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架空サークル-81 [俺達の挑戦-02]

話は少しだけ遡る。
十一月も終わる頃。
安藤隆二と早瀬佐紀は二人の後輩と共に小さな工場に来ていた。
この工場、従業員は十名だが特殊な部品を作っていることもあって結構安定している。
大量に売れる訳ではないが、その部品を必要とする会社が存在する訳だ。
社長の中田圭一は隆二の会社体験実習を快く受け入れた。
娘がサークルに参加していたことも有るが、前向きな考えを持つ人物だったからだ。

「社長、今日は貴重な時間を私達のために有難う御座います。」
「はは、隆二思い上がるなよ、お前たちの為じゃない、明日の日本の為だ。」
「は、はい。」
「お茶、どうぞ。」
「あっ、理子さん有難う御座います。」
「娘も同席したいと言ってるけど良いか?」
「もちろんです。」

しばらく中田から会社の説明、問題点などの説明を受ける。
佐紀が興味を持ったのは、若い社員のことだ。

「従業員十名で四十代以上の方が九名、一人だけ二十五歳ということで特に問題は無いのですか?」
「彼は真面目で大人しい性格だから上の連中もかわいがってはいる…、ただ大人しいだけに女の子との出会いがね、大きい会社なら社内恋愛とかも有るだろうけど。」
「私は当初、大き目の企業を想定して男女比のアンバランスを業務上、なんの接点もない会社間の交流によって、怪しげな出会い系じゃなく健全な婚活の一環として出来ないかと考えていたのです。
でも、中小企業の方々にも参加して頂けるシステムが出来ないかって思い始めています。」
「うん、ただねうちみたいな小さいとこの従業員は低く見られてしまうんだよ。
大手イコール安定って思わないか?」
「やはり大手でなくても安定してる会社も有るってことをアピールしていきたいですね、そして横の繋がりを持つことで、早瀬さん、社長とは色々企んでいるんだよ。
ところで社長、今日来て下さる方に変更は有りませんか?」
「ああ、新聞屋の店主と銀行屋、ただ銀行屋から支店長も同行という連絡が入った。
俺たちの挑戦を読んで、本人以上に乗り気になってるそうだ。」
「えっ、それって、社長めちゃ心強いじゃないですか。」
「ふ~ん甘いな、隆二次第では逆に動くかもしれんぞ。」
「うっ、プレッシャーかけないで下さいよ~。」
「隆二くんなら大丈夫よ。」
「うん、大丈夫。」
「早瀬さんも理子も…、隆二、お前なかなかやるな。」
「え~、からかわないで下さいよ。」
「はは、ただし早瀬さんも理子も支店長には気をつけろよ、手が早いことで有名だからな。」
「は、はい…。」
「でもま、理子はともかく早瀬さん綺麗だから、今日はスムーズに行くと思うよ。」
「え~、父さん…。」
「あのタイプは美人に弱いからな。」
「う~ん、微妙だなぁ~。」
「まあ責任ある立場にある訳だし、今日も早瀬さんが来ることを知らなくても足を運ぶ気になったのだから、少しは見所のある奴かもしれんな。」
「はは、銀行の支店長も大変そうだな、今日は、色々なお話しを聞かせて頂けそうだ。
他にも税理士の先生とか弁当屋さんとか色々な方と話しの場を設けるつもりだけど、まずはね。」
「安藤先輩、色々な職種の方が興味を持って下さっているということですか。」
「まあ、皆さん商売がらみだからね。」
「それじゃあ、私達の活動とは…。」
「今日君達にも来て貰ったのは、きちんと現実と向き合って欲しかったからなんだよ。
俺たちの活動なんて、ほんとに綺麗ごとの世界から始まってる、でも本気で成功させようと思ったら綺麗ごとだけじゃ済まない、佐々木さんもはっきり書いてたことだけどね。」
「あっ、生みの苦しみって…。」
「学生の組織を迅速に構築することによって人の目を引き付けることが出来る、でも社会人の組織は、じっくり形作っていかないと足元をすくわれる。」
「あっ、斉藤先輩からも聞きました。」
「今から始まる活動は、とてつもない利害関係との戦いになるんだ、我々の方向性を理解して下さる方々に利益をもたらせば、そうでない方々には不利益になる可能性もある、すべての方に我々の活動への参加協力を求めることは難しいんだ。
でも今日は、俺たちの第一歩だからね。」
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架空サークル-82 [俺達の挑戦-02]

約束の時間に合わせ新聞店の店主、銀行の支店長達が社長宅へ。
まずは紹介となる。
早瀬佐紀の美貌に対する賛辞はいささか上品さに欠くものだったが、それを笑顔でかわす所が彼女の一つの魅力なのかもしれない。
場が落ち着いた所で中田圭一が話し始める。

