く話しタダで手伝って貰おう、ネタが欲しいと何時も話してみえるから問題無いわ。」
「花鈴は慣れてしまうと図々しくなるんだよな。」
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調査-67 [花鈴-07]

 夏休みを前に新しい会社の話が進んでいるのだが、お父さんは本気で株式会社花鈴とするつもり。

「ホントに株式会社花鈴にするの?」
「ああ、調査してくれた人達も小学生の子どもがいる人達は皆、花鈴姫のことを知ってると話してたから、良く分からない名前にするよりイメージが良くて親しみ易いだろ。
 会長からのメッセージは田中社長や小枝子さんと相談して書いてくれ。」
「小枝子さんは何て?」
「大企業の社長が進める過疎地での新たな取り組みに注目を集めたいと、助力は惜しまないと話して下さった、花鈴から聞いた会社のイメージが面白かったそうでね。」
「ふむ、それで社員は何人なの?」
「調査に当たってくれた部署をそのまま新会社に移行する、と言っても今の所三人だけ、社長と会長を合わせ五人でのスタートだな。」
「管理部門になるのだからそれで充分なのか。
 これから傘下に収めて行く事業所の人達とは給料の格差が随分有るのだろうけど、管理部門の人達が味わえないペースでの昇給を味わって貰える様に頑張らないとね。
 ケーキ屋さんの隣は確保出来そうなの?」
「まだ、花鈴に報告する体制が出来てないのだな、そこは急がせよう。
 土地の確保は進んでるよ、ケーキ屋さんも隣に商業施設が出来れば相乗効果が期待出来ると喜んでたそうだ。
 新会社にとってもケーキ屋さんは良い目印になる。
 移動販売を行ってる会社の店舗は目立たない所に建っていて観光客を対象としていなし老朽化が進んでいるだろ。」
「あそこはレトロ感を売りに観光客も対象とする店にするってどう?」
「そうだな、色々試してみれば良いさ、他に試してみたいことは有るのか?」
「ケーキ屋さんでソフトクリームを販売して貰うのはどう?」
「花鈴が食べたいからか?」
「勿論そうなんだけど、そこに物語をのせてみたいの。」
「物語?」
「名古屋から越して来た花鈴姫はスガキヤのソフトクリームが食べられなくなりとても悲しい思いをしていました、みたいな。
 そこからケーキ屋さんで販売して貰うまでの涙ぐましいお話をでっち上げて、ただのソフトクリームを特別な物にするの。」
「なるほど、そんな付加価値なら有りかもな。
 じゃあ、今からケーキを買いに行って相談してみようか。」
「うん。」
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調査-68 [花鈴-07]

 ケーキ屋の店主にはお父さんから話して貰ったが、彼には小枝子さんと絵梨に頼んで根回しはして有り、そこに物語をのせたソフトクリームと言う提案をしたことで、直ぐにでも始めると約束してくれた。

「纐纈社長、隣に建つ店との相乗効果を期待してるのですがどんな感じになるのですか?」
「娘もこの店が有るからここにと指定しましてね。
 互いに、ついでに買って行こうと言う思える展開を何処まで広げられるかが勝負なのだとか。」
「成程、花鈴姫、新しく建てる店の商品にも物語が有るのですか?」
「え、ええ、作り話だけでなく猪や鹿肉の背景とかも知って欲しいと思っています。」
「お隣は肉屋さんに?」
「いえ、この地に関わる様々な物を販売して行きたいと考えています。
 当初は野菜がメインになりますが、山で拾ってきた物でも綺麗にすれば売れるみたいで、道の駅の様に国道を通る人達が気軽に立ち寄りたくなる店にしたいです。
 この辺りにドライブの途中で気軽に立ち寄れる店が有れば喜んで貰えると思うのです。」
「そうだね、トイレを貸して欲しいと言うお客さんも来るぐらいだから需要は有る、問題は採算面かな。」
「その辺りは情報発信を含め色々試してみたいと思っています。
 国道を走る車はそれなりに有るのですから、後は商品とサービス。
 飲食スペースで美味しいものを提供出来る体制が整えば後はその情報を広げられるかどうかです。」
「アイディアは有るのですか?」
「ここを舞台としたお話を作りそこにお店のメニューとかを登場させます。
 勿論ソフトクリームも。
 お客さんが店員に対して、お話で知った秘密の言葉を囁くと、メニュー表に載ってないお菓子が食べられるとか楽しいと思いません?」
「お話を読まないとってことですね?」
「お話はファンタジー、でもリアルとお店でリンクしているのです。
 まずはお話を作り、それを読んで貰う体制を整えなくてはならないのですが、私に使える物を全部使えば何とかなるのではと考えています。」
「楽しそうだね、うちもそのお話に入れてくれるのかな?」
「ええ、日持ちのするクッキーで試してみませんか?
 ラッキーアイテムっぽい形にして普通に美味しい…。」
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調査-69 [花鈴-07]

