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架空サークル-81 [俺達の挑戦-02]

話は少しだけ遡る。
十一月も終わる頃。
安藤隆二と早瀬佐紀は二人の後輩と共に小さな工場に来ていた。
この工場、従業員は十名だが特殊な部品を作っていることもあって結構安定している。
大量に売れる訳ではないが、その部品を必要とする会社が存在する訳だ。
社長の中田圭一は隆二の会社体験実習を快く受け入れた。
娘がサークルに参加していたことも有るが、前向きな考えを持つ人物だったからだ。

「社長、今日は貴重な時間を私達のために有難う御座います。」
「はは、隆二思い上がるなよ、お前たちの為じゃない、明日の日本の為だ。」
「は、はい。」
「お茶、どうぞ。」
「あっ、理子さん有難う御座います。」
「娘も同席したいと言ってるけど良いか?」
「もちろんです。」

しばらく中田から会社の説明、問題点などの説明を受ける。
佐紀が興味を持ったのは、若い社員のことだ。

「従業員十名で四十代以上の方が九名、一人だけ二十五歳ということで特に問題は無いのですか?」
「彼は真面目で大人しい性格だから上の連中もかわいがってはいる…、ただ大人しいだけに女の子との出会いがね、大きい会社なら社内恋愛とかも有るだろうけど。」
「私は当初、大き目の企業を想定して男女比のアンバランスを業務上、なんの接点もない会社間の交流によって、怪しげな出会い系じゃなく健全な婚活の一環として出来ないかと考えていたのです。
でも、中小企業の方々にも参加して頂けるシステムが出来ないかって思い始めています。」
「うん、ただねうちみたいな小さいとこの従業員は低く見られてしまうんだよ。
大手イコール安定って思わないか?」
「やはり大手でなくても安定してる会社も有るってことをアピールしていきたいですね、そして横の繋がりを持つことで、早瀬さん、社長とは色々企んでいるんだよ。
ところで社長、今日来て下さる方に変更は有りませんか?」
「ああ、新聞屋の店主と銀行屋、ただ銀行屋から支店長も同行という連絡が入った。
俺たちの挑戦を読んで、本人以上に乗り気になってるそうだ。」
「えっ、それって、社長めちゃ心強いじゃないですか。」
「ふ~ん甘いな、隆二次第では逆に動くかもしれんぞ。」
「うっ、プレッシャーかけないで下さいよ~。」
「隆二くんなら大丈夫よ。」
「うん、大丈夫。」
「早瀬さんも理子も…、隆二、お前なかなかやるな。」
「え~、からかわないで下さいよ。」
「はは、ただし早瀬さんも理子も支店長には気をつけろよ、手が早いことで有名だからな。」
「は、はい…。」
「でもま、理子はともかく早瀬さん綺麗だから、今日はスムーズに行くと思うよ。」
「え~、父さん…。」
「あのタイプは美人に弱いからな。」
「う~ん、微妙だなぁ~。」
「まあ責任ある立場にある訳だし、今日も早瀬さんが来ることを知らなくても足を運ぶ気になったのだから、少しは見所のある奴かもしれんな。」
「はは、銀行の支店長も大変そうだな、今日は、色々なお話しを聞かせて頂けそうだ。
他にも税理士の先生とか弁当屋さんとか色々な方と話しの場を設けるつもりだけど、まずはね。」
「安藤先輩、色々な職種の方が興味を持って下さっているということですか。」
「まあ、皆さん商売がらみだからね。」
「それじゃあ、私達の活動とは…。」
「今日君達にも来て貰ったのは、きちんと現実と向き合って欲しかったからなんだよ。
俺たちの活動なんて、ほんとに綺麗ごとの世界から始まってる、でも本気で成功させようと思ったら綺麗ごとだけじゃ済まない、佐々木さんもはっきり書いてたことだけどね。」
「あっ、生みの苦しみって…。」
「学生の組織を迅速に構築することによって人の目を引き付けることが出来る、でも社会人の組織は、じっくり形作っていかないと足元をすくわれる。」
「あっ、斉藤先輩からも聞きました。」
「今から始まる活動は、とてつもない利害関係との戦いになるんだ、我々の方向性を理解して下さる方々に利益をもたらせば、そうでない方々には不利益になる可能性もある、すべての方に我々の活動への参加協力を求めることは難しいんだ。
でも今日は、俺たちの第一歩だからね。」
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