「お前ら、ちゃんと俺たちの挑戦読んだのか?」
「読んだよ、ちょっと夢と現実の狭間で泣きそうになったけどな。」
「はは、武は苦労してきたからな。」
武とは新聞店の店主のことだ。
「今も色々あるさ…。」
「支店長は?」
「読んでいたから、じかに学生の声を聞きたくなってだな、安藤くんの企画書も読まさせて頂いたよ。
どう? 勝算は? 安藤君。」
「そうですね、企画書を書き始めた頃は、早瀬さんに怒られる程びびってました。
でも企画書を提出したら、すぐ佐々木代表から連絡が入りまして、一緒にメシを食いに行きました。
そこで自分が代表の考えを実行に移すつもりだと伝えたら…、自分でも簡単な事じゃない、うまく行くにしても時間のかかる事だと思っているって…、う~ん、これはそんなに秘密でもないことみたいだから話してもいいのかな。」
「おいおい、もったいぶるなよ。」
「食事が終わる頃から電話をかけまくるんですよ、彼。」
「えっ? 誰に?」
「あそこは専務だな、とかここは社長が一番とかとか言いながら、大企業の重役とかにですよ。
で、その後隆二の知り合いの社長も紹介してくれよって。」
「えっ? もしかして、この狸親父を紹介したのか?」
「いや~、他にも狸親父はいたのですけどね。」
「はは、圭一はベストオブ狸親父か。」
「はい、中田社長は自分たちの夢のような話しにきちんと向き合って下さいましたから。」
「圭一、お前佐々木代表と会ったのか?」
「ああ、会ったよ。」
「どうだった?」
「正直、始めはごく普通の青年だと思った、でもな話し始めたら圧倒されたよ。
間違いなくあの本の著者だし、大企業の重役連中が一目置いてるって噂が嘘じゃないって実感した。」
「でもどうして潰れかけの町工場なんだ。」
「武、小さな町工場だが潰れかけてはいないぞ、なあ支店長。」
「至って健全過ぎて、中田さん設備投資とかして下さいよ、融資しますから。」
「はは、まあ考えて置くよ。
話しを戻すとだな、こちらの安藤隆二が立ち上げたプロジェクトは佐々木代表としても、大きな取り組みの第一歩ということなんだ。」
「えっ、大きな一歩が、この潰れかけた町工場の狸親父で良いのか、安藤君。」
「はは、ただし町工場だけでなく、この地域のことも考えています。」
「この辺りは高齢化が進んでいるし、昔は賑やかだった商店街もずいぶん寂れてしまってだな、そんなに魅力はないと思うが…。」
「さすがに支店長らしい視点ですね、でもここで暮らしている方もいらっしゃいますからね、武さんの新聞店では一人暮らしの老人の方に気を配ってらっしゃると、中田社長から伺っていますが。」
「新聞の配達件数は減って来てるけど、配達や集金の人達には気になるお宅が有ったら報告してもらう様にお願いしてるよ、配達先でなくてもね。
それでお年寄りが一命を取り留めたことも有れば、残念ながら間に合わなかったことも有る。」
「武はこう見えて真面目なんだよ。」
「こう見えては余分だ、親父からは単に新聞を配達すれば良いんじゃないって言われ続けてきたからな、でも限界も有る、うちの配達エリアには障害を持った方も見えるし、経済的に困ってる方も。
それぞれ行政の支援も有るのだろうけど…、色々問題が有る。
子ども達の通学路でも安全上気になってる所が有るし…。
はは、この地区の問題点を上げ始めたらきりがないな。」
「日本中どこだって、何かしらの問題を抱えています、世界中とかに置き換えても同じことです。
ただ、その問題点が放置されたままなのか、改善を模索してるか、その模索もその思いの程度によって違って来ると思いませんか、武さん。
自分達は、ここに力を集中させることによって社会環境、生活環境の改善を目論んでいます。
今は綺麗ごとでしか語れませんが…、例え歩みはのろくても、同じ方向を見て下さる方と繋がれば、ここから広がって行くと考えているのです。」
「う~ん…。」
「小さな活動だったら埋もれてしまいそうだけど、学生達の組織があって、大企業もバックについて…、あっ、マスコミも押さえて有るから…。」
「支店長、全くの夢物語でもないでしょ。」
「だな…、でもうちの出番は微妙だね。」
「そんなことないですよ。」
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架空サークル-83 [俺達の挑戦-02]