 ケーキ屋さんの店主に思い付きを色々話したら、是非協力したいと言って貰えた。
 私が考えてたことはケーキ屋さんの協力が有ると無いとでは大違いなので嬉しい。

「花鈴、ケーキ屋さんと話してみてどうだった?」
「やっぱし直接話してみないと駄目だなって思った。
 どんな店主なのか小枝子さんから聞いてはいたのだけど、聞いてたのとはイメージが違ったからね。
 思ってた以上に協力してくれそうで。」
「それは店主も同じかもな、伝え聞いた花鈴のイメージと実際に会って話す花鈴とでは違うだろう。」
「う~ん、そう考えると…、調査して貰った内容も慎重に受け止めないと行けないのかな?」
「だな、対面調査は客観的に行われなくてはならないが、調査員の主観が入りかねない。
 調査結果の信頼度を上げるには調査員を知る必要も有るのかもな。」
「自分で全部を調査することは出来ないものね。
 夏休みになったら、あちこちの部落を見に行くつもりだけど、社員との交流を深めることも大切みたい、社員さん達とは何時会えるのかしら?」
「そうだな、近い内に家に招待しよう、田中社長と相談しておくよ。」
「今は忙しいのでは?」
「忙しかったとしても、会長で有る花鈴の考えを理解していなかったら無駄な仕事をしてるかも知れないぞ、会長に喜んで貰おうと無意味な事をしていないとは言い切れないだろ。」
「心当たりが有るの?」
「花鈴のことを何も知らない人達が、新会社を設立します、会長は小学生ですと言われたのだから、今頃小学五年生の女の子が好きそうなアニメのことを調べてるかもな。」
「そっか、ねえ、お父さん、社員の人達には多少偉そうにしてた方が喜んで貰えるのかしら?」
「人それぞれだろう。」
「私の第一印象は会社が良いスタートを切る為に大切なことだと思うの。
 でも、こんな経験は全くして来なかったことだから分からなくて、しかも調べようが無いでしょ。」
「そうだな…、全部正直に話して彼らの意見を聞けば良いのでは無いかな。
 分からないのはお互い様なのだから、変に策を巡らすより簡単で確実だと思うぞ。
 正直な人は信頼される、小学五年生が恰好を付けようなんて考えていてはダメだぞ。
 分からないことを分かった振りしてる人より、分からないことは分かってないと正直に話せる人の方が何倍も信頼出来るんだ。」
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調査-70 [花鈴-07]

 私が初めて会う大人を苦手にしてるのは、その人がどんな考え方をしてるのか分からないからだ。
 私にとって敵か味方か、その辺りのことが分かれば距離感が掴める。
 お父さんが我が家に招いた我が社の社員達は、田中社長から私のことを聞いていたそうで、子ども扱いをしないが配慮の有る話し方をしてくれ、直ぐに味方なのだと理解出来た。
 事前にここまでの流れとこれからの計画を送って貰っていたのだが、普通の小学生が使わない漢字を普通に使っていてくれていたのも嬉しい。

「花鈴姫、夏休みは大学生との交流も有るそうで忙しくなりそうですが、夏休みは宿題も有るのですよね。」
「学校からの宿題は直ぐに終わりますので、おまけとして中学の問題集を提出用に五冊終わらせて有りますが、自由研究は会社のことをまとめますので協力をお願いしたいです。
 私達の会社が何を目的としてるのか、大人達に伝えて行く必要が有りますので目的は広報、自由研究とするのはそのついでです。」
「物語も書かれるのですよね?」
「そっちは友達に協力して貰うから大丈夫、ただ対象を大人とするか子どもとするかで色々変わりますので、皆さんの考えを教えて欲しいです。」
「私は資料を読ませて頂いて、大人を対象とした優しい文体のお話をイメージしました。
 ケーキを買うのは大人ですから、大人に興味を持って貰う必要が有るかと。」
「確かにそうですね、子どもを巻き込んだ方が面白くなるとも考えていたのですが、そこは大人に任せましょう、ケーキ屋さんには大人にも子どもにも喜んで貰える物をとリクエストして有ります。」
「ケーキ屋さんは我々が立ち上げる店舗の一部みたいな扱いと考えて宜しいのでしょうか?」
「相乗効果を最大限に引き出して行きたいです、これから建てて行く建物もケーキ屋さんに合わせて行けば間違いないでしょう。
 お客さんには同じ経営者の店だと思って貰えるぐらいに協力して行けば、他のお店も私達の輪に参加したくなるかも知れません。」
「それは有りますね、私が調査した店は本社移転の効果に期待してる人ばかりでしたので。」
「多くの店に、と言っても都会と違い数は限られますが、うちの傘下とならなくても私達の輪には加わって欲しいです。
 それとは違う展開なのですが、八月からは学生が遊びに来る事になっています。
 研究室の調査関連では有るのですが、彼らも私達の輪に入って貰おうと考えています。
 まだ、具体的なことは何も決まっていないのですが。」
「どの様なことをイメージされているのですか?」
「彼らの為に合宿所を用意しますので、そこをコンスタントに使って貰えれば微々たるもので有ったとしても経済効果が、更に情報発信をして貰えればと考えています。
 私の部落訪問に同行して貰って彼らの力量を探りたいとも思っています。」
「彼らにとって花鈴姫は調査対象なのですよね、その彼らは姫の調査対象なのですか?」
「手伝ってくれる人を見つけられたらラッキーだと思いません?」
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