安藤隆二が話を続ける。

「支店長はこのエリアで倒産しかかってる会社とか御存じですよね?」
「まあな。」
「その中で倒産させずにがんばって欲しい所も有れば、潰れても仕方ない所とか有りませんか?」
「そうだな、頑張って来たのに運が無くてという所は応援したいとは思う、逆に放漫経営で大して利益も出てないのに見栄を張る様な社長の会社はね。」
「応援したい会社へは追加融資とか即決ですか?」
「はは、そんなことしたら私の首は軽くすっ飛ぶよ。」
「では、その会社のバックに私達の組織が付いたらどうです?」
「はぁ~、そう来たか、当然再生の案とか提示して来るんだろうな…。」
「もちろんです、その前にその会社の状況を調査して、小さくても再生可能な会社かどうかの判断もしますし。」
「そうなってくると…、色々考えることになるな…。」
「隆二、会社設立の話しとかはもうOKなのか?」
「遠藤さんの会社設立までなら大丈夫です。」
「おいおい意味深だな。」
「すいません、色々大人の事情が有りまして。」
「はは、それは学生の発言じゃないぞ。」
「うちは学生中心に立ち上がる会社の株主になる、社員も賛成してくれたからな。」
「学生達は会社まで立ち上げるのか?」
「テレビ番組の制作がメインのな、今まででも情報番組とかで流れてる映像は学生が撮影してたから、もう一歩踏み込んで、という感じだよ。」
「あっ、見た、学生達の撮影風景を局のカメラマンが撮影して紹介してた、でも圭一、利益は出るのか?」
「まあスポンサーがしっかりついているからな、滝沢桜子や橋本裕子といった連中のバックアップも業務内容に含まれるし。」
「そうか、あの子達なら私も個人的に融資したいぐらいだ。」
「支店長、個人的は無しですよ、今は、ただお宅の銀行も協力を検討中らしいからね。
う~ん、隆二が重要なポストについて、支店長がごまをすってる絵が浮かぶなぁ~。」
「中田社長…。」
「佐々木代表自身が、隆二の存在は大きいって色々語ってくれたよ。」
「安藤さん忘れてました、私の名刺です、今後とも宜しくお願いします。」
「はは、圭一、こんなに早くごまをすってる絵が見れるとは思わなかったぞ。」
「よしてくださいよ、まだ動き始めたばかりで何の実績もないのですから。」
「でも隆二さんの企画書に心を動かされている学生は少なくないですよ。
父さん私も手伝うからね。」
「ああ。」
「理子ちゃんが心を動かされたのは隆二のどんなとこなんだい。」
「武さん、それは…。」
「顔が赤いぞ熱があるのか?」
「も~、みなさんお茶で良いですか?」
返事も聞かず、立ち上がる理子。
「圭一、理子ちゃん良い子に育って良かったな。」
「有難う、武。」
「そうか…、真面目な子が真面目な子を引き寄せる、類は友を呼ぶってことなんだな…、うちの子は…。」
「支店長も悩みが有りそうだね、隆二に相談してみたらどうだ?」
「えっ? 悩み事相談もやってるの?」
「お聞きする事は出来ます、解決策を模索することも、但し自分が直接という訳ではなくて我々のメンバーがとなります。
人の抱えている問題をいろいろな視点から考えて行くということも、自分達の取り組みの一つと考えていますから。
もちろん、少しずつですけど。」
「君の考えてる範囲って広すぎじゃないのか?」
「ですよね、考えていたら広がり過ぎてしまって、だからスタートは小さく始めたかったのです。
活動がどう広がって行くかは参加者次第という事にして、肩の力を抜く様に心掛けています。」
「ふむ、至って冷静か、ならば俺は協力するよ安藤隆二、この地域の町内会とかサークルとかに知り合いも多いからな。」
「有難う御座います、心強いです。」

その後も色々な話しが続いたが、予定の時間で終了となった。
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架空サークル-84 [俺達の挑戦-02]

話し合いを終えた後、学生達はファミレスに来ていた。

中田理子。
「今日はうちの父さんのおごりだからね。」
「何か申し訳ないな。」
「気にしないで下さい、隆二さんが来て下さること父さん喜んでるんです、うちは三姉妹で女性ばかりですし、妹は反抗期だから。」
「そっか、うちはそういう意味ではバランスが良いのかな…。」
「隆二くん今度は家庭の問題考えてるの?」
「ああ、そう言えば今まであまり考えたことなかったなあ、って思ってさ。」
「それより今日の反省とか、後輩もいるから。」
「そうだね、あっ、注文を済ませようよ。」

オーダーを済ませた後。

「まずは今日の感想とか聞いとこうかな。」
「先輩、私は自分の勉強不足を実感させられました。
代表の本も、安藤先輩の企画書ももう一度読み返してみます。
今日のお話しを聞かせて頂いた後だから、今までとは違った読み方が出来ると思っています。」
「自分もです、分かったつもりでいたけど本当の所が掴み切れていなかったです。
でも、自分は先輩の第一歩に立ち会わせて頂けたんだって…、大きな理想に向けての小さな第一歩ですよね、これから自分ももっと勉強して先輩方のお手伝いをさせて頂けたらと思っています。
よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくな。」
「私は…、いえ、私も何も解ってなかったって気になったわ、隆二くんごめんね。
佐々木代表の考えに酔いしれていたのかな、でも現実ってのを…、一人の寝たきりの方が見えたらその方を介護する人がいる、その介護は決して楽な事ではない、実際自分達でとなった時なんて想像したこともなかった。
武さんはご自身の家庭が大変なのに地域の事にも目を向けておられて、なんか恥ずかしくなってしまったわ。」
「隆二さんは武さんのお話しにきちんと受け応えてたけど経験が有ったのですか?」
「自分の考えが広がり始めた頃、実際の現場を幾つか見学させて頂いたよ、ちょっと別の思惑もあったんだけど、色々な現実を目の当たりにして…、このままで良いのかって思った。
改善案も考え始めたけど、小さな一つの施設ぐらいならなんとかなっても、日本中に幾つの施設が有るんだろうって考え始めたら絶望の淵に立たされたよ。」
「それでも、このプロジェクトを立ち上げようと思ったのは?」
「同時期に会社体験実習が始まったんだ。
中田社長もそうだけど、小さい会社でも経営しておられる方々はそれぞれ信念があって、魅力的な方ばかりだった。
で、思ったんだ小さな一つの施設の改善すら実現できてない内から、何考えていたんだろう俺、ってさ。」
「それでスタートの規模は小さくてもって事ですか。」
「そんなとこだよ、ただ注目されてるからね、俺たちは、小さくても一つの実績を上げることが出来たら広がって行く可能性は有ると思ってるし、そんな活動をして行きたいと思ってる。」
「隆二さん、私でもお役に立てること有りますか?」
「もちろんさ、この地で成功出来なかったら、俺達の勢いは弱まると思ってるからね。
逆に何かしらの成果を得られたら、次へ繋がって行くと思っている。
だから具体的なお願いもさせて貰う事になる…、でも無理には引き受けないでね。」
「はい。」
「私も今まで考えてきたことと関連させながら、隆二くんの手伝いしていきたいな。」
「先輩今後の具体的な活動はどうなっているんですか?」
「商店街の方との交渉、旧商店街と言っても良いくらいだけど、空き店舗を利用しての実習を目論んでいるんだ、公園の店舗では狭すぎて、実習希望に応え切れてなかったし、ここだとまた違った挑戦になるからね。 
それと…、調査活動を予定している、はは、今までに例を見ないレベルの調査を調査チームに叩きつけてやったよ。」
「えっ?」
「エリア内全戸アンケートだけじゃない、電柱一本の場所だって適切な場所なのかってレベルでの調査、その結果から動き始める体制も整いつつ有る。」
「それじゃあ、武さんが話してみえた、子ども達の通学路で安全上気になってる所も。」
「最優先だね。」
「どうしてそこまでこの地域にこだわるのですか?」
「いや、別にここじゃなくても良かったけど、条件とタイミングが合ったということかな。
同じ事を広範囲でやっても、やってる事がぼやけてしまう可能性も有るんだ、一点に集中することによって相乗効果も出てくるからね。」
「私の生まれ育った町が、私達の活動のシンボルになるかもしれないのか…、様子を見ながら友達にも声を掛けてみます、そうだ今度の同窓会の時にでも話してみようかな。」
「同窓会か…、そうだ有る程度の成果が出せそうになったら、同窓会プロジェクトってどうかな、ここの小中学校出身者達に同窓会を企画してもらって、もう一度自分たちの生まれ育った町を見直して貰うって感じで。」
「成果が出始めてからの方が良いのかしら。」
「うん、今じゃないと思う、形が出来始めてからの方がインパクトが有ると思うんだ。」
「じゃあ武さんにも伝えておきますね、タイミングは武さんが決めてくれると思いますから。」
「そうか…、そうだね、時期なんて俺がとやかく言う事じゃないね。」
「でも、武さんばかりに色々お願いするのも…。」
「大丈夫ですよ、武さんが動いたら協力して下さる方は少なくないんです。」
「あっ、だから中田社長は真っ先に。」
「ええ、人を動かすのは武さん、お金を動かすのは銀行屋だからって。」
「そうか、今日の人選は社長にお願いしたけど、そういう事だったのか…。」
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架空サークル-85 [俺達の挑戦-02]

十二月の中頃、大きな発表があった、遠藤が社長となる会社関連だ。
それを受けて安藤隆二と早瀬佐紀は中田の家を訪れた。

「ようやく理子と早瀬さんにも話せるな。」
「ですよね、ごめん、二人に隠し事をしたかった訳じゃないからね。」
「でも発表された内容は、遠藤社長の会社設立に向けての株主関係とかで…、そんなに秘密にしなきゃいけなかったことなのですか?」
「ですよね、なんかもっとすごい事が発表されるかと思っていたけど…。」
「まあ表向きは、そんなとこなんだけどね。」
「ポイントは持ち株会社の部分なんだよ。」
「近い将来持ち株会社へ移行の予定って有りますけど…。」
「実際の所、だからどうしたってレベルなんだけどね、今は。」
「今は、ですか?」
「実に微妙な要素を含んでいるから、軽はずみな事は言えなかったんだ。」
「何を勿体ぶっているんですか、私達にも分かる様に話して下さいよ~。」
「はは、まあ解禁にはなったけど…、隆二から話せよ。」
「社長、ここで逃げますか?」
「隆二の方が冷静だろ。」
「はあ~、えっとね、実際は大したことじゃないかもしれないんだ、ただ途中で変な横やりが入る可能性が否定出来なくて…。」
「二人ともいい加減にして下さい。」
「はは、隆二怒られちまったな。」
「えっとね、中田工業が一つ目の旗艦会社になるかもしれないんだ。」
「えっ?」
「父さん、ちゃんと話してよ。」
「理子、持ち株会社って分かるか?」
「う~ん、なんとなく。」
「遠藤社長の設立する会社と同じ位置に中田工業が並ぶかもしれない。」
「え、え、どういうことなのか…、良いことなのかそうでないのかも全く分からないけど…。」
「今回設立される会社の株主は近い将来新設される持ち株会社の株主になるんだ。
この持ち株会社の立ち位置は、これから広がって行くであろう俺達の組織の全面支援とも言える。」
「じゃあ父さんの会社は遠藤さんの会社の株主から、一つ上の会社の株主になるってこと?」
「まあ、そんな所だ。」
「ただね、中田工業の株式もその持ち株会社へ移行する予定なんだよ、今の所は全部じゃないけどね。」
「じゃあ、子会社になるってこと?」
「その辺りは今後の展開次第になるな。」
「旗艦会社ってどういうこと?」
「最初、持ち株会社の傘下は遠藤社長の会社と中田工業で始まるけど、その先の展開は伸び悩んでいる会社、先々は潰れかけの会社を意識してるんだ。
まずは、小さい町工場が参加しますよって、まあシンボル的なものだな。」
「全然解らない。」
「企画書の実践なんだけどね、一つの共同体を形成するって。」
「それって、あの大手スーパーとかが客を囲い込んでってるって話し? エンクロージャーとか例にしてた。」
「ああそうだよ、ただ諸事情があって自分の企画書はかなりの部分を隠した状態でしか公表してなくてね。」
「えっ? どうしてですか?」
「始めから全部公開してしまうと感の良い人が変に動く可能性も否定できなくてね、完全版は極秘扱いで限られた関係者にしか配られていないんだ。
まだ完全に公開という予定もないけど、とりあえず今回の発表で箝口令は解かれたから。」
「隆二くんの書いた企画書が極秘扱いだったのか…。」
「隆二の企画書が大企業の重役連中の心を動かした、そして実際に動くことになったから…、君達もこれから極秘情報に触れる可能性が有るから気を付けて欲しい、色々な利害関係が生じてくるからね。」
「はい。」
「さ、お嬢様方にもう少し整理して話してあげてくれよ。」
「はい…。」
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架空サークル-86 [俺達の挑戦-02]

安藤隆二が語り始める。

「まずは…、俺達の組織がせっかく健全かつ、将来性の有る組織を形成しつつ有るのに、その可能性を生かさなかったら勿体ないと感じたんだ。
色々考えてた中で浮かんだのが中小企業の安定化。
景気に左右され易いし、業績が悪化したら倒産だろ、大きいとこはなんだかんだと公的資金が投入されたりして何とかなっても中小はね。
こんな事を考えてる時に思ったのは小さくても集まれば大きくなるという事だったんだ。
全く業務内容が違っていてもね。

例えば、鉄工所と飲食店、全く業種が違うけど鉄工所の社員が飲食店へ行くことは普通に有る。
その時、気に入らなければ次からは別の店となるだろうね。
でも、鉄工所と飲食店にちょっと別の繋がりが有って、環境が整っていたら、鉄工所の社員は飲食店に対して改善を提案出来るかもしれない。
飲食店サイドに聞く耳が有れば、そこから売り上げを伸ばすヒントを得られないだろうか。
店のレベルが上がれば、鉄工所の社員だって常連になるかもしれない。

工場同士なら人的交流もし易い、研修という名目で他の工場を見ることは、双方にとってプラスになると思う、自分たちが普段やってる作業が必ずしも最善のものとは限らないでしょ。
場合によっては業務提携も視野に入る。
ある程度のグループが形成されたら色々な助け合いも可能になってくる。
資金繰りが悪化した企業の支援だって可能になるぐらいのレベルになったら面白いと思う。

ただ、こうした中小企業のグループ化は後ろ盾がないと難しい、小規模で後ろ盾がないと共倒れの危険も有るからね。
でも、俺達学生中心の組織と大企業がバックに付いたらどうだろう。
大企業にとっても社会が安定してしていた方が内需拡大に繋がるし、従業員の子ども達が中小企業に就職することも視野に入れたら決してマイナスになることではないんだ。

そしてこの枠組みに福祉関係も取り込む。
日本はサービスに対しての評価が低いと思うんだ。
老人向けの施設で働いている人達だって仕事のきつさの割に給与水準が低かったりするからね。

過疎地でがんばってる人達とも繋がって行きたい。
グループへの参加はそれぞれの状況によって様々な形になるだろうけど、同じグループに所属する人達となら全く関係の無い人とは違った交流が出来ると思うんだ。
もちろん真面目に取り組んでいる人達に限るけどね。

将来的には大規模なグループの形成を目指す。
方向性としては暮らし易い町作り、暮らし易い国作り、皆で繋がって助け合える環境作りたい。

いきなりは当然無理だから、まずは伸び悩んでいる企業と繋がり始める、始めから倒産しかけてる所というのは荷が重いし、経営上問題のないとこは繋がる必要性を感じて貰いにくいだろうからね。
経営基盤の弱い中小を持ち株会社の元に集めて、効率アップとか模索しつつ、中小企業でも集まれば…、大きく集まれば大企業にもなるだろ。
そして人も、この町の人にまず方向性を理解して頂き、町内の活動に学生が協力したり、協力して頂いたりということから始めて行く。
とにかく住み易い世の中を模索して行くということなんだ。」

しばしの沈黙の後、口を開いたのは佐紀だ。

「もっともっと先のことだと思ってました…、企画書を読んでいても実感が伴わなかったから。
一つ一つの企業の力は小さくても、結集して、さらにバックがしっかりしていたら、安定した職場が増えるということですよね。」
「ああ、そうなんだけど軽く打診した段階でも参加希望が幾つかあって、でも体制が整う前から多くの企業と繋がるのは危険だから、持ち株会社の運営体制構築に時間を掛けてるんだ。
まあ、持ち株会社の事を発表出来たのはそれなりに進んでいるからだけどね。」

「でも父さんは、会社の独自性とか、小さくても…、人に自慢できる会社だって言ってたけど…。
中田工業が大きな組織の一部になってしまっても良いの。」
「はは、もっと自慢したくなったってことかな、うちの従業員の力を世の中に見せていきたいし、今日うちの連中に話したら皆賛成してくれた。
遠藤社長の会社とグループ企業として繋がる訳だし、俺たちの挑戦を読んだ連中は、俺達も挑戦に加わることが出来るのかって喜んでいたよ。
うちの社員は真面目だからね、ほんとに人に恵まれたからここまでやってこれたと思う。」
「各企業とグループの関係はバランスを取りながら、画一的な物にしない予定なんだ、それぞれの企業の事情に配慮しつつベストな関係を模索して行く所から始まるからね。
ただ、中田工業はこれから目立つ存在になると思うよ。」
「隆二くんの企画書全部読みたいな。」
「私も。」
「うん、良いけど、まだ人には話さないでいて欲しいかな、持ち株会社が完全に立ち上がるまでは…、口は堅い?」
「はい、理子さんとしか語り合いません。」
「じゃあコピーをあげるよ。」
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架空サークル-87 [俺達の挑戦-02]

一月は大人達が動いた。
学生達の期末試験に配慮しての事でもあるが、持ち株会社の設立、そして傘下に入る企業との準備作業等には協力会社からの出向者があたることとなった。
某企業からの出向者二名、居酒屋にて。

「ほんとは学生達に任せたかったけどな、こちらで指導しながらでも。」
「いや、基礎作りはきちんとしとかないと、もう学生だけの組織じゃないんだし、今後利害関係が色々出て来るだろうから、俺たちが守ってやらんとうまく行かないぞ、時間的な問題も有るし。」
「そうだな、それにしても他の協力会社もがんばってくれてるよな。」
「ああ、金も人も出す、上の連中の熱意が感じられるよ、佐々木代表、安藤プロジェクトリーダーの力なんだろうけど、もちろんサポート企業としてのメリットも出て来るとは思うが。」
「優秀な学生と知り合えたり、大学との良好な関係が築けたり、他の企業のノウハウに接することが出来たり、中小とでも思わぬ業務提携が出来るかもしれないし、社宅の共同管理とかの案も出てる、遊休地の有効利用の話しもあったな。」
「うまく行けば軽く元は取れるということか。」
「こういったことが学生二人の口からどんどん出てきたそうだからな…、佐々木代表が会社体験実習をした所では、彼のアドバイスから新規事業が始まるらしい、中田工業も安藤リーダーとならって感じで今回の事を引き受けたらしいぞ。」
「小さいけど安定してるから参加する必要もなかったろうけど、あの位置に健全な会社が有ることの意味は大きいよな。」
「伸び悩んでいる企業同士くっつけるのも始めはハードルが高いし、旗艦会社が大きすぎると吸収合併とか心配する社長もいるだろうし、合併も視野には入れてるが先の話しでないと、企業が参加しににくくなるなるからな。」
「でも中田工業としてのメリットって有るのか?」
「直接的には社員募集や次期社長の問題が有るらしい、定年退職する社員の補充も小企業だと難しいだろうな、中田社長のお子さんは女の子三人で娘婿に継がせる手も有るが、娘達に変な負担を掛けたくないそうだ。」
「そうか、でも一つのシンボルとなる訳で、ずいぶん大変なことになりそうだけどな。」
「その辺りは学生達の支援が有るからってさ、学生達も期末試験よりこのプロジェクトに力を注ぎたいって話してた。」
「でも学業を疎かにする者は組織の中核では動けないってことだったよな。」
「ああ実際真面目だ、プロジェクトの組織作り関係で何人かの学生と話す機会が有ったけど、皆、素直で邪心がないんだよ。」
「学生達を駆り立てているのは何だろうな。」
「漠然と就職してって考えていた子達に、違った価値観を芽生えさせたんだと思う、佐々木代表がね。
学生であろうと社会の中の一員、大人達の築き上げてきたものを単純に否定も肯定もせず、見直して行くのが自分達の役割だとか…、あの本の影響は大きいと思うよ。」
「う~ん、もう一度読み直してみるかな。」
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架空サークル-88 [俺達の挑戦-02]

期末試験を終えた学生の内、プロジェクトリーダーなどの経験者は持ち株会社設立への作業に関わり始めた。
動植物園での活動とはずいぶん違うもののその経験は生きる。

「竹中さん、大学で真面目に学習してきたつもりでも、いざ実際の会社となると難しいですね。」
「それは仕方ないわよ、私だってこんな会社始めてだしね、基本は同じだけど全く同じ会社なんてないでしょ、教育の場では限界があるのよ。
でも、山下君は優秀よ、私も新人教育やること有るけど、全然だめな子もいるからね。」
「有難う御座います、本当なら大学卒業して就職してから経験するような事を経験させて頂けて、親切に指導して下さるし。」
「あっれ~、私は厳しくやってるつもりだったのに、まだ甘かったかな。」
「がんがんしごいて下さい。」
「その気持ちが有るから良いのよね、じゃあ会社見学の方の作業を進めてくれるかしら、人選とかは山下君の方が適任だと思うからね、私は取引先関係を調べてみるから。」
「了解です、決まったら報告でよろしいですか。」
「問題が有ったらでいいわ、問題なく会社見学ができれば良いのだからね、私も問題が見つからなかったら報告しないからね。」
「はい…。」

「え~っと…、あっ調度良かった、安藤リーダーよろしいですか。」
「竹中さんどうかされましたか?」
「報告は最低限でという取り決め、もう発表した方が良さそうです。
これだけ優秀な学生が揃っているとは思ってなくて、失礼しました。」
「はい、う~ん、この時間なら…、早瀬さん、一度作業を中断して貰って軽くミーティングしたいけど大丈夫かな。」
「えっと…、十分後でよろしいですか。」
「お願いします。」

早瀬佐紀がアナウンス。
しばらくして安藤隆二中心に会議が始まる。
学生と企業からの応援がほぼ半々、総勢四十名程。

「一部の方には伝わっている事ですが、再確認の意味合いも有りますのでお願いします。
ここで作業して下さっている方々は、作業を分担して進めています。
その過程で報告、連絡ということが必要になってくるとは思いますが、それを最低限にして欲しいと思っています。
はい、斉木さん、どうぞ。」
「すいません、報告して自分の作業に問題ないかチェックして貰わなくて良いという事ですか。」
「そうです、ある意味厳しいことですが、その分自分で考え、自分に責任を持って欲しいです。
代わりに、斉木さんに仕事を任せた人は、報告を受けたり連絡を受けたりといった事で無駄な時間を取られることが無くなります。
ここにいる皆さんを信じていますから、問題なく準備作業が進んでいますという事を時間を掛けて報告して貰う必要は有りません。
もちろん重要な事や問題点が見つかったということは、すぐ教えて欲しいです。」
「もし失敗したらどうでしょう。」
「まだ規模も小さいですから、逆に今のうちに失敗しておいて欲しいと思っています。
今ならフォローもし易いですからね。
全て自分の判断で勝手に動いて良い訳では有りませんからバランスを考えて下さい。
無理だと感じたら下手に粘らずに、すぐ報告して欲しいです。
これからのチャレンジには、人として器の大きな人がリードして行く必要が有ると考えています。
自分の判断に自信が持てない人がリーダーでは、当然弱い組織になってしまうでしょうから。
応援の方々も、こういった前提の下での指導よろしくお願いします。
自分からは以上ですが…、井上さん、どうぞ。」
「これから参加してくる後輩達に対しても同様ですか?」
「人物の見極めをお願いします。
仕事を任せてみて大丈夫だと感じたら、任せて行きましょう。
まずは記録として残す、情報を公開する準備といった事は極力後輩に任せるシステムを構築して欲しいです、ここのメンバーでなくても出来る事は極力後輩に任せて、その仕事ぶりを見極めてから少しずつ、難しい作業も経験して貰うというステップを踏んで貰えば良いかと。
その過程で、あまりにも不安を感じさせる学生は、ここでの実習、研修には向かないかもしれません。」
「了解です、ついでと言っては何ですが、今後の展開で自分達が知っても問題ないことが有れば教えて頂けませんか。」
「ここにいる全員、誓約書を出して貰ってることと守秘義務の事を思い出しておいて欲しいかな。
直接的には今関係する予定の企業で上場してる所はないけど、取引先とかだと違ってくるからね。
では…。」
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架空サークル-89 [俺達の挑戦-02]

三月始め、二つの会社が正式に立ち上がった。
一つはテレビ番組制作をメインとする、株式会社桜総合学園制作部、総合学園としたのは学生達の実習や研修を積極的に受け入れて行くという思惑から。
他にも色々な案が出たが、最後は遠藤が決めた。
もう一つはその持ち株会社となる、株式会社桜根だ。

株式会社桜根は桜総合学園制作部のサポートに取り組む学生達の間でも話題となる。

「桜根の社員はサポート企業からの出向が中心になるんだよな。」
「営業部ががんばってくれた成果だと思うよ、企業サイドの組織をイメージして動いてなかったらもっと時間がかかっただろう。」
「学生の参加は二十人ぐらいって、何か狭き門って聞いたけど。」
「優秀な奴ばかりさ、将来的に番組制作会社とは全然違う規模を目指してるからな、一般学生の実習とか研修は少し後になるらしい。」
「でもスタート時点での傘下は桜学園と、え~っと中田工業って小さな町工場だけなんだろ。」
「あえてそうしたんだって、その方が発展して行く姿を強調しやすいからって、安藤が言ってた。」
「そうよね、確かにちっこいと応援したくなるし。」
「安藤は社長か…。」
「本人は嫌だったらしいけど、周りは…、サポート企業からの出向の人達、結構やり手が多いらしいんだ、その人達が全力で守るからって説得したそうだよ、安藤リーダーもやはりシンボル的存在だからな。」

「すぐに参加予定企業が発表されるんだよな。」
「伸び悩んでいる会社が三社って聞いたわ、私は研修希望出したけど。」
「俺もさ、卒論のテーマになるかもしれないからね。」
「参加企業は会社情報すべて公開だから…、社長にとって大きな決断だったと思うな、今後の展開は実験的要素も強いし。」
「ええ、それだけにお役に立ちたいと思ってるの。」
「微力ながらもってことだな…。」
「そんな微力でも集まったら大きな力になるってことだろ。」
「ああ、安藤社長が話してた飲食店の…、ほら全く関係ない業種間の交流で客と店に交流があったらって話し、儲かってない店なんて客に受け入れて貰えないない何かが有る訳だから、そこを客観的に指摘する人がいて、それをきちんと理解できる力量が店の側に有ったら、店の売り上げを伸ばす可能性は有るって話してたろ。」
「納得出来る話しだった。」
「でもな、俺たちの組織だけで参加者何人いると思う?」
「日々増えてるし、四月からは学生以外の方とも組んで、さらにだから…。」
「味が悪くても、この店改善しませんかという呼び掛けを公式にしたら、めっちゃ売り上げ伸びるかもしれないだろ。」
「確かに微力が積み上がったら、小さい店なら軽く立て直せそうだな。」
「ただ、ここで店長の資質が問われると思わないか?」
「う~ん、そうだな…、根本的な改善を考えずに組織の力だけを利用しようという輩だったら嫌だな。」
「私達の目指す方向性からぶれないように、見極めはきっちりして行く必要があるわね。」
「でも注目度が高いから、悪い評判もすぐ広まりそうだぞ。」
「あっ、そういう面も有るのか…。」
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架空サークル-90 [俺達の挑戦-02]

中田社長宅。

「社長、どうにか表向きはスタートにたどり着けましたけど、どうです。」
「まあ今の所は想定内に収まっているよ。」
「結構同時進行で進んでるから大変じゃないですか?」
「いや、安藤社長に心配して頂く程でもないよ。」
「あ~、その社長ってだけは勘弁してくださいよ、部下が全員年上で優秀なんですから。」
「どうだ社長って大変だろ。」
「気分的には大変です、でも今はまだ大したことは何もしてませんから…。」
「まあ、今のままで良いんだよ、細かいことは部下を信じて任せる、ここぞという時はしっかり指示を出す。
そんな社長の方が、部下に慕われるものだからな。
おたくの社員の一人に聞いたら、安藤社長からは要点を突いた質問が出て来て下手な事言えないってさ、社長の前では結構緊張してるって話してたぞ。」
「それは話しを盛ってますよ。」
「そうでもなさそうだったが。」

「それより経理事務の統合はどうですか、中田工業サイドで問題は有りませんか。」
「今の所はないよ、逆に問題点が有るなら早く知りたいけどな。
うちみたいな規模だと社長とか嫁さんとかが経理やってるとこ多いんだ。」
「そう言えば奥さん、嬉しそうでしたね、自分は社長の決断に反対されるかもと思ってましたが。」
「経理事務って、結構大変なんだよ、それから解放されるから大喜びさ。
前に外部委託を考えた事も有ったけど、色々考えたら踏み切れなくて…。
その時は不機嫌になってたなぁ~。」
「でもまだシステムが完成という訳でもないから…。」
「大丈夫だよ、おたくの担当もきっちりやってくれているからな。
実際に中小六社が参加となったから、六社全体で考えたら効率的だと思うよ。」

「今の所、桜根社内に置いてますけど、やはり別会社にして傘下に置きたいと思っています、社長はどう思われます?」
「う~ん、そうだったな、俺としてはどちらでも良いとも思っていたが…。」
「経理の外部委託を請け負う事も想定していまして、これから参加してくる会社の経理を請け負う所から繋がり始めるのも有りではないかと思っています。
参加希望企業が増えて来ていますから、傘下に入って頂く手続きを待って頂いてる段階からでも経理事務の部分で繋がっておけば、その企業の状況も掴めますし。」
「そうか、請け負うので有れば参加希望をしていない企業と繋がれる可能性も有るしな。」
「はい、それと各種団体の事務請け負いも視野に入れています。」
「各種団体?」
「例えば寄付によって成り立っている団体も有ります。
そんな団体でも事務関係で人を雇う必要が出てきます。
寄付の規模にもよりますが、寄付金の中の結構な割合が人件費になってる所も有ります。
寄付金の額、その仕事量と人件費がアンバランスになってる団体も有るのです。」
「そうか、適正な人件費なら問題ないが…、寄付金とか助成金、補助金って不透明な部分もあるな。」
「その見直しも我々の視野に有ります。」
「なるほど、ならば別で会社を立ち上げた方が良いだろう。」
「では、その方向で動かさせて頂きます。
社長ちょっと失礼して電話を掛けさせて頂いてもよろしいですか。」
「ああ。」

「失礼しました。」
「もう終わったのか。」
「はい、ゴーサインを出しただけですから。」
「新会社設立の?」
「はい、他の参加企業三社へはうちの担当者が連絡を取ります。
経理事務の統合の段階で了承済ですから、問題無いでしょう。
遠藤のとこもうちも、もちろん問題ないですから。
人事も三社の経理担当中心に組んで行く予定で、近々会社設立の発表が出来ると思います。
遠藤の所の経理部長候補は、すでに他の部署で活躍中だそうで引き抜きは諦めました。」
「準備は整っていたということか。」
「はい、中田社長の承認が出たら一気に動くということで。」
「いや、もう俺なんかの意見を聞かなくても…、隆二の判断で動けよ。」
「いいえ、中田工業は旗艦会社ですからね。」